IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-直流遮断器 図1
  • 特開-直流遮断器 図2
  • 特開-直流遮断器 図3
  • 特開-直流遮断器 図4
  • 特開-直流遮断器 図5
  • 特開-直流遮断器 図6
  • 特開-直流遮断器 図7
  • 特開-直流遮断器 図8
  • 特開-直流遮断器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151721
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01H33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065312
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上松 航星
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BA09
5G027BC02
5G027BC14
(57)【要約】
【課題】遮断時に発弧したアークを効率よく消弧部に移動させ、遮断を効率的に行うことができる直流遮断器を提供する。
【解決手段】固定側接点6を有する固定側接触子5と、固定側接点6に接離する可動側接点8を有する可動側接触子7と、可動側接点8が固定側接点6から開離するときに生じるアークAを消弧する消弧部15と、アークAが消弧部15に移動するまでのアーク移動経路を形成する一対の側板16とを備えた直流遮断器であって、一対の側板16は、固定側接点6および可動側接点8を挟んだ位置に設置された第1領域部161と、第1領域部161から消弧部15までのアーク移動経路を挟んだ位置に設置された第2領域部162とを有し、第1領域部161は、第2領域部162よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側接点を有する固定側接触子と、
前記固定側接点に接離する可動側接点を有する可動側接触子と、
前記可動側接点が前記固定側接点から開離するときに生じるアークを消弧する消弧部と、
前記アークが前記消弧部に移動するまでのアーク移動経路を形成する一対の側板とを備えた直流遮断器であって、
前記一対の側板は、前記固定側接点および前記可動側接点を挟んだ位置に設置された第1領域部と、前記第1領域部から前記消弧部までの前記アーク移動経路を挟んだ位置に設置された第2領域部とを有し、
前記第1領域部は、前記第2領域部よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されている直流遮断器。
【請求項2】
前記一対の側板の間に設けられ、前記一対の側板と共に前記消弧部側に広がる前記アーク移動経路を形成する、前記固定側接触子側に配置された固定側アークホーンおよび前記可動側接触子側に配置される可動側アークホーンを備え、
前記第1領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンが最も接近している部分まで拡張して形成されている請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記第2領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンとが最も離れた部分まで拡張して形成されている請求項2に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記第2領域部は、前記第1領域部よりも水分を多く含むアブレーションガスを発生する材料にて形成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記一対の側板は、それぞれ、前記第1領域部を有する第1側板と、前記第2領域部を有するとともに前記第1側板に当接して形成される第2側板とにて構成され、
前記第1側板と前記第2側板との当接面は、それぞれに互いに重ね合わされる段差形状にて形成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記一対の側板の前記第1領域部の面材が、前記一対の側板の前記第2領域部の面材よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記固定側接点および可動側接点間で生じるアークを前記消弧部に移動させる方向に気体を吹き付けるノズルを備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、直流遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の直流遮断器は、複数の消弧グリッドを有する消弧部を備え、遮断時に生じるアークを消弧部の消弧グリッドに導いてアークを消弧するようにしている。例えば、特許文献1には、固定側接点を有する固定接触子と、固定側接点に接離する可動側接点を有する可動接触子とを有し、接点間で発弧したアークが移動するアーク移動経路を挟むように側板が設けられた遮断器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/088561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直流遮断器は、遮断時に、遮断器の接点間に発弧したアークが側板間のアーク移動経路を介して消弧グリッドに移動し、消弧グリッドを有する消弧部で消弧される。アークがアーク移動経路を移動するときには側板が熱せられ、側板を構成する材料が溶発されてアブレーションガスが発生する。このアブレーションガスにより消弧部に移る前のアークを冷却でき、消弧部における消弧を効率的に行うことができる。
