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  • 特開-鋼の連続鋳造鋳片の切断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151732
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】鋼の連続鋳造鋳片の切断装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/126 20060101AFI20241018BHJP
   B23D 15/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B22D11/126 K
B23D15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065364
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】306030275
【氏名又は名称】山田 榮子
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
【テーマコード(参考)】
3C039
【Fターム(参考)】
3C039AA02
3C039AA22
3C039AA32
3C039AB07
(57)【要約】
【課題】 鋼の連続鋳造に際して高速鋳込を支え、且つ圧延端末不良部を最小化するため鋳片先端を楔形に封入・切断する装置を提供する。
【解決手段】 楔形圧入歯を鋳片上下面に対称圧入するに際して、両圧入歯を内装し、鋳片を側面から貫通する圧入枠の両端に油圧シリンダーを対向勘合する。両油圧シリンダーのラムに圧入歯と拡幅拘束ガードとから成る圧入歯台を上置し、作動とともに、両圧入歯は鋳片軸に対して対称圧入され、溶融芯の閉鎖と楔形先端形状の成形が成される。
圧入枠の設けられた4個の水平ブラケットが走行台の軌道に嵌め込まれ、本体は上下左右の動きが拘束され、引抜に追随して水平前後の移動のみが可能になる。先行例の1本シリンダー方式と比較して、強固・安定下作動が得られる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造鋳片に上下対称の楔形圧入歯を圧入して封鎖と切断と楔形端面成形とを行う装置であって、鋳片引抜に追随する圧入装置本体と該圧入装置本体を内装し該圧入装置本体を上下左右の動きは拘束しつつ前後進のみ摺動可能とする軌道と駆動源とを保有する走行台とから成り、該圧入装置本体は、鋳片が側面から貫通する円筒状の圧入枠と、該圧入枠の両端にそれぞれ対向してねじ勘合する2本の油圧シリンダーと、該油圧シリンダーのラム上に設けられた楔形圧入歯と拡幅拘束ガードとから成る圧入歯台と、両シリンダーに分配する1系統の油圧配管とから構成され、作動とともに両楔形圧入歯が鋳片を挟んで対称的に圧入し切断することを特徴とする連続鋳造鋳片の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼の連続鋳造において鋳片を切断する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造において、断面の小さいビレットでは鋳片の切断には油圧シアーが多用されている。切断面は概ね平坦であるが状況によっては『かえり』、『縞状凹凸』、『むしれ』等の不都合が生ずる。前者は圧延において走行や噛み込みを阻害し、後二者は製品端部の疵に関係する。なぜなら鋼片端面は圧延孔型通過時に特異変形するので上記欠陥は意外に先端から内側に移動する。従って圧延材端部は圧延途中で適宜切断除去される。これは圧延歩留まり損の1原因となっている。連続鋳造鋳片を切断する際、端部を滑らかな砲弾型に切断して上記問題を解決することは当業者の古くからの願望である。
特許文献1には、当願望に対して楔形歯の圧入により砲弾型に準ずる楔型に成形する策が提案されている。それによるとシアーとは異なり、楔形歯と交差した楔形の平滑な鋼片端面が得られる。
【0003】
切断に関する第2の問題として、連続鋳造を高速化すると溶融芯が延長し、芯部が凝固直後の脆弱状態又は未凝固の状態で切断することになる。せん断による切断では噴出の発生の他に芯部がむしれ、鋳片のへりに移動して付着し、搬送を阻害する。あるいは両刃間へ差し込み、作動不能から鋳込停止となる。
当問題も前述の楔形歯の圧入方式により解決されるが新たな問題が生ずる。せん断では拡幅比(=切断後幅/切断前幅)は約1.2以下であって該値が許容されているが、圧入特に未凝固鋳片(実質中空材)への圧入では該比がかなり大きくなり、走行・噛み込みトラブル等を誘発する。何らかの対策が必要とされる。
【0004】
