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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151674
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】圧力開放弁
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/62 20060101AFI20241018BHJP
   F16K 17/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A62C13/62
F16K17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065217
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】大熊 諒也
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA09
3H059CD05
3H059EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筐体の内部の火災を効率よく消火できる圧力開放弁を、低いコストで提供する。
【解決手段】圧力開放弁は、筐体の開口部に部分的に重なるよう筐体の表面に固定されているベース部20と、開口部を覆うことができるルーフ部31を含み、開口部を開放するよう移動可能な弁部材30と、ベース部20と弁部材30との間に位置し、消火剤42が充填された充填部材40と、消火剤42を充填部材40から放出させる起点部材35と、を備える。弁部材30は、流体の内圧が増加すると、第1閉位置から開位置へ移動し、その後、流体の内圧が減少すると、開位置から第2閉位置へ移動する。弁部材30は、第1閉位置及び第2閉位置にあるとき、開口部を覆う。弁部材30は、開位置にあるとき、開口部を開放する。起点部材35は、弁部材30が第2閉位置にあるときに消火剤42を充填部材40から放出させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記筐体の前記開口部に部分的に重なるよう前記筐体の表面に固定されているベース部と、
前記開口部を覆うことができるルーフ部を含み、前記開口部を開放するよう移動可能な弁部材と、
前記ベース部と前記弁部材との間に位置し、消火剤が充填された充填部材と、
前記消火剤を前記充填部材から放出させる起点部材と、を備え、
前記弁部材は、前記流体の内圧が閾値を下回っているときは、閉位置にあり、前記弁部材は、前記流体の内圧が前記閾値を超えているときは、開位置にあり、
前記弁部材は、前記弁部材が前記閉位置にあるとき、前記開口部を閉鎖し、
前記弁部材は、前記開位置にあるとき、前記開口部を開放し、
前記起点部材は、前記弁部材が前記開位置から前記閉位置へ移動するときに前記消火剤を前記充填部材から放出させる、圧力開放弁。
【請求項2】
前記起点部材は、前記弁部材に取り付けられている、請求項1に記載の圧力開放弁。
【請求項3】
前記弁部材は、前記流体の内圧が増加すると、第1閉位置から開位置へ移動し、その後、前記流体の内圧が減少すると、前記開位置から第2閉位置へ移動し、
前記弁部材は、前記弁部材が前記第1閉位置及び前記第2閉位置にあるとき、前記開口部を閉鎖し、
前記起点部材は、前記弁部材が前記第2閉位置にあるときに前記消火剤を前記充填部材から放出させる、請求項1又は2に記載の圧力開放弁。
【請求項4】
前記充填部材は、前記消火剤と、前記消火剤が収容される容器と、前記容器を封止するフィルムと、を含み、
前記起点部材は、前記弁部材が前記第2閉位置にあるときに前記フィルムを突き破る鋭利構造を含む、請求項3に記載の圧力開放弁。
【請求項5】
前記充填部材は、前記弁部材が前記第1閉位置にあるときに前記起点部材に接触しない待機部を含む、請求項4に記載の圧力開放弁。
【請求項6】
前記弁部材は、前記ルーフ部から下方へ延びる軸部を含み、
