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特開2024-151739青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物、青色再生樹脂組成物、梱包用青色再生結束バンド、及び梱包用青色再生結束バンドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151739
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物、青色再生樹脂組成物、梱包用青色再生結束バンド、及び梱包用青色再生結束バンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241018BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20241018BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20241018BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20241018BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08L67/02
C08K3/20
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065377
(22)【出願日】2023-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】522375914
【氏名又は名称】株式会社セレン
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 貞夫
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002CF061
4J002DE136
4J002FD016
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】70%程度を占める青色再生バンドを製造するに際し、原料となる混色再生ペレットの彩度が相対的に小さい場合であっても、彩度が20以上である青色再生バンドを確実に提供する。
【解決手段】本発明に係る青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物は、色相角が240°~255°である第1顔料と、二酸化チタンとを含有し、第1顔料100質量部に対する二酸化チタンの含有量が10質量部~50質量部である。色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して得られる青色再生基材に対して上記マスターバッチを所定割合で混合し、延伸成形することで、梱包用青色再生結束バンドを製造できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIE1976表色系において定義される色相角が240°~255°である第1顔料と、
二酸化チタンとを含有し、
前記第1顔料100質量部に対する二酸化チタンの含有量が10質量部以上50質量部未満である、青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物。
【請求項2】
前記色相角が275°~285°である第2顔料をさらに含有し、
前記第1顔料100質量部に対する前記第2顔料の含有量が15質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の着色材組成物。
【請求項3】
色相及び材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを再生して得た、ポリオレフィン及び/又はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、前記色相角が240°~300°である青色再生基材と、
請求項1に記載の着色材組成物と、
を含有し、
前記青色再生基材と前記着色材組成物に任意成分として含まれるキャリア樹脂との合計100質量部に対する前記着色材組成物の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、
膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、青色再生樹脂組成物。
【請求項4】
色相及び材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを再生して得た、ポリオレフィン及び/又はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~300°である青色再生基材と、
前記色相角が240°~255°である第1顔料と、
二酸化チタンとを含有し、
前記青色再生基材100質量部に対し、
前記第1顔料の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、
前記二酸化チタンの割合が0.05質量部以上0.5質量部未満である、青色再生樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の青色再生樹脂組成物の硬化物からなる梱包用青色再生結束バンド。
【請求項6】
色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して青色混合物を調製する色選別工程と前記青色混合物を溶融混練及び/又はグラッシュ化する加工工程とを経て得られる青色再生基材に対し、請求項1又は2に記載の着色材組成物を混合し、青色再生樹脂組成物を得る工程と、
前記青色再生樹脂組成物を延伸成形して梱包用青色再生結束バンドを得る工程とを含み、
前記青色再生基材と前記着色材組成物に任意成分として含まれるキャリア樹脂との合計100質量部に対する前記着色材組成物の割合が1質量部以上2質量部以下であり、
前記梱包用青色再生結束バンドは、膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、梱包用青色再生結束バンドの製造方法。
【請求項7】
色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して青色混合物を調製する色選別工程と前記青色混合物を溶融混練及び/又はグラッシュ化する加工工程とを経て得られる青色再生基材に対し、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~255°である第1顔料と、二酸化チタンと、任意に前記色相角が275°~285°である第2顔料とを混合し、青色再生樹脂組成物を得る工程と、
前記青色再生樹脂組成物を延伸成形して梱包用青色再生結束バンドを得る工程とを含み、
前記青色再生基材100質量部に対し、
前記第1顔料の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、
前記二酸化チタンの割合が0.05質量部以上0.5質量部未満であり、
前記第2顔料の割合が0質量部以上0.6質量部以下であり、
前記梱包用青色再生結束バンドは、膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、梱包用青色再生結束バンドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物、青色再生樹脂組成物、梱包用青色再生結束バンド、及び梱包用青色再生結束バンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梱包用に使用される梱包用結束バンドは、ポリプロピレン(以下「PP」ともいう)又はポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ともいう)を主成分とし、顔料等の副原料を加えて帯状に成形した後、表面に連続した菱形の凹凸模様(エンボス加工)を施して製造される幅5mm~25mmのバンドである。用途に応じて種々の色やサイズを有するものが存在し、国内使用量は4万トン程度である。しかし、容器包装リサイクル法における分別収集の対象にはならないため、ほとんどリサイクルされずに焼却等で処理されているのが実態である。
