(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151750
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241018BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20241018BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20241018BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20241018BHJP
H03K 17/687 20060101ALN20241018BHJP
H03K 17/695 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 C
H03K17/082
H03K17/08 C
H03K17/687 E
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065394
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森▲崎▼ 知治
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM02
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA01
5H770HA03X
5H770JA10X
5H770LA05X
5H770LB07
5J055AX34
5J055BX16
5J055CX20
5J055CX28
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX59
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EY29
5J055EZ03
5J055EZ14
5J055FX05
5J055FX13
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチング素子の短絡の誤判定を防止し、短絡検出時間を短くする電力変換装置を提供する。
【解決手段】第一主電極と第二主電極との間に流れる電流をオンオフ制御するゲートを有する半導体スイッチング素子を備えた電力変換装置において、カソードが第一主電極に接続された第一ダイオードと、アノードが第一ダイオードのアノードと接続され、カソードがゲートに接続された第二ダイオードと、第一ダイオードのアノードと第二ダイオードのアノードとの接続点に、第一ダイオードのアノードおよび第二ダイオードのアノードからそれぞれのカソード方向に電流を供給する電流源とを備え、第一ダイオードと第二アノードの接続点の電圧が閾値電圧より高いときに半導体スイッチング素子が短絡していると判定し、半導体スイッチング素子のゲートをオフ電圧にするよう構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主電極と第二主電極とゲートとを備えた半導体スイッチング素子の前記第二主電極を基準とする前記ゲートの電圧を制御することにより、前記第一主電極と前記第二主電極との間に流れる電流をオンオフ制御して直流電力と交流電力との間の電力変換を行う電力変換装置において、
カソードが前記第一主電極に接続された第一ダイオードと、アノードが前記第一ダイオードのアノードと接続され、カソードが前記ゲートに接続された第二ダイオードと、
前記第一ダイオードのアノードと前記第二ダイオードのアノードとの接続点に、前記第一ダイオードのアノードおよび前記第二ダイオードのアノードからそれぞれのカソード方向に電流を供給する電流源と、
前記半導体スイッチング素子の前記ゲートの電圧を制御する駆動部と、前記半導体スイッチング素子が短絡しているか否かを判定する短絡判定部と、を備え、
前記短絡判定部は前記第一ダイオードと前記第二ダイオードの接続点の電圧が閾値電圧よりも高いときに前記半導体スイッチング素子が短絡していると判定し、
前記駆動部は、前記短絡判定部において短絡していると判定した場合に、前記ゲートの電圧を前記半導体スイッチング素子がオフする電圧に設定する電力変換装置。
【請求項2】
前記閾値電圧は、前記半導体スイッチング素子がオンを開始するときの前記ゲートのミラー電圧と、前記第二ダイオードの導通時の降下電圧との和よりも高い電圧に設定された請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
第一主電極と第二主電極とゲートとを備えた半導体スイッチング素子の前記第二主電極を基準とする前記ゲートの電圧を制御することにより、前記第一主電極と前記第二主電極との間に流れる電流をオンオフ制御して直流電力と交流電力との間の電力変換を行う電力変換装置において、
カソードが前記第一主電極に接続された第一ダイオードと、前記第一ダイオードのアノードと前記ゲートの間に接続された抵抗素子と、
前記半導体スイッチング素子の前記ゲートの電圧を制御する駆動部と、前記半導体スイッチング素子が短絡しているか否かを判定する短絡判定部と、を備え、