前記圧力開放弁は、前記軸部を中心とする周方向において、前記第1閉位置にあるときの前記弁部材の周方向位置と、前記第2閉位置にあるときの前記弁部材の周方向位置とを異ならせるためのカム構造を備える、請求項3に記載の圧力開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部の圧力を調整する圧力開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力開放弁は、筐体の内部の圧力を調整するための装置である。筐体は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。圧力開放弁は、バッテリーパックなどの筐体に取り付けられている。例えば、圧力開放弁は、筐体に形成されている開口部を覆うように配置されている。圧力開放弁は、筐体の内部の圧力が閾値を超えると、筐体の内部の流体を外部に放出するよう動作する。圧力開放弁は、圧力の上昇に起因して筐体の内部のデバイスが損傷することを抑制できる。これにより、バッテリーパックの安全性が高められる。
【0003】
筐体の内部の圧力が上昇する状況では、筐体の内部で発火が生じる可能性もある。消火のため、例えば特許文献1は、圧力が上昇したときに破壊される破壊弁を圧力開放弁に設けることを提案している。破壊弁には消火剤が充填されている。破壊弁が破壊されると、消火剤が放出される。その他にも、例えば特許文献2は、バッテリーパック内の火災を感知する感知センサと、消火剤が貯蔵された貯蔵タンクと、を備える火災鎮圧装置を提案している。火災が感知されると、消火剤が流出弁からバッテリーパックの内部に注入される。バッテリーパックは、内部で発生したガスを放出させる排出弁を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-55587号公報
【特許文献2】特許第6132289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、筐体の内部のガスを逃がしているときに消火剤が筐体の内部へ放出される。筐体の内部と外部が連通していると、筐体の外部の酸素が筐体の内部に流入する可能性がある。酸素が筐体の内部に流入すると、消火に要する時間が長くなり、消火に要する消火剤の量も多くなる。特許文献2の火災鎮圧装置は、高いコストを要する。
【0006】
本発明は、このような課題を解決できる圧力開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1] 筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記筐体の前記開口部に部分的に重なるよう前記筐体の表面に固定されているベース部と、
前記開口部を覆うことができるルーフ部を含み、前記開口部を開放するよう移動可能な弁部材と、
前記ベース部と前記弁部材との間に位置し、消火剤が充填された充填部材と、
前記消火剤を前記充填部材から放出させる起点部材と、を備え、
前記弁部材は、前記流体の内圧が閾値を下回っているときは、閉位置にあり、前記弁部材は、前記流体の内圧が前記閾値を超えているときは、開位置にあり、
前記弁部材は、前記弁部材が前記閉位置にあるとき、前記開口部を閉鎖し、
前記弁部材は、前記開位置にあるとき、前記開口部を開放し、
前記起点部材は、前記弁部材が前記開位置から前記閉位置へ移動するときに前記消火剤を前記充填部材から放出させる、圧力開放弁。
【0008】
[2] [1]に記載の圧力開放弁において、前記起点部材は、前記弁部材に取り付けられていてもよい。
【0009】
[3] [1]又は[2]に記載の圧力開放弁において、前記弁部材は、前記流体の内圧が増加すると、第1閉位置から開位置へ移動し、その後、前記流体の内圧が減少すると、前記開位置から第2閉位置へ移動してもよい。前記弁部材は、前記弁部材が前記第1閉位置及び前記第2閉位置にあるとき、前記開口部を閉鎖する。前記起点部材は、前記弁部材が前記第2閉位置にあるときに前記消火剤を前記充填部材から放出させてもよい。
【0010】
[4] [3]に記載の圧力開放弁において、前記充填部材は、前記消火剤と、前記消火剤が収容される容器と、前記容器を封止するフィルムと、を含んでいてもよく、前記起点部材は、前記弁部材が前記第2閉位置にあるときに前記フィルムを突き破る鋭利構造を含んでいてもよい。
【0011】
[5] [4]に記載の圧力開放弁において、前記充填部材は、前記弁部材が前記第1閉位置にあるときに前記起点部材に接触しない待機部を含んでいてもよい。
【0012】
[6] [3]~[5]のいずれか1つに記載の圧力開放弁において、前記弁部材は、前記ルーフ部から下方へ延びる軸部を含んでいてもよく、前記圧力開放弁は、前記軸部を中心とする周方向において、前記第1閉位置にあるときの前記弁部材の周方向位置と、前記第2閉位置にあるときの前記弁部材の周方向位置とを異ならせるためのカム構造を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筐体の内部の火災を効率良く消化できる圧力開放弁を、低いコストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】筐体に取り付けられた圧力開放弁の一例を示す斜視図である。