【0003】
市販の梱包用結束バンドの約8割を占めるPPバンドには、青、黄、白、透明、赤、緑、黒等の色が存在するため、使用後に回収される場合は、様々な色を持つPPバンドにPETバンドも混入した混合物として回収される。
【0004】
現在、回収された様々な色の結束バンド混合物を原料とした再生結束バンドが上市されている。結束バンドとして最も多く用いられるのが青色、次に多く用いられるのが黄色であるため、再生結束バンドにおいても、新品結束バンド(バージンバンド)と同様の色合いをもつ青色、黄色等の結束バンドを提供することが求められる。しかしながら、生産性を重視する工業生産では、機械的色分別あるいは人手分別のいずれの方法によっても、目的色以外の他色、黒色等の混入をゼロとすることは極めて困難である。そのため、再生結束バンドは、混色により雑色となってしまい、必然的に回収品ペレットは目的色に少量の多色、黒色等を含むものとして製造されることになる。梱包用結束バンドの色は美観のみならず機能上重要な役割を果たす。例えば、梱包用結束バンドの色は梱包された商品の製品区分や在庫管理のために使用される。したがって、一目でそれらの情報が判別できるように種々の色相において彩度の高い色付けが極めて重要であるが、従来の再生結束バンドは上述の通り無彩色もしくは著しく低彩度であるために識別性に乏しく、用途が著しく限定されていた。
【0005】
さて、この混色再生ペレットから再生PPバンドを製造するが、これが青色再生バンド或いは黄色再生バンドと認識されるためには、当然のことながら外観上、夫々が明確な目的色識別性を持たなければならない。この着色再生バンドの目的色識別性は彩度で規定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-090656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば青系回収品に、黄色、黒色等が混ざる混色ペレットを出発材料として彩度15以上の青色再生バンドを安定的に製造することは、必ずしも容易ではない。例えば、黒色等の混入比率が比較的高い、回収ペレット原色の彩度が極めて低い水準の混色ペレットでは、彩度が15以上の青色再生バンドを確実に提供することは、容易でない。
【0008】
本発明の目的は、70%程度を占める青色再生バンドを製造するに際し、原料となる混色再生ペレットの彩度が相対的に小さい場合であっても、彩度が15以上である青色再生バンドを確実に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、群青顔料及び二酸化チタンを含有する着色材組成物を用いることで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明は、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~255°である第1顔料と、二酸化チタンとを含有し、前記第1顔料100質量部に対する二酸化チタンの含有量が10質量部以上50質量部未満である、青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物を提供する。
【0011】
図1は、新品結束バンド(バージンバンド)について、バンドの色ごとに、CIE1976表色系において定義されるa値及びb値を図示したものである。市販される新品青色結束バンドにおいて、tan-1(b/a)で定義される色相角hは、275°~285°であり、新品青色結束バンドは、図1で表されるL平面の第4象限に位置する。
【0012】
また、回収された使用済み結束バンドのうち、使用済み青色結束バンドだけを集めた切断品において、
【数1】
で定義される彩度Cの平均が24.34であり、黄色結束バンドだけを集めた切断品の彩度に比べて著しく低い。使用済み青色結束バンドだけを実験室レベルで集めた場合の彩度が20よりわずかに大きい24.34であるのだから、工業生産レベルで製造される再生青色結束バンドにおいて、実験室レベルで得られる彩度に近い15以上を出すことは、容易ではない。
【0013】
第1の特徴に係る発明によると、色相角が240°~255°である第1顔料(群青顔料)により、混色ペレットの彩度が小さく、黒色を含むものであったとしても、黒色混入による青色喪失を小さく抑えることができ、また、二酸化チタンにより、混入されている黒色を遮蔽することができる。よって、最小限の補色で青色再生樹脂組成物の彩度を高めることができ、結果として15以上の彩度を持つ青色再生樹脂組成物を提供できる。
【0014】
なお、青色顔料としては、第1顔料(群青顔料)だけでなく、ウルトラマリン(色相角:234°)、藍銅鉱(アズライト、色相角:220°)、紺青(プルシアンブルー、色相角:220°)、コバルトブルー(アルミ酸コバルト、色相角:200°)、セルリアンブルー(錫酸コバルト、色相角:197°)及びフタロシアニンブルー(色相角:275°~285°)等、数多く知られている。しかしながら、これらの青色顔料は、いずれも第1顔料に比べ、黒色混入による青色喪失が大きい。そのため、第1顔料以外の青色顔料又はこれら青色顔料の混合物による補色だけでは、顔料の使用量が相対的に多くなる可能性があり、好ましくない。
【0015】
また、白色顔料としては、二酸化チタン(チタンホワイト)だけでなく、酸化亜鉛(亜鉛華、亜鉛白とも称される)、硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物(リトポン)、塩基性炭酸鉛(2PbCO・Pb(OH),鉛白)等も知られている。しかしながら、これらの白色顔料は、いずれも二酸化チタンに比べ、混入されている黒色の遮蔽性に乏しい。そのため、二酸化チタン(好ましくはルチル型二酸化チタン)以外の白色顔料又はこれら白色顔料の混合物による補色だけでは、顔料の使用量が相対的に多くなる可能性があり、好ましくない。
【0016】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記色相角が275°~285°である第2顔料をさらに含有し、前記第1顔料100質量部に対する前記第2顔料の含有量が15質量部以上30質量部以下であるマスターバッチを提供する。
【0017】
第2の特徴に係る発明によると、第1顔料(群青顔料)と第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)との両方による補色効果が得られるため、混色ペレットへの黒色混入による青色喪失をよりいっそう小さく抑えることができる。
【0018】
第3の特徴に係る発明は、色相及び材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを再生して得た、ポリオレフィン及び/又はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、前記色相角が240°~300°である青色再生基材と、第1又は第2の特徴に係る着色材組成物と、を含有し、前記青色再生基材と前記着色材組成物に任意成分として含まれるキャリア樹脂との合計100質量部に対する前記着色材組成物の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、青色再生樹脂組成物を提供する。
【0019】
第4の特徴に係る発明は、色相及び材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを再生して得た、ポリオレフィン及び/又はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~300°である青色再生基材と、前記色相角が240°~255°である第1顔料と、二酸化チタンとを含有し、前記青色再生基材100質量部に対し、前記第1顔料の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、前記二酸化チタンの割合が0.05質量部以上0.5質量部未満である、青色再生樹脂組成物を提供する。
