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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151748
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065392
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑弥
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS05
5H730BB27
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE08
5H730FD41
5H730FG05
5H730ZZ04
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】追加部品によるコスト増加を抑制しつつ、基板上の主回路パターンを削減して、小型化及び低コスト化した電力変換器を得ること。
【解決手段】電源端子部を有した基板と、電源端子部に接続されたパワーモジュールと、パワーモジュールを制御する制御回路と、巻線を有し、パワーモジュールと並べて配置されたトランスとを備え、パワーモジュールは、電源端子部に接続された入力端子、巻線に接続された出力端子、及び制御回路に接続された制御端子を有し、電源端子部と入力端子とは基板を介して接続され、制御回路と制御端子とは基板を介して接続され、巻線と出力端子とは基板を介さずに接続され、巻線は、巻回部と、出力端子に接続された引き出し部と、を有し、引き出し部におけるトランスの巻回部を収めた本体部から出力端子と引き出し部との接続部までの長さは、出力端子におけるパワーモジュールの本体部から接続部までの長さよりも長い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源と電気的に接続される電源端子部を有した基板と、
複数のスイッチング素子を有し、前記電源端子部に接続されたパワーモジュールと、
前記基板に設けられ、前記パワーモジュールを制御する制御回路と、
前記パワーモジュールに接続された巻線を有し、前記パワーモジュールと並べて配置されたトランスと、を備え、
前記パワーモジュールは、前記電源端子部と電気的に接続された入力端子、前記巻線と電気的に接続された出力端子、及び前記制御回路と電気的に接続された制御端子を有し、前記電源端子部と前記入力端子とは前記基板を介して接続され、前記制御回路と前記制御端子とは前記基板を介して接続され、前記巻線と前記出力端子とは前記基板を介さずに接続され、
前記巻線は、巻回部と、前記巻回部から前記出力端子の方向に延出し、前記出力端子に接続された引き出し部と、を有し、
前記引き出し部における前記トランスの前記巻回部を収めた本体部から前記出力端子と前記引き出し部との接続部までの長さは、前記出力端子における前記パワーモジュールの本体部から前記接続部までの長さよりも長い電力変換器。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とは直列に接続され、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを接続した第1接続部は、前記出力端子である第1の出力端子と電気的に接続されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
前記複数のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を有し、
前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とは直列に接続され、
前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とを接続した第2接続部は、前記出力端子である第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子とは隣接して配置されている請求項2に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記入力端子は、前記Z方向に延出して、前記基板に接続されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項5】
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記引き出し部は、前記Z方向に折り曲げられた部分である折り曲げ部を少なくとも1つ有している請求項1に記載の電力変換器。
【請求項6】
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記引き出し部は、前記出力端子の側に、前記Z方向に折り曲げられて前記Z方向に延出した部分である折り曲げ端部を有し、
前記出力端子は、前記引き出し部の側に、前記Z方向に折り曲げられて前記Z方向に延出した部分である出力折り曲げ端部を有し、
前記折り曲げ端部と前記出力折り曲げ端部とが電気的に接続され、前記接続部が形成されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記引き出し部は、前記トランスの本体部から突出した後、前記Z方向又は前記Z方向とは反対方向に折り曲げられた前記折り曲げ部を有し、
前記引き出し部は、前記折り曲げ部から前記Z方向又は前記Z方向とは反対方向に延出した後、さらに折り曲げられて前記接続部の方向に延出している請求項5に記載の電力変換器。
【請求項8】
前記パワーモジュールは、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状に形成され、
前記出力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の一方に配置され、
前記引き出し部の少なくとも一部は、前記出力端子が配置された前記第三面又は前記第四面の方向に斜めに延出した部分を有している請求項1に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記パワーモジュールは、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状に形成され、
前記入力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の一方に配置され、
前記出力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の他方に配置され、
前記トランスは、前記出力端子が配置された面の側に配置されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記パワーモジュールを冷却する冷却器を備え、
前記パワーモジュールは、前記冷却器が有した冷却面に熱的に接続され、
前記基板の基板面は、前記パワーモジュールの前記冷却器の側とは反対側に、前記パワーモジュールとは隙間を空けて配置され、
前記接続部は、前記基板と前記冷却器との間の領域に配置されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項11】
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記Z方向に見て、
前記出力端子、及び前記引き出し部の少なくとも一部は、前記基板と重複して配置され、
前記引き出し部が前記基板と重複している部分の長さは、前記出力端子が前記基板と重複している部分の長さよりも長い請求項1に記載の電力変換器。
【請求項12】
前記折り曲げ端部と前記出力折り曲げ端部とは、TIG溶接により電気的に接続されている請求項6に記載の電力変換器。
【請求項13】
前記出力端子と前記引き出し部とは、ねじにより電気的に接続されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項14】
前記出力端子は、前記パワーモジュールの本体部から前記トランスの本体部の方向に延出し、
前記引き出し部は、前記トランスの本体部から前記パワーモジュールの本体部の方向に延出し、
前記出力端子の端部と前記引き出し部の端部との重なった部分に前記接続部が形成され、
前記接続部において、前記出力端子と前記引き出し部とは前記ねじにより締結されている請求項13に記載の電力変換器。
【請求項15】
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記1次側巻線の巻数は、前記2次側巻線の巻数よりも多く、
前記出力端子は、前記1次側巻線に接続されている請求項1に記載の電力変換器。
【請求項16】
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記2次側巻線から出力される電圧を整流する整流回路と、前記2次側巻線から出力される電圧を平滑化する平滑回路と、をさらに備え、
前記整流回路は、複数の半導体素子から構成され、前記平滑回路は、リアクトルとコンデンサとから構成されている請求項3に記載の電力変換器。
【請求項17】
前記パワーモジュールは、前記トランスの前記1次側巻線に接続される前記複数のスイッチング素子及び前記複数の半導体素子が一体化されたモジュールである請求項16に記載の電力変換器。
【請求項18】
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記1次側巻線及び前記2次側巻線は、平板状の巻線で構成され、
前記トランスは、プレーナー形状のトランスである請求項1に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車のように、駆動源にモータが用いられている電動化車両には、一般的に、複数の電力変換器が搭載されている。電力変換器としては、商用の交流電源から直流電源に変換して高圧バッテリに充電する車載充電器、高圧バッテリの直流電源を低圧の直流に変換して、車内の12V系の補機類に電力供給する降圧コンバータ、バッテリからの直流電力をモータへの交流電力に変換するインバータ等が挙げられる。近年、電動化車両の普及及び車室空間拡大のため、これらの電力変換器の小型化及び低コスト化が求められており、電力変換器に搭載されるスイッチング素子のパワーモジュール化が進められている。
【0003】
複数のスイッチング素子を1つのパワーモジュールにすることで、電力変換器の小型化及びスイッチング素子の冷却性能の向上を実現することができる。パワーモジュールは、スイッチング素子の駆動を制御するための制御信号が入力される制御端子、及び主回路電流が流れるパワー端子を有している。これらの端子は基板に接続され、基板に設けた配線パターンを介して他の電気部品に接続される。特に、車載充電器又は降圧コンバータの1次側の回路等に用いられる、主回路電流が十数A程度のパワーモジュールでは、端子は基板に接続され、基板上の配線パターンによって他の電気部品に接続されることが一般的である。
【0004】
ただし、パワー端子に流れる主回路電流は、制御回路を流れる電流に対して非常に大きいため、主回路電流が流れるパターンの損失及び温度上昇が問題となることがある。さらに、高周波で電位変動するパターン、例えば、トランスに接続されるようなパターンは、パターンのDC抵抗以外でも損失が発生するため、特にパターンにおける損失及び温度上昇が問題となる。具体的には、トランスに接続されるパターンを基板の層間に重ねて配置した場合、パターンの重なりによって生じる寄生容量の充放電による損失が発生する。また、トランスに接続されるパターンを平行に配置した場合、近接効果により高周波抵抗が増加するため、パターンの損失が増加してしまう。
【0005】
これらのパターンに起因した損失を抑制するためには、パターンのインピーダンスを低減する必要がある。その手段としては、パターン幅を大きくするか、パターンの厚みを厚くするかである。パターン幅を大きくする場合、基板の面積が拡大するので、基板のコストが増加することになる。パターンの厚みを厚くする場合、基板のパターンが厚銅化、又は基板の層数が増加するので、基板のコストが増加することになる。
【0006】
