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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151681
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20241018BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20241018BHJP
   A61B 5/1459 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 21/3577 20140101ALI20241018BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 100
A61B5/1459
G01N21/3577
G01N21/359
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065228
(22)【出願日】2023-04-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】吉永 一貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 新太
(72)【発明者】
【氏名】松田 歩
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
4C077
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB04
2G059CC18
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK03
2G059MM01
4C038KK00
4C038KK01
4C038KL03
4C038KL07
4C038KM01
4C038KM03
4C038KX01
4C038KX02
4C038KY01
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH17
4C077HH21
4C077JJ03
4C077JJ18
4C077JJ20
4C077JJ28
(57)【要約】
【課題】患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる血液浄化装置を提供する。
【解決手段】血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部12と、酸素飽和度を含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、患者の個人データに応じた酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データを取得する機械学習を行って得られた学習モデルを用いて、個人データ入力部12で入力された個人データに適した酸素飽和度データを取得する酸素飽和度データ取得部13と、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部14とを具備したものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、
前記血液回路を流れる血液に赤色光を照射する第1照射部と、
前記血液回路を流れる血液に近赤外光を照射する第2照射部と、
前記第1照射部から照射した前記赤色光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第1受光強度、前記第2照射部から照射した前記近赤外光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第2受光強度をそれぞれ検出する受光部と、
血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部と、
外部機器にて検出した酸素飽和度と前記受光部にて検出した前記第1受光強度と前記第2受光強度とを含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、患者の個人データに応じた酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データを取得する機械学習を行って得られた学習モデルを用いて、前記個人データ入力部で入力された個人データに適した前記酸素飽和度データを取得する酸素飽和度データ取得部と、
前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記酸素飽和度データ取得部で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部と、
を具備した血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液回路を流れる血液に対し、前記第1照射部及び第2照射部から照射される前記赤色光及び近赤外光とは異なる波長の光であって前記血液の酸素飽和度に関わらず血液濃度を検出可能な検出光を照射する第3照射部と、
前記第3照射部から照射した前記検出光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第3受光強度を検出する受光部とを具備し、
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて前記血液濃度の変化に伴って生じる前記酸素飽和度の誤差を吸収する誤差吸収部を具備した請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記誤差吸収部は、
前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて、前記受光部で検出された前記第1受光強度及び第2受光強度の比率を補正する比率補正部と、
を具備し、前記酸素飽和度取得部は、前記検量線記憶部で記憶された前記検量線に基づいて、前記比率補正部で補正された前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を取得する、請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記誤差吸収部は、
前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて、前記検量線記憶部で記憶された検量線を補正する検量線補正部と、
を具備し、前記酸素飽和度取得部は、前記検量線補正部で補正された前記検量線に基づいて、前記受光部で検出された前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を取得する、請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記誤差吸収部は、
前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を求めるための検量線であって前記血液濃度に応じた複数の検量線を予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて、前記検量線記憶部で記憶された複数の検量線のうち特定の検量線を選択する検量線選択部と、
を具備し、前記酸素飽和度取得部は、前記検量線選択部で選択された前記検量線に基づいて、前記受光部で検出された前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を取得する、請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記誤差吸収部は、
前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて、前記第1照射部及び第2照射部で照射される前記赤色光及び近赤外光の発光強度を制御する制御部と、
を具備し、前記酸素飽和度取得部は、前記検量線記憶部で記憶された前記検量線に基づいて、前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記血液の酸素飽和度を取得する、請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記第1照射部で照射される赤色光は、前記血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度より還元ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされ、前記第2照射部で照射される近赤外光は、前記血液に含まれる還元ヘモグロビンに対する吸光度より酸化ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされるとともに、前記第3照射部で照射される検出光は、前記血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度と還元ヘモグロビンに対する吸光度とが略等しい特性を有する波長とされた請求項2~6の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記第1照射部で照射される赤色光は、660nmの波長、前記第2照射部で照射される近赤外光は、880nmの波長とされるとともに、前記第3照射部で照射される検出光は、810nmの波長とされた請求項7記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて、ヘマトクリット値を取得するヘマトクリット値取得部を有する請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記ヘマトクリット値取得部で取得されたヘマトクリット値に基づいて、循環血液量変化率(ΔBV)を求めるBV算出部を有する請求項9記載の血液浄化装置。