【0020】
第5の特徴に係る発明は、第3又は第4の特徴に係る青色再生樹脂組成物の硬化物からなる梱包用青色再生結束バンドを提供する。
【0021】
第6の特徴に係る発明は、色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して青色混合物を調製する色選別工程と前記青色混合物を溶融混練及び/又はグラッシュ化する加工工程とを経て得られる青色再生基材100質量部に対し、第1又は第2の特徴に係る着色材組成物混合し、青色再生樹脂組成物を得る工程と、前記青色再生樹脂組成物を延伸成形して梱包用青色再生結束バンドを得る工程とを含み、前記青色再生基材と前記着色材組成物に任意成分として含まれるキャリア樹脂との合計100質量部に対する前記着色材組成物の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、前記梱包用青色再生結束バンドは、膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、梱包用青色再生結束バンドの製造方法を提供する。
【0022】
第7の特徴に係る発明は、色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して青色混合物を調製する色選別工程と前記青色混合物を溶融混練及び/又はグラッシュ化する加工工程とを経て得られる青色再生基材に対し、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~255°である第1顔料と、二酸化チタンと、任意に前記色相角が275°~285°である第2顔料とを混合し、青色再生樹脂組成物を得る工程と、前記青色再生樹脂組成物を延伸成形して梱包用青色再生結束バンドを得る工程とを含み、前記青色再生基材100質量部に対し、前記第1顔料の割合が0.5質量部以上2質量部以下であり、前記二酸化チタンの割合が0.05質量部以上0.5質量部未満であり、前記第2顔料の割合が0質量部以上0.6質量部以下であり、前記梱包用青色再生結束バンドは、膜厚2mmの樹脂板として分光反射特性を測定した際にCIE1976表色系において15以上の彩度Cを有する、梱包用青色再生結束バンドの製造方法を提供する。
【0023】
市場から回収する使用済み結束バンドをリサイクルする際、特に人力選別による場合、混色ペレットの彩度が小さく、15以上の彩度を持つ青色再生樹脂組成物を提供することは、事実上不可能であると考えられていた。
【0024】
第3から第7の特徴に係る発明によると、リサイクルが人力選別であっても機械選別であっても、相当量の黒色その他の色の低彩色ペレットを原料として15以上の彩度を持つ高品質の青色再生樹脂組成物及び梱包用青色再生結束バンドを提供できる。
【0025】
ここで、第3及び第4に係る発明は、プロダクトバイプロセスクレームの記載形式になっている。梱包用結束バンドは用途が明確であるため、その回収品に含まれる金属や無機物質等の夾雑物の量は、一般の回収樹脂製品に比べて少ないという事情がある。しかしながら、梱包用結束バンドは荷物を搬送および保存する際に種々の環境に置かれるため、その回収品に含まれる金属や無機物質等の夾雑物は多岐にわたり、その極めて微量な夾雑物の種類及び量を正確に同定かつ定量することは、現実的ではない。
【0026】
通常、樹脂に含まれる金属等の微量な夾雑物を分析するには、樹脂を溶媒に溶かし、当該溶液を、水を用いた抽出に供し、夾雑物を濃縮する方法が知られている。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートのような高結晶樹脂を主成分とするため、これらを溶解する溶媒が極めて限定的である。このような高結晶性樹脂を溶解させる溶媒は極めて特殊であり、例えばポリプロピレンを溶かす溶媒としてデカリン等が知られているが、100℃以上の高温でないと溶解させることはできず、仮にデカリン溶液を調製できたとしても、100℃以上のデカリン溶液を、水を用いた抽出に供して、夾雑物を濃縮することは極めて困難である。
【0027】
よって、第3及び第4に係る発明においては、製造方法の記載を用いないと「物」を特定できないという事情が存在するため、プロダクトバイプロセス形式の記載であっても、不明確ではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、最小限の補色で青色再生樹脂組成物の彩度を高めることができ、結果として15以上の彩度を持つ青色再生樹脂組成物及び梱包用青色再生結束バンドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、新品結束バンド(バージンバンド)について、バンドの色ごとに、CIE1976表色系において定義されるa値及びb値を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0031】
<梱包用青色再生結束バンドの製造方法>
本実施形態において、梱包用青色再生結束バンドの製造方法は、色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを原料として青色再生樹脂組成物を製造する工程と、当該青色再生樹脂組成物を延伸成形する工程とを含む。
【0032】
〔青色再生樹脂組成物を製造する工程〕
青色再生樹脂組成物を製造する工程は、色相及び/又は材質が異なる複数の使用済み梱包用結束バンドを青色群に分類して青色混合物を調製する色選別工程と、前記青色混合物を溶融混練及び/又はグラッシュ化する加工工程とを含む。
【0033】
[使用済み梱包用結束バンド]
本発明の製造方法は、原料として使用済み梱包用結束バンドを用いる。梱包用結束バンドは、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とし、顔料等の副原料を加えて帯状に成形した後、表面に連続した菱形の凹凸模様(エンボス加工)を施して製造される幅5mm~25mmのバンドである。なお、本発明においてX~Yは、その端値であるX及びYを含むものとする。例えば、「5mm~25mm」との表記は、5mm以上25mm以下を意味し、端値である5mm及び25mmを含むものとする。
【0034】
一般に回収原料は、プレコンシューマ材料(原料)とポストコンシューマ材料(原料)に大別される。プレコンシューマ材料は、製造工程からの回収物であり製品にされる前の状態であるため汚れや夾雑物をほとんど含まない。一方、ポストコンシューマ材料は、一旦市場で使用された製品からの回収物、すなわち市中からの回収物であるため汚れや夾雑物を含み、前者と比較して格段に再生の困難性が高い。しかし本発明は、使用済み梱包用結束バンドとしてポストコンシューマ材料を用いた場合でも効果を発揮する。
【0035】
梱包用結束バンドは、通常は単独でそのまま梱包に使用されるため、ポストコンシューマ材料であっても分別が比較的容易である。しかしPP製バンドと共にPET製バンドが一部使用される、使用環境によって夾雑物が混入しうる、汚れの程度や使用中の経時劣化や破損の程度が異なる等の理由から、できる限り使用履歴が明確であり、夾雑物等の混入が少ない使用済み梱包用結束バンドを用いることが好ましい。例えば新聞業界において梱包用結束バンドは印刷工場から新聞取次店までの荷造りに使用されるが、業界内の協力の下で限られた環境で使用されるため使用履歴が明確であり、夾雑物の混入や汚れの度合いが小さく経時劣化や破損も少ない。よって新聞業界において、梱包用結束バンドの水平リサイクルに適した回収ルートが確立されている。同様に、飲料容器、加工食品、衣料、出版・印刷物、精密部品、建築物内装品、大型家電製品の梱包に使用される梱包用結束バンドも、工場間、工場と倉庫・卸問屋・店舗間、工場と店舗間等の全流通過程において使用履歴が比較的明確であるため、当該業界においても水平リサイクルに適した回収ルートが形成可能である。一方、配送業界において段ボール等の古紙と共に回収される梱包用結束バンドは、使用履歴が様々ではあるが大半は通常の流通ルートでのシングルユースであり、かつ回収量が多く、環境意識の高まりとともに夾雑物や汚れも削減されるので本発明の原料として有用である。さらに、将来、PETボトルのように一般家庭からの分別回収ルートが確立されれば、配送業界において使用される梱包用結束バンドはより有用な原料となりうる。