【0005】
しかし、アークの発弧時点において固定側接点および可動側接点付近でアブレーションガスの発生量が多くなると、接点間に発弧したアークが十分に伸長せず、アークが再点弧してしまう。これによって、アークが消弧部に移動しないことがあり、その結果、消弧部でのアークの消弧ができず、遮断を効率的に行えないという問題点があった。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、遮断時に発弧したアークを効率よく消弧部に移動させ、遮断を効率的に行う直流遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される直流遮断器は、
固定側接点を有する固定側接触子と、
前記固定側接点に接離する可動側接点を有する可動側接触子と、
前記可動側接点が前記固定側接点から開離するときに生じるアークを消弧する消弧部と、
前記アークが前記消弧部に移動するまでのアーク移動経路を形成する一対の側板とを備えた直流遮断器であって、
前記一対の側板は、前記固定側接点および前記可動側接点を挟んだ位置に設置された第1領域部と、前記第1領域部から前記消弧部までの前記アーク移動経路を挟んだ位置に設置された第2領域部とを有し、
前記第1領域部は、前記第2領域部よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される直流遮断器によれば、
遮断時に発弧したアークを効率よく消弧部に移動させ、遮断を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1による直流遮断器の電流通電時の状態を示す側断面図である。
図2】実施の形態1による直流遮断器の開極動作中の状態を示す側断面図である。
図3図1に示した直流遮断器の消弧室の構成を示す外観図である。
図4図3に示した消弧室のX-X線で切断した際の側板部分の概略断面図である。
図5図5Aは、図1に示した直流遮断器の側板の構成を示す斜視図、図5Bは、図5Aに示した側板の分解斜視図である。
図6図1に示した直流遮断器におけるアークの消弧を説明する図である。
図7図1に示した直流遮断器におけるアークの消弧を説明する図である。
図8】実施の形態2による直流遮断器の構成要部を示す側断面図である。
図9】実施の形態3による直流遮断器の構成要部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による直流遮断器の電流通電時の状態を示す側断面図である。図2は、実施の形態1による直流遮断器の開極動作中の状態を示す側断面図である。図3は、図1に示した直流遮断器の消弧室の構成を示す外観図である。図4は、図3に示した消弧室のX-X線で切断した際の側板部分の概略断面図である。図5Aは、図1に示した直流遮断器の側板の構成を示す斜視図である。図5Bは、図5Aに示した側板の分解斜視図である。図6は、図1に示した直流遮断器におけるアークの消弧を説明する図である。図7は、図1に示した直流遮断器におけるアークの消弧を説明する図である。
【0011】
図1および図2に示すように、直流遮断器1は、消弧空間が形成された消弧室2と、消弧室2の下側に配置された上部導体3と、上部導体3の下側に配置された下部導体4と、上部導体3に接続された固定側接触子5と、固定側接触子5の端部に装着された固定側接点6と、下部導体4に可撓導体を介して接続された可動側接触子7と、可動側接触子7の端部に装着された可動側接点8とを備える。
【0012】
さらに、下部導体4に配置され、過電流を検出するとラッチ10を解除する過電流検出器9と、回転軸11を介して可動側接触子7を操作する操作部12と、可動側接点8の動作により、固定側接点6と可動側接点8との間に発生したアークAを上側の消弧室2に導くためのアークホーン20と、電極降下電圧およびアーク長さの延長によって、アーク電圧を高め限流遮断するための磁性を持つ薄板状の磁性体にて形成された消弧グリッド15と、側板16とを備える。なお、側板16の構成の詳細は後述する。アークホーン20は、固定側に設置された固定側アークホーン13と、可動側に設置された可動側アークホーン14とにて構成される。固定側接触子5および可動側接触子7は消弧室2の内部に収納されている。
【0013】
図3および図4に示すように、消弧室2は、アークAを消弧する消弧部を有する消弧室上部22と、消弧室上部22の下部に配置された消弧室下部21との2つのユニットに分かれている。そして、消弧室上部22には、消弧部としての複数の消弧グリッド15が配置される。消弧室下部21には、固定側接点6と可動側接点8とアークホーン20と一対の側板16とが配置される。
【0014】
一対の側板16は、固定側接点6および可動側接点8を含む接点付近、および、接点付近から消弧部までを覆うように、アークAが消弧部に移動するまでのアーク移動経路を形成する。よって、先に示したアークホーン20は、当該一対の側板16の間に設けられ、一対の側板16とともに消弧部側に広がるアーク移動経路を形成することとなる。また、側板16は、消弧室下部21に一対のカバー17で押さえられ固定されている。
【0015】
さらに側板16は、図5に示すように、側板16の下部側の第1側板161と、側板16の上部側の第2側板162とに分割して形成されている。そして、第1側板161は、固定側接点6および可動側接点8を含む接点付近を覆う第1領域部となる。また、第2側板162は、第1領域部から消弧部までのアーク移動経路を挟んだ位置の第2領域部となる。
【0016】