パワーモジュールのパワー端子と接続先の電気部品とを接続するために、配線部材を追加し、基板上の主回路パターンを削減した電力変換装置が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、パワーモジュールのパワー端子と電気部品であるトランスの端子との接続を、配線部材であるバスバーを追加して行っている。パワー端子とトランスの端子との接続は、元々基板上のパターンによってなされていたため、バスバーを追加することで、元々配置されていた基板上の接続パターンが削除可能になるので、基板の小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6373454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1においては、基板上の接続パターンが削除可能なので、基板を小型化することができる。しかしながら、上記の特許文献1の構成では、基板上のパターンを削除するために配線部材であるバスバーを追加しているため、コストが大きく増加するという課題があった。また、バスバーを設けたことで、接続の配線自体のパターンは基板上から取り除かれているものの、パワー端子及びトランスの端子は基板に接続されているため、パワー端子及びトランスの端子の周辺には絶縁距離が必要になるので、その他の主回路部品及び制御回路をパワー端子及びトランスの端子の周辺には配置することができない。そのため、絶縁距離を確保して主回路部品及び制御回路を配置するので、基板が大型化するという課題があった。
【0009】
そこで、本願は、追加部品によるコスト増加を抑制しつつ、基板上の主回路パターンを削減して、小型化及び低コスト化した電力変換器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される電力変換器は、外部電源と電気的に接続される電源端子部を有した基板と、複数のスイッチング素子を有し、電源端子部に接続されたパワーモジュールと、基板に設けられ、パワーモジュールを制御する制御回路と、パワーモジュールに接続された巻線を有し、パワーモジュールと並べて配置されたトランスと、を備え、パワーモジュールは、電源端子部と電気的に接続された入力端子、巻線と電気的に接続された出力端子、及び制御回路と電気的に接続された制御端子を有し、電源端子部と入力端子とは基板を介して接続され、制御回路と制御端子とは基板を介して接続され、巻線と出力端子とは基板を介さずに接続され、巻線は、巻回部と、巻回部から出力端子の方向に延出し、出力端子に接続された引き出し部と、を有し、引き出し部におけるトランスの巻回部を収めた本体部から出力端子と引き出し部との接続部までの長さは、出力端子におけるパワーモジュールの本体部から接続部までの長さよりも長いものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される電力変換器によれば、電源端子部を有した基板と、電源端子部に接続されたパワーモジュールと、基板に設けられ、パワーモジュールを制御する制御回路と、パワーモジュールに接続された巻線を有し、パワーモジュールと並べて配置されたトランスと、を備え、パワーモジュールが、電源端子部と電気的に接続された入力端子、巻線と電気的に接続された出力端子、及び制御回路と電気的に接続された制御端子を有し、電源端子部と入力端子とは基板を介して接続され、制御回路と制御端子とは基板を介して接続され、巻線と出力端子とは基板を介さずに接続され、巻線が、巻回部と、巻回部から出力端子の方向に延出し、出力端子に接続された引き出し部と、を有し、引き出し部におけるトランスの巻回部を収めた本体部から出力端子と引き出し部との接続部までの長さが、出力端子におけるパワーモジュールの本体部から接続部までの長さよりも長いため、基板上から引き出し部と出力端子とを接続する主回路パターンを削除できるので、基板を小型化及び低コスト化することができる。基板が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器を小型化及び低コスト化することができる。また、引き出し部と出力端子との接続に追加部品が不要なため、追加部品によるコスト増加を抑制することができる。また、引き出し部を出力端子に向けて延出させることで追加部品が無く、コストの増加を抑制した基板の大幅な小型化及び低コスト化が可能となり、電力変換器の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る電力変換器の回路構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換器のパワーモジュールの平面図である。
図3】実施の形態1に係る電力変換器のパワーモジュールの側面図である。
図4】実施の形態1に係る電力変換器の平面図である。
図5】実施の形態1に係る電力変換器の基板のパターンを示す平面図である。
図6図4のA-A断面位置で切断した電力変換器の断面図である。
図7】比較例の電力変換器の平面図である。
図8】比較例の電力変換器の基板のパターンを示す平面図である。
図9図7のC-C断面位置で切断した、比較例の電力変換器の断面図である。
図10】実施の形態1に係る別の電力変換器の平面図である。
図11】実施の形態1に係る別の電力変換器の平面図である。
図12】実施の形態1に係る別の電力変換器のパワーモジュールとトランスとの接続を示す図である。
図13】実施の形態1に係る別の電力変換器のパワーモジュールとトランスとの接続を示す図である。
図14】実施の形態1に係る別の電力変換器のパワーモジュールとトランスとの接続を示す図である。
図15】実施の形態1に係る電力変換器のパワーモジュールとトランスとの接続時の様子を示す図である。
図16】実施の形態1に係る電力変換器のトランスの概略を示す分解斜視図である。
図17図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器の断面図である。
図18図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器の断面図である。
図19図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器の断面図である。
図20図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器の断面図である。
図21】実施の形態1に係る別の電力変換器のパワーモジュールの断面図である。
図22】実施の形態2に係る電力変換器の回路構成を示す図である。
図23】実施の形態2に係る電力変換器のパワーモジュールの平面図である。
図24】実施の形態2に係る電力変換器のパワーモジュールとトランスとの接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の実施の形態による電力変換器を図に基づいて説明する。なお、各図において同一、又は相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力変換器1の回路構成を示す図、図2は電力変換器1のパワーモジュール100の平面図で、樹脂11を取り除いて、樹脂11は外形のみを示した図、図3は電力変換器1のパワーモジュール100の側面図で、樹脂11を取り除いて、樹脂11は外形のみを示した図、図4は電力変換器1の平面図で、基板400を取り除いて示した図、図5は電力変換器1の基板400のパターンを示す平面図、図6図4のA-A断面位置で切断した電力変換器1の断面図である。本実施の形態では、電力変換器1を絶縁型のDC/DCコンバータを例に説明するが、電力変換器1はDC/DCコンバータに限るものではない。
【0015】
<電力変換器1>
絶縁型のDC/DCコンバータである電力変換器1の回路構成の例を、図1により説明する。電力変換器1は、入力側と出力側とがトランス113によって絶縁されている。図1において、左側が入力側、右側が出力側である。電力変換器1は、外部電源である直流電源200の入力電圧Vinをトランス113で絶縁された二次側直流電圧に変換して、バッテリ等の負荷110に出力電圧Voutを出力する装置である。
【0016】
電力変換器1は、図1において破線で囲まれた部分である、インバータ回路99と、整流回路114とを備える。インバータ回路99は、後述するパワーモジュール100に収容される回路である。インバータ回路99は、直流電源200からの入力電圧Vinを交流電圧に変換する、スイッチング素子101、102、103、104をブリッジ型に接続した回路である。インバータ回路99は、出力側でトランス113の1次側巻線113aに接続される。整流回路114は、トランス113の2次側巻線113bに接続され、整流素子としてのダイオード115、116を有した回路である。整流回路114は、トランス113の出力を整流して直流パルス電圧に変換する。整流回路114の出力側には、平滑リアクトル108及び出力コンデンサ109が接続され、負荷110に出力電圧Voutが出力される。平滑リアクトル108と出力コンデンサ109は、直流パルス電圧を平滑化する。
【0017】
直流電源200とインバータ回路99の間には、Xコンデンサ401、Yコンデンサ402、403、ヒューズ404、電流センサ405が接続されている。Xコンデンサ401、Yコンデンサ402、403は、ノーマルモード及びコモンモードのノイズ対策のためのノイズ対策部品である。制御回路406は、出力電圧Voutが目標値となるように、状況に応じてスイッチング素子101~104へ駆動信号を出力して、スイッチング素子101~104のオンduty(オン期間)を制御し、PWM制御を行う。
【0018】
図1において、左側の破線で囲まれた部分の構成は、1枚の基板400に設けられる。基板400は、例えば、ガラスエポキシ基板である。基板400には、直流電源200の正側及び負側との接続部である電源端子部201、202と、パワーモジュール100の正側及び負側の入力端子との接続部である正極側接続部203及び負極側接続部204と、制御端子との接続部である制御側接続部207とが配置されている。また、パワーモジュール100の出力端子とトランス113との接続部205、206は、基板400を経由せずに直接接続される。
【0019】
スイッチング素子101~104は、ケイ素(Si)からなる自己消弧型半導体スイッチング素子である、ソース・ドレイン間にダイオードが内蔵されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。スイッチング素子は、MOSFETに限るものではなく、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子でも構わない。スイッチング素子の材料は、ケイ素(Si)に限るものではなく、炭化ケイ素(SiC)、もしくは窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体材料、ダイヤモンド系の半導体材料から作製しても構わない。
【0020】
<パワーモジュール100>
パワーモジュール100の実装構成の例について、図2及び図3を用いて説明する。図3では、ボンディングワイヤは省略している。パワーモジュール100は、図2に示すように、5つのリードフレーム101c~104c、14を有する。リードフレームは、例えば、銅板である。スイッチング素子101~104のそれぞれは、例えば、底面にドレインパッドを有し、上面にゲートパッド及びソースパッドを有した半導体チップである。スイッチング素子101~104のそれぞれは、リードフレーム101c~104cに実装される。
【0021】
パワーモジュール100は、図3に示すように、冷却板12、及び絶縁紙13を有する。冷却板12は、熱伝導性に優れた金属材料である銅又はアルミニウムなどにより作製される。リードフレーム101c~104c、14、及び制御端子101d~104d、101e~104eは、絶縁紙13を介して、冷却板12とは絶縁されて、冷却板12の一方の板面の側に配置される。リードフレーム101c~104c、14、制御端子101d~104d、101e~104e、冷却板12、及び絶縁紙13は、図2に示すように、パワーモジュール100の外部と接続される端子の部分、及び冷却板12の他方の板面が露出した状態で、樹脂11により封止され、一体化されている。パワーモジュール100の外部と接続される端子の部分は、入力端子101c1、103c1、14a、出力端子102c1、104c1、及び制御端子101d~104d、101e~104eのそれぞれの端部であり、以下、モジュール端子と称する。入力端子101c1、103c1、14aのそれぞれは、リードフレーム101c、103c、14のそれぞれの部分であり、出力端子102c1、104c1のそれぞれは、リードフレーム102c、104cのそれぞれの部分である。本実施の形態では、モジュール端子は、樹脂11から露出して、冷却板12の板面に平行な方向に延出した後、折り曲げられて基板400が配置された方向に延出する。
【0022】
スイッチング素子101は、ゲートパッド101a及びソースパッド101bを上面に有し、底面のドレインパッドの側でリードフレーム101cに実装される。リードフレーム101cは、入力端子101c1を有する。入力端子101c1は、基板400に設けた正極側接続部203にて基板400と接続され、基板400上の配線パターンである電源端子部201を介して直流電源200の正極に接続される。スイッチング素子101のソースパッド101bは、ボンディングワイヤ101fによりリードフレーム102cと接続される。
