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  • 特開-車両構造 図1
  • 特開-車両構造 図2
  • 特開-車両構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151661
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20241018BHJP
   F01P 7/14 20060101ALI20241018BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F01P3/20 L
F01P7/14
F01P3/20 B
B60K11/04 G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065187
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛行
(72)【発明者】
【氏名】松竹 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】細川 孝之
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AC22
(57)【要約】
【課題】複数の熱交換回路を車両に配置し易い車両構造を提供する。
【解決手段】熱媒体が循環される複数の熱交換回路を備える車両構造であって、前記複数の熱交換回路は、メイン回路とサブ回路とを備え、さらに、前記メイン回路に直列または並列に接続されたリザーブタンクと、前記サブ回路と前記リザーブタンクとを接続する一本の連絡管とを備える、車両構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が循環される複数の熱交換回路を備える車両構造であって、
前記複数の熱交換回路は、メイン回路とサブ回路とを備え、
さらに、前記メイン回路に直列または並列に接続されたリザーブタンクと、
前記サブ回路と前記リザーブタンクとを接続する一本の連絡管とを備える、
車両構造。
【請求項2】
前記サブ回路は、前記サブ回路の一部を構成する配管に設けられた熱媒体補充用のバルブを備える、請求項1に記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体が循環される複数の熱交換回路を備える車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両に搭載された発熱物体を冷却する冷却システムを開示する。特許文献1に開示される冷却システムは、パワーコントロールユニット(以下、PCU)と、ラジエターと、電動ウォータポンプとがホースで接続された熱交換回路である。PCUは発熱物体である。ウォータポンプによって熱交換回路に熱媒体を循環させることで、ラジエターにおいて冷却された熱媒体がPCUを冷却する。この冷却システムには、リザーブタンクが直列に接続されている。リザーブタンクは、熱交換回路に混入した気泡を分離する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-9338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関を有する自動車は通常、内燃機関を冷却する一つの熱交換回路を有する。一方、ハイブリッド自動車(HEV)、および電気自動車(BEV)などの電動自動車(EV)は、複数の熱交換回路を有する。例えば、BEVは、暖房用のヒータコアの温度を所定範囲に維持するための熱交換回路と、PCUを冷却するための熱交換回路と、バッテリの温度を所定範囲に維持するための熱交換回路とを有する。
【0005】
複数の熱交換回路は独立しており、各熱交換回路はリザーブタンクを備える。この場合、車両における各熱交換回路の配置が複雑になり易く、車両の生産性が低下し易い。また、小型の車両では、車両における配置空間が限定的であるため、各熱交換回路のリザーブタンクを適切な位置に配置することが難しい場合がある。
【0006】
本発明の目的の一つは、複数の熱交換回路を車両に配置し易い車両構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本発明の一態様に係る車両構造は、
熱媒体が循環される複数の熱交換回路を備える車両構造であって、