前記短絡判定部は前記第一ダイオードのアノードの電圧が閾値電圧よりも高いときに前記半導体スイッチング素子が短絡していると判定し、
前記駆動部は、前記短絡判定部において短絡していると判定した場合に、前記ゲートの電圧を前記半導体スイッチング素子がオフする電圧に設定する電力変換装置。
【請求項4】
前記閾値電圧は、前記半導体スイッチング素子がオンを開始するときの前記ゲートのミラー電圧よりも高く設定された請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第一ダイオードのアノードと前記ゲートの間に前記抵抗素子と直列に、前記ゲート側がアノードとなるよう接続された第三ダイオードを備えた請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記閾値電圧は、前記半導体スイッチング素子がオンを開始するときの前記ゲートのミラー電圧から、前記第三ダイオードの導通時の降下電圧を引いた電圧値よりも高く設定された請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第一ダイオードは、前記半導体スイッチング素子が正常な状態のときに、前記第一ダイオードのアノードの電圧が前記閾値電圧以下に維持されるように予め定めた容量値以上の寄生容量をアノードとカソードの間に有するダイオードである請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第一ダイオードと並列に接続されたコンデンサを有する請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記半導体スイッチング素子の材料が、ワイドバンドギャップ半導体である請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記半導体スイッチング素子の材料が、ワイドバンドギャップ半導体である請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記半導体スイッチング素子の材料が、ワイドバンドギャップ半導体である請求項8に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などのモータを駆動するための電力変換装置において、電力変換装置の主要部品である半導体スイッチング素子の短絡検出方法が種々提案されている。例えば特許文献1に開示されているように、半導体スイッチング素子の短絡検出機能として、半導体スイッチング素子の高電位側の電圧が、通常のオン状態では発生し得ない異常な高電圧となっているか否かを検出し短絡と判定する方法が知られている。これをDESAT方式と呼び、この方式では、半導体スイッチング素子のゲート電圧が上昇し始めてからミラー電圧に達するまでの間はドレイン電圧が高いため、この間は短絡の誤判定を防止する必要がある。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1では、ゲート電圧が上昇し始めてから所定の時間は短絡判定を行わないことで、誤判定を防止する方法が示されている。しかしこの方法では、半導体スイッチング素子のばらつきにより、半導体スイッチング素子のターンオン速度が速い場合、故障で短絡電流が流れ始めているにも関わらず、短絡判定が行われていない時間帯が発生してしまい、結果として半導体スイッチング素子に生じる短絡損失が増加する。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2では、ゲート電圧を判定する回路を備え、ゲート電圧がオン電圧に達した後に短絡判定に移行する方法が示されている。この方法ではターンオン速度に応じて短絡判定が開始されることから、所定の時間を設ける特許文献1の方法よりも相対的に短い時間での短絡検出に期待ができる。しかし、一般的に電圧の判定に用いられるコンパレータは、構成部品にもよるが概ね100~200nsの反応の遅れを有している。この遅れはそのまま短絡損失を増加させる要因となることから、半導体スイッチング素子を短絡から保護する観点ではまだ短絡検出時間に改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5861787号
【特許文献2】特開2021-57976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
短絡をいち早く検出し保護する必要のある半導体スイッチング素子で、特に近年主流となりつつあり、短絡時により多くの電流を流す特徴を持ったワイドバンドギャップ半導体(SiC、GaNなど)がある。ワイドバンドギャップ半導体の場合には、上記短絡検出の遅れをさらに改善していくことが求められる。
【0007】
