(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151729
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】取付具及び振動吸収具
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20241018BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20241018BHJP
F16F 9/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16M13/02 U
F16F9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065360
(22)【出願日】2023-04-13
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521364292
【氏名又は名称】株式会社Kaedear
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】飯沢 智博
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD16
3J048BE02
3J048EA36
3J069AA30
(57)【要約】
【課題】
振動が伝わっても視認性を維持することができる、安全で利便性の高い取付具及びそれに利用できる振動吸収具を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本願発明は、電子機器を取付可能とする取付部と、前記取付部を支持する支持部と、の間に設けられる振動吸収具であって、板状のプレート部と、前記プレート部に設けられるダンパー部と、を備え、前記ダンパー部は、底面に開口部を有する中空の弾性部材であって、前記プレート部を貫通する貫通部と、前記プレート部に当接して設けられ、少なくとも前記プレート部に向かう方向に変形可能な可撓性を有するクッション部と、を有する振動吸収具及びこれが取り付けられる電子機器の取付具である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を取付可能とする取付部と、前記取付部を支持する支持部と、の間に設けられる振動吸収具であって、
板状のプレート部と、前記プレート部に設けられるダンパー部と、を備え、
前記ダンパー部は、底面に開口部を有する中空の弾性部材であって、
前記プレート部を貫通する貫通部と、前記プレート部に当接して設けられ、少なくとも前記プレート部に向かう方向に変形可能な可撓性を有するクッション部と、を有する振動吸収具。
【請求項2】
前記プレート部は、前記ダンパー部が貫入する孔部を有し、
前記ダンパー部は、くびれ部を有し、前記孔部を嵌め込んで支持する請求項1に記載の振動吸収具。
【請求項3】
前記ダンパー部は、前記開口部を除いて気密に設けられ、
底面が平面で、前記開口部の内周方向に張り出して前記取付部と当接する張り出しリングを有する請求項1又は2に記載の振動吸収具。
【請求項4】
電子機器を取り付け可能とする取付部と、前記取付部と、前記取付部を支持する支持具との間に設けられる振動吸収具と、を備え、
前記振動吸収具は、板状のプレート部と、前記プレート部に設けられるダンパー部と、を有し、
前記ダンパー部は、底面に開口部を有する中空の弾性部材であって、
前記プレート部を貫通して固定する貫通部と、前記プレート部に当接して設けられ、少なくとも前記プレート部に向かう方向に変形可能な可撓性を有するクッション部と、を含み、
前記取付部は、前記電子機器を取り付ける取付部本体を有し、
前記振動吸収具は、前記取付部本体の電子機器と取り付ける面と相対する面に設けられている取付具。
【請求項5】
前記ダンパー部は、前記開口部を除いて気密に設けられ、
底面が平面で、前記開口部の内周方向に張り出して前記取付部と当接する張り出しリングを有し、
前記取付部本体において、前記ダンパー部と当接する部分は平面状となるように設けられる請求項4に記載の取付具。
【請求項6】
前記取付部本体は、前記ダンパー部に挿入可能な突出部をさらに有し、
前記突出部は、前記取付部本体から突出する、外径が前記開口部よりも小さい突出部本体と、前記突出部本体の端部に設けられ、前記ダンパー部の内周面の上端と篏合する篏合部と、を有する請求項4に記載の取付具。
【請求項7】
前記プレート部と、前記取付具本体との間には、