図2】筐体の一例を示す平面図である。
図3】圧力開放弁の一例を示す分解図である。
図4A】第1閉状態にある圧力開放弁の一例を示す平面図である。
図4B】第1閉状態にある圧力開放弁の一例を示す断面図である。
図5A】弁部材の一例を示す斜視図である。
図5B】起点部材の一例を示す斜視図である。
図6】充填部材の一例を示す斜視図である。
図7A】開状態にある圧力開放弁の一例を示す平面図である。
図7B】開状態にある圧力開放弁の一例を示す断面図である。
図8A】第2閉状態にある圧力開放弁の一例を示す平面図である。
図8B】第2閉状態にある圧力開放弁の一例を示す断面図である。
図9A】第1閉状態における充填部材と起点部材との位置関係を示す斜視図である。
図9B】開状態における充填部材と起点部材との位置関係を示す斜視図である。
図9C】第2閉状態における充填部材と起点部材との位置関係を示す斜視図である。
図10】ベース部及びエンドロックの一例を示す背面図である。
図11】エンドロックの一例を示す背面図である。
図12】ベース部の第1溝の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0016】
図1は、圧力開放弁10の一例を示す斜視図である。圧力開放弁10は、筐体100の表面に取り付けられる。筐体100は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。筐体100は、表面101及び裏面102を含む。表面101は、筐体100の外部の雰囲気に接している。裏面102は、筐体100によって密閉されている内部の空間に接している。
【0017】
圧力開放弁10は、筐体100の内部の圧力が閾値を超えると、筐体100の内部のガスなどの流体を外部に放出するよう動作する。筐体100の内部の圧力のことを、内圧とも称する。
【0018】
図2は、圧力開放弁10が取り付けられていない状態の筐体100を示す平面図である。筐体100は、筐体100を貫通する開口部103を含む。圧力開放弁10は、開口部103を覆うよう筐体100に取り付けられている。圧力開放弁10は、筐体100の表面101よりも上方に位置する。
【0019】
開口部103は、平面視において略円形の外縁を有していてもよい。符号103eは、開口部103の包絡円である。包絡円103eは、平面視において開口部103の外縁を包絡する円形の線によって構成される。平面視とは、筐体100の表面101の法線方向に沿って対象を見ることを意味する。
【0020】
筐体100は、開口部103に接し、包絡円103eから開口部103の中心に向かって突出する複数の突出部104を含んでいてもよい。例えば、筐体100は、3つの突出部104を含んでいてもよい。複数の突出部104は、包絡円103eの円周方向に沿って等間隔で配置されていてもよい。突出部104には、締結具が挿入される締結孔105が形成されている。締結孔105は、包絡円103eよりも内側に位置している。
【0021】
図3は、圧力開放弁10を示す分解図である。圧力開放弁10は、ベース部20、弁部材30、起点部材35及び充填部材40を少なくとも備える。圧力開放弁10は、弾性部材50、エンドロック60、シール部材70などを更に備えていてもよい。
【0022】
バッテリーパックなどの筐体100が正常に動作しているとき、筐体100の開口部103は弁部材30によって閉鎖されている。この状態を、第1閉状態とも称する。第1閉状態のときの弁部材30の位置を第1閉位置とも称する。
【0023】
筐体100の内部の圧力が増加し、圧力が閾値を超えると、弁部材30が第1閉位置から開位置へ移動する。これにより、筐体100の開口部103が開放され、筐体100の内部のガスなどの流体が外部へ放出される。弁部材30が開位置にある状態を、開状態とも称する。
【0024】
流体が外部へ放出されると、筐体100の内部の圧力が減少する。圧力が閾値を下回ると、弁部材30が開位置から第2閉位置へ移動する。これにより、筐体100の開口部103が弁部材30によって再び閉鎖される。この状態を、第2閉状態とも称する。
【0025】
圧力開放弁10の各構成要素について説明する。図4Aは、第1閉状態にある圧力開放弁10の一例を示す平面図である。図4Bは、図4Aの圧力開放弁10の、線IVB-IVBに沿った断面図である。