本願は、上記の課題を解決するものであり、半導体スイッチング素子のスイッチング動作において、短絡の誤判定を防止し、短時間で短絡を検出できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される電力変換装置は、第一主電極と第二主電極とゲートとを備えた半導体スイッチング素子の前記第二主電極を基準とする前記ゲートの電圧を制御することにより、前記第一主電極と前記第二主電極との間に流れる電流をオンオフ制御して直流電力と交流電力との間の電力変換を行う電力変換装置において、
カソードが前記第一主電極に接続された第一ダイオードと、アノードが前記第一ダイオードのアノードと接続され、カソードが前記ゲートに接続された第二ダイオードと、
前記第一ダイオードのアノードと前記第二ダイオードのアノードとの接続点に、前記第一ダイオードのアノードおよび前記第二ダイオードのアノードからそれぞれのカソード方向に電流を供給する電流源と、
前記半導体スイッチング素子の前記ゲートの電圧を制御する駆動部と、前記半導体スイッチング素子が短絡しているか否かを判定する短絡判定部と、を備え、
前記短絡判定部は前記第一ダイオードと前記第二ダイオードの接続点の電圧が閾値電圧より高いときに前記半導体スイッチング素子が短絡していると判定し、
前記駆動部は、前記短絡判定部において短絡していると判定した場合に、前記ゲートの電圧を前記半導体スイッチング素子がオフする電圧に設定するよう構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される電力変換装置によれば、誤判定を防止でき、短時間で短絡を検出できる電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【
図2】実施の形態1による電力変換装置の要部の一例を示す回路図である。
【
図3】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときのオン時の動作を説明する線図である。
【
図4】比較例の電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときのオン時の動作を説明する線図である。
【
図5A】比較例の電力変換装置の、半導体スイッチング素子が短絡破壊したときのオン時の動作を説明する線図である。
【
図5B】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が短絡状態のときの動作を説明する線図である。
【
図6】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときの動作であって、
図3よりもターンオン速度が速いときの動作を説明する線図である。
【
図7】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときの動作であって、
図3よりもターンオン速度が遅いときの動作を説明する線図である。
【
図8】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が短絡状態のときの動作であって、
図5Bよりもターンオン速度が速いときの動作を説明する線図である。
【
図9】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が短絡状態のときの動作であって、
図5Bよりもターンオン速度が遅いときの動作を説明する線図である。
【
図10】実施の形態1による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときの動作であって、第一ダイオード22の寄生容量の違いによる動作を説明する線図である。
【
図11】実施の形態1による電力変換装置の要部の別の例を示す回路図である。
【
図12】実施の形態2による電力変換装置の要部の一例を示す回路図である。
【
図13】実施の形態2による電力変換装置の要部の別の例を示す回路図である。
【
図14】実施の形態2による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が正常なときのオン時の動作を説明する線図である。
【
図15】実施の形態2による電力変換装置の、半導体スイッチング素子が短絡状態のときの動作を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力変換装置20の概略構成を示す回路図、
図2は要部を示す回路図である。
図1に示すように、電力変換装置20は、回転電機Mを制御対象とし、三相分(U相、V相、W相)の上下アームの半導体スイッチング素子で構成される電力変換部10と、電力変換部10の各半導体スイッチング素子をオンオフ制御する駆動制御部21とを備えている。さらに上アームの半導体スイッチング素子の高電位側(ドレイン)と、下アームの半導体スイッチング素子の低電位側(ソース)に並列に電気的に接続され、電力変換装置20に印加される直流電源電圧を平滑化する平滑コンデンサCを備える。電力変換装置20は、直流電源30から供給される直流電力を交流電力に変換して制御対象の回転電機Mに供給する。
【0012】
以下では半導体スイッチング素子として、主電極がドレインとソースでありゲートの電圧を制御してドレインとソースの間に流れる電流を制御するMOSFETを例に説明するが、主電極がコレクタとエミッタでありゲートの電圧を制御してコレクタとエミッタの間に流れる電流を制御するIGBTなどにも適用可能である。本願においては、ドレインまたはコレクタを第一主電極12(
