(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151672
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】放射線撮影台
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20241018BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61B6/00 300X
A61B6/00 300W
A61B6/04 332B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065213
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】390015521
【氏名又は名称】オリオン・ラドセーフメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆嗣
(72)【発明者】
【氏名】安井 建造
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA03
4C093CA16
4C093ED06
4C093FA22
(57)【要約】
【課題】異なるサイズのFPDを利用可能な新規な構成を備えた放射線撮影台を提供することができる。
【解決手段】被検者が横臥可能な天板を有する天板部(10)と、天板部(10)の下部に配置されたトレイ(20)と、トレイ(20)の上面に着脱可能な複数の内側ガイド(31~34)とを備え、複数の内側ガイド(31~34)は、トレイ(20)の上面に配置されることにより、トレイ(20)に収納されるフラットパネルディテクタ(21a)の、トレイ(20)の上面における配置位置を規定する放射線撮影台(1)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が横臥可能な天板を有する天板部と、
前記天板部の下部に配置されたトレイと、
前記トレイの上面に着脱可能な複数の内側ガイドと
を備え、
前記複数の内側ガイドは、前記トレイの上面に配置されることにより、前記トレイに収納されるフラットパネルディテクタの、前記トレイの上面における配置位置を規定する放射線撮影台。
【請求項2】
前記トレイの上面に固定された複数の外側ガイドを更に備え、
前記複数の外側ガイドは、前記トレイに収納されるフラットパネルディテクタの、前記トレイの上面における配置位置を規定しており、且つ、
前記複数の外側ガイドが規定する配置位置に収納されるフラットパネルディテクタのサイズは、前記複数の内側ガイドが規定する配置位置に収納されるフラットパネルディテクタのサイズよりも大きい、請求項1に記載の放射線撮影台。
【請求項3】
前記複数の内側ガイドの各々は、前記複数の内側ガイドが規定する配置位置に収納されるフラットパネルディテクタの四隅に沿うように配置される、請求項1又は2に記載の放射線撮影台。
【請求項4】
前記複数の内側ガイドの各々は、上面視において、略L字形状を有し、
前記複数の内側ガイドが規定する配置位置に収納されるフラットパネルディテクタの四隅の各々は、対応する前記複数の内側ガイドの各々の前記略L字形状に嵌め込まれる、請求項1又は2に記載の放射線撮影台。
【請求項5】
前記複数の内側ガイドの各々は、前記トレイの上面に対向する面に形成された少なくとも2つのピンを有し、
前記トレイは、前記トレイの上面から下面にかけて前記トレイを貫通する少なくとも2つのピン孔を有し、
前記少なくとも2つのピンの各々は、対応する前記少なくとも2つのピン孔の各々に対して挿抜可能である、請求項1又は2に記載の放射線撮影台。
【請求項6】
前記複数の内側ガイドの各々の、前記トレイの上面からの高さは、前記複数の内側ガイドが規定する配置位置に収納されるフラットパネルディテクタの厚みよりも大きい、請求項1又は2に記載の放射線撮影台。
【請求項7】
前記天板部を支持する上部フレームと、
下部フレームと、
前記上部フレームと前記下部フレームとを連結し、前記上部フレームを昇降させるパンタアームと、
前記下部フレームの上面に配置されており、且つ、上面視において、前記上部フレームの四隅にそれぞれ位置している4つのバネと
を更に備え、