【0026】
(ベース部)
ベース部20は、筐体100の開口部103に部分的に重なるよう筐体100に固定されている。図3に示すように、ベース部20は、ハウジング21、脚部22及び締結部23を含んでいてもよい。
【0027】
図3及び図4Bに示すように、ハウジング21は、平面視において筐体100の開口部103に重なる上部211と、上部211から下方に広がる側部212と、を含む。上部211は、平面視において円形を有していてもよい。ハウジング21の上部211には、上部211を貫通する中央開口24が形成されていてもよい。
【0028】
脚部22は、ハウジング21の側部212に連結されている。脚部22は、平面視においてハウジング21から外側へ延びている。脚部22は、平面視において筐体100の表面101に重なる端部を含む。ベース部20は、複数の脚部22を含んでいてもよい。例えば、ベース部20は、3つの脚部22を含んでいてもよい。複数の脚部22は、ハウジング21の周方向に沿って等間隔で配置されていてもよい。
【0029】
脚部22には締結部23が形成されていてもよい。締結部23は、筐体100に締結されるベース部20の部分である。締結部23は、例えば、図3に示す締結具25が挿入される孔である。締結具25は、例えばボルトである。締結具25をベース部20の締結部23及び筐体100の締結孔105に挿入し、締結具25をナットなどで固定することにより、ベース部20が筐体100に固定される。
【0030】
ベース部20は、充填部材40が収容される収容部26を含んでいてもよい。収容部26は、圧力開放弁10の周方向において隣り合う2つの脚部22の間に広がっていてもよい。ベース部20は、複数の収容部26を含んでいてもよい。例えば、ベース部20は、3つの脚部22と、3つの収容部26と、を含んでいてもよい。
【0031】
(弁部材)
弁部材30は、平面視において開口部を覆うことができるルーフ部31を少なくとも含む。ルーフ部31は、内圧に応じて第1方向D1において移動できる。第1方向D1は、筐体100の表面101の法線方向である。
【0032】
図4Bに示すように、ルーフ部31は、平面視において筐体100の開口部103を覆う上部311と、上部311から筐体100に向かって広がる側部312と、を含む。上部311は、平面視において円形を有していてもよい。側部312は、円筒形を有していてもよい。
【0033】
図4Bに示すように、ルーフ部31の側部312の下面には溝33が形成されていてもよい。シール部材70が溝33に配置されていてもよい。シール部材70は、例えばガスケットである。シール部材70は、平面視において筐体100の開口部103を囲んでいる。第1閉状態及び第2閉状態において、シール部材70は、弁部材30のルーフ部31及び筐体100の表面101に接している。このため、開口部103が閉鎖される。
【0034】
図5Aは、弁部材30の一例を示す斜視図である。弁部材30は、ルーフ部31の中心から下方へ第1方向D1に沿って延びる軸部32を含んでいてもよい。軸部32の下端には、エンドロック60との連結のための係合部34が形成されていてもよい。軸部32は、ルーフ部31から開口部103に向かって直線状に延びている。図4Bに示すように、軸部32は、ベース部20の中央開口24に挿入される。
【0035】
図4Bに示すように、軸部32にはエンドロック60が連結されていてもよい。エンドロック60は、例えば、側部61と、側部61に連結され、側部61及び軸部32の下方に位置する下部62と、を含む。側部61は、平面視において軸部32を囲んでいる。側部61は、軸部32に固定されていてもよい。「下方」は、第1方向D1においてルーフ部31から表面101に向かう方向を意味する。「上方」は、第1方向D1において表面101からルーフ部31に向かう方向を意味する。
【0036】
(弾性部材)
弾性部材50は、第1方向D1において弁部材30を筐体100に向けて付勢する。弾性部材50は、第1方向D1における弁部材30の移動に応じて、第1方向D1において伸縮する。弾性部材50は、例えばコイルスプリングである。
【0037】
弾性部材50は、上端及び下端を含む。弾性部材50の上端は、ベース部20に接している。例えば、弾性部材50の上端は、ベース部20のハウジング21の上部211に接している。弾性部材50の下端は、エンドロック60の下部62に接している。弁部材30の軸部32は、弾性部材50の内部に挿入されている。
【0038】
(充填部材)
充填部材40は、第1方向D1においてベース部20と弁部材30のルーフ部31との間に位置する。充填部材40は、封止された消火剤42を少なくとも含む。
