(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151751
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】位置推定装置及び交通管制システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241018BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G08G1/01 C
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065395
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 佳希
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴之
(72)【発明者】
【氏名】森 考平
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成晃
(72)【発明者】
【氏名】守田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB33
2F129BB66
2F129EE78
2F129EE81
2F129EE94
2F129FF02
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2F129FF65
2F129FF71
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG28
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
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5H181CC12
5H181CC14
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5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】車両に衛星測位センサを搭載していなくとも、所望の車両の動作制御を行うための自車両の現在位置、姿勢に関する情報を高精度で推定する。
【解決手段】位置推定装置は、移動体の位置、角度及び速度を少なくとも含む第1の移動体情報と移動体周辺の道路情報を含む環境情報とを、受信する情報受信部、第1の移動体情報及び環境情報を統合化して、統合環境情報を作成する認識部、移動体の位置情報を含む統合環境情報を移動体に送信する情報送信部、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置、角度及び速度を少なくとも含む第1の移動体情報と前記移動体周辺の少なくとも白線を含む道路情報を含む環境情報とを、複数の環境情報取得装置から受信する情報受信部、
受信した前記環境情報を統合化して、前記移動体の位置情報を含む統合環境情報を作成する認識部、
前記情報受信部で受信した前記第1の移動体情報及び前記環境情報と、前記認識部で作成された前記統合環境情報とを記録する情報記録部、及び
前記認識部で作成された前記統合環境情報を前記移動体に送信する情報送信部を備えた位置推定装置。
【請求項2】
前記情報受信部は、
前記移動体から少なくとも目標経路、目標車速、位置、姿勢を含む第2の移動体情報を受信し、
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、最も高い信頼度を有する前記環境情報取得装置からの前記統合環境情報または前記第2の移動体情報を選択し、
前記情報送信部は、前記信頼度比較部で選択された情報を前記位置情報として前記移動体に送信する、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記認識部の前記信頼度比較部は、
最も高い前記信頼度が予め設定された第1の基準値より小さい場合に、前記移動体の少なくとも前記位置情報を含む補正情報を作成し、選択された最も高い信頼度を有する前記環境情報取得装置からの前記統合環境情報または前記第2の移動体情報とともに出力する、請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記認識部は、
前記移動体の将来の位置を予測する車両位置予測部をさらに備え、
前記信頼度比較部において、最も高い前記信頼度が予め設定された第1の基準値以上の場合に、
前記車両位置予測部は、前記第2の移動体情報、地図情報及び前記情報記録部に記録されている走行経路履歴のうちのいずれかに基づいて、前記移動体の将来位置と前記目標経路とが一致するか否か予測し、前記移動体の将来位置と前記目標経路とが一致しないと予測した場合、前記移動体の少なくとも位置情報及び角度を含む補正情報を作成する、請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、前記環境情報取得装置の検知範囲を変更する指示を作成する検知範囲変更指示作成部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、前記算出された前記信頼度のうち最も高い前記信頼度が第2の基準値より小さいか否か比較し、
前記検知範囲変更指示作成部は、前記信頼度が第2の基準値よりも小さいと判定された場合、前記環境情報取得装置の検知範囲を変更する指示を作成する、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、前記移動体に確認動作を行う指示を作成する確認動作指示作成部と、前記確認動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたか確認する動作確認部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、前記算出された前記信頼度のうち最も高い前記信頼度が第3の基準値より小さいか否か比較し、
前記確認動作指示作成部は、前記信頼度が第3の基準値よりも小さいと判定された場合、前記信頼度を上げるための確認動作指示を作成し、
前記動作確認部は、前記確認動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたことを確認するとともに、
前記信頼度算出部は前記信頼度を再計算する、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の位置推定装置と、複数の前記環境情報取得装置と、前記移動体と、を備え、前記位置推定装置と複数の前記環境情報取得装置との間及び前記位置推定装置と前記移動体との間で通信が行われる交通管制システムであって、
前記移動体は、
