(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151737
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】衛星測位システム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/40 20100101AFI20241018BHJP
【FI】
G01S19/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065373
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 卓毅
(72)【発明者】
【氏名】谷川原 誠
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕明
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA04
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD24
5J062EE04
(57)【要約】
【課題】
補正情報を切り換えて測位をする場合に、他のモジュールやデータに依存せず、切り換え後に測位解のミスFIXを検出可能な衛星測位システムを提供する。
【解決手段】
衛星測位システムは、衛星信号と補正情報を用いて測位結果を出力するシステムである。衛星測位システムは、補正情報受信部と、補正情報選択部と、座標変換部と、測位精度評価部と、測位結果記録部と、測位結果判定部と、判定結果表示部と、を備える。補正情報受信部は、補正情報を受信する。補正情報選択部は、受信する補正情報を選択する。座標変換部は、測位結果を任意の座標系に変換する。測位精度評価部は、変換後の測位結果の精度を評価する。測位結果記録部は、評価後の測位結果を記録する。測位結果判定部は、補正情報切り換え後の測位結果と保存された測位結果を比較し、ミスFIXを判定する。判定結果表示部は、判定結果を表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星信号と補正情報を用いて測位結果を出力する衛星測位システムであって、
補正情報を受信する補正情報受信部と、
前記補正情報受信部が受信する補正情報を選択する補正情報選択部と、
測位結果を任意の座標系に変換する座標変換部と、
変換後の測位結果の精度を評価する測位精度評価部と、
評価後の測位結果を記録する測位結果記録部と、
前記補正情報選択部にて補正情報が切り換わった場合、切り換え後の測位結果と前記測位結果記録部に保存された測位結果とを比較し、ミスFIXを判定する測位結果判定部と、
FIXまたはミスFIXの判定結果を表示させる判定結果表示部と、
を備えることを特徴とする衛星測位システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星測位システムであって、
前記測位結果判定部は、
前記測位結果記録部に保存された前記切り換え前の測位結果のうちで測位精度が閾値以内に収まっている一定時間分の値と、前記切り換え後の測位結果と、を比較し、ミスFIXを判定する、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項3】
請求項1に記載の衛星測位システムであって、
前記補正情報選択部は、
使用中の補正情報の受信状況が悪化した場合に、自動的に受信状況の良い補正情報に切り換え、受信状況が回復した場合に再び元の補正情報に自動的に切り換える、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項4】
請求項1に記載の衛星測位システムであって、
前記測位精度評価部は、
評価結果を基にした離散値を個々の測位結果に紐づけし、
前記測位結果記録部は、
前記離散値が紐づけられた値を参照し、前記測位結果判定部が判定に用いる測位結果を取得する、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項5】
請求項1に記載の衛星測位システムであって、
前記判定結果表示部は、
複数の補正情報の性能、電波強度、および、現在の補正情報を用いた測位のFIXまたはミスFIX判定の判定結果を表示し、
前記判定結果表示部に表示された複数の補正情報から一つを選択するユーザーの操作に応じて、選択された補正情報に切り換える信号を前記補正情報選択部へ送信する補正情報切り換え部を更に備える、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項6】
