(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151667
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】心音解析システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B5/02 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065204
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】521526580
【氏名又は名称】株式会社ココロミル
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(74)【代理人】
【識別番号】100214488
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】林 大貴
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 貴志
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AC30
4C017BC16
4C017BD06
4C017FF17
(57)【要約】
【課題】対象体の心音データに基づき、不整脈や自律神経障害の兆候を提示することができる心音解析システムを提供する。
【解決手段】対象体の心音を測定する心音測定部10と、心音測定部10で測定した心音を時系列データの心音データとして格納する心音データ格納部20、心音データ格納部20に格納した心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定する異常状態判定部40、異常状態判定部40で判定した異常状態を提示する提示部50を備え、異常状態安定部判定部40は、心音データに基づいて、ローレンツプロットを生成し、生成したローレンツプロットに基づき、異常状態として、心房細動、期外収縮、自律神経障害のうち少なくとも1つの兆候を示していることを判定する心音解析システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の心音を測定する心音測定部と、
前記心音測定部で測定した前記心音を時系列データの心音データとして格納する心音データ格納部と、
前記心音データ格納部に格納した前記心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定する異常状態判定部と、
前記異常状態判定部で判定した異常状態を提示する提示部と、
を備えた心音解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の心音解析システムにおいて、
前記心音データ格納部に格納した前記心音データのパワースペクトルを算出する心音スペクトル算出部を備え、
前記異常状態判定部は、
前記心音スペクトル算出部で算出した前記心音のパワースペクトルに基づき、前記異常状態として、心房細動、期外収縮、自律神経障害のうち少なくとも1つの兆候を示していることを判定する心音解析システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の心音解析システムにおいて、
前記心音測定部は、スマートフォンのマイクであり、
前記心音データ格納部は、前記スマートフォンのメモリであり、
前記心音スペクトル算出部及び前記異常状態判定部は、前記スマートフォンのCPUであり、
前記提示部は、前記スマートフォンのディスプレイである心音解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心音を取得し、取得した心音を解析し、不整脈の兆候や自律神経障害の兆候を提示することができる心音解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象体の心音を計測し、計測した心音データから心音の周波数のピーク値を特定し、この心音周波数のピーク値と対象体の血圧値との相関関係に基づき、心音周波数のピーク値から対象体の血圧値を容易かつ正確に推定する医療機器があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の医療機器では、対象体の心音周波数のピーク値に基づいて対象体の血液値を推定することができるだけであり、対象体の心音に基づいて、不整脈や自律神経障害の兆候を提示することはできないという課題があった。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みなされたもので、対象体の心音データに基づき、不整脈や自律神経障害の兆候を提示することができる心音解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1に記載の発明は、
対象体の心音を測定する心音測定部(10)と、
前記心音測定部(10)で測定した前記心音を時系列データの心音データとして格納する心音データ格納部(20)と、