【0023】
スイッチング素子102は、ゲートパッド102a及びソースパッド102bを上面に有し、底面のドレインパッドの側でリードフレーム102cに実装される。リードフレーム102cは、出力端子102c1を有する。出力端子102c1は、基板400を介さずに、接続部205にてトランス113の1次側巻線113aの引き出し部113a1と接続される。スイッチング素子102のソースパッド102bは、ボンディングワイヤ102fによりリードフレーム14に接続される。リードフレーム14は、リードフレーム101c及びリードフレーム102cと、リードフレーム103c及びリードフレーム104cとの間に設けられる。リードフレーム14は、入力端子14aを有する。入力端子14aは、基板400に設けた負極側接続部204にて基板400と接続され、基板400上の配線パターンである電源端子部202を介して直流電源200の負極に接続される。
【0024】
スイッチング素子103は、ゲートパッド103a及びソースパッド103bを上面に有し、底面のドレインパッドの側でリードフレーム103cに実装される。リードフレーム103cは、入力端子103c1を有する。入力端子103c1は、基板400に設けた正極側接続部203にて基板400と接続され、基板400上の配線パターンである電源端子部201を介して直流電源200の正極に接続される。スイッチング素子103のソースパッド103bは、ボンディングワイヤ103fによりリードフレーム104cと接続される。
【0025】
スイッチング素子104は、ゲートパッド104a及びソースパッド104bを上面に有し、底面のドレインパッドの側でリードフレーム104cに実装される。リードフレーム104cは、出力端子104c1を有する。出力端子104c1は、基板400を介さずに、接続部206にてトランス113の1次側巻線113aの引き出し部113a1と接続される。スイッチング素子104のソースパッド104bは、ボンディングワイヤ104fによりリードフレーム14に接続される。
【0026】
スイッチング素子101~104のそれぞれのゲートパッド101a~104aは、ボンディングワイヤ101g、102g、103g、104gにより、制御端子101d、102d、103d、104dのそれぞれに接続される。制御端子101d~104dは、基板400に設けた制御側接続部207にて基板400と接続され、基板400上の配線パターンを介して、基板400に実装された制御回路406に接続される。
【0027】
スイッチング素子101~104のそれぞれのソースパッド101b~104bは、ボンディングワイヤ101h、102h、103h、104hにより、制御端子101e、102e、103e、104eのそれぞれに接続される。制御端子101e~104eは、基板400に設けた制御側接続部207にて基板400と接続され、基板400上の配線パターンを介して、基板400に実装された制御回路406に接続される。このように接続することで、ゲート駆動用の基準電位が測定される。ゲート駆動用の基準電位の検出はこれに限るものではなく、スイッチング素子101~104のそれぞれにソースパッド101b~104bとは別にゲート駆動用パッドを設け、それぞれのゲート駆動用パッドから、ボンディングワイヤ101h~104hにより、制御端子101e~104eのそれぞれに接続する構成でも構わない。
【0028】
入力端子101c1、103c1は、どちらも直流電源200の正極に接続される端子であるため、入力端子101c1と入力端子103c1とは、パワーモジュール100の外側の基板400上で接続してもよいし、リードフレーム14をまたぐバスバーを実装してパワーモジュール100の内部で接続しても構わない。また、ゲートパッドのボンディングワイヤ101g~104gの本数は1本、ソースパッドのボンディングワイヤ101f~104fの本数は3本の例を示したが、ボンディングワイヤの本数はこれらの本数に限るものではない。また、ボンディングワイヤではなくバスバーを用いて接続しても構わない。
【0029】
<比較例>
本願の要部であるパワーモジュール100とトランス113との接続の構成の説明に先立ち、比較例について、図7から図9を用いて説明する。図7は比較例の電力変換器1aの平面図で、基板400aを取り除いて示した図、図8は比較例の電力変換器1aの基板400aのパターンを示す平面図、図9図7のC-C断面位置で切断した、比較例の電力変換器1aの断面図である。
【0030】
電力変換器1aは、パワーモジュール100と、基板400aと、基板400aに設けられ、パワーモジュール100を制御する制御回路406と、パワーモジュール100に接続された巻線を有し、パワーモジュール100と並べて配置されたトランス113と、冷却器10とを備える。図8のハッチングで示した部分は、基板400aに接続される端子間に確保される絶縁距離を設けた部分である。制御回路406は、図8の絶縁距離を設けた部分の間に配置される。制御回路406を構成する具体的な部品は省略する。パワーモジュール100は、出力端子102c1、104c1のトランス113との接続の構成を除き、図2に示した構成と同等である。比較例では、出力端子102c1、104c1は、基板400に設けたモジュール接続部210にて基板400aと接続される。トランス113の1次側巻線113aの引き出し部113a1は、基板400aに設けたトランス接続部211にて基板400aと接続される。モジュール接続部210とトランス接続部211とは、基板400a上の主回路パターンである接続部212を介して接続される。
【0031】
1次側巻線113aの引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターンは、高周波で電位が変動するパターンであるため、大きな基板パターン幅が必要である。図8に示すように、基板400aの1/4程度の領域が、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターンとして使用されている。また、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1の周辺には絶縁距離が必要になるので、その他の主回路部品及び制御回路406をモジュール接続部210とトランス接続部211の周辺には配置することができない。そのため、絶縁距離を確保して主回路部品及び制御回路406を基板400aに配置するので、基板400aは図8に示した大きさよりも大型化する場合がある。
【0032】
<パワーモジュール100とトランス113との接続の構成>
本願における電力変換器1の構成の具体例と、本願の要部であるパワーモジュール100とトランス113との接続の構成について、図4から図6を用いて説明する。電力変換器1は、外部電源である直流電源200と電気的に接続される電源端子部201、202を有した基板400と、複数のスイッチング素子101~104を有し、電源端子部201、202に接続されたパワーモジュール100と、基板400に設けられ、パワーモジュール100を制御する制御回路406と、パワーモジュール100に接続された巻線である1次側巻線113aを有し、パワーモジュール100と並べて配置されたトランス113とを備える。パワーモジュール100は、図6に示すように、基板400の基板面とは隙間を空けて配置される。基板面に垂直でパワーモジュール100から基板に向かう方向をZ方向とする。Z方向に見て、基板400はパワーモジュール100と重複し、基板400の一部は引き出し部113a1とも重複するように配置されている。図5のハッチングで示した部分は、基板400に接続される端子間に確保される絶縁距離を設けた部分である。制御回路406は、図5の絶縁距離を設けた部分よりも上側に配置される。制御回路406を構成する具体的な部品は省略する。
【0033】
本実施の形態では、電力変換器1は、パワーモジュール100を冷却する冷却器10をさらに備え、パワーモジュール100は、冷却器10が有した冷却面10aに熱的に接続されている。本実施の形態では、トランス113も、冷却面10aに熱的に接続されている。冷却器10は、熱伝導性に優れた金属材料である銅又はアルミニウムなどにより作製される。冷却器10の内部には、冷媒が流れる。冷媒は、冷却水などの液体でもよく、気体であっても構わない。
【0034】
パワーモジュール100は、電源端子部201、202と電気的に接続された入力端子101c1、103c1、14a、1次側巻線113aと電気的に接続された出力端子102c1、104c1、及び制御回路406と電気的に接続された制御端子101d~104d、101e~104eを有する。電源端子部201、202と入力端子101c1、103c1、14aとは基板400を介して接続され、制御回路406と制御端子101d~104d、101e~104eとは基板400を介して接続され、1次側巻線113aと出力端子102c1、104c1とは基板400を介さずに接続される。
【0035】
1次側巻線113aは、巻回部(図示せず)と、巻回部から出力端子102c1、104c1の方向に延出し、出力端子102c1、104c1のそれぞれに接続された引き出し部113a1と、を有する。図4に示すように、引き出し部113a1におけるトランス113の巻回部を収めた本体部113cから出力端子102c1と引き出し部113a1との接続部205までの長さ15aは、出力端子102c1におけるパワーモジュール100の本体部から接続部205までの長さ16aよりも長い。同様に、引き出し部113a1におけるトランス113の巻回部を収めた本体部113cから出力端子104c1と引き出し部113a1との接続部206までの長さ15bは、出力端子104c1におけるパワーモジュール100の本体部から接続部206までの長さ16bよりも長い。パワーモジュール100の本体部は、樹脂11により封止されたパワーモジュール100の部分である。
【0036】
引き出し部113a1を出力端子102c1、104c1の方向に延出させて、基板400を介さずに引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続することで、基板400上から引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターン、及び出力端子102c1、104c1とその周辺の絶縁距離を確保するための面積を削除することができる。また、主回路パターンは、制御回路のパターンと比較して、図8に示したように、流れる電流量の違いから格段に広いパターン幅が必要である。そのため、主回路パターンが基板400上から削除されると、同じ基板400上に実装される制御回路406のレイアウトの自由度が向上し、無駄なく効率よい制御回路406の配置が可能になる。元々存在していた主回路パターン面積分の基板400の小型化に加えて、無駄なく効率よい制御回路406の配置により、基板400をさらに小型化及び低コスト化することができる。基板400が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。また、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続に追加部品が不要なため、追加部品によるコスト増加を抑制することができる。
【0037】
図8に示した主回路パターンである接続部212は、高周波で電位変動するパターンであるため、主回路パターン特有の大電流によるDC損失に加え、パターンの重なりによって生じる寄生容量の充放電による損失、及びパターンを平行配置した場合の近接効果に起因した大きな高周波抵抗増加による損失が増加していた。そのため、接続部212は、電源端子部201、202よりもさらに大きなパターン幅が必要であった。つまり、電源端子部201、202を基板400上から削除するよりも、接続部212を基板400上から削除するほうが、削除可能な面積は大きくなるため、接続部212を基板400上から削除することで、基板400をより小型化することができる。
【0038】
なお、引き出し部113a1ではなく、出力端子102c1、104c1を引き出し部113a1の方向に延出させた場合、パワーモジュール100のリードフレーム102c、104cの最外形サイズが大型化することになる。その大型化の程度次第で、現状の設備におけるサイズの制約を超過し、新規設備が必要となり、大幅にパワーモジュール100のコストが増加してしまう場合がある。よって、引き出し部113a1を出力端子102c1、104c1に向けて延出させることで追加部品が無く、コストの増加を抑制した基板400の大幅な小型化及び低コスト化が可能となり、電力変換器1の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0039】