また、第1側板161は、アーク移動経路内において、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14が最も接近している部分、すなわち、固定側接点6および可動側接点8の近傍まで拡張して形成されている。さらに、第2側板162は、アーク移動経路内において、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14とが最も離れた部分、すなわち、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14の消弧部側の両端まで拡張して形成されている。
【0017】
側板16は、第1側板161および第2側板162のそれぞれに適した特性を持つ材料を使用している。すなわち、第1側板161は、第2側板162よりもアブレーションガスの発生量が相対的に少ない材料で形成される。具体的には、第1側板161は、第2側板162に比べて溶発によるアブレーションガスの発生量が少ないセラミックス系材料を用いればよい。なお、アブレーションガスとは、熱により材料が溶発して発生する分解ガスのことである。
【0018】
第1側板161の材料としては、例えば、コージェライト、ジルコン、ジルコニアなど、多孔質による空隙があり、溶発によるアブレーションガスの発生量が少ないセラミックス系材料を用いればよい。
第2側板162の材料としては、例えば、含水ケイ酸塩鉱物または水酸化アルミニウムを含むセラミックス系材料、不飽和ポリエステル樹脂(BMC(Bulk Molding Compound))などの材料を用いればよい。さらに、発生するアブレーションガスが、比熱または熱伝導率の高い成分、例えば、多量の水分(H2O)などを分解生成する特性を持つ材料であれば、さらに効果的である。
【0019】
また、第1側板161と第2側板162とは、隙間がないように結合されることが好ましい。ここでは、図4に示すように、第1側板161の当接面1611と第2側板162の当接面1621とをそれぞれに段差形状にし、これらの段差形状を重ね合わせることで、隙間ができにくく構成している。これにより、消弧室2をアークAによる損傷から保護できる。
【0020】
次に、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器1の動作について説明する。まず、通常の動作について説明する。図1に示すように、電流通電時は、操作部12により回転軸11を支点に回転駆動された可動側接触子7の端部に装着した可動側接点8と、固定側接触子5の端部に装着した固定側接点6とが接触し、電流通電経路が形成され、回路が接続状態になる。この接続状態では、下部導体4、可撓導体に接続された可動側接触子7、可動側接点8、固定側接点6、固定側接触子5、上部導体3の経路で電流を通電させる。
【0021】
次に、図2に示すように、不具合電流が流れると、電流遮断が行なわれる。まず、過電流検出器9が過電流を検出し、電流通電時において可動側接触子7を保持していたラッチ10を解除する。そして、回転軸11を中心に可動側接触子7が回転駆動し、開極動作を行う。この開極動作により、接触している固定側接点6と可動側接点8が開離する。すると、図2に示すように、固定側接点6と可動側接点8との間にアークAが発弧する。
【0022】
次に、図6および図7を用いて、上記のようにして固定側接点6、可動側接点8間に発弧したアークAの消弧について説明する。なお、図6は、側板16の記載は省略している。図6に示すように、固定側接点6と可動側接点8との間で発弧したアークAには上側に向かう方向に電磁力Eが働いており、アークAは、固定側アークホーン13および可動側アークホーン14間に転流したアークA1となる。そして、固定側アークホーン13および可動側アークホーン14を経由して消弧グリッド15の集合体までアークを導くことで、アークが消弧A2する。
【0023】
固定側接点6と可動側接点8で発弧したアークAが、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14に転流したアークA1となるまでは、アークAの熱により第1側板161の材料が溶発されてアブレーションガスが発生する。アークAをアークホーン20に転流させてアークA1とする際、溶発によるアブレーションガスの発生量が多くなると、アークAはその場に留まろうとして移動が阻害される。そのため、第1領域部を形成第1側板161には多孔質でアブレーションガスの発生量が第2領域部を形成する第2側板162よりも少ない材料を使用した方がよい。このように、本実施の形態1においては第1側板161から発生するアブレーションガスの発生量が少なくすることで、アークAの再点弧を抑制し、アークAを停滞なく転流したアークA1にできる。
【0024】
そして、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14に転流したアークA1は、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14を経由して消弧部側(図6および図7の上側)に移動する。第2領域部を形成する第2側板162では、固定側アークホーン13と可動側アークホーン14に転流したアークA1を消弧グリッド15で留めることで、アーク電圧を高め、電流を限流させる必要がある。よって、第2領域部を形成する第2側板162にアブレーションガスの発生量が多い材料を使用することで、転流したアークA1を冷却し、転流したアークA1に働く熱ピンチ効果によってアーク電圧を上昇する。
【0025】