特許文献1(先行例1)には、ビレットを対象に上記問題(圧延端末不良部の短縮、溶融芯の封鎖、拡幅拘束)の具体的且つ経済的な解決策が開示されている。それによると方法面では楔形歯を鋳片を挟んで対称圧入し、鋳片の圧下面が平滑に傾斜陥没し、溶融芯封鎖が先行してその後分断される。切断面が発生せず、圧下面のみで平滑な楔形端面が形成され、圧延時には端末の欠陥部が短縮される。拡幅に対しては拘束ガードの強化によって解決している。
当該方法の問題は、装置面において、一対の楔形圧入歯を鋳片軸対称に圧入するに際して、具体的な装置が開示されていない。
【0005】
特許文献2には、上記問題の解決策として、1本の油圧シリンダーにより2個の圧入歯を対称作動させるため、特異な構造・機構(リンク)を採用している。工夫の跡は伺えるが問題含みである。
特許文献3にも、同様に1本の油圧シリンダーにより2個の圧入歯を対称作動させるため、特異な構造・機構を採用している。シリンダーラムにトラニオンを設けて解決策としている。
【0006】
油圧機構による圧入の問題について再検討する。
1) ストローク終点の制御精度が不足すると噛み残しや歯先衝突の危険性が増す。
当該問題に対して今日の高度な油圧制御系を適用すること、歯先の食い違いを組み込むことによりほぼ解決される。
2) 切断の衝撃が切断装置本体だけでなく本体積載構造物や伸縮可能油圧配管(スイベルジョイント等)の耐久に影響する。対策が不可欠であり強固な構造を要する。
3) 先行例2のリンク機構は圧入装置本体がブランコ状態であり不安定且つ脆弱である。衝撃をまともに受ける。破損の危険性がある。
4) 先行例3のシリンダーラムにトラニオンを設けて対称圧入する方法も圧入時に懸架状態が発生し、不安定性は解決されない。
5) 鋳片の引抜軌跡は一定とは限らない。左右上下にずれることがある。せん断式なら強引な貫通により問題となっていないが、先行例2,3では切断装置本体が動かされ破損の危険性がある。リンク機構を必要としない単純で強固な構造が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6001397号
【特許文献2】特許第6533883号
【特許文献3】特許第6616207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は鋼のビレット用の連続鋳造における鋳片切断装置であって、1)高速鋳込を容易にして鋳造能率を向上すること、2)ビレット両端面形状を楔形に成形して圧延歩留まりを向上することの二つを目的とし、そのため連続鋳造鋳片を切断するに当たり鋳片を挟んで対向する1対の楔形切断歯を鋳片面に対称圧入して噛み切るように分断する公知の方式を採用する。先行例2,3の装置では1本の油圧シリンダーで作動させるため、装置本体が懸架状態になることが避けられず、衝撃や衝突に対してあまりにも脆弱である。
本願発明は、従来例の脆弱性を克服して、強固で安定した構造とすることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本願発明は、連続鋳造鋳片に上下対称の楔形圧入歯を圧入して封鎖と切断と楔形端面成形とを行う装置であって、鋳片引抜に追随する圧入装置本体と該圧入装置本体を内装し該圧入装置本体を上下左右の動きは拘束しつつ前後進のみ摺動可能とする軌道と駆動源とを保有する走行台とから成り、該圧入装置本体は、鋳片が側面から貫通する円筒状の圧入枠と、該圧入枠の両端にそれぞれ対向してねじ勘合する2本の油圧シリンダーと、該油圧シリンダーのラム上に設けられた楔形圧入歯と拡幅拘束ガードとから成る圧入歯台と、両シリンダーに分配する1系統の油圧配管とから構成され、作動とともに両楔形圧入歯が鋳片を挟んで対称的に圧入し切断することを特徴とする連続鋳造鋳片の切断装置である。
【0010】
述語の定義として、『対称的』とは実質対称であるが歯先のわずかな食い違いの存在のため正確な対称でないことを意味する。
【発明の効果】
【0011】
連続鋳造の引抜を高速化すると未凝固部が鋳片切断装置を通過する。従来の切断では漏出が発現する。本願発明では楔形歯の圧入によって溶融芯を封鎖した後分離するので溶融芯の漏出が無く、容易に引抜の高速化、鋳造能率の向上が得られる。
【0012】
表面平滑な楔形歯の対パス芯対称圧入によって切断するので鋼片には曲がり発生せず、且つ、鋼片には切断面が形成されず、端部には表面平滑な軸方向楔形の圧下面が形成され、圧延時の端部表面欠陥部分が短縮されて圧延歩留まりが向上する。
【0013】
上記大きな効果とともに本願発明固有の効果は以下である。
先行例(引用文献2,3)では1本の油圧シリンダーによって上下の圧入歯を対称圧入させるため切断装置本体に特異な上下動機構を組み込まざるを得ない。圧入装置本体がブランコのような状態も生ずる。構造が複雑・脆弱に、作動が不安定になる。衝撃に弱い。本願発明では2本の油圧シリンダーが圧入枠に強固に固定されて圧入装置本体を構成し、該圧入装置本体は上下左右の動きや揺動は一切拘束され、引抜に追随する前後進摺動のみとなって、構造・作動が単純強固になる。