【請求項11】
前記第1照射部、第2照射部、第3照射部及び受光部が取り付けられるとともに、前記血液回路の一部を嵌合する嵌合溝が形成された本体部と、
前記本体部に対して開閉可能とされ、閉状態にて前記嵌合溝に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部と、
前記蓋部に形成され、前記第1照射部、第2照射部及び第3照射部から照射された光を吸収する光吸収部と、
を有する請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項12】
前記光吸収部は、前記蓋部を暗色とされた部位、又は光を吸収する材質から成る部位である請求項11記載の血液浄化装置。
【請求項13】
前記嵌合溝は、前記本体部の一端縁部から他端縁部まで延設されるとともに、前記受光部は、前記嵌合溝の中央位置に配設された請求項11記載の血液浄化装置。
【請求項14】
前記第1照射部、第2照射部、第3照射部及び受光部が前記本体部において並設されるとともに、前記受光部は、前記第1照射部、第2照射部及び第3照射部の間に位置する請求項13記載の血液浄化装置。
【請求項15】
血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、
前記血液回路を流れる血液に赤色光を照射する第1照射部と、
前記血液回路を流れる血液に近赤外光を照射する第2照射部と、
前記血液回路を流れる血液に対し、前記第1照射部及び第2照射部から照射される前記赤色光及び近赤外光とは異なる波長の光であって前記血液の酸素飽和度に関わらず血液濃度を検出可能な検出光を照射する第3照射部と、
前記第1照射部から照射した前記赤色光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第1受光強度、前記第2照射部から照射した前記近赤外光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第2受光強度、及び前記第3照射部から照射した前記検出光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第3受光強度をそれぞれ検出する受光部と、
血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部と、を具備し、
外部機器にて検出した酸素飽和度と前記受光部にて検出した前記第1受光強度と前記第2受光強度とを含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、機械学習で前記患者の個人データに応じた前記外部機器にて検出した酸素飽和度と前記第1受光強度と前記第2受光強度にて算出した酸素飽和度との差異関係を取得する機械学習を行って学習モデルを用いて、治療中前記個人データ入力部にて入力された個人データに応じて治療中取得した前記第1受光強度と前記第2受光強度の比率から算出した酸素飽和度を補正することを特徴とする血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、血液を浄化する血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透析治療を行うための血液透析装置は、通常、患者の血液を体外循環させるための動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、動脈側血液回路及び静脈側血液回路にそれぞれ接続され、体外循環する血液を浄化するための血液浄化器としてのダイアライザと、ダイアライザを流れる血液中の余剰水分を除去して除水し得る除水ポンプとを具備しており、血液回路で体外循環する血液を除水しつつ血液浄化治療が可能とされている。
【0003】
従来、例えば特許文献1にて開示されているように、血液浄化治療中において患者の血液の酸素飽和度を測定し得る血液浄化装置について提案されている。かかる従来の血液浄化装置は、血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され易い波長の第1の光と、血液中の還元ヘモグロビンに吸収され易い波長の第2の光を発光部からそれぞれ照射し、その反射光を受光部にて受光して受光強度を検出することにより、血液の酸素飽和度を測定可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-40058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、血液の酸素飽和度を測定する際、例えばヘマトクリット値等の患者の血液濃度の変化に伴って受光部で検出される受光電圧が変化してしまい、取得される酸素飽和度に誤差が生じてしまう虞があった。また、検量線などの酸素飽和度データを用いて酸素飽和度を取得することも考えられるが、その場合、患者の個人差を考慮した酸素飽和度データが必要とされる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一実施形態の血液浄化装置は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、前記血液回路を流れる血液に赤色光を照射する第1照射部と、前記血液回路を流れる血液に近赤外光を照射する第2照射部と、前記第1照射部から照射した前記赤色光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第1受光強度、前記第2照射部から照射した前記近赤外光が前記血液を反射した反射光又は前記血液を透過した透過光を受光することにより取得される第2受光強度をそれぞれ検出する受光部と、血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部と、酸素飽和度を含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、患者の個人データに応じた酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データを取得する機械学習を行って得られた学習モデルを用いて、前記個人データ入力部で入力された個人データに適した前記酸素飽和度データを取得する酸素飽和度データ取得部と、前記第1受光強度及び第2受光強度の比率から前記酸素飽和度データ取得部で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部と、を具備したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】同血液浄化装置におけるヘマトクリットセンサを示す正面図
図3図2におけるIII-III線断面図
図4図2におけるIV-IV線断面図
図5】同血液浄化装置において検量線を補正する補正係数を得るための試験結果を示すグラフ
図6】同血液浄化装置において適用される検量線を示すグラフ
図7】同血液浄化装置において酸素飽和度を取得する工程を示すフローチャート
図8】本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図9】同血液浄化装置において酸素飽和度を取得する工程を示すフローチャート
図10】本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図11】同血液浄化装置において適用される検量線を示すグラフ
図12】同血液浄化装置において酸素飽和度を取得する工程を示すフローチャート
図13】本発明の第4の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図14】同血液浄化装置において酸素飽和度を取得する工程を示すフローチャート
図15】同血液浄化装置において個人データ(患者A及び患者B)に適した酸素飽和度データを示すグラフ
図16】同血液浄化装置において機械学習の概念を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化器)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に対して透析液の供給及び排液の排出を行う透析装置本体6と、血液指標検出器7とを具備して構成されている。
【0011】
動脈側血液回路1には、その先端に動脈側穿刺針aがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている。静脈側血液回路2には、その先端に静脈側穿刺針bがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にエアトラップチャンバ5が接続されている。エアトラップチャンバ5には、空気層が形成されており、液体内の気泡を捕捉し得るよう構成されている。
【0012】
血液ポンプ4は、動脈側血液回路1に配設されたしごき型ポンプから成り、血液回路内の液体を駆動方向に流動させ得るものである。すなわち、動脈側血液回路1には、動脈側血液回路1を構成する他の可撓性チューブより軟質かつ大径の被しごきチューブ(動脈側血液回路1の一部)が接続されており、血液ポンプ4には、この被しごきチューブを送液方向にしごくためのローラが配設されている。そして、血液ポンプ4を駆動させると、そのローラが回動して被しごきチューブを送液方向に扱き、内部の液体を駆動方向(ローラの回転方向)に流動させることができる。
【0013】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、ダイアライザ3によって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。すなわち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化するのである。