前記複数の熱交換回路は、メイン回路とサブ回路とを備え、
さらに、前記メイン回路に直列または並列に接続されたリザーブタンクと、
前記サブ回路と前記リザーブタンクとを接続する一本の連絡管とを備える。
【0008】
<2>上記<1>に記載される車両構造において、
前記サブ回路は、前記サブ回路の一部を構成する配管に設けられた熱媒体補充用のバルブを備えていても良い。
【発明の効果】
【0009】
上記<1>に記載される車両構造では、メイン回路とサブ回路とでリザーブタンクを共用している。リザーブタンクの数が減った分だけ、車両における限られた空間にメイン回路とサブ回路を配置し易い。メイン回路とサブ回路を配置し易いことで、車両の生産性が向上する。また、リザーブタンクの数が減った分だけ、車両の重量が軽減されるし、車両のコストも低減される。
【0010】
上記<1>に記載される車両構造では、一本の連絡管によってサブ回路をリザーブタンクに接続している。そのため、後述する実施形態に示されるように、サブ回路において生じた気泡がリザーブタンクに移動し易いが、サブ回路の熱媒体はリザーブタンクに移動し難い。従って、メイン回路の熱媒体とサブ回路の熱媒体とが均一的に混合されることがない。メイン回路とサブ回路とで求められる熱媒体の温度が異なる場合であっても、メイン回路とサブ回路とでリザーブタンクを共用できる。
【0011】
上記<2>に記載される車両構造に備わる熱媒体補充用のバルブは、リザーブタンクから熱交換回路に熱媒体を補充する際に使用される。熱媒体補充時に熱媒体補充用のバルブとリザーブタンクとにつながるホースを追加し、サブ回路において熱媒体を循環させることで、サブ回路中に混入した気泡をリザーブタンクに送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る車両構造の概略構成図である。
図2図2は、図1に示される車両構造におけるリザーブタンクの近傍の概略構成図である。
図3図3は、図1に示される車両構造において熱媒体を補充する手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両構造の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。なお、本発明は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0014】
<実施形態1>
図1は、熱媒体6が循環される複数の熱交換回路11,12を備える車両構造1の一例である。熱交換回路11,12は、熱源と、熱交換器と、熱媒体を循環させるポンプとを備える。図1には、熱交換回路11,12のみが示されており、車両に備わる他の構成の図示は省略されている。本例の車両はEVである。EVには、HEV、BEV、およびFCEVが含まれる。HEVには、プラグインハイブリッド自動車、およびシリーズハイブリッド自動車も含まれる。FCEVは、水素から電気を発生させる燃料電池を搭載した水素自動車である。
【0015】
本例の熱交換回路11は、EVの電動ユニット20の温度を所定範囲に維持するメイン回路2である。一方、熱交換回路12は、空調のヒータコア31の温度を所定範囲に維持するサブ回路3である。サブ回路3は複数であっても良い。HEVおよびBEVでは、電動ユニット20の他に、図示しないバッテリの温度を所定範囲に維持する熱交換回路が設けられている。バッテリに係る熱交換回路はメイン回路2にもなり得るし、サブ回路3にもなり得る。
【0016】
メイン回路2は、サブ回路3よりも熱負荷が大きい熱交換回路である。言い換えると、サブ回路3は、メイン回路2よりも熱負荷が小さい熱交換回路である。熱負荷は、熱交換回路11,12に備わる熱交換器において熱交換される単位時間当たりの熱量である。メイン回路2においては、熱交換器であるラジエター21において放熱される単位時間当たりの熱量であり、サブ回路3においては、熱交換器であるヒータコア31において放熱される単位時間当たりの熱量である。
【0017】
熱負荷が大きい熱交換回路では、熱媒体6の流量が大きい。熱媒体6の流量は、熱媒体6を循環させるポンプから吐出される熱媒体6の吐出量である。すなわち、熱交換回路11と熱交換回路12のうち、どちらがメイン回路2であるかは、熱交換回路11,12を流れる熱媒体6の流量の大きさによって判断できる。
【0018】