図2参照)、ソースまたはエミッタを第二主電極13(
図2参照)と称することもある。すなわち、本願の半導体スイッチング素子11は、第一主電極12と第二主電極13とゲート14とを備え、本願の電力変換装置は、半導体スイッチング素子11の第二主電極13を基準とするゲート14の電圧を制御することにより、第一主電極12と第二主電極13との間に流れる電流をオンオフ制御して直流電力と交流電力との間の電力変換を行う装置である。
【0013】
続いて、
図2を用いて、実施の形態1による電力変換装置の詳細な構成について説明する。本実施の形態1において三相および上下アームの制御は基本的に同じ構成のため、ここではそのうちU相の下アームについて述べる。電力変換部10のU相下アームには半導体スイッチング素子11を備え、駆動制御部21は、半導体スイッチング素子11のゲート14の電圧を制御して半導体スイッチング素子11をオンオフ制御する駆動部28と、ゲート抵抗29のほか、半導体スイッチング素子11の第一主電極(ドレイン)12にカソードが接続された第一ダイオード22と、半導体スイッチング素子11のゲート14にカソードが接続された第二ダイオード23と、第一ダイオード22のアノードと第二ダイオード23のアノードとが接続された配線24(第一ダイオード22のアノードと第二ダイオード23のアノードの接続点)と、配線24に接続され半導体スイッチング素子11の短絡を判定し、短絡と判定した場合には駆動部28にゲートのオフ指令を出力する短絡判定部25と、配線24に接続され第一ダイオード22のアノードおよび第二ダイオード23のアノードからそれぞれのカソードの方向(順方向)に電流を供給する電流源26を備える。
【0014】
なお
図2に示す通り、配線24の線上(電流源26と第一ダイオード22と第二ダイオード23の接続点の間)に外乱ノイズの影響を抑制するフィルタ27を備えることもあるが、実装するかしないか、および配線24のどの位置に実装するかは任意である。
【0015】
半導体スイッチング素子11は、シリコン(Si)、あるいは炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体を材料としたトランジスタである。半導体スイッチング素子11のゲート電圧について、半導体スイッチング素子11をオンするためには、ゲートに半導体スイッチング素子11のソースを基準とする所定の電圧以上の電圧を印加する必要があり、この所定の電圧をミラー電圧という。ミラー電圧は半導体スイッチング素子11の種類および回転電機Mに流す電流量にも依存するが、ここでは例として10Vとする。
【0016】
半導体スイッチング素子11のドレイン電圧について、ゲートがミラー電圧未満では直流電源電圧と同程度が印加されている。この直流電源電圧は、電動自動車に用いられる直流電源電圧では例えば400Vである。一方、ゲート電圧がミラー電圧以上の領域では、半導体スイッチング素子11がオンして回転電機Mに流す電流とドレインのオン抵抗の積で決まる電圧に低下する。本実施の形態1において回転電機Mに流す最大電流に対し、ここでは例として10Vとする。
【0017】
第一ダイオード22と第二ダイオード23の接続の構成から、配線24の電圧はゲート電圧とドレイン電圧のいずれか低い方で決まることになる。例えば、ゲートがミラー電圧より低い場合、ドレイン電圧は400Vのため、第二ダイオード23がオンし、第二ダイオード23のオン電圧(導通時の降下電圧)が0.5Vとすると、配線24は少なくとも10.5V以下である。一方、ゲートがミラー電圧より高い場合、半導体スイッチング素子11がオンしてドレイン電圧が10V以下に低下し、第一ダイオード22がオンし、第一ダイオード22のオン電圧を0.5Vとすると、配線24は少なくとも10.5V以下である。
【0018】
したがって、短絡判定部25において、配線24の電圧を監視しておき、配線24の電圧が正常動作では達することが無い電圧になったことを検知した場合に、半導体スイッチング素子11が短絡状態であると判定することができる。すなわち、短絡状態であると判定する電圧を閾値電圧とすると、上記の例では、ゲートのミラー電圧と第二ダイオード23の導通時の降下電圧であるオン電圧との和10.5Vより少し高い例えば10.8Vを閾値電圧とすればよい。短絡判定部25が、配線24の電圧が閾値電圧よりも高い電圧を検知した場合、短絡と判定し、駆動部28がゲート電圧をオフの電圧に設定することにより、半導体スイッチング素子11に短絡電流が流れるのを阻止することができる。
【0019】
電流源26について、供給する電流量は、半導体スイッチング素子11の正常時の駆動に影響を与えない範囲で任意である。標準的に用いられる電流量は1mA程度である。なお電流源26は定電流源である必要はなく、ゲート電圧より高い任意の電源から抵抗素子を介して、半導体スイッチング素子11の正常時の駆動に影響を与えない範囲の電流量を供給する方法でもよい。
【0020】
まず、