【0014】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入ポート3a、血液導出ポート3b、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dが形成されており、このうち血液導入ポート3aには動脈側血液回路1が、血液導出ポート3bには静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0015】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸膜が収容されており、かかる中空糸膜の内部が血液の流路とされるとともに、中空糸膜の外周面とダイアライザ3の筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸膜には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されており、このような中空糸膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過することで血液を浄化し得るよう構成されている。
【0016】
一方、透析装置本体6には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ等の送液装置が配設されているとともに、当該送液装置をバイパスするバイパスラインにはダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプが配設されている。さらに、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ3(透析液導入ポート3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ3(透析液導出ポート3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液装置と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインL2を通って排液装置に送られるようになっている。
【0017】
なお、エアトラップチャンバ5には、モニタチューブを介して圧力センサが接続されており、当該エアトラップチャンバ5内の液圧(静脈圧)を計測し得るようになっている。また、エアトラップチャンバ5の上部(空気層側)からは、オーバーフローラインが延設されており、その途中に電磁弁が配設されている。そして、電磁弁を開状態とすることにより、オーバーフローラインを介して、血液回路中を流れる液体(プライミング液等)をオーバーフローし得るようになっている。
【0018】
血液指標検出器7は、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の所定位置に取り付けられ、これら動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を流れる血液に対して光を照射し、その反射光を受光して得られる受光電圧に基づき酸素飽和度、ヘマトクリット値及び循環血液量の変化率(ΔBV)を算出若しくは取得し得るものであり、図2~4に示すように、発光素子(LED)から成る第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10と、受光素子(フォトダイオード)から成る受光部11とを有して構成されている。
【0019】
また、本実施形態に係る血液指標検出器7は、血液回路の一部(可撓性チューブ)を嵌合し得る嵌合溝7aa、7abが形成された本体部7aと、本体部7aに対して開閉可能とされ、閉状態にて嵌合溝7aa、7abに嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部7bと、蓋部7bの開閉状態を検知する検知スイッチgとが形成されており、例えば嵌合溝7aaに動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブ及び嵌合溝7abに静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブをそれぞれ嵌合させ得るようになっている。しかるに、本実施形態においては、嵌合溝7aa、7abに血液回路を構成する可撓性チューブが圧入されており、当該可撓性チューブを強固に固定して検出精度を向上させているが、可撓性チューブを遊嵌させたもの、或いは嵌合させないもの等としてもよい。
【0020】
蓋部7bは、揺動軸Mを介して本体部7aに対して揺動自在に取り付けられており、当該揺動軸Mを中心とした揺動によって開閉可能とされるとともに、閉状態で本体部7aと係止し得るロック部7cが形成されており、当該ロック部7cによるロックによって可撓性チューブを挟持した状態が確実に保持されるようになっている。そして、嵌合溝7aa、7abに動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブ及び静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブをそれぞれ嵌合させた状態で蓋部7bを閉状態とすることにより、本体部7a及び蓋部7bにより可撓性チューブを上下から挟持し得るようになっている。
【0021】
検知スイッチgは、本体部7aにおける嵌合溝7aaと嵌合溝7abとの間に形成されたマイクロスイッチから成り、蓋部7bが揺動軸Mを中心として揺動し、本体部7aに対して近接すると、当該蓋部7bに形成された凸部7baで押圧されてオンするよう構成されている。かかる検知スイッチgのオン、オフにより、蓋部7bの開閉状態を検知することができる。
【0022】
さらに、本体部7aにおける嵌合溝7aa、7abにはスリットα、βがそれぞれ形成されている。これらスリットα、βは、嵌合溝7aa、7abの底面に形成された切り欠きから成り、当該嵌合溝7aa、7abの延設方向に所定寸法に亘って形成されている。また、本体部7aの内部には、プリント基板Kが配設されており、スリットαより内側に第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11が、スリットβより内側に第3照射部10及び受光部11がそれぞれ配置されるようになっている。このようなスリットα、βにより、本体部7aの外側から受光部11に至る外乱光を抑制することができるとともに、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10から照射される光の直線性を向上させることができる。なお、スリットα、βが形成されないものであってもよい。
【0023】
そして、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10からそれぞれ照射された光がスリットαを介して動脈側血液回路内、第3照射部10から照射された光がスリットβを介して静脈側血液回路2内を流れる血液にて反射され、受光部11にてそれぞれ受光し得る構成(反射型センサの構成)とされている。なお、本実施形態に係る血液指標検出器7は、反射型センサとされているが、血液回路を流れる血液に対して光を透過して受光し得る透過型センサを用いるようにしてもよい。
【0024】
しかるに、嵌合溝7aa、7abは、本体部7aの一端縁部(図2中右縁部)から他端縁部(図2中左縁部)まで延設されるとともに、受光部11は、嵌合溝7aa、7abの中央位置に配設されている。さらに、第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11は、本体部7a内に配設された1つのプリント基板K上に直線状に並設されるとともに、受光部11は、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10の間(具体的には、一対の第3照射部10の間)に位置している。すなわち、スリットαには、受光部11の両側に一対の第3照射部10が配置されるとともに、さらにその外側に第1照射部8及び第2照射部9がそれぞれ配置されている。このように、受光部11を発光部(第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10)間に配置することで外乱光による影響を最小限にすることができる。
【0025】
また、蓋部7bにおける第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11と対向する位置には、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10から照射された光を吸収する光吸収部7bbが形成されている。この光吸収部7bbは、例えば黒色などの暗色とされて光を吸収するもの、或いは光を吸収する材質のもの等、何れであってもよい。これにより、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10から照射され、血液を反射した反射光が受光部11にて受光されるとともに、血液を透過した透過光が光吸収部7bbにて吸収されて受光部11に至らないようになっている。
【0026】
第1照射部8は、血液回路を流れる血液に赤色光(660nm±20nm)の波長の赤色光)を照射し得るLED(赤色光LED)から成り、第2照射部9は、血液回路を流れる血液に近赤外光(880nm(+15nm,-5nm)の波長の近赤外光)を照射し得るLED(近赤外光LED)から成る。すなわち、第1照射部8で照射される赤色光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビン(HbO2)に対する吸光度より還元ヘモグロビン(Hb)に対する吸光度の方が高い特性を有する波長(660nmの波長)とされ、第2照射部9で照射される近赤外光は、血液に含まれる還元ヘモグロビンに対する吸光度より酸化ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長(880nmの波長)とされている。