請求項1に記載の衛星測位システムであって、
前記測位結果判定部は、
FIX状態の測位結果を自動運転の制御に用いる制御コントローラに出力する、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
補正情報を用いた衛星測位は、低コストかつ高精度な自己位置推定手段として、一例で自動運転の重要な技術である。特に、従来の補正情報を用いた測位は、基地局を中心とした鉱山現場や農業などの局所範囲での利用が主だったが、近年ではCLASやVRSといった地上回線や衛星からの配信情報を用いることで広範囲に補正情報を配信可能なサービスも展開されており、鉄道や自動車のような、より広域を移動する対象への補正情報を用いた衛星測位の適用が進んでいる。この際、使用回線のサービス範囲外に出た場合や使用回線に通信障害が発生した場合、補正情報が取得できず測位が困難になる可能性がある。上記の問題に対し、近年では利用できる補正情報の通信手段が増えていることから、複数の通信手段を併用して補正情報を取得するシステムが有力である。
【0003】
例えば、特開2015-219087号公報(特許文献1)では、地上回線と衛星回線の2種類の経路から個々に補正情報を取得して測位結果を算出し、測位結果が正確な方を使用する方法が提案されている。
【0004】
また、特開2018-205244号公報(特許文献2)では、複数の補正情報を統合して取り扱うことにより、補正情報を用いた測位演算に利用可能な測位衛星の数を増やし、測位精度と安定性を向上させることが出来る方法を公開している。
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載されている手法は複数の経路から補正情報を同時に取得するシステムである。比較的安価な受信機では補正情報を一度に一種類しか処理できないものが多く、上記手法を単一の受信機で運用することが出来ない。解決案として、受信機を移動体に2つ以上取り付ける手法や、複数の補正情報が取得可能な受信機を利用する手法が考えられるが、補正情報を一度に一種類だけ処理する受信機の単独運用に比べて測位にかかるコストの増加が課題となる。複数の補正情報を用いた衛星測位を低コストで利用するためには、受信する補正情報を都度最適なものへと切り換えるシステムが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-219087号公報
【特許文献2】特開2018-205244号公報
【特許文献3】特開2022-98635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受信する補正情報を切り換えて新たに測位解を算出するシステムでは、ミスFIXと呼ばれる誤った測位解が算出されることがある。一般的に補正情報を用いた衛星測位において、測位結果が高精度に収束した状態をFIX状態と呼称するが、ミスFIXはこのFIX状態に収束したにもかかわらず実際の座標と大きく離れた位置に測位結果が収束する現象のことである。従来では、ミスFIX発生前の測位解の蓄積や周辺の地形データと比較して、測位解の信頼性を評価することでミスFIXを検出してきた。例えば、特開2022-98635号公報(特許文献3)ではあらかじめシステムに記録した地図データや、事前に蓄積した周辺環境の測位データを測位結果と照らし合わせることで、標高推定値を算出してこの標高推定値が閾値を超えて変化した場合にミスFIXと判定する手法を提案している。
【0008】
しかし、補正情報を切り換えた直後の場合、信頼性を評価するための測位解の蓄積が存在しないため、ミスFIXの検出は難しいと考えられる。また地形データと比較して評価する場合、地形データのある範囲でしかシステムを運用できないため、広域の移動体への適用が困難となる。
【0009】
このような観点から、補正情報を切り換えて測位をする場合に、他のモジュールやデータに依存せず、切り換え後に測位解のミスFIXを検出可能な衛星測位システムを提供することに課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記の衛星測位システムが提供される。この衛星測位システムは、衛星信号と補正情報を用いて測位結果を出力するシステムである。このシステムは、補正情報受信部と、補正情報選択部と、座標変換部と、測位精度評価部と、測位結果記録部と、測位結果判定部と、判定結果表示部と、を備える。補正情報受信部は、補正情報を受信する。補正情報選択部は、補正情報受信部が受信する補正情報を選択する。座標変換部は、測位結果を任意の座標系に変換する。測位精度評価部は、変換後の測位結果の精度を評価する。測位結果記録部は、評価後の測位結果を記録する。測位結果判定部は、補正情報選択部にて補正情報が切り換わった場合、切り換え後の測位結果と前記測位結果記録部に保存された測位結果とを比較し、ミスFIXを判定する。判定結果表示部は、FIXまたはミスFIXの判定結果を表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補正情報の切り換え直後でのミスFIXの検知が可能である。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態に関し、補正情報コントローラと操作インタフェースの構成例を示す概略図である。