図3に半導体スイッチング素子11が短絡状態ではない正常な状態における半導体スイッチング素子11がオフからオンに切り替わるときの、ゲート電圧、ドレイン電圧、ドレイン電流および配線24の電圧を示す。ゲート電圧、ドレイン電圧、ドレイン電流はそれぞれ実線で示しており、配線24の電圧は実線で示すゲート電圧とともに破線で示している。以降の
図4~
図10においても同様である。以下では、短絡と判定する閾値電圧は、前述したミラー電圧、ドレイン電圧およびダイオードのオン電圧から決まる10.5Vに対し、ダイオードのオン電圧のばらつきを考慮して10.5Vよりも少し高い10.8Vとして説明する。ここでは、半導体スイッチング素子11のミラー電圧がオン時のドレイン電圧と同じか高い場合を説明するが、半導体スイッチング素子11のミラー電圧がオン時のドレイン電圧よりも低い場合であれば、閾値電圧を、オン時のドレイン電圧と第一ダイオードのオン電圧の和より高い電圧に設定するのが望ましい。
【0021】
<時刻t0~時刻t1>
駆動部28により半導体スイッチング素子11のゲート電圧の上昇が開始され、時刻t1でゲート電圧がミラー電圧10Vに到達する。配線24はゲート電圧に対し第二ダイオード23のオン電圧分のオフセットを持って同時に上昇するため、時刻t1では10.5Vに到達する。この間ドレイン電圧は400Vのままである。
【0022】
<時刻t1~時刻t2>
ゲート電圧がミラー電圧に到達したため半導体スイッチング素子11がオンし、ドレイン電圧が急降下を開始する。この間ゲート電圧はミラー電圧10Vに固定され、この区間をミラー区間と称する。なおドレイン電圧が、オン電圧である10Vまで低下するには時刻t2よりもやや時間がかかり、時刻t22で到達する。これはミラー電圧を通過したt2直後はまだ半導体スイッチング素子11のオン抵抗が比較的高い状態で、ドレイン電圧が十分低下しきれないためである。
【0023】
ここで着目すべき点は、ドレイン電圧がまだオン電圧の10Vまで低下していないにも関わらず、配線24の電圧が時刻t1のドレイン電圧の急降下と同時に低下し始める点である。これは、
図2には図示しない、第一ダイオード22のアノードとカソード間に生じる寄生容量(Cst)が関係している。ドレイン電圧の急降下によって第一ダイオード22のカソードに生じる急峻な電圧変動(dV/dt)とCstの積に相当する放電電流が、配線24から半導体スイッチング素子11の第一主電極12の向きに発生するためで、この放電電流が電流源26の電流量より多い場合には、時刻t1で配線24が低下を開始する。
【0024】
例えば、寄生容量Cstが10pF、電圧変動dV/dtが1kV/μsの場合、放電電流は10mAとなることから、電流源26が供給する電流量が1mAの場合には、差に相当する9mAの放電効果が得られる。この放電により、配線24の電圧が、ドレイン電圧の低下開始と同時に低下する。
【0025】
図4に第一ダイオード22に寄生容量が無いとしたときの配線24の電圧を示す。
図4に示す通り、時刻t1~時刻t2の間に配線24の電圧低下が無いことから、第一ダイオード22がオンして配線24の電圧が低下し始める時刻はミラー電圧を通過した時刻t2より遅く、電圧が低下し始める時の電圧はミラー区間の10.5Vより高い11.3Vであることが分かる。これは寄生容量Cstによる放電の作用が無いとすると、短絡判定部25が短絡と判定する閾値電圧が10.8Vでは誤判定してしまうことを示しており、この場合は閾値電圧を11.3V以上に設定する必要がある。
【0026】
後述するが、短絡をいち早く検出し半導体スイッチング素子11を保護するためには、短絡判定の閾値電圧は低い方が望ましく、寄生容量Cstによる放電は検出時間を短縮する効果をもたらすと言える。
【0027】
図5Aおよび
図5Bに、半導体スイッチング素子11が短絡したときの動作を示す。
図5Aは本実施の形態1の電力変換装置の動作の比較例として、短絡検出せずに短絡させ続けたときの動作である。例えば半導体スイッチング素子11の第一主電極12が、何らかの理由で400Vの直流電圧源に電気的に短絡している場合を想定する。この時ゲート電圧が上昇するとともに、短絡電流もゲート電圧とともに上昇する。短絡電流は回転電機Mに流す最大電流をはるかに超えた大電流となり、いずれ半導体スイッチング素子11の限界値を超えて復旧が困難な短絡破壊状態に至る。この限界値に至る時刻t13とすると、短絡保護のためには時刻t13より短い時間で短絡検出しゲート電圧をオフして短絡電流を遮断する必要がある。
【0028】
図5Bは、実施の形態1による電力変換装置の動作を示す図であり、半導体スイッチング素子11が短絡して、短絡判定部25が短絡と判定し、駆動部28がゲート電圧をオフとしたときの動作を示す。ゲート電圧が上昇するとともに、配線24の電圧もゲート電圧とともに上昇する。半導体スイッチング素子11が短絡している場合、配線24の電圧は、半導体スイッチング素子11が正常な場合の
図3とは異なり、ミラー電圧の10.5Vに第二ダイオード23のオン電圧を加えた10.5V以上まで上昇する。ここでは短絡と判定する閾値電圧を10.8Vとしているので、配線24の電圧が10.8Vに達した時刻t11で短絡と判定し、それと同時に駆動部28がゲート電圧をオフの電圧に下げる。これによりドレイン電流は下がる。本実施の形態1において我々が得た結果として、時刻t1は575ns、配線24の電圧が短絡判定の閾値電圧10.8Vに到達する時刻t11すなわち短絡検出時間は596nsであった。すなわち検出遅れ時間は21nsと、高速で検出できる。