前記4つのバネの各々は、前記天板部が前記天板部の最低位に位置する際におけるたわみ量に応じた弾性力を前記上部フレームに印加することで、前記パンタアームによる前記上部フレームの上昇をアシストする、請求項1又は2に記載の放射線撮影台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線撮影台に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器としてフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector、以下、「FPD」と称する。)が知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006‐212175号公報
【特許文献2】特開2009‐101053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、FPDの外形サイズの拡大が進んでいる一方、普及している従来サイズのFPDのニーズも引続き存在する。本開示の一態様は、異なるサイズのFPDを利用可能な新規な構成を備えた放射線撮影台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る放射線撮影台は、被検者が横臥可能な天板を有する天板部と、前記天板部の下部に配置されたトレイと、前記トレイの上面に着脱可能な複数の内側ガイドとを備え、前記複数の内側ガイドは、前記トレイの上面に配置されることにより、前記トレイに収納されるフラットパネルディテクタの、前記トレイの上面における配置位置を規定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、異なるサイズのFPDを利用可能な新規な構成を備えた放射線撮影台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る放射線撮影台を示す模式上面図である。
【
図3】上記放射線撮影台の特徴的構成による効果を説明するための説明図である(その1)。
【
図4】上記放射線撮影台の特徴的構成による効果を説明するための説明図である(その2)。
【
図5】(a)は、上記放射線撮影台の特徴的構成を示す模式上面図である。(b)は、上記放射線撮影台の特徴的構成を示す模式斜視図である。
【
図6】上記放射線撮影台の特徴的構成の変形例を示す模式上面図である。
【
図7】(a)は、上記放射線撮影台の特徴的構成の他の変形例を示す模式側面図である(その1)。(b)は、上記放射線撮影台の特徴的構成の他の変形例を示す模式側面図である(その2)。
【
図8】バネのたわみ量と荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
<本開示者らが見出した放射線撮影台の課題>
一般的に普及しているFPDのサイズとして、例えば、17インチ×17インチ(以下、「普及サイズ」と称する。)を挙げることができる。健康診断や骨折した場面等、医療現場で数多く見受けられるX線撮影においては、撮影対象である撮影部位の大きさは、当該普及サイズの撮影領域内に収まることが通常である。
【0010】
一方、医療現場では、数は比較的少ないものの、例えば頚椎から骨盤までの全脊椎や骨盤から足趾までの下肢全長のような、長い撮影部位をX線撮影する場合も見受けられる。この場合、上記普及サイズの撮影領域に当該撮影部位が収まらないため、上記普及サイズの撮影領域をずらしながら複数回撮影し、撮影された各々の画像を合成して1枚の長尺な画像を生成するのが通常である。
【0011】
本開示者らは、上記のように、複数回撮影し、1枚の長尺な画像を生成する場合に、以下に述べる課題が潜在的に存在することを見い出した。
【0012】
(a)撮影された各々の画像を合成する際、画像と画像との間をスムーズに繋げるための画像処理が行われる。当該画像処理の精度が低いと繋ぎ目の画像の信頼性が低下する。
【0013】
(b)長い撮影部位を含む長尺な撮影領域を、上記普及サイズの複数の撮影領域に分割する位置を決めるのは、放射線撮影台を用いてX線撮影を行う放射線技師である。放射線技師の技量が低いと、分割位置が適切に設定されず、画像間の繋ぎ目がうまく繋がらないおそれがある。
【0014】
(c)被検者の立場からすると、複数回の撮影には、被曝量の増加及びX線撮影のための拘束時間の増大、といったデメリットがある。放射線技師の立場からすると、複数回の撮影には、1回の撮影ごとに、X線管球とFPDとの間の距離調整及びX線管球の照射領域の調整が必要になる、といったデメリットがある。
【0015】
近年、上記普及サイズよりも大きいサイズとして、例えば、17インチ×32インチ(以下、「大サイズ」と称する。)が開発されて来ている。当該大サイズのFPDであれば、上述したような長い撮影部位であっても当該FPDの撮影領域内に収まるので、撮影は1回で済むことになる。
