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特開2024-151695スライドレール装置及び車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151695
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】スライドレール装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065251
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 育夫
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC04
3B087BC05
3B087BC16
(57)【要約】
【課題】車両の床部に対するシートクッションの配置高さを低く設定し且つスライドをロックするための構成を簡素化する。
【解決手段】スライドレール装置40は、車両の床部に固定される左右のアウタレール42と、左右のアウタレール42に対してシート左右方向の内側に配置され、シートクッション12が連結される左右のインナレール44と、左右のインナレール44に取り付けられ、左右のインナレール44のスライドをロックするロック位置へ付勢されると共に、前部がシート左右方向の内側へ変位されることにより、上記ロックを解除する左右のロック部材と、左右のロック部材の前部間に架け渡され、シート左右方向の中央部に設けられた操作部58がシート後方側へ操作されることにより、左右のロック部材の前部をシート左右方向の内側へ変位させる操作部材52と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床部に固定される左右のアウタレールと、
前記左右のアウタレールに対してシート左右方向の内側に配置され、前記左右のアウタレールに対してシート前後方向にスライド可能とされ、車両用シートのシートクッションが連結される左右のインナレールと、
前記左右のインナレールに対してそれぞれシート上下方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられ、前記左右のアウタレールに対する前記左右のインナレールのスライドをロックするロック位置へ付勢されると共に、前部がシート左右方向の内側へ変位されて前記ロック位置からアンロック位置へ回転されることにより、前記ロックを解除する左右のロック部材と、
前記左右のロック部材の前部間に架け渡され、シート左右方向の中央部に設けられた操作部が操作されることにより、前記左右のロック部材の前部をシート左右方向の内側へ変位させる操作部材と、
を備えたスライドレール装置。
【請求項2】
前記操作部材は、前記操作部をシート上下方向に沿った軸線回りに屈曲させるヒンジ部を有し、
前記操作部がシート後方側へ操作されて屈曲することにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項3】
前記操作部材は、
前記左右のロック部材の前部間に架け渡されたワイヤと、
前記ワイヤが内側に挿通されるパイプ部材と、
前記パイプ部材に対して回転可能に取り付けられ、回転操作されることで前記ワイヤの中間部を巻き取る前記操作部と、
を有する請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項4】
前記操作部材は、
各々のシート左右方向の外側端部が前記左右のロック部材の前部にそれぞれ固定された左右の固定部と、
前記左右の固定部におけるシート左右方向の内側端部にそれぞれ各一端部がシート前後方向に沿った軸線回りに回転可能に連結された左右のリンク部と、
前記左右のリンク部の各他端部に対してそれぞれシート左右方向の両端部がシート前後方向に沿った軸線回りに回転可能に連結された前記操作部と、
を有し、
前記操作部がシート上下方向の一方側へ操作されることにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項5】
前記操作部材は、
各々のシート左右方向の外側端部が前記左右のロック部材の前部にそれぞれ固定された左右の固定部と、
前記左右の固定部におけるシート左右方向の内側端部にそれぞれ連結された左右の把持部及び前記左右の把持部を連結した弾性部材を備える前記操作部と、
を有し、
前記弾性部材の弾性力に抗して前記左右の把持部が互いに接近する方向へ操作されることにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する請求項1に記載のスライドレール装置。
【請求項6】
シートクッションと、
前記シートクッションの後端部に下端部が連結されたシートバックと、
前記シートクッションが前記左右のインナレールと連結され、前記左右のアウタレールが車両の床部に固定される請求項1~請求項5の何れか1項に記載のスライドレール装置と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に車両用シートが備えるスライドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたスライドレール装置は、車両の床部に固定される左右のロアレールと、左右のロアレールに対してシート上方側に配置され、車両用シートのシートクッションが連結される左右のアッパレールと、左右のロアレールに対する左右のアッパレールのスライドをロックする左右のロック部材と、を備えている。左右のロック部材は、左右のアッパレールに対してそれぞれシート左右方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられており、上記のスライドをロックするロック位置へと付勢されている。左右のロック部材の前部間には、操作レバーが架け渡されており、当該操作レバーがシート上方側へ操作されると、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へと回転される。これにより、上記のロックが解除される。
