(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151714
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ダクト構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20241018BHJP
B60H 3/00 20060101ALI20241018BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20241018BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20241018BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
B60H1/00 102S
B60H3/00 Z
F24F8/22
A61L2/10
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065298
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内堀 和磨
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
【テーマコード(参考)】
3D023
3L211
4C058
【Fターム(参考)】
3D023BB02
3D023BD01
3L211BA10
3L211DA14
3L211DA73
4C058AA23
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC02
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】エアダクトに配された光源を用いて乗物内の光源を削減する。
【解決手段】乗物内に配されて空気流路を形成するダクト本体40と、光源60と、ダクト本体40の一部を構成するとともに光源60を保持する光源保持部74と、光源保持部74をダクト本体40の壁面に沿う回転軸76aまわりに回転可能に保持し、光源60がダクト本体40内を照射する位置である第1位置と、光源60がダクト本体40の外側に向かって照射する位置である第2位置との間で、光源保持部74を回転させる保持部回転機構88と、を備えた構成とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物内に配されて空気流路を形成するダクト本体と、
光源と、
前記ダクト本体の一部を構成するとともに、前記光源を保持する光源保持部と、
前記光源保持部を前記ダクト本体の壁面に沿う回転軸まわりに回転可能に保持し、前記光源が前記ダクト本体内を照射する位置である第1位置と、前記光源が前記ダクト本体の外側に向かって照射する位置である第2位置との間で、前記光源保持部を回転させる保持部回転機構と、
を備えたダクト構造。
【請求項2】
前記ダクト本体の内部に配された空気清浄部を備え、
前記光源は、深紫外線を照射するものとされ、前記第1位置において前記空気清浄部に深紫外線を照射する請求項1に記載のダクト構造。
【請求項3】
前記ダクト本体は、乗物室の意匠面を形成する乗物用内装材の室外側に配され、
前記光源は、前記第2位置において、乗物室に向かって光を照射する請求項1または請求項2に記載のダクト構造。
【請求項4】
前記乗物用内装材は、開口を有する内装材本体部と、前記内装材本体部にスライド移動可能に設けられて前記開口を開閉させるスライダと、を備え、
前記保持部回転機構は、前記スライダのスライド移動によって前記光源保持部の回転を許容するものとされ、
前記スライダが前記開口を閉状態としている場合に、前記光源保持部を前記第1位置に位置させ、前記スライダが前記開口を開状態としている場合に、前記光源保持部を前記第2位置に位置させて前記開口から前記光源の光を出射する請求項3に記載のダクト構造。
【請求項5】
前記乗物用内装材は、天井材であり、
前記光源保持部は、前記ダクト本体の本体部に対してヒンジによって回転可能に保持されており、
前記スライダは、前記光源保持部を下方から支持することで前記第1位置に位置させ、スライド移動することによって前記光源保持部の支持位置を変化させて、前記光源保持部を回転させる請求項4に記載のダクト構造。
【請求項6】
前記乗物用内装材は、天井材である請求項3に記載のダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に配されるエアダクトのダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エアダクト(空気通路)内において流れる空気を清浄する技術、具体的には、光触媒作用を引き起こす物質(光触媒体)に対して、光を照射して、光触媒作用を活性化させ、空気中に含まれる臭い成分等を分解することで、空気を清浄する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-129704号公報