前記位置推定装置から受信した前記位置情報に基づいて自己位置を取得するとともに、前記統合環境情報及び前記自己位置に基づいて走行する、交通管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、位置推定装置及び交通管制システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転技術の開発が盛んに行われている。自動運転を行ううえで、また自動運転に限らず、所望の車両の動作制御を行うためには、車両の現在位置、姿勢に関する情報を高精度で取得する必要がある。位置推定装置は、車両の現在位置、姿勢を推定する装置である。
【0003】
位置推定装置を用いて車両の現在位置、姿勢を推定する手法として衛星測位手法がある。これは、車両に搭載されている衛星測位装置を用いて位置推定を行うものである。しかし、衛星測位手法を用いる場合、衛星測位の不安定時において、センサ誤差を補正する必要がある。例えば、特許文献1では、位置推定する場合に、衛星測位手法のみでなく、地物と車両の相対位置を算出する手法、道路線形データなどの情報を用いるなどの他の方法を併用して、衛星測位センサの誤差を補正することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、自車両における衛星測位センサの誤差を衛星測位センサの誤差が少ない他車両から補完する技術が開示されている。衛星測位センサの誤差が少ない他車両から自車両の相対位置を車両間通信によって、リレー形式で自車両の推定位置の特定、補正を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7034379号公報
【特許文献2】特開2022-118535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衛星測位センサは高価であるものの、特許文献1に開示された技術においては、高価な衛星測位センサを車両に搭載していても他の手法との併用せざるを得ない場合がある。また、推測航法を用いて自己位置を推定する場合も、推定精度には限界がある。さらに、特許文献2に開示された技術においては、他車両のうち少なくとも1つの車両に高価な衛星測位センサが搭載されていなければ、精度よく安定的に車両の現在位置、姿勢を推定することはできない。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、車両に衛星測位センサを搭載していなくとも、所望の車両の動作制御を行うための自車両の現在位置、姿勢に関する情報を高精度で推定可能な位置推定装置及び交通管制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される位置推定装置は、
移動体の位置、角度及び速度を少なくとも含む第1の移動体情報と前記移動体周辺の少なくとも白線を含む道路情報を含む環境情報とを、複数の環境情報取得装置から受信する情報受信部、
受信した前記環境情報を統合化して、前記移動体の位置情報を含む統合環境情報を作成する認識部、
前記情報受信部で受信した前記第1の移動体情報及び前記環境情報と、前記認識部で作成された前記統合環境情報とを記録する情報記録部、及び
前記認識部で作成された前記統合環境情報を前記移動体に送信する情報送信部を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、車両に衛星測位センサを搭載していなくとも、所望の車両の動作制御を行うための自車両の現在位置、姿勢に関する情報を高精度で推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る交通管制システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る交通管制システムの各構成部の機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る位置推定装置のハードウェア構成図である。
【
図5】実施の形態2に係る交通管制システムの構成を示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る交通管制システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】実施の形態2に係る位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】信頼度の算出を説明するための俯瞰図で、
図8Aは車両が車線に沿って走行している例、
図8Bは車両が車線に対して斜めに向いている例である。
【
図10】信頼度に対応する補正情報について説明する図である。
【
図11】信頼度に対応する補正情報について説明する図である。
【
図12】実施の形態3に係る交通管制システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】実施の形態3に係る位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図14】車両の将来位置を予測する方法を説明するための図である。
【
図15】車両の将来位置を予測する方法を説明するための図である。
【
図16】車両の将来位置を予測する方法を説明するための図である。
【
図17】車両の将来位置を予測する方法を説明するための図である。
【
図18】実施の形態4に係る交通管制システムの構成を示す図である。
【
図19】実施の形態4に係る交通管制システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図20】実施の形態4に係る位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図21】環境認識装置の検知範囲を変更する指示を生成する方法を説明するための図で、
図21Aは調整前の状態を示す図、
図21Bは調整後の状態を示す図である。
【
図22】実施の形態5に係る交通管制システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図23】実施の形態5に係る位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図24】信頼度を確認する動作の指示生成方法を説明するための図で、
図24Aは車両後方から見た状態を示す図、
図24Bは車両側方から見た状態を示す図、
図24Cは、
図24Aにおいて確認動作後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願で開示される位置推定装置及び交通管制システムの実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では位置推定装置及び交通管制システムが適用される制御対象物体の移動体として自動車を例に挙げて説明する。また、各図中、同一符号は、同一または相当する部分を示すものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る位置推定装置及び交通管制システムについて図を用いて説明する。
