(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151677
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61M5/158 500H
A61M5/158 500D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065221
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和紀
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL28
4C066NN07
(57)【要約】
【課題】従来の留置針組立体で解決されていない課題を解決することができる、新規な構造の留置針組立体を提供する。
【解決手段】留置針組立体10において、外針ハブ42に収容された針先プロテクタ68には、抜去後の内針16の針先22を覆う一対の保護片72,74が設けられている。外針ハブ42に収容された作動部材120は、内針16の抜去時に保護片72,74を相互に接近させるリング状のプロテクタ作動部122と、プロテクタ作動部122よりも先端側へ延び出す複数の延出片134の先端部分で外周へ突出して、外針ハブ42の内周面に内針16の抜去方向で係止される係止部136とを、備えている。外針ハブ42の内腔を開閉する弁体が設けられず、針先プロテクタ68と作動部材120が外針ハブ42に対して軸方向で突出せずに収容されており、外針ハブ42と作動部材120の係止位置が外針ハブ42の軸方向中央Cよりも先端側とされている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタとを、備える留置針組立体であって、
前記針先プロテクタには、前記内針の側方を延びて前記外針から抜去された該内針の前記針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、
前記外針ハブの内周には、該内針の抜去時に該一対の保護片を相互に接近させるリング状のプロテクタ作動部を有する作動部材が配されており、
該作動部材には、該プロテクタ作動部よりも先端側へ延び出して該外針ハブの内周面に係止される係止部を備えた延出片が設けられており、
該外針ハブの内腔には、弁体が設けられることなく、該針先プロテクタと該作動部材が軸方向外側へ突出しない状態で収容されており、
該外針ハブに対する該作動部材の該係止部の係止位置が、該外針ハブの軸方向の中央よりも先端側に設定されている留置針組立体。
【請求項2】
前記内針ハブは、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された先端接続部を備えており、
該内針ハブの該先端接続部と該外針ハブの該基端開口部との接続部分には、相互の傾動による該内針ハブと該外針ハブとの干渉を防ぐ空間からなる逃し部が周方向で部分的に設けられている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
筒状とされた前記先端接続部の径方向の両側には一対の切欠状部が形成されて、それら切欠状部によって前記逃し部が構成されており、
該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタが、該外針ハブに収容されており、
該先端接続部の内周へ挿入された該針先プロテクタの基端部分が、該切欠状部へ差入れ可能とされている請求項2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記作動部材の基端面には、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された前記内針ハブの先端面に当接して先端側へ押し込まれることで該作動部材を該外針ハブの内周へ挿入配置する当接部が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の留置針組立体。
【請求項5】
基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針とを、備える留置針組立体であって、
前記内針ハブは、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された先端接続部を備えており、
該内針ハブの該先端接続部と該外針ハブの該基端開口部との接続部分には、相互の傾動による該内針ハブと該外針ハブとの干渉を防ぐ空間からなる逃し部が周方向で部分的に設けられている留置針組立体。
【請求項6】
筒状とされた前記先端接続部の径方向の両側には一対の切欠状部が形成されて、それら切欠状部によって前記逃し部が構成されており、
該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタが、該外針ハブに収容されており、
該先端接続部の内周へ挿入された該針先プロテクタの基端部分が、該切欠状部へ差入れ可能とされている請求項5に記載の留置針組立体。
【請求項7】
基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタとを、備える留置針組立体であって、
前記針先プロテクタには、前記内針の側方を延びて前記外針から抜去された該内針の前記針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、
前記外針ハブの内周には、該内針の抜去時に該一対の保護片を相互に接近させるリング状のプロテクタ作動部を有する作動部材が配されており、
該作動部材には、該プロテクタ作動部よりも先端側へ延び出して該外針ハブの内周面に係止される係止部を備えた延出片が設けられており、
該作動部材の基端面には、該外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された前記内針ハブの先端面に当接して先端側へ押し込まれることで該作動部材を該外針ハブの内周へ挿入配置する当接部が設けられている留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析や輸液、採血等の際に血管に穿刺される留置針組立体に関し、特に穿刺後に抜去される内針の針先を保護する針先プロテクタを備えた留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者に対して人工透析や輸液、採血等を行う際に、血管に穿刺状態で留置された留置針が用いられている。留置針は、例えば特開2009-005997号公報(特許文献1)に示されているように、中空の外針を備えており、外針に挿通されて鋭利な針先を有する内針が血管に穿刺された後、内針が外針から抜去されることによって、外針が血管に穿刺された状態で留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血管への穿刺後に抜去された内針で医療従事者や廃棄業者等が指等を誤って刺してしまう誤穿刺事故の発生が懸念され、このような誤穿刺事故による感染症の危険性がある。そこで、誤穿刺事故の発生を防ぐために、抜去された内針の針先を外部に露出しないように覆って保護する針先プロテクタを備えた留置針組立体も採用されている。
【0005】
針先プロテクタは、例えば、特許文献1に示されているように、一対の保護片を備えており、内針の抜去に伴って基端側へ移動する針先プロテクタの一対の保護片がリング状の作動部材によって相互接近方向へ移動させられることにより、それら保護片が内針の針先を覆って誤穿刺を防止する。そして、内針の針先を保護した状態の針先プロテクタは、内針ハブを基端側へ引く力によって作動部材と外針ハブとの係止が解除されて、外針ハブから分離し、内針が外針から離脱する。
【0006】
ところが、特許文献1の構造では、作動部材の全体がリング状とされており、針先プロテクタを閉作動させる部分と外針ハブに係止される部分とが同じ部位であることから、針先プロテクタの一対の保護片を接近変位させることによる反力が、作動部材を外針ハブの内周面に押し当てるように作用する。その結果、作動部材の外針ハブからの離脱に際して、より大きな力を加える必要があった。また、作動部材を外針ハブの内周に収容して軸方向の係止状態で組み付ける際にも、過度に大きな力が必要となるおそれがあった。