油圧系は流量制御保有2系統とする必要がない。1系統を2本に分配することで負荷の均等性から自動的にストロークは上下同一となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の主要素である鋳片切断装置本体を側面から見た縦断面図である。
図2】本願発明の第2要素である走行台であって、Aは走行方向に見た図、Bは上から見た図である。
図3】走行の機構を示す図であり、Aは側面図、Bは正面図である。
図4】圧入歯台を示す図であり、Aは平面図、Bは側面図、Cは正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に従って、本願発明の主要素である鋳片の切断装置本体の構造と作動を説明する。
1は引抜中の鋳片であり、垂直円筒状の圧入枠2の側面を貫通する。該圧入枠2の両端には、油圧シリンダー3,3’が対向してねじ嵌合される。該油圧シリンダー3,3’に内装されるラム(太径のピストンロッド)4,4’にはそれぞれ圧入台5,5’が上置される。圧入台5,5’は圧入歯6,6’と歯の片側面に設けられた拡幅拘束ガード7,
7’とから成る。
各油圧シリンダー3,3’には主油圧配管(往)8,副油圧配管(復)9が接続される。それぞれ油圧ユニット(図示せず)から送給される1油圧配管系を伸縮可能に接続した後、2分割して各シリンダー内に侵入した油圧によりピストン10,10’が作動する。
作動開始時には両シリンダーのストロークに多少の差が生じても、一方の歯先が鋳片に達すると他方が追いつき、鋳片を挟んで対称圧入となる。
【0016】
図2は、切断装置本体を走行台車に組み込む構造を示す。
鋳片20を貫通する切断装置本体21は該切断装置本体21に水平に設けられた4本のブラケット(腕木)22,22’、23,23’が走行台24の上部に設けられた横V型軌道25,25’に嵌め込まれる。軌道25,25’内で各ブラケット22,22’、23,23’は拘束された懸架状態であって、鋳片引抜方向に摺動可能となるが、該切断装置本体21は上下左右だけでなく3軸周りの動きはすべて拘束され、円滑に前後進のみが可能となる。
角ブラケット22,22’、23,23’には牽引用のチェイン26,26’、27,27’が接続され本体21を前後に牽引する。
【0017】
図3は走行台上の切断装置本体の駆動方法を示す。
切断装置本体31に設けられた各ブラケット32,32’,33,33’は横V型軌道34に嵌め込まれ、走行台35に設けられたチェイン36,36’を接続し、駆動源37から駆動軸38,スプロケット39を介して該チェイン36,36’を牽引する。
牽引開始はシリンダーストロークが所定位置に達した時点とし、分断直後は切断装置本体は鋳片よりも先行し、圧入歯の後退に合わせて引き戻しに入る。
【0018】
図4は歯台を示す。Aは平面図、Bは側面図、Cは正面図である。
歯台41は圧入歯42と側面拘束ガード43とから成り、ボルト44によりラム上に強固に固定される。圧入歯42は横から見て3角柱状であり、ボルト45により側面拘束ガード43に強固に固定される。
圧入枠2の両側面には作業孔が設けられていて、圧入歯42は容易に交換することができる。
楔形歯の圧入に際して切断部近傍で鋳片幅が拡大する。拡幅が過大だと種々の作業事故を誘発するので、拡幅は拘束しなければならない。本願発明では上下両拡幅拘束ガードにより拘束される。
【実施例0019】
一般的な炭素鋼ビレットを製造する際、本発明の切断装置を適用する場合の適切な条件を以下に示す。実施には特に困難は無い。
【0020】
適用鋼種; 炭素鋼
鋳片寸法; 130mm×130mm
圧入荷重; 200t
油圧圧力; 20MPa
シリンダー内径; 350mm
ストローク; 90mm
圧入枠外径; 600mm
圧入歯迎角; 90°
本体高さ; 1000mm
切断時間; 3sec
先端形状; 楔形90°
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願発明は実用新案的であり実用が容易であり、現行設備に代替可能である。
【符号の説明】
【0022】
1;鋳片 2;圧入枠 3,3’;油圧シリンダー 4,4’;ラム 5,5’;圧入台 6,6’;圧入歯 7,7’;拡幅拘束ガード 8,8’;主油圧配管 9,9’;副油圧配管 10,10’;ピストン 21;切断装置本体 22,22’、23,23’;ブラケット 24;走行台 25,25’;軌道 26,26’;27,27’;チェイン 31;切断装置本体 32,32’33,33’;ブラケット 34,34’;チェイン 35;駆動源 36;駆動軸 37,37’;スプロケット 41;圧入台 42;圧入歯 43;拡幅拘束ガード 44;圧入台固定ボルト 45;圧入歯固定ボルト
図1
図2
図3
図4