本例の車両構造1は、上述したメイン回路2とサブ回路3を備え、さらにリザーブタンク4と連絡管5を備える。以下、本例の車両構造1の各構成を詳細に説明する。
【0019】
≪メイン回路≫
本例のメイン回路2は、熱媒体6によってEVの電動ユニット20の温度を所定範囲に維持する。本例のメイン回路2における熱媒体6は液体である。熱媒体6は例えば、水または不凍液である。本例のメイン回路2において熱媒体6は冷媒として機能する。
【0020】
本例のメイン回路2は、電動ユニット20とラジエター21と第一ポンプ22と配管25,26,27とを備える。配管25は、熱源である電動ユニット20と、熱交換器であるラジエター21とをつなぐ。配管26は、ラジエター21と第一ポンプ22とをつなぐ。配管27は、第一ポンプ22と電動ユニット20とをつなぐ。図1では、メイン回路2における熱媒体6の流通方向が、反時計回りの白抜き矢印で示されている。
【0021】
電動ユニット20は、車両を駆動する駆動系部材の総称である。電動ユニット20には、車両を駆動するモータ、および図示しないバッテリからの電力をモータに供給するインバータなどが含まれる。電動ユニット20は熱源であり、熱媒体6によって冷却される。電動ユニット20を冷却するために電動ユニット20に導入される熱媒体6の温度、すなわち配管27における熱媒体6の温度は例えば65℃以下である。
【0022】
ラジエター21は、熱媒体6の熱を車外に放熱することで熱媒体6を冷却する熱交換器である。ラジエター21は公知の構成を備える。例えばラジエター21は、複数のフィンを有する本体21Bと、本体21Bの上部に配置されるアッパタンク21Uと、本体21Bの下部に配置されるロアタンク21Lとを備える。図示しないが、ラジエター21はさらに、本体21Bに風を送るファンを備えていても良い。アッパタンク21Uには、配管25がつながっている。従って、電動ユニット20の熱を受け取った熱媒体6は、アッパタンク21Uに流れ込む。熱媒体6の熱は、本体21Bにおいて放熱される。本体21Bで冷却された熱媒体6は、ロアタンク21Lに流れ込み、配管26を通って第一ポンプ22に送られる。
【0023】
第一ポンプ22は公知の構成である。例えば第一ポンプ22は、渦巻きポンプでも良いしインペラポンプでも良い。第一ポンプ22は、ラジエター21によって冷却された熱媒体6を電動ユニット20に向かって圧送する。
【0024】
電動ユニット20の発熱量は大きい。従って、電動ユニット20の温度を所定範囲に維持するためのメイン回路2における熱負荷、すなわちラジエター21で放熱される熱媒体6の熱量が大きい。このようなメイン回路2では、ラジエター21における放熱量を確保するために熱媒体6の流量が大きくなる。メイン回路2の流量が大きくなると、メイン回路2内に圧力差ができ易く、熱媒体6中に気泡が発生するキャビテーションが生じ易い。
【0025】
≪サブ回路≫
本例のサブ回路3は、EVにおける暖房のヒータコア31の温度を所定範囲に維持する。本例のサブ回路3における熱媒体6は、メイン回路2と共用されるため、メイン回路2の熱媒体6と同じである。本例のサブ回路3において熱媒体6は熱媒として機能する。図1では、サブ回路3における熱媒体6の流通方向が、時計回りの白抜き矢印で示されている。
【0026】
本例のサブ回路3は、高電圧ヒータ30とヒータコア31と第二ポンプ32と配管35,36,37,38を備える。配管35は、熱源である高電圧ヒータ30と、熱交換器であるヒータコア31とをつなぐ。本例の配管35には熱媒体補充用のバルブ33(以下、単にバルブ33と呼ぶ)が設けられている。バルブ33の用途については後述する。配管36と配管37は、ヒータコア31と第二ポンプ32とをつなぐ。本例では、配管36と配管37とが分岐配管50によってつながっている。この分岐配管50には、後述する連絡管5も接続されている。配管38は、第二ポンプ32と高電圧ヒータ30とをつなぐ。
【0027】
高電圧ヒータ30は、熱媒体6の温度を上昇させる熱源である。高電圧ヒータ30は公知の構成である。例えば高電圧ヒータ30の内部には熱媒体6が流れる図示しない配管が配置されており、配管が電気によって高温になることで配管内の熱媒体6の温度が上昇する。
【0028】