【0007】
しかも、内針の引き抜き時には、針先プロテクタが所定量だけ引き抜かれる迄は作動部材が外針ハブへの係止状態へ確実に保持され、且つ、針先プロテクタが所定量だけ引き抜かれた際に作動部材が外針ハブから速やかに離脱する必要がある。ところが、作動部材や外針ハブの寸法誤差等を考慮すると、作動部材と外針ハブとの係止部分の寸法精度の確保が難しく、係止部分において作動部材が不用意に離脱するおそれもあった。
【0008】
また、作動部材の外針ハブへの取付位置が外針ハブの基端開口から離れていることから、作業者が手で内周へ差し入れる挿入作業が難しく、特別なジグを使用して挿入する必要があって、作動部材を外針ハブの内周面へ差し入れて適切な位置に取り付ける作業が困難であった。
【0009】
一方、留置針組立体は、例えば、内針の基端側に設けられた内針ハブが、外針の基端側に設けられた外針ハブに対して、基端側へ分離可能な状態で接続されており、特許文献1のように筒状とされた内針ハブの先端部分が外針ハブの基端部分に挿入されている場合もある。
【0010】
しかしながら、特許文献1のような内針ハブの先端部分が外針ハブの基端部分に挿入された構造では、例えば、留置針組立体と患者の体表面との干渉を避けて抜針操作を容易にするために、留置針組立体の基端部分が患者の体表面から離れるように留置針組立体を変形させながら内針を抜去する場合に、内針ハブの外針ハブへの挿入部分や軸方向の突当て部分が内針ハブの外針ハブに対する傾動を制限することで、留置針組立体の上記変形が制限されてしまうおそれがあった。
【0011】
本発明の解決課題は、上記のような従来の留置針組立体で解決されていない課題の少なくとも1つを解決することができる、新規な構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0013】
第1の態様は、基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタとを、備える留置針組立体であって、前記針先プロテクタには、前記内針の側方を延びて前記外針から抜去された該内針の前記針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、前記外針ハブの内周には、該内針の抜去時に該一対の保護片を相互に接近させるリング状のプロテクタ作動部を有する作動部材が配されており、該作動部材には、該プロテクタ作動部よりも先端側へ延び出して該外針ハブの内周面に係止される係止部を備えた延出片が設けられており、該外針ハブの内腔には、弁体が設けられることなく、該針先プロテクタと該作動部材が軸方向外側へ突出しない状態で収容されており、該外針ハブに対する該作動部材の該係止部の係止位置が、該外針ハブの軸方向の中央よりも先端側に設定されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、作動部材は、外針ハブの内周面に軸方向で係止される係止部が、針先プロテクタを針先保護状態に作動させるプロテクタ作動部よりも先端側に位置しており、それら係止部とプロテクタ作動部が軸方向に延びる延出片によって連結された構造とされている。それゆえ、作動部材がリング状とされて、プロテクタ作動部と係止部が同じ部位で構成される場合に比して、係止部を内周側へ移動し易くすることができて、係止部を外針ハブに対して軸方向で係止させた状態で作動部材を外針ハブの内周へ組み付ける作業が容易になる。更に、内針の抜去に際して、係止部と外針ハブとの係止を比較的に小さな力で解除することができて、内針の抜去を容易にすることができる。
【0015】
作動部材の係止部における外周ハブへの係止位置は、弁体が設けられていない外針ハブ内腔の先端側領域を利用して、外針ハブの軸方向の中央よりも先端側に設定されている。それゆえ、プロテクタ作動部から係止部までの距離や延出片の長さを長く設定することも可能であり、それによって、延出片の内周側への撓み変形を伴う係止部の内周側への移動を比較的に小さな外力を加えることで許容することができる。このように、延出片の長さなどの調節自由度が大きく確保されることにより、内針の抜去時に針先プロテクタを機能させるプロテクタ作動部の部材強度や機能を確保しつつ、作動部材の外針ハブに対する組付け及び分離の容易さや、作動部材の外針ハブに対する係止による位置決め力の大きさなどを、大きな自由度で適切に設定することが可能になる。
【0016】
特に、外針ハブの内径寸法は、一般にルアー挿入等を考慮して基端側よりも先端側の方が小さくされており、内径寸法が小さくされた先端側において、作動部材の外針ハブに対する係止位置を設定したことにより、作動部材の外針ハブに対する係止及び離脱の作動精度の向上を図り得た。即ち、内針の引抜き力の作用に伴って、外針ハブへの係止部位において作動部材を傾動等させるモーメント力は、中心軸から係止部位までの径方向の距離に略比例する。それ故、内径寸法が小さくされた外針ハブの先端側に作動部材を係止させたことで、作動部材の傾動等に伴う外針ハブからの不用意な離脱が効果的に抑えられ得る。
【0017】
本態様の留置針組立体は、外針ハブの内腔を開閉する止血弁等の弁体が設けられていないことから、作動部材よりも先端側に弁体の配設領域を設定する必要がなく、作動部材の係止部を外針ハブの軸方向中央よりも先端側で外針ハブに係止させても、外針ハブが過度に長くなるのを防ぐことができる。それゆえ、患者の血管に外針が穿刺された状態で留置される外針ハブの大型化を回避しながら、作動部材の外針ハブに対する組付けや離脱の容易化が図られる。
【0018】
また、針先プロテクタと作動部材は、何れも外針ハブの内周に収容状態で配されており、外針ハブから軸方向の外側へ突出していない。これにより、針先プロテクタや作動部材に誤って触れることによって、例えば、穿刺後の内針の針先が針先プロテクタで保護されずに外部に露出する等の不具合を防ぐことができる。針先プロテクタと作動部材が外針ハブの内周に収容状態で配されていても、弁体がないことによって、外針ハブの軸方向長さが過度に長くなるのを防ぐことができる。
【0019】
第2の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記内針ハブは、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された先端接続部を備えており、該内針ハブの該先端接続部と該外針ハブの該基端開口部との接続部分には、相互の傾動による該内針ハブと該外針ハブとの干渉を防ぐ空間からなる逃し部が周方向で部分的に設けられているものである。
【0020】
例えば、血管への穿刺状態において内針を外針から抜去する際に、内針ハブの基端側が患者の体表面から遠ざかるように内針ハブを外針ハブに対して相対的に傾動させた状態とする場合があるが、本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブの外針ハブに対する傾動が空隙からなる逃し部によって許容されることから、上述のように内針ハブを傾斜させた状態での内針の抜去が容易になる。
【0021】
逃し部が周方向で部分的に設けられていることから、逃し部を周方向に外れた部分では、内針ハブの先端接続部が外針ハブの内周面に対して径方向で重ね合わされており、内針ハブと外針ハブの傾動が制限されて、内針ハブと外針ハブが意図しない方向に傾くのを防ぐことができる。
【0022】
第3の態様は、第2の態様に記載された留置針組立体において、筒状とされた前記先端接続部の径方向の両側には一対の切欠状部が形成されて、それら切欠状部によって前記逃し部が構成されており、該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタが、該外針ハブに収容されており、該先端接続部の内周へ挿入された該針先プロテクタの基端部分が、該切欠状部へ差入れ可能とされているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブと外針ハブの相対的な傾動に際して、内針ハブの先端接続部と針先プロテクタの基端部分との干渉を防ぐことができて、針先プロテクタの基端部分が先端接続部の内周面に嵌合したり、針先プロテクタの針先保護機能が外力の作用によって阻害されたりする不具合を回避することができる。