前記取付具本体の内部機構に向けて押圧力を与える押圧機構が設けられている請求項4~6の何れかに記載の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を鞍乗り車両に取り付けた際に、振動を起こしにくくするための取付具及びそれに設けられる振動吸収具に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り車両に電子機器を装着して走行することは、従来から幅広く行われている。
特に近年(2020年代)では、地図機能等、スマートフォンの様々な機能を享受しながら二輪車に乗車することが盛んに行われており、例えば特許文献1には、二輪車に電子機器を装着可能な支持具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鞍乗り車両に電子機器を取り付けると、地面からの振動が直接伝わるため、走行中にハンドル等が揺れてしまい、電子機器を見ても視認性が悪く、地図等を一見して認識できないという課題がある。
このように電子機器の視認性が悪くなると、使用者は情報を得ようと電子機器を凝視する可能性が生まれ、結果的に事故などに繋がる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、振動が伝わっても視認性を維持することができる、安全で利便性の高い取付具及びそれに利用できる振動吸収具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、電子機器を取付可能とする取付部と、前記取付部を支持する支持部と、の間に設けられる振動吸収具であって、板状のプレート部と、前記プレート部に設けられるダンパー部と、を備え、前記ダンパー部は、底面に開口部を有する中空の弾性部材であって、前記プレート部を貫通する貫通部と、前記プレート部に当接して設けられ、少なくとも前記プレート部に向かう方向に変形可能な可撓性を有するクッション部と、を有する振動吸収具である。
これにより、ダンパー部の変形により振動が伝わっても視認性を維持することができる、安全で利便性の高い取付具に利用可能な振動吸収具を提供することができる。
【0007】
好ましくは、前記プレート部は、前記ダンパー部が貫入する孔部を有し、前記ダンパー部は、くびれ部を有し、前記孔部を挟み込んで支持する。
これにより、ダンパー部の位置を、取付具に対して最適な状態で強固に保持することができるため、振動吸収性能が高まり安全性と利便性が高まる。
【0008】
好ましくは、前記ダンパー部は、前記開口部を除いて気密に設けられ、底面が平面で、前記開口部の内周方向に張り出して前記取付部と当接する張り出しリングを有する。
これにより、ダンパー部内部の気密性を保ち、エアクッションの作用により振動吸収の性能をより高められる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、電子機器を取り付け可能とする取付部と、前記取付部と、前記取付部を支持する支持具との間に設けられる振動吸収具と、を備え、前記振動吸収具は、板状のプレート部と、前記プレート部に設けられるダンパー部と、を有し、前記ダンパー部は、底面に開口部を有する中空の弾性部材であって、前記プレート部を貫通して固定する貫通部と、前記プレート部に当接して設けられ、少なくとも前記プレート部に向かう方向に変形可能な可撓性を有するクッション部と、を含み、前記取付部は、前記電子機器を取り付ける取付部本体を有し、前記振動吸収具は、前記取付部本体の電子機器と取り付ける面と相対する面に設けられている取付具。
これにより、ダンパー部の変形により振動が伝わっても視認性を維持することができる、安全で利便性の高い取付具を提供できる。
【0010】
好ましくは、前記ダンパー部は、前記開口部を除いて気密に設けられ、底面が平面で、前記開口部の内周方向に張り出して前記取付部と当接する張り出しリングを有し、前記取付部本体において、前記突出部の周辺は平面状となるように設けられる。
これにより、ダンパー部内部の気密性を保ち、エアクッションの作用により振動吸収の性能をより高められる。
【0011】
好ましくは、前記取付部本体は、前記ダンパー部に挿入可能な突出部をさらに有し、前記突出部は、前記取付部本体から突出する、外径が前記開口部よりも小さい突出部本体と、前記突出部本体の端部に設けられ、前記ダンパー部の内周面の上端と篏合する篏合部と、を有する。
これにより、取付部に対する振動吸収具の初期位置を規定し、振動が連続して起こっても振動吸収作用を維持することができる。
【0012】
好ましくは、前記プレート部と、前記取付具本体との間には、前記取付具本体の内部機構に向けて押圧力を与える押圧機構が設けられている。