【0003】
下記特許文献2に開示された車両用シートのスライド構造は、車両の床部に固定される左右の固定内側レールと、左右の固定内側レールに外嵌し、車両用シートのシートクッションが連結される左右の可動外側レールと、左右の固定内側レールに対する左右の可動外側レールのスライドをロックする位置決め機構と、を備えている。位置決め機構は、左右の可動外側レールに対してシート前後方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられ、上記のスライドをロックするロック位置へと付勢された左右のリリースロッドと、左右の可動外側レールに取り付けられた左右の操作レバー支持ブラケットと、左右の操作レバー支持ブラケットに支持された操作レバーとを備えている。操作レバーがシート上方側へ操作されると、当該操作力が左右のリリースロッドの回転力に変換され、左右のリリースロッドがロック位置からアンロック位置へと回転される。これにより、上記のロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-100077号公報
【特許文献2】特開2010-120556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に開示された先行技術では、シートクッションが連結される左右の可動外側レールが、左右の固定内側レールに対してシート左右方向の外側に配置されるため、上記特許文献1に開示された先行技術と比較して、車両の床部に対するシートクッションの配置高さを低く設定することができる。その結果、例えば車両の床下にバッテリが搭載される電気自動車において、乗員の着座位置が高くなることの抑制に寄与する。しかしながら、上記特許文献2に開示された先行技術では、上記特許文献1に開示された先行技術と比較して、スライドをロックするための位置決め機構の構成が複雑になっている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車両の床部に対するシートクッションの配置高さを低く設定することができ且つスライドをロックするための構成を簡素化することができるスライドレール装置及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のスライドレール装置は、車両の床部に固定される左右のアウタレールと、
前記左右のアウタレールに対してシート左右方向の内側に配置され、前記左右のアウタレールに対してシート前後方向にスライド可能とされ、車両用シートのシートクッションが連結される左右のインナレールと、前記左右のインナレールに対してそれぞれシート上下方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられ、前記左右のアウタレールに対する前記左右のインナレールのスライドをロックするロック位置へ付勢されると共に、前部がシート左右方向の内側へ変位されて前記ロック位置からアンロック位置へ回転されることにより、前記ロックを解除する左右のロック部材と、前記左右のロック部材の前部間に架け渡され、シート左右方向の中央部に設けられた操作部が操作されることにより、前記左右のロック部材の前部をシート左右方向の内側へ変位させる操作部材と、を備えている。
【0008】
第1の態様のスライドレール装置では、車両の床部に固定される左右のアウタレールに対してシート左右方向の内側に配置され、左右のアウタレールに対してシート前後方向にスライド可能とされる左右のインナレールに、車両用シートのシートクッションが連結される。左右のインナレールに対してそれぞれシート上下方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられた左右のロック部材は、左右のアウタレールに対する左右のインナレールのスライドをロックするロック位置へ付勢される。左右のロック部材の前部間には、操作部材が架け渡されている。この操作部材のシート左右方向の中央部に設けられた操作部が操作されると、左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へ回転される。これにより、上記のロックが解除される。
【0009】
このスライドレール装置では、シートクッションが連結される左右のインナレールが、左右のアウタレールに対してシート左右方向の内側に配置されるため、前記特許文献1に開示された先行技術と比較して、車両の床部に対するシートクッションの配置高さを低く設定することができる。しかも、上記左右のアウタレール、左右のインナレール及び左右のロック部材としては、例えば前記特許文献1に開示された左右のロアレール、左右のアッパレール及び左右のロック部材と同様のものを採用することができる。つまり、前記特許文献1に開示された左右のロアレールを左右のアウタレールとして採用すると共に、前記特許文献1に開示された左右のアッパレールを左右のインナレールとして採用し、車両及びシートクッションに対する各レールの取付方向を変更すればよい。その場合、左右のロック部材としては、例えば前記特許文献1に開示された左右のロック部材と同様のものを流用することができる。その結果、例えば前記特許文献1に開示された先行技術と同様に、スライドをロックするための構成を簡素化することができる。