前記心音データ格納部(20)に格納した前記心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定する異常状態判定部(40)と、
前記異常状態判定部(40)で判定した異常状態を提示する提示部(50)と、
を備えたことを要旨とする心音解析システム(1)である。
【0008】
このような心音解析システム(1)は、対象体から取得した心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定し、提示することが可能となる。したがって、心電図に基づいて心臓に関する異常状態を判定する場合と比較すると、心電図を取得する際にはプローブ必要になるのに対し、マイクを用いるだけでよく、簡易で、測定時の対象体への負担も軽くなる解析システムとなる。
【0009】
[適用例2]
適用例2に記載の心音解析システム(1)は、適用例1に記載の心音解析システム(1)において、
前記心音データ格納部(20)に格納した前記心音データのパワースペクトルを算出する心音スペクトル算出部(30)を備え、
前記異常状態判定部(40)は、
前記心音スペクトル算出部(30)で算出した前記心音のパワースペクトルに基づき、前記異常状態として、心房細動、期外収縮、自律神経障害のうち少なくとも1つの兆候を示していることを要旨とする。
【0010】
このような心音解析システム(1)では、異常状態として、心房細動、期外収縮、自律神経障害(糖尿病、パーキンソン病など)のうち少なくとも1つの兆候を判定し、提示することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例3に記載の心音解析システム(1)は、適用例1又は適用例2に記載の心音解析システム(1)において、
前記心音測定部(10)は、スマートフォンのマイクであり、
前記心音データ格納部(20)は、前記スマートフォンのメモリであり、
前記心音スペクトル算出部(30)及び前記異常状態判定部(40)は、前記スマートフォンのCPUであり、
前記提示部(50)は、前記スマートフォンのディスプレイであることを要旨とする。
【0012】
このような心音解析システムでは、スマートフォンにより心音解析システム(1)を構成することができ、非常に簡易な構成で使いやすいシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】心音解析システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図2】異常状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】心音解析システムで取得される心音データ及びその心音データのパワースペクトルの一例を示す図である。
【
図4】異常状態の兆候とローレンツプロットによる表示ついての説明図である。
【
図5】第3実施形態における心音解析システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図6】第3実施形態における端末での端末処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態におけるサーバでのサーバ処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実際の心電図を用いて心電図用不整脈解析アルゴリズムを説明するための概念図である。
【
図9】実際の心電図を用いて心電図用自律神経解析アルゴリズムを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0015】
[第1実施形態]
(心音解析システム1の構成)
図1に基づき、心音解析システム1の構成について説明する。
図1は、心音解析システム1の機能的な構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、心音解析システム1は、心音測定部10、制御処理部100及び提示部50を備えている。
心音測定部10は、心音を測定するための部分であり、具体的にはマイクである。
【0017】
ここで、心音とは、心臓の弁が閉じるときに生じる音であり、第I音、第II音や心雑音などから構成される音である。
心臓から血液が送り出されるためには、心房と心室の間の房室弁と、心室と動脈の間の動脈弁が開閉する必要がある。心房が収縮して血液が心室を満たすと、房室弁(僧帽弁と三尖弁)が閉じ、それに伴って心室が収縮を始める。心音の第I音は、この時の音である。
【0018】
また、心室が収縮して血液を動脈に送り出すと、動脈弁(大動脈弁と肺動脈弁)が閉鎖される。これが心音の第II音である。
さらに、弁に開閉不全や狭窄があると、はっきりとした心音に加えて異常な音が発生しする場合がある。この音を心雑音という。
第I音は心尖部、第II音は両側第2肋間の高さの胸骨縁で、最もよく聴き取ることができる。第I音は鈍く低い音、第II音は鋭く高い音として聴こえる。
【0019】
制御処理部100は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O及び心音データ格納部20、心音スペクトル算出部30及び異常状態判定部40を備えている。