これにより、クッション部によって生じる取付部本体とプレート部との間の空間を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、振動が伝わっても視認性を維持することができる、安全で利便性の高い取付具及びそれに利用できる振動吸収具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る、取付具の斜視写真である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、取付具の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、取付具の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、突出部及びダンパー部の説明斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、押圧体を様々な方向から見た図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、押圧機構及び挟持機構の断面模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、操作体を様々な方向から見た図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る、取付部及び振動吸収具を後ろ方向から見た正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る、A―A断面の模式断面図である。
【
図10】取付具が支持具に支持されている様子を表す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る取付具X及びその一部品である振動吸収具3について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施形態の順に詳述する。本明細書においては、取付具X中、電子機器Eを取り付ける方向を「前」として規定している。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更がされているものを含むことを意味する概念である。
【0016】
《第一の実施形態》
本発明に係る取付具Xは、電子機器Eを取り付け可能とする取付部1と、取付部1と、取付部1を支持する支持部2との間に設けられる振動吸収具3と、を備える。ここにおいて、電子機器Eは特に液晶を有する略直方体形状の端末を意味する。取付具X全体の外観を表す写真を
図1に示し、支持部2に取り付けられている取付具Xの参考図を
図10に示す。
【0017】
取付部1は、電子機器Eを挟持した状態で支持する部材であって、電子機器Eと相対して取り付ける取付部本体11と、電子機器Eの対向する二辺を挟持することによって支持する挟持機構Cと、挟持機構Cに押圧力を与える押圧機構Pと、を有する。
【0018】
取付部1は、
図1、
図2に示すように、取り付けた際に実際に電子機器Eと相対する表側取付部1Aと、表側取付部1Aと篏合して取り付け可能な裏側取付部1Bと、を備えており、両部材が篏合することで生じる内部空間に、挟持機構Cが設けられている。
【0019】
挟持機構Cは、電子機器Eの側面部に電子機器Eの内側方向に向かう力をかけて挟持する内部機構であって、実際に電子機器Eの挟持に用いる第一挟持体12及び第二挟持体13と、第一挟持体12と第二挟持体13とを協働して回転させるためのピニオンギア14とを備える。
【0020】
押圧機構Pは、挟持機構Cに押圧力を与えることによって挟持の制御を行う機構であって取付部本体11と、振動吸収具3の間に設けられている。押圧機構Pは、実際に挟持機構Cを押圧する押圧体15と、押圧しない状態において、押圧体15と挟持機構Cを離間させる押しばね16と、押圧体15の押圧状態と離間状態を使用者が操作する操作体17と、を有する。
【0021】
表側取付部1Aは、裏側取付部1Bと篏合した状態で固定するための複数のネジ孔Hが設けられている。また、その中心部にはピニオンギア14の回転軸を支持するための孔が設けられ、内周面には後述する引きばね135の一端を支持するばね固定部1A2が設けられている。
【0022】
裏側取付部1Bは、表側取付部1Aと対応する位置に複数のネジ孔Hが設けられており、振動吸収具3を取り付ける面(後ろ側の面)には、当該面から突出して振動吸収具3に取り付ける突出部111と、操作体17を回転可能に支持する操作支持部114と、操作体17の回転の規制を行う操作規制部115と、押圧体15を嵌め込む押圧嵌め込み部116と、後述する離間ネジ33を螺設するネジ孔である離間ネジ取付部117が設けられている。
【0023】
突出部111は、