【0029】
次に、ターンオン速度の違いによる動作を説明する。
図6および
図7は正常動作時の挙動、
図8および
図9は短絡時の挙動を示している。まず正常動作時の挙動として、
図6は、
図3に対してターンオン速度が30%高まった状態、
図7は、同じく
図3に対してターンオン速度が30%低下した状態の挙動を示している。図に示す通り、ターンオン速度、すなわちゲート電圧の上昇速度に応じて配線24の電圧が追従していることと、時刻t1にて配線24の電圧が低下に転じ、閾値電圧に達しないため、誤判定が防止できることが分かる。
【0030】
次に、短絡動作の挙動として、
図8は、
図5Bに対してターンオン速度が30%高まった状態、
図9は、同じく
図5Bに対してターンオン速度が30%低下した状態の挙動を示す。いずれの場合も時刻t1でゲートが10.5Vに到達した直後の時刻t11まで、配線24の電圧が上昇し、10.8Vに達したときに短絡検出できることが分かる。
【0031】
下表1に、短絡検出するときの挙動を示している
図7、
図8、
図9の時刻t1と時刻t11をまとめる。ターンオン速度に応じて時刻t1~時刻t11に相当する検出遅れ分も若干量変化することから、どのようなターンオン速度を狙った駆動制御を行うかにより効果も増減するが、従来技術で生じる検出遅れ分100~200nsと比較すると十分短く、概ねターンオンを1μsかそれ以下のオーダーで駆動制御を行う場合には、従来技術に対して大きな効果を発揮する。
【0032】
【0033】
また表2は、本実施の形態1において、短絡判定の閾値電圧を変化させたときの短絡検出時間をまとめたものである。閾値電圧が低いほど配線24の電圧が閾値電圧に到達しやすくなり、結果として短絡検出時間が短くなる。
【0034】
【0035】
図10は寄生容量Cstの違いによる放電量の違いによる配線24の電圧の推移を図示したものである。前述のように、第一ダイオード22に生じる急峻な電圧変動dV/dtと寄生容量Cstによる配線24の放電は、短絡判定の閾値電圧を下げることを容易にし、短絡検出時間の短縮に貢献する。
【0036】
図10に示す通り、本実施の形態1において我々の装置では、半導体スイッチング素子11が正常な状態において、時刻t1以降に誤判定せず配線24の電圧が閾値電圧より低い電圧に維持されるためには、概ね10pF以上の寄生容量が必要と結論付けた。ただし、半導体スイッチング素子11の仕様により、必要な寄生容量の値は異なると考えられる。したがって、半導体スイッチング素子11の仕様が決まれば、半導体スイッチング素子11が正常な状態において、
図10のような特性を取得し、配線24の電圧が閾値電圧より低い電圧に維持されるのに必要な寄生容量の値を予め決定すればよい。この結果は、どのようなダイオードを選定するか重要な要素となることを示しており、例えば第一ダイオード22は寄生容量が比較的大きいとされるツェナータイプとすることも可能である。
【0037】
あるいは、第一ダイオード22の寄生容量が、配線24の電圧が閾値電圧より低い電圧に維持されるのに必要な容量よりも小さい場合、
図11に示すように、第一ダイオード22に並列に付加コンデンサ40を備えるようにして、第一ダイオードの寄生容量と合わせた容量値が配線24の電圧が閾値電圧より低い電圧に維持されるのに必要な容量以上となるようにしてもよい。
【0038】
実施の形態2.
図12は実施の形態2による電力変換装置20の要部を示す回路図である。電力変換部10のU相下アームには半導体スイッチング素子11を備え、駆動制御部21は、半導体スイッチング素子11のゲート14の電圧を制御して半導体スイッチング素子11をオンオフ制御する駆動部28と、ゲート抵抗29のほか、半導体スイッチング素子11の第一主電極(ドレイン)12にカソードが接続された第一ダイオード22と、半導体スイッチング素子11のゲート14に一端が接続された抵抗23bと、第一ダイオード22のアノードと抵抗23bのゲート14とは異なる方の一端とが接続された配線24(第一ダイオード22のアノードと抵抗23bの接続点)と、配線24に接続され半導体スイッチング素子11の短絡を判定し、短絡と判定した場合には駆動部28にゲートのオフ指令を出力する短絡判定部25とを備える。以下、電力変換装置としての基本的な構成と制御方法について、実施の形態1と同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0039】
実施の形態1と同様に、
図12に示す配線24の線上に備えられたフィルタ27は、実装するかしないか、および配線24のどの位置に実装するかは任意である。
【0040】
実施の形態1との違いは、第二ダイオード23が抵抗23bに置き換わり、電流源26が備わっていないことであるが、この構成でも実施の形態1と同程度の短絡検出時間が期待できる。
【0041】