<交通管制システムの構成>
図1は実施の形態1に係る交通管制システムの構成を示す図、
図2は交通管制システムを構成する各構成部の機能ブロック図である。交通管制システム1は、制御対象物体である車両3、車両3が走行する経路の路側に設置された環境認識装置4、及び環境認識装置4から車両3の周辺環境情報Xを受信し、周辺環境情報Xから統合環境情報Zaを生成して車両に送信する位置推定装置2を備える。
図1では環境認識装置4を1つのみ記載しているが、
図2で示すように環境認識装置4は複数であってもよい。また、
図1においてドットでハッチングされた破線内の領域は環境認識装置4の検知範囲Sを、車両3上下の実線は車線を、白抜きの破線は車線中央線を示している。
【0013】
<環境認識装置4の構成>
環境認識装置4は、環境情報取得部41であるセンサとしてカメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging:ライダー)及びミリ波レーダ等のうちから少なくとも1つと、通信部42として通信機とを具備する。
カメラは、撮影した画像から、車両3及び車両3の周辺の車線及び障害物の情報といった、車両3のおかれた環境を示す情報を取得する。
LiDARは、レーザを照射し、物体から反射して戻ってくるまでの時間差を検出することにより、検知範囲内の物体の位置を検出する。
ミリ波レーダは、ミリ波を照射し、その反射波を検出することで、検知範囲内に存在する物体の相対距離及び相対速度を測定し、その測定結果を出力する。
ソナーセンサは、超音波を自車両の周辺に照射し、周辺の物体から反射して戻ってくるまでの時間差を検出することにより、物体の存在する位置及び距離を検出する。
【0014】
環境認識装置4は、上述したセンサの検知範囲S内において車両3に関する情報、及びその他物体の形状、種別、位置、姿勢、速度などの情報をリアルタイムで取得するとともに、これらの情報を周辺環境情報Xとして位置推定装置2に送信する。なお、
図2では、2つの環境認識装置4それぞれが取得した周辺環境情報を周辺環境情報X1,X2として示している。
【0015】
<車両3の構成>
制御対象物体である車両3は、位置推定装置2から送信される情報を受信する情報受信部31、及び車両3の走行を制御する制御部32である車両走行システムを備えた車両である。また、車両3は位置推定装置2から送信される統合環境情報Zaに基づき、車両の自己位置を取得し、所望の動作制御を行う。なお、以後の説明では、車両3の内部での処理の詳細説明は省略する。
【0016】
<位置推定装置2の構成>
位置推定装置2は、車両3に関する情報として、各車両の制御物体情報と、車両が動作する周辺の環境情報を収集する。ここで、「制御物体情報」は、周辺環境情報Xから得られる環境認識装置4が認識した各車両の位置、姿勢(向き)及び速度が少なくとも含まれる。また、「環境情報」は、周辺環境情報Xから得られる少なくとも白線を含む道路情報であり、中心線、道路幅、白線、及び道路の曲率等が含まれる。
【0017】
位置推定装置2は、
図2に示されるように、環境認識装置4から送られてくる情報を受信する情報受信部21、取得した周辺環境情報Xを公知の技術であるセンサフュージョン技術により統合する認識部22、少なくとも送信先の車両3の位置、姿勢情報を含む統合した環境情報を車両3に送信する情報送信部23、及び少なくとも検知した車両の位置、姿勢情報、各判定結果、判定理由などを記録する情報記録部24を備える。
【0018】
情報受信部21は、1つまたは複数の環境認識装置4から周辺環境情報X(それぞれ、X1,X2,・・・)を受信する。認識部22ではそれぞれ受信した周辺環境情報Xを情報統合部221にて公知の技術を用いて統合する。統合された環境情報は少なくとも車両の種別、位置、角度を含む位置情報が付加されている。すなわち、統合された環境情報には車両の位置情報が含まれている。環境情報このように環境認識装置4が複数ある場合の周辺環境情報Xの統合は位置推定装置2の認識部22にて行われる。情報送信部23は認識部22で統合された統合環境情報Zaを車両3に送信する。
【0019】
位置推定装置2から送信された統合環境情報Zaを基に、車両3は自己の位置、姿勢を取得し、制御部32により所望の動作制御を行う。
【0020】
<位置推定装置2の動作>
次に、位置推定装置2の動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS101において、位置推定装置2は、周辺環境情報Xを収集する(周辺情報取集工程)。すなわち、位置推定装置2の情報受信部21は、路側に設置された環境認識装置4の環境情報取得部41であるセンサで取得した周辺環境情報Xを受信する。
【0021】
次に、ステップS102において、情報統合部221において各周辺環境情報Xを公知の技術により、統合する(情報統合工程)。これにより、複数の環境認識装置4からの物体情報を統合し、より精度の高い情報にすることができる。
【0022】
次に、ステップS103において、統合された周辺環境情報である統合環境情報Zaを各車両3に送信する。
位置推定装置2は
図3に示すフローを予め決められた周期(例えば1秒)で繰り返し実行する。
【0023】
このように、環境認識装置4で取得した周辺環境情報Xを位置推定装置2で統合化し、車両の位置情報を含む情報として受信することで、車両3は、衛星測位センサを搭載していなくとも、所望の動作制御を行うための自車両の現在位置、姿勢に関する情報を高精度で取得することが可能となる。
なお、環境認識装置4はトンネル内及びビルの間等に配置されていれば、衛星測位センサで取得し難い車両位置も本実施の形態では推定可能となる。
【0024】
<位置推定装置2のハードウェア構成>
次に、位置推定装置2のハードウェア構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る位置推定装置2を実現するハードウェア構成の例を示す図である。位置推定装置2は、プロセッサ201、主記憶装置としてのメモリ202、及び補助記憶装置203を具備する。プロセッサ201は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成される。
【0025】
メモリ202はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置で構成され、補助記憶装置203はフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置またはハードディスクなどで構成される。補助記憶装置203には、プロセッサ201により実行される所定のプログラムが記憶されており、プロセッサ201は、このプログラムを適宜読み出して実行し、各種演算処理を行う。この際、補助記憶装置203からメモリ202に上記所定のプログラムが一時的に保存され、プロセッサ201はメモリ202からプログラムを読み出す。実施の形態1に係る制御系の各種演算処理は、上記のようにプロセッサ201が所定のプログラムを実行することで実現される。プロセッサ201による演算処理の結果は、一旦メモリ202に記憶され、実行された演算処理の目的に応じて補助記憶装置203に記憶される。