図4に示すように、裏側取付部1Bから突出する棒状部材である突出部本体112と、突出部本体112の端部に設けられている楕円球状の篏合部113と、を有する。実施形態において、突出部111は、軸支持部1A1に対して等間隔となるように4つ設けられており、それぞれの突出部111を結ぶと長方形になるように配置されている。
【0024】
突出部本体112は、裏側取付部1Bから直立するように設けられており、その径は、少なくとも後述する孔張り出し部313や、好ましくはダンパー部32の内周面の最小径よりも小さくなるように設けられている。これにより、振動吸収具3を取付部1に対して平行に移動できるようになり、衝撃の吸収性能が向上する。
なお、裏側取付部1Bにおいて、突出部本体112の根本周辺は、少なくとも根本を中心とする部分が、開口部321の径より大きい範囲で平面状となっている。
【0025】
突出部本体112は、
図4に示すように、根本が角柱状の角柱取付部となっている。この角柱取付部118は、裏側取付部1Bに設けられている、内周面を角柱取付部118と略同一形状とする対応部分(
図3において、同一の符号118で示す部分)に回転不可能となるように篏合する。さらに、取付部本体11に設けられる角柱取付部118の中心部にはボルトを篏合するねじ穴が設けられており、裏側取付部1Bを貫通するボルトVを介して固定されていることで外側から着脱不可能に設けられる。実施形態において該角柱部分は、突出部本体112に接合する六角ナットである。
【0026】
篏合部113は、突出部本体112の上端に一体に設けられている楕円球状の部材であって、後述するダンパー部32と篏合する。実施形態において篏合部113の最大径は突出部本体112の突出方向に垂直な径で、10mm~15mmであり、突出部本体112の径の1.5~2倍程度である。また、最小径は突出方向に平行な径で4mm~8mm程度の大きさである。
【0027】
操作支持部114は、操作体17を篏合し、外周を略円形として操作体17を回転可能に篏合する突出部分である。また、操作規制部115は操作支持部114の外周に設けられ、操作体17の回転角度を規制するための突出部分である。
【0028】
押圧嵌め込み部116は、裏側取付部1Bを貫通する孔であって、挟持機構Cが視認できるように設けられている。その形状は押圧体15と略同一であり、一部に押圧体15を載置可能な部分がある。該載置可能な部分には、押しばね16を挿入可能な挿入部が設けられている。
【0029】
離間ネジ取付部117は、離間ネジ33を取り付ける部分であって、離間ネジ33の中途に設けられた円盤材331と当接することによって、取付部本体11とネジ頭332との距離を調整している。離間ネジ取付部117は、必要に応じて裏側取付部1Bの面からかさ上げして設けてもよい。
【0030】
第一挟持体12は、第二挟持体13よりも後ろ側に設けられており、第二挟持体13と協働して電子機器Eを上下から挟み込むための部材であって、電子機器Eと当接する第一挟持部121と、第一挟持部121と接続し、第一挟持部121を上下方向に摺動させる第一摺動部122と、第一摺動部122と接続し、取付部本体11の内部で摺動する第一ラック123と、第一ラック123に設けられピニオンギア14と噛み合って第二挟持体13と動きを同調させる第一噛み合い部124と、第一ラック123に設けられ押圧体15の直上に設けられ、押圧機構Pを介して押圧される被押圧部125と、を備える。
【0031】
第一挟持部121は、断面略U字形状で、電子機器Eを挟持しても変形しない剛性を有する部材であり、取付部本体11の外側に第一摺動部122を介して配置されている。第一挟持部121は、少なくとも表側取付部1Aの前側の面よりも突出して設けられており、電子機器Eの一辺と当接して挟持する辺挟持部と、辺挟持部の両端部に電子機器Eの角を覆うように当接して挟持する角挟持部を備える。第一挟持部121の内側は、滑り止めとして働く弾性材が設けられており、該弾性材は滑り止めとして働く線状の突出パターンを有する(図示せず)。辺挟持部では、当接する辺と平行になるようにパターンが設けられていることで電子機器Eの前後方向の動きを規制し、角挟持部には当接する辺と垂直になるようにパターンが設けられていることで左右方向の動きを規制する。
【0032】
第一摺動部122は、取付部本体11の内側から外側に向けて突出している2本の円柱状の部材であって、実施形態に置いては金属製である。第一摺動部122の一端は第一挟持部121に接続されており、他端は第一ラック123に固定されている。また、取付部本体11には、上下の端部に第一摺動部122を貫入可能な孔が形成されており、この孔を通じて第一摺動部122が突出する。
【0033】