心音データ格納部20は、心音測定部10で測定した心音を時系列データの心音データとして格納する部分であり、具体的にはメモリである。
【0020】
心音スペクトル算出部30は、心音データ格納部20に格納した心音データに基づき、心音データのパワースペクトルを算出する部分であり、具体的には、CPUで実行されるプログラム(異常状態判定処理)として実現される。異常状態判定処理については後述する。
【0021】
異常状態判定部40は、心音スペクトル算出部30で算出した心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定する部分であり、具体的には、CPUで実行されるプログラム(異常状態判定処理)として実現される。異常状態判定処理については後述する。
【0022】
提示部50は、異常状態判定部40で判定した異常状態を提示する部分であり、具体的には、液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0023】
(異常状態判定処理)
次に、
図2に基づいて、制御処理部100において実行される異常判定処置について説明する。
図2は、異常状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
異常状態判定処理は、プログラムとしてROMに格納され、心音解析システム1の電源オンとともにCPUによって読み出され処理が開始される。
【0024】
異常状態判定処置は、
図2に示すように、CPUはS100において、心音測定部10から心音データ(心音の時系列データ)を取得し、続くS105では、S100において取得した心音データを心音データ格納部20へ格納する。
【0025】
続くS110において所定時間(本実施形態では1分)が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過したと判定した場合(S110:Yes)、処理をS115へ移行し、所定時間が経過していないと判定した場合(S110:No)処理をS100へ戻す。
【0026】
S115では、S100~S110において取得した心音データからPSDなどの特徴量を抽出する。具体的には、下記(ア)~(オ)の処理を行い、特徴量を算出する。特徴量算出の例として、
図3に示した、S100~S110において取得される心音データ及びその心音データのパワースペクトルの例を参照しつつ説明する。
図3は、心音解析システム1で取得される心音データ及びその心音データのパワースペクトルの一例を示す図である。なお、
図3中に「A」で示すグラフが心音データであり、「B」で示すグラフがパワースペクトルである。
【0027】
(ア)特定の周波数帯のPSD(Power Spectral Densityの略:パワースペクトル密度))を算出する。
(イ)算出したPSDのうち一定値を超えたピークをピックアップする。
(ウ)(イ)項で得られたピーク群を1音、2音及びノイズに分類する。
【0028】
(エ)(ウ)項で得られた1音群に対し、心電図用不整脈解析アルゴリズムにより、心房細動、期外性収縮(不整脈)、ポーズ(不整脈)の特徴を算出する。心電図用不整脈解析アルゴリズムについては後述する。
(オ)(ウ)項で得られた1音群に対し、心電図用自律神経アルゴリズムを用いて、LF/HFを算出し、自律神経障害の兆候を算出する。心電図用自律神経解析アルゴリズムについては後述する。
【0029】
続くS120では、S115における算出結果から異常状態の判定を行い、続くS125では、提示部50に異常状態の判定結果(異常状態の兆候)を、ローレンツプロットで表示させた後、処理を終了する。
ここで、
図4に基づき、異常状態の兆候をローレンツプロットで表示する方法ついて説明する。
図4は、異常状態の兆候とローレンツプロットによる表示ついての説明図である。
【0030】
ローレンツプロットとは、横軸をn番目の心音RR間隔、縦軸をn+1番目の心音RR間隔としてグラフ上にプロットしたものである。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、心音データによって「正常」であると判定される場合は、ローレンツプロットにおいて、心拍間隔の分布が右上がり(最小二乗法により近似した一次曲線の傾きが正)で、上下方向のばらつきが所定内の値のグラフとなる。
【0031】
図4(c)に示すように、「心房細動の兆候あり」と判定される場合は、心拍間隔の分布が右上がりではあるが、上下方向のばらつきが所定の値内でないグラフとなる。
図4(d)に示すように、「期外収縮の兆候あり」と判定される場合は、心拍間隔の分布の右上がりの一次近似曲線が3本以上現れるグラフとなる。
【0032】
図4(e)に示すように、「糖尿病やパーキンソン病などの自立神経障害の兆候あり」と判定される場合は、右上がりの一次曲線に対する上下方向の心拍間隔の分布が所定の値以下のグラフとなる。
【0033】
(心電図用不整脈解析アルゴリズム)
ここで、
図8に基づき、心電図用不整脈解析アルゴリズムについて説明する。
図8は、実際の心電図を用いて心電図用不整脈解析アルゴリズムを説明するための概念図である。
