(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151712
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】測量用ターゲット装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065292
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】511125478
【氏名又は名称】株式会社JFDエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100173381
【弁理士】
【氏名又は名称】三觜 宏之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】林 広弥
(57)【要約】
【課題】測定点から離れた場所にターゲットが配置された場合であっても、正確な測量を可能とする測量用ターゲット装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1のターゲット球11と、一端が第1のターゲット球11に接続される接続用ポール12と、接続用ポール12の他端に接続される第2のターゲット球13と、一端に測量の測定点を指し示す尖端部14aが形成され、他端に第2のターゲット球13が接続される石突き14と、から構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続用ポールの両端部にそれぞれ接続される第1のターゲット球と第2のターゲット球と、
先端に向かって先細りする尖端部を有し、後端が前記第2のターゲット球に接続される指示部と、
を備えたことを特徴とする測量用ターゲット装置。
【請求項2】
前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記支持部の先端が、前記第1のターゲット球の中心から前記第2のターゲット球の中心に向かう軸線方向と同じ方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載の測量用ターゲット装置。
【請求項3】
前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記指示部の先端が、前記第1のターゲット球の中心から前記第2のターゲット球の中心に向かう軸線方向に対して傾斜する方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載の測量用ターゲット装置。
【請求項4】
前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記第2のターゲット球の半径に対する前記第2のターゲット球の中心から前記指示部の先端までの長さの比は、2以上5以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置。
【請求項5】
前記第2のターゲット球の球径は、前記第1のターゲット球の球径よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置。
【請求項6】
前記指示部が石突きであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置。
【請求項7】
前記第1のターゲット球は、支持用ポールを介して、脚部を有する支持体に接続されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスキャナによる測量の際に用いられる測量用ターゲット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元レーザスキャナを用いた測量では、半球状に形成されたターゲットを地上に配置した状態で、レーザスキャナからターゲットにレーザ光を照射して多数の点群データを取得し、ターゲットの位置の座標を取得する。土地の測量は、この作業を測量対象となる土地の各所において行われ、3次元の地形モデルを作成される。このため、測量においては、ターゲットの配置場所が重要になる。
【0003】
しかし、立入りが困難な場所や地物が存在する場所等では、ターゲットを配置することができない問題があった。そのため、ターゲットを測定点から一定距離離して測量を行うことになるが、測定点から離れれば離れるほど正確な位置を特定することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、プリズムを設けたポールを垂直に整準することなく測量が可能な測量システムが提案されている。しかし、基準角度に対する3軸の傾斜角を検出する傾斜センサを設ける必要があった。
【0006】
そこで、本願発明は、測定点から離れた場所にターゲットが配置された場合であっても、正確な測量を可能とする測量用ターゲット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の測量用ターゲット装置は、接続用ポールの両端部にそれぞれ接続される第1のターゲット球と第2のターゲット球と、先端に向かって先細りする尖端部を有し、後端が前記第2のターゲット球に接続される指示部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1に記載の測量用ターゲット装置であって、前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記支持部の先端が、前記第1のターゲット球の中心から前記第2のターゲット球の中心に向かう軸線方向と同じ方向を向いていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1に記載の測量用ターゲット装置であって、前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記指示部の先端が、前記第1のターゲット球の中心から前記第2のターゲット球の中心に向かう軸線方向に対して傾斜する方向を向いていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置であって、前記指示