【0024】
また、逃し部が内針ハブの先端接続部を径方向に貫通する切欠状部で構成されていることによって、内針ハブと外針ハブの相対的な傾斜角度が制限され難く、例えば内針ハブを外針ハブに対してより大きく傾斜させることも可能になる。
【0025】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記作動部材の基端面には、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された前記内針ハブの先端面に当接して先端側へ押し込まれることで該作動部材を該外針ハブの内周へ挿入配置する当接部が設けられているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、作動部材の基端面に設けられた当接部を内針ハブの先端面で先端側へ押し込むことにより、作動部材を外針ハブに対して基端開口部から挿入する作業の容易化が図られる。しかも、上記のように、作動部材の構造によって、作動部材の外針ハブに対する組付けに必要な力が比較的に小さくされていることから、特別な治具等を用いて作動部材を大きな力で外針ハブに押し込む必要がなく、内針ハブの外針ハブに対する接続作業に際して、作動部材を外針ハブに簡単に組み付けることができる。
【0027】
第5の態様は、基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針とを、備える留置針組立体であって、前記内針ハブは、前記外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された先端接続部を備えており、該内針ハブの該先端接続部と該外針ハブの該基端開口部との接続部分には、相互の傾動による該内針ハブと該外針ハブとの干渉を防ぐ空間からなる逃し部が周方向で部分的に設けられているものである。
【0028】
例えば、血管への穿刺状態において内針を外針から抜去する際に、内針ハブの基端側が患者の体表面から遠ざかるように内針ハブを外針ハブに対して相対的に傾動させた状態とする場合があるが、本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブの外針ハブに対する傾動が空間からなる逃し部によって許容されることから、上述のように内針ハブを傾斜させた状態での内針の抜去が容易になる。
【0029】
逃し部が周方向で部分的に設けられていることから、逃し部を周方向に外れた部分では、内針ハブの先端接続部が外針ハブの内周面に対して径方向で重ね合わされており、内針ハブと外針ハブの傾動が制限されて、内針ハブと外針ハブが意図しない方向に傾くのを防ぐことができる。
【0030】
第6の態様は、第5の態様に記載された留置針組立体において、筒状とされた前記先端接続部の径方向の両側には一対の切欠状部が形成されて、それら切欠状部によって前記逃し部が構成されており、該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタが、該外針ハブに収容されており、該先端接続部の内周へ挿入された該針先プロテクタの基端部分が、該切欠状部へ差入れ可能とされているものである。
【0031】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブと外針ハブの相対的な傾動に際して、内針ハブの先端接続部と針先プロテクタの基端部分との干渉を防ぐことができて、針先プロテクタの基端部分が先端接続部の内周面に嵌合したり、針先プロテクタの針先保護機能が外力の作用によって阻害されたりする不具合を回避することができる。
【0032】
また、逃し部が内針ハブの先端接続部を径方向に貫通する切欠状部で構成されていることによって、内針ハブと外針ハブの相対的な傾斜角度が制限され難く、例えば内針ハブを外針ハブに対してより大きく傾斜させることも可能になる。
【0033】
第7の態様は、基端側に内針ハブが設けられた内針と、基端側に外針ハブが設けられて該内針に外挿される中空の外針と、該外針ハブに収容されて該外針から抜去された該内針の針先を保護する針先プロテクタとを、備える留置針組立体であって、前記針先プロテクタには、前記内針の側方を延びて前記外針から抜去された該内針の前記針先を覆う一対の保護片が相互に対向して設けられており、前記外針ハブの内周には、該内針の抜去時に該一対の保護片を相互に接近させるリング状のプロテクタ作動部を有する作動部材が配されており、該作動部材には、該プロテクタ作動部よりも先端側へ延び出して該外針ハブの内周面に係止される係止部を備えた延出片が設けられており、該作動部材の基端面には、該外針ハブの基端開口部の内周へ挿入された前記内針ハブの先端面に当接して先端側へ押し込まれることで該作動部材を該外針ハブの内周へ挿入配置する当接部が設けられているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、作動部材は、外針ハブの内周面に軸方向で係止される係止部が、針先プロテクタを針先保護状態に作動させるプロテクタ作動部よりも先端側に位置しており、それら係止部とプロテクタ作動部が軸方向に延びる延出片によって連結された構造とされている。それゆえ、リング状のプロテクタ作動部が係止部を兼ねる場合に比して、係止部を内周側へ移動し易くすることができて、係止部を外針ハブに対して軸方向で係止させた状態で作動部材を外針ハブの内周へ組み付ける作業が容易になる。更に、内針の抜去に際して、係止部と外針ハブとの係止を比較的に小さな力で解除することができて、内針の抜去を容易にすることができる。
【0035】
作動部材の基端面に設けられた当接部を内針ハブの先端面で先端側へ押し込むことにより、作動部材を外針ハブに対して基端開口部から挿入する作業の容易化が図られる。しかも、上記のように、作動部材の構造によって、作動部材の外針ハブに対する組付けに必要な力が比較的に小さくされていることから、特別な治具等を用いて作動部材を大きな力で外針ハブに押し込む必要がなく、内針ハブの外針ハブに対する接続作業に際して、作動部材を外針ハブに簡単に組み付けることができる。
【0036】
外針ハブの内腔を開閉する止血弁等の弁体が設けられていないことから、作動部材よりも先端側に弁体の配設領域を設定する必要がなく、作動部材の係止部をプロテクタ作動部よりも先端側で外針ハブに係止させても、外針ハブが過度に長くなるのを防ぐことができる。それゆえ、患者の血管に外針が穿刺された状態で留置される外針ハブの大型化を回避しながら、作動部材の外針ハブに対する組付けや離脱の容易化が図られる。
【0037】
また、針先プロテクタと作動部材は、何れも外針ハブの内周に収容状態で配されており、外針ハブから軸方向の外側へ突出していない。これにより、針先プロテクタや作動部材に誤って触れることによって、例えば、穿刺後の内針の針先が針先プロテクタで保護されずに外部に露出する等の不具合を防ぐことができる。弁体が設けられていないことによって、外針ハブの軸方向長さを長くすることなく、針先プロテクタと作動部材を外針ハブの内周に収容状態で配することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、従来の留置針組立体において未解決の課題の少なくとも1つを解決することが可能になる。
【0039】
すなわち、上記第1,第7の態様に係る発明によれば、作動部材の外針ハブに対する組付け及び離脱の容易化等が図られる。また、上記第5の態様に係る発明によれば、内針ハブの外針ハブに対する傾動の許容が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の第1実施形態としての留置針組立体を示す斜視図
【
図2】
図1に示す留置針組立体の斜視図であって、外針ハブを透視して内部構造を示す斜視図
【
図3】