【
図2】補正情報切り換え部と判定結果表示部を含む操作インタフェースの一例を示す図である。
【
図3】座標変換部が測位精度評価部に送信する計測情報の一例を示す図である。
【
図4】測位精度評価部が測位結果記録部と測位結果判定部に送信する計測情報の一例を示す図である。
【
図5】第一の実施形態に関し、衛星測位システムの大まかな処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図6】補正情報切り換え前後の測位結果を比較することでミスFIXを判定するシステムの一例を詳細に説明する図である。
【
図7】第二の実施形態に関し、補正情報の自動切り換えを詳細に説明する図である。
【
図8】衛星測位システムのハードウェア構成の一例を示す図。
【
図9】衛星測位システムのハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0014】
本発明は、補正情報を用いた高精度な衛星測位に係り、特に複数の補正情報を切り換えて受信する衛星測位システムに関する。また、低コストで利用することができ、経済的な観点で貢献することもできる。
【0015】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の実施形態となる補正情報を切り換えて衛星測位をした際に、ミスFIXを検出するシステムの概略の構成を示している。また、各部の詳細な処理は後述のフローを用いて説明する。
【0016】
<構成>
(補正情報コントローラ)
補正情報コントローラ1は、補正情報受信部99、補正情報選択部100、受信機リセット信号生成部104、座標変換部107、変換式入力部108、測位精度評価部98、移動量測定部113、測位結果記録部109、測位結果判定部110を備えており、衛星測位に用いる補正情報を切り換え、その測位のFIXまたはミスFIXを判定するシステムである。
【0017】
(操作インタフェース)
操作インタフェース2は、例えば、補正情報切り換え部103、判定結果表示部111を備える。操作インタフェース2は、ユーザーが現在使用している補正情報の測位の判定結果と、利用できる補正情報の特徴を加味したうえで、その時の利用に最適な補正情報を選択可能なインタフェースである。操作インタフェース2には、例えば、
図2に示すように、補正情報への接続にかかる時間および測位精度の情報151、現在の補正情報を用いた測位の判定結果の情報152、および、現在の位置での補正情報の受信強度の情報153をユーザーに提示する画面と、ユーザーが操作内容を入力する構成(この例では、補正情報の切り換え操作を実施するボタン154)が含まれる。利用者は判定結果表示部111で補正情報の性能と受信強度とFIX判定結果を確認し、用途や測位状況に応じて補正情報を切り換えることができる。
【0018】
(補正情報受信部)
補正情報受信部99は、補正情報選択部100が指示する補正情報を、補正情報サーバ101または該補正情報サーバ101とは異なる他の補正情報サーバ102から受信し、受信した補正情報を補正情報選択部100に送信する。また、補正情報受信部99は、受信した補正情報の電波強度を判定結果表示部111に送信する。なお、この補正情報受信部99は、後述する測位アンテナ106と同一のアンテナを使用する形式でもよい。
【0019】
(補正情報選択部)
補正情報選択部100は補正情報受信部99へ受信する補正情報を指示し、補正情報受信部99にて取得した補正情報を受信する。加えて、現在受信している補正情報の種類を数値データとして受信機リセット信号生成部104と測位結果記録部109に送信する。この数値データには例として補正信号の優先順位のデータが含まれる。また、補正情報を手動で切り換える場合に、補正情報選択部100は、補正情報切り換え部103から補正情報の切り換え信号を受信する。なお、補正情報の切り換え処理を自動で実施する場合の形態については、後述する第二の実施形態にて、
図7を用いて詳細に説明する。
【0020】
(受信機リセット信号生成部)