【0036】
[前処理工程]
色選別工程の前に、使用済み梱包用結束バンドに前処理を施すことが好ましい。
【0037】
((冷却工程、加熱工程))
使用済み梱包用結束バンドを切断しやすくするために、使用済み梱包用結束バンドを冷却する工程又は加熱する工程を設けることが好ましい。具体的には、PPやPETの脆化温度以下に冷却することが挙げられる。特にPP製使用済み梱包用結束バンドでは-20℃以下に冷却することが好ましい。また、使用済み梱包用結束バンドを130℃~200℃に加熱して柔らかくして切断しやすくすることも好ましい。加熱温度はより好ましくは140℃~190℃、さらに好ましくは150℃~180℃である。
【0038】
((切断工程))
続いて、使用済み梱包用結束バンドを切断して切断混合物を得る切断工程を設けてもよい。切断された使用済み梱包用結束バンドを用いることで選別部による移送精度を高められるので歩留や選別精度を向上できる。複数の切断された使用済み梱包用結束バンドはコンベア上に互いが重ならないように配置されることが好ましい。このことは、例えば、人手によって絡まりや重なりを避けながらコンベア上に切断された使用済み梱包用結束バンドを供給する、投入時に拡散してコンベア上に落下するように落下途中に突起物を設置する、ディスク・スプレッダーを用いてコンベア上に切断された使用済み梱包用結束バンドを供給することにより達成できる。切断混合物は、全体重量の95%が5mm~800mmの範囲に存在する長さ分布を有することが好ましい。前記範囲は、より好ましくは10mm~600mmであり、さらに好ましくは20mm~400mmである。切断片の長さの中心値をL50とすると、L50は好ましくは10mm~500mmであり、より好ましくは20mm~500mmであり、さらに好ましくは30mm~400mm、特に好ましくは40mm~300mmである。また、空気ノズルのピッチは、通常20mm~30mm程度であるが、これを半分程度に小さくすると小さな対象物の選別が可能となるが、この場合、コストと精度の観点から前記L50は好ましくは5mm~400mm、より好ましくは10mm~300mmである。
【0039】
使用済み梱包用結束バンドがきれいに切断されずに引きちぎられたり、縦方向に割れたりすると、糸状の切断片やささくれだって糸状に細かく割れた切断片が多くなり互いに絡み合って選別精度が低下することがある。これを防ぐために切断機、切断条件を最適化することが好ましい。切断機としては、断裁機、2軸破砕機、1軸破砕機等が挙げられる。断裁機は直線状の刃で対象物を押し切るように切断する機器であり、破砕機は少なくとも1つは回転する2つの刃のせん断力で対象物を引きちぎるように切断破砕する機器である。作業効率、切断片の大きさの調整の容易性、メンテナンスの容易性から1軸破砕機が好ましい。また、切断片の長さの制御の容易性や、糸状に細かく割れた切断片を生じさせない観点からは、断裁機が好ましい。1軸破砕機では切断片の大きさはスクリーンの孔サイズで調整する。光学式選別機に適した長さでかつ良好な切断片を得る観点から、一般的な破砕に用いられる50mm前後よりも大きな孔サイズが好ましく、具体的には直径50mm以上が好ましく、70mmがより好ましく、90mm~140mmがさらに好ましい。切断機に使用済み梱包用結束バンドを投入する際に、彩度への悪影響が大きい黒色結束バンドを除去することが好ましい。
【0040】
((夾雑物除去工程))
続いて、切断された使用済み梱包用結束バンドから夾雑物を除去する工程を設けることが好ましい。当該工程は、作業者の目視による夾雑物除去;金属類の磁力による検出及び除去;水よりも比重が大きな石や砂、金属片を分別する水沈除去;埃、微小成分、フイルム類等を、気体を利用して吹き飛ばす送風除去;プロペラ、スクリュー、振動、超音波、高圧噴射からなる群から選ばれた少なくとも1種の手段により駆動される洗浄装置による水洗浄;押出機に装備したフィルターによる非溶融物の除去等が挙げられる。これらの方法は複数組み合わせることができる。
【0041】
磁力による除去は、切断された使用済み梱包用結束バンド又はその切断片を搬送するコンベアの終端にて実施することが好ましい。この工程によって鉄等の金属類を除去できる。搬送コンベアの終端のコンベアローラの内部に磁力を用いた金属検知センサーを配置し、金属を検知した場合には搬送路を変更する又は空気圧等を利用してはじき出し、金属類を含む粉砕片を排除することができる。磁力による吸着除去を行ってもよい。
【0042】
水沈除去では、水よりも比重が大きな石や砂、金属片、樹脂片(例えばPET樹脂片(比重1.27))を効率よく除去できる。水沈除去と、水洗浄、脱水、乾燥を一連の装置として組み合わせてもよい。
【0043】
押出機に装備したフィルターを利用する方法では、好ましくは40メッシュ~150メッシュ、より好ましくは60メッシュ~120メッシュ、さらに好ましくは80メッシュ~100メッシュのフィルターを用いることが好ましい。PP製使用済み梱包用結束バンドの場合、押出機の設定温度は好ましくは170℃~280℃、より好ましくは180℃~230℃である。設定温度を高くすると生産効率が向上するが、230℃を超えると他の樹脂も溶融し、除去が困難となることがある。例えば、PP製使用済み梱包用結束バンドに不純物としてポリアミド(PA)が混在している場合に230℃以下で混練を行うと、PAは溶融しないのでメッシュによって除去できる。しかし、280℃程度で混練を行うとPAも溶融するので再生樹脂組成物中に混入することになるが、PAはPPと相溶しないので当該再生樹脂組成物の物性は低下する。また、当該方法では磁力による方法では除去できない無機物質も除去できる。押出機から直径2.7mm~4.5mm程度のストランドを経て、ペレタイザーによりペレット化してもよい。
【0044】
[色選別工程]
本発明において、色選別工程は、複数の使用済み梱包用結束バンドから青色群の使用済み梱包用結束バンドを選択するものであれば特に限定されず、機械選別であってもよいし、人力による目視の選別であってもよい。以下、機械選別の場合について説明する。
【0045】
機械選別では、光学式選別機を用いて、使用済み梱包用結束バンドを青、黄、赤、白及び緑からなる群から選択される1以上の色群に分類して青色混合物を選択する工程を備える。すなわち、当該工程によって、青色混合物、黄色混合物、赤色混合物、白色混合物、又は緑色混合物が調製され、その中から青色混合物を取り出す。青色混合物は、以下に説明する一定の基準で青色に属すると判断された使用済み梱包用結束バンドの混合物である。
【0046】
光学式選別機は、搬送される対象物から色情報又は光学スペクトルを採取するセンサー部と、センサーと連動して対象物をしかるべき色群に分離する選別部を備える。センサー部は対象物に可視光や近赤外光を照射する機能及びその反射光を受光して色毎に電気信号に光電変換する機能を備えることが好ましい。特に梱包用結束バンドは表面に凹凸が存在するので光が散乱されやすいが、反射光を利用するとその影響を最小限にすることができる。この他にセンサー部は、対象物の赤外吸収スペクトルを取得する機能を有することが好ましい。選別部は、センサー部からの情報を基に対象物を色毎に移送する機能を有することが好ましい。例えば、対象物に空気を当てて、当該対象物を色別に設置された受け器に移送することができる。この装置では空気ノズルはコンベアの上下に配置することが好ましく、上ノズルからの空気で対象物をコンベアに近い位置の受け器に運び、下ノズルからの空気で対象物をコンベアから遠い位置の受け器に運び、ノズルから空気が供給されないときは、対象物を中間位置の受け器に運ぶように設置することができる。上下ノズルのON/OFFにより1回の選別で前記使用済み梱包用結束バンドを2~3の色群に選別することができる。当該光学式選別機においては、センサーによる検知と選別部による移送が1対1に対応している。