【0010】
第2の態様のスライドレール装置は、第1の態様において、前記操作部材は、前記操作部をシート上下方向に沿った軸線回りに屈曲させるヒンジ部を有し、前記操作部がシート後方側へ操作されて屈曲することにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する。
【0011】
第2の態様のスライドレール装置では、操作部材のシート左右方向の中央部に設けられた操作部がシート後方側へ操作されると、当該操作部がヒンジ部においてシート上下方向に沿った軸線回りに屈曲する。これにより、左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0012】
第3の態様のスライドレール装置は、第1の態様において、前記操作部材は、前記左右のロック部材の前部間に架け渡されたワイヤと、前記ワイヤが内側に挿通されるパイプ部材と、前記パイプ部材に対して回転可能に取り付けられ、回転操作されることで前記ワイヤの中間部を巻き取る前記操作部と、を有する。
【0013】
第3の態様のスライドレール装置では、操作部材のパイプ部材に取り付けられた操作部が回転操作されると、パイプ部材の内側に挿通されて左右のロック部材の前部間に架け渡されたワイヤの中間部が操作部に巻き取られる。これにより、左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0014】
第4の態様のスライドレール装置は、第1の態様において、前記操作部材は、各々のシート左右方向の外側端部が前記左右のロック部材の前部にそれぞれ固定された左右の固定部と、前記左右の固定部におけるシート左右方向の内側端部にそれぞれ各一端部がシート前後方向に沿った軸線回りに回転可能に連結された左右のリンク部と、前記左右のリンク部の各他端部に対してそれぞれシート左右方向の両端部がシート前後方向に沿った軸線回りに回転可能に連結された前記操作部と、を有し、前記操作部がシート上下方向の一方側へ操作されることにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する。
【0015】
第4の態様のスライドレール装置では、操作部材の操作部がシート上下方向の一方側へ操作されると、操作部におけるシート左右方向の両端部に対してそれぞれ各他端部が連結された左右のリンク部が変位する。すると、左右のリンク部の各一端部に対してそれぞれシート左右方向の内側端部が連結された左右の固定部が変位する。これにより、左右の固定部におけるシート左右方向の外側端部が固定された左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0016】
第5の態様のスライドレール装置は、第1の態様において、前記操作部材は、各々のシート左右方向の外側端部が前記左右のロック部材の前部にそれぞれ固定された左右の固定部と、前記左右の固定部におけるシート左右方向の内側端部にそれぞれ連結された左右の把持部及び前記左右の把持部を連結した弾性部材を備える前記操作部と、を有し、前記弾性部材の弾性力に抗して前記左右の把持部が互いに接近する方向へ操作されることにより、前記左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位する。
【0017】
第5の態様のスライドレール装置では、操作部材の操作部が備える左右の把持部が弾性部材の弾性力に抗して互いに接近する方向へ操作されると、左右の把持部がシート左右方向の内側端部にそれぞれ連結された左右の固定部が互いに接近する方向へ変位する。これにより、左右の固定部におけるシート左右方向の外側端部が固定された左右のロック部材の前部がシート左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0018】
第6の態様の車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションの後端部に下端部が連結されたシートバックと、前記シートクッションが前記左右のインナレールと連結され、前記左右のアウタレールが車両の床部に固定される第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のスライドレール装置と、を備えている。
【0019】
第6の態様の車両用シートでは、スライドレール装置の左右のインナレールがシートクッションと連結され、スライドレール装置の左右のアウタレールが車両の床部に固定される。このスライドレール装置は、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のものであるため、前記何れか1つの態様と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、車両の床部に対するシートクッションの配置高さを低く設定することができ且つスライドをロックするための構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る車両用シートの部分的な構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係るスライドレール装置が備える左右のロック部材と操作部材を示す平面図である。
図5】操作部材が有する操作部がシート後方側へ操作された状態を示す図4に対応した平面図である。
図6】操作部材が有するヒンジ部に設けられるストッパの一例を示す平面図である。
図7】ヒンジ部を覆うカバーの一例を示す正面図である。
図8】カバーを開いた状態を示す図7に対応した正面図である。