図1に示す留置針組立体の縦断面図であって、
図4のIII-III断面に相当する図
【
図6】
図1の留置針組立体を構成する内針ユニットを拡大して示す平面図
【
図8】
図1の留置針組立体を構成する外針ユニットを拡大して示す縦断面図であって、
図9のVIII-VIII断面に相当する図
【
図10】
図1の留置針組立体を構成する針先プロテクタを示す斜視図
【
図12】
図10に示す針先プロテクタの縦断面図であって、
図13のXII-XII断面に相当する図
【
図14】
図1の留置針組立体を構成する作動部材を拡大して示す縦断面図であって、
図15のXIV-XIV断面に相当する図
【
図16】
図12に示す針先プロテクタと、
図14に示す作動部材とが、
図8に示す外針ユニットに収容された状態を拡大して示す縦断面図
【
図17】
図1に示す留置針組立体の縦断面図であって、内針の針先保護状態で且つ作動部材が外針ハブから分離していない状態を示す図
【
図18】
図1に示す留置針組立体の斜視図であって、作動部材が外針ハブから分離した状態を示す図
【
図19】
図1の留置針組立体において内針ハブを外針ハブに対して傾動させた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1~
図5には、本発明の第1実施形態としての留置針組立体10が示されている。留置針組立体10は、内針ユニット12と外針ユニット14とを備えている。以下の説明において、上下方向とは
図3中の上下方向を、前後方向とは針軸(中心軸)方向である
図3中の左右方向を、左右方向とは
図5中の上下方向を、それぞれ言う。
【0043】
内針ユニット12は、
図6,
図7にも示すように、内針16と、内針16の基端側に設けられた内針ハブ18とを、備えている。内針16は、例えば医療用ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金等の金属材料で形成されており、先端が刃面20の形成によって鋭利な針先22とされた中空針とされている。内針16の先端部分には、係合部24が形成されている。係合部24は、針先22の近傍における内針16の管壁部分が、周方向で全周に亘って又は部分的に径方向外方に膨出することで形成されており、本実施形態では全周に亘って外周へ突出している。
【0044】
内針ハブ18は、内針16の基端部分に固定されたハブ本体26と、ハブ本体26の基端側に接続されたキャップ28とによって構成されている。ハブ本体26は、全体として略円筒形状とされており、
図7に示すように軸方向に貫通する内腔を備えている。本実施形態のハブ本体26は、軸方向の中間部分が略四角筒形状とされていると共に、その軸方向両側が略円筒形状とされている。ハブ本体26の外周部分には、前方へ突出する位置決め突起29が周方向の一部に形成されている。
【0045】
ハブ本体26には、内周へ突出した先で基端側へ向けて延び出す内針固定部30が一体的に形成されている。そして、内針固定部30に対して内針16の基端部分が挿入されて、接着、溶着、圧入等の手段で固定されている。これによって、ハブ本体26の内腔が、内針16の内腔に連通している。
【0046】
ハブ本体26の先端部分は、先端接続部32とされている。先端接続部32は、全体として略円筒形状とされており、上下方向の両側にそれぞれ逃し部としての切欠状部34が形成されている。切欠状部34は、先端接続部32を上下方向に貫通して形成されており、先端接続部32において周方向で部分的に設けられている。本実施形態の切欠状部34は、先端接続部32の軸方向の全長に亘って連続して形成されている。このような一対の切欠状部34,34が形成されていることによって、先端接続部32は左右方向で対向位置する一対の湾曲板状とされている。先端接続部32の外周面は、後述する外針ハブ42の基端側開口部46の内周面と対応する略円弧断面とされており、本実施形態では基端側開口部46に嵌合可能とされて、先端へ向けて内周へ傾斜するルアーテーパが設定されている。なお、一方の切欠状部34は、内針16の刃面20に対して位置決めされていることが望ましく、本実施形態では刃面20が位置する方向である上方向に配置されている。
【0047】
キャップ28は、全体として、先端側部分が基端側部分よりも小径とされた略段付円筒形状を有しており、基端側の開口部には、フィルタ36が設けられている。フィルタ36は、気体の通過を許容し、液体の通過は阻止する通気性フィルタとされている。このようなフィルタ36としては、例えば、ポリエチレン等の高分子材料と親水性、水溶性または水膨潤性ポリマーを含む材料とを焼結してなる焼結多孔体や、疎水性不織布、多孔質体等からなるフィルタ部材が使用される。
【0048】
そして、キャップ28が、フィルタ36の装着側とは反対側の小径の先端側部分において、ハブ本体26の内腔の基端側開口部に嵌合される等して、ハブ本体26に取り付けられている。これによって、内針ハブ18は、ハブ本体26とキャップ28との組付品として構成されている。なお、キャップ28は、ハブ本体26に対して取外し可能に組み付けられていることが望ましい。
【0049】
ハブ本体26とキャップ28との組付状態において、ハブ本体26の内腔とキャップ28の内腔とが相互に連通されて、それら内腔によってチャンバ38が形成されている。チャンバ38は、先端側において内針16の内腔に連通し、且つ基端側の開口部がフィルタ36によって塞がれている。これにより、内針16を患者に穿刺した際のフラッシュバックによる血液が、内針16の内腔を通じて内針ハブ18のチャンバ38内に流れ込むようになっていると共に、チャンバ38に流れ込んだ血液が基端側から外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ18を形成するハブ本体26とキャップ28の材質は限定されないが、フラッシュバックによるチャンバ38内への血液の流入を外部からの目視で確認できるように、少なくともハブ本体26は透明または半透明の樹脂製であることが望ましい。
【0050】
外針ユニット14は、
図8,
図9に示すように、中空の外針40と、外針40の基端側に設けられた外針ハブ42とを、備えている。外針40は、
図2及び
図4に示されるように、内針16よりも短い長さを有する、内針16に外挿可能な細管からなっている。外針40は、鋭利な針先を有していないが、先端部の外周面が先端側に向けて次第に小径化するテーパ面とされている。これによって、外針40が内針16とともに患者の血管に穿刺される際の抵抗が小さくされている。なお、外針40の先端部付近には、内部を流れる流体の流動効率の向上を図るために、1個または複数の穴が周壁を貫通して設けられていても良い。
【0051】
外針ハブ42は、略円筒状の全体形状を有しており、内腔が基端側開口部46を通じて外方に開口する収容部44を備えている。外針ハブ42の外周面には、周方向で部分的に設けられて上方へ向けて突出する操作突起48が設けられている。外針ハブ42の先端部分の外周面は、左右方向の両側面が左右直交方向に広がる把持面50,50とされている。外針ハブ42の基端部には、外周へ向けて突出する雄ねじ部52が設けられている。そして、シリンジやコネクタ等の外針ハブ42への接続に際して、シリンジやコネクタ等に設けられた雌ねじ部が外針ハブ42の雄ねじ部52に螺合されることで、シリンジやコネクタ等と外針ハブ42との接続が意図せずに解除されるのを防ぐことができる。雄ねじ部52には、周方向の一部に切欠き状の位置決め凹部54が形成されている。
【0052】
外針ハブ42の先端部分は、略円柱状の固定用突起58とされている。固定用突起58には、軸方向に貫通して延びる貫通孔60が設けられており、貫通孔60が収容部44と軸方向で直列的に連続して外針ハブ42の内腔の先端部分を構成している。貫通孔60には外針40の基端部が挿入されており、外針40の基端部が、固定用突起58の内周面と外針40の基端部に挿入される筒状のかしめピン62との間で、挟圧保持されている。これにより、外針40は、基端部において外針ハブ42の先端部に固定されている。なお、外針ハブ42の先端部に固定された外針40の内腔は、かしめピン62の内腔を通じて、外針ハブ42の収容部44内に連通している。