部が前記第2のターゲット球に接続された際に、前記第2のターゲット球の半径に対する前記第2のターゲット球の中心から前記指示部の先端までの長さの比は、2以上5以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置であって、前記第2のターゲット球の球径は、前記第1のターゲット球の球径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置であって、前記指示部が石突きであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の測量用ターゲット装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載の測量用ターゲット装置であって、前記第1のターゲット球は、支持用ポールを介して、脚部を有する支持体に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る測量用ターゲット装置は、測定点から離れた場所にターゲットが配置された場合であっても、正確な測量を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る測量用ターゲット装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明に係る測量用ターゲット装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る測量用ターゲット装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る測量用ターゲット装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、測量用ターゲット装置1は、支持用ポール15に接続される第1のターゲット球11と、一端が第1のターゲット球11に接続される接続用ポール12と、接続用ポール12の他端に接続される第2のターゲット球13と、後端が第2のターゲット球13に接続される石突き14(指示部)と、から構成される。
【0018】
第1のターゲット球11と第2のターゲット球13は離間して配置され、接続用ポール12の両端部の長手方向にそれぞれ接続できるようになっている。石突き14は、第2のターゲット球13が接続用ポール12と接続される側の半球とは反対側の半球に、第2のターゲット球13の中心O2から径外方向に延在するようにして接続される。石突き14を地盤面に配置して、支持用ポール15を鉛直方向又は斜め方向に向けても倒れないように、人が手に取って支持することも可能であるが、
図3に示すように、支持用ポール15に接続された支持体16によって支持することも可能である。
【0019】
図1に示すように、第1のターゲット球11には、一方の半球に接続用ポール12と接続するための雌ネジ部11aが、他方の半球に支持用ポール15と接続するための雌ネジ部11bが、球の一部をくり抜くように形成されている。第2のターゲット球13には、一方の半球に接続用ポール12と接続するための雌ネジ部13aが、他方の半球に石突き14と接続するための雌ネジ部13bが、球の一部をくり抜くように形成されている。接続用ポール12の両端部には、それぞれ雄ネジ部12a、12bを有する。これらをそれぞれ螺合することにより直線状に接続できるようになっている。また、これらの各部材は、雄ネジ部と雌ネジ部の螺合によってそれぞれ直接接続されていなくてもよく、例えば、接続用ポール12の両端部に雌ネジ部が形成され、両端部にそれぞれ雄ネジ部が形成された連結部材等を介して接続されていても構わない。特に、石突き14は市販品を利用することができるため、連結部材等を介して接続すれば、石突き14の先端から第2のターゲット球13までの長さ調節を兼ねることができる。なお、接続方法はネジ止めに限られない。
【0020】
図3に示すように、支持体16は、ヒンジ16aと複数本の脚部16b、16bとを有し、支持用ポール15の両端部のうち、第1のターゲット球11に接続される端部とは反対側の端部にヒンジ16aが接続されることによって、支持用ポール15を上下左右方向に自在に動かすことができるようになっている。また、それぞれの脚部16b、16bは、脚部の長さが調節できるようになっている。測量用ターゲット装置1は、ヒンジ16aを頂点にして、複数本の脚部16b、16bの下端部と石突き14の尖端部14aとで支持されることにより、安定して固定することができる。なお、支持体16は、二脚である必要はなく、三脚スタンド等を利用することも可能である。また、支持体16は、ヒンジ16aではなく、支持用ポール15を上下左右方向に自在に動かすことができる可動式クリップ等を用いることも可能である。
【0021】
このように、測量用ターゲット装置1は、石突き14、第2のターゲット球13、接続用ポール12、第1のターゲット球11、支持用ポール15、支持体16がそれぞれ、ネジ止めや嵌合等の接続手段により着脱可能な構成となっている。これにより、コンパクトに収納することができ、測量現場までの持ち運びを容易にしている。
【0022】
第1のターゲット球11と第2のターゲット球13は、スフィアと呼ばれる中心から一定半径の球面を有する球体が用いられる。この球面にレーザスキャナからのレーザ光を照射させて多数の点群データを取得する。第1のターゲット球11と第2のターゲット球13の半径は同一でもよく、より好ましくは、第2のターゲット球13の半径が第1のターゲット球11の半径よりも小径であることが望ましい。多数の点群データを取得すると、より正確な測量を可能とするため、ターゲット球の半径がある程度大径であることが望ましい。しかし、第2のターゲット球13の半径が大径だと、石突き14の尖端部14aを地盤面に向けて配置できない場合があり、測量の障害になるおそれがある。そこで、第2のターゲット球13の半径が第1のターゲット球11の半径よりも小径にすることにより、この配置上の問題を回避し、かつ、正確な測量を可能としている。
【0023】
接続用ポール12は、測量に使用される円柱形状の棒状部材であり、第1のターゲット球11と第2のターゲット球13とが離間して配置できるように、所定の長さを有し、両端部で第1のターゲット球11と第2のターゲット球13をそれぞれ接続できるようになっている。接続用ポール12は、第1のターゲット球11の中心O1と第2のターゲット球13の中心O2を結ぶ軸線上に直線的に配置されることが望ましい。