【特許文献2】特開2022-119199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年では、除菌のニーズが高まっており、エアダクト中のフィルタ等を除菌すべく、深紫外線を照射する構成のものも存在する。さらに、上記特許文献2のように、車室内に、深紫外線を照射して、シートや内装材の除菌を行うことも行われる。このように、乗物内には、可視光や上記紫外線を照射するために種々の光源が設けられる。特に、深紫外線を照射する光源は、比較的高価なものであるため、複数設けると、コストアップに繋がることになる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、エアダクトに配された光源を用いて乗物内の光源を削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示されるダクト構造は、下記の構成とされている。
(1)乗物内に配されて空気流路を形成するダクト本体と、
光源と、
前記ダクト本体の一部を構成するとともに、前記光源を保持する光源保持部と、
前記光源保持部を前記ダクト本体の壁面に沿う回転軸まわりに回転可能に保持し、前記光源が前記ダクト本体内を照射する位置である第1位置と、前記光源が前記ダクト本体の外側に向かって照射する位置である第2位置との間で、前記光源保持部を回転させる保持部回転機構と、
を備えたダクト構造。
【0007】
本願に開示のダクト構造は、例えば、光触媒作用を引き起こす物質に対して、光を照射する光源(可視光線や紫外線を照射するもの)や、エアダクト内に配されたフィルタ等を除菌するために深紫外線を照射する光源等を、ダクトの外側に向けることが可能とされている。光源が、可視光を照射するものである場合には、乗物室内に向けて光を照射する照明装置として利用することができる。また、光源が、紫外線を照射するものである場合には、乗物室内に向けて紫外線を照射して乗物室内の除菌に利用することができる。したがって、本願に開示のダクト構造によれば、1つの光源を、2種類の目的で利用することが可能であり、コストを抑えることができる。なお、光源が深紫外線を照射するものである場合、第2位置において乗物室に向けて深紫外線を出射する場合に限定されず、例えば、乗物室内に小物等を除菌するスペースを設け、そのスペース内に向けて深紫外線を出射するような構成としてもよい。
【0008】
また、上記構成のダクト構造において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0009】
(2)前記ダクト本体の内部に配された空気清浄部を備え、
前記光源は、深紫外線を照射するものとされ、前記第1位置において前記空気清浄部に深紫外線を照射する(1)項に記載のダクト構造。
【0010】
この構成のダクト構造は、光源の種類が深紫外線を照射するものに限定されている。深紫外線を照射する光源は、比較的コストが高いため、コストをより抑えることができる。また、この構成のダクト構造は、ダクトの外側、例えば、乗物室内等の乗員が触れやすい箇所(車両のシートや内装材)等を除菌することも可能となる。近年では、公共の乗物やタクシー等は、不特定多数の乗員が乗り降りするため、除菌のニーズが高まっており、この構成のダクト構造が好適である。
【0011】
(3)前記ダクト本体は、乗物室の意匠面を形成する乗物用内装材の室外側に配され、
前記光源は、前記第2位置において、乗物室に向かって光を照射する(1)項または(2)項に記載のダクト構造。
【0012】
乗物室内には、マップランプやルームランプ等の照明用の光源や、上述したような乗物室内の除菌を目的とした光源等、種々のものが必要となる。したがって、この構成のダクト構造には、光源の数を減らすことが可能な本願に開示のダクト構造が好適である。
【0013】
(4)前記乗物用内装材は、開口を有する内装材本体部と、前記内装材本体部にスライド移動可能に設けられて前記開口を開閉させるスライダと、を備え、
前記保持部回転機構は、前記スライダのスライド移動によって前記光源保持部の回転を許容するものとされ、
前記スライダが前記開口を閉状態としている場合に、前記光源保持部を前記第1位置に位置させ、前記スライダが前記開口を開状態としている場合に、前記光源保持部を前記第2位置に位置させて前記開口から前記光源の光を出射する(3)項に記載のダクト構造。
【0014】
この構成のダクト構造によれば、乗員が乗物室からの操作で、光源の照射方向を容易に変更することができる。スライダの移動に連動して光源保持部が回転する構成(スライダの移動を光源保持部の回転に変換する構成)であってもよく、スライダが単に光源保持部を支持しており、その支持が外れることで、光源保持部が回転する構成であってもよい。
【0015】
(5)前記乗物用内装材は、天井材であり、
前記光源保持部は、前記ダクト本体の本体部に対してヒンジによって回転可能に保持されており、