【0039】
圧力開放弁10が第1閉状態及び開状態にあるとき、消火剤42は封止されている。圧力開放弁10が第2閉状態になると、消火剤42の封止が起点部材35によって破壊される。このため、消火剤42が充填部材40から放出される。
【0040】
図6は、充填部材40の一例を示す斜視図である。充填部材40は、消火剤42と、消火剤42が収容される容器41と、容器41を封止するフィルム43と、を含んでいてもよい。
【0041】
容器41は、例えば、収容部411、外縁部412及び内縁部413を含む。収容部411は、消火剤42を収容する。外縁部412は、収容部411の上端の外側部分から水平方向に広がっている。水平方向は、第1方向D1に直交する方向である。「外側」は、平面視における圧力開放弁10の中心から離れる方向を意味する。外縁部412は、平面視において円形の輪郭を有していてもよい。内縁部413は、収容部411の上端の内側部分から水平方向に広がっている。「内側」は、平面視における圧力開放弁10の中心に向かう方向を意味する。外縁部412及び内縁部413は、容器41の上面を構成している。フィルム43は容器41の上面に接合される。
【0042】
内縁部413には中央開口414が形成されていてもよい。同様に、フィルム43には中央開口431が形成されていてもよい。弁部材30の軸部32が中央開口414及び中央開口431に挿入される。
【0043】
容器41は、外縁部412から内縁部413まで水平方向に広がる連結部415を含んでいてもよい。容器41は、連結部415を貫通する貫通孔416を含んでいてもよい。同様に、フィルム43は、平面視において貫通孔416に重なる貫通孔432を含んでいてもよい。第1閉状態において、起点部材35の先端が貫通孔416及び貫通孔432に挿入される。
【0044】
貫通孔416及び貫通孔432は、圧力開放弁10が第1閉状態にあるときに起点部材35が位置する待機部として機能する。待機部は、起点部材35が充填部材40に接触しない状態を実現するための構成要素である。待機部の具体的な構造は、貫通孔には限られない。図示はしないが、待機部は、切り欠き、スリット、溝などであってもよい。
【0045】
(カバー)
カバー45は、充填部材40のフィルム43に被せられる。図3に示すように、カバー45には、カバー45を貫通する貫通孔46が形成されていてもよい。貫通孔46は、平面視においてフィルム43の貫通孔432に重なっている。貫通孔46は、圧力開放弁10が第1閉状態及び第2閉状態にあるときに起点部材35がカバー45に接触しないよう構成されていてもよい。
【0046】
カバー45は、カバー45の外縁に位置する複数の爪47を含んでいてもよい。複数の爪47が容器41の外縁部412に引っ掛けられることにより、カバー45が容器41に固定される。
【0047】
(起点部材)
起点部材35は、圧力開放弁10が第2閉状態にあるときに消火剤42を充填部材40から放出させるための部材である。図5Aに示すように、起点部材35は、弁部材30のルーフ部31の下面に取り付けられていてもよい。
【0048】
図5Bは、起点部材35の一例を示す斜視図である。起点部材35は、充填部材40のフィルム43を突き破る鋭利構造を有する。例えば、起点部材35は、下方に向かって突出した鋭い先端36を含む。
【0049】
次に、圧力開放弁10の動作を説明する。
【0050】
図4Bに示すように、弁部材30が第1閉位置にあるとき、起点部材35の先端36は、容器41の貫通孔416、フィルム43の貫通孔432及びカバー45の貫通孔46に挿入されている。すなわち、起点部材35の先端36は、待機部に位置している。
【0051】
弁部材30が第1閉位置にあるとき、弾性部材50は、弁部材30を筐体100に向けて付勢する付勢力F1を生じさせている。例えば、弾性部材50は、縮んだ状態にある。このため、弾性部材50には復元力が生じている。弾性部材50によってエンドロック60の下部62が下方に押されることにより、弁部材30が下方へ付勢される。このため、弁部材30に取り付けられているシール部材70が、筐体100の表面101に接する。これにより、筐体100の内部の空間が密閉される。
【0052】