【0047】
使用量と色彩工学の観点から最も効率よく色選別がなされることが好ましい。市販のPP製梱包用結束バンドには青、黄、白、透明、赤、緑、黒等の多様な色が存在するが、青色、黄色、白若しくは透明の順に使用量が多い。回収品の約60%~70%が青色として再生される。
【0048】
また、色彩工学の観点から、白色と透明は混色しても他の色に殆ど影響を与えない。したがって、白色及び透明以外の色の再生樹脂組成物を製造する場合、白色混合物及び透明色混合物の許容混入量は大きいので、白色混合物及び透明色混合物の選別優先度は低くなる。一方、白色再生樹脂組成物を製造する場合、他色混合物の混入は色相への影響が大きいため、他色混合物の選別優先度は高い。同様に、黄色の混入が赤色や緑色に与える影響は小さいため、赤色再生樹脂組成物や緑色再生樹脂組成物を製造する場合には、黄色混合物の許容混入量は比較的大きいので黄色混合物の選別優先度は低い。一方、黄色再生樹脂組成物を製造する場合は、他色の混入はできる限り低減する必要があるので、他色混合物の選別優先度は高い。以上から、前記使用済み梱包用結束バンドから、黄色混合物、青色混合物、白色又は透明混合物をこの順で優先して選別することが特に好ましい。
【0049】
一方、黒色は混色によって明度・彩度とも大きな低下を引き起こし識別性が大きく悪化するため、最も優先して選別すべき色である。しかしながら、通常の光学選別機においては分別対象物の移送に用いられるコンベアの色が黒色乃至濃いグレーであるため、黒色の梱包用結束バンドを色選別工程で検出・分別することが困難となり、結果として黒色は目的とする選別すべき色に混入し、彩度の低下を招く。この問題を解決するためには、色選別工程以前の工程で黒色の混入をできる限り低減することが好ましい。具体的な方法としては、(i)コンベアの色を白もしくは有彩色にする、例えば緑、黄色や白にすることで光学式選別機による黒の検出を可能にする方法、特に、非黒色コンベアを用いた光学式選別機で黒色を除いたのち通常の黒色コンベアにて色選別を行う2段階色選別方法、(ii)後述の切断工程において切断機に投入する使用済み梱包用結束バンドの中から手作業で黒色のものを除去する方法、あるいは(iii)使用済み梱包用結束バンドの回収時に黒色梱包用結束バンドを除去する方法が好ましい。中でも(ii)の手作業による黒色除去方法が現時点では現実的で好ましいが、将来リサイクルへの意識が高まって分別回収が当然の社会が実現した場合には(iii)が最も好ましい。
【0050】
使用済み梱包用結束バンドの水平リサイクルによって視認性に優れた彩度の高い梱包用結束バンドを効率よく得るためには上述の色選別工程がキープロセスとなる。光学式選別機による色選別では、分別すべき種々の色の回収サンプルの分光特性を選別機に予め読み込み、それを青、黄、赤、緑といった選別すべき色グループに分けて登録する。従って、例えば橙を黄に選別するか、赤に選別するか、橙として独立グループとするか等によって得られる再生結束バンドの色味、彩度といった色特性や、再生得率が大きな影響を受ける。識別性と経済的な観点から、黄、青、透明を含む白、緑、赤、を夫々1つのグループとして扱うことが好ましく、橙、黄緑、紫、茶といった中間色は青、赤、緑のいずれかの色として扱うことが好ましい。光学選別機が色を認識する感度も色の選択性を高める上で重要である。これについては、選別すべきサンプルからの反射光を拾う最小面積(ピクセル)を拡大・縮小することで調整できる。光学式色選別機に対し、分光特性によりグループ分けされた色グループの指定と、感度調整を行うことで望みの色選別が可能となる。
【0051】
以上の方法によって回収された梱包用結束バンドの色選別を行うが、1回の色選別では適切に選別できないときには、選別を複数回繰り返してもよい。選別を複数回繰り返す場合には、1つの光学式選別機を2分割して2つの異なる選別作業に用いてもよいし複数の光学式選別機を用いてもよいが、後者がより好ましい。前者の場合は、投入部、コンベア部分、及び受け器までを2分割することもできる。例えば、前記使用済み梱包用結束バンドから黒色混合物を選別除去した後、黄色混合物あるいは青色混合物を選別する。黄色混合物及び青色混合物を選別した後、更に残りの使用済み梱包用結束バンドから緑色混合物及び赤色混合物を選別する。経済性を含め水平リサイクルの完成度を高める観点からリサイクル率を100%に近づけることが好ましく、そのためには、選別されずに残留した使用済み梱包用結束バンドや微細の切断片を、選別除去された黒色混合物とともに、黒色再生樹脂組成物の原料として用いることが好ましい。
【0052】
このように選別に優先順位を設ける場合、所望の色の混合物と受け器との位置関係を最適化することで選別精度をより向上できる。選別部の移送精度は、空気圧をより有効に活用できるという理由から、コンベアより遠い位置にある受け器に移送する場合の方が高い。したがって、2回目以降の選別においては目的とする色以外の使用済み梱包用結束バンドを遠い位置の受け器に移送することが好ましい。例えば、1回目の選別で、黄色混合物、青色混合物、その余に選別し、黄色混合物又は青色混合物を2回目の選別に供して、目的以外の色の使用済み梱包用結束バンドを遠い位置の受け器に移送して除外することがより好ましい。
【0053】
色選別の精度は、選別された同色混合物から平板状サンプルを調製し、色差計を用いて表色系の規格に基づいたL、a、b値を測定し、これから色相角、C値を求め、色相と彩度によって評価される。市販のPP製梱包用結束バンドの色相角はそれぞれ以下のとおりである。
黄色(市販品平板状サンプル):80°~100°
青色(市販品平板状サンプル):270°~280°
赤色(市販品平板状サンプル):40°~50°
緑色(市販品平板状サンプル):170°~190°
【0054】
回収された使用済み結束バンドのうち、使用済み結束バンドだけを集めた切断品の彩度Cは、黄色、赤色、緑色であれば概ね25以上であるが、青色の彩度は他の色の彩度よりも小さく、24程度である。
【0055】
[材質選別工程]
色選別工程において、あるいはその前後に複数の使用済み梱包用結束バンドを、PPを主成分とする混合物とPETを主成分とする混合物に選別する工程を設けてもよい。例えば、前述の水沈除去によって、比重が0.93程度であるPP製使用済み梱包用結束バンドと、比重が1.27程度であるPET製使用済み梱包用結束バンドを選別できる。比重選別と、水洗浄、脱水、乾燥を一連の装置として組み合わせてもよい。材質選別は、公知の比重選別装置を用いることができるが、国際公開第98/41374に記載の液体サイクロン方式を利用することもできる。選別された前記混合物は加熱、送風、遠心脱水等により乾燥される。
【0056】
本実施形態において、主成分とは、他の成分が無いか、他の成分がある場合には最も多い成分を意味する。主成分の割合は、使用済み梱包用結束バンドに含まれる樹脂成分100質量部に対して50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0057】
[加工工程]
本工程では前記同色混合物を溶融混練又はグラッシュ化する。グラッシュ化とは、摩擦熱やせん断熱を利用して対象物を減容化することである。溶融混練及びグラッシュ化は、同色混合物毎に実施することが好ましい。例えば、青色混合物と黄色混合物は別個に溶融混練される。しかしながら彩度を損なわない程度において、複数の異なる同色混合物を溶融混練してもよい。
【0058】
溶融混練に用いる押出機は、単軸押出機、二軸押出機、多軸式押出機のいずれでもよい。樹脂の劣化を防止するため、押出機の加熱温度は樹脂の融点をTとするとき、T℃~(T+70)℃であることが好ましい。また前述のとおり、押出機にメッシュを配置し、加熱温度を最適化することで目的とする樹脂以外の樹脂を除去することもできる。
【0059】
[ペレット化工程]