受信機リセット信号生成部104は、補正情報選択部100から補正情報の選択結果を受信し、使用している補正信号の切り換えが発生した際にGNSS受信機105をリセットする。このリセットに関して、受信機リセット信号生成部104が何らかの手段によりGNSS受信機105を再起動できればよい。このリセットは、例えば、物理的にGNSS受信機105の電源供給を停止させて再起動する方法であってもよい。
【0021】
(GNSS受信機)
GNSS受信機105は、補正情報選択部100から送られる補正情報と測位アンテナ106から送られる衛星信号を基に測位し、測位結果を座標変換部107へと送る。
【0022】
(測位アンテナ)
測位アンテナ106は衛星信号を受信し、GNSS受信機105へ送信する。
【0023】
(座標変換部)
座標変換部107は、変換式入力部108に入力された変換式を基に、GNSS受信機105で算出された測位結果を後述する自己位置推定に用いる統一の測地系へと変換し、計測情報を生成し、該計測情報を測位精度評価部98に送信する。ここで、計測情報は、例えば、
図3に示すようなデータとすることができる。
【0024】
(変換式入力部)
変換式入力部108は、本システムの各補正情報による測位結果を自己位置推定に用いる測地系に変換する変換式を入力する機能を有する。変換式は、ユーザーによりあらかじめ入力可能であり、変換式は、補正情報コントローラ1に入力の度に座標変換部107に送信される。
【0025】
(移動量測定部)
移動量測定部113は、測位アンテナ106からの衛星信号を基に、GNSS受信機105を設ける移動体(この例では、車両)の移動ベクトルをサンプル時間毎に算出し、測位精度評価部98へと送信する。
【0026】
(測位精度評価部)
測位精度評価部98は、座標変換部107より受信した測位結果を集計し、移動量測定部113より受信した移動体(この例では、車両)の移動量を基に、1時間ごとの測位結果の分散値を算出し、算出した分散値に対応する範囲に個々の測位結果が含まれるか否かに基づいて、精度を評価する。そして、測位精度評価部98は、測位精度の評価結果を基にした離散値の点数付けの値(測位精度評価点と呼ぶことがある)を計測情報に含め、測位結果記録部109と測位結果判定部110へサンプル時間毎に送信する。ここで、一例として、良好でない範囲の離散値は1、良好である範囲の離散値は3、その中間の範囲の離散値は2と設定される。該計測情報は、一例として、
図4に示すようなデータとすることができる。なお、ここでは1時間ごとの測位結果の分散値を算出し、該分散値に基づく測位結果の評価を行ったが、適切な評価を行うことができればよく、例えば、1時間とは異なる時間で分散値を算出し、処理を行ってもよい。
【0027】
(測位結果記録部)
測位結果記録部109は、補正情報の切り換え前において、測位精度評価部98より送られてくる計測情報を記録し続ける。また、測位結果記録部109は、補正情報選択部100から補正情報の選択結果を受信し、補正情報の切り換えが発生した場合、下記の処理を行う。すなわち、測位結果記録部109は、記録している切り換え前の測位結果のうちで、FIX状態であり、測位精度の評価結果が分散値から算出する一定確率楕円内に収まっている一定時間分の値を、測位結果判定部110へと送信する。なお、測位結果記録部109は、測位精度評価点を参照し、測位結果判定部110へと送信する値を取得してもよい。離散値に関する測位精度評価点を参照することで、測位結果判定部110へと送信する値を取得する際の処理負荷の低減が図られる。測位結果記録部109は、例えば、所定値以上の測位精度評価点であるデータ(すなわち、評価結果をベースとした離散値を紐づけた値が所定値以上となっているデータ)を取得してもよい。
【0028】
(測位結果判定部)
測位結果判定部110は、
図4に示すような評価結果に関するデータを含む計測情報を、測位精度評価部98から受信する。測位結果判定部110は、補正情報の切り換え前において、座標変換部107から送られてきた測位結果がFIX状態であれば、そのまま制御コントローラ112へ送信する。なお、制御コントローラ112は、例えば、測位結果を取得し、移動体の自動運転の制御に用いる構成である。
【0029】
その一方で、測位結果判定部110は、補正情報切り換え後において、測位精度評価部98から送られてきた現在の測位結果のFIX状態の確認に加え、現在の測位結果と測位結果記録部109から送られてきた測位結果とを一定時間分集計する。ここで、測位結果判定部110は、それぞれの集計の平均値により比較評価し、平均値の差が一定以上の場合にミスFIXと判定する機能を有する。
【0030】
そして、測位結果判定部110の判定結果は、