図9】第2実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す正面図である。
図10】第2実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す平面図である。
図11】操作部材が有するワイヤの一部と操作部を示す正面図である。
図12】操作部材が有するワイヤの一部と操作部を示す横断面図である。
図13】操作部が回転操作された状態を示す図12に対応した横断面図である。
図14】操作部が更に回転操作された状態を示す図12に対応した横断面図である。
図15】第3実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す正面図である。
図16】操作部材が有する操作部がシート上方側へ操作された状態を示す図15に対応した正面図である。
図17】操作部材が有する左右のリンク部がシート左右方向の同じ側へ変位した悪い例を示す正面図である。
図18】第4実施形態に係るスライドレール装置の部分的な構成を示す正面図である。
図19】操作部材が有する操作部に含まれる左右の把持部が互いに接近する方向へ操作された状態を示す図18に対応した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、図1図8を参照して本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH、RH及びUPは、車両用シート10の前方、左方、右方及び上方をそれぞれ示している。以下、前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム14と、シートバック22の骨格を構成するバックフレーム24と、スライドレール装置40とを備えている。この車両用シート10は、例えば車両のフロントシートである。シートクッションフレーム14及びバックフレーム24にはそれぞれ、図示しない表皮によって覆われた図示しないパッド材が取り付けられる構成になっている。
【0024】
クッションフレーム14は、シートクッション12の左右の側部に配置されて前後方向に延在した左右2つのサイドフレーム16と、左右のサイドフレーム16の前部を左右方向に繋いだフロントフレーム18と、左右のサイドフレーム16の後端部を左右方向に繋いだリヤフレーム20とを有している。左右のサイドフレーム16及びフロントフレーム18は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、リヤフレーム20は、例えば金属製のパイプによって構成されている。
【0025】
バックフレーム24は、シートバック22の左右の側部に配置されて上下方向に延在した左右2つのサイドフレーム26と、左右のサイドフレーム26の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム28と、左右のサイドフレーム26の上端部を左右方向に繋いだ図示しないアッパフレームとを有している。左右のサイドフレーム26及びロアフレーム28は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、アッパフレームは、例えば曲げ加工された金属製のパイプによって構成されている。
【0026】
クッションフレーム14が有する左右のサイドフレーム16の後端部には、バックフレーム24が有する左右のサイドフレーム26の下端部が、周知のリクライニング装置30を介して連結されている。クッションフレーム14が有する左右のサイドフレーム16は、周知のリフタ装置32を介してスライドレール装置40に連結されている。リフタ装置32は、シートクッション12の左側部の下方に配置された前後一対のリンク部材34と、シートクッション12の右側部の下方に配置された前後一対のリンク部材34とを有している。
【0027】
図1図3に示されるように、スライドレール装置40は、左右2つのアウタレール42と、左右2つのインナレール44と、左右2つのロック部材46と、左右2つのワイヤ50と、操作部材52とを備えている。左右のアウタレール42及び左右のインナレール44は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、前後方向を長手とする長尺状をなしている。左右のアウタレール42は、前後方向視で左右方向の内側へ開口する断面略C字状をなしている。左右のインナレール44は、前後方向視で左右方向の外側へ開口する断面略ハット字状をなしている。
【0028】
左右のアウタレール42は、図示しないブラケットを介して車両の床部に固定されている。左右のインナレール44は、左右のアウタレール42に対して左右方向の内側に配置されており、左右のアウタレール42の内側に嵌合している。左右のインナレール44は、左右のアウタレール42によって前後方向にスライド可能に支持されている。左側のインナレール44には、シートクッション12の左側部の下方に配置された前後一対のリンク部材34が連結されており、右側のインナレール44には、シートクッション12の右側部の下方に配置された前後一対のリンク部材34が連結されている。これにより、クッションフレーム14がリフタ装置32を介して左右のインナレール44に連結されている。
【0029】
左右のインナレール44の前部の内側には、左右のロック部材46が配置されている(図2及び図3参照)。左右のロック部材46は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、前後方向を長手とする長尺状をなしている。左右のロック部材46は、各ロック部材46の前後方向の中央部に設けられた回転軸48(図4及び図5参照)を介して左右のインナレール44に回転可能に取り付けられている。各回転軸48は、上下方向を軸線方向として配置されており、左右のロック部材46は、左右のインナレール44に対してそれぞれ上下方向に沿った軸線回りに回転可能とされている。