【0024】
石突き14は、
図1に示すように、所定の長さを有する略円柱状の軸部を有し、軸部の先端側には、先端に向かって先細りする略円錐形状の尖端部14aが形成され、軸部の後端側には接続用ポール12と接続するための雄ネジ部14bが形成されている。石突き14は、その先端を任意の測量しようとする地盤上の地点に突き当てるようにして配置することにより、測量の測定点を石突き14の先端によって指し示すことが可能となる。石突き14は、第2のターゲット球13を、第1のターゲット球11の中心O1と第2のターゲット球13の中心O2とを結ぶ軸線方向Xに対して直交する第2のターゲット球13の中心O2を含む断面で区分したとき、第2のターゲット球13が接続される第2のターゲット球13の半球とは別の半球のいずれかの位置に接続される。このように、接続用ポール12の両端部に第1のターゲット球11と第2のターゲット球13とがそれぞれ接続され、石突き14の後端が第2のターゲット球13に接続された状態において、石突き14の先端は、第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2とを通る軸線方向と同じ方向を向いていることが望ましい。すなわち、石突き14は、長手方向において第1のターゲット球11の中心O1と第2のターゲット球13の中心O2と石突き14の尖端部14aとが同一軸線上に配置されるように、石突き14の先端の向きが、第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2を通る軸線方向Xと同じ方向に向けられて、第2のターゲット球13に接続されることが望ましい。また、
図4に示すように、石突き14は、その先端が第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2を通る軸線方向Xに対して傾斜した方向に向けられて、第2のターゲット球13の中心O2から径外方向に延在するようにして、第2のターゲット球13に接続されていても構わない。これにより、測定点に障害物等が存在することによって第2のターゲット球13を地盤上に設置できない場合に、接続用ポール12を鉛直方向に対して傾斜させて設置すれば、石突き14の先端が障害物等に接触することなく測定点を指し示すことが可能となる。なお、石突き14は、その尖端部14aが、軸線方向Xに沿って均等に先細りする円錐形状ではなく、先端が軸線方向Xを向かないようにして先細りする形状であっても構わない。
【0025】
図2に示すように、石突き14が第2のターゲット球13に接続された際に、第2のターゲット球13の半径d1と、第2のターゲット球13の中心O2から石突き14の先端までの長さd2の比は、1:2から1:5までの範囲であることが望ましい。石突き14の先端から第2のターゲット球13までの距離(石突き14の長さ)が短いと、接続用ポール12を斜めにして設置すれば第2のターゲット球13が地面に接触する。一方、石突き14の先端から第2のターゲット球13までの距離が離れれば離れるほど、測定点から第2のターゲット球13の中心O2までの距離が離れるため、点群データから解析した結果に誤差が生じる可能性がある。そのため、接続用ポール12を斜めにして設置しても第2のターゲット球13が地面に接触することがなく、解析結果に誤差の生じにくい範囲内を検討した結果、第2のターゲット球13の半径d1と、第2のターゲット球13の中心O2から石突き14の先端までの長さd2との比が、1:2から1:5までの範囲となった。具体的には、第2のターゲット球13の半径d1を50mmとした場合に、第2のターゲット球13の中心O2から石突き14の先端までの距離d2は100~250mmの範囲となる。
【0026】
このような構成により、第1のターゲット球11の半径と、接続用ポール12の長さ、第2のターゲット球13の半径と、石突き14の長さがそれぞれ既知であるため、第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2までの距離から、第2のターゲット球13の中心O2から第2のターゲット球13の中心O2から石突き14の先端までの距離を比率によって算出することができる。ところで、レーザスキャナからターゲット球にレーザ光を照射して点群データを取得すると、球の中心を正確に計測できる特徴がある。そこで、取得した点群データから、測量データ上での第1のターゲット球11の中心O1位置と第2のターゲット球13の中心O2位置を特定する。その両中心位置から第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2までの測量データ上の距離に基づいて、石突き14の先端の正確な位置を特定することができる。なお、2つの球体の中心を結ぶ軸線上に石突き14が接続され、かつ、その尖端部14aの向きが軸線方向Xに向けられていれば、第1のターゲット球11の中心O1から第2のターゲット球13の中心O2を通る軸線上に石突き14の尖端部14aが存在する。このように、2つの球体の中心を結ぶ軸線上に石突き14が接続され、かつ、その尖端部14aが軸線方向Xに向けられていれば、第1のターゲット球11の中心O1と、第2のターゲット球13の中心O2と、石突き14の尖端部14aとが直線状に並ぶため、方向がズレることなく、測量の測定点の位置を正確に特定することが可能となる。一方、
図4に示すように、石突き14の尖端部14aの向きが軸線方向Xから傾斜させた状態で接続されていれば、その傾斜角度(XとYのなす角度θ)から石突き14の先端の位置を特定することができる。以上のように、取得した点群データから第1のターゲット球11の中心O1位置と第2のターゲット球13の中心O2位置が定まれば、第2のターゲット球13が測量の測定点上に設置されなくても、測量の測定点を正確に計測することが可能となる。この作業を測量対象となる土地の各所において行えば、3次元の地形モデルが作成できる。
【符号の説明】
【0027】
1 測量用ターゲット装置
11 第1のターゲット球
12 接続用ポール
13 第2のターゲット球
14 石突き(指示部)
15 支持用ポール
16 支持体