図2の一例に示すように、操作インタフェース2の判定結果表示部111を通してユーザーに提示される。なお、判定の結果誤差が閾値以内の場合には、測位結果判定部110は制御コントローラ112へ測位結果を送信する。
【0031】
(判定結果表示部)
判定結果表示部111は、測位結果判定部110から測位結果のFIX、ミスFIX判定結果と、補正情報受信部99から補正情報の電波強度を受信し、ユーザーに提示する機能を有する。
【0032】
次に、
図5を参照しながら、処理フローやロジックについて説明する。
図5は、補正情報の切り換え時のミスFIX検出が可能な衛星測位システムの大まかな処理フローの一例を示す。動作について各ステップ順に説明する。このフローを用いて補正情報を手動で切り換える第一の実施形態について述べ、補正情報を自動で切り換える場合の詳細な処理方法や判定基準は第二の実施形態にて後述する。また、ステップS209からステップS214までのフロー内の詳細な処理方法や判定基準は、
図6にて図示する。
【0033】
GNSS受信機105および測位アンテナ106は移動体に設けられ、衛星測位システムは該移動体の測位を行う。この例では、移動体(例えば、車両)は自動運転し、その間は下記の処理を常に繰り返す。
【0034】
まずステップS201にて、補正情報受信部99は、あらかじめ補正情報選択部100に記録した優先順位の内で最も優先順位の高い補正情報を受信し、該補正情報を補正情報選択部100に送る。
【0035】
ステップS202では、
図2に示すような操作インタフェース2から、ユーザーが補正情報を切り換えるかを判断する。
【0036】
そのまま現在の補正情報を利用する場合(ステップS202-No)、ステップS207へ処理が進む。ステップS207では、GNSS受信機105は、補正情報選択部100から送られる補正情報と測位アンテナ106から送られる衛星信号を基に測位する。また、GNSS受信機105は、測位結果の算出時刻t、測位した緯度経度(φ),(λ)、高さ(h)、測位時の座標位置特定品質(測位結果がFIX状態、float状態、単独測位状態かを示す変数)を座標変換部107へと送る。
【0037】
その一方で、ステップS202にてユーザーが補正情報を切り換える場合(ステップS202-Yes)、ステップS205に処理が進む。補正情報受信部99は、補正情報切り換え部103から補正情報選択部100を通して、切り換え後の補正情報を受信する指示を受ける。同時に、受信機信号リセット部104と測位結果記録部109は、補正情報選択部100から使用する補正情報の種類を数値データで受信する。
【0038】
次に、ステップS206にて、受信機信号リセット部104よりGNSS受信機105の電源供給を停止することでGNSS受信機105が再起動する。その後、上記したステップS207が実施され、ステップS208へ処理が進む。
【0039】
ステップS208では、座標変換部107は、変換式入力部108に入力された変換式を基に、測位結果を移動体の自己位置推定に用いる測地系へと変換する。
【0040】
ステップS209では、測位精度評価部98は、座標変換部107から送られてきた測位結果の分散値を求める。ここで、座標変換部107から受信した測位結果は車両の移動量d(ベクトル)が含まれているので、そのままでは分散値の算出が難しい。
【0041】
そこで算出方法の一例は、
図6に示すように、分散値の算出に用いる一番古い測位結果を地点Aの測位結果(x
0,y
0,z
0)とし、Δt秒後のA’地点での測位結果(x
1,y
1,z
1)とを定義した場合、まずΔt秒間の移動ベクトル(Σd)を算出する。
【0042】
次に、測位精度評価部98は、測位結果を移動ベクトル分だけ遷移させた値を用いて分散値を算出し、毎サンプル時刻の測位結果を、分散値から算出する一定確率楕円内外判定により精度評価する。なお、この評価に用いる分散値は定数倍を掛けてパラメータ調整してもよい。最初の1時間では、測位精度評価部98は、座標変換部107から受信した測位結果のうちFIX状態の結果を順次分散値の計算に用いる。
【0043】
その後、測位精度評価部98は、1時間経過ごとに分散値を更新する。なお、この更新間隔は、使用する衛星補正情報の分散値が十分に計測可能だと判断できる範囲で、任意の長さに変更しても良い。また、最初の1時間ではFIX状態の結果を用いる例が説明されたが、適切な分散値の計算を行うことができれば良く、例えば、最初のFIX状態の結果を用いる時間が変更されても良い。また、測位精度の評価に使用する分散値はあらかじめ取得した固定値を使用しても良い。
【0044】
測位精度評価部98は、精度評価をしたサンプル時間毎の測位結果に、評価結果を基にした離散値の点数を紐づけ、
図4に示すような計測情報として保存する。この後の処理において、この評価点(測位精度評価点)を参照することで、個々の測位精度の是非を判断する処理負荷を軽減させることが出来る。