【0030】
左右のロック部材46に対して左右方向の外側には、左右のワイヤ50(図3参照)が配置されている。左右のワイヤ50は、線状のばね材が曲げ加工されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。左右のワイヤ50は、左右方向視で前方側へ開口した略U字状をなしており、前端部及び後端部が左右のインナレール44に係止されている。左右のワイヤの前後方向中央部には、上下方向両側へ略U字状に曲がった複数の曲げ部50Aが前後方向に並んで形成されている。複数の曲げ部50Aに対応してアウタレール42には、図示しない多数のロック歯が前後方向に並んで形成されており、複数の曲げ部50Aがそれぞれロック歯に係合する(引っ掛かる)ことで、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドがロック(移動規制)されている。
【0031】
左右のロック部材46の後端部は、左右のワイヤ50の前後方向中央部に対して左右方向の内側から接触して配置されている。これにより、ワイヤ50がロック位置(図2から図4に示される位置)に保持されている。左右のロック部材46において回転軸48よりも前方側の前部が左右方向の内側へ操作され、図5に示されるアンロック位置へ変位すると、左右のロック部材46において回転軸48よりも後方側の後部が左右方向の外側へ変位する。これにより、左右のワイヤ50の前後方向中央部が左右のロック部材46の後端部に押されて左右方向の外側へ弾性的に変位し、左右のアウタレール42のロック歯に対する複数の曲げ部50Aの係合が解除される。その結果、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドが許容される。
【0032】
左右のロック部材46の前部に加えられていた左右方向内側への操作力が解除されると、左右のワイヤ50が元の状態に弾性復帰すると共に、左右のワイヤ50の付勢力によって左右のロック部材46がロック位置へ復帰する。これにより、左右のワイヤ50の複数の曲げ部50Aがそれぞれアウタレール42のロック歯に係合し、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドが再びロックされる。
【0033】
左右のロック部材46の前部間には、操作部材52が架け渡されている。操作部材52は、操作レバー54とヒンジ部56とによって構成されている。操作レバー54は、例えば金属製のパイプが曲げ加工されて製造されたものであり、操作部材52は平面視で後方側へ開口した略U字状をなしている。操作レバー54の左右両端部には、左右のロック部材46の前部が固定されている。この操作レバー54は、左側部分54Lと右側部分54Rとに二分割されている。左側部分54Lと右側部分54Rとは、ヒンジ部56によって連結されている。
【0034】
ヒンジ部56は、左側部分54Lの右端部にスライド可能に連結された左連結部56Lと、右側部分54Rの左端部にスライド可能に連結された右連結部56Rと、左連結部56Lと右連結部56Rとを上下方向に沿った軸線回りに回転可能に連結したヒンジ本体56Sとによって構成されている。左側部分54L及び右側部分54Rにはそれぞれ、リベット55が径方向に貫通した状態でカシメられており、これらのリベット55が左連結部56L及び右連結部56Rに形成された長孔57にそれぞれ挿通されている。これにより、左連結部56L及び右連結部56Rが、左側部分54L及び右側部分54Rに対してスライド可能に連結されている。
【0035】
左側部分54L及び右側部分54Rにおいて、左連結部56L及び右連結部56Rよりも左右方向外側の部分には、左側部分54L及び右側部分54Rの径方向内側へ突出した潰し部54L1及び潰し部54R1が形成されている。左側部分54L及び右側部分54Rの内側において、潰し部54L1と左連結部56Lとの間及び潰し部54R1と右連結部56との間にはそれぞれ、圧縮コイルスプリング59が配置されている。これにより、左連結部56L及び右連結部56が左側部分54L及び右側部分54Rに対して左右方向中央側へ付勢されている。上記構成のヒンジ部56が設けられた操作部材52の左右方向中央部は、操作部58とされている。この操作部58は、ヒンジ部56において上下方向に沿った軸線回りに屈曲可能とされている。
【0036】
上記のヒンジ部56には、ストッパ60(図6以外では図示省略)が設けられている。ストッパ60は、ヒンジ部56の後方側で左連結部56Lに固定された左腕部60Lと、ヒンジ部56の後方側で右連結部56Rに固定された右腕部60Rとを有している。このストッパ60では、左腕部60Lと右腕部60Rとが接触することにより操作部58の前方側への屈曲を規制する一方、操作部58の後方側への屈曲を許容するように構成されている。
【0037】
また、操作部材52は、ヒンジ部56を含む操作部58を覆うカバー62(図7及び図8以外では図示省略)を備えている。カバー62は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、左右方向を長手とする長尺状をなしている。このカバー62は、左右方向から見て下方側へ開口した略逆U字状をなしており、内側に操作部58を収容可能とされている。カバー62における左右方向の一端部は、前後方向を軸線方向とする連結軸64を介して回転可能に操作レバー54に連結されている。このカバー62が図7に示される規制位置に位置する状態では、操作部58がカバー62の内側に収容され、後方側への操作部58の屈曲が規制される。このカバー62が図8に示される許容位置へ回転されると、上記の屈曲規制が解除される。