【0026】
さらに、車両3及び環境認識装置4と通信するための通信モジュールとして、送信装置204、受信装置205を具備する。
【0027】
また、車両3及び環境認識装置4のハードウェア構成も、同様にそれぞれプロセッサ201、主記憶装置としてのメモリ202、及び補助記憶装置203を具備するようにしてもよい。
【0028】
以上のように、実施の形態1によれば、位置推定装置は、移動体である車両の位置、角度及び速度を少なくとも含む移動体情報である制御物体情報と車両周辺の道路情報を含む環境情報とを、周辺環境情報として、路側に設置された複数の環境認識装置から受信する情報受信部、環境情報を統合化して、統合環境情報を作成する認識部、受信部で受信した、制御物体情報及び環境情報と、認識部で作成された統合環境情報とを記録する情報記録部、及び認識部で作成された統合環境情報を、車両の位置情報を含む情報として移動体に送信する情報送信部を備えている。これにより、車両自身に衛星測位センサなど高価なセンサを搭載していなくとも、統合環境情報から自車位置を高精度に推定可能となる。
【0029】
また、交通管制システムは、車両と、環境認識装置と、上述の位置推定装置を備えているので、環境認識装置から取得した情報を位置推定装置で統合化して車両に提供することにより、車両は自車位置及び角度(姿勢)を高精度に推定可能となり、これを用いて安定した走行が可能となる。
【0030】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る位置推定装置及び交通管制システムについて図を用いて説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略する。
<交通管制システムの構成>
図5は実施の形態2に係る交通管制システムの構成を示す図、
図6は交通管制システムを構成する各機能部の機能ブロック図である。
図5において、交通管制システム1は、実施の形態1と同様に車両3、環境認識装置4及び位置推定装置2を備える。実施の形態1と異なる点は、位置推定装置2は車両3から車両情報である制御物体情報Yを受信し、周辺環境情報Xを統合化した統合環境情報Za、周辺環境情報X及び制御物体情報Yの信頼度情報Zb、補正情報Zcを生成し、これらを車両3に送信することである。なお、環境認識装置4の構成については実施の形態1と同様である。
【0031】
<車両3の構成>
車両3は、位置推定装置2から送信される各情報を受信する情報受信部31、ある任意の位置から進行した位置を推測する推測航法部34、車両3の走行を制御する制御部32である車両走行システム、少なくとも目標経路、目標車速、自車位置、姿勢を含む自己の車両情報を取得する自己情報取得部33、自己の車両情報である制御物体情報Yを位置推定装置2に送信する情報送信部35を備えている。また、車両3は位置推定装置2から送信される統合環境情報Za、信頼度情報Zb、信頼度に応じた補正情報Zcに基づき、車両の自己位置を適宜補正し、所望の動作制御を行っていくが、以後の説明では、車両3の内部での処理の説明は省略する。
【0032】
<位置推定装置2の構成>
位置推定装置2は、車両3に関する情報として、各車両の制御物体情報と、車両が動作する周辺の環境情報を収集する。ここで、「制御物体情報」は、車両3から送られてくる目標経路、目標車速、自車位置、姿勢が少なくとも含まれる。また、ここで「環境情報」は、実施の形態1と同様に周辺環境情報Xから得られる環境認識装置4が認識した各車両の位置、姿勢及び速度に加え、周辺環境情報Xから得られる少なくとも白線を含む道路情報でとして、中心線、道路幅、白線、及び道路の曲率を含む。
【0033】
位置推定装置2は、
図6に示されるように、環境認識装置4及び車両3から送られてくる情報を受信する情報受信部21、取得した周辺環境情報Xを公知の技術であるセンサフュージョン技術により統合する認識部22、統合した環境情報を車両3に送信する情報送信部23、及び少なくとも検知した車両の位置、姿勢情報、各判定結果、判定理由などを記録する情報記録部24を備える。
【0034】
情報受信部21は、1つまたは複数の環境認識装置4から周辺環境情報Xと1つまたは複数の車両3から少なくとも目標経路、目標車速、車両の目標車速、自車位置、姿勢を含む制御物体情報Yを受信する。
【0035】
認識部22ではそれぞれ受信した周辺環境情報Xを情報統合部221にて公知の技術を用いて統合する。統合された環境情報は少なくとも車両の種別情報、位置、角度情報が付加されている。このように環境認識装置4が複数ある場合の周辺環境情報Xの統合は位置推定装置2の認識部22にて行われる。また、認識部22では、信頼度算出部222にて各センサから得られた周辺環境情報から各センサで得られた情報の精度、確からしさを示す信頼度を算出する。また、車両3から取得した車両情報である制御物体情報Yの精度、確からしさを示す信頼度を算出する。信頼度比較部223では、算出された信頼度を比較し、いずれの情報が最も信頼できるのかを判定し、その結果に応じて車両に送信する補正情報の内容を選択する。情報送信部23は情報統合部221で統合された統合環境情報Za、信頼度算出部222で算出された信頼度情報Zb、この信頼度に対応した補正情報Zcを車両3に送信する。
【0036】
位置推定装置2から送信された統合環境情報Za、信頼度情報Zb、及び補正情報Zcに基づいて、車両3は自己の位置、姿勢を補正し、制御部32により所望の動作制御を行う。
【0037】
<位置推定装置2の動作>
次に、位置推定装置2の動作について、
図7のフローチャートを用いて説明する。なお、実施の形態1の
図3と同様の動作は簡略して説明する。
まず、ステップS201において、位置推定装置2は、実施の形態1のステップS101と同様に周辺環境情報Xを収集する(周辺情報取集工程)。
【0038】
次に、ステップS202において、車両3から送信される少なくとも目標経路、目標車速、車両の目標車速、自車位置、姿勢を含む制御物体情報Yである車両情報を受信する(車両情報取集工程)。
【0039】
次に、ステップS203において、実施の形態1のステップS102と同様に情報統合部221において各周辺環境情報Xを公知の技術により、統合する(情報統合工程)。これにより、複数の環境認識装置4からの物体情報を統合し、より精度の高い情報にすることができる。
【0040】
次に、ステップS204において、環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する(信頼度算出工程)。信頼度の算出については後述する。なお、環境認識装置4もしくはそれに具備するセンサを「環境情報取得装置」と称することもある。
【0041】