第一ラック123は、2つの第一摺動部122と篏合して固定される部材と、当該部材の間に配置され、中心が長穴状にくり抜かれている板状の部材とが一体となって設けられている。第一ラック123の板状の部材は、第一摺動部122の中心軸よりも後ろ側に設けられていることで、第二挟持体13との干渉を防いでいる。くり抜きの幅は、少なくともピニオンギア14の最大径よりも大きい。
【0034】
第一噛み合い部124は、第一ラック123でくり抜かれている部分のうち、内周面の一辺に、ピニオンギア14と噛み合うように設けられており、第一挟持体12の上下運動に従ってピニオンギア14が回転し、ピニオンギア14の回転に従い第一挟持体12が上下運動する。
【0035】
被押圧部125は、第一ラック123の後側の面に、左右方向に平行に伸びる複数の歯が、上下方向に等間隔に配列されて設けられている部分である。実施形態においては2本の被押圧部125が平行に設けられている。被押圧部125は、押圧嵌め込み部116を介して一部が常に取付部本体11の外部に露出するように設けられている。
【0036】
第二挟持体13は、第一挟持部121と略同一の構成である第二挟持部131と、第一摺動部122と略同一の構成である第二摺動部132と、取付部本体11の内部で摺動する第二ラック133と、第一噛み合い部124に相対するくり抜きの内周面に設けられる第二噛み合い部134と、第二挟持体13を取付部本体11の内側に向けて付勢する引きばね135を有する。
【0037】
第二ラック133は、2つの第一摺動部122と篏合して固定される部材と、当該部材の間に配置され、中心が長穴状にくり抜かれている板状の部材とが一体となって設けられており、篏合して固定する部材に隣接して引きばね135を固定可能な部品が設けられている。
さらに、第二ラック133の板状の部材は、第二摺動部132の中心軸よりも前側に設けられていることで、第一挟持体12との干渉を防いでいる。
なお、第二ラック133の前側の面には、表側取付部1Aの後側の面に設けられているレール材に摺動可能に嵌め込まれ、上下方向以外の動きを規制する規制手段が設けられていてもよい。規制手段としては、突起やベアリングを用いることができる。
【0038】
引きばね135は、一端が第二ラック133に固定され、他端がばね固定部1A2に固定されている部材であって、第二挟持部131が取付部本体11に当接する方向に付勢する。
【0039】
ピニオンギア14は、中心軸が軸支持部1A1に回転可能に支持され、高さが異なる第一噛み合い部124及び第二噛み合い部134に挟まれるように噛み合う部分である。これにより、第一挟持体12と第二挟持体13との伸縮が協働して動作するようになり、取付の利便性を容易にするとともに構造を簡単にできる。
【0040】
押圧体15は、
図5に示す形状の部品であって、押圧嵌め込み部116に嵌め込まれて被押圧部125を押圧する。押圧体15は、外周が押圧嵌め込み部116と略同一とする板状の本体である押圧体本体150と、実際に被押圧部125を押圧する押圧部151と、操作体17からの入力を受け付けて押圧体15を前後に移動可能とする突起部152と、押しばね16の作用を受けて被押圧部125から離間させるためのばね支持部153と、を有する。
なお、
図5(a)は底面図、
図5(b)は平面図、
図5(c)は後ろ方向から見た正面図、
図5(d)は背面図、
図5(e)は側面図を表す。また、押圧体15の作用についての断面模式図を
図6に示している。
【0041】
押圧体本体150の正面方向にある面は、押圧嵌め込み部116に嵌め込まれた状態において裏側取付部1Bの後ろ側の面と略同一面上にあるように配置されることで、省スペース化をしている。
【0042】
押圧部151は、押圧体本体150の背面側に設けられている直方体形状の突出部分であって、その端面には被押圧部125に設けられている歯と略同一形状の歯が設けられている。この歯は、被押圧部125を押圧すると噛み合い、第一挟持体12の上下運動を停止させるようにしている。
【0043】
突起部152は、押圧体本体150の正面側に設けられている半円筒形状に突出する部分であって、実施形態においては、正面視で端部からばね支持部153に向けて傾斜するように2つ設けられている。
【0044】
ばね支持部153は、押圧体本体150の正面側に突出し、平面側に押しばね16の少なくとも端部を覆うフード形状に設けられている。正面側への突出高さは、操作支持部114の突出高さと略同一になるように設けられ、その外周面は取り付けられた際に操作支持部114の外周で形成する円の一部となるように配置されている。
【0045】
押しばね16は、押圧嵌め込み部116の直下に設けられている挿入部に篏合するように取り付けられる部分であって、押圧体15が押圧されていない状態において、押圧部151と被押圧部125が離間するようにばね支持部153を押圧体15の背面方向から押圧する。