【0016】
そこで、本開示者らは、上述の(a)~(c)で述べた課題を解決すべく、上記大サイズのFPDを利用可能な、従来には無い新規な構成を備えた放射線撮影台を鋭意検討し、本開示を発明するに至った。
【0017】
ただし、ここで着目すべきは、1台の放射線撮影台において、上記大サイズのFPDの利用頻度は上記普及サイズのFPDの利用頻度よりも低いという点である。すなわち、1台の放射線撮影台において、上記大サイズのFPDを利用して稼働する期間は、上記普及サイズのFPDを利用して稼働する期間よりも短いという点である。
【0018】
本開示者らは、この点にも着目し、1台の放射線撮影台において利用されるFPDのサイズは、上記普及サイズが主であり、上記大サイズが従である点も考慮しつつ、本開示を発明した。
【0019】
なお、上記では、普及しているサイズとして17インチ×17インチを、開発されて来ているサイズとして17インチ×32インチを、それぞれ用いて説明したが、本開示はそれらの数値に限られるものではない。要は、普及しているサイズよりも開発されて来ているサイズが大きく、且つ、普及しているサイズの利用頻度よりも開発されて来ているサイズの利用頻度が低ければ、本開示は適用可能である。
【0020】
<本開示の実施形態>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、高さと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な高さや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下の説明における「左右」、「上下」及び「前後」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。
【0021】
〔放射線撮影台の基本構成〕
まず、本開示の実施形態に係る放射線撮影台1の基本構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。ただし、
図1及び
図2には、放射線撮影台1の基本構成に関わる部材に加えて、放射線撮影台1の特徴的構成に関わる部材も記載されている。当該特徴的構成に関わる部材については、
図1及び
図2を用いた上記基本構成の説明後、
図3以降の図面を用いて詳細に説明を行うこととする。したがって、
図1及び
図2の説明において、説明がなされない
図1及び
図2に記載された部材については、
図3以降に図面の説明において説明がなされることになる。
【0022】
図1は、本開示の実施形態に係る放射線撮影台1を示す模式上面図である。
図2は、放射線撮影台1を示す模式側面図である。本実施形態では、
図1に示すとおり、放射線撮影台1がX線撮影の検査室の床に設置され、その検査室の天井近傍にX線検査装置2が設置された配置関係を例として説明する。ただし、放射線撮影台1とX線検査装置2との間の配置関係はこれに限られるものではない。
【0023】
図1に示すとおり、放射線撮影台1は、天板部10と、受像部11と、昇降部12と、フットスイッチ13とを備えている。
【0024】
図2に示すとおり、天板部10は、天板10Aと、レール部10Bとを有している。天板10Aは、アクリル板、カーボン板等の素材から形成されている。以下の説明では、天板10Aは、アクリル板で形成されているものとして説明する。天板10Aの外周は、アルミ合金等で形成されたレール部10Bで囲われている。天板10Aの上面は、X線撮影の被検者が横臥するために十分な広さを有している。天板部10は、その上面に載った被検者の荷重に耐えられる設計になっている。天板10Aの上面の形状は、長方形になっており、天板10Aの長手方向に沿って被検者が横臥することが想定されている。以下、天板10Aの長手方向を前後方向、短手方向を左右方向と称する。また、
図1に示すとおり、前後方向及び左右方向のいずれにも直交する方向を上下方向と称する。なお、放射線撮影台1がX線撮影の検査室の床に設置されている状態を示す
図1においては、当該上下方向は鉛直方向と一致する。
【0025】
図1に示すとおり、受像部11及び昇降部12は、この順で、天板10Aの下面の下方に配置されている。受像部11は、トレイ20と、トレイ20に収納されるFPD21aとを有している。
【0026】