ヒータコア31は、車室に導入する空気を熱媒体6によって加熱する構成である。すなわち、ヒータコア31は、熱媒体6の熱を空気に放熱する熱交換器である。ヒータコア31は公知の構成を備える。例えばヒータコア31の内部には熱媒体6が流れる図示しない配管が配置されている。ヒータコア31は熱媒体6によって所定の温度範囲に維持される。車室に導入される空気がヒータコア31を通過することで温められる。その結果、車室の温度が上昇する。ヒータコア31に導入される熱媒体6の温度、すなわち配管37における熱媒体6の温度は例えば80℃以下である。
【0029】
第二ポンプ32は公知の構成である。例えば第二ポンプ32は、渦巻きポンプでも良いしインペラポンプでも良い。第二ポンプ32は、配管35を通った高電圧ヒータ30からの熱媒体6をヒータコア31に向かって圧送する。第二ポンプ32の出力は第一ポンプ22の出力よりも小さい。
【0030】
サブ回路3は、ヒータコア31の温度を所定範囲に維持するためのものである。そのため、サブ回路3の熱負荷、すなわちヒータコア31で放熱される熱媒体6の熱量は、メイン回路2のラジエター21で放熱される熱媒体6の熱量よりも小さい。このようなサブ回路3では、ヒータコア31の温度を維持するための熱媒体6の流量は小さくて良い。ヒータコア31の温度が所定範囲に維持されている限りにおいて、高電圧ヒータ30による加熱が停止されても良いし、熱媒体6の循環が停止されても良い。熱媒体6の流量が小さいサブ回路3ではキャビテーションが生じ難い。つまり、サブ回路3では気泡も発生し難い。
【0031】
≪リザーブタンク≫
リザーブタンク4は、メイン回路2とサブ回路3とで共用される。すなわち、メイン回路2とサブ回路3に対して配置されるリザーブタンク4の数は一つである。リザーブタンク4は、メイン回路2とサブ回路3に熱媒体6を補充する際に利用される。また、リザーブタンク4は、熱媒体6に混入した気泡を分離する機能を有する。リザーブタンク4の内部には液相と気相とが形成されている。リザーブタンク4は、気相につながる調圧弁40を備える。調圧弁40は、気相の圧力が一定以上になったときに気相の空気をリザーブタンク4の外部に放出する構成である。
【0032】
リザーブタンク4は、熱媒体6に混入した気泡を分離する機能上、キャビテーションが発生し易いメイン回路2における気泡を分離し易いように配置されている。逆説的には、リザーブタンク4を含む熱媒体6の循環路が形成されるようにリザーブタンク4が接続されている熱交換回路11がメイン回路2であるといえる。本例のリザーブタンク4は、配管28,29によってメイン回路2と並列に接続されている。本例の配管28は、ラジエター21のアッパタンク21Uとリザーブタンク4とをつなぐ。配管25からアッパタンク21Uに流れ込んだ熱媒体6の一部は、左向きの白抜き矢印で示されるようにリザーブタンク4に導入される。一方、本例の配管29は、リザーブタンク4と配管26とをつなぐ。従って、リザーブタンク4に貯留される熱媒体6の一部は、下向きの白抜き矢印で示されるように配管29を通ってメイン回路2に戻される。
【0033】
上述したように、メイン回路2とサブ回路3とでリザーブタンク4を共用することで、車両における限られた空間にメイン回路2とサブ回路3を配置し易い。メイン回路2とサブ回路3を配置し易いことで、車両の生産性が向上する。また、リザーブタンク4が減った分だけ、車両の重量が軽減されるし、車両のコストも低減される。
【0034】
本例とは異なり、リザーブタンク4はメイン回路2に直列に接続されていても良い。その場合、例えばリザーブタンク4は、配管25の途中に配置されても良いし、配管26の途中に配置されても良いし、配管27の途中に配置されても良い。
【0035】
≪連絡管≫
本例の車両構造1は一本の連絡管5を備える。連絡管5は、サブ回路3とリザーブタンク4とを接続する。図2に示されるように、本例の連絡管5は、サブ回路3の配管36と配管37との間に配置される分岐配管50に接続されている。本例の分岐配管50は、水平部50Aと、水平部50Aの中間部から鉛直下方に延びる垂直部50Bとを備えるT字形状である。水平部50Aの一方の端部に、ヒータコア31(図1)から延びる配管36が接続され、水平部50Aの他方の端部に、連絡管5が接続されている。垂直部50Bの端部には、第二ポンプ32に延びる配管37が接続されている。
【0036】