本実施の形態では、パワーモジュール100は、第一面、第一面とは反対側の第二面、及び第一面と第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状に形成されている。パワーモジュール100は、図6に示すように、第二面100z2で冷却面10aに熱的に接続される。基板400は、第一面100z1の側に配置される。
【0040】
入力端子101c1、103c1、14aは、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの一方に配置され、出力端子102c1、104c1は、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの他方に配置され、トランス113は、出力端子102c1、104c1が配置された面の側に配置されている。図4に示すように、本実施の形態では、入力端子101c1、103c1、14aは、第三面100xに配置され、出力端子102c1、104c1は、第四面100yに配置される。トランス113は、パワーモジュール100の第四面100yの側に配置されている。
【0041】
このように構成することで、引き出し部113a1における長さ15a、15bを短くすることができる。引き出し部113a1における長さ15a、15bが短くなることで、1次側巻線113aのコストを低減することができる。また、トランス113の漏れインダクタンスを低減することができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール100の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0042】
本実施の形態では、基板400の基板面は、パワーモジュール100の冷却器10の側とは反対側に、パワーモジュール100とは隙間を空けて配置される。接続部205、206は、基板400と冷却器10との間の領域に配置されている。図6に示すように、接続部205は、Z方向に見て、基板400よりもパワーモジュール100の側に配置されることが望ましい。接続部206も同様である。Z方向に見て、基板400よりもパワーモジュール100の側とは反対側に接続部205、206を配置する場合、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターンの削除が可能な効果はそのままである一方、接続部205、206と基板400とが干渉してしまうため、干渉する部分の基板400に貫通孔を設ける必要がある。貫通孔を設けることで、部品を実装する基板400の有効面積が削減することになる。Z方向に見て、接続部205、206を、基板400よりもパワーモジュール100の側に配置することで、貫通孔が不要なため、基板400をさらに小型化することができる。
【0043】
本実施の形態では、Z方向に見て、出力端子102c1、104c1、及び引き出し部113a1の少なくとも一部は、基板400と重複して配置され、引き出し部113a1が基板400と重複している部分の長さは、出力端子102c1、104c1が基板400と重複している部分の長さよりも長い。制御側接続部207の周辺には制御回路406が配置されるため、このように構成することで、制御側接続部207の周辺に制御回路406を配置するより大きな領域を確保することができる。そのため、制御回路406のレイアウトの自由度が向上し、無駄なく効率のよい制御回路406の配置が可能になる。元々存在していた主回路パターン面積分の基板400の小型化に加えて、無駄なく効率のよい制御回路406の配置により、基板400をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0044】
本実施の形態では、複数のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とは直列に接続される。第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを接続した第1接続部は、出力端子である第1の出力端子と電気的に接続されている。例えば、第1のスイッチング素子はスイッチング素子101であり、第2のスイッチング素子はスイッチング素子102であり、第1接続部はボンディングワイヤ101fがリードフレーム102cに接続された部分であり、第1の出力端子は出力端子102c1である。
【0045】
このように出力端子102c1をスイッチング素子101、102の接続点とすることで、基板400から主回路パターンを削除する効果を大きくすることができる。電源端子部201、202を基板400上から削除するよりも、接続部212を基板400上から削除するほうが、削除可能な面積は大きくなるため、接続部212を基板400上から削除することで、基板400をより小型化することができる。
【0046】
本実施の形態では、複数のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を有し、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とは直列に接続され、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とを接続した第2接続部は、出力端子である第2の出力端子と電気的に接続され、第1の出力端子と第2の出力端子とは隣接して配置されている。例えば、第3のスイッチング素子はスイッチング素子103であり、第4のスイッチング素子はスイッチング素子104であり、第2接続部はボンディングワイヤ103fがリードフレーム104cに接続された部分であり、第2の出力端子は出力端子104c1である。図4に示すように、出力端子102c1と出力端子104c1とは、間に他の端子が配置されることなく、隣接して配置されている。
【0047】
このように構成することで、トランス113の漏れインダクタンスを低減することができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール100の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0048】
本実施の形態では、入力端子101c1、103c1、14aは、Z方向に延出して、基板400に接続されている。このように構成することで、入力端子101c1、103c1、14aの長さを短くすることができる。入力端子101c1、103c1、14aの長さが短くなるため、入力端子101c1、103c1、14aが低抵抗化されるので、入力端子101c1、103c1、14aの発熱を抑制することができる。また、入力端子101c1、103c1、14aの長さが短くなるため、入力端子101c1、103c1、14aを低コスト化することができる。
【0049】
<変形例1>
電力変換器1の構成の変形例について、図10図11を用いて説明する。図10及び図11は実施の形態1に係る別の電力変換器1の平面図で、基板400を取り除いて示した図である。図10では、トランス113が、パワーモジュール100に対して、入力端子101c1、103c1、14aが配置された面の側に配置されている。図11では、トランス113が、パワーモジュール100に対して、パワーモジュール100の端子が配置されてない面の側に配置されている。
【0050】
小型化及び高密度化が求められている車載用の電力変換器1では、冷却器の流路の配置、部品の固定位置、絶縁距離、及び高さの制限等により、パワーモジュール100及びトランス113等の大型の発熱部品の配置が制限されることがある。このような制限により、図10及び図11のように、トランス113と出力端子102c1、104c1の位置が、図4示した構成と比較して離間する構成になる場合ある。トランス113と出力端子102c1、104c1とが離間した構成では、図8に示した比較例のように、基板400を介して引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する場合、過大な主回路パターンが必要となる。
【0051】
図10及び図11に示した配置においても、引き出し部113a1を出力端子102c1、104c1の方向に延出し、基板400を介さずに引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続することで、基板400上から引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターン、及び出力端子102c1、104c1とその周辺の絶縁距離を確保するための面積を削除することができる。図10及び図11に示した構成では、引き出し部113a1は、パワーモジュール100と基板400との間の空間を通って、出力端子102c1、104c1まで延出されている。過大な主回路パターン、モジュール接続部210、及びトランス接続部211を基板400上から削除することができるため、基板400を小型化及び低コスト化することができる。基板400が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0052】
<変形例2>
電力変換器1の構成の別の変形例について、図12から図14を用いて説明する。図12から図14は実施の形態1に係る別の電力変換器1のパワーモジュール100とトランス113との接続を示す図で、パワーモジュール100とトランス113との接続を示す平面図とパワーモジュール100の平面図とを示している。これらの変形例では、トランス113の側のパワーモジュール100の面に配置された出力端子102c1、104c1の配置が異なっている。また、引き出し部113a1がトランス113の本体部113cから延出する位置が、図4とは異なっている。
【0053】
出力端子102c1、104c1は、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの一方に配置され、引き出し部113a1の少なくとも一部は、出力端子102c1、104c1が配置された第三面100x又は第四面100yの方向に斜めに延出した部分を有している。本実施の形態では、出力端子102c1、104c1は、第四面100yに配置され、引き出し部113a1の少なくとも一部は、第四面100yの方向に斜めに延出した部分である斜め部17を有している。
【0054】
図12(a)では、出力端子102c1と出力端子104c1が第四面100yの両側に配置され、その間に制御端子102d、102e、104e、104dが配置されている。図13(a)では、左から出力端子102c1、制御端子102d、102e、出力端子104c1、制御端子104e、104dの順で配置されている。図14(a)では、左から制御端子102d、102e、出力端子102c1、104c1、制御端子104e、104dの順で配置されている。このように出力端子102c1、104c1を配置した場合のパワーモジュール100の構成を、図12(b)、図13(b)、図14(b)に示す。図12(b)、図13(b)、図14(b)では、主要な符号のみを示す。
【0055】
図12(a)から図14(a)に示すように、出力端子102c1、104c1の配置が変更となった場合でも、引き出し部113a1に斜め部17を設けることで、基板400を介さずに、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを最短の距離で接続することができる。例えば、図11では、斜め部17を引き出し部113a1が有していないため、引き出し部113a1が非常に長くなっている。図12(a)から図14(a)では、斜め部17を設けているため、引き出し部113a1の長さが最短となっている。そのため、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続するための主回路パターンを基板400上から削除し、基板400が小型化及び低コスト化するだけでなく、1次側巻線113aを低コスト化することができる。1次側巻線113aが低コスト化されるため、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0056】
図12(a)から図14(a)に破線矢印にて、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1の電流ループを示している。この電流ループが小さい程、トランス113の漏れインダクタンスが小さくなり、電流ループが大きい程、トランス113の漏れインダクタンスは大きくなる。図14(a)に示すように、出力端子102c1、104c1を隣接して配置させることで、トランス113の漏れインダクタンスを低減することができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール100の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0057】