図2に示すとおり、トレイ20は、その上面視が略矩形形状であり、その外形は略板状形状である。FPD21aは、トレイ20の上部に収納されている。FPD21aは、トレイ20から着脱可能である。なお、FPD21aのサイズは上記普及サイズであるが、トレイ20は、当該FPD21aに代えて、上記大サイズのFPDも収納可能である。なお、トレイ20が上記普及サイズのFPD及び上記大サイズのFPDのいずれも収納可能である構成は、放射線撮影台1の特徴的構成に含まれるものであるため、当該構成については、放射線撮影台1の特徴的構成を説明する際に詳述する。また、本実施形態では、トレイ20が収納可能なFPDのサイズを上記普及サイズ及び上記大サイズとするが、本開示はこれらに限られるものではない。また、FPD21aは公知の技術であるので、本実施形態では、FPD21aについて詳細な説明は控える。
【0027】
天板部10は、手動で前後左右、すなわち水平方向に移動させることができる。天板部10を前後左右に移動させることにより、天板10Aの上面に横臥した被検者と受像部11との位置関係を変えることができる。また、放射線撮影台1は、ロック機構14を有しており、X線撮影時に天板部10が水平方向に動かないように固定することができる。ロック機構14は、電磁ブレーキ及び電磁マグネット等で構成されている。
【0028】
図1に示すとおり、昇降部12は、テーブルリフト機構を有している。より具体的には、昇降部12は、パンタアーム12Aと、蛇腹部12Bと、アクチュエータ12Cと、上部フレーム12Dと、下部フレーム12Eとを有している。
【0029】
上部フレーム12Dは、天板部10及び受像部11を支持している。下部フレーム12Eは、検査室の床に設置される基台、不図示のキャスタ等を有している。
【0030】
パンタアーム12Aは、上部フレーム12Dと下部フレーム12Eとを連結している。パンタアーム12Aには、開閉用のアクチュエータ12Cが連結されている。アクチュエータ12Cの軸が上方へ伸びると、パンタアーム12Aが閉じ、上部フレーム12Dが水平を保ちながら上昇する。アクチュエータ12Cの軸が縮むと、パンタアーム12Aが開き、上部フレーム12Dが水平を保ちながら下降する。
【0031】
昇降部12は、放射線撮影台1の外観の美観を損なわないように、蛇腹部12Bで覆われている。蛇腹部12Bは、上下方向に伸縮可能であり、パンタアーム12Aの開閉に伴い、すなわち、上部フレーム12Dの昇降に伴い、上下方向に伸縮する。蛇腹部12Bの下部フレーム12E側は下部フレーム12Eに固定されており、蛇腹部12Bの上部フレーム12D側は上部フレーム12Dから取り外し可能である。なお、蛇腹部12Bの下部フレーム12E側が下部フレーム12Eから取り外し可能であり、蛇腹部12Bの上部フレーム12D側が上部フレーム12Dに固定されていてもよい。
【0032】
フットスイッチ13は、昇降部12の操作に用いられる入力装置である。
【0033】
X線撮影の検査室では、放射線撮影台1の上方、より具体的には検査室の天井近傍に、X線検査装置2が設置されている。X線検査装置2は、X線管球2Aとガイド光源2Bとを有している。X線管球2Aは、X線を下方へ曝射する。ガイド光源2Bは、X線管球2Aの照射野を可視光Rで示す。受像部11の上面には、FPD21aの位置を示す基準線が設けられている。放射線技師は、透明な天板10Aを通してその基準線を視認して、ガイド光源2Bにより示されるX線管球2Aの照射野の位置を調整することができる。
【0034】
〔放射線撮影台1の特徴的構成〕
(特徴的構成の主たる効果)
放射線撮影台1の特徴的構成の理解容易化の観点から、まず、当該特徴的構成による主たる効果について、
図3及び
図4を参照しつつ、具体的に説明する。なお、以下に述べる効果は、特徴的構成の主たる効果であり、当該効果のみに本開示の効果が限定されるものではない。
【0035】
図3及び
図4は、上記特徴的構成による効果を説明するための説明図である。なお、図面の見易さの観点から、
図3及び
図4には当該効果を説明する上で必要となる部材のみが表示されている。
【0036】
具体的には、
図3は、被検者501の頚椎から骨盤までの全脊椎をX線撮影する際において、放射線撮影台1Xのトレイに上記普及サイズのFPD21Xを収納し、当該FPD21Xを用いて撮影を2回行った様子を示す模式図である。
図3(a)は、1回目の撮影に対応する図であり、
図3(b)は、2回目の撮影に対応する図である。なお、放射線撮影台1Xは、上記普及サイズのFPD21Xのみ利用可能である。
【0037】
一方、
図4は、
図3と同様、被検者501の頚椎から骨盤までの全脊椎をX線撮影する際において、放射線撮影台1のトレイに上記大サイズのFPD21bを収納し、当該FPD21bを用いて撮影を1回のみ行った様子を示す模式図である。
【0038】
まず、
図3に示すとおり、上記普及サイズのFPD21Xを用いて撮影を2回行った場合、
図3(a)に示す1回目の撮影にて撮影された画像と