【0038】
上記の操作部58が後方側へ押圧操作(図4の矢印R参照)され、図5に示されるように屈曲すると、左右のロック部材46の前部が左右方向の内側へ変位する(図5の矢印P参照)。これにより、左右のワイヤ50の前後方向中央部が左右方向の外側へ弾性的に変位し、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドが許容される。操作部58に対するシート後方側への操作力が解除されると、左右のワイヤ50の弾性復帰力(付勢力)によって左右のロック部材46及び操作部材52が図4に示される元の状態に復帰するように構成されている。
【0039】
なお、本実施形態では、左右のワイヤ50に設けられた複数の曲げ部50Aが左右のアウタレール42のロック歯に直接係合することで、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドがロックされるが、これに限るものではない。例えば左右のロック部材46に設けられた係合部が左右のアウタレール42のロック歯に直接係合することで、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドがロックされる構成にしてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、スライドレール装置40の左右のインナレール44がリフタ装置32を介してシートクッション12と連結され、スライドレール装置40の左右のアウタレール42が車両の床部に固定されている。左右のインナレール44には、左右のロック部材46が取り付けられている。左右のロック部材46は、左右のインナレール44に対してそれぞれ上下方向に沿った軸線回りに回転可能とされており、左右のワイヤ50によってロック位置へ付勢されている。左右のロック部材46がロック位置に位置する状態では、左右のアウタレール42に対する左右のインナレール44のスライドが左右のワイヤ50によってロックされている。
【0041】
左右のロック部材46の前部間には、操作部材52が架け渡されている。この操作部材52の左右方向の中央部に設けられた操作部58が後方側へ操作されると、当該操作部58がヒンジ部56において上下方向に沿った軸線回りに屈曲する。これにより、左右のロック部材46の前部が左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材46がロック位置からアンロック位置へ回転される。これにより、左右のワイヤ50が弾性変形し、左右のワイヤ50による上記のロックが解除される。
【0042】
このスライドレール装置40では、シートクッション12がリフタ装置32を介して連結された左右のインナレール44が、左右のアウタレール42に対して左右方向の内側に配置されている。このため、背景技術の欄で説明した特許文献1の先行技術と比較して、車両の床部に対するシートクッション12の配置高さを低く設定することができる。その結果、例えば車両の床下にバッテリが搭載される電気自動車において、乗員の着座位置が高くなることの抑制に寄与する。
【0043】
しかも、左右のアウタレール42及び左右のインナレール44としては、例えば上記特許文献1に開示された左右のロアレール及び左右のアッパレールと同様の一般的なものを採用(流用)することができる。つまり、一般的なスライドレール装置の左右のロアレールを左右のアウタレール42として採用すると共に、一般的なスライドレール装置の左右のアッパレールを左右のインナレール44として採用し、車両及びシートクッション12に対する各レールの取付方向を変更すればよい。また、本実施形態では、背景技術の欄で説明した特許文献2の位置決め機構のように、操作レバーに加わる上方側への操作力を、左右のリリースロッドにおける前後方向の軸線回りに回転力に変換する必要がない。このため、上記のスライドをロックするための左右のロック部材46等の構成を簡素化することができる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0045】
<第2の実施形態>
図9には、本発明の第2実施形態に係るスライドレール装置70の部分的な構成が正面図にて示されており、図10には、第2実施形態に係るスライドレール装置70の部分的な構成が平面図にて示されている。このスライドレール装置70は、第1実施形態における操作部材52とは異なる操作部材72を備えている。この操作部材72は、左右のロック部材46の前部間に架け渡されたワイヤ74と、ワイヤ74が内側に挿通されたパイプ部材76と、パイプ部材76に対して回転可能に取り付けられた操作部78とを有している。
【0046】
パイプ部材76は、例えば金属製のパイプによって構成され、左右方向を軸線方向として配置されており、左右方向の両端部が溶接等の手段で左右のインナレール44の前端部に固定されている。操作部78は、例えば金属材料によって段付きの円柱状に形成されており、上下方向を軸線方向として配置されている。この操作部78は、パイプ部材76の左右方向中間部に回転可能に支持された小径部78Aと、小径部78Aの上端部に一体に接続された大径部78Bとを有している。大径部78Bは、パイプ部材76の上方側に配置されている。
【0047】