図1は、新品結束バンド(バージンバンド)について、バンドの色ごとに、CIE1976表色系において定義されるa値及びb値を図示したものである。市販される新品青色結束バンドにおいて、tan-1(b/a)で定義される色相角hは、275°~285°であり、新品青色結束バンドは、図1で表されるL平面の第4象限に位置する。
【0060】
また、回収された使用済み結束バンドのうち、使用済み青色結束バンドだけを集めた切断品において、
【数2】
で定義される彩度Cの平均が24.34であり、黄色結束バンドだけを集めた切断品の彩度に比べて著しく低い。使用済み青色結束バンドだけを実験室レベルで集めた場合の彩度が20よりわずかに大きい24.34であるのだから、工業生産レベルで製造される再生青色結束バンドにおいて、実験室レベルで得られる彩度に近い15以上を出すことは、容易ではない。
【0061】
そこで、本発明では、上述した溶融混練物(青色再生基材)に青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物を混合してペレット(青色再生樹脂組成物)にする。
【0062】
((青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物))
上述したとおり、市販のポリプロピレン製梱包用結束バンドには青、黄、白、透明、赤、緑、黒等の多様な色が存在するが、青色、黄色、白若しくは透明の順に使用量が多い。回収品の約60%~70%が青色として再生される。そのため、青色再生樹脂組成物用青色着色材組成物の重要性が非常に大きい。
【0063】
青色着色材組成物の形態は、ハンドリング性やコストを考慮して適宜選択できるものであり、(1)パウダー状態の色材そのもの、(2)キャリア樹脂を用いて色材を高濃度に固めたマスターバッチ、(3)色材をワックス等で固めた顆粒状品、(4)色材を液体で溶融したリキッド状品等が挙げられる。青色再生樹脂組成物用着色材は、第1顔料(群青顔料)と、二酸化チタンと、任意に第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)とを含有する。
【0064】
以下では、一例として青色着色材組成物がマスターバッチである場合について説明する。青色着色材組成物がマスターバッチである場合、青色着色材組成物は、上述した成分に加えてキャリア樹脂を含有する。
【0065】
(キャリア樹脂)
キャリア樹脂は、マスターバッチに含まれる各成分を安定して混合成形するというマスターバッチ本来の目的のほか、再生青色結束バンドの耐久性能を調整するための樹脂としても機能する。
【0066】
キャリア樹脂は、使用済み梱包用結束バンドに含まれる樹脂と同じ材料であることが好ましい。そのため、キャリア樹脂は、ポリオレフィン及び/又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする。使用済み梱包用結束バンドへの使用頻度が相対的に高いこと、また、融点が相対的に低いためにマスターバッチの製造コストを抑えられることから、キャリア樹脂は、ポリオレフィンを主成分とすることが好ましい。ただし、使用済み梱包用結束バンドに含まれる樹脂がポリエチレンテレフタレートである場合は、キャリア樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。
【0067】
本実施形態において、主成分とは、他の成分が無いか、他の成分がある場合には最も多い成分を意味する。主成分の割合は、キャリア樹脂100質量部に対して50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0068】
マスターバッチに含まれるキャリア樹脂の割合は、特に限定されない。マスターバッチに含まれる各成分を安定して混合成形するという観点、及びマスターバッチの体積を溶融混練物(青色再生基材)に均一に分散できる程度の体積にするという観点から、キャリア樹脂の割合の下限は、マスターバッチ100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0069】
また、大容量化による在庫管理の手間を防ぐ観点から、キャリア樹脂の割合の上限は、マスターバッチ100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、40質量部以下であることが特に好ましい。
【0070】
(第1顔料:群青顔料)
本実施形態で使用する第1顔料は、CIE1976表色系において定義される色相角が240°~255°の顔料である。なお、本実施形態では、発明内容の分かり易さを重視し、第1顔料を便宜的に「群青顔料」と表記するが、第1顔料は、群青顔料に限られるものでなく、色相角が240°~255°の顔料であれば、あらゆる顔料及び顔料混合物が本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
本発明では、マスターバッチが群青顔料を含有することで、溶融混練物(青色再生基材)の彩度が小さく、黒色を含むものであったとしても、黒色混入による青色喪失を小さく抑えることができる。
【0072】
マスターバッチに含まれる群青顔料の割合は、特に限定されない。大容量化による在庫管理の手間を防ぐ観点から、群青の割合の下限は、マスターバッチ100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。
【0073】
また、キャリア樹脂の割合が少なすぎることに起因してマスターバッチに含まれる各成分を安定して混合成形できなくなることを防ぐ観点から、群青の割合の上限は、マスターバッチ100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、60質量部以下であることが特に好ましい。
【0074】
なお、青色顔料としては、群青顔料だけでなく、ウルトラマリン(色相角:234°)、藍銅鉱(アズライト、色相角:220°)、紺青(プルシアンブルー、色相角:220°)、コバルトブルー(アルミ酸コバルト、色相角:200°)、セルリアンブルー(錫酸コバルト、色相角:197°)及びフタロシアニンブルー(色相角:275°~285°)等、数多く知られている。しかしながら、これらの青色顔料による補色では、いずれも群青顔料による補色に比べ、黒色混入による青色喪失が大きく、彩度の向上につながらない。そのため、群青顔料以外の青色顔料又はこれら青色顔料の混合物による補色だけでは、顔料の使用量が相対的に多くなる可能性があり、好ましくない。
【0075】
(二酸化チタン)
二酸化チタンは、チタンホワイトとも称される。二酸化チタンは、光遮蔽性を有し、混入されている黒色を遮蔽することで、色調を変えた有彩色の樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
二酸化チタンの結晶型は特に限定されるものでなく、正方晶系、ルチル型、アナターゼ型等のいずれであってもよいが、屈折率が相対的に高く、混入されている黒色の遮蔽性に優れることから、二酸化チタンの結晶型はルチル型であることが好ましい。
【0077】
マスターバッチに含まれる二酸化チタンの割合は、特に限定されない。大容量化による在庫管理の手間を防ぐ観点から、二酸化チタンの割合の下限は、マスターバッチ100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。また、二酸化チタンの割合の下限は、群青顔料100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0078】
また、キャリア樹脂の割合が少なすぎることに起因してマスターバッチに含まれる各成分を安定して混合成形できなくなることを防ぐ観点、及び十分な製品強度を確保する観点から、二酸化チタンの割合の上限は、マスターバッチ100質量部に対して45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましい。また、二酸化チタンの割合の上限は、群青顔料100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
【0079】