転流したアークA1は、直流遮断器1の中央部と比較して両側の端部(陽極側、および、陰極側)の電気抵抗が高く、温度も高温となる傾向である。このため、固定側アークホーン13および可動側アークホーン14の先端部まで第2側板162が配置し、アブレーションガスを放出することによって、両側の端部(陽極側、陰極側)に存在する高温となる転流したアークA1をより効果的に冷却できる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、第1側板161が第1領域部を構成し、第2側板162が第2領域部を構成する例を示したが、これに限られることはなく、第1側板161の一部に第1領域部を形成し、第2側板162の一部に第2領域部を形成しても同様に行うことができる。
【0027】
また、上記実施の形態1では、第1側板161が第1領域部を構成し、第2側板162が第2領域部を構成する例を示したが、これに限られることはなく、一対の側板の第1領域部を形成する面材を、第2領域部の面材よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成しても同様に行うことができ、少ない材料となるため、低コストとなる。また、上記実施の形態1のように第1側板161および第2側板162の2つの異なる部材で構成する必要がなく、一対の側板16の形状がより簡素化でき、加工しやすくなる効果がある。
【0028】
また、本実施の形態1では、消弧部として複数の消弧グリッド15を設けてアークの消弧を行う直流遮断器1について説明したが、これに限られることはなく、消弧部として、複数の絶縁性部材を設けることでアークを伸長し、アーク電圧を上昇させる構成など、他の構成にてアークを消弧させるものであっても同様に行うことができる。
【0029】
また、本実施の形態1では、下部導体4、可撓導体に接続された可動側接触子7、可動側接点8、固定側接点6、固定側接触子5、上部導体3の経路で電流が通電した状態について説明したが、電流の通電方向が逆の経路の場合であっても同様の効果が得られるため、直流遮断器に対する電流の通電方向に制限なく、適用できる。
【0030】
上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
固定側接点を有する固定側接触子と、
前記固定側接点に接離する可動側接点を有する可動側接触子と、
前記可動側接点が前記固定側接点から開離するときに生じるアークを消弧する消弧部と、
前記アークが前記消弧部に移動するまでのアーク移動経路を形成する一対の側板とを備えた直流遮断器であって、
前記一対の側板は、前記固定側接点および前記可動側接点を挟んだ位置に設置された第1領域部と、前記第1領域部から前記消弧部までの前記アーク移動経路を挟んだ位置に設置された第2領域部とを有し、
前記第1領域部は、前記第2領域部よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されているので、
第1領域部で生じるアブレーションガスの発生量が第2領域部で生じるアブレーションガスの発生量より少なくなる特性を有するため、発弧したアークを効率よく消弧部に移動できる。
【0031】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
前記一対の側板の間に設けられ、前記一対の側板と共に前記消弧部側に広がる前記アーク移動経路を形成する、前記固定側接触子側に配置された固定側アークホーンおよび前記可動側接触子側に配置される可動側アークホーンを備え、
前記第1領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンが最も接近している部分まで拡張して形成されているので、
第1領域部で生じるアブレーションガスの発生量を確実に少なくでき、発弧したアークをさらに効率よく消弧部に移動できる。
【0032】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
前記第2領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンとが最も離れた部分まで拡張して形成されているので、
第2領域部で生じるアブレーションガスの発生量を確実に多くでき、発弧したアークをさらに効率よく消弧部に移動できる。
【0033】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
前記第2領域部は、前記第1領域部よりも水分を多く含むアブレーションガスを発生する材料にて形成されたので、
第1領域部で生じるアブレーションガスの発生量よりも第2領域部で生じるアブレーションガスの発生量の方をより多くでき、発弧したアークを効率よく消弧部に移動できる。
【0034】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
前記一対の側板は、それぞれ、前記第1領域部を有する第1側板と、前記第2領域部を有するとともに前記第1側板に当接して形成される第2側板とにて構成され、
前記第1側板と前記第2側板との当接面は、それぞれに互いに重ね合わされる段差形状にて形成されたので、
消弧部のアークによる損傷を防止できる。
【0035】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の直流遮断器によれば、
前記一対の側板の前記第1領域部の面材が、前記一対の側板の前記第2領域部の面材よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されたので、
第1領域部および第2領域部の材料が少なくなり、コストを低減できる。
【0036】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2による直流遮断器の構成要部を示す側断面図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態2は、上記実施の形態1にて示したアークホーン20を備えない直流遮断器1の例を示したものである。