【0027】
第3照射部10は、血液回路を流れる血液に対し、第1照射部8及び第2照射部9から照射される赤色光及び近赤外光とは異なる波長の光(810nm±10の波長の近赤外光)であって血液の酸素飽和度に関わらず血液濃度(ヘマトクリット値)を検出可能な検出光(等吸収点波長)を照射し得るLED(近赤外光LED)から成る。すなわち、第3照射部10で照射される検出光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビン(HbO2)に対する吸光度と還元ヘモグロビン(Hb)に対する吸光度とが略等しい特性を有する波長(810nm±10nmの波長)とされている。
【0028】
受光部11は、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10と共にプリント基板K上に形成されたフォトダイオードから成り、第1照射部8から照射した赤色光が血液を反射した反射光(又は血液を透過した透過光)を受光することにより取得される第1受光強度(R_660)、第2照射部9から照射した近赤外光が血液を反射した反射光(又は血液を透過した透過光)を受光することにより取得される第2受光強度(IR_880)、及び第3照射部10から照射した検出光が血液を反射した反射光(又は血液を透過した透過光)を受光することにより取得される第3受光強度(IR_810)をそれぞれ検出可能とされている。因みに、血液を透過した透過光を受光する場合、蓋部7bの光吸収部7bbに透過光を受光するセンサを配設する必要がある。なお、第1受光強度(R_660)、第2受光強度(IR_880)及び第3受光強度(IR_810)は、それぞれ電圧(受光電圧)として検出される。
【0029】
ここで、本実施形態に係る透析装置本体6は、個人データ入力部12と、酸素飽和度データ取得部13と、酸素飽和度取得部14と、検量線記憶部16及び比率補正部17を有する誤差吸収部15と、ヘマトクリット値取得部18と、BV算出部19とを具備している。個人データ入力部12は、血液浄化治療を行う患者の個人データを入力するもので、透析装置本体6に形成されたタッチパネル等から成る。かかる個人データ入力部12に入力する具体的な個人データとして、これから血液浄化治療を行う患者の性別(男性又は女性)、年齢、身長、体重、心拍数、ヘマトクリット値の血液特性等が挙げられる。
【0030】
酸素飽和度データ取得部13は、高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器にて検出した酸素飽和度と受光部11にて検出した第1受光強度と第2受光強度とを含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、患者の酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データ(本実施形態においては検量線)を取得する機械学習を行って得られた学習モデルを用いて、個人データ入力部12で入力された個人データに適した酸素飽和度データを取得するものである。機械学習とは、コンピュータが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術をいい、機械学習を機能させる技術やアルゴリズムとして、例えばニューラルネットワークを用いることができる。
【0031】
本実施形態における具体的な機械学習について、図16に基づいて説明する。
予め、高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器にて検出した酸素飽和度と受光部11にて検出した第1受光強度と第2受光強度とを含む不特定患者の個人データをサーバ等の記憶装置に複数(多数)蓄積して蓄積個人データを作成する。かかる不特定患者の個人データは、性別や年齢、身長、体重、心拍数、ヘマトクリット値の血液特性等、様々な患者(これから血液浄化治療を行う患者を含んでもよく含まなくてもよい)の個人データとされており、各々の個人データには、受光部11にて検出した第1受光強度と第2受光強度と、透析装置本体6とは別個の機器であって高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器(患者の指等を挟持して酸素飽和度を高精度に検出する酸素飽和度計など)により測定された酸素飽和度が紐づけされている。
【0032】
そして、このような高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器にて検出した酸素飽和度と受光部11にて検出した第1受光強度と第2受光強度とを含む不特定患者の個人データは、サーバ等の記憶装置に複数(大量に)蓄積された後、これらのデータ間の関係を教師データとして機械学習させ学習モデルを生成し、患者の個人データに応じた酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データ(本実施形態においては、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度を求めるために検量線)が出力される。酸素飽和度データ取得部13は、このような機械学習により得られた学習モデル(プログラム等)が記憶され、かかる学習モデルを用いて、個人データ入力部12で入力された個人データに適した酸素飽和度データ(検量線)を取得可能(例えば、図15で示す患者A、Bに適した検量線)とされている。
【0033】
酸素飽和度取得部14は、治療中第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データ(検量線)を用いて患者の酸素飽和度を取得するものである。具体的には、機械学習を行って得られた患者個人データに応じた検量線(X軸:第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率、Y軸:酸素飽和度)に、学習モデルを用いて個人データ入力部12で入力された個人データに応じて治療中取得した患者個人の第1受光強度及び第2受光強度の比率をX軸に代入することで患者個人データに適した酸素飽和度を取得する。このように、機械学習を行って得られた学習モデルを用いて患者個人に適した酸素飽和度データ(検量線)を取得し、その酸素飽和度データに基づいて、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度を求めるので、患者個人に応じて精度よく酸素飽和度を得ることができる。なお、本実施形態に係る酸素飽和度データ取得部13及び酸素飽和度取得部14は、例えばマイコン及びメモリ等のストレージ等から成る。
【0034】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、予め高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器にて検出した酸素飽和度と前記受光部11にて検出した前記第1受光強度と前記第2受光強度とを含む不特定患者の個人データは、サーバ等の記憶装置に複数(大量に)蓄積された後、患者の個人データに応じた第1受光強度と前記第2受光強度で算出した酸素飽和度と前記高精度に酸素飽和度を検出可能な外部機器にて検出した酸素飽和度との差異関係を教師データとして機械学習させ学習モデルを生成し、治療中取得した患者個人の第1受光強度及び第2受光強度を従来技術の方法で算出した酸素飽和度を治療中個人データ入力部12で入力された個人データに応じて学習モデルを用いて補正するようにしてもよい。
【0035】
誤差吸収部15は、血液指標検出器7と電気的に接続された例えばマイコン及びストレージ等から成り、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度(SO(ABL)%)を取得するとともに、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収するものである。
【0036】
検量線記憶部16は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線Cを予め記憶するものである。検量線Cは、図6に示すように、横軸が第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)、縦軸が酸素飽和度を示す曲線(3次曲線)から成り、後述する予め行われた実験等により取得された値に基づいて作成される。
【0037】
比率補正部17は、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を補正するもので、後述する予め行われた実験等により取得された補正係数を用いて補正可能とされている。
【0038】
予め行われる実験等は、例えば、血液濃度(ヘマトクリット値)が互いに異なる血液(本実験においては、ヘマトクリット値(Ht)が20%及び40%の血液)に対して、それぞれ第3照射部10から検出光を照射して血液濃度(ヘマトクリット値)を取得するとともに、第1照射部8及び第2照射部9から赤色光及び近赤外光を照射して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)を取得することにより、図5に示す複数の直線を得る。
【0039】
そして、これら複数の直線の平均値の直線(近似直線y=ax+b)を求める。このとき、ヘマトクリット値(Ht)が20%のときの受光電圧比(R/IR)をXHt20及びそのとき算出されるヘマトクリット値を(Ht20)、ヘマトクリット値(Ht)が40%のときの受光電圧比(R/IR)をXHt40及びそのとき算出されるヘマトクリット値を(Ht20)とすると、近似直線のa、bは、以下の演算式にて求めることができる。
a=((XHt40/XHt20)-1)/(Ht40-Ht20)=0.0060
b=XHt40/XHt20-a×Ht40=0.8967
【0040】