図3(b)に示す2回目の撮影にて撮影された画像とを合成し、被検者501の頚椎から骨盤までの全脊椎が表示された1枚の画像を生成する必要がある。当該画像を信頼性の高いものにするためには、2つの画像の繋ぎ目を精度よく繋ぐ必要があるが、画像処理の精度が低いと当該繋ぎ目を精度よく再現することができない(上記<本開示者らが見出した放射線撮影台の課題>に記載の(a)を参照)。
【0039】
次に、
図3に示すとおり、
図3(a)に示す1回目の撮影の後、天板部10Xを前後方向に移動させ、
図3(b)に示す2回目の撮影が行なわれる。放射線技師は、1回目の撮影領域に、被検者501の頸椎から胸椎までを含む部位が収まるように、そして、2回目の撮影領域に、被検者501の腰椎から骨盤まで含む部位が収まるように、天板部10Xの位置を調整しなければならない。しかし、放射線技師が、天板部10Xの位置をうまく調整しないと、被検者501の頚椎から骨盤までの全脊椎を、1回目の撮影部位と2回目の撮影部位とに、適切に分割することができない。不適切な分割とは、例えば、1回目の撮影部位と2回目の撮影部位との間に重複部位が多すぎる、逆に、1回目の撮影部位と2回目の撮影部位との間に未撮影の部位がある、といったケースが挙げられる。このように、分割位置が適切でなければ、それら2つの画像を合成しても、両者間の繋ぎ目がうまく繋がらないことは言うまでもない(上記<本開示者らが見出した放射線撮影台の課題>に記載の(b)を参照)。
【0040】
最後に、
図3に示すとおり、
図3(a)に示す1回目の撮影の後、天板部10Xを前後方向に移動させ、
図3(b)に示す2回目の撮影が行なわれるので、被検者501はそれら2回の撮影が終了するまでの長時間にわたり、天板部10Xの上面に横臥し続けなければならない。一方、放射線技師は、
図3(a)に示す1回目の撮影の際、天板部10X及びX線管球(図示省略)の各々の位置調整を行い、X線管球とFPD21Xとの間の距離を調整し、さらに、
図3(b)に示す2回目の撮影の際にも、再び、天板部10X及びX線管球の各々の位置調整を行い、X線管球とFPD21Xとの間の距離を調整しなければならない。同じことを2度繰り返すことは非常に手間である(上記<本開示者らが見出した放射線撮影台の課題>に記載の(c)を参照)。
【0041】
これに対し、
図4に示すとおり、上記大サイズのFPD21bを用いて撮影を行うことができれば、被検者502の頚椎から骨盤までの全脊椎がFPD21bの撮影領域内に収まるので、
図3に示した、X線撮影を2回行う必要はない。このため、
図3を用いて上述した2つの画像の繋ぎ目について考慮する必要はなく、画像処理された繋ぎ目の無い高信頼性の画像を生成することができる。また、撮影が1回になるので、被検者502の拘束時間も大幅に削減され、天板部10の位置調整等といった、放射線技師の手間も大幅に削減される。
【0042】
(特徴的構成の詳細)
図5は、放射線撮影台1の特徴的構成を示す模式図である。
図5(a)には、
図1に示したトレイ20が示されている。
図5(b)には、トレイ20と、トレイ20に着脱可能な、
図2に示した内側ガイド31とが示されている。
【0043】
図5(a)に示すとおり、トレイ20の上面には、トレイ20に対して着脱可能な内側ガイド31~34と、トレイ20に固定された外側ガイド41~44と、が配置されている。
【0044】
内側ガイド31~34は互いに同一材料からなり、且つ同一構造を有している。内側ガイド31~34は、例えば、樹脂からなる。当該樹脂に要求される特性としては、例えば、高強度、耐摩耗性、耐疲労性、寸法安定性及び切削性が良い、である。
【0045】
内側ガイド31~34の各々は、上記普及サイズのFPD21aがトレイ20に収納された際に、略板状形状であるFPD21aの四隅の各々に沿うように配置されている。上面視において、内側ガイド31~34の各々は、略L字形状を有している。FPD21aの四隅の各々は、FPD21aがトレイ20に収納される際に、対応する内側ガイド31~34の各々の略L字形状に嵌め込まれる。つまり、内側ガイド31~34は、トレイ20の上面におけるFPD21aの配置位置を規定するための部材である。
【0046】
図5(b)に示すとおり、内側ガイド31には、トレイ20の上面に対向する面に、ピンp1及びp2が形成されている。一方、トレイ20には、その上面から下面にかけてトレイ20を貫通するピン孔h1及びh2が形成されている。ピンp1がピン孔h1に挿入され、ピンp2がピン孔h2に挿入されることにより、トレイ20の上面に内側ガイド31が配置される。ピンp1及びp2は、それぞれ、ピン孔h1及びh2に対して挿抜可能であるので、内側ガイド31は、トレイ20に対して着脱可能である。内側ガイド32~34についても、内側ガイド31と同様、2つのピンが形成されており、各々のピンが挿抜可能なピン孔がトレイ20に形成されている。