次に、ステップS205において、算出された信頼度を比較し、いずれの環境認識装置4またはセンサ(環境情報取得装置)、もしくは制御物体情報Yが最も高い信頼度であるかを判定し、信頼度の最も高い位置推定結果を車両3に送信する情報として選択する(信頼度比較工程)。
【0042】
次に、ステップS206において、車両3に送信する補正情報の必要有無を判定する(補正情報作成判定工程)。補正情報の必要有無は、例えば、信頼度比較工程の結果を基に、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値より小さい場合(ステップS206でNo)は、補正情報を作成すると判定し、ステップS207に進む。
【0043】
最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値より小さく、補正情報作成判定工程に置いて、作成すると判定された場合、ステップS207において、車両3に送信する補正情報Zcを作成する(補正情報作成工程)。補正情報Zcの作成は例えば、車両3が存在するエリアの情報を送信することなどがあげられる。しかしながら、上記に限ることではない。その後、ステップS208に進む。
【0044】
ステップS206において、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値以上で、補正情報作成判定工程に置いて、補正情報の作成不要と判定された場合(ステップS206でYes)、ステップS208に進む。
【0045】
ステップS208において、各情報、すなわち統合された周辺環境情報である統合環境情報Za、信頼度の最も高い位置情報、信頼度情報Zb、及び必要に応じて補正情報Zcを各車両3に送信する。
位置推定装置2は
図7に示すフローを予め決められた周期(例えば1秒)で繰り返し実行する。
【0046】
<信頼度情報Zbの算出方法>
次に、ステップS204の信頼度算出工程での信頼度算出方法について環境認識装置4の具備するセンサがLiDARの例で説明する。なお、本願において、信頼度とは、センサの取得した情報がどれほど真値に近しいかを示す値であり、信頼度が高いことは真値に近いことを意味するものである。
図8は、信頼度の算出方法を説明するための俯瞰図で、
図8Aは車両3が車線に沿って経路を走行している例、
図8Bは車両3が車線に対して斜めに向いている例であり、両者は姿勢(角度)が異なる例である。
図9は、環境認識装置4から見た状態で、
図9A、
図9Bはそれぞれ
図8A、
図8Bに対応している。なお、環境認識装置4から見た車両3は便宜的に六面体の斜視図で表現している。
【0047】
図8A、
図8Bにおいて、車両3の側面の太線は環境認識装置が認識している面3Sを示している。
図8A、
図9Aで示されるように、車両3が経路を走行している場合は、環境認識装置4から3つの面が認識できている。一方、
図8B、
図9Bで示されるように、車両3が車線に対して斜めに向き、車両3が環境認識装置4に平行、すなわち、環境認識装置4のセンサの検知方向の軸に対し垂直な方向にある場合は、環境認識装置4から1つの面しか認識できない。
【0048】
図9A、
図9Bには、それぞれ環境認識装置4で検知された車両3の各面に対し、反射点を示し、各面の横の長さをLsi、縦の長さをLliとして付している。すなわち、
図9A、
図9Bにおいて、横Ls1、縦Ll1からなる面の反射点を黒丸●、横Ls2、縦Ll2からなる面の反射点を白丸〇、横Ls3、縦Ll3からなる面の反射点を四角形□で示している。ここで、車両3の反射点群数をNpi、iは検知した車両の面の数(最大Nf)を、jは評価方法の種類、重みづけの係数をWjとする。
図9Aにおいて、反射点群数Np1は黒丸●の総数、反射点群数Np2は白丸〇の総数、反射点群数Np3は四角形□の総数、
図9Bにおいて、反射点群数Np1は黒丸●の総数である。
【0049】
本実施の形態2のようにセンサがLiDARであり、LiDARの反射点群数で車両の姿勢(角度)における信頼度を評価する場合のセンサ単体(LiDAR)の信頼度Rijは以下の式(1)により定義することができる。
【数1】
【0050】
このようにLiDARの反射点群数を用いて、車両3の姿勢(角度)によって信頼度評価する例に限らず、車両3の検知距離を併用して姿勢(角度)に対する信頼度を評価する、もしくは検知距離に対する信頼度を評価することもできる。また、上述の例では車両の側面を中心に評価したが、前後面を捉える場合であってもよい。これら評価方法に限るものではない。
【0051】
次に、他の信頼度である、制御物体情報Yの車両位置情報の信頼度算出方法について説明する。
車両3の具備する推測航法部34で計算されている時間をt(s)、車両の加速度をαt、走行している道路の勾配をSt、重みづけの係数をWkとする。制御物体情報Y内の推測航法による自己位置推定における信頼度を計算する方法を用いる場合のセンサ単体の信頼度Rijは以下の式(2)により定義することができる。
【数2】
【0052】
信頼度の算出方法について2つの例を示したが、信頼度の評価方法、算出方法はこれらに限るものではない。
【0053】
上述した信頼度は、信頼度算出部222において、信頼度の評価方法毎、もしくは環境認識装置4毎またはセンサ毎もしくは制御物体情報Y毎に算出され、統合される。統合方法も様々あり、例えば各センサ単体の信頼度の平均を取ることが考えられる。Nを環境認識装置に搭載されたセンサ数、Riを信頼度の評価方法毎またはセンサ毎の信頼度とすると、統合された環境認識装置4またはセンサの信頼度Rallは以下の式(3)により求められる。
【数3】
同様に、制御物体情報Yについても平均をとってもよく、制御物体情報Yの信頼度Rallも式(3)により求められる。なお、算出方法はこれに限るものではない。
【0054】
統合された環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度あるいは制御物体情報Yの信頼度Rallを比較し、その結果、最も高い信頼度を持つ環境認識装置4またはセンサから出力される車両情報あるいは制御物体情報Yの車両情報を位置情報として出力する。このとき、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値未満であった場合は、その信頼度に応じた情報の粒度で補正情報を作成する。
【0055】
信頼度の比較において、
図8A、
図9Aの例で、推測航法部34での演算時間が小さい場合では、式(1)による信頼度より式(2)による信頼度の方が高くなり、他のセンサよりも最も高い信頼度と判定される。そのため、信頼度を比較して最も高い信頼度を選択し、最も高い信頼度を持つ環境認識装置4またはセンサから出力される車両情報あるいは制御物体情報Yの車両情報を出力することは、高い位置推定精度を得るために有用である。
【0056】
<補正情報Zcの作成方法>
次に、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値未満であった場合の補正情報Zcを作成する方法について説明する。
図10は信頼度に対応する補正情報を作成する方法について説明する図である。