【0046】
操作体17は、
図7に示す形状であって、振動吸収部3と裏側取付部1Bの間に設けられる部材である。操作体17は、操作支持部114の外周に嵌め込まれて回転可能に設けられる回転部171と、回転を上下の作用に変換する作用部172と、回転の範囲を規制する回転規制部173と、使用者が操作体17に回転作用を付与するための操作部174とを有する。
なお、
図7(a)は、取り付けた操作体17を後ろ方向から見たときの正面図であり、
図7(b)は背面図であり、
図7(c)は底面図を表す。
【0047】
回転部171は、リング状の部分であって、内周に操作支持部114及びばね支持部153を篏合して、さらに後ろ側から前後方向の移動を規制する円盤状の部材が取り付けられることにより、取付部本体11に対して回転可能となるように支持固定されている。円盤状の部材は、裏側取付部1Bにネジ孔Hを介して回転不可能に取り付けてある。
【0048】
作用部172は、操作体17の背面に設けられ、所定深さの凹みを形成するように切り抜かれる部分である。その態様は、周面に沿って時計回りに緩やかに切り抜かれ、操作体17の厚みが最小となる位置において急激に切抜きが立ち上がるようにしている。実施形態において、作用部172は2つ設けられており、その間隔は突起部152が設けられる間隔の定数倍と略同一であることで制御の安定性を高めている。
これにより、押圧体15の上下方向の移動が制御される。すなわち、作用部172に突起部152が位置する場合には押圧体15が押圧されず、作用部172以外に突起部152が位置する場合には突起部152を介して押圧体15が操作体17の背面側に押圧されることとなる。
【0049】
回転規制部173は、回転部171の内周面から外側に向けて設けられている切り欠き部分であって、切り欠きの範囲内であれば、操作規制部115に当接せずに自由に回転可能となる。切り欠きの長さは作用部172の長さと略同一か少し長く設けられており、回転規制部173の端部と操作規制部115が当接するときに、突起部152が、作用部172の切り抜きの深さが略最大となる位置又は回転部171の背面が当接する位置に配置されるようにしている。これによって、操作体17を最大限変化させたときに、押圧の解除・設定ができるようになるため、直感的に操作できるようになる。
【0050】
操作部174は、回転部171の外周面から突出して一体に設けられている部材であって、回転部中心からの距離が取付部本体11の左右幅の半分よりも大きくなるように設けられている。これにより、回転に必要なモーメント力を軽減し、操作しやすくする。実施形態においては、操作性をさらに向上させるために、操作部174の側面に滑り止めの凹凸が設けられている。
【0051】
支持部2は、取付具Xの後方に設けられている部材であり、鞍乗り車両のハンドルなど、パイプ状の部材に取付具Xを装着できるようにしている。
【0052】
振動吸収部3は、取付部1と支持部2との間に取り付けられ、支持部2からの衝撃を吸収するための部材である。振動吸収部3は、少なくとも振動を受けても変形しない程度の剛性を有するプレート部31と、プレート部31の振動を吸収するダンパー部32と、取付部1と離間して接続するための離間ネジ33と、支持部2と接続するための支持体34と、を有する。
【0053】
プレート部31は、
図8に示すように、板状の部材であって、取付部1及び支持部2の間に接続可能に設けられており、プレート部本体311と、ダンパー部32を取り付けるための孔部312と、離間ネジ33を取り付けるための離間ネジ孔314と、を有する。
【0054】
プレート部本体311は、裏側取付部1Bの面と平行に取り付けられる板状の部材であって、
図8に示すように、正面の面積は取付部本体11よりも小さく、取り付けた際に正面視で全体が取付部本体11の内側に配置されるようになっている。これにより、前方から見たときに振動吸収具が見られなくなり、デザインをスッキリさせることができる。
【0055】
また、プレート部本体311は、左右方向にくびれが設けられ、さらに上下方向に出っ張りが生じるように設けられていることにより、中心に対して6つの凸部が設けられ、それぞれの凸部に孔部312や離間ネジ孔314が設けられるようにしている。
【0056】
またプレート部本体311は、全体として支持体34に向けて凸になるように設けられていることで、中心付近に押圧機構Pを設ける隙間を確保している。さらに、プレート部本体311の背面には支持体34が取り付けられる部分から各孔に向けて板状の補強部材が延びて設けており、強度を保持している。
【0057】