【0047】
なお、内側ガイド31~34の各々に形成されているピン数は2つに限られるものではない。ピン数が1つであると、当該ピンを中心軸とし内側ガイド31~34が回転してしまうおそれがある。このため、ピン数は少なくとも2つ以上であることが好ましい。また、ピン数を増やすことで内側ガイド31~34がトレイ20から何かのはずみで外れてしまうことも無くなる。また、ピンにネジ構造を設けてもよい。ただし、ネジ構造を設けた場合には、ピン数は1つでも構わない。
【0048】
外側ガイド41~44は互いに同一材料からなり、且つ同一構造を有している。外側ガイド41~44は、内側ガイド31~34と異なり、トレイ20の上面に固定されている。例えば、トレイ20の上面に対向する面と、トレイ20の上面とを接着剤で接着して固定すれば良い。
【0049】
外側ガイド41~44の各々は、上記大サイズのFPD21bがトレイ20に収納された際に、略板状形状であるFPD21bの四隅の各々に沿うように配置されている。上面視において、外側ガイド41~44の各々は、略L字形状を有している。FPD21bの四隅の各々は、FPD21bがトレイ20に収納される際に、対応する外側ガイド41~44の各々の略L字形状に嵌め込まれる。つまり、外側ガイド41~44は、トレイ20の上面におけるFPD21bの配置位置を規定するための部材である。
【0050】
なお、内側ガイド31~34及び外側ガイド41~44のいずれにおいても、対応するFPD21a及び21bの四隅と接触する面に、シート状にした繊維品、例えばフェルトを張りつけておくことが好ましい。対応するFPD21a及び21bの四隅が嵌め込まれる際、フェルトが緩衝材となり、当該四隅が当たる面に傷がつき難くなるからである。
【0051】
また、内側ガイド31~34及び外側ガイド41~44のいずれにおいても、トレイ20の上面からの高さは、対応するFPD21a及び21bの厚みよりも大きいことが好ましい。具体的には、
図5(a)に示すとおり、内側ガイド32の高さH32は、FPD21aの厚みH21aよりも大きい。内側ガイド31、33及び34についても各々の高さがFPD21aの厚みH21aよりも大きくすることで、FPD21aが内側ガイド31~34により囲まれた空間から何かのはずみで外れてしまうことが無くなる。外側ガイド41~44についても同様に、FPD21bが外側ガイド41~44により囲まれた空間から何かのはずみで外れてしまうことが無くなる。
【0052】
また、内側ガイド31~34及び外側ガイド41~44の各々は、対応するFPD21a及び21bの四隅に沿うように配置されているが、本開示は当該配置構成に限られるものではない。例えば、4つの内側ガイドの各々を、FPD21aの四辺の略中央部に沿うように配置してもよい。ただし、この場合には、内側ガイド31~34の形状は、トレイ20の上面に立設している略壁形状とすればよい。
【0053】
以上、放射線撮影台1の特徴的構成について説明したが、放射線撮影台1は以下に述べる優れた構成も更に備えている。
【0054】
図5(a)に示すとおり、トレイ20には、人の指が挿入可能な開口71及び72が形成されている。FPD21a及び21bは数kg程度あるのが通常である。上記大サイズのFPD21bであれば5kg程度となる。トレイ20にFPD21bが収納されており、当該FPD21bをトレイ20から取り出す際には、開口71及び72に指を挿入し、トレイ20の下面からFPD21bを押し出せばよい。そうすることにより、5kg程度のFPD21bであっても容易にトレイ20から取り出すことができる。
【0055】
また、トレイ20の四辺側、具体的には、辺20a側~20d側の各々において、所謂曲げ加工が施されている。
図5(a)に示すとおり、辺20b側及び20c側において、曲げ加工が施されることにより、トレイ20の上面側から下面側に向かう曲げ部20bX及び20cXが設けられている。図示はしないが、辺20a側及び20d側においても同様にトレイ20の上面側から下面側に向かう曲げ部が設けられている。当該曲げ部を設けることにより、トレイ20に5kg程度のFPD21bを収納した場合でもトレイ20にたわみが生じることはない。
【0056】