【0053】
外針ハブ42の内周面の軸方向中間部には、全周に亘って周方向に連続して延びる係止溝64が形成されている。係止溝64は、外針ハブ42の基端側に位置する側面が、基端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面形状を呈するテーパ状係止面66とされている。
【0054】
外針40の材質は、特に限定されないが、患者の血管に留置される際に血管壁等を傷付け難くするために、適度な可撓性を有していることが望ましい。外針40の形成材料としては、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン、ポリプロピレン等の各種の軟質樹脂が、好適に用いられる。外針40は、患者の血管に穿刺された状態において、内部を流通する血液等の液体の流れが把握できるように、透明性を有していることが好ましい。また、外針40は、患者の血管内への留置部分の位置が把握できるように、硫酸バリウムや炭酸バリウム等のX線造影剤が形成材料中に配合されていても良い。
【0055】
そして、内針16が、外針ハブ42の基端側開口部46から外針ハブ42の収容部44に挿通されて、収容部44に連通する外針40に挿通されている。また、内針16の基端部に固定された内針ハブ18は、先端部分である先端接続部32が、外針ハブ42の基端側開口部46、換言すれば、外針ハブ42の収容部44の基端部分の内周へ挿入されている。これらにより、内針ユニット12と外針ユニット14とが、着脱可能な状態で互いに組み付けられている。本実施形態では、内針ハブ18の位置決め突起29が、外針ハブ42の位置決め凹部54に差し入れられることにより、内針ハブ18と外針ハブ42が周方向で相対的に位置決めされている。
【0056】
ところで、
図3,
図4に示すように、外針ハブ42の収容部44には、針先プロテクタ68が収容されている。針先プロテクタ68は、
図10~
図13に示すように、所定の形状に切り出された1枚の薄肉の金属プレートを屈曲変形させてなる金属製の単一体(プレス金具単体)とされている。針先プロテクタ68は、基端側横板70と、基端側横板70から先端側へ向けて延びる第1保護片72及び第2保護片74とを、備えている。なお、針先プロテクタ68を形成する金属材料としては、板材とされた形態において弾性を発揮するものが用いられる。例えば、ステンレス鋼や、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金等の各種の金属材料が使用可能である。
【0057】
基端側横板70は、略矩形平板形状とされており、
図12中に一点鎖線で示した針先プロテクタ68の中心軸Pに対して略直交して広がっている。基端側横板70の中心部には、第1内針挿通孔76が形成されている。第1内針挿通孔76は、内針16(
図12に二点鎖線で示す)の外径よりも僅かに大径の円形とされていると共に、内針16における係合部24の形成部分での最大外径(左右外寸)よりも小さな径寸法とされている。
【0058】
第1及び第2保護片72,74は、何れも全体として長手矩形の板状とされている。そして、第1及び第2保護片72,74は、針先プロテクタ68の中心軸Pに対する軸直角方向(上下方向)で相互に対向して配されている。
【0059】
第1保護片72と第2保護片74は、
図10~
図12に示すように、長さ方向の中間部において屈曲させる屈曲部78がそれぞれ設けられている。第1,第2保護片72,74は、それぞれ屈曲部78において比較的に緩やかな鈍角状に屈曲しており、全体として屈曲部78よりも先端側が先端へ向けて上下方向に拡開している。
【0060】
第1,第2保護片72,74の各屈曲部78よりも基端側が、中心軸Pと略平行に広がる第1平行延出部80及び第2平行延出部82とされている。第1,第2平行延出部80,82は、互いに略平行に広がっており、中心軸P方向において対向面間の距離が略一定とされている。
【0061】
第1平行延出部80の幅方向(左右方向)の両側縁部には、第2平行延出部82に向かって突出する第1ストッパ板部84と第2ストッパ板部86とが、互いに対向位置するように一体的に設けられている。それら第1ストッパ板部84と第2ストッパ板部86は、第1平行延出部80と第2平行延出部82の外面に対して中心軸P側に向かって押圧する力が作用した場合に、第2平行延出部82の内面に当接する。これによって、第1,第2平行延出部80,82が中心軸Pに接近する方向への撓み変形及び弾性変形を制限される。
【0062】
第2平行延出部82の幅方向(左右方向)の両側縁部には、第1平行延出部80に向かって突出する第1側板88と第2側板90とが、互いに対向位置するように一体的に設けられている。第1側板88と第2側板90は、
図8,
図9に示すように、全体が中心軸Pと略平行に広がる平板形状とされており、屈曲部等は形成されていない。第1側板88と第2側板90は、対向面間の距離が第1ストッパ板部84と第2ストッパ板部86との対向方向の外寸よりも大きくされており、第1ストッパ板部84と第2ストッパ板部86の外側に配置されている。第1側板88と第2側板90は、第2平行延出部82の幅方向端から上方へ向けて突出していると共に、先端側へ向けて延び出しており、先端位置が第1,第2ストッパ板部84,86よりも前方に設定されて、後述する第1,第2保護部106,108に接近している。このような第1側板88と第2側板90が設けられることによって、針先プロテクタ68は、全体として略有底四角筒形状とされており、中心軸Pの周囲が第1,第2保護片72,74と第1,第2側板88,90とによって囲まれている。
【0063】
第2側板90の先端には、先端側横板92が一体形成されている。先端側横板92は、矩形板形状とされて、針先プロテクタ68の中心軸Pに対して略直交する方向に広がっており、第2側板90から第1側板88へ向けて架け渡されるように延びている。先端側横板92の中央部分には、軸方向に貫通する第2内針挿通孔94が形成されている。第2内針挿通孔94は、内針16の外形に対応する円形断面とされており、内針16における係合部24の形成部分での外径寸法(最大外寸)よりも大きな内径寸法とされて、係合部24が通過可能とされている。
【0064】
先端側横板92の四隅には、それぞれ係合突起96が形成されている。係合突起96は、先端側横板92の辺部から第1,第2側板88,90の対向方向(左右方向)の両外側へ向けて突出しており、突出先端が第1,第2側板88,90よりも左右方向の外側まで達している。
【0065】
第1保護片72と第2保護片74の各屈曲部78よりも先端側の部分は、何れも、先端側横板92側に向かって針先プロテクタ68の中心軸Pから徐々に離間するように傾斜する第1可撓片部98及び第2可撓片部100を備えている。第1,第2可撓片部98,100は、先端側へ向けて上下各一方の外側へ傾斜しており、上下方向の対向面間距離が先端側へ向けて次第に大きくなっている。第1及び第2可撓片部98,100は、相互に接近する方向への移動(変形)が許容されており、第1可撓片部98と第2可撓片部100に相互接近方向の力が作用すると、各屈曲部78の角度変化を伴う第1保護片72と第2保護片74の弾性変形によって、第1可撓片部98と第2可撓片部100が各屈曲部78を中心として相対傾動し、第1可撓片部98と第2可撓片部100の先端部分が相互に接近する。
【0066】
図10,
図11に示すように、第1保護片72と第2保護片74には、屈曲部78よりも基端側の第1,第2平行延出部80,82と屈曲部78よりも先端側の第1,第2可撓片部98,100とに跨って長さ方向に延び、且つ基端側横板70の側に向かって開口するU字形状を呈するスロット102が、それぞれ形成されている。これによって、第1,第2保護片72,74の第1,第2可撓片部98,100に対して、U字状のスロット102にて囲まれた細長い矩形の平板部分からなる後退阻止爪部104が、第1,第2可撓片部98,100と同一方向に且つ同一角度で、針先プロテクタ68の外側に向かって傾斜して、第1,第2平行延出部80,82から一体的に延び出すように形成されている。要するに、第1可撓片部98と第2可撓片部100(第1保護片72と第2保護片74)とに対して、細長い矩形の板状とされた後退阻止爪部104が、切り起こしにより、それぞれ形成されている。各後退阻止爪部104は、スロット102によって第1,第2可撓片部98,100から独立しており、外力の作用によって第1,第2可撓片部98,100が相互接近方向へ変形(変位)する際に、第1,第2可撓片部98,100と一体的に変形(変位)することなく形状が保持される。