なお、白色顔料としては、二酸化チタン(チタンホワイト)だけでなく、酸化亜鉛(亜鉛華、亜鉛白とも称される)、硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物(リトポン)、塩基性炭酸鉛(2PbCO・Pb(OH),鉛白)等も知られている。しかしながら、これらの白色顔料は、いずれも二酸化チタンに比べ、混入されている黒色の遮蔽性に乏しい。そのため、二酸化チタン(好ましくはルチル型二酸化チタン)以外の白色顔料又はこれら白色顔料の混合物による補色だけでは、顔料の使用量が相対的に多くなる可能性があり、十分な製品強度を確保できない点で製造安定性への影響もあり得る点で好ましくない。
【0080】
(第2顔料:フタロシアニンブルー顔料)
任意成分であるが、本実施形態において、マスターバッチは、第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)をさらに含有することが好ましい。第2顔料は、上記色相角が275°~285°の顔料である。マスターバッチが第1顔料(群青顔料)と第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)との両方を含有することで、これら両方の青色顔料による補色効果が得られるため、溶融混練物(青色再生基材)への黒色混入による青色喪失をよりいっそう小さく抑えることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、発明内容の分かり易さを重視し、第2顔料を便宜的に「フタロシアニンブルー顔料」と表記するが、第2顔料は、フタロシアニンブルー顔料に限られるものでなく、色相角が275°~285°の顔料であれば、あらゆる顔料及び顔料混合物が本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
フタロシアニンブルー顔料は任意成分であり、マスターバッチに含まれるフタロシアニンブルー顔料の割合は、特に限定されず、無配合であってもよい。マスターバッチが任意成分としてフタロシアニンブルー顔料を配合する場合、大容量化による在庫管理の手間を防ぐ観点から、フタロシアニンブルー顔料の割合の下限は、マスターバッチ100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。また、フタロシアニンブルー顔料の割合の下限は、群青顔料100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0083】
また、キャリア樹脂の割合が少なすぎることに起因してマスターバッチに含まれる各成分を安定して混合成形できなくなることを防ぐ観点から、フタロシアニンブルー顔料の割合の上限は、マスターバッチ100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。また、フタロシアニンブルー顔料の割合の上限は、群青顔料100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
い。
【0084】
(他の成分)
本実施形態においては、熱安定化剤や光安定化剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止材、抗菌剤、色材、製品強度向上剤等の従来公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。特に耐候性を向上させる熱安定化剤や光安定化剤を添加すると、再生を繰り返すことによる劣化の問題が改善され、再生梱包用結束バンドを屋外使用や長期使用に供することができる。
【0085】
(マスターバッチの製造方法)
マスターバッチは、各種成分を混合し、加熱式混合撹拌機、加熱式ニーダー、押出機、押出式ペレタイザー、ディスクベレッタ等を用いて混合することによって得られる。得られたペレット状又は粉末状の混合物は、そのままベース樹脂混合用のコンパウンドとしてもよいが、さらに押出機、ペレタイザーで溶融混練してペレット化してもよい。
【0086】
結着のため、混合温度は、キャリア樹脂の融点以上であればよいが、融点よりも10℃程度高い温度であることが好ましい。
【0087】
((溶融混練物とマスターバッチとの混合、ペレット化))
溶融混練物とマスターバッチとの混合物をペレットにする方法は限定されず、(マスターバッチの製造方法)で説明した手法と同様の手法をとることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、溶融混練物とマスターバッチとの混合物をペレットにするものとして説明しているが、これに限るものではない。マスターバッチを特に製造せず、溶融混練物に対して第1顔料と、二酸化チタンと、任意に第2顔料及び他の添加剤とを直接混合してそれをペレット化してもよい。しかしながら、飛散しやすい、機材を汚しやすい、計量が難しい等、取り扱いの面で課題があるため、本発明では、溶融混練物とマスターバッチとの混合物をペレット化することが好ましい。
【0089】
〔青色再生樹脂組成物を延伸成形する工程〕
本実施形態では、得られた再生樹脂組成物を溶融延伸成形することで、再生樹脂組成物の硬化物からなるバンドを製造できる。溶融延伸成形は公知の方法に従って実施できる。さらにバンドに前述のとおりの表面加工を施し、所望の長さに裁断して巻き取ることで、再生梱包用結束バンドとすることができる。
【0090】
<青色再生樹脂組成物>
青色再生樹脂組成物は、使用済み梱包用結束バンドに由来する青色色材と、色相角が240°~255°である第1顔料(群青顔料)と、二酸化チタンと、任意に色相角が275°~285°である第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)とを含有する。
【0091】
青色再生樹脂組成物に含まれる第1顔料(群青顔料)の割合は0.5質量部以上2質量部以下であり、二酸化チタンの割合は0.05質量部以上0.5質量部未満であり、第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)の割合は0質量部以上1質量部以下である。特に、第1顔料(群青顔料)の割合は、青色再生基材100質量部に対して0.5質量部以上であり、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。第1顔料(群青顔料)の割合が1質量部以上であることで、第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)の有無にかかわらず18以上の彩度Cをもたせることができる。また、第2顔料(群青顔料)の割合が1.5質量部以上であることで、第2顔料(フタロシアニンブルー顔料)の有無にかかわらず20以上の彩度Cをもたせることができる。
【0092】
彩度CはCIE1976表色系のL色空間において原点からの距離を表し、値が大きいほど、すなわち原点からの距離が遠いほど色の鮮やかさが高いことを示す。本発明の有彩色再生樹脂組成物は、特定の有彩色材を含み、かつ、15以上の彩度Cを有するので、鮮やかな有彩色を呈する。彩度Cは高いほど好ましく、18以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。本実施形態に記載の発明によると、リサイクルが人力選別であっても機械選別であっても、相当量の黒色その他の色の低彩色ペレットを原料として高品質の青色再生樹脂組成物及び梱包用青色再生結束バンドを提供できる。彩度Cの上限は限定されないが、通常は80以下である。
【0093】
青色再生樹脂組成物の色相角hは、240°以上であることが好ましく、250°以上であることがより好ましく、255°以上であることがさらに好ましい。また、色相角hは、300°以下であることが好ましく、290°以下であることがより好ましく、280°以下であることがさらに好ましい。これにより、使用者は、新品の梱包用青色結束バンドと同等の色であると視覚で認識できる。なお、新品の梱包用青色結束バンドの位相角hは、270°~280°である。