孔部312は、プレート部本体311の前後方向を貫通する孔であって、プレート部本体311の左右方向に設けられた凸部に4つ配置されている。孔部312は、プレート部本体311の側面端部と近接して設けられていることで、それぞれのダンパー部32に係る振動によるモーメント力を大きくし、振動をより吸収しやすくする。孔部312の径は、ダンパー部32の上端よりも大きく、下端よりも小さくなるようにしている。これにより、孔部312がダンパー部32を支持・貫入可能としている。
【0058】
孔張り出し部313は、孔部312の背面側(前方向の面)の端面において、内周に向けて張り出す、容易に変形しない程度の剛性を有する部分である。張り出しの長さは、1mm~2mm程度であり、張り出しの高さは少なくとも孔部312の高さより小さく、好ましくは2~5mm程度である。また、孔張り出し部313の径は、突出部本体112の外径ないし篏合部113の径よりも大きくしており、これにより取付を容易にしている。さらに、取り付けられた状態において、孔張り出し部313と、突出部本体112は同一平面上に設けられることで当該平面と平行にプレート部31が移動できるようにしている。
【0059】
離間ネジ孔314は、プレート部本体311の前後方向を貫通する孔であって、離間ネジ33を貫通させる。また、孔張り出し部313と同様に離間張り出し部315が設けられており、離間ネジ孔314から張り出しの内周面までの長さは、円盤材331の径よりも短くしていることにより、当接するようにしてある。
【0060】
離間張り出し部315の内径は、少なくとも離間ネジ33の軸径よりも大きくなるように設けられている。好ましくは、離間ネジ33の軸から離間張り出し部315までの距離は、後述するクッション部324のくびれ部323に対する張り出し幅よりも大きくなるように設けられており、クッション部324の変形を阻害しないようにしている。
【0061】
ダンパー部32は、
図4に示す形状で、全体が一体に設けられている中空の弾性部材である。ダンパー部32は、底面で開口する開口部321と、孔部312を通じてプレート部本体311を貫通する貫通部322と、プレート部本体311と篏合して固定するためのくびれ部323と、プレート部本体311と取付部本体11との間に設けられ、プレート部本体311からの衝撃を吸収するクッション部324と、開口部321の底面において内周面に向けて張り出す張り出しリング325と、を有する。
【0062】
開口部321は、ダンパー部32内部の中空部分につながる開口である。開口部321の外周の径は少なくとも孔張り出し部313の内径よりも大きく、好ましくは孔部312の径と略同一かそれよりも大きくして孔部312に貫通しないようにしている。開口部321の内径は、少なくとも篏合部113の上下左右方向の径よりも大きくなるように設けられ、これにより突出部111を篏合可能にしている。
【0063】
貫通部322は、外径を孔張り出し部313の内径よりも大きく、孔部312の内径よりも小さい径とする略半球状になるように設けられており、その上端はプレート部本体311から突出する。貫通部322は、プレート部31が取付部本体11に取り付けられた状態のA-A断面である
図9に示すように内部に篏合部113と略同一形状の空間を有し、この空間に篏合部113が篏合される。
【0064】
くびれ部323は、貫通部322とクッション部324との間に設けられている外周の径が細くなるリング型の部分である。その外周の径は孔張り出し部313の内周の径と略同一であることで孔張り出し部313に嵌め込まれ、平面状となっている、貫通部322の端面及びクッション部324の端面が孔張り出し部313を挟み込むように当接支持することでダンパー部32に対するプレート部31の位置を画定する。
【0065】
クッション部324は、断面が略U字状に設けられているリング型の部分であり、その一端はプレート部本体311と当接し、他端は張り出しリング325として取付部本体11と当接する。クッション部324は可撓性を有し、取付部本体11に当接する端部に対するプレート部本体311に当接する端部の相対位置を、2部分を結ぶ輪状部材が変形する範囲内で自在に変更できる。即ち、クッション部324はプレート部本体311に向けて変形可能であり、取付部本体11に対するプレート部31の相対位置を自在に変更できる。
【0066】
張り出しリング325は、開口部321の端面上において内周方向に張り出して取付部本体11と当接する底面が平面となる部分であって、その弾性によって開口部321を気密に閉鎖する。ダンパー部32は、開口部321を除いて気密に設けられているため、ダンパー部32の内部で空気が貯留されるようになる。
【0067】
離間ネジ33は、取付部本体11と、プレート部本体311との間の最大の離間距離を規定して固定するための部材であって、軸部330と、軸部330の中途に設けられた円盤状の部分である円盤材331と、軸部330の端部に設けられている部材であるネジ頭332と、を有する。