【0067】
第1可撓片部98の先端側には、第1保護部106が一体形成されている。また、第2可撓片部100の先端側には、第2保護部108が一体形成されている。
図10~
図13に示すように、第1,第2保護部106,108は、第1,第2可撓片部98,100の各先端から一体的に延び出す板状部分であって、先端側部分が針先プロテクタ68の内側へ「くの字」状に折り返されてなる屈曲板状の全体形状を有している。即ち、第1保護部106は、第1可撓片部98から先端側へ向けて中心軸Pへの接近方向に傾斜して延びる第1保護板部110と、第1保護板部110から基端側(後側)へ向けて中心軸Pへの接近方向に傾斜して延びる第1返し片112とを、一体的に備えている。第2保護部108は、第2可撓片部100から先端側へ向けて中心軸Pへの接近方向に傾斜して延びる第2保護板部114と、第2保護板部114から基端側へ向けて中心軸Pへの接近方向に傾斜して延びる第2返し片116とを、一体的に備えている。なお、第1,第2保護板部110,114の第1,第2可撓片部98,100からの延出長さ寸法は、第1,第2返し片112,116の第1,第2保護板部110,114からの延出長さ寸法よりも十分に大きくされている。
【0068】
第1保護部106の第1保護板部110には、幅方向の両側の端縁部に側方蓋板部118がそれぞれ一体形成されている。側方蓋板部118は、略二等辺三角形の板状とされており、屈曲板形状とされた第1保護部106の幅方向両側の開口部が、2つの側方蓋板部118,118によって覆蓋されている。
【0069】
また、針先プロテクタ68には、
図2~
図4に示すように、作動部材120が取り付けられている。作動部材120は、
図14,
図15にも示すように、プロテクタ作動部としての作動リング部122を備えている。作動リング部122は、略矩形リング状(枠状)とされており、針先プロテクタ68の屈曲部78よりも基端側部分が挿入可能な大きさ及び形状の中心孔を有している。作動リング部122の基端面には、係止凹所124が開口している。係止凹所124は、矩形リング状とされた作動リング部122の上下一対の対辺部分にそれぞれ形成されており、針先プロテクタ68の後退阻止爪部104の先端部分が挿入可能な形状、大きさ、位置で設けられている。また、作動リング部122における左右一対の対辺部分の基端面は、それぞれ内針ハブ18の先端接続部32が当接する当接部126とされている。当接部126は、本実施形態では平面とされているが、例えば、基端側へ突出する突部等が設けられていてもよい。
【0070】
作動部材120は、作動リング部122から先端側へ突出する係止用突出部128を備えている。係止用突出部128は、作動リング部122から延び出す一対の基部130,130と、基部130,130の先端側に連続する円筒状の筒状部132と、筒状部132から先端側へ向けて延び出す一対の延出片134,134とを、一体で備えている。
【0071】
基部130,130は、全体として前後方向で長手とされた板状であって、作動リング部122と連続する基端部分が略矩形平板形状とされていると共に、筒状部132と連続する先端部分が周方向に略円弧状に湾曲する湾曲板形状とされている。基部130は、基端部分よりも先端部分が薄肉とされている。一対の基部130,130は、矩形リング状とされた作動リング部122の上下各一方の辺部から先端側へ向けて突出しており、上下方向で相互に対向している。
【0072】
筒状部132は、基部130,130の先端側に一体形成されており、それら基部130,130の先端を周方向で相互に連結している。筒状部132は、外針ハブ42に挿入可能な外径寸法を有していると共に、針先プロテクタ68が通過可能な内径寸法を有している。筒状部132は、作動部材120の軸方向中央C(
図4,
図8参照)よりも先端側に位置していることが望ましく、より好適には、作動部材120の先端から作動部材120の軸方向長さの1/3の範囲内に位置している。
【0073】
延出片134,134は、それぞれ略円弧状に湾曲する断面形状で軸方向に延びる板状とされており、筒状部132から先端側へ突出している。延出片134,134は、上下方向で相互に離れて対向している。延出片134,134は、基端が筒状部132によって相互に連結されて位置決めされていると共に、先端が自由端とされており、上下方向の弾性的な撓み変形、特に対向方向内側へ向けた撓み変形が許容されている。各延出片134の先端部には、外周へ向けて突出する係止部136がそれぞれ形成されている。本実施形態の係止部136は、延出片134の周方向全長に亘って連続して設けられているが、周方向で部分的に設けられていてもよい。
【0074】
なお、作動部材120は、例えば、樹脂、金属、ゴム、樹脂エラストマ等で形成されていることが望ましい。これにより、針先プロテクタ68の第1,第2可撓片部98,100を相互に接近変位するように変形させ得る剛性を作動リング部122に設定しながら、充分に小さな入力によって一対の延出片134,134の撓み変形を許容することができる。尤も、作動部材120の形成材料は、特に限定されるものではない。また、作動部材120の基端部に作動リング部122が設けられていると共に、作動部材120の先端部分に筒状部132が設けられていることにより、作動部材120の変形剛性が調節されている。
【0075】
作動部材120は、
図16に示すように、作動リング部122が針先プロテクタ68の基端部分に外挿された状態で、針先プロテクタ68に組み付けられている。従って、針先プロテクタ68は、基端部分を除く屈曲部78,78よりも先端側が、作動部材120の係止用突出部128における一対の基部130,130の対向面間に配されている。針先プロテクタ68は、外側へ傾斜して延びる第1,第2可撓片部98,100が、基部130,130に接触することなく、基部130,130の対向方向と直交する側方(上下方向)に位置している。
【0076】
作動部材120は、外針ハブ42の収容部44に挿入状態で配置されている。作動部材120は、係止用突出部128の一対の延出片134,134の先端部に設けられた係止部136,136が外針ハブ42の内周面に開口する係止溝64に差し入れられている。そして、係止部136,136が、外針ハブ42の内周面を構成する係止溝64のテーパ状係止面66に対して、軸方向で係止されている。これにより、作動部材120が外針ハブ42から基端側への抜けを制限された状態で、外針ハブ42の内周空間である収容部44に収容されている。
【0077】
外針ハブ42の係止溝64は、外針ハブ42の軸方向の中央Cよりも先端側に形成されており、作動部材120の外針ハブ42に対する係止位置が、外針ハブ42の軸方向中央Cよりも先端側に設定されている。作動部材120の係止部136,136と外針ハブ42の内周面(テーパ状係止面66)との係止位置は、好適には、外針ハブ42の先端から外針ハブ42の軸方向長さ寸法の1/3までの範囲内に設定されている。
【0078】
図16に示すように、外針ハブ42の収容部44に配された作動部材120と、作動部材120に組み付けられた針先プロテクタ68は、外針ハブ42の基端側開口部46から突出することなく、全体が外針ハブ42の内周に収容状態で配置されている。これにより、外針ハブ42に収容された状態の針先プロテクタ68及び作動部材120に指先等で触れてしまう事態が防止されている。本実施形態では、針先プロテクタ68の基端が作動部材120の基端よりも外針ハブ42の基端側開口部46に近い位置まで突出しているが、針先プロテクタ68の基端も基端側開口部46から突出していない。外針ハブ42の基端部は針先プロテクタ68よりも基端側へ延び出しており、好適には外針ハブ42の針先プロテクタ68よりも基端側への延出長さLが1mm以上とされていれば、針先プロテクタ68への接触がより効果的に防止される。