したがって、第3受光強度(IR_810)から算出したヘマトクリット値(Ht)による補正係数K4及び補正後の受光電圧比Xaは、補正前の受光電圧比X、第3受光強度(IR_810)から算出したヘマトクリット値を*Htとすると、以下のようになる。但し、*Htは、調整器によるゼロ・スパン調整が必要である。
K4=0.0060×*Ht+0.8967
Xa=X/K4
【0041】
これにより、補正後の受光電圧比Xaと酸素飽和度との関係に基づいて、図6に示すように、検量線記憶部16にて記憶される検量線Cを求めることができるとともに、比率補正部17にて受光電圧比率(R/IR)を補正するための補正係数K4を取得することができる。すなわち、酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)に対して吸光度が等しい波長(810nmの波長)を第3照射部10から照射して取得される第3受光強度(IR_810)に基づいて、酸素飽和度の影響を抑制しつつヘマトクリット値を得るとともに、その取得されたヘマトクリット値を利用して補正係数K4及び検量線Cを求めることができるのである。
【0042】
酸素飽和度取得部14は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するのに加え、検量線記憶部16で記憶された検量線Cに基づいて、比率補正部17で補正係数K4により補正された第1受光強度及び第2受光強度の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得するものである。かかる酸素飽和度取得部14にて取得された酸素飽和度は、血液浄化治療中においてヘマトクリット値が変化した場合であっても、ヘマトクリット値の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差が吸収されるので、精度よく酸素飽和度を取得することができる。
【0043】
ヘマトクリット値取得部18は、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、ヘマトクリット値(Ht)を取得するものである。すなわち、血液を構成する赤血球や血漿などの各成分は、それぞれ固有の吸光特性を持っており、この性質を利用してヘマトクリット値を測定するのに必要な赤血球を電子光学的に定量化することによりヘマトクリット値(Ht)を求めることができるのである。具体的には、第3照射部10から照射された近赤外光は、血液に反射する際に、吸収と散乱の影響を受け、受光部11にて受光される。その受光した光の強弱から光の吸収散乱率を解析し、ヘマトクリット値(Ht)を取得するのである。
【0044】
BV算出部19は、ヘマトクリット値取得部18で取得されたヘマトクリット値(Ht)に基づいて、循環血液量変化率(ΔBV)を求めるものである。すなわち、BV算出部19は、ヘマトクリット値取得部18で取得されたヘマトクリット値(Ht)を用いて、ΔBV(%)=(Ht/Ht-1)×100なる演算式(但し、Htは治療初期のヘマトクリット値、Htは測定時点におけるヘマトクリット値)によって循環血液量の変化率(ΔBV)を求めるものとされ、当該循環血液量の変化率(ΔBV)が除水速度や除水量の目安とされる。このように、取得されたヘマトクリット値、又はそのヘマトクリット値から算出された循環血液量変化率ΔBVに基づき、除水ポンプの駆動が制御され、患者の容態に合わせた除水速度や除水量とすることができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る酸素飽和度の算出工程について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
予め検量線Cを検量線記憶部16に記憶させておき、血液回路にて患者の血液を体外循環させる。そして、第3照射部10から照射された検出光の反射光を受光部11で受光し、第3受光強度(IR_810)を取得する(S1)とともに、取得した第3受光強度(IR_810)から補正係数K4を算出する(S2)。また、これとは別に並行して個人データ入力部12から入力された患者の個人データに基づいて酸素飽和度データ取得部13にて酸素飽和度データとしての検量線を取得する。
【0046】
その後、第1照射部8及び第2照射部9から赤色光及び近赤外光を照射して受光部11で第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)を取得し(S3)、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を算出する(S4)。S2で取得した補正係数K4に基づいて比率補正部17にて比率(R/IR)を補正する(S5)とともに、その補正された比率(R/IR)と検量線記憶部16に記憶された検量線Cとにより酸素飽和度取得部14にて酸素飽和度を取得する(S6)。また、これとは別に並行して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データとしての検量線を用いて酸素飽和度取得部14にて患者の酸素飽和度を取得する。
【0047】
本実施形態によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。また、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線Cを予め記憶する検量線記憶部16と、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を補正する比率補正部17と、検量線記憶部16で記憶された検量線Cに基づいて、比率補正部17で補正された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部14とを有するので、検量線記憶部16で記憶した検量線Cを変更することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0048】
次に、本発明に係る第2の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略することとする。
本実施形態に係る血液回路は、透析治療を行うための透析装置から成り、図8に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化器)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に対して透析液の供給及び排液の排出を行う透析装置本体6と、血液指標検出器7とを具備して構成されている。
【0049】
本実施形態に係る透析装置本体6は、個人データ入力部12と、酸素飽和度データ取得部13と、酸素飽和度取得部14と、検量線記憶部16及び検量線補正部20を有する誤差吸収部15と、ヘマトクリット値取得部18と、BV算出部19とを具備している。個人データ入力部12、酸素飽和度データ取得部13及び酸素飽和度取得部14は、先の実施形態と同様のもので、詳細な説明は省略する。誤差吸収部15は、血液指標検出器7と電気的に接続された例えばマイコン及びストレージ等から成り、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度(SO(ABL)%)を取得するとともに、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収するものである。
【0050】
検量線補正部20は、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、検量線記憶部16で記憶された検量線を補正するものである。すなわち、第1の実施形態に係る検量線Cは、ヘマトクリット値の変化に応じて変化しないのに対し、本実施形態に係る検量線は、ヘマトクリット値の変化に応じてリアルタイムに補正されるものである。
【0051】
酸素飽和度取得部14は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するのに加え、検量線補正部20で補正された検量線に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得するものである。すなわち、第1の実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、受光部11で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率(R/IR)を補正係数K4で補正し、その補正後の比率(R/IR)及び検量線Cから酸素飽和度を求めるものであるのに対し、本実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、受光部11で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率(R/IR)とリアルタイムで補正された検量線とにより酸素飽和度を求めるものである。
【0052】
次に、本実施形態に係る酸素飽和度の算出工程について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
予め検量線(初期検量線)を検量線記憶部16に記憶させておき、血液回路にて患者の血液を体外循環させる。そして、第3照射部10から照射された検出光の反射光を受光部11で受光し、第3受光強度(IR_810)を取得する(S1)とともに、取得した第3受光強度(IR_810)から補正係数を算出する(S2)。また、これとは別に並行して個人データ入力部12から入力された患者の個人データに基づいて酸素飽和度データ取得部13にて酸素飽和度データとしての検量線を取得する。
【0053】