【0045】
図5も参照しながら説明する。その後ステップS210にて、測位精度評価部98は、
図4の計測情報を測位結果記録部109に記録する。次にステップS211で、測位結果判定部110は、測位結果の判定を実施する。
【0046】
測位結果がFIX状態ではない場合、ステップS214-2へ処理が進み、測位結果判定部110は、判定結果を判定結果表示部111へ送信する。その一方で、FIX状態の場合、ステップS212へ処理が進み、ステップS212において、測位結果判定部110は、測位結果記録部109からの計測情報の送信の有無を確認する。
【0047】
測位結果記録部109からの計測情報の送信が無い場合(ステップ212-No)、補正情報の切り換えが発生していない為、そのままステップS214-1へ処理が進み、測位結果判定部110は、判定結果を判定結果表示部111に送信し、測位結果を制御コントローラ112へ送信する(ステップS214-1)。その後、処理がステップS201に戻る。
【0048】
その一方で、測位結果記録部109からの計測情報の送信が有る場合(ステップS212-Yes)、ステップS213に処理が進み、ステップS213において、測位結果判定部110は、補正情報切り換え前後の測位結果を比較し、補正情報切り換え後の測位結果のミスFIXを判定する。
【0049】
この比較判定では、ステップS209と同様に測位結果に車両の移動量dが含まれているため移動量分の座標の補正が必要になる。
図6も用いて、時刻Tにおいて地点A(x
0,y
0,z
0)で使用している補正情報が悪化したため、次の補正情報へ切り換え、時刻T+t時点で地点B(x
t,y
t,z
t)にて切り換え後の補正情報を用いた測位結果が収束した場合を考える。この時、t秒間の移動ベクトルの和は移動ベクトルdのt秒分の積算値Σdで求められるため、Σdを加味することで地点Aでの測位結果を地点Bにおける測位結果として推定可能となる。
【0050】
上記の推定を用いることで、移動体が移動し続けながら、衛星測位システムは、測位結果の比較し、ミスFIXの判定ができる。測位結果判定部110は、第一補正情報と移動量の推定測位結果と、第二補正情報の測位結果を一定時間分集計し、それぞれの集計の平均値を比較し、平均値の差が一定以上の場合にミスFIXを判定する。
【0051】
尚、ミスFIXの判定方法は、本実施形態の例に限らず、第一補正情報と第二補正情報での測位結果が比較できる方法であれば良い。また、集計時間や閾値等のパラメータは、例えば、使用する補正情報や移動体(例えば、車両)の安全基準に伴い任意に変更しても良い。
【0052】
ミスFIX判定の結果、ミスFIXである場合、ステップS214-2へ処理が進み、測位結果判定部110は、判定結果を判定結果表示部111に送信する。正常なFIX状態の場合、ステップS214-1へ処理が進み、測位結果判定部110は、判定結果を判定結果表示部111に送信し、測位結果を制御コントローラ112へ送信する。ステップS214-1およびステップS214-2実施後、再びステップS201へ処理が戻る。この繰り返しフローを自動運転中にサンプル時間毎に実施することが本システムの主な機能となる。
【0053】
(効果)
以上に説明した処理を実行することによって、補正情報の切り換え直後でのミスFIXの検知することができるようになる。
【0054】
<第二の実施形態>
次に、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、手動による補正情報の切り換えが説明されたが、第二の実施形態では、自動で補正情報の切り換えが行われる。
図7は、補正情報の切り換え処理を自動で実施する場合の実施形態を説明するための図である。本実施形態では、第一の実施形態の処理を基本とし、処理が異なる内容を以下で説明する。従って、第一の実施形態で説明した内容と同様の内容については、省略することがある。
【0055】
補正情報受信部308は、衛星から発信される補正情報を受信可能なアンテナ301と、地上回線で発信される補正情報を受信可能な無線デバイス302を有し、最も優先順位の高い補正情報として衛星群303から発信される補正情報と、次に優先順位の高い補正情報として補正情報サーバ304から地上回線を通して発信される補正情報を受信している。補正情報の取得優先順位は、補正情報選択部300内の記録装置にユーザーがあらかじめ記録することで定める。尚、補正情報受信部308が受信する補正情報は、この形態に限るものではなく、測位結果を高精度に補正する情報であれば種類を問わず、取得する補正情報の個数、優先順位も上記例以外を認めるとする。また、補正情報の発信媒体は、衛星信号や地上の携帯回線などその形態を問わない。補正情報を衛星からの補強信号の形で受信する場合、受信に用いる測位アンテナは、GNSS受信機305で衛星測位に使用するアンテナ306と同一でも構わない。