【0079】
外針ハブ42には、外針ハブ42の内腔を開閉させて当該内腔の連通と遮断を切り替える弁体が設けられていない。従って、外針ハブ42の内腔を構成する収容部44において、作動部材120と外針ハブ42との係止位置よりも先端側に弁体の配設用スペースを確保する必要がなく、外針ハブ42の軸方向の長さを短くしながら、針先プロテクタ68と作動部材120の全体を収容部44に収容状態で配置することができる。
【0080】
図3,
図4に示すように、外針ハブ42に内針ハブ18が接続された状態において、作動部材120よりも基端側へ突出した針先プロテクタ68の基端部は、内針ハブ18の先端接続部32に挿入されている。
図3,
図5に示すように、先端接続部32の切欠状部34,34は、針先プロテクタ68の基端部に対して上下両側に位置しており、針先プロテクタ68の基端部よりも左右寸法が大きくされている。これにより、仮に内針ハブ18と針先プロテクタ68が上下方向で相対的に傾動した場合に、針先プロテクタ68の基端部は、内針ハブ18の先端接続部32の切欠状部34に対して、嵌合することなく差入れ可能とされている。
【0081】
また、外針ハブ42に接続された内針ハブ18は、
図4に示すように、先端接続部32の先端面が、作動部材120における作動リング部122の基端面に設けられた当接部126,126に当接している。これにより、作動部材120が外針ハブ42に対して軸方向の適切な位置に位置決めされている。
【0082】
針先プロテクタ68と作動部材120は、予め内針16に装着されており、内針ユニット12と外針ユニット14との組付けによって、外針ハブ42の収容部44に収容される。針先プロテクタ68と作動部材120は、外針ハブ42の基端側開口部46よりも先端側に位置する収容状態で外針ハブ42に取り付けられるが、作動部材120の当接部126,126を内針ハブ18の先端接続部32の先端面によって先端側へ押すことによって、作動部材120と、作動部材120に組み付けられた針先プロテクタ68とを、外針ハブ42の内周へ押し込んで挿入配置することができる。
【0083】
このように作動部材120の基端面の当接部126,126を内針ハブ18で先端側へ押し込むことにより、作動部材120の係止部136,136を外針ハブ42の軸方向中央Cよりも先端側に形成された係止溝64に差し入れて、係止部136,136を係止溝64のテーパ状係止面66に係止させる作業が容易になる。特に、作動部材120の係止部136,136は、軸方向に延びて上下方向の撓み変形が許容された延出片134,134の先端部分に設けられており、係止溝64に差し入れられる前の外針ハブ42の内周面に対する摺動抵抗が低減されていることから、特別な組付け用の機械や治具等を用いることなく、内針ハブ18を外針ハブ42へ組み付けるために加えられる力によって、簡単に係止溝64へ差し入れることができる。
【0084】
このような構造とされた留置針組立体10は、例えば、輸液、採血、人工透析等に際して、患者の血管に穿刺される。即ち、先ず、鋭利な針先22を備えた内針16が血管に穿刺されることにより、内針16に外挿された外針40が内針16とともに血管へ穿刺される。次に、内針ハブ18に基端側へ引く力を及ぼすことによって、内針ハブ18の外針ハブ42に対する接続を解除して、内針16を外針40から基端側へ引き抜く。
【0085】
留置針組立体10は、内針16の外針40からの抜去に際して、内針16の針先22が針先プロテクタ68によって外部へ露出しないように保護される。即ち、内針16に対して外挿状態で装着された針先プロテクタ68は、作動部材120によって外針ハブ42に対して位置決めされていることから、内針ユニット12が基端側へ引かれて外針ユニット14に対して基端側へ移動すると、針先プロテクタ68は内針16の先端側へ移動する。
【0086】
内針ユニット12が基端側へ引かれて外針ユニット14から基端側へ離れると、
図17にも示すように、外針ハブ42の基端側開口部46が開放される。ここにおいて、針先プロテクタ68や作動部材120が外針ハブ42の基端側開口部46よりも基端側に突出していると、誤って触れることで針先プロテクタ68や作動部材120が外針ハブ42から意図せずに外れてしまって、内針16の針先22が適切に保護されないおそれがある。そこで、留置針組立体10では、針先プロテクタ68及び作動部材120が外針ハブ42の基端側開口部46から突出することなく、外針ハブ42の内周に全体に亘って収容されている。これにより、内針16の抜去中に外針ハブ42の基端側開口部46が開放されても、針先プロテクタ68や作動部材120に誤って触れる事態が生じ難く、針先プロテクタ68と作動部材120の誤作動を防いで、内針16の針先22を高い信頼性で適切に保護することができる。
【0087】
針先プロテクタ68は、
図17に示すように、内針16の先端付近に形成された係止部136,136が針先プロテクタ68の基端側横板70の第1内針挿通孔76に係止される位置まで、内針16の先端側へ移動する。内針16の係止部136,136が針先プロテクタ68の基端側横板70に係止された状態において、内針16の針先22は、針先プロテクタ68の第1,第2保護部106,108の先端よりも基端側で、第1,第2保護片72,74の対向面間に位置している。
【0088】
内針16の係止部136,136が針先プロテクタ68の基端側横板70に係止された状態で、内針ユニット12を更に基端側へ引くと、針先プロテクタ68に対して基端側への外力が作用する。これにより、針先プロテクタ68が外針ハブ42に対して位置決めされた作動部材120に対して基端側へ相対変位する。そして、針先プロテクタ68の第1,第2保護片72,74における第1,第2可撓片部98,100は、作動部材120の作動リング部122に挿入されることによって、軸方向に対する傾斜角度が小さくなる態様で相互に接近する。その結果、第1,第2可撓片部98,100の先端側に設けられた第1,第2保護部106,108が相互に接近して、内針16の先端側を覆う位置へ移動する。これにより、内針16の針先22の前方が、第1保護片72の先端部分を構成する第1保護部106の第1保護板部110及び第1返し片112と、第2保護片74の先端部分を構成する第2保護部108の第2保護板部114及び第2返し片116とによって覆われて保護される。更に、内針16の針先22の上下側方が、第1,第2保護部106,108の第1,第2保護板部110,114で覆われて保護される。更にまた、内針16の針先22の左右側方が、第1保護部106の側方蓋板部118で覆われて保護される。要するに、内針16の針先22が針先プロテクタ68で覆われた針先保護状態では、針先22の前方及び周囲が第1,第2保護部106,108で囲まれるように覆われることによって、抜去後の針先22の外部への露出が防止されており、針先22の誤穿刺が防止されている。
【0089】
内針16の針先22を保護する状態の針先プロテクタ68は、第1,第2可撓片部98,100に形成された後退阻止爪部104,104が、第1,第2可撓片部98,100と独立して上下外方へ突出している。そして、仮に針先プロテクタ68に先端側へ向けた外力が作用した場合には、後退阻止爪部104,104が作動部材120の係止凹所124,124に差し入れられて係止されることにより、針先プロテクタ68の作動部材120に対する先端側への移動量が制限される。これにより、針先プロテクタ68の針先保護状態が、針先プロテクタ68の作動部材120に対する先端側への移動によって解除されるのを防ぐことができる。
【0090】
内針16の針先22が針先プロテクタ68で保護された状態から内針ハブ18を更に基端側へ引くと、先端側横板92の四隅に突出する係合突起96が、作動部材120の作動リング部122に軸方向で係止される。これにより、内針ハブ18を基端側へ引く力が、針先プロテクタ68を介して作動部材120に伝達されて、作動部材120が外針ハブ42に対して基端側へ引かれる。その結果、作動部材120の係止部136,136と外針ハブ42の内周面(テーパ状係止面66)との係止が解除されて、