図10中
図10Aは信頼度が第1の基準値未満の場合の車両3に送信する車両位置に関する補正情報の作成方法を示している。車両3が走行する目標経路または、環境認識装置4が認識している道路情報を基に、車線の中心線を区切りとし、車両進行方向に関しては、環境認識装置4が認識した位置から進行方向に一定距離D1分(例えば12m)確保した領域をエリアa1、b1の2つに分ける。ここで、設定している一定距離D1を信頼度によって可変にすることによって、信頼度に伴って補正情報の粒度を変更することができる。その後、現在の環境認識装置4での認識ではどちらのエリアa1、b1に存在するのかを判定し、存在するエリアa1の四隅の座標(a1_p,a1_q,a1_r,a1_s)を補正情報として作成する。
【0057】
図10中
図10Bは信頼度が第1の基準値未満であるが
図10Aの場合よりも信頼度が高い場合の車両3に送信する車両位置に関する補正情報の作成方法を示している。この時、上述の
図10Aの場合と同様の方法を用いて、2つのエリアa2、b2に分ける。ただし、進行方向の一定距離D2を
図10Aにおける一定距離D1より短くしている(例えば6m)。その後、現在の環境認識装置4での認識ではどちらのエリアa2、b2に存在するのかを判定し、存在するエリアa2の四隅の座標(a2_p,a2_q,a2_r,a2_s)を補正情報として作成する。
【0058】
図11は信頼度に対応する補正情報を作成する方法について説明する図で、
図10よりも走行車線の数が多い例である。
図11中
図11Aは信頼度が第1の基準値未満の場合の車両3に送信する車両位置に関する補正情報の作成方法を示している。車両3が走行する目標経路または、環境認識装置4が認識している道路情報を基に、車線の中心線を区切りとし、車両進行方向に関しては、環境認識装置4が認識した位置から進行方向に一定距離D1分(例えば12m)確保した領域を2つに分ける。さらに分別されている車線に応じて区切りを細分化したエリアa3、b3、c3、d3に分ける。ここで、設定している一定距離D3を信頼度によって可変にすることによって、信頼度に伴って補正情報の粒度を変更することができる。その後、現在の環境認識装置4での認識ではいずれのエリアa3、b3、c3、d3に存在するのかを判定し、存在するエリアb3の四隅の座標(b3_p,b3_q,b3_r,b3_s)を補正情報として作成する。
【0059】
図10中
図10Bは信頼度が第1の基準値未満であるが
図10Aの場合よりも信頼度が高い場合の車両3に送信する車両位置に関する補正情報の作成方法を示している。
図11Bも同様に車両3の存在するエリアの四隅の座標(b4_p,b4_q,b4_r,b4_s)を補正情報として作成する。ここで一定距離D4は一定距離D3より小である。
【0060】
なお、補正情報の例として、車両3の位置情報である、車両3の存在するエリアの領域を示す座標について説明したがこれに限るものではない。補正情報は少なくとも車両の位置情報を有しそれに加え、車両の姿勢、車両の速度等を含めてもよい。
【0061】
上述のように作成された補正情報は車両3に搭載されている推測航法部34のような自車位置推測システムに対する情報であり、この補正情報を用いれば、推測航法部34における長時間の推定により生じる誤差蓄積を抑制することが可能となる。
【0062】
進行方向の一定距離Dの計算方法として、例えば、信頼度をRallとし、係数をKとすると以下の式(4)で求めることができる。
D=Rall × K ・・・(4)
なお、計算方法はこれに限るものではない。
【0063】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、車両自身に衛星測位センサなど高価なセンサを搭載していなくとも、位置推定装置から送信される統合環境情報に基づいて自車位置及び角度を高精度に推定可能となる。
さらに、実施の形態2に係る位置推定装置は、環境認識装置毎あるいはそれに具備するセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、をさらに備え、信頼度比較部によって、最も高い信頼度を有する環境認識装置またはセンサからの統合環境情報もしくは制御物体情報Yの車両情報を選択し、車両の位置情報として出力するようにしたので、さらに高い精度で位置及び角度の推定を行うことが可能となる。
【0064】
また、最も高い信頼度が予め設定された第1の基準値より小さい場合には、移動体の少なくとも位置情報を含む補正情報をその信頼度に応じた情報の粒度で作成して、選択された統合環境情報とともに出力するようにしたので、車両において、それら補正情報も参照して自己位置、角度の推定または補正を行うことができる。
【0065】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3に係る位置推定装置及び交通管制システムについて図を用いて説明する。なお、実施の形態1、2と重複する説明は省略する。本実施の形態3に係る位置推定装置は、実施の形態2の構成に加え、車両から提供される少なくとも目標経路、目標車速を含む制御物体情報、地図情報、または位置推定装置に記録されている今までの車両の走行経路情報(走行履歴)の内少なくとも2つ以上の情報を基に、車両が目標経路から逸脱するかを予測する機能を備えている。
【0066】
<交通管制システムの構成>
図12は実施の形態3に係る交通管制システムを構成する各機能部の機能ブロック図である。実施の形態3に係る交通管制システムの構成は実施の形態2の
図5と同様である。また、環境認識装置4の構成は実施の形態1、2と同様であり、車両3の構成は実施の形態2と同様である。
【0067】
<位置推定装置2の構成>
位置推定装置2は、
図12に示されるように、環境認識装置4及び車両3から送られてくる情報を受信する情報受信部21、取得した周辺環境情報Xおよび制御物体情報Yを公知の技術であるセンサフュージョン技術により統合する認識部22、各情報を車両3に送信する情報送信部23、及び検知した車両の位置情報等を記録する情報記録部24を備える。認識部22は、取得した周辺環境情報Xおよび制御物体情報Yを統合化する情報統合部221、環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する信頼度算出部222、算出された信頼度を比較し、比較結果に応じて補正情報を作成する信頼度比較部223に加え、車両位置予測部224を備える。
【0068】
車両位置予測部224は、車両3から提供される少なくとも目標経路、目標車速、車両位置、姿勢を含む制御物体情報Y、地図情報、または情報記録部24に記録されている今までの車両の走行軌跡情報の内少なくとも2つ以上の情報を基に、車両3が目標経路から逸脱するか車両3の挙動を予測する。
【0069】
<位置推定装置2の動作>
次に、位置推定装置2の動作について、
図13のフローチャートを用いて説明する。なお、実施の形態1の
図3、実施の形態2の
図7と同様の動作は簡略して説明する。