図8に示すように、心電図用不整脈解析アルゴリズムでは下記の(ア)~(エ)により心房細動、期外性収縮(不整脈)、ポーズ(不整脈)の特徴を算出する。
【0034】
(ア)
図8(A)に示す心電図波形からQRSを検出する(
図8(A)中に「C」で示す)。QRSとは、心室興奮から脱分極が完了するまでの間の心電図上の特徴的なポイントを示すもので、
図8(B)の中に「E」で示す領域である。なお、
図8(B)は、
図8(A)中の「C」の部分の拡大図である。
【0035】
(イ)隣り合うQRSの時間間隔を計算する(この時間間隔をR-R Intervalいい、
図8(A)中に「D」で示す)。
(ウ)あるQRSに対し、直前の数拍~数十拍分のR-R Intervalと比較して、期外収縮が発生しているかを判定する。
【0036】
(エ)(ウ)項の影響を排除したうえで、特定の区間のR-R Intervalのばらつきから、心房細動が発生しているかを判定する。
本発明では、心電図の代わりに、心音データで同様の処理を行う際に、隣り合う1音の間隔をR-R Intervalと置き換えて算出することにより、心房細動、期外性収縮(不整脈)、ポーズ(不整脈)の特徴を算出している。これにより、心電図を用いた不整脈解析アルゴリズムに基づいて、心音データを用いた不整脈解析が可能となっている。
【0037】
(心電図用自律神経解析アルゴリズム)
次に、
図9に基づき、心電図用自律神経解析アルゴリズムについて説明する。
図9は、実際の心電図を用いて心電図用自律神経解析アルゴリズムを説明するための概念図である。
【0038】
図9に示すように、心電図用自律神経解析アルゴリズムでは下記の(オ)、(カ)により糖尿病やパーキンソン病などの自律神経障害の特徴を算出する。
(オ)心電図用不整脈解析で算出したR-R Interval群(
図9の中に「F」で示す)を周波数解析し、PSDを算出する。
【0039】
(カ)(オ)項のうち、Hihg Frequency(HF:0.15~0,4Hz)の積分値と、Low Freauency(LF:0.05~0.15Hz)の積分値を求め、その日をLF/HFとして算出する。
【0040】
本発明では、心電図の代わりに、心音データで同様の処理を行う際に、隣り合う1音の間隔をR-R Intervalと置き換えて算出することにより、自律神経障害の特徴を算出している。これにより、心電図を用いた自律神経解析アルゴリズムに基づいて、心音データを用いた自律神経解析が可能となっている。
【0041】
(心音解析システムの特徴)
以上の心音解析システム1は、対象体である利用者から取得した心音データに基づき、心臓に関する異常状態を判定し、提示することが可能となる。したがって、心電図に基づいて心臓に関する異常状態を判定する場合と比較すると、心電図を取得する際にはプローブ必要になるのに対し、マイクを用いるだけでよく、簡易で、測定時の対象体への負担も軽くなる解析システムとなる。
【0042】
さらに、異常状態として不整脈の兆候を判定し、提示することができる。さらに、異常状態として、心房細動、期外収縮、自律神経障害(糖尿病、パーキンソン病など)のうち少なくとも1つの兆候を判定し、提示することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態における心音解析システム1ついて説明する。第2実施形態における心音解析システム1は、構成要件の機能及び異常状態判定処理は第1実施形態におけるものと同じであるため、それらの説明は省略する。
【0044】
第2実施形態における心音解析システム1は、いわゆるスマートフォン(登録商標)の構成品を用いて構成されている。つまり、心音測定部10が、スマートフォンのマイクであり、制御処理部100がスマートフォンのCPU、提示部50がスマートフォンのディスプレイである。
【0045】
そして、スマートフォンのメモリにアプリケーションとして異常状態判定処理が格納され、心音測定部10(マイク)で測定した心音データがメモリに格納され、CPUでパワースペクトルが算出されるとともに、異常状態判定が行われ、提示部50(ディスプレイ)で異常判定状態判定の結果が提示される。
【0046】
このような心音解析システムでは、第1実施形態における心音解析システム1の特徴に加え、スマートフォンにより心音解析システムを構成することができ、非常に簡易な構成で使いやすいシステムとすることができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、
図5に基づいて第3実施形態における心音解析システム2について説明する。
図5は、第3実施形態における心音解析システム2の機能的な構成を示すブロック図である。
【0048】
図5に示すように、心音解析システム2は、端末110とサーバ120とを備えており、端末110とサーバ120との間で、インターネットなどの通信回線5を介してデータの送受信を行う。
【0049】
なお、第3実施形態における心音解析システム2の構成要素のうち第1実施形態における心音解析システム1と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
端末110は、心音解析システム2の使用者が所持して使用する部分であり、心音データを測定し、通信回線5を介してサーバ120に送信するとともに、サーバ120で判定されて異常状態判定結果を、通信回線5介して受信し、提示する部分である。