次に、S2にて算出された補正係数により検量線記憶部16に記憶された検量線を補正する(S3)とともに、第1照射部8及び第2照射部9から赤色光及び近赤外光を照射して受光部11で第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)を取得し(S4)、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を算出する(S5)。そして、算出された比率(R/IR)とS3で補正された検量線とにより酸素飽和度取得部14にて酸素飽和度を取得する。また、これとは別に並行して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データとしての検量線を用いて酸素飽和度取得部14にて患者の酸素飽和度を取得する。
【0054】
本実施形態によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。また、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部16と、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、検量線記憶部16で記憶された検量線を補正する検量線補正部20と、検量線補正部20で補正された検量線に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部14とを有するので、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0055】
次に、本発明に係る第3の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略することとする。
本実施形態に係る血液回路は、透析治療を行うための透析装置から成り、図10に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化器)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に対して透析液の供給及び排液の排出を行う透析装置本体6と、血液指標検出器7とを具備して構成されている。
【0056】
本実施形態に係る透析装置本体6は、個人データ入力部12と、酸素飽和度データ取得部13と、酸素飽和度取得部14と、検量線記憶部16及び検量線選択部21を有する誤差吸収部15と、ヘマトクリット値取得部18と、BV算出部19とを具備している。個人データ入力部12、酸素飽和度データ取得部13及び酸素飽和度取得部14は、先の実施形態と同様のもので、詳細な説明は省略する。誤差吸収部15は、血液指標検出器7と電気的に接続された例えばマイコン及びストレージ等から成り、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度(SO(ABL)%)を取得するとともに、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収するものである。
【0057】
検量線記憶部16は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線であって、図11に示すように、血液濃度(ヘマトクリット値)に応じた複数の検量線(C1~C4)を予め記憶するものである。なお、血液濃度に応じた検量線は、適宜の本数を予め記憶することができる。
【0058】
検量線選択部21は、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、検量線記憶部16で記憶された複数の検量線(C1~C4)のうち特定の検量線を選択するものである。すなわち、第1、2の実施形態に係る検量線Cは、1本であるのに対し、本実施形態に係る検量線は、ヘマトクリット値に応じて複数本予め用意されているのである。
【0059】
酸素飽和度取得部14は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するのに加え、検量線選択部21で選択された検量線に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得するものである。すなわち、第1、2の実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、補正係数で予め補正又はリアルタイムに補正された検量線に基づいて酸素飽和度を求めるものであるのに対し、本実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、受光部11で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率(R/IR)と血液濃度に応じて選択された特定の検量線とにより酸素飽和度を求めるものである。
【0060】
次に、本実施形態に係る酸素飽和度の算出工程について、図12のフローチャートに基づいて説明する。
予め血液濃度(ヘマトクリット値)に応じた複数の検量線(C1~C4)を検量線記憶部16に記憶させておき、血液回路にて患者の血液を体外循環させる。そして、第3照射部10から照射された検出光の反射光を受光部11で受光し、第3受光強度(IR_810)を取得する(S1)とともに、取得した第3受光強度(IR_810)からヘマトクリット値に応じた特定の検量線を選択する(S2)。また、これとは別に並行して個人データ入力部12から入力された患者の個人データに基づいて酸素飽和度データ取得部13にて酸素飽和度データとしての検量線を取得する。
【0061】
次に、第1照射部8及び第2照射部9から赤色光及び近赤外光を照射して受光部11で第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)を取得し(S3)、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を算出する(S4)。そして、S2で補正された特定の検量線により酸素飽和度取得部14にて酸素飽和度を取得する。また、これとは別に並行して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データとしての検量線を用いて酸素飽和度取得部14にて患者の酸素飽和度を取得する。
【0062】
本実施形態によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。また、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線であって血液濃度に応じた複数の検量線(C1~C4)を予め記憶する検量線記憶部16と、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、検量線記憶部16で記憶された複数の検量線(C1~C4)のうち特定の検量線を選択する検量線選択部21と、検量線選択部21で選択された検量線に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部14とを具備するので、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)、又は検量線を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0063】
次に、本発明に係る第4の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略することとする。
本実施形態に係る血液回路は、透析治療を行うための透析装置から成り、図13に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化器)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に対して透析液の供給及び排液の排出を行う透析装置本体6と、血液指標検出器7とを具備して構成されている。
【0064】
本実施形態に係る透析装置本体6は、個人データ入力部12と、酸素飽和度データ取得部13と、酸素飽和度取得部14と、検量線記憶部16及び制御部22を有する誤差吸収部15と、ヘマトクリット値取得部18と、BV算出部19とを具備している。誤差吸収部15は、血液指標検出器7と電気的に接続された例えばマイコン及びストレージ等から成り、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度(SO(ABL)%)を取得するとともに、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収するものである。
【0065】
制御部22は、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、第1照射部8及び第2照射部9で照射される赤色光及び近赤外光の発光強度(照射強度)を制御するものである。すなわち、血液濃度(ヘマトクリット値)が変化して血液の吸光度が変化すると、その変化量に相関して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)が変化して誤差が生じるので、当該誤差を吸収(相殺)するため、血液濃度(ヘマトクリット値)と相関関係にある第3受光強度(IR_810)に応じて第1照射部8及び第2照射部9で照射される赤色光及び近赤外光の発光強度を制御部22にて制御するのである。
【0066】
酸素飽和度取得部14は、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するのに加え、検量線記憶部16で記憶された検量線に基づいて、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得するものである。すなわち、第1~3の実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、第1照射部8及び第2照射部9の発光強度を一定に維持しつつ酸素飽和度を求めるものであるのに対し、本実施形態に係る酸素飽和度取得部14は、血液濃度(ヘマトクリット値)と相関関係にある第3受光強度(IR_810)に応じて第1照射部8及び第2照射部9の発光強度を制御部22にて制御することにより酸素飽和度を求めるものである。