まず、ステップS301において、位置推定装置2は、実施の形態1のステップS101と同様に周辺環境情報Xを収集する(周辺情報取集工程)。
【0070】
次に、実施の形態2のステップS202と同様にステップS302において、車両3から送信される少なくとも目標経路、目標車速、車両の目標車速、自車位置、姿勢を含む制御物体情報Yである車両情報を受信する(車両情報取集工程)。
【0071】
次に、ステップS303において、実施の形態1のステップS102と同様に情報統合部221において各周辺環境情報Xを公知の技術により、統合する(情報統合工程)。これにより、複数の環境認識装置4からの物体情報を統合し、より精度の高い情報にすることができる。
【0072】
次に、実施の形態2のステップS204と同様にステップS304において、環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する(信頼度算出工程)。信頼度の算出については実施の形態2と同様である。
【0073】
次に、実施の形態2のステップS205と同様にステップS305において、算出された信頼度を比較し、いずれの環境認識装置4またはセンサもしくは制御物体情報Yが最も高い信頼度であるかを判定し、最も高い信頼度の位置情報を車両3に送信する情報として選択する(信頼度比較工程)。
【0074】
次に、実施の形態2のステップS206と同様にステップS306において、車両3に送信する補正情報の必要有無を判定する(補正情報作成判定工程)。補正情報の必要有無は、例えば、信頼度比較工程の結果を基に、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値より小さい場合(ステップS306でNo)は、補正情報を作成すると判定し、ステップS307に進む。実施の形態2のステップS207と同様にステップS307において、車両3に送信する補正情報Zcを作成し(補正情報作成工程)、ステップS310に進む。補正情報Zcの作成については実施の形態2と同様である。
【0075】
ステップS306において、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値以上で、補正情報作成判定工程に置いて、補正情報の作成不要と判定された場合(ステップS306でYes)、ステップS308に進む。
ステップS308において、車両位置予測部224は、車両3から提供される目標経路及び目標車速を含む車両情報(制御物体情報Y)、地図情報、または情報記録部24に記録されている現在までの車両3の走行軌跡情報の内少なくとも2つ以上の情報を基に、車両3の将来位置が目標経路と一致せず目標経路から逸脱するかを予測する(車両位置予測工程)。
【0076】
ステップS308において、車両3の将来位置が目標経路と一致せず、目標経路から逸脱すると予測された場合(ステップS308でYes)、補正情報Zcを作成する。ここで補正情報Zcは、実施の形態2で説明したものと同様に作成すればよい。その後、ステップS310に進む。
【0077】
ステップS308において、車両3の将来位置が目標経路と一致し、目標経路から逸脱しないと予測された場合(ステップS308でNo)、ステップS310に進む。
ステップS310において、情報送信部23は、車両3の将来位置が目標経路と一致せず、目標経路から逸脱すると予測された場合に生成された補正情報Zcも含めて、各情報を車両3に送信する。
【0078】
位置推定装置2は
図13に示すフローを予め決められた周期(例えば1秒)で繰り返し実行する。
【0079】
<車両3の将来位置の予測方法>
車両位置予測部224における、車両3の将来位置の予測方法について説明する。
図14は、車両3の将来位置を予測する方法を説明するための図である。
図14において、車両3の姿勢は目標経路R1の方向に一致しておらず、このまま進むと目標経路R1から逸脱する。従って、車両3は、将来、目標経路R1から逸脱すると予測する。判定基準例としては、車両3の角度θが目標経路R1から±45度以上離れた場合などが挙げられる。なお、判定方法、判定基準はこれに限るものではない。
【0080】
また、
図15は車両3の将来位置を予測する別の方法を説明するための図である。
図15において、位置推定装置2の情報記録部24に記録されている走行履歴R2と車両3との関係を示している。走行履歴R2は情報記録部24に記録されている走行履歴の中から、現在の車両3の目標経路と近いシーンを抽出し、そのシーンにおける車両位置と現在の車両3の位置を比較し、位置の差分dが予め設定された基準値を超えた位置となっている場合、もしくは
図14の例のように明らかに車両の角度θが異なっている場合は将来逸脱すると予測する。判定基準例としては、車両3の角度θが走行履歴R2から±45度以上離れた場合、車両3が走行履歴R2から車両1台分離れた場合などが挙げられる。
【0081】
図16及び
図17は、車両3の将来位置を予測するさらに別の方法を説明するための図である。他の車両3bは制御対象としている車両3とは異なる車両であり、実施の形態3に係る交通管制システムの制御対象としていても制御対象としていなくてもよい。
図16は車両3が車線中央を走行しているので、他の車両3bも車線中央を走行経路R3に沿って走行している。しかしながら、
図17では、車両3が車線の中央線を走行しているため、他の車両3bは車線左によった走行経路R4で走行している。この状況を位置推定装置2は検知し、他の車両3bが前方に何も障害物が存在しない状態で車線中央を走行していない場合、車両3が目標経路を逸脱して走行している、もしくはする可能性があると予測する。
【0082】
なお、車両3の将来位置が目標経路と一致せず、目標経路から逸脱すると予測された場合に作成する、補正情報Zcには少なくとも車両の位置情報を含み、目標経路から逸脱するか否かの判定に用いられる車両の角度(姿勢)、速度を含めるのが望ましい。
【0083】
以上のように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、車両自身に衛星測位センサなど高価なセンサを搭載していなくとも、位置推定装置から送信される統合環境情報に基づいて自車位置及び角度を高精度に推定可能となる。
さらに、実施の形態3に係る位置推定装置は、移動体から少なくとも目標経路、目標車速、位置、姿勢を含む第2の移動体情報である第2の制御物体情報を受信し、前記認識部は、移動体の将来の位置を予測する車両位置予測部をさらに備えた。信頼度比較部において、最も高い信頼度の値が予め設定された第1の基準値以上の場合に、車両位置予測部は、第2の移動体情報、地図情報及び前記情報記録部に記録されている走行経路履歴のうちの情報の中から少なくとも2つ以上に基づいて、移動体の将来位置と目標経路とが一致するか否か予測し、一致しないと予測した場合、移動体の少なくとも位置情報及び角度を含む補正情報を作成し、車両に送信する。これにより、車両が目標経路を走行するための情報を提供することができ、車両が安定した走行を行うことが可能となる。
【0084】
実施の形態4.