具体的に、第一ダイオード22と抵抗23bの接続の構成から、配線24の電圧がどのように決定されるか説明する。ここでは実施の形態1と同様にゲートのミラー電圧を10Vとし、オン状態のドレイン電圧を10Vとして説明する。
【0042】
例えば、ゲートがミラー電圧より低い場合、電流源26がなくても、抵抗23bによりゲート電圧の上昇に沿って配線24の電圧を持ち上げることができ、その間ドレイン電圧は400Vのため、配線24とゲートはほぼ同電位で推移する。つまりミラー電圧が10Vのため配線24の電圧も少なくとも10V以下である。
【0043】
一方、ゲートがミラー電圧より高い場合、半導体スイッチング素子11がオンしてドレイン電圧が10V以下に低下し、第一ダイオード22がオンし、第一ダイオード22のオン電圧を0.5Vとすると、配線24は少なくとも10.5V以下である。
【0044】
仮に抵抗23bが無く、ゲートと配線24が直接接続されている場合を想定すると、ゲートがミラー電圧に達し第一ダイオード22がオンした後、ゲート電圧が更に上昇を続けることでゲートとドレインが第一ダイオード22を介して導通してしまい、半導体スイッチング素子11の所望のゲート駆動が困難となる。よって抵抗23bは、半導体スイッチング素子11がオンしている時のゲートとドレイン間に生じる導通電流を制限し、半導体スイッチング素子11のゲート駆動を継続させる役割がある。一方で、抵抗値が大きすぎると、
図12には図示していない配線24の寄生容量と抵抗23bとにより生じるフィルタ効果で、ゲートがターンオンする際に、配線24がゲート電圧に沿った上昇をしにくくなる。これは、配線24が、短絡と判定される閾値電圧に達する時刻が遅くなることを示しており望ましくない。従って抵抗23bの抵抗値は、導通電流を制限し、スイッチング素子11のゲート駆動を継続させうる範囲でなるべく小さい値に設定するのが望ましい。
【0045】
ここではゲートと配線24を一つの抵抗23bで接続する例を示したが、
図13に示すように、抵抗23bと直列にゲートに近い方がアノードとなるよう第三ダイオード23cを接続する構成でも良い。この構成では配線24からゲートの方向への電流を防止できるため、例えばゲートをオフする際に、配線24に接続される図示しない他の回路から、ゲートのオフを妨げるような逆流電流が懸念される場合には有効となる。
【0046】
このことから実施の形態1と同様に、短絡判定部25において、配線24の電圧を監視しておき、配線24の電圧が正常動作では達することが無い電圧になったことを検知した場合に、半導体スイッチング素子11が短絡状態であると判定することができる。すなわち、短絡状態であると判定する電圧を閾値電圧とすると、上記の例では、10.5Vより少し高い例えば10.8Vを閾値電圧とすればよい。短絡判定部25が、配線24の電圧が閾値電圧よりも高い電圧を検知した場合、短絡と判定し、駆動部28がゲート電圧をオフの電圧に設定することにより、半導体スイッチング素子11に短絡電流が流れるのを阻止することができる。
【0047】
上記の例は、ミラー電圧から決まる配線24の電圧より、オン状態のドレイン電圧から決まる配線24の電圧が高いことから閾値電圧を10.8Vとしたが、半導体スイッチング素子11の種類あるいは回転電機Mに流す最大電流量によっては、ミラー電圧から決まる電圧の方が大きくなることも想定される。
【0048】
例としてオン状態のドレイン電圧が8Vであったと仮定すると、半導体スイッチング素子11がオン状態の配線24は少なくとも8.5V以下である。従って、配線24の電圧が正常動作で達しうる電圧はミラー電圧から決まる10Vであり、閾値電圧を10Vかそれ以上とすればよい。いずれにせよ実施の形態1も含めて総じて言えることは、少なくとも閾値電圧はミラー電圧から決まる配線24の最大電圧より高く設定されることである。なお、
図13に示す、抵抗23bに直列に第三ダイオード23cが接続された構成にあっては、閾値電圧を、ミラー電圧から第三ダイオード23cの導通時の降下電圧を引いた電圧値よりも高い電圧に設定すれば良い。
【0049】
図14は本実施の形態2における、半導体スイッチング素子11が短絡状態ではない正常な状態における半導体スイッチング素子11がオフからオンに切り替わるときの、ゲート電圧、ドレイン電圧、ドレイン電流および配線24の電圧を示す。ゲート電圧、ドレイン電圧、ドレイン電流はそれぞれ実線で示しており、配線24の電圧は実線で示すゲート電圧とともに破線で示している。以降の
図15においても同様である。以下では、短絡と判定する閾値電圧は、前述したミラー電圧、ドレイン電圧およびダイオードのオン電圧から決まる10.5Vに対し、ダイオードのオン電圧のばらつきを考慮して10.8Vとして説明する。
【0050】
時刻t0~時刻t1の間、駆動部28により半導体スイッチング素子11のゲート電圧が上昇し、時刻t1でゲート電圧がミラー電圧10Vに到達する。配線24はゲート電圧にほぼ沿うように上昇するため、時刻t1では10Vに到達する。この間ドレイン電圧は400Vのままである。
【0051】
時刻t1以降、ゲート電圧がミラー電圧に到達したため半導体スイッチング素子11がオンし、ドレイン電圧が急降下を開始する。このとき配線24の電圧も時刻t1のドレイン電圧の急降下と同時に低下し始める。これは実施の形態1と同様に、