図7Aは、開状態にある圧力開放弁10の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aの圧力開放弁10の、線VIIB-VIIBに沿った断面図である。筐体100の内圧が閾値を超えると、内圧が弁部材30に加える力が、弾性部材50が弁部材30に加える付勢力F1よりも大きくなる。この結果、図7Bにおいて矢印M1で示されるように、弁部材30が上方に移動する。弁部材30は、内圧が弁部材30に加える力と、弾性部材50が弁部材30に加える力とが釣り合うまで、上方に移動する。起点部材35、エンドロック60及びシール部材70も、弁部材30とともに上方に移動する。開状態において、弾性部材50は、第1閉状態の場合の弾性部材50よりも縮んでいる。
【0053】
圧力開放弁10は、カム構造を備える。カム構造は、弁部材30の軸部32を中心とする周方向において、第1閉位置にあるときの弁部材30の周方向位置と、第2閉位置にあるときの弁部材30の周方向位置とを異ならせるためのものである。カム構造は、弁部材30の軸部32を中心とする周方向において、第1閉位置にあるときの弁部材30の周方向位置と、開位置にあるときの弁部材30の周方向位置とを異ならせてもよい。例えば図7Aにおいて周方向の矢印M2で示されるように、弁部材30は、第1方向D1において弁部材30が上方へ移動する間に、周方向において時計回りに角度θ1だけ回転してもよい。これにより、弁部材30に取り付けられている起点部材35の、周方向における位置も変化する。例えば図7Bに示すように、平面視において起点部材35の先端36がフィルム43に重なる位置へ、起点部材35が移動する。
【0054】
流体が外部に放出されるにつれて、内圧が低下する。内圧が弁部材30に加える力が、弾性部材50が弁部材30に加える力よりも小さくなると、弾性部材50の復元力によって弁部材30が下方へ移動し、弁部材30が開口部103を再び閉鎖する。すなわち、図8Bにおいて矢印M3で示されるように、弁部材30が第2閉位置へ向かって下方に移動する。図8Aは、第2閉状態にある圧力開放弁10の一例を示す平面図である。図8Bは、図8Aの圧力開放弁10の、線VIIIB-VIIIBに沿った断面図である。図8Aに示すように、弁部材30が開位置から第2閉位置へ移動する間には、周方向における弁部材30の移動が生じなくてもよい。
【0055】
弁部材30が第2閉位置に移動すると、図8Bに示すように、起点部材35の先端36が充填部材40のフィルム43を突き破る。この結果、充填部材40の容器41の内部が、フィルム43の破断部を介して、容器41の外部に連通する。筐体100の内圧の上昇が、筐体100の内部で生じた火災に起因している場合、容器41の内部の圧力も上昇している。このため、フィルム43に破断部が形成されると、容器41の内部の消火剤42が容器41の外部へ放出される。
【0056】
容器41の外部へ放出された消火剤42は、例えば、ルーフ部31の下面に衝突した後、重力によって落下して筐体100の内部に入る。これにより、筐体100の内部の火災が消火される。
【0057】
本実施の形態においては、消火剤42が充填部材40から放出されるとき、圧力開放弁10が第2閉状態にある。このため、圧力開放弁10の外部の酸素が筐体100の内部に流入することが防がれる。また、消火剤42が圧力開放弁10の外部へ流出することが防がれる。従って、本実施の形態によれば、筐体100の開口部103が開放されている状態で消火剤が放出される場合に比べて、消火に要する時間を短くでき、且つ、消火に要する消火剤の量も削減できる。また、本実施の形態によれば、火災を感知する感知センサのような高価な部品が不要なので、圧力開放弁10を低いコストで提供できる。
【0058】
図9A~9Cを参照して、充填部材40と起点部材35との位置関係を詳細に説明する。
【0059】
図9Aは、第1閉状態における充填部材40と起点部材35との位置関係を示す斜視図である。起点部材35は、カバー45の貫通孔46及びフィルム43の貫通孔432に挿入されている。
【0060】
図9Bは、開状態における充填部材40と起点部材35との位置関係を示す斜視図である。第1閉状態から開状態への遷移において、起点部材35は、矢印M1で示すように、第1方向D1において上方に移動し、且つ、矢印M2で示すように、周方向において移動する。
【0061】
図9Cは、第2閉状態における充填部材40と起点部材35との位置関係を示す斜視図である。開状態から第2閉状態への遷移において、起点部材35は、矢印M3で示すように、第1方向D1において下方に移動する。この結果、起点部材35がフィルム43に突き刺さる。
【0062】
周方向における弁部材30、起点部材35及びエンドロック60の移動を実現するためのカム構造の一例を、図10~12を参照して説明する。
【0063】