【0050】
端末110は、心音測定部10、提示操作部51、送受信部60及び図示しないCPU、ROM、RAM、I/Oを備えている。
提示操作部51は、情報を表示する液晶ディスプレイとその表面の、操作入力用のタッチパネルを備えている。
【0051】
送受信部60は、通信回線5を介してサーバ120とデータを送受信するための送受信機である。また、CPUでは後述する端末処理が実行される。
サーバ120は、端末110から通信回線5を介して送信される心音データを格納し、格納した心音データに基づいて、心音スペクトルを算出したり、異常状態判定結果を判定したりし、その結果を、通信回線5を介して端末110へ送信する部分である。
【0052】
サーバ120は、心音データ格納部20、心音スペクトル算出部、異常状態判定部40、送受信部61及び図示しないCPU、ROM、RAM、I/Oを備えている。
送受信部61は、通信回線5を介して端末110とデータを送受信するための送受信機である。また、CPUでは後述するサーバ処理が実行される。
【0053】
(端末処理)
図6に基づき、端末110で実行される端末処理について説明する。
図6は、端末処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
図6に示すように、端末処理では、まず、S200において、提示操作部51から操作モードの入力状態を取得する。つまり、利用者が、「心音データの計測をするのか」、「異常状態判定結果を提示させるのか」、あるいは、「処理を終了させるのか」のいずれを選択しているのかを取得する。
【0055】
続くS205では、S200において取得したモード状態入力がどのモードであるかを判定する。そして、入力状態のモードが「心音データ計測」の場合、処理を210へ移行し、「異常状態判定結果」の場合、処理をS220へ移行し、「処理終了」の場合、端末処理を終了する。
【0056】
S210では、心音データを取得し、続くS215では、S210において取得した心音データを、通信回線5を介してサーバ120へ送信する。なお、送信の際、心音データの最初はスタートデータを送信し、所定時間経過時の最後は、エンドデータを送信する。
【0057】
S220では、所定時間(本実施形態では1分)が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過したと判定した場合(S220:Yes)、処理をS200へ戻し、所定時間が経過していないと判定した場合(S220:No)処理をS210へ戻す。
【0058】
S225では、通信回線5を介してサーバ120から異常状態判定結果を入力し、続くS230で、S225において入力した異常状態判定結果を提示操作部51に表示させた後、処理をS200へ戻す。
【0059】
(サーバ処理)
図7に基づき、サーバ120で実行されるサーバ処理について説明する。
図7は、サーバ処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
図7に示すように、サーバ処理では、まず、S300において、通信回線5を介して端末110から心音データを入力し、心音データ格納部20へ格納する。データ入力の際、スタートデータからエンドデータまでのデータを入力して、心音データ格納部20へ格納する。
【0061】
続くS305では、S300において取得した心音データから心音PSDなどの特徴量を算出する。
続くS310では、S305において算出した心音PSDなどの特徴量から異常状態の兆候を判定する。判定の方法は実施形態1の異常状態判定処理(S115,S120)と同じである。
【0062】
続くS315では、S310における判定結果を、通信回線を介して端末110へ送信する。このとき、判定結果を、実施形態1のS125におけるローレンツプロットにして端末110へ送信してもよい。
【0063】
このような心音解析システム2では、端末110を心音測定部10、提示操作部51及び送受信部60のみで構成することで小型化することができるため、使いやすいシステムとすることができる。
【0064】
また、通信回線5とサーバ120とを用いて異常状態判定処理を行うことができるため、複数の端末110を1台のサーバ120で処理することが可能となり、大規模なシステム化が可能となる。
【0065】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、対象体として、人間を前提として説明したが、対象体は人間に限らず、犬、猫などのペットや豚、牛などの家畜あるいはサイ、カバ、象など動物園で飼育されている動物などであってもよい。この場合、それぞれの対象体に応じて、異常状態の兆候を判定するための判定値を変更すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1,2… 心音解析システム 5… 通信回線 10… 心音測定部 20… 心音データ格納部 30… 心音スペクトル算出部 40… 異常状態判定部 50… 提示部 51… 提示操作部 60、61… 送受信部 100… 制御処理部 110… 端末 120… サーバ。