図11図14に示されるように、小径部78Aには、ワイヤ74の中間部が挿通された挿通孔79(図11では図示省略)が形成されている。大径部78Bが回転操作されると、図13図14に示されるように、ワイヤ74の中間部が小径部78Aに巻き取られ、ワイヤ74の両端側が左右方向の中央側へ変位する(図10図13及び図14の矢印P参照)。これにより、ワイヤ74の両端部が連結された左右のロック部材46の前部が左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材46がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0048】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両の床部に対するシートクッション12の配置高さを低く設定することができ且つスライドをロックするための構成を簡素化することができる。
【0049】
<第3の実施形態>
図15及び図16には、本発明の第3実施形態に係るスライドレール装置80の部分的な構成が正面図にて示されている。このスライドレール装置80は、第1実施形態における操作部材52とは異なる操作部材82を備えている。この操作部材82は、操作レバー84と4つのヒンジ部92とによって構成されている。操作レバー84は、左右の固定部86と、左右のリンク部88と、操作部90とに分割されている。
【0050】
左右の固定部86は、左右方向の外側端部が左右のロック部材46の前部にそれぞれ固定されている。左右のリンク部88は、左右の固定部86における左右方向の内側端部にそれぞれ各一端部(ここでは各下端部)がヒンジ部92を介して連結されている。左右のリンク部88の各他端部(ここでは各上端部)は、操作部90における左右方向の両端部にそれぞれヒンジ部92を介して連結されている。各ヒンジ部92は、左右の固定部86、左右のリンク部88及び操作部90をそれぞれ前後方向に沿った軸線回りに回転可能に連結している。
【0051】
上記の操作部90が上方側へ操作(図15の矢印U参照)されると、操作部90における左右方向の両端部に対してそれぞれ各他端部が連結された左右のリンク部88が左右方向の内側へ変位する(図16の矢印P参照)。すると、左右のリンク部88の各一端部に対してそれぞれ左右方向の内側端部が連結された左右の固定部86が左右方向の内側へ変位する。これにより、左右の固定部86における左右方向の外側端部が固定された左右のロック部材46の前部が左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材46がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0052】
なお、図17に示されるように、左右のリンク部88が意図しない方向へ変位することを防止するため、各ヒンジ部92には、第1実施形態におけるストッパ60と同様のストッパを設けることが好ましい。
【0053】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両の床部に対するシートクッション12の配置高さを低く設定することができ且つスライドをロックするための構成を簡素化することができる。
【0054】
<第4の実施形態>
図18及び図19には、本発明の第4実施形態に係るスライドレール装置100の部分的な構成が正面図にて示されている。このスライドレール装置100は、第1実施形態における操作部材52とは異なる操作部材102を備えている。この操作部材102では、操作レバー104と2つのヒンジ部114とによって構成されている。操作レバー104は、左右の固定部106と操作部108とに分割されている。操作部108は、左右の把持部110と、弾性部材112とを備えている。
【0055】
左右の固定部106は、左右方向の外側端部が左右のロック部材46の前部にそれぞれ固定されている。左右の把持部110は、左右の固定部106における左右方向の内側端部にそれぞれ各一端部(ここでは各下端部)がヒンジ部114を介して連結されている。左右の把持部110の各他端部(ここでは各上端部)は、捩りコイルスプリングである弾性部材112を介して互いに連結されている。
【0056】
操作部108が備える左右の把持部110が弾性部材112の弾性力に抗して互いに接近する方向へ操作されると、左右の把持部110が左右方向の内側端部にそれぞれ連結された左右の固定部106が互いに接近する方向(すなわち左右方向の内側)へ変位する(図19の矢印P参照)。これにより、左右の固定部106における左右方向の外側端部が固定された左右のロック部材46の前部が左右方向の内側へ変位し、左右のロック部材46がロック位置からアンロック位置へ回転される。
【0057】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両の床部に対するシートクッション12の配置高さを低く設定することができ且つスライドをロックするための構成を簡素化することができる。
【0058】
以上、幾つかの実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用シート
12 シートクッション
22 シートバック
40 スライドレール装置
42 アウタレール
44 インナレール
46 ロック部材
52 操作部材
56 ヒンジ部
58 操作部
70 スライドレール装置
72 操作部材
74 ワイヤ
76 パイプ部材
78 操作部
80 スライドレール装置
82 操作部材
86 固定部
88 リンク部
90 操作部
100 スライドレール装置
102 操作部材
106 固定部
108 操作部
110 把持部
112 弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19