前記スライダは、前記光源保持部を下方から支持することで前記第1位置に位置させ、スライド移動することによって前記光源保持部の支持位置を変化させて、前記光源保持部を回転させる(4)項に記載のダクト構造。
【0016】
この構成のダクト構造は、エアダクトの配設箇所が天井に限定されるとともに、保持部回転機構による光源保持部を回転させる構成が具体化されている。この構成のダクト構造によれば、簡便な構造で、光源保持部を回転させることができる。
【0017】
(6)前記乗物用内装材は、天井材である(3)項または(4)項に記載のダクト構造。
【0018】
乗物の天井には従来からルームランプが配されていることや、乗物室内の除菌を行うために深紫外線を照射する位置には天井が好適であることから、天井から光を照射可能な光源は、有効的に利用できる。したがって、天井材の乗物室外側に配されたエアダクトに対して、本願に開示のダクト構造は好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エアダクトに配された光源を用いて乗物内の光源を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態のダクト構造が採用された空気清浄ユニットを備える車両の天井を車室内から視た斜視図
【
図2】空気清浄ユニットによる空気の流れを示す模式図
【
図4】空気清浄ユニットの側面断面図(
図3におけるA-A断面図)
【
図5】実施形態のダクト構造の要部を拡大して示す図であり、スライダが開口を閉じている状態を示す図
【
図6】実施形態のダクト構造の要部を拡大して示す図であり、スライダが開口を途中まで開いた状態を示す図
【
図7】実施形態のダクト構造の要部を拡大して示す図であり、スライダが開口を全開した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態のダクト構造は、乗物である車両(自動車)10のエアダクトに採用されている。具体的には、
図1に示すように、車両10には、天井に、室内前方側の空気を、室内後方側に送るための送風装置12が設けられており、その送風装置12のエアダクトに、本発明のダクト構造が採用されている。以下、
図1から
図7を参照しつつ、この送風装置12について説明しつつ、本発明の実施形態のダクト構造について説明することとする。
【0022】
送風装置12は、
図2に示すように、車体の天井部分を構成するルーフパネル14と、そのルーフパネル14の室内内側を覆うルーフトリム16との間に設けられている。そして、
図1および
図2に示すように、ルーフトリム16に取り付けられたカバー18に形成された吸入口18aから車室前方側の空気を吸いこんで、ルーフトリム16におけるカバー18の後方側に形成された送風口16aから空気を放出する。
【0023】
送風装置12は、
図3および
図4に示すように、吸入口18aから空気を吸い込むための送風ファン20と、送風ファン20が吸い込んだ空気を後方に送るエアダクト22と、からなる。エアダクト22には、送風ファン20が吸い込んだ空気を清浄する空気清浄ユニット24が設けられている。また、エアダクト22は、空気清浄ユニット24から送風口16aまでの部分が、ダクト部材26によって形成されている。詳しく言えば、ダクト部材26がルーフトリム16の裏面(上面)に沿う形で固定されることで、ダクト部材26とルーフトリム16との間に、エアダクト22の一部が形成されている。
【0024】
上記のうち送風ファン20と空気清浄ユニット24は、ルーフトリム16に設けられた開口16bに臨む形で配されている。開口16bは、車室内側から前述のカバー18により覆われている。このカバー18は、車両後方から前方に向けて下方に傾斜するように配置されており、前方部分に吸入口18aが前方に向けて開口している。
【0025】
送風ファン20は、
図4に示すように、全体として扁平な略円柱型の本体部30を備えており、その本体部30は、底面が上下方向を向くように設置されている。送風ファン20は、その底面に形成された吸気口32から吸い込んだ空気を後方に向けて送風する構成とされており、後方に向けて扁平な角筒状に突出する排気口34を備えている。
【0026】
送風ファン20の後方には、空気清浄ユニット24が設けられている。そして、この空気清浄ユニット24が、本実施形態のダクト構造を有するものとなっている。空気清浄ユニット24は、送風ファン20の排気口34から連なる箱型のハウジング(ダクト本体)40を備えている。ハウジング40は、断面矩形の筒状のものであり、
図3,4に示すように、略水平方向に延在する上壁41と、上壁41と対向する底壁42と、上壁41および底壁42を連結する2つの側壁44とを備えている。そして、ハウジング40の前端に上記排気口34が連なるとともに、後端にダクト部材26が連なっている。
【0027】