【0068】
軸部330は、一端が離間ネジ取付部117に設けられているネジ孔に螺合し、他端にネジ頭332が設けられている部分である。軸部330の径は離間張り出し部315の径よりも小さいため、プレート部本体311は軸部330と垂直な方向に移動可能となる。
【0069】
円盤材331は、離間ネジ33の中途に設けられる部分であって、軸部330の所定位置に固定されている。円盤材331は、離間ネジ取付部117に当接することによって取付部本体11からネジ頭332までの距離を一定に保ち、プレート部本体311の最大変位を画定する。
【0070】
ネジ頭332は、離間ネジ33の端部に設けられており、その径は少なくとも離間張り出し部315の内径よりも大きく、離間ネジ孔314の内径よりも小さい。ネジ頭332と離間ネジ孔314の径の差は、軸部330と離間張り出し部315の径の差と略同一となるように設けられることで、クッション部324の動きを阻害しないようにしている。
【0071】
ここで、
図9に示すように、クッション部324の高さは、取付部本体11とプレート部本体311の距離と略同一になるように設けられており、さらに該距離は取付部本体11からネジ頭332までの距離とプレート部本体311の厚みの差と略同一になるようにしている。これによって、平面状の取付部本体11と張り出しリング325を常に当接させ、取り付けられたダンパー部32の内部を気密にすることができる。
【0072】
支持体34は、プレート部本体311の中心の後ろ側に突出して設けられている部材であって、実施形態においては球体関節として設けられている。
【0073】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。本発明は、振動吸収具3が設けられている取付具Xに電子機器Eを取り付けて利用する使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0074】
まず、使用者は支持部2を鞍乗り車両のハンドル部分に取付け、さらに取付具Xから突出している支持体34を支持部2に取り付ける。
【0075】
次に、使用者は電子機器Eを取付部1に取付ける。使用者は操作体17を回転させることで、押圧体15の押圧を解除し、第一挟持体12又は第二挟持体13のいずれかを取付部本体11から離間させる方向に摺動させ、挟持体同士の幅を広げる。
【0076】
その後、使用者は幅が広がった挟持体の間に電子機器Eを挿入し、挟持体を拡げる方向に加えている力を解除する。すると、引きばね135及びピニオンギア14が作用することで、第一挟持体12及び第二挟持体13が電子機器Eを押し付ける方向に作用し、電子機器Eが挟持される。
【0077】
その後、使用者は、操作部174を押圧部151が被押圧部125を押圧する位置まで回転させる。これにより、被押圧部125の上下運動が規制され、
図6に示すように第一摺動部122及び第二摺動部132の移動が阻止されることで、電子機器Eの強固な固定が可能となる。
【0078】
使用者は、鞍乗り車両を動作させる。このとき支持部2を通じて振動吸収具3に振動が伝わるが、複数のダンパー部32が弾性変形し、取付部本体11に対するプレート部本体311の距離及び角度が変化することで振動が吸収されるため、取付部1は振動しにくくなる。ここにおいて、ダンパー部32が気密になることにより、内部の空気の圧縮性により急激な弾性変形を抑え、振動吸収性を高めている。
【符号の説明】
【0079】
X 取付具
1 取付部
11 取付部本体
1A 表側取付部
1B 裏側取付部
111 突出部
112 突出部本体
113 篏合部
114 操作支持部
115 操作規制部
116 押圧嵌め込み部
117 離間ネジ取付部
C 挟持機構
12 第一挟持体
121 第一挟持部
122 第一摺動部
123 第一ラック
124 第一噛み合い部
125 被押圧部
13 第二挟持体
131 第二挟持部
132 第二摺動部
133 第二ラック
134 第二噛み合い部
135 引きばね
14 ピニオンギア
P 押圧機構
15 押圧体
150 押圧体本体
151 押圧部
152 突起部
153 ばね支持部
16 押しばね
17 操作体
171 回転部
172 作用部
173 回転規制部
174 操作部
2 支持部
3 振動吸収具
31 プレート部
311 プレート部本体
312 孔部
313 孔張り出し部
314 離間ネジ孔
315 離間張り出し部
32 ダンパー部
321 開口部
322 貫通部
323 くびれ部
324 クッション部
325 張り出しリング
33 離間ネジ
330 軸部
331 円盤材
332 ネジ頭
34 支持体
H ネジ穴
E 電子機器