なお、上述の曲げ加工に代えて、トレイ20を波板形状にしてもよい。トレイ20にFPD21bを収納した際、トレイ20は、前後方向、つまり、長手方向にたわむおそれがある。トレイ20を、流れ方向がトレイ20に前後方向となる波板形状とすることで、トレイ20に5kg程度のFPD21bを収納した場合でもトレイ20にたわみが生じることはない。また、トレイ20を波板形状にすることで、トレイ20のたわみ耐性が向上するので、その分だけ、トレイ20の薄板化が可能となり、トレイ20の重量軽減といったメリットもある。
【0057】
また、トレイ20の辺20c側には取っ手51及び52が設けられている。取っ手51がトレイ20の前側に、取っ手52がトレイ20の後側に配置されているので、トレイ20に5kg程度のFPD21bが収納されている場合でも、取っ手51及び52の両方を一緒に引っ張ることで、天板部10の下部から簡単にトレイ20を引っ張り出すことができる。なお、トレイ20の辺20b側及び20d側の各々にはスライドレールが設けられており、当該スライドレールに沿ってトレイ20を天板部10の下部からスライドさせることができる。
【0058】
また、トレイ20には、コネクタ80に接続されたケーブルをトレイ20の上面側から下面側に通すためのケーブル通過口60が形成されている。コネクタ80は、トレイ20に収納されたFPD21a及び21bの各々のコネクタ挿入部(図示省略)に接続される。符号80aが付された点線の矩形は、FPD21a又は21bのいずれかのコネクタ挿入部に接続されたコネクタ80を表わしている。コネクタ80に接続されたケーブルは、トレイ20の下方に配置された制御ユニット(図示省略)に繋がれている。FPD21a及び21bの各々は、コネクタ80及びコネクタ80に接続されたケーブルを介して、制御ユニットとの各種データのやり取りを行う。
【0059】
〔変形例1〕
図6は、トレイ20の変形例を示す模式上面図である。
図6に示すとおり、本変形例が
図5に示した実施形態と異なる点は、内側ガイド31~34及び外側ガイド41~44に代えて、移動式ガイド31a~34aがトレイ20の上面に配置されている点である。
【0060】
移動式ガイド31a~34aの各々は、例えば、内側ガイド31~34と同一材料、且つ、同一構造を備えている。ただし、移動式ガイド31a~34aの各々に形成された2つのピンは、トレイ20に形成されたピン溝に沿って直線的に移動可能である。
【0061】
移動式ガイド31a~34aは、トレイ20にFPD21aを収納する際には、トレイ20の上面におけるFPD21aの配置位置を規定するための部材となる。また、移動式ガイド31a~34aは、トレイ20にFPD21bを収納する際には、トレイ20の上面におけるFPD21bの配置位置を規定するための部材となる。
【0062】
本変形例によれば、
図5に示した実施形態よりも、トレイ20の上面に配置されるガイド数を削減することができる。
【0063】
〔変形例2〕
図7(a)は、放射線撮影台1の特徴的構成の他の変形例を示す模式側面図である。
図7(b)は、放射線撮影台1の特徴的構成の他の変形例を示す模式側面図である。また、
図7(a)は、天板部10が、X線撮影時における高さH1に位置している状況を示しており、
図7(b)は、天板部10が、被検者が天板部10から乗り降りする際における高さH2に位置している状況を示している。当該高さH2は、天板部10の最低位である。なお、
図7では、図面の見易さを考慮し、
図1に示した蛇腹部12Bは示されていない。
【0064】
図7に示すとおり、本変形例が
図1に示した実施形態と異なる点は、下部フレーム12Eの上面に4つのバネを配置した点である。当該4つのバネは、上面視において、略矩形形状である上部フレーム12Dの四隅にそれぞれ位置している。また、当該4つのバネは同一のバネ定数を有している。なお、
図7では、当該4つのバネのうちの、2つである、バネ91及び92のみ示されている。
図7(a)に示すL1はバネ91及び92の自然長を意味し、
図7(b)に示すL2は、天板部10が高さH2に位置しているときのバネ91及び92の長さを意味している。
【0065】
図7(b)に示すとおり、被検者が天板部10に乗る際、天板部10は、高さH1から高さH2まで下降する。そして、被検者が天板部10に乗った後、天板部10は、高さH2から高さH1まで上昇する。当該上昇の際、特に、当該上昇の開始時、アクチュエータ12Cの駆動力だけでは、パンタアーム12Aを閉じることができない、つまり、天板部10を上昇させることができない、という課題がある。トレイ20に上記大サイズのFPD21bが収納されている場合においては、この課題が顕著化される。
【0066】