ハウジング40内には、送風ファン20から送り出された空気をろ過するためのフィルタ(空気清浄部)50が収容されている。フィルタ50は、ハウジング40の内面に全周にわたって当接して、空気流路を覆う形で配されている。フィルタ50は、空気の流れる方向において、2層構造とされており、下流側の層は、上流側の層より目が細かくされている。また、上流側の層は、織布状、多孔質状あるいはメッシュ状の基材に、光触媒が担持された構成のものとなっている。光触媒は、光触媒作用を引き起こす物質であり、菌やウイルス等の微生物を殺菌する作用を有するものとすることができる。この光触媒としては、例えば、酸化チタン、タングステン、インジウム、銀、モリブデン、亜鉛、ガリウム、タンタル、およびヒ素等の金属化合物の中から採用することができる。
【0028】
そして、ハウジング40内におけるフィルタ50の上流側には、光源60が配されている。光源60は、UV-LED62と、そのUV-LED62が実装された基板64とからなる。UV-LED62は、紫外線の中でも波長が短い波長100~280nmの深紫外線(UVC)を発光する深紫外線LED素子である。このUV-LED62は、頂面発光型のものであり、下流側に位置するフィルタ50に向かってUVCを照射し、光触媒作用を励起させるとともに、フィルタ50によって捕捉される異物(微小な菌やウイルス)に対して除菌効果を発揮する。なお、除菌効果を高める観点からすれば、UV-LED62が発光する深紫外線の波長は、200~280nmの範囲内であることがより好ましい。
【0029】
光源60は、
図5に示すように、ハウジング40の底壁42から立設する立設部70の下流側の壁面に固定されている。この立設部70と、立設部70が連結された底壁42の一部42a(以下、「底壁形成部42a」と呼ぶ場合がある)とは、光源60を保持する光源保持部74として機能する部分である。この光源保持部74は、上流側の端部(前端部)において、底壁42の本体部42bに対して、ヒンジ76によって連結されている。ヒンジ76は、車幅方向に延びる回転軸76aを有し、光源保持部74を、その回転軸76aまわりに回転可能に保持している。
【0030】
なお、この光源保持部74は、ヒンジ76によって、下方に向かって回転する方向(
図5において右回り)に付勢されている。ただし、後に詳しく説明するが、光源保持部74は、カバー18の一部によって下方から支持されており、その回転が規制されて、
図5に示した位置に位置し、光源60は、フィルタ50に向かってUVCを照射する状態とされている。つまり、この位置が、光源保持部74の第1位置である。なお、光源保持部74が第1位置に位置する場合には、光源保持部74の底壁形成部42aが、本体部42bの開口42b1を塞いで本体部42bに対して面一となり、密閉されたハウジング40が形成される。
【0031】
カバー18は、
図1に示すように、開口80aを有するカバー本体(内装材本体部)80と、その開口80aを開閉可能なスライダ82と、からなる。カバー本体80の開口80aは、
図5に示すように、上述した光源保持部74の直下に設けられている。そして、その開口80aを開閉するスライダ82は、開口80aを塞ぐ板状のスライダ本体82aと、そのスライダ本体82aの後方側の部分から下方に突出形成されて乗員が指でつまむことが可能なツマミ部82bと、ツマミ部82bと逆方向である上方に突出形成されて上述した光源保持部74を下方から支持する支持部82cと、を有している。
【0032】
図5に示すように、スライダ82が後方側に位置した状態において、開口80aを閉状態としており、その位置から前方に向かってスライド移動可能とされている。つまり、スライダ82が前方に移動させられることで、
図6および
図7に示すように、開口80aを開状態とすることができるようになっている。
【0033】
スライダ82が前方にスライド移動させられると、スライダ82の支持部82cの位置が前方に移動することで、
図6に示すように、光源保持部74は、支持部82cによる支持から外れることになる。光源保持部74は、ヒンジ76によって下方に向かう回転方向に付勢されており、回転軸76aを中心として、回転させられることになる。つまり、光源保持部74は、第1位置において後方に位置していた先端部が、下方に位置し、カバー18の開口80aから突出する状態となる。この状態においては、立設部70が後方に向かって延びており、光源60のUV-LED62が下方に向いている。つまり、光源60は、開口80aから車室(乗物室)内に向かってUVCを出射することができる。この状態において、スライダ82は、後端部82dにおいて光源保持部74に当接している。スライダ82は、ヒンジ76による付勢力に抗って、その位置を維持できるようになっている。つまり、スライダ82の位置に応じて、光源保持部74の回転位置を微調整することができ、UVCの出射方向を調整することができる。なお、スライダ82は、
図7に示すように、支持部82cが、カバー本体80の開口80aの縁部に当接する位置(あるいは、スライダ本体82aの前端がカバー本体80の開口80aの開口縁に当接する位置)まで移動可能とされている。つまり、
図6および
図7に示した光源保持部74の位置、つまり、車室内に向かってUVCを出射可能な位置が、第2位置と考えることができる。
【0034】