【0037】
図8に示すように、上記実施の形態1と同様に一対の側板16を備える。この場合であっても、一対の側板16は、アーク移動経路を形成しているため、アークAは消弧グリッド15まで移動でき、消弧が可能である。一対の側板16の第1側板161と第2側板162とは、上記実施の形態1と同様に作用するため、その説明は適宜省略する。
【0038】
上記のように構成された実施の形態2の直流遮断器は、上記実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、アークホーンを備えないため、部材数が少なくなり、コストを低減できる。
【0039】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3による直流遮断器の構成要部を示す側断面図である。なお、上記各実施の形態と同様の部分は同一の符号を付して説明を省略する。また、上記各実施の形態では、大電流を遮断する場合について説明したが、本実施の形態3において、小電流を遮断する直流遮断器1に適用する場合について説明する。図9において、固定側接点6と可動側接点8との下部側から消弧部側に向けて空気を吹き付けるノズル300を備える。
【0040】
次に、上記のように構成された実施の形態3の直流遮断器の動作について説明する。小電流を遮断する場合、固定側接点6および可動側接点8に発生したアークAは、電流が小さいことでアークAに働く電磁力も小さくなり、アークAがその場に停滞しやすくなる。
【0041】
よって、図9に示すように、小電流を遮断する場合、発弧したアークAに対し、下側からノズル300により、外力として圧縮した気体、例えば空気を吹き付け、アークAの消弧部への移動を補助する。この場合、第1領域部を形成する第1側板161では、アブレーションガスの発生量が少ない材料を使用しているため、ノズル300により、アークAに吹き付けられた気体の流れを阻害することなく、アークAを効率よく消弧部に移動できる。以後、上記各実施の形態と同様にアークを消弧する。
【0042】
上記のように構成された実施の形態3の直流遮断器は、上記各実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記固定側接点および可動側接点間で生じるアークを前記消弧部に移動させる方向に気体を吹き付けるノズルを備えたので、
アークを効率よく消弧部へ移動できる。
【0043】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0044】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)
固定側接点を有する固定側接触子と、
前記固定側接点に接離する可動側接点を有する可動側接触子と、
前記可動側接点が前記固定側接点から開離するときに生じるアークを消弧する消弧部と、
前記アークが前記消弧部に移動するまでのアーク移動経路を形成する一対の側板とを備えた直流遮断器であって、
前記一対の側板は、前記固定側接点および前記可動側接点を挟んだ位置に設置された第1領域部と、前記第1領域部から前記消弧部までの前記アーク移動経路を挟んだ位置に設置された第2領域部とを有し、
前記第1領域部は、前記第2領域部よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成されている直流遮断器。
(付記2)
前記一対の側板の間に設けられ、前記一対の側板と共に前記消弧部側に広がる前記アーク移動経路を形成する、前記固定側接触子側に配置された固定側アークホーンおよび前記可動側接触子側に配置される可動側アークホーンを備え、
前記第1領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンが最も接近している部分まで拡張して形成されている付記1に記載の直流遮断器。
(付記3)
前記第2領域部は、前記アーク移動経路内において、前記固定側アークホーンと前記可動側アークホーンとが最も離れた部分まで拡張して形成されている付記2に記載の直流遮断器。
(付記4)
前記第2領域部は、前記第1領域部よりも水分を多く含むアブレーションガスを発生する材料にて形成された付記1から付記3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
(付記5)
前記一対の側板は、それぞれ、前記第1領域部を有する第1側板と、前記第2領域部を有するとともに前記第1側板に当接して形成される第2側板とにて構成され、
前記第1側板と前記第2側板との当接面は、それぞれに互いに重ね合わされる段差形状にて形成された付記1から付記4のいずれか1項に記載の直流遮断器。
(付記6)
前記一対の側板の前記第1領域部の面材が、前記一対の側板の前記第2領域部の面材よりもアブレーションガスの発生量が少ない材料にて形成された付記1から付記4のいずれか1項に記載の直流遮断器。
(付記7)
前記固定側接点および可動側接点間で生じるアークを前記消弧部に移動させる方向に気体を吹き付けるノズルを備えた付記1から付記6のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【符号の説明】
【0046】
1 直流遮断器、2 消弧室、21 消弧室下部、22 消弧室上部、3 上部導体、
4 下部導体、5 固定側接触子、6 固定側接点、7 可動側接触子、
8 可動側接点、9 過電流検出器、10 ラッチ、11 回転軸、
13 固定側アークホーン、14 可動側アークホーン、15 消弧グリッド、
16 側板、17 カバー、12 操作部、20 アークホーン、300 ノズル、
A アーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9