<接続部205、206>
接続部205、206の構成について、図15を用いて説明する。図15は実施の形態1に係る電力変換器1のパワーモジュール100とトランス113との接続時の様子を示す図で、電力変換器1は図6と同等の位置で切断した断面図である。引き出し部113a1は、Z方向に折り曲げられた部分である折り曲げ部を少なくとも1つ有している。本実施の形態では、1つの折り曲げ部21を引き出し部113a1は有している。このように構成することで、追加部品を設けることなく、出力端子102c1、104c1との接続部205、206を、容易に確保することができる。
【0058】
以下、図15に示した出力端子102c1で説明するが、出力端子104c1の構成も同様である。本実施の形態では、引き出し部113a1は、出力端子102c1の側に、Z方向に折り曲げられてZ方向に延出した部分である折り曲げ端部20aを有する。出力端子102c1は、引き出し部113a1の側に、Z方向に折り曲げられてZ方向に延出した部分である出力折り曲げ端部20bを有する。折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとが電気的に接続され、接続部205が形成されている。このように構成することで、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続部205、206の面積を容易に確保することができる。接続部205、206の面積が確保されるので、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接触抵抗を低減することができる。接触抵抗が低減されるので、接続部205、206における発熱を抑制することができる。
【0059】
折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとは、TIG溶接により電気的に接続されている。図15では、折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとをTIG溶接により接続している。TIG溶接による接続は、パワーモジュール100及びトランス113を冷却器10に固定した後に実施するため、各部品のばらつき及び組立公差を吸収した上で折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとを接続することができる。TIG溶接は接続方法としては安価であり、さらに、各部品の寸法ばらつき及び組立公差を吸収することができるため、工程管理の簡素化及び構造部品の公差緩和が可能になる。工程管理の簡素化及び構造部品の公差緩和が可能なため、電力変換器1を低コスト化することができる。
【0060】
また、TIG溶接では、チャック部19にて折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとを固定し、電極部18にて溶接を行う。そのため、接続部205、206には、Z方向に折り曲げて向き合わせた折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bが必要となる。つまり、引き出し部113a1は、少なくとも1つの折り曲げ部21を有して、折り曲げ端部20aを形成することで、出力端子102c1と引き出し部113a1との接続をTIG溶接により容易に行うことができる。
【0061】
なお、出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1との接続は、TIG溶接に限るものではない。出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1とは、ねじにより電気的に接続しても構わない。追加部品としてねじが必要になるものの、溶接に必要な接続部が確保できない場合、又はTIG溶接の設備が準備できない場合などは、ねじにより出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1と容易に接続することができる。
【0062】
<トランス113>
トランス113の構成の具体例について、図16を用いて説明する。図16は実施の形態1に係る電力変換器1のトランス113の概略を示す分解斜視図である。図16(a)はトランス113の分解斜視図、図16(b)はトランス113が有した巻線の分解斜視図である。トランス113は、巻線として、1次側巻線113aと2次側巻線113bとを有する。本実施の形態では、1次側巻線113a及び2次側巻線113bは、平板状の巻線で構成され、トランス113は、プレーナー形状のトランスである。図16(a)に示すように、トランス113は、巻線部1003が下コア1001と上コア1002に挟まれて構成されている。巻線部1003は、板金で構成された1次側巻線113a及び2次側巻線113bが交互に積層された構成である。なお巻線部1003には、各巻線間の絶縁性能を担保するために設けた封止樹脂部材が含まれる。1次側巻線113a及び2次側巻線113bは、例えば、銅により作製される。1次側巻線113aは、巻回部113a2と、巻回部113a2から延出した引き出し部113a1と、を有する。
【0063】
巻線をコアの厚み方向に巻く巻き付け型のトランスに対して、プレーナー形状のトランスは、Z方向に平行な巻回軸1000に対し、Z方向に垂直なXY面方向に巻線を巻くため、トランス113を低背化することができる。さらに、巻線は、一般的なトランスに用いられる丸線又はリッツ線等ではなく、平板状、例えば、板金巻線であることが望ましい。巻線を板金巻線とすることで、さらなる低背化が可能となる。トランス113を1次側巻線113a及び2次側巻線113bが板金で構成されたプレーナー形状のトランスとすることで、接続部205、206の位置を大幅に冷却面10aの方向に下げることができる。接続部205、206の位置が下がるため、容易に接続部205、206を基板400と冷却面10aとの間の空間に配置することができる。接続部205、206が基板400と冷却面10aとの間の空間に配置されるため、基板400に貫通孔を設ける必要がないので、基板400を小型化することができる。基板400が小型化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0064】
巻線を板金巻線とすることで、より安価に出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1との接続をTIG溶接により行うことができる。具体的には、例えば、引き出し部113a1が丸線の場合、出力端子102c1、104c1と形状が異なるため、TIG溶接を行う際に、チャック部19での端子同士の固定ずれ、及び電極部18での溶接不良の可能性が有る。そのため、別途丸線の形状を変更する端子等が必要となる。板金巻線とすることで、追加の加工がなく、出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1との接続をTIG溶接にて行うことができるため、より安価な電力変換器1を実現することができる。
【0065】
また、図16(b)に示すように、トランス113の巻線は、1次側巻線113aと2次側巻線113bとが交互に積層されている。この構成により、トランス113の近接効果による高周波抵抗の上昇を抑制することができる。積層配置されて近接する1次側巻線113a及び2次側巻線113bに流れる電流は、近接効果によって互いに近接する部分に集中して流れる。つまり近接する面を増やすことで、近接効果による電流の偏りを抑制し、高周波抵抗を低減することでトランス113の損失を低減することができる。このようにトランスの損失を低減するために1次側巻線113aと2次側巻線113bとが交互に積層された構成において、引き出し部113a1に、TIG溶接用の折り曲げ部21に加え、1次側巻線113a同士の高さを吸収するための折り曲げ部22を設けることで、折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bの長さを統一し、その長さを最小とすることができる。
【0066】
引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続の構成の具体例について、図17及び図18を用いて説明する。図17図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器1の断面図で、図18図4のB-B断面位置で切断したさらに別の電力変換器1の断面図である。図17及び図18に示した電力変換器1の2つの引き出し部113a1は、トランス113の本体部113cから出力端子102c1、104c1の方向に延出するZ方向の位置が異なっている。Z方向の下側に設けられた引き出し部を引き出し部113a1-1とし、Z方向の上側に設けられた引き出し部を引き出し部113a1-2とする。引き出し部113a1-1は出力端子102c1と接続され、引き出し部113a1-2は出力端子104c1と接続される。
【0067】
図17に示した引き出し部113a1-1、113a1-2は、双方とも1つの折り曲げ部21を有する。引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さが異なるため、接続部205と接続部206の高さが異なり、接続部206がZ方向に突出している。また、その高さ違いを吸収するために、出力端子104c1のZ方向の長さが出力端子102c1のZ方向の長さよりも長くなっている。
【0068】
図18に示した引き出し部113a1-1は1つの折り曲げ部21を有し、引き出し部113a1-2は2つの折り曲げ部21、22を有する。引き出し部113a1-2は、トランス113の本体部113cから突出した後、Z方向とは反対方向に折り曲げられた折り曲げ部22を有し、引き出し部113a1-2は、折り曲げ部22からZ方向とは反対方向に延出した後、さらに折り曲げられて接続部206の方向に延出している。引き出し部113a1-2が折り曲げ部22を有したことで、引き出し部113a1-1、113a1-2の引き出し高さの違いが吸収されるので、接続部205、206を同じ高さに配置することができる。図18図17に対して接続部206の高さを下げることが可能であり、基板400の高さが接続部206によって制約されている場合、基板400をより低い位置に配置することができる。基板400の配置が低くなるため、電力変換器1の高さを下げることができるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0069】
また、出力端子104c1の長さが短縮されるので、出力端子104c1の長さによりリードフレーム全体のサイズが制約されていた場合、出力端子104c1の長さの短縮により、パワーモジュール100を低コスト化することができる。このように、引き出し部113a1において、Z方向への2つの折り曲げ部を設けたことで、引き出し部のZ方向の高さ違いを吸収できるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0070】
引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続の構成の別の具体例について、図19及び図20を用いて説明する。図19図4のB-B断面位置で切断した別の電力変換器1の断面図で、図20図4のB-B断面位置で切断したさらに別の電力変換器1の断面図である。図19及び図20に示した電力変換器1の2つの引き出し部113a1は、トランス113の本体部113cから出力端子102c1、104c1の方向に延出するZ方向の位置が異なっている。Z方向の下側に設けられた引き出し部を引き出し部113a1-1とし、Z方向の上側に設けられた引き出し部を引き出し部113a1-2とする。引き出し部113a1-1は出力端子102c1と接続され、引き出し部113a1-2は出力端子104c1と接続される。トランス113の本体部113cから延出した引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さは、図17に示した引き出し部のZ方向の高さよりも低い位置である。
【0071】
図19に示した引き出し部113a1-1、113a1-2は、双方とも1つの折り曲げ部21を有する。出力端子102c1、104c1がパワーモジュール100の本体部から延出したZ方向の高さを高さBとする。図19に示した具体例では、引き出し部113a1-1がトランス113の本体部113cから延出したZ方向の高さが高さBよりも低い。この場合、高さBが冷却器10との絶縁に必要な距離であるとすると、引き出し部113a1-1と冷却器10との間の領域C(図19で破線で囲んだ領域)では絶縁距離が不足することになる。そのため、冷却器10の冷却面10aの一部を削って絶縁距離を確保するか、領域Cに絶縁部材を設ける等の対応が必要になる。前者の場合、冷却器10のコスト及びサイズが増加することになり、後者の場合、絶縁部材の追加によるコスト増加が発生する。これらの増加の影響は、領域Cが大きい程大きくなる。