図12には図示しない、第一ダイオード22のアノードとカソード間に生じる寄生容量(Cst)と、ドレイン電圧の急降下によって第一ダイオード22のカソードに生じる急峻な電圧変動(dV/dt)との積に相当する放電電流で配線24が電圧降下するためで、この放電電流が抵抗23bを介してゲートから配線24に供給される電流量を上回る場合には、
図14のように時刻t1で配線24が低下を開始する。このようにして本実施の形態2においても短絡と誤判定することを防止している。
【0052】
図15に、半導体スイッチング素子11が短絡したときに短絡判定部25が短絡と判定し、駆動部28がゲート電圧をオフとしたときの動作を示す。ゲート電圧が上昇するとともに、配線24の電圧もゲート電圧とともに上昇する。半導体スイッチング素子11が短絡している場合、配線24の電圧は、半導体スイッチング素子11が正常な場合の
図14とは異なり10V以上まで上昇する。ここでは短絡と判定する閾値電圧を10.8Vとしているので、配線24の電圧が10.8Vに達した時刻t11で短絡と判定し、それと同時に駆動部28がゲート電圧をオフの電圧に下げる。これによりドレイン電流は下がる。本実施の形態2において我々が得た結果として、時刻t1は575ns、配線24の電圧が短絡判定の閾値電圧10.8Vに到達する時刻t11すなわち短絡検出時間は625nsであった。すなわち検出遅れ時間は50nsである。
【0053】
実施の形態1の検出遅れ時間21nsと比べれば得られる効果が低下しているが、これは実施の形態1の配線24がゲート電圧より第二ダイオード23のオン電圧分のプラスのオフセットを持って上昇するのに対し、本実施の形態2ではゲート電圧とほぼ同電位で配線24の電圧が上昇するため、同じ閾値電圧10.8Vに到達するのに時間がかかるためである。しかしこれは前述の通りミラー電圧とオン状態のドレイン電圧をいずれも10Vとし、ドレイン電圧から決まる閾値電圧として10.8Vに設定したためであり、オン状態のドレイン電圧が10Vより低い場合には閾値電圧を下げることができるため、条件によっては実施の形態1と同程度の短絡検出時間も可能となる。
【0054】
以上をまとめると、半導体スイッチング素子の第一主電極(ドレイン)に半導体スイッチング素子側がカソードとなるよう接続された第一ダイオードと、第一ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のゲートとの間に、抵抗素子または、ゲート側がカソードとなるよう接続された第二ダイオードを備え、第一ダイオードのアノードの電圧が閾値電圧よりも高い場合に短絡と判定する機能とを備えることで、通常スイッチング動作において短絡と誤判定することを防止しつつ、ゲート電圧検出回路のような遅延要素のある回路を用いずともターンオン速度のばらつきに応じた短時間での短絡の検出を実現する。なお、第一ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のゲートとの間に、ゲート側がカソードとなるよう接続された第二ダイオードを備える場合は、第一ダイオードのアノードおよび第二ダイオードのアノードからそれぞれのカソード方向に電流を供給する電流源が必要である。
【0055】
短絡検出時間をさらに短くする工夫として、ゲートがミラー電圧に到達した直後に前記配線がダイオードの寄生容量に充電されていた電荷の放電により電圧低下するようにダイオードを選定し、短絡と判定するための閾値電圧をミラー電圧+ダイオードの導通電圧に設定する。
【0056】
これら技術は、半導体スイッチング素子が従来のシリコン(Si)を主体としたIGBT(Insulated―Gate―Bipolar―Transistor)に適用しても良いが、今後主流とされる炭化シリコン(SiC)あるいは窒化ガリウム(GaN)を主体とした、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体を材料とした半導体スイッチング素子であるMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)へ適用することでより効果を奏する。理由は、ワイドバンドギャップ半導体はそのオン抵抗の低さから、短絡故障時に短絡電流が急激に流れ、保護するためには、いち早く短絡検出を完了させることが求められるためである。
【0057】
以上、本願で説明した電力変換装置によれば、半導体スイッチング素子の正常なスイッチング動作において短絡と誤判定することを防止し、かつ半導体スイッチング素子が短絡した場合の短絡判定にかかる遅延時間を改善し検出時間の短い短絡判定回路を備えた電力変換装置を提供することができる。
【0058】
本願には、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
11 半導体スイッチング素子、12 第一主電極、13 第二主電極、14 ゲート、22 第一ダイオード、23 第二ダイオード、23b 抵抗、23c 第三ダイオード、24 配線、25 短絡判定部、26 電流源、28 駆動部、40 付加コンデンサ