配管36から分岐配管50の水平部50Aに流れ込んだ熱媒体6は、重力の影響によって配管37に流れ込み易く、連絡管5には流れ込み難い。また、分岐配管50はリザーブタンク4よりも下方に配置されているため、連絡管5内の熱媒体6はリザーブタンク4に流れ込み難い。そのため、メイン回路2の熱媒体6とサブ回路3の熱媒体6とが均一的に混合されることがない。従って、メイン回路2とサブ回路3とで求められる熱媒体6の温度が異なる場合であっても、メイン回路2とサブ回路3とでリザーブタンク4を共用できる。一方、液体の熱媒体6に含まれる気泡は上方に移動し易く、二点鎖線で示されるように連絡管5を通ってリザーブタンク4に移動し易い。
【0037】
連絡管5におけるリザーブタンク4につながる端部は、配管29におけるリザーブタンク4につながる端部と平行に配置されている。つまり、リザーブタンク4における連絡管5の開口5aの向きは、配管29の開口29aの向きと同じ向きになっている。ここで本例では、メイン回路2(図1)から延びる配管28はリザーブタンク4の側面に接続され、リザーブタンク4からメイン回路2に延びる配管29はリザーブタンク4の底面に接続されている。また、配管29の開口29aは、連絡管5の開口5aよりも配管28に近い位置に配置される。従って、配管28を通ってリザーブタンク4に流れ込んだ熱媒体6は、白抜き矢印に示すように、配管29の開口29aに向かって流れ易い。連絡管5の開口5aにおける熱媒体6の流れる方向は上向きであるので、連絡管5からリザーブタンク4に流れ込んだ熱媒体6は、白抜き矢印の熱媒体6の流れに巻き込まれ難い。仮に、連絡管5の開口5aが図面右向きになっていた場合、連絡管5からリザーブタンク4に流れ込んだ熱媒体6が、白抜き矢印の熱媒体6の流れに巻き込まれ、連絡管5から熱媒体6が吸い出される恐れがある。その場合、サブ回路3の熱媒体6が積極的にメイン回路2に流入し、メイン回路2の熱媒体6の温度が所望の温度範囲から外れる恐れがある。
【0038】
≪リザーブタンクへの熱媒体の補充≫
本例の車両構造1におけるメイン回路2とサブ回路3に熱媒体6を補充する手順を図3に基づいて説明する。図3には主にサブ回路3とリザーブタンク4を図示する。
【0039】
リザーブタンク4に熱媒体6を補充する場合、リザーブタンク4の蓋を開け、リザーブタンク4の内部に熱媒体6を入れる。その際、リザーブタンク4内の熱媒体6に気泡が混入する。この気泡がメイン回路2とサブ回路3に残存すると、電動ユニット20の冷却とヒータコア31の保温が阻害される。図1に示されるメイン回路2にはリザーブタンク4が並列に接続されているため、第一ポンプ22を動作させ、メイン回路2に熱媒体6を循環させるだけで、メイン回路2における気泡をリザーブタンク4に追い出すことができる。一方、サブ回路3は連絡管5のみでリザーブタンク4とつながっているため、サブ回路3から気泡を抜くために時間がかかる。
【0040】
本例の車両構造1は、サブ回路3から気泡を効率的に抜くための構成として配管35に設けられたバルブ33を備える。サブ回路3から気泡を抜くにあたり、配管35のバルブ33を開放し、バルブ33とリザーブタンク4とをホース7でつなぐ。この状態で第二ポンプ32を作動させ、サブ回路3に熱媒体6を循環させる。同時に、メイン回路2においても熱媒体6を循環させる。図3における細線矢印は、サブ回路3における熱媒体6の流れを示している。ホース7によってサブ回路3からリザーブタンク4に積極的に熱媒体6を流す流路が形成されるため、サブ回路3に混入した気泡がリザーブタンク4に送り込まれる。気泡はリザーブタンク4で熱媒体6と分離される。気泡が抜けるとリザーブタンク4における熱媒体6の水位が低下するので、再度、熱媒体6を追加して熱媒体6を循環させる。リザーブタンク4の水位が下がらなくなるまで熱媒体6の追加と熱媒体6の循環を繰り返すことで、熱媒体6の補充が完了する。
【0041】
なお、ホース7におけるリザーブタンク4に配置される端部は、熱媒体6中に配置することが好ましい。ホース7の端部が熱媒体6中に配置されることで、ホース7からリザーブタンク4に熱媒体6が流入したとき、気泡が発生し難い。
【符号の説明】
【0042】
1 車両構造
11,12 熱交換回路
2 メイン回路
20 電動ユニット
21 ラジエター、21B 本体、21L ロアタンク、21U アッパタンク
22 第一ポンプ
25,26,27,28,29 配管、29a 開口
3 サブ回路
30 高電圧ヒータ、31 ヒータコア、32 第二ポンプ
33 熱媒体補充用のバルブ
35,36,37,38 配管
4 リザーブタンク
40 調圧弁
5 連絡管
5a 開口
50 分岐配管、50A 水平部、50B 垂直部
6 熱媒体
7 ホース
図1
図2
図3