【0072】
図20に示した引き出し部113a1-1は2つの折り曲げ部21、22を有し、引き出し部113a1-2は1つの折り曲げ部21を有する。引き出し部113a1-1は、トランス113の本体部113cから突出した後、Z方向に折り曲げられた折り曲げ部22を有し、引き出し部113a1-1は、折り曲げ部22からZ方向に延出した後、さらに折り曲げられて接続部205の方向に延出している。引き出し部113a1-2が折り曲げ部22を有したことで、領域Cにおける追加の絶縁対策が必要な箇所を大幅に低減することができる。図16に示した通り、巻線部1003には各巻線間の絶縁性能を担保するための封止樹脂部材を設けている。そのため、領域Cを大幅に低減することで、巻線部1003の封止樹脂部材のわずかな延長により、領域Cにおける冷却器10との絶縁を封止樹脂部材により担保することができる。よって、引き出し部113a1-1が2つの折り曲げ部21、22を有したことで、引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さの違いに起因した絶縁対策は、ほぼコストを増加させることなく対応可能である。
【0073】
板金の1次側巻線113a及び2次側巻線113bが積層されたプレーナー形状のトランス113において、引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さが異なる場合においても、引き出し部113a1-1、113a1-2の何れかが2つの折り曲げ部21、22を有することで、引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さを吸収することができる。引き出し部113a1-1、113a1-2のZ方向の高さが吸収されるため、基板400のパワーモジュール100の側の空間において、引き出し部113a1-1、113a1-2と出力端子102c1、104c1とを接続することができる。基板400のパワーモジュール100の側の空間において、引き出し部113a1-1、113a1-2と出力端子102c1、104c1とが接続されるので、主回路パターンを基板400上から削除し、基板400を小型化及び低コスト化することができる。基板400が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0074】
出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1とを、ねじにより電気的に接続した場合の具体的な構成例について、図21を用いて説明する。図21は実施の形態1に係る別の電力変換器1の断面図で、接続部205の箇所を切断した図である。以下、接続部205について説明するが、接続部206の構成も同様である。出力端子102c1は、パワーモジュール100の本体部からトランス113の本体部113cの方向に延出し、引き出し部113a1は、トランス113の本体部113cからパワーモジュール100の本体部の方向に延出する。出力端子102c1の端部と引き出し部113a1の端部との重なった部分に接続部205が形成され、接続部205において、出力端子102c1と引き出し部113a1とはねじ23により締結されている。
【0075】
ねじ止めによる接続では、ねじ23と、例えば、インサートナットのようなねじを受けるためのねじ受け部24とにより、出力端子102c1と引き出し部113a1とを接続する。この構成では、追加部材としてねじ23とねじ受け部24が必要となるため、TIG溶接により接続した構成と比較して、わずかにコストが増加することになる。しかしながら、配線部材であるバスバーを追加して接続した従来の構成に対して、大幅にコストを低減することができる。また、TIG溶接により接続した図15の構成と比較して、出力端子102c1と引き出し部113a1とを接続した接続部205のZ方向の位置を低くすることができる。接続部205のZ方向の位置が低くなるので、基板400のZ方向の高さを低くすることができる。基板400のZ方向の高さが接続部205の高さにより制約されている場合、このように構成することで、基板400をより低い位置に配置できる。基板400の配置が低くなるため、電力変換器1の高さを下げることができるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0076】
本実施の形態では、1次側巻線113aの巻数は、2次側巻線113bの巻数よりも多く、出力端子102c1、104c1は、1次側巻線113aに接続されている。このように、トランス113の1次側巻線113aと2次側巻線113bの巻数比は、図16に示すように、1次側巻線113aが多いことが望ましい。
【0077】
本実施の形態では、1次側巻線113aに引き出し部113a1を設けて、パワーモジュール100の出力端子102c1、104c1と接続している。そのため、引き出し部113a1は、出力端子102c1、104c1との高さを合わせるために、単数又は複数の折り曲げ部21、22を有している。1次側巻線113aの巻数が2次側巻線113bの巻数よりも多いことで、1次側巻線113aに流れる電流は2次側巻線113bに流れる電流よりも小さくなる。1次側巻線113aに流れる電流が2次側巻線113bに流れる電流よりも小さいため、1次側巻線113aの断面積は2次側巻線113bの断面積よりも小さくすることができるので、折り曲げ部の曲げ加工を容易に行うことができる。折り曲げ部の曲げ加工が容易に行えるので、電力変換器1の生産性を向上させることができる。また、電力変換器1を低コスト化することができる。
【0078】
また、パワーモジュール100の入力端子101c1、103c1、14aは基板400に接続され、直流電源200との接続は基板400に設けた電源端子部201、202を介して行うため、1次側を流れる電流が小さい程、図5に示した電源端子部201、202を小さくすることできる。電源端子部201、202が小さくなるため、基板400をさらに小型化することができる。
【0079】
<降圧コンバータ>
本実施の形態では、電力変換器1は、例えば、降圧コンバータである。電力変換器1は、2次側巻線113bから出力される電圧を整流する整流回路114と、2次側巻線113bから出力される電圧を平滑化する平滑回路とを備える。整流回路114は、複数の半導体素子から構成される。半導体素子は、ダイオード115、116である。平滑回路は、リアクトルとコンデンサとから構成されている。図1に示すように、リアクトルは平滑リアクトル108であり、コンデンサは出力コンデンサ109である。
【0080】
1次側電流が小さく2次側電流が大きい電力変換器1は、例えば、電動化車両の高圧バッテリの直流電源を低圧の直流に変換し、車内の12V系の補機類に電力供給する、絶縁型の降圧コンバータであることが好ましい。このような降圧コンバータは、1次側の電流が数Armsから十数Armsであるのに対し、2次側の電流は数十Armsから数百Armsであり、1次側電流に対して、2次側電流が非常に大きい。回路図は、例えば、図1に示す通りである。
【0081】
図1に示すように、降圧コンバータの1次側には、ヒューズ404各コンデンサ、及び電流センサ405のように基板400に実装する部品が多数あるため、直流電源200からパワーモジュール100の入力端子101c1、103c1、14aの接続は、基板400を介して基板400上の電源端子部201、202で行うことが好ましい。1次側の電流が数Armsから十数Armsと小さいため、基板400上での電源端子部201、202を含む主回路パターンによる接続が可能である。一方、2次側の電流は数十Armsから数百Armsであり、2次側巻線113b、平滑リアクトル108、及び整流回路114の端子を接続する配線は、板金、又はバスバーが用いられることが多く、これらの接続には、基板400を介さずに、TIG溶接により行うことが多い。よって、電力変換器1が降圧コンバータである場合、パワーモジュール100の出力端子102c1、104c1と1次側巻線113aとの接続にTIG溶接を用いる際に、溶接機などの追加の設備費、追加の工程無しで、より安価に電力変換器1を得ることができる。
【0082】
以上のように、実施の形態1による電力変換器1において、パワーモジュール100が、電源端子部201、202と電気的に接続された入力端子101c1、103c1、14a、巻線と電気的に接続された出力端子102c1、104c1、及び制御回路406と電気的に接続された制御端子101d~104d、101e~104eを有し、電源端子部201、202と入力端子101c1、103c1、14aとは基板400を介して接続され、制御回路406と制御端子101d~104d、101e~104eとは基板400を介して接続され、巻線と出力端子102c1、104c1とは基板400を介さずに接続され、巻線が、巻回部と、巻回部から出力端子102c1、104c1の方向に延出し、出力端子102c1、104c1に接続された引き出し部113a1と、を有し、引き出し部113a1におけるトランス113の巻回部を収めた本体部から出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1との接続部までの長さが、出力端子102c1、104c1におけるパワーモジュール100の本体部から接続部までの長さよりも長いため、基板400上から引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続する主回路パターン、及び出力端子102c1、104c1とその周辺の絶縁距離を確保するための面積を削除できるので、基板400を小型化及び低コスト化することができる。基板400が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0083】
また、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続に追加部品が不要なため、追加部品によるコスト増加を抑制することができる。引き出し部113a1を出力端子102c1、104c1に向けて延出させることで追加部品が無く、コストの増加を抑制した基板400の大幅な小型化及び低コスト化が可能となり、電力変換器1の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0084】
複数のスイッチング素子が、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とが直列に接続され、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを接続した第1接続部が、出力端子である第1の出力端子と電気的に接続されている場合、出力端子102c1をスイッチング素子101、102の接続点とすることで、基板400から主回路パターンを削除する効果を大きくすることができる。電源端子部201、202を基板400上から削除するよりも、接続部212を基板400上から削除するほうが、削除可能な面積は大きくなるため、接続部212を基板400上から削除することで、基板400をより小型化することができる。
【0085】
複数のスイッチング素子が、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を有し、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とが直列に接続され、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とを接続した第2接続部が、出力端子である第2の出力端子と電気的に接続され、第1の出力端子と第2の出力端子とが隣接して配置されている場合、トランス113の漏れインダクタンスを低減することができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール100の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0086】
入力端子101c1、103c1、14aが、Z方向に延出して、基板400に接続されている場合、入力端子101c1、103c1、14aの長さを短くすることができる。入力端子101c1、103c1、14aの長さが短くなるため、入力端子101c1、103c1、14aが低抵抗化されるので、入力端子101c1、103c1、14aの発熱を抑制することができる。また、入力端子101c1、103c1、14aの長さが短くなるため、入力端子101c1、103c1、14aを低コスト化することができる。
【0087】