【0094】
色相角hは、L色空間においてa軸に対する角度を表し、0°すなわちプラスa軸方向は赤色、180°すなわちマイナスa軸方向は赤の補色である緑色、90°すなわちプラスb軸方向は黄色、270°すなわちマイナスb軸方向は黄色の補色である青色を示す。色相角h、彩度C、明度Lが前記範囲である青色再生樹脂組成物は、識別性の高い再生バンドを与える。
【0095】
本発明の青色再生樹脂組成物はPP又はPETを主成分とする。本実施形態において、主成分とは、他の成分が無いか、他の成分がある場合には最も多い成分を意味する。主成分の割合は、青色再生樹脂組成物に含まれる樹脂成分100質量部に対して50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0096】
本発明の青色再生樹脂組成物は、市中より回収された使用済み梱包用結束バンドを原料としてもよい。市中からの回収物を用いて得た再生樹脂組成物は、金属や無機物質等の夾雑物を含むが当該量は極めて微量であり、かつ夾雑物の種類が多岐にわたるのでこれらを正確に同定かつ定量することは現実的でないという事情が存在する。
【実施例0097】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0098】
<PP製使用済み梱包用結束バンドの切断>
色相と材質が異なる複数のPP製使用済み梱包用結束バンドを準備し、その中から黒色結束バンドを手作業で除去した。次いで、当該複数のPP製使用済み梱包用結束バンド切断して切断混合物を得た。切断は、日本シーム株式会社社製一軸破砕機を用いて約10kg/分の処理量で実施した。切断混合物の90重量%が1cm~60cmの長さの範囲であった。
【0099】
<色選別>
ペレンクST社製光学選別機ミストラル+1600型を用いて、切断混合物を色選別した。色選別は予め登録された梱包用結束バンドの分光特性に基づいた色指定と標準感度で実施した。コンベアベルト速度は3m/秒とした。前記切断混合物1kgを当該装置に供給し、青色混合物とこれ以外の色の混合物の2つに選別する色指定条件で選別した。ただし、青色切断片が検知されたときのみ、下ノズルからの空気でコンベアから遠い位置の受け器に移送した。彩度が20以上の青色再生バンドを確実に提供できるかを確かめることを目的として、あえて黒色等の混入比率が比較的高い状態の青色混合物を試験サンプルにするため、得られた青色混合物を再度同じ条件で装置に供給して青色以外の切断片を極力排除することは、あえて行わなかった。
【0100】
<青色再生樹脂組成物(ペレット)の製造>
まず、押出機を用いて青色混合物を溶融混練し、再生混色ペレットを得た。そして、表1に記載の原料を押出機にて混練し、実施例、比較例及び参考例に係る青色再生樹脂組成物(ペレット)を得た。なお、表1において、バージン材(PP)は、市販の無着色ポリプロピレンペレットである。
【表1】
実施例1:再生混色ペレットに群青顔料1%及び酸化チタンを加えたもの
実施例2:再生混色ペレットに群青顔料1.5%及び酸化チタンを加えたもの
実施例3:再生混色ペレットに群青顔料、酸化チタン及びフタロシアニンブルー顔料を加えたもの
比較例1:再生混色ペレットそのもの
比較例2:再生混色ペレットにフタロシアニンブルー顔料を加えたもの
比較例3:再生混色ペレットに酸化チタン及びフタロシアニンブルー顔料を加えたもの
参考例1:再生混色ペレットにバージン材(青色PP)、酸化チタン及びフタロシアニンブルー顔料を加えたもの(バージン材15%)
参考例2:再生混色ペレットにバージン材(青色PP)、酸化チタン及びフタロシアニンブルー顔料を加えたもの(バージン材30%)
【0101】
<色特性評価>
実施例、比較例及び参考例に係るそれぞれのサンプルを、210℃に設定した熱プレス機により溶融後冷却して、厚さ2mmの樹脂板を調製した。日本電色工業株式会社製測色・色差計ZE-2000を用いて、当該樹脂板のL値、a値、b値を測定し、その測定値からさらに彩度C(C=(a*2+b*21/2)、及び色相角h(=tan-1(b/a)を求めた。結果を表2に示す。
【表2】
【0102】
実施例の青色再生樹脂組成物は、バージン材(青色PP)で補色した参考例1及び2の青色再生樹脂組成物と比べても遜色のない彩度Cを有する。加えて、色相角hは、256.42°~260.73°であり、参考例2の青色再生樹脂組成物と同等であり、新品の梱包用青色結束バンドの色相角h(270°~280°)に近い。バージン材(青色PP)で補色することなく新品の結束バンドに近いレベルの青色を呈する青色再生樹脂組成物を提供できることは、従来技術から予測できる範囲を超える極めて顕著な効果といえる。
【0103】
それに対し、比較例1(再生混色ペレットそのもの)は、彩度Cが6.20しかない。青系回収品に、黄色、黒色等が混ざっていることは、目視でも明らかであり、そのままで再生青色結束バンドとして供給することはできない。
【0104】
比較例2(フタロシアニンブルー顔料で補色したもの)についても、彩度Cが12.520しかなく、15以上からは程遠い。これは、特に人力選別による場合、混色ペレットの彩度が小さく、従来技術では、15以上の彩度を持つ青色再生樹脂組成物を提供することが事実上不可能であったことを裏付けている。
【0105】
比較例3(フタロシアニンブルー顔料及び二酸化チタンで補色したもの)は、彩度Cの改善が見られる一方、比較例2と比べると、色相角hが259.65から240.554に移動している。これは、新品の梱包用青色結束バンドの色相角h(270°~280°)から離れる方向への移動であり、使用者が新品とは異なる色合いであると認識することがあり得る。
【0106】
参考例1及び2は、いずれも再生青色結束バンドとして供給可能な品質にあるが、これは、バージン材(青色PP)で補色したことに起因するものである。温室効果ガス削減の観点から、バージン材の使用量を削減することが好ましく、その観点から、本発明は、参考例1及び2に比べて優れる。例えば、日本国内におけるPP製梱包用結束バンドの年間総需要は約3万6千tである。うち30%の使用済み品を回収し、うち80%を再生すると仮定すると、参考例2の手法では、年間約3700t(=36000×30%×80%×3/7)のバージン材を削減できる。このときのCO削減効果は、表3に記載の参考値を基に計算すると、約5,700tと見積もれる。
3700×(1.49+0.033+0.016)=5,694.3(t)
【表3】
【0107】
さらにこの回収分が従来全て焼却処理されていたと仮定すると、CO削減量は11,000t増えるため、トータルで年間16,000tのCO削減効果が期待できる。
3700×3.14=11,618(t)
【0108】
PPの再生に使用されるリサイクル設備のエネルギー消費は設備稼働電力量のみであり、想定電力量から見積もると再生時のCO排出量は640tとなり、トータルのCO削減量である年間16,000tに対してその影響はわずかである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
従前、市場から回収する使用済みPPバンドの水平リサイクルによって製造する再生PPバンドの内、最も需要の大きい青色系の再生PPバンドにおいて、青色と表現できる青色彩度20°以上の製品の製造、供給は困難であった。特に人力選別による場合、事実上これが不可能と考えられたが、本発明はこの隘路を一気に打開、相当量の黒色、その他色の混色ペレットでも青色化を可能とするものである。
【0110】
また、本発明によって高い次元での水平リサイクルシステムも構築できる。この結果、バージンバンドの使用量抑制と使用済み梱包用結束バンドの焼却処理を大幅に減らすことができるので、温室効果ガスである炭酸ガスの大幅な削減を実現することも可能になる。さらに、本発明によって不法投棄も含めて廃棄される梱包用結束バンドが大幅に削減されることが見込めるため、海洋汚染の原因物質の一つであるマイクロプラスチック削減も可能となる。
【0111】
したがって、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きいと考えられる。

図1