【0056】
始めに衛星群303から補正情報を取得する際、補正情報選択部300は、この補正情報の受信強度の大きさをあらかじめ定めた基準値と比較し、補正情報の受信強度があらかじめ定めた基準値を上回る場合に補正情報を正常に取得できていると判断する。尚、補正情報の取得確認手法は、本実施形態の確認方法に限定されず、補正情報選択部300で補正情報の中身を実際に確認し、補正情報の値の有効性を判定する手法でもよい。
【0057】
受信中の補正情報が正常に受信できていると判断した場合には、この補正情報をGNSS受信機305の測位結果の補正に用いる。すなわち、補正情報選択部300は、GNSS受信機305にそのまま補正情報を送信する。その一方で、正常に補正情報が取得できていない場合、補正情報選択部300は、受信する補正情報を次の優先順位である補正情報サーバ304から送信される補正情報へと切り換える。
【0058】
切り換え前の補正情報と同様に切り換え後の補正情報の受信状態を確認し、正常に受信できていない場合は、補正情報選択部300が次に優先度が高い受信可能な補正情報へと切り換える。もし取得可能な補正情報がない場合、補正情報選択部300は、GNSS受信機305への補正情報の送信を停止する。いずれかの補正情報を正常に受信できた場合、補正情報選択部300は、受信機リセット信号生成部307と測位結果記録部109に使用する補正情報の種類を数値データで送信する。
【0059】
信号を受信した受信機リセット部307は、GNSS受信機305を再起動することでGNSS受信機305内の第一補正情報のデータをリセットする。GNSS受信機305の再起動後、GNSS受信機305は、切り換え後の補正情報を補正情報選択部300より受信し、測位結果を補正する。尚、補正情報選択部300は、補正情報の切り換え後も、より優先順位の高い補正情報を同時に受信し続けても良い。また、切り換え前の補正情報があらかじめ定めた規定時間で常に受信可能となった段階でその時受信している補正情報から切り換え前の補正情報へと受信する補正情報を戻しても良い。このシステムにより、補正情報選択部300は、正常に受信可能な補正情報のうち優先順位が高い補正情報を常に選択することが出来る。
【0060】
<衛星測位システムのハードウェア構成>
次に、
図8-
図9を参照しながら、衛星測位システムの構成の一例について説明する。
図8に示すように、衛星測位システムは、補正情報コントローラ1と、操作インタフェース2と、GNSS受信機471と、を備える構成とすることができる。なお、
図8および
図9に示す衛星測位システムには、情報を受信する不図示のアンテナ、無線デバイス等が含まれてもよい。
【0061】
補正情報コントローラ1は、演算部451と、記憶部452と、インタフェース部453と、を備える。演算部451は、所定の処理を実行する主体となり、プロセッサとして構成される。演算部451は、一例として、CPU(Central Processing Unit)を用いて構成することができる。ただし、演算部451は、所定の処理を実行する主体であれば良く、例えば、他の半導体デバイス等を用いて構成されてもよい。記憶部452は、データを記憶する装置を用いて構成され、例えば、主記憶装置と補助記憶装置を用いて構成することができる。補助記憶装置には、所定の処理を実行するためのプログラムが配置されてもよい。インタフェース部453は、通信によるデータの入出力に用いられる構成であり、例えば、適宜の通信装置を用いて構成することができる。
【0062】
補正情報受信部99、補正情報選択部100、受信機リセット信号生成部104、座標変換部107、変換式入力部108、測位精度評価部98、移動量測定部113、測位結果記録部109、および、測位結果判定部110は、演算部451、記憶部452、インタフェース部453等を適宜に用いて構成することができる。
【0063】
操作インタフェース2は、例えば、演算部401と、記憶部402と、インタフェース部403と、入力部404と、出力部405と、を備える。インタフェース部403は、通信によるデータの入出力に用いられる構成であり、例えば、適宜の通信装置を用いて構成することができる。操作インタフェース2は、インタフェース部403を介して、補正情報コントローラ1に有線あるいは無線で接続され、補正情報コントローラ1とデータの入出力が可能である。
【0064】