引き出し部113a1が、Z方向に折り曲げられた部分である折り曲げ部を少なくとも1つ有している場合、追加部品を設けることなく、出力端子102c1、104c1との接続部205、206を、容易に確保することができる。また、接続部205、206を同じ高さに配置することができるので、基板400をより低い位置に配置することができる。
【0088】
引き出し部113a1が、出力端子102c1の側に、Z方向に折り曲げられてZ方向に延出した部分である折り曲げ端部20aを有し、出力端子102c1が、引き出し部113a1の側に、Z方向に折り曲げられてZ方向に延出した部分である出力折り曲げ端部20bを有し、折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとが電気的に接続され、接続部205が形成されている場合、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接続部205、206の面積を容易に確保することができる。接続部205、206の面積が確保されるので、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1との接触抵抗を低減することができる。接触抵抗が低減されるので、接続部205、206における発熱を抑制することができる。
【0089】
引き出し部113a1-2が、トランス113の本体部113cから突出した後、Z方向とは反対方向に折り曲げられた折り曲げ部22を有し、引き出し部113a1-2が、折り曲げ部22からZ方向とは反対方向に延出した後、さらに折り曲げられて接続部206の方向に延出している場合、引き出し部113a1-2が折り曲げ部22を有したことで、引き出し部113a1-1、113a1-2の引き出し高さの違いが吸収されるので、接続部205、206を同じ高さに配置することができる。接続部205、206を同じ高さに配置できるので、基板400をより低い位置に配置することができる。基板400の配置が低くなるため、電力変換器1の高さを下げることができるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0090】
出力端子102c1、104c1が、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの一方に配置され、引き出し部113a1の少なくとも一部が、出力端子102c1、104c1が配置された第三面100x又は第四面100yの方向に斜めに延出した部分を有している場合、出力端子102c1、104c1の配置が変更となった場合でも、引き出し部113a1に斜め部17を設けることで、基板400を介さずに、引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを最短の距離で接続することができる。引き出し部113a1と出力端子102c1、104c1とを接続するための主回路パターンを基板400上から削除し、基板400が小型化及び低コスト化するだけでなく、1次側巻線113aを低コスト化することができる。1次側巻線113aが低コスト化されるため、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0091】
入力端子101c1、103c1、14aが、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの一方に配置され、出力端子102c1、104c1が、対向して配置された第三面100x及び第四面100yの他方に配置され、トランス113が、出力端子102c1、104c1が配置された面の側に配置されている場合、引き出し部113a1における長さ15a、15bを短くすることができる。引き出し部113a1における長さ15a、15bが短くなることで、1次側巻線113aのコストを低減することができる。また、トランス113の漏れインダクタンスを小さくすることができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール100の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0092】
基板400の基板面が、パワーモジュール100の冷却器10の側とは反対側に、パワーモジュール100とは隙間を空けて配置され、接続部205、206が、基板400と10冷却器との間の領域に配置されている場合、接続部205、206と基板400とが干渉することがなく、基板400に貫通孔を設ける必要がないので、基板400をさらに小型化することができる。
【0093】
Z方向に見て、出力端子102c1、104c1、及び引き出し部113a1の少なくとも一部が、基板400と重複して配置され、引き出し部113a1が基板400と重複している部分の長さが、出力端子102c1、104c1が基板400と重複している部分の長さよりも長い場合、制御側接続部207の周辺に制御回路406を配置するより大きな領域を確保することができるので、制御回路406のレイアウトの自由度が向上し、無駄なく効率のよい制御回路406の配置が可能になる。元々存在していた主回路パターン面積分の基板400の小型化に加えて、無駄なく効率のよい制御回路406の配置により、基板400をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0094】
折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとが、TIG溶接により電気的に接続されている場合、TIG溶接による接続は、パワーモジュール100及びトランス113を冷却器10に固定した後に実施するため、各部品のばらつき及び組立公差を吸収した上で折り曲げ端部20aと出力折り曲げ端部20bとを接続することができる。TIG溶接は接続方法としては安価であり、さらに、各部品の寸法ばらつき及び組立公差を吸収することができるため、工程管理の簡素化及び構造部品の公差緩和が可能になる。工程管理の簡素化及び構造部品の公差緩和が可能なため、電力変換器1を低コスト化することができる。
【0095】
出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1とが、ねじにより電気的に接続されている場合、追加部品としてねじが必要になるものの、溶接に必要な接続部が確保できない場合、又はTIG溶接の設備が準備できない場合などは、ねじにより出力端子102c1、104c1と引き出し部113a1と容易に接続することができる。
【0096】
出力端子102c1が、パワーモジュール100の本体部からトランス113の本体部113cの方向に延出し、引き出し部113a1が、トランス113の本体部113cからパワーモジュール100の本体部の方向に延出し、出力端子102c1の端部と引き出し部113a1の端部との重なった部分に接続部205が形成され、接続部205において、出力端子102c1と引き出し部113a1とはねじ23により締結されている場合、配線部材であるバスバーを追加して接続した従来の構成に対して、コストを低減することができる。また、TIG溶接により接続した構成と比較して、出力端子102c1と引き出し部113a1とを接続した接続部205のZ方向の位置を低くすることができる。接続部205のZ方向の位置が低くなるので、基板400のZ方向の高さを低くすることができる。基板400のZ方向の配置が低くなるため、電力変換器1の高さを下げることができるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0097】
1次側巻線113aの巻数が、2次側巻線113bの巻数よりも多く、出力端子102c1、104c1が、1次側巻線113aに接続されている場合、1次側巻線113aに流れる電流が2次側巻線113bに流れる電流よりも小さいため、1次側巻線113aの断面積は2次側巻線113bの断面積よりも小さくすることができるので、折り曲げ部の曲げ加工を容易に行うことができる。折り曲げ部の曲げ加工が容易に行えるので、電力変換器1の生産性を向上させることができる。また、電力変換器1を低コスト化することができる。
【0098】
電力変換器1が、2次側巻線113bから出力される電圧を整流する整流回路114と、2次側巻線113bから出力される電圧を平滑化する平滑回路とを備え、整流回路114が、複数の半導体素子から構成され、平滑回路が、リアクトルとコンデンサとから構成されている降圧コンバータである場合、1次側の電流が数Armsから十数Armsと小さいため、基板400上での電源端子部201、202を含む主回路パターンによる接続が可能である。一方、2次側の電流は数十Armsから数百Armsであり、電力変換器1が降圧コンバータである場合、パワーモジュール100の出力端子102c1、104c1と1次側巻線113aとの接続にTIG溶接を用いる際に、溶接機などの追加の設備費、追加の工程無しで、より安価に電力変換器1を得ることができる。
【0099】
トランス113が、巻線として、1次側巻線113aと2次側巻線113bとを有し、1次側巻線113a及び2次側巻線113bが、平板状の巻線で構成され、トランス113が、プレーナー形状のトランスである場合、巻線をコアの厚み方向に巻く巻き付け型のトランスに対して、プレーナー形状のトランスは、Z方向に平行な巻回軸1000に対し、Z方向に垂直なXY面方向に巻線を巻くため、トランス113を低背化することができる。また、接続部205、206の位置を大幅に冷却面10aの方向に下げることができる。接続部205、206の位置が下がるため、容易に接続部205、206を基板400と冷却面10aとの間の空間に配置することができる。接続部205、206が基板400と冷却面10aとの間の空間に配置されるので、基板400に貫通孔を設けることなく、基板400を小型化することができる。基板400が小型化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電力変換器1について説明する。図22は実施の形態2に係る電力変換器1の回路構成を示す図、図23は電力変換器1のパワーモジュール111の平面図で、樹脂11を取り除いて、樹脂11は外形のみを示した図、図24は電力変換器1のパワーモジュール111とトランス113との接続を示す図である。実施の形態2に係る電力変換器1は、パワーモジュール111が追加の部品を加えてモジュール化された構成になっている。
【0101】
パワーモジュール111は、トランス113の1次側巻線113aに接続される複数のスイッチング素子101~104及び複数の半導体素子であるダイオード115、116が一体化されたモジュールである。ダイオード115、116は、整流回路114を構成する整流素子である。本実施の形態では、パワーモジュール111は、図22に示すように、整流回路114を加えてモジュール化されている。ダイオード115、116のカソード側と2次側巻線113bとの接続部208、209は、基板400を経由せずに直接接続される。その他の構成は実施の形態1の図1と同じであるため、同じ符号とし説明を省略する。
【0102】
パワーモジュール111の実装構成の例について、図23を用いて説明する。パワーモジュール111は、5つのリードフレーム101c~104c、14に加えて、さらに3つのリードフレーム115b、115c、116bを有する。追加されたリードフレームも、例えば、銅板である。ダイオード115は、例えば、底面にカソードパッドを有し、上面にアノードパッド115aを有した半導体チップである。ダイオード116も、例えば、底面にカソードパッドを有し、上面にアノードパッド116aを有した半導体チップである。ダイオード115、116のそれぞれは、リードフレーム115b、116bのそれぞれに実装される。
【0103】
ダイオード115のアノードパッド115aは、ボンディングワイヤ115fによりリードフレーム115cに接続され、ダイオード116のアノードパッド116aは、ボンディングワイヤ116fによりリードフレーム115cに接続される。リードフレーム115cは、カソード端子115c1を有する。カソード端子115c1は、電力変換器1を収容した筐体(図示せず)のGNDに接続される。リードフレーム115bは、アノード端子115b1を有する。リードフレーム116bは、アノード端子116b1を有する。アノード端子115b1と2次側巻線113bの一方の端部とは、図24に示すように、接続部208で接続される。アノード端子116b1と2次側巻線113bの他方の端部とは、接続部209で接続される。接続部208、209における接続は、例えば、TIG溶接である。図23のその他の構成は実施の形態1の図2に示した構成と同じであるため、図2と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0104】