【0067】
次に、本実施形態に係る酸素飽和度の算出工程について、図14のフローチャートに基づいて説明する。
予め検量線を検量線記憶部16に記憶させておき、血液回路にて患者の血液を体外循環させる。そして、第3照射部10から照射された検出光の反射光を受光部11で受光し、第3受光強度(IR_810)を取得する(S1)とともに、取得した第3受光強度(IR_810)に基づいて第1照射部8及び第2照射部9で照射される赤色光及び近赤外光の発光強度を制御する(S2)。また、これとは別に並行して個人データ入力部12から入力された患者の個人データに基づいて酸素飽和度データ取得部13にて酸素飽和度データとしての検量線を取得する。
【0068】
次に、S2で制御された発光強度にて第1照射部8及び第2照射部9から赤色光及び近赤外光を照射して受光部11で第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)を取得し(S3)、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を算出する(S4)。そして、算出された比率(R/IR)と検量線記憶部16にて記憶された検量線により酸素飽和度取得部14にて酸素飽和度を取得する。また、これとは別に並行して第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から酸素飽和度データ取得部13で取得した酸素飽和度データとしての検量線を用いて酸素飽和度取得部14にて患者の酸素飽和度を取得する。
【0069】
本実施形態によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。また、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部16と、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、第1照射部8及び第2照射部9で照射される赤色光及び近赤外光の発光強度を制御する制御部22と、検量線記憶部16で記憶された検量線に基づいて、第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)から血液の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部14とを具備しているので、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)、又は検量線を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0070】
上記第1~4の実施形態に係る血液浄化装置によれば、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。また、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて血液濃度の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収するので、血液濃度の相違に関わらず酸素飽和度を精度よく取得することができる。特に、血液濃度(ヘマトクリット値)は、血液浄化治療の過程において逐次変化するので、変化する血液濃度に応じてリアルタイムに酸素飽和度を精度よく取得して治療に反映させることができる。
【0071】
また、第1照射部8で照射される赤色光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度より還元ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされ、第2照射部9で照射される近赤外光は、血液に含まれる還元ヘモグロビンに対する吸光度より酸化ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされるとともに、第3照射部10で照射される検出光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度と還元ヘモグロビンに対する吸光度とが略等しい特性を有する波長とされたので、より一層精度よく酸素飽和度を取得することができる。
【0072】
さらに、第1照射部8で照射される赤色光は、660nmの波長、第2照射部9で照射される近赤外光は、880nmの波長とされるとともに、第3照射部10で照射される検出光は、810nmの波長とされたので、酸素飽和度を求めるために通常用いられる波長を用いることとなり、酸素飽和度の汎用的な検出器を応用することができる。
【0073】
またさらに、受光部11で検出された第3受光強度(IR_810)に基づいて、ヘマトクリット値を取得するヘマトクリット値取得部18を有するとともに、ヘマトクリット値取得部18で取得されたヘマトクリット値に基づいて、循環血液量変化率(ΔBV)を求めるBV算出部19を有するので、一般的な血液浄化装置に備えられたヘマトクリットセンサやBV計を流用して酸素飽和度を取得することができる。
【0074】
加えて、本実施形態に係る血液指標検出器7は、第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11が取り付けられるとともに、血液回路の一部を嵌合する嵌合溝(7aa、7ab)が形成された本体部7aと、本体部7aに対して開閉可能とされ、閉状態にて嵌合溝(7aa、7ab)に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部7bと、蓋部7bに形成され、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10から照射された光を吸収する光吸収部7bbとを有するので、血液を透過した透過光が光吸収部7bbにて吸収されて受光部11に至り、誤差要因となるのを抑制することができる。
【0075】
光吸収部7bbは、既述のように、蓋部7bを暗色とされた部位、又は光を吸収する材質から成る部位とすることができ、このような構成とすることにより、蓋部7bからの反射(外乱)を抑制することができる。また、嵌合溝は、本体部の一端縁部から他端縁部まで延設されるとともに、受光部11は、嵌合溝7aa、7abの中央位置に配設されているので、一端縁部又は他端縁部からの外乱光が受光部11に至り、誤差が生じてしまうのを抑制することができる。さらに、第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11が本体部7aにおいて並設されるとともに、受光部11は、第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10の間に位置するので、誤差要因となる外乱光が受光部11に至ってしまうのを抑制することができる。なお、第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11は、直線状に配設されたものに限らず、他のレイアウトであってもよく、受光部11が第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10の間に位置しないものであってもよい。
【0076】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第1照射部8、第2照射部9及び第3照射部10から照射する赤色光、近赤外光及び検出光として他の波長の光を利用してもよく、第3受光強度(IR_810)で検出される血液濃度は、ヘマトクリット値に限らず他の血液の濃度であってもよい。また、血液指標検出器7に配設された第1照射部8、第2照射部9、第3照射部10及び受光部11は、如何なるレイアウトで配設されていてもよく、一部を別の検出器に配設するようにしてもよい。なお、本実施形態においては、透析治療時に用いられる透析装置に適用しているが、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBFで使用される血液浄化装置、血漿吸着装置等)に適用してもよい。
【0077】
本発明の第1の実施の態様は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、血液回路を流れる血液に赤色光を照射する第1照射部と、血液回路を流れる血液に近赤外光を照射する第2照射部と、第1照射部から照射した赤色光が血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第1受光強度、第2照射部から照射した近赤外光が血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第2受光強度をそれぞれ検出する受光部と、血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部と、外部機器にて検出した酸素飽和度と受光部にて検出した第1受光強度と第2受光強度とを含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、患者の個人データに応じた酸素飽和度を推定するための酸素飽和度データを取得する機械学習を行って得られた学習モデルを用いて、個人データ入力部で入力された個人データに適した酸素飽和度データを取得する酸素飽和度データ取得部と、第1受光強度及び第2受光強度の比率から酸素飽和度データ取得部で取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得する酸素飽和度取得部と、を具備したものである。これにより、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。
【0078】