図18に示すように、作動部材120が内針ユニット12及び針先プロテクタ68と共に外針ハブ42から分離する。本実施形態では、外針ハブ42の内周面における作動部材120の係止部136,136が係止される部分が、基端側へ向けて内周へ傾斜するテーパ状係止面66とされていることから、基端側へ向けて加えられた外力の分力が、係止部136,136を内周側へ押す力として作用し、係止部136,136を支持する延出片134,134を内周側へ撓ませることで、係止部136,136とテーパ状係止面66との係止が解除される。このように、係止部136,136が軸方向に延びる延出片134,134の先端部に設けられていることによって、比較的に小さな入力であっても延出片134,134の撓みによって係止部136,136の内周側への移動が許容されて、係止部136,136とテーパ状係止面66との係止が解除される。
【0091】
係止部136,136とテーパ状係止面66との係止位置は、外針ハブ42の軸方向中央Cよりも先端側に設定されていることから、軸方向においてコンパクトな外針ハブ42であっても、延出片134,134の長さを確保することができて、係止の解除に必要となる力を大きな自由度で調節することができる。特に、留置針組立体10は、外針ハブ42の内腔の連通と遮断を切り替えるための弁体がない構造とされていることから、作動部材120と外針ハブ42との係止位置よりも前方に弁体の配設領域を設定する必要がなく、外針ハブ42の小型化を図りつつ、延出片134,134の長さを確保し易い。
【0092】
外針ハブ42の内径寸法は、基端部分において先細となるルアーテーパが設定されていることから、基端側よりも先端側の方が小さくされており、外針ハブ42の内周面における内径寸法が小さくされた先端側に、係止部136,136の係止部分が設定されている。それゆえ、内針16の引抜き時に外針ハブ42への係止部位において作動部材120を傾動等させるモーメント力が低減されて、作動部材120の傾動等に伴う外針ハブ42からの不用意な離脱が効果的に防止され得る。
【0093】
ところで、内針16を外針40から抜去する際には、内針16が曲がらないように基端側へ真っ直ぐ引き抜くことが望ましいが、実際には、
図19に示すように、例えば内針ハブ18を患者の体表面から離れる方向へ傾けた状態で内針16を抜去することが望ましい場合もある。この場合に、周方向に連続する筒状とされた内針ハブの先端部分が外針ハブに嵌め入れられていると、内針ハブと外針ハブとの接続部分において内針ハブと外針ハブの相対的な傾動が許容されず、内針ハブを十分に傾けられない場合もあった。
【0094】
そこで、留置針組立体10は、外針ハブ42の基端側開口部46に挿入される内針ハブ18の先端部分(先端接続部32)に一対の切欠状部34,34が形成されており、それら切欠状部34,34が位置する径方向では、内針ハブ18と外針ハブ42の接続部分に切欠状部34,34で構成された空間からなる逃し部が設けられている。そして、内針ハブ18と外針ハブ42の傾動に際して、内針ハブ18と外針ハブ42の接続部分の相互干渉が、当該逃し部によって防止されている。これにより、切欠状部34,34が位置する径方向で内針ハブ18の外針ハブ42に対する傾動が許容され易くなっており、例えば、切欠状部34,34を患者の体表面側とその反対側とに配置することにより、内針ハブ18を患者の体表面から離れるように傾斜させ易くなる。
【0095】
切欠状部34,34は、周方向(左右方向)の幅寸法が、針先プロテクタ68の基端部分の左右幅寸法よりも大きくされており、先端接続部32に挿入される針先プロテクタ68の基端部分を切欠状部34,34に対して嵌合させることなく差し入れることが可能とされている。それゆえ、内針ハブ18を外針ハブ42に対して傾動させる場合に、作動部材120を介して外針ハブ42に支持された針先プロテクタ68が内針ハブ18に対して相対的に傾動しても、針先プロテクタ68の基端部分が内針ハブ18の先端部分の内周面に噛み合うことがなく、針先プロテクタ68が内針ハブ18との噛み合いによって外針ハブ42から意図せずに引き抜かれてしまうのを防ぐことができる。
【0096】
切欠状部34,34は、内針ハブ18の先端接続部32において、周方向で部分的に形成されている。これにより、先端接続部32は、切欠状部34,34を周方向に外れた部分において、外周面が外針ハブ42の基端側開口部46の内周面に当接又は僅かに離隔して近接している。それゆえ、内針ハブ18と外針ハブ42は、切欠状部34,34が形成された上下方向と直交する左右方向において、相対的な傾動が制限されている。本実施形態では、内針ハブ18の先端接続部32の外周面と、外針ハブ42の基端側開口部46の内周面とが、それぞれ円弧状の湾曲面とされていることから、先端接続部32が基端側開口部46に挿入されることによって、内針ハブ18と外針ハブ42とが相互に適切な径方向位置で直線的に接続されるように案内される。
【0097】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、作動部材120において、延出片134は、2つに限定されることなく、3つ以上が設けられていてもよく、複数の延出片134は、形状や大きさが相互に異なっていてもよい。
【0098】
作動部材120の係止用突出部128において、基部130,130と筒状部132は必須ではなく、例えば、延出片134が作動リング部122から直接突出するように設けられていてもよい。また、作動部材120の係止部136は、延出片134の先端部分において、周方向で部分的に設けられていてもよい。
【0099】
外針ハブ42の内周面において係止部136の係止面を構成する係止溝64は、全周に亘って連続的に形成されていなくてもよく、周方向で部分的に形成され得る。
【0100】
前記実施形態では、外針ハブ42の内腔には連通と遮断を切り替える弁体が設けられていない構造について説明したが、前記第3~第7の何れか1つの態様に係る留置針組立体では、外針ハブ42の内腔に弁体が配されていてもよい。
【0101】
前記実施形態では、内針ハブ18と外針ハブ42の接続部分に設けられる逃し部が、内針ハブ18の先端接続部32に形成される一対の切欠状部34,34で構成された例を示したが、逃し部は、例えば、内針ハブ18と外針ハブ42の接続部分において、内針ハブ18の外周面と外針ハブ42の内周面との少なくとも一方に開口する凹所によって構成することもできる。
【0102】
前記実施形態では、逃し部としての切欠状部34が、上下両側にそれぞれ形成された構造を例示したが、逃し部は、周方向の少なくとも一部に設けられていればよく、一箇所だけに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 留置針組立体(第1実施形態)
12 内針ユニット
14 外針ユニット
16 内針
18 内針ハブ
20 刃面
22 針先
24 係合部
26 ハブ本体
28 キャップ
29 位置決め突起
30 内針固定部
32 先端接続部(先端接続部)
34 切欠状部(逃し部)
36 フィルタ
38 チャンバ
40 外針
42 外針ハブ
44 収容部
46 基端側開口部
48 操作突起
50 把持面
52 雄ねじ部
54 位置決め凹部
58 固定用突起
60 貫通孔
62 かしめピン
64 係止溝
66 テーパ状係止面
68 針先プロテクタ
70 基端側横板
72 第1保護片
74 第2保護片
76 第1内針挿通孔
78 屈曲部
80 第1平行延出部
82 第2平行延出部
84 第1ストッパ板部
86 第2ストッパ板部
88 第1側板
90 第2側板
92 先端側横板
94 第2内針挿通孔
96 係合突起
98 第1可撓片部
100 第2可撓片部
102 スロット
104 後退阻止爪部
106 第1保護部
108 第2保護部
110 第1保護板部
112 第1返し片
114 第2保護板部
116 第2返し片
118 側方蓋板部
120 作動部材
122 作動リング部(プロテクタ作動部)
124 係止凹所
126 当接部
128 係止用突出部
130 基部
132 筒状部
134 延出片
136 係止部
P 針先プロテクタの中心軸
C 外針ハブの軸方向中央