図10は、ベース部20及びエンドロック60の一例を示す背面図である。エンドロック60は、下部62から外側に突出した1つ又は2つ以上の突起を含んでいてもよい。例えば、エンドロック60は、第1突起63A及び第2突起63Bを含んでいてもよい。第1突起63A及び第2突起63Bは、周方向において180°離れていてもよい。ベース部20の側部212には、中央開口24に面し、エンドロック60の突起が移動可能な溝が形成されていてもよい。図11は、エンドロック60の突起及びベース部20の溝を拡大して示す背面図である。例えば、ベース部20は、第1突起63Aが移動可能な第1溝24Aと、第2突起63Bが移動可能な第2溝24Bと、を含んでいてもよい。
【0064】
図12は、ベース部20の第1溝24Aの一例を示す斜視図である。第1溝24Aは、上方へ向かうにつれて周方向において変位する傾斜面241を含んでいてもよい。図示はしないが、第2溝24Bも、同様の傾斜面を含んでいてもよい。
【0065】
図12において、符号P1が付された黒丸は、第1閉状態のときの第1突起63Aの位置を表す。符号P2が付された黒丸は、開状態のときの第1突起63Aの位置を表す。第1閉状態から開状態への遷移において、エンドロック60は弁部材30とともに上方へ移動する。第1突起63Aが傾斜面241に接している状態でエンドロック60が上方へ移動すると、エンドロック60は、周方向における力を傾斜面241から受ける。この結果、第1閉状態から開状態への遷移において、エンドロック60、弁部材30及び起点部材35が、周方向において移動できる。
【0066】
図12において、符号P3が付された黒丸は、第2閉状態のときの第1突起63Aの位置を表す。開状態から第2閉状態への遷移において、エンドロック60は弁部材30とともに下方へ移動する。第2閉状態のときの第1突起63Aの位置P3は、周方向において、第1閉状態のときの第1突起63Aの位置P1と異なる。このように、ベース部20の溝及びエンドロック60の突起が、カム構造として機能できる。
【0067】
(圧力開放弁の製造方法)
圧力開放弁10の製造方法の一例を説明する。
【0068】
弁部材30に起点部材35を取り付ける。続いて、弁部材30の溝33にシール部材70を取り付ける。
【0069】
ベース部20に締結具25を取り付ける。続いて、ベース部20に充填部材40を組み合わせる。続いて、充填部材40にカバー45を被せる。続いて、弁部材30とベース部20とを組み合わせる。
【0070】
続いて、ベース部20の中央開口24に弾性部材50を挿入する。続いて、弾性部材50の内側にエンドロック60の側部61を挿入する。エンドロック60で弾性部材50を圧縮した後、エンドロック60を周方向で90°回転させる。例えば、エンドロック60の第1突起63Aが図12の位置P0から位置P1へ移動するよう、エンドロック60を回転させる。これにより、エンドロック60と弁部材30の係合部34とが係合し、エンドロック60が弁部材30に対して固定される。このようにして、圧力開放弁10が製造される。
【0071】
上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0072】
(第1変形例)
上述の実施の形態においては、起点部材35が、弁部材30とは別の部材である例を示した。図示はしないが、起点部材35は、弁部材30と一体の部材であってもよい。例えば、ルーフ部31及び起点部材35が樹脂成形によって一体的に形成されてもよい。
【0073】
(第2変形例)
上述の実施の形態においては、充填部材40の容器41が、ベース部20の収容部26とは別の部材である例を示した。図示はしないが、充填部材40の容器41は、ベース部20の収容部26と一体の部材であってもよい。
【0074】
(第3変形例)
上述の実施の形態においては、弁部材30を周方向において移動させるための動力が、ベース部20の溝及びエンドロック60の突起を用いるカム構造によって実現される例を示した。図示はしないが、弁部材30を周方向において移動させるための動力が、コイルスプリングによる回転力によって実現されてもよい。
【0075】
(その他の変形例)
複数の変形例が上述の実施の形態に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 圧力開放弁
20 ベース部
30 弁部材
31 ルーフ部
32 軸部
35 起点部材
40 充填部材
41 容器
42 消火剤
43 フィルム
50 弾性部材
60 エンドロック
100 筐体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12