以下に、実施の形態4に係る位置推定装置及び交通管制システムについて図を用いて説明する。なお、実施の形態1から3と重複する説明は省略する。
【0085】
<交通管制システムの構成>
図18は、実施の形態4に係る交通管制システムの構成を示す図、
図19は交通管制システムを構成する各機能部の機能ブロック図である。環境認識装置4の構成は実施の形態1から3と同様であり、車両3の構成は実施の形態2、3と同様である。本実施の形態4に係る位置推定装置2は、実施の形態2の構成に加え、位置推定装置2で作成する信頼度によって環境認識装置4の各センサの検知範囲を調整する機能を備えている。従って、環境認識装置4の各センサは、位置推定装置2から検知範囲変更情報Zdを受信し、その情報に対応する検知範囲で物体の認識を行う。
【0086】
<位置推定装置2の構成>
位置推定装置2は、
図19に示されるように、環境認識装置4及び車両3から送られてくる情報を受信する情報受信部21、取得した周辺環境情報Xおよび制御物体情報Yを公知の技術であるセンサフュージョン技術により統合する認識部22、各情報を車両3に送信する情報送信部23、及び検知した車両の位置情報等を記録する情報記録部24を備える。認識部22は、取得した周辺環境情報Xを統合化する情報統合部221、環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する信頼度算出部222、算出された信頼度を比較し、比較結果に応じて補正情報を作成する信頼度比較部223、に加え、検知範囲変更指示作成部225を備える。
【0087】
検知範囲変更指示作成部225は、信頼度算出部222、信頼度比較部223で作成された信頼度及びその比較結果を基に、各センサの検知範囲が適切か否かを判定し、検知範囲が適切でないと判定された場合、各センサの検知範囲を変更する指示を生成する。センサの検知範囲が適切か否かの判定は、例えば車両がセンサから遠く離れた場所に位置し、検知の解像度が予め設定された解像度より小さい場合に、センサの検知する範囲を絞り、車両の姿がはっきり見えるようにするといった方法が挙げられる。しかし、この方法に限るものではない。
【0088】
<位置推定装置2の動作>
次に、位置推定装置2の動作について、
図20のフローチャートを用いて説明する。なお、実施の形態1から3で説明した動作と同様の動作は簡略して説明する。
まず、ステップS401において、位置推定装置2は、実施の形態1のステップS101と同様に周辺環境情報Xを収集する(周辺情報取集工程)。
【0089】
次に、ステップS402において、実施の形態2のステップS202と同様に車両3から送信される少なくとも目標経路、目標車速、車両の目標車速、自車位置、姿勢を含む制御物体情報Yである車両情報を受信する(車両情報取集工程)。
【0090】
次に、ステップS403において、実施の形態1のステップS102と同様に情報統合部221において各周辺環境情報Xを公知の技術により、統合する(情報統合工程)。
【0091】
次に、ステップS404において、実施の形態2のステップS204と同様に環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する(信頼度算出工程)。信頼度の算出については実施の形態2と同様である。
【0092】
次に、ステップS405において、算出された信頼度のうち最も高い信頼度の値が予め設定された第2の基準値より小さいか否か判定する(信頼度確認工程)。信頼度が予め設定された第2の基準値以上の場合(ステップS405でNo)、ステップS406に進む。ステップS406では、車両3に送信する補正情報Zcを作成する(補正情報作成工程)。補正情報Zcの作成は実施の形態2と同様である。ここで、第2の基準値は実施の形態2で説明した第1の基準値と同じかそれより小さい値に設定する。
【0093】
ステップS405において、最も高い信頼度が予め設定された第2の基準値より小さいと判定された場合(ステップS405でYes)、ステップS407に進む。
ステップS407において、検知範囲変更指示作成部225は、第2の基準値より小さいとされた信頼度に対応するセンサの検知範囲を変更する指示を作成する(検知範囲変更指示作成工程)。作成された指示は、検知範囲変更情報Zdとして環境認識装置4へ送信する。
【0094】
位置推定装置2は
図20に示すフローを予め決められた周期(例えば1秒)で繰り返し実行する。
【0095】
<検知範囲を変更する指示を作成する例>
次に、センサに対する検知範囲の調整指示生成方法を説明する。
図21は、環境認識装置4の具備するセンサの検知範囲を変更する指示を生成する方法を説明するための図で、
図21Aは変更前の状態を示す図、
図21Bは変更後の状態を示す図である。
図21Aにおいて、車両3と環境認識装置4との距離が遠く、環境認識装置4からは車両3が小さく見える。この場合、図中の画面右上を拡大するように検知範囲を変更することで車両3を大きく捉えることができ、信頼度向上につなげることができる。
図21Bは検知範囲を変更した後を示している。このように、検知範囲を変更する指示を作成し、検知範囲を変更したことにより、信頼度が向上することが分かる。
【0096】
なお、
図21ではセンサがカメラであり画像を取得する検知範囲を変更する例を示したが、これに限るものではない。例えば、センサがLiDARの場合はレーザを照射する方向または角度を変更する、センサがミリ波レーダの場合はレーダを照射する方向または角度を変更する等で検知範囲を変更し、信頼度を向上させることができる。
【0097】
以上のように、実施の形態4によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、車両自身に衛星測位センサなど高価なセンサを搭載していなくとも、位置推定装置から送信される統合環境情報に基づいて自車位置及び角度を高精度に推定可能となる。
また、実施の形態4に係る位置推定装置は、環境認識装置毎またはそれに具備するセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、環境認識装置あるいはセンサの検知範囲を変更する指示を作成する検知範囲変更指示作成部と、をさらに備えた。検知範囲変更指示作成部は、算出された信頼度が第2の基準値よりも小さいと判定された場合、それに係る環