演算部401は、上記の説明と同様に、所定の処理を実行する主体であり、CPU等を適宜に用いて構成される。記憶部402は、データを記憶する装置を用いて構成され、例えば、主記憶装置と補助記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置には、所定の処理を実行するためのプログラムが配置されてもよい。入力部404は、ユーザーが操作内容を入力する構成であり、例えば、ボタン、音声入力装置等の適宜の入力装置を用いて構成することができる。出力部405は、ユーザーに情報を提示する構成であり、適宜のディスプレイを用いて構成することができる。なお、入力部404と出力部405は、一体として構成されてもよく、例えば、タッチパネルとされてもよい。
【0065】
補正情報切り換え部103は入力部404を用いて構成することができる。判定結果表示部111は出力部405を用いて構成することができる。
【0066】
操作インタフェース2は、例えば、タブレットのような可搬性の装置であってもよい。また、操作インタフェース2は、GNSS受信機471が設けられ、ユーザーが乗車する車両に取り付けられた装置であってもよい。ここで、操作インタフェース2の出力部405は、車両に搭載されるディスプレイ(例えば、速度等の車両情報を表示する運転者前方のディスプレイ)とされてもよい。また、補正情報コントローラ1は、前記車両に搭載されてもよい。制御コントローラ112は、前記車両に搭載されてもよい。
【0067】
ユーザーは、操作インタフェース2を介して、補正情報コントローラ1に適宜のデータを入力することができ、補正情報コントローラ1は、操作インタフェース2を介して、ユーザーに適宜の情報を提供することができる。その一方で、補正情報コントローラ1は、入力部(不図示)および出力部(不図示)を備えてもよい。そして、補正情報コントローラ1は、ユーザーがデータを入力する適宜の入力装置を備えてもよいし、ユーザーに情報を提供する出力装置を備えてもよい。これら入力部および出力部は一体として構成されてもよい。
【0068】
衛星測位システムは、例えば、GNSS受信機471が設けられたドローンに用いられてもよい。ここで、ドローンには補正コントローラ1および制御コントローラ112が設けられてもよい。そして、操作インタフェース2は、例えば、無線通信を介して、補正コントローラ1とのデータの入出力を行ってもよい。ユーザーは、操作インタフェース2を用いて、補正コントローラ1にデータの入力を行ってもよい。
【0069】
図9に示すように、衛星測位システムは、演算部501と、記憶部502と、インタフェース部503と、入力部504と、出力部505と、GNSS受信機506と、を備え、補正情報コントローラ1および操作インタフェース2の機能を有するシステムとされてもよい。上記の説明と同様に、演算部501は、CPU等を適宜に用いて構成され、記憶部502は、例えば、主記憶装置と補助記憶装置を用いて構成される。インタフェース部503は、通信によるデータの入出力に用いられる構成であり、例えば、適宜の通信装置を用いて構成される。入力部504は、ユーザーによる各種の操作内容の入力に用いられ、適宜の入力装置を用いて構成され、出力部505は、情報の提供に用いられ、適宜のディスプレイを含む。なお、入力部504と出力部505は一体として構成されてもよい。
【0070】
上記した第一および第二の実施形態より、一例として、補正情報を受信する補正情報受信部と測位アンテナが受信した衛星信号と前記補正情報を用いて測位結果を出力するGNSS受信機とを持つ衛星測位システムにおいて、補正情報受信部が受信する補正情報を選択する補正情報選択部と、前記測位結果を任意の座標系に変換する座標変換部と、変換後の測位結果の精度を評価する測位精度評価部とを備え、評価後の測位結果を記録する測位結果記録部と、前記補正情報選択部にて補正情報が切り換わった場合、切り換え後の測位結果と前記測位結果記録部に保存された前記測位結果とを比較し、ミスFIXを判定する測位結果判定部と、FIX・ミスFIXの判定結果をユーザーに提示する判定結果表示部を有する衛星測位システムが提供される。
【0071】
以上、実施形態について説明されたが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0072】
GNSS受信機が設けられる移動体には、例えば、車両(自動車、鉄道車両など)、ドローンが挙げられる。前記移動体には、制御コントローラ112が設けられてもよく、制御コントローラ112は、運転制御に衛星測位システムからのデータを用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
98 測位精度評価部
99 補正情報受信部
100 補正情報選択部
107 座標変換部
109 測位結果記録部
110 測位結果判定部
111 測位結果表示部