また、UV-LED62への通電およびそれを制御するための配線86は、基板64から立設部70を貫通して前方に向かって延び出すとともに、底壁42からハウジング40の外側に延び出している。そして、配線86は、ハウジング40とカバー18との間に配策され、車両の他の配線と接続される。なお、配線86は、光源保持部74の回転を許容するために、長さに余裕を持った状態で配策されている。
【0035】
以上のように、本実施形態のダクト構造は、ルーフトリム16とカバー18とによって形成された乗物用内装材である天井材に対して設けられている。そして、本実施形態のダクト構造においては、光源60がダクト本体であるハウジング40内を照射する位置である第1位置と、光源60がハウジング40の外側に向かって照射する位置である第2位置との間で、光源保持部74を回転させる保持部回転機構88が、ヒンジ76やスライダ82等を含んで構成されていると考えることができる。
【0036】
次に、光源60の使用方法を切り替えるための制御について説明する。車両に搭載された制御装置90(
図5に概略的に示している)には、前述した送風ファン20や光源60が接続されている。また、制御装置90には、人感センサ92および近接センサ94等も接続されている。人感センサ92は、
図4~
図7に示すように、第2位置にある光源保持部74の近傍に、詳しく言えば、カバー18の裏面側で、開口80aの前方側に固定されている。また、近接センサ94は、カバー本体80の下面のスライダ本体82aに対向する部分に設けられており、スライダ82の上面に設けられた金属片94aが下方に位置するか否かを検出するものである。つまり、
図5に示すように、スライダ82が開口80aを閉じている場合には、近接センサ94の下方に金属片94aが位置しておらず、スライダ82が前方にスライド移動させられると、
図6および
図7に示すように、近接センサ94の下方に金属片94aが位置することになる。つまり、近接センサ94は、スライダ82が少しでも前方に移動させられて、開口80aが開かれたことを検出することができるようになっている。
【0037】
制御装置90は、近接センサ94によって開口80aが閉じられていること、換言すれば、光源保持部74が第1位置にある場合には、送風ファン20および光源60がON状態となることを許容する、つまり、送風装置12の作動を許容する。そして、例えば、送風装置12が作動している状態で、乗員がスライダ82を前方にスライド移動させた場合を考える。制御装置90は、近接センサ94が、スライダ82が前方に移動させられたことを検出すると、まず、送風装置12の作動を停止させる、つまり、送風ファン20および光源60をOFF状態とするのである。つまり、光源60が車室内に向かってUVCを照射可能な状態となる前に、確実にUVCの照射を一旦停止させるようになっており、UVCが乗員に当たることのないよう、乗員の安全性が確保されている。
【0038】
近接センサ94が、スライダ82が前方に移動させられたことを検出した場合には、制御装置90は、人感センサ92をON状態とし、車室内に乗員がいなくたったことを確認した後にのみ、光源60をON状態とするようになっている。
【0039】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0040】
上記実施形態においては、光源60は深紫外線を照射するものとされていたが、可視光を出射するものであってもよい。その場合には、光源保持部74が第1位置にある場合には、光源の光は、光触媒を活性化させるものとして働き、第2位置にある場合には、車室内の天井中央に配されたセンターランプとして機能させることができる。
【0041】
上記実施形態において、保持部回転機構は、ヒンジ76とスライダ82とを含んで構成されていたが、その構成に限定されず、種々の構成の回転させる機構を採用可能である。また、例えば、車室内に配された乗員が操作可能な操作部と、光源保持部とが一体的に形成されたもの、具体的には、光源保持部の下端から下方に突出した部分を設けてその部分を乗員が摘まんで、下方に回転させるようにして、第2位置に位置させるような構成であってもよい。
【0042】
上記実施形態のダクト構造は、車両10の天井材の室外側に配されたエアダクト22に対して採用されていたが、それに限定されず、インストゥルメントパネル,サイドトリムなど、他の車両用内装材の室外側にエアダクトが配される場合には、そのエアダクトに対して設けることも可能である。
【0043】
上記実施形態において、本発明のダクト構造は、車両(自動車)に提供されるものとされていたが、それに限定されず、鉄道、飛行機、船舶等の種々の乗物において提供されるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…車両、16…ルーフトリム〔天井材〕、18…カバー〔乗物用内装材〕、22…エアダクト、24…空気清浄ユニット〔ダクト構造〕、40…ハウジング〔ダクト本体〕、50…フィルタ〔空気清浄部〕、60…光源、62…UV-LED、74…光源保持部、76…ヒンジ、76a…回転軸、80…カバー本体〔内装材本体〕、80a…開口、82…スライダ、88…保持部回転機構