本変形例によれば、バネ91及び92を含む4つのバネは、天板部10が高さH2まで下降した際に所定量だけたわみ、再び、天板部10が上昇する際に当該所定のたわみ量(以下、「必要たわみ量」と称する。)に応じた弾性力(以下、「必要弾性力」と称する。)を上部フレーム12Dに印加することで、天板部10の上昇をアシストすることができる。
【0067】
ここで、4つのバネに関する必要たわみ量及び必要弾性力については、ち密な計算に基づく値となる。なぜなら、必要たわみ量に応じた必要弾性力が大きすぎると、アクチュエータ12Cに悪影響を与えてしまうからである。具体的には、アクチュエータ12Cの駆動力よりも必要弾性力が勝ってしまうとアクチュエータ12Cの駆動に無理がかかるからである。
【0068】
なお、必要たわみ量及び必要弾性力の計算は、バネの厚み、巻き方、サイズ、及び長さといった様々なパラメータが関与する。
図8は、バネのたわみ量と荷重との関係を示すグラフである。上述の各種パラメータを適切な値とすることで、
図8に示すような、バネのたわみ量と荷重との関係が最適なバネ定数を得ることができる。
【0069】
以下、
図8について、より詳細に説明する。以下では、天板部10が高さH2から上昇する際、天板部10の上昇をアシストするために、バネ91及び92を含む上述の4つのバネに要求される必要弾性力の合計値が1500Nである場合を例として説明する。
【0070】
なお、上述の1500N、以下に述べる具体的な数値、及び
図8に示したグラフに関しては、全て一例に過ぎず、本開示を限定するものではない。また、上述の必要弾性力の合計値は、パンタアーム12Aが昇降させる上部フレーム12Dの重量と、上部フレーム12Dが支持する天板部10及び受像部11の各々の重量と、天板部10の天板10Aの上面に横臥する被検者の体重と、の総重量を考慮し、設定されるものである。ただし、上述のとおり、アクチュエータ12Cの駆動に無理がかからないように、上記の合計値が設定されることは言うまでもない。
【0071】
4つのバネに要求される必要弾性力の合計値が1500Nであれば、各々のバネに要求される必要弾性力は375Nである。この場合、当該375Nという必要弾性力と、各バネを下部フレーム12Eの上面の四隅にそれぞれ配置する際の取り付けスペースと、を考慮し、各バネの寸法及びバネ定数を決めればよい。当該取り付けスペースは、以下では、60mmとする。
【0072】
この場合、以下のバネであれば好ましい。
・自然長:140mm
・密着高さ:50mm(すなわち、最大たわみ量は90mm)
・密着高さの長さであるときの弾性力:423.9N
密着高さの長さであるときの弾性力である、423.9Nは、上述の各々のバネに要求される必要弾性力である375Nを上回っている。なお、密着高さの長さであるときの弾性力に関しては、JIS規格における荷重公差が±10%であるとすると、マイナスのほうの値は381.5Nである。当該値は、上述の各々のバネに要求される必要弾性力である375Nを上回っている。
【0073】
バネ定数は、フックの法則から求めることができる。上記のバネであれば、フックの法則より、バネ定数=密着高さの長さであるときの弾性力/最大たわみ量である。
図8に示したグラフは、当該バネ定数のバネのたわみ量と荷重との関係を示すグラフである。
図8に示すとおり、たわみ量が90mmであれば、荷重、すなわち弾性力は、423.9Nとなる。このように、バネの設計時は、上述の必要弾性力とたわみ量を念頭において、バネ定数が決定される。
【0074】
なお、バネのたわみ量は、以下の公式で表わされることが知られている。
δ=8・n・D3・P/G・d4
ただし、δはたわみ量、nは有効巻数、Dはコイル平均径、Pは荷重、Gは横弾性係数(バネ材料固有の値)、dは線径である。
【0075】
ここで、上述のとおり、バネ定数=密着高さの長さであるときの弾性力/最大たわみ量であるので、上記の公式を用いて、決定されたバネ定数を実現するための、上述した各種パラメータ(有効巻数、コイル平均径、横弾性係数、及び線径)を設計すれば良い。
【0076】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1、1X 放射線撮影台
2 X線検査装置
2A X線管球
2B ガイド光源
10、10X 天板部
10A 天板
10B レール部
11 受像部
12 昇降部
12A パンタアーム
12B 蛇腹部
12C アクチュエータ
12D 上部フレーム
12E 下部フレーム
13 フットスイッチ
14 ロック機構
20 トレイ
21a、21b、21X FPD
31~34 内側ガイド
31a~34a 移動式ガイド
41~44 外側ガイド
60 ケーブル通過口
71、72 開口
80 コネクタ
91、92 バネ
501、502 被検者
h1、h2 ピン孔
p1、p2 ピン