出力端子102c1、104c1のそれぞれは、引き出し部113a1と接続部205、206で接続される。アノード端子115b1、116b1のそれぞれは、2次側巻線113bの端部と接続部208、209で接続される。1次側に設けたスイッチング素子101~104と2次側に設けたダイオード115、116とを一体化した一つのパワーモジュール111とすることで、出力端子102c1、104c1とアノード端子115b1、116b1との距離が近づくため、引き出し部113a1を短縮することができる。引き出し部113a1が短縮されるので、1次側巻線113aのコストを低減でき、トランス113の漏れインダクタンスを低減することができる。トランス113の漏れインダクタンスが低減されるので、スイッチング素子101~104のスイッチング損失の低減、及びサージ電圧を減少させることができる。そのため、パワーモジュール111の小型化、及びXコンデンサ401の削除が可能になるので、電力変換器1をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0105】
実施の形態2におけるトランス113の巻数は、2次側巻線113bよりも1次側巻線113aのほうが多く、これらの巻線に流れる電流は、2次側巻線113bのほうが大きい。そのため、2次側巻線113bの断面積は、1次側巻線113aの断面積よりも大きい。断面積の大きい2次側巻線113bの曲げ加工が最小となるように、アノード端子115b1、116b1と2次側巻線113bの端部とが対向するように配置するのが望ましい。断面積の小さい1次側巻線113aに曲げ構造を設け、出力端子102c1、104c1の方向に延出させることで、1次側に設けたスイッチング素子101~104と2次側に設けたダイオード115、116とを一体化してパワーモジュール111とした場合においても、基板400から主回路パターンを削除し、基板400を小型化及び低コスト化することができる。基板400が小型化及び低コスト化されるので、電力変換器1を小型化及び低コスト化することができる。
【0106】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0107】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0108】
(付記1)
外部電源と電気的に接続される電源端子部を有した基板と、
複数のスイッチング素子を有し、前記電源端子部に接続されたパワーモジュールと、
前記基板に設けられ、前記パワーモジュールを制御する制御回路と、
前記パワーモジュールに接続された巻線を有し、前記パワーモジュールと並べて配置されたトランスと、を備え、
前記パワーモジュールは、前記電源端子部と電気的に接続された入力端子、前記巻線と電気的に接続された出力端子、及び前記制御回路と電気的に接続された制御端子を有し、前記電源端子部と前記入力端子とは前記基板を介して接続され、前記制御回路と前記制御端子とは前記基板を介して接続され、前記巻線と前記出力端子とは前記基板を介さずに接続され、
前記巻線は、巻回部と、前記巻回部から前記出力端子の方向に延出し、前記出力端子に接続された引き出し部と、を有し、
前記引き出し部における前記トランスの前記巻回部を収めた本体部から前記出力端子と前記引き出し部との接続部までの長さは、前記出力端子における前記パワーモジュールの本体部から前記接続部までの長さよりも長い電力変換器。
(付記2)
前記複数のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とは直列に接続され、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを接続した第1接続部は、前記出力端子である第1の出力端子と電気的に接続されている付記1に記載の電力変換器。
(付記3)
前記複数のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を有し、
前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とは直列に接続され、
前記第3のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子とを接続した第2接続部は、前記出力端子である第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子とは隣接して配置されている付記2に記載の電力変換器。
(付記4)
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記入力端子は、前記Z方向に延出して、前記基板に接続されている付記1から3のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記5)
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記引き出し部は、前記Z方向に折り曲げられた部分である折り曲げ部を少なくとも1つ有している付記1から4のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記6)
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記引き出し部は、前記出力端子の側に、前記Z方向に折り曲げられて前記Z方向に延出した部分である折り曲げ端部を有し、
前記出力端子は、前記引き出し部の側に、前記Z方向に折り曲げられて前記Z方向に延出した部分である出力折り曲げ端部を有し、
前記折り曲げ端部と前記出力折り曲げ端部とが電気的に接続され、前記接続部が形成されている付記1から5のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記7)
前記引き出し部は、前記トランスの本体部から突出した後、前記Z方向又は前記Z方向とは反対方向に折り曲げられた前記折り曲げ部を有し、
前記引き出し部は、前記折り曲げ部から前記Z方向又は前記Z方向とは反対方向に延出した後、さらに折り曲げられて前記接続部の方向に延出している付記5に記載の電力変換器。
(付記8)
前記パワーモジュールは、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状に形成され、
前記出力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の一方に配置され、
前記引き出し部の少なくとも一部は、前記出力端子が配置された前記第三面又は前記第四面の方向に斜めに延出した部分を有している付記1から7のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記9)
前記パワーモジュールは、第一面、前記第一面とは反対側の第二面、及び前記第一面と前記第二面とを取り囲む4つの面である、第三面、第四面、第五面、第六面を有する直方体状に形成され、
前記入力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の一方に配置され、
前記出力端子は、対向して配置された前記第三面及び前記第四面の他方に配置され、
前記トランスは、前記出力端子が配置された面の側に配置されている付記1から8のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記10)
前記パワーモジュールを冷却する冷却器を備え、
前記パワーモジュールは、前記冷却器が有した冷却面に熱的に接続され、
前記基板の基板面は、前記パワーモジュールの前記冷却器の側とは反対側に、前記パワーモジュールとは隙間を空けて配置され、
前記接続部は、前記基板と前記冷却器との間の領域に配置されている付記1から9のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記11)
前記パワーモジュールは、前記基板の基板面とは隙間を空けて配置され、
前記基板面に垂直で前記パワーモジュールから前記基板に向かう方向をZ方向とし、
前記Z方向に見て、
前記出力端子、及び前記引き出し部の少なくとも一部は、前記基板と重複して配置され、
前記引き出し部が前記基板と重複している部分の長さは、前記出力端子が前記基板と重複している部分の長さよりも長い付記1から10のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記12)
前記折り曲げ端部と前記出力折り曲げ端部とは、TIG溶接により電気的に接続されている付記6に記載の電力変換器。
(付記13)
前記出力端子と前記引き出し部とは、ねじにより電気的に接続されている付記1から11のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記14)
前記出力端子は、前記パワーモジュールの本体部から前記トランスの本体部の方向に延出し、
前記引き出し部は、前記トランスの本体部から前記パワーモジュールの本体部の方向に延出し、
前記出力端子の端部と前記引き出し部の端部との重なった部分に前記接続部が形成され、
前記接続部において、前記出力端子と前記引き出し部とは前記ねじにより締結されている付記13に記載の電力変換器。
(付記15)
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記1次側巻線の巻数は、前記2次側巻線の巻数よりも多く、
前記出力端子は、前記1次側巻線に接続されている付記1から14のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記16)
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記2次側巻線から出力される電圧を整流する整流回路と、前記2次側巻線から出力される電圧を平滑化する平滑回路と、をさらに備え、
前記整流回路は、複数の半導体素子から構成され、前記平滑回路は、リアクトルとコンデンサとから構成されている付記1から15のいずれか1項に記載の電力変換器。
(付記17)
前記パワーモジュールは、前記トランスの前記1次側巻線に接続される前記複数のスイッチング素子及び前記複数の半導体素子が一体化されたモジュールである付記16に記載の電力変換器。
(付記18)
前記トランスは、前記巻線として、1次側巻線と2次側巻線とを有し、
前記1次側巻線及び前記2次側巻線は、平板状の巻線で構成され、
前記トランスは、プレーナー形状のトランスである付記1から17のいずれか1項に記載の電力変換器。
【符号の説明】
【0109】
1、1a 電力変換器、99 インバータ回路、100、111 パワーモジュール、101、102、103、104 スイッチング素子、101a、102a、103a、104a ゲートパッド、101b、102b、103b、104b ソースパッド、101c、102c、103c、104c、14、115b、115c、116b リードフレーム、101c1、103c1、14a 入力端子、102c1、104c1 出力端子、101d、102d、103d、104d、101e、102e、103e、104e 制御端子、115b1、116b1 アノード端子、115c1 カソード端子、101f、102f、103f、104f、101g、102g、103g、104g、101h、102h、103h、104h、115f、116f ボンディングワイヤ、100x 第三面、100y 第四面、100z1 第一面、100z2 第二面、108 平滑リアクトル、109 出力コンデンサ、110 負荷、113 トランス、113a 1次側巻線、113b 2次側巻線、113c 本体部、113a1、113a1-1、113a1-2 引き出し部、113a2 巻回部、114 整流回路、115、116 ダイオード、115a、116a アノードパッド、200 直流電源、201、202 電源端子部、203 正極側接続部、204 負極側接続部、205、206 接続部、207 制御側接続部、208、209 接続部、210 モジュール接続部、211 トランス接続部、212 接続部、400、400a 基板、401 Xコンデンサ、402、403 Yコンデンサ、404 ヒューズ、405 電流センサ、406 制御回路、10 冷却器、10a 冷却面、11 樹脂、12 冷却板、13 絶縁紙、15a、15b 長さ、16a、16b 長さ、17 斜め部、18 電極部、19 チャック部、20a 折り曲げ端部、20b 出力折り曲げ端部、21、22 折り曲げ部、23 ねじ、24 ねじ受け部、1000 巻回軸、1001 下コア、1002 上コア、1003 巻線部
図1
図2
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図6
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図9
図10
図11
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図24