本発明の第2の実施の態様は、血液回路を流れる血液に対し、第1照射部及び第2照射部から照射される前記赤色光及び近赤外光とは異なる波長の光であって血液の酸素飽和度に関わらず血液濃度を検出可能な検出光を照射する第3照射部と、第3照射部から照射した検出光が血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第3受光強度を検出する受光部とを具備し、受光部で検出された前記第3受光強度に基づいて血液濃度の変化に伴って生じる酸素飽和度の誤差を吸収する誤差吸収部を具備したものである。これにより、血液濃度の相違に関わらず酸素飽和度を精度よく取得することができるとともに、血液濃度(ヘマトクリット値)は、血液浄化治療の過程において逐次変化するので、変化する血液濃度に応じてリアルタイムに酸素飽和度を精度よく取得して治療に反映させることができる。
【0079】
本発明の第3の実施の態様は、誤差吸収部は、第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された第3受光強度に基づいて、受光部で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率を補正する比率補正部と、を具備し、酸素飽和度取得部は、検量線記憶部で記憶された検量線に基づいて、比率補正部で補正された第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を取得するものである。これにより、検量線記憶部16で記憶した検量線Cを変更することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0080】
本発明の第4の実施の態様は、誤差吸収部は、第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された第3受光強度に基づいて、検量線記憶部で記憶された検量線を補正する検量線補正部と、を具備し、酸素飽和度取得部は、検量線補正部で補正された検量線に基づいて、受光部で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を取得するものである。これにより、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0081】
本発明の第5の実施の態様は、誤差吸収部は、第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を求めるための検量線であって血液濃度に応じた複数の検量線を予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された第3受光強度に基づいて、検量線記憶部で記憶された複数の検量線のうち特定の検量線を選択する検量線選択部と、を具備し、酸素飽和度取得部は、検量線選択部で選択された検量線に基づいて、受光部で検出された第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を取得するものである。これにより、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)、又は検量線を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0082】
本発明の第6の実施の態様は、誤差吸収部は、第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を求めるための検量線を予め記憶する検量線記憶部と、受光部で検出された第3受光強度に基づいて、第1照射部及び第2照射部で照射される前記赤色光及び近赤外光の発光強度を制御する制御部と、を具備し、酸素飽和度取得部は、検量線記憶部で記憶された検量線に基づいて、第1受光強度及び第2受光強度の比率から血液の酸素飽和度を取得するものである。これにより、受光部11で検出された第1受光強度(R_660)及び第2受光強度(IR_880)の比率(R/IR)、又は検量線を補正することなく酸素飽和度を取得することができる。
【0083】
本発明の第7の実施の態様は、第1照射部で照射される赤色光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度より還元ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされ、第2照射部で照射される近赤外光は、血液に含まれる還元ヘモグロビンに対する吸光度より酸化ヘモグロビンに対する吸光度の方が高い特性を有する波長とされるとともに、第3照射部で照射される検出光は、血液に含まれる酸化ヘモグロビンに対する吸光度と還元ヘモグロビンに対する吸光度とが略等しい特性を有する波長とされたものである。これにより、より一層精度よく酸素飽和度を取得することができる。
【0084】
本発明の第8の実施の態様は、第1照射部8で照射される赤色光は、660nmの波長、第2照射部9で照射される近赤外光は、880nmの波長とされるとともに、第3照射部10で照射される検出光は、810nmの波長とされたものである。これにより、酸素飽和度を求めるために通常用いられる波長を用いることとなり、酸素飽和度の汎用的な検出器を応用することができる。
【0085】
本発明の第9の実施の態様は、受光部で検出された第3受光強度に基づいて、ヘマトクリット値を取得するヘマトクリット値取得部を有するものである。これにより、一般的な血液浄化装置に備えられたヘマトクリットセンサを流用して酸素飽和度を取得することができる。
【0086】
本発明の第10の実施の態様は、ヘマトクリット値取得部で取得されたヘマトクリット値に基づいて、循環血液量変化率(ΔBV)を求めるBV算出部を有するものである。これにより、一般的な血液浄化装置に備えられたBV計を流用して酸素飽和度を取得することができる。
【0087】
本発明の第11の実施の態様は、第1照射部、第2照射部、第3照射部及び受光部が取り付けられるとともに、血液回路の一部を嵌合する嵌合溝が形成された本体部と、本体部に対して開閉可能とされ、閉状態にて嵌合溝に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部と、蓋部に形成され、第1照射部、第2照射部及び第3照射部から照射された光を吸収する光吸収部と、を有するものである。これにより、血液を透過した透過光が光吸収部にて吸収されて受光部に至り、誤差要因となるのを抑制することができる。
【0088】
本発明の第12の実施の態様は、光吸収部は、蓋部を暗色とされた部位、又は光を吸収する材質から成る部位であるものである。これにより、蓋部からの反射(外乱)を抑制することができる。
【0089】
本発明の第13の実施の態様は、嵌合溝は、本体部の一端縁部から他端縁部まで延設されるとともに、受光部は、嵌合溝の中央位置に配設されたものである。これにより、一端縁部又は他端縁部からの外乱光が受光部に至り、誤差が生じてしまうのを抑制することができる。
【0090】
本発明の第14の実施の態様は、第1照射部、第2照射部、第3照射部及び受光部が本体部において並設されるとともに、受光部は、第1照射部、第2照射部及び第3照射部の間に位置するものである。これにより、誤差要因となる外乱光が受光部に至ってしまうのを抑制することができる。
【0091】
本発明の第15の実施の態様は、血液浄化器及び血液回路を通じて患者の血液を体外循環させ、前記血液を浄化する血液浄化装置であって、血液回路を流れる血液に赤色光を照射する第1照射部と、血液回路を流れる血液に近赤外光を照射する第2照射部と、血液回路を流れる血液に対し、第1照射部及び第2照射部から照射される赤色光及び近赤外光とは異なる波長の光であって前記血液の酸素飽和度に関わらず血液濃度を検出可能な検出光を照射する第3照射部と、第1照射部から照射した赤色光が前記血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第1受光強度、第2照射部から照射した近赤外光が血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第2受光強度、及び第3照射部から照射した検出光が前記血液を反射した反射光又は血液を透過した透過光を受光することにより取得される第3受光強度をそれぞれ検出する受光部と、血液浄化治療を行う患者の個人データを入力する個人データ入力部と、を具備し、外部機器にて検出した酸素飽和度と受光部にて検出した第1受光強度と第2受光強度とを含む不特定患者の個人データを複数蓄積した蓄積個人データを教師データとして、機械学習で患者の個人データに応じた外部機器にて検出した酸素飽和度と第1受光強度と第2受光強度にて算出した酸素飽和度との差異関係を取得する機械学習を行って学習モデルを用いて、治療中前記個人データ入力部にて入力された個人データに応じて治療中取得した第1受光強度と第2受光強度の比率から算出した酸素飽和度を補正することを特徴とするものである。これにより、機械学習を行った学習モデルを用いて、個人データに適した酸素飽和度データを取得し、その取得した酸素飽和度データを用いて患者の酸素飽和度を取得するので、患者の個人差を考慮して酸素飽和度を精度よく取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化器)
4 血液ポンプ
5 エアトラップチャンバ
6 透析装置本体
7 血液指標検出器
7a 本体部
7aa、7ab 嵌合溝
7b 蓋部
7ba 凸部
7bb 光吸収部
7c ロック部
8 第1照射部
9 第2照射部
10 第3照射部
11 受光部
12 個人データ入力部
13 酸素飽和度データ取得部
14 酸素飽和度取得部
15 誤差吸収部
16 検量線記憶部
17 比率補正部
18 ヘマトクリット値取得部
19 BV算出部
20 検量線補正部
21 検量線選択部
22 制御部
g 検知スイッチ
K プリント基板
R_660 第1受光強度
IR_880 第2受光強度
IR_810 第3受光強度
R/IR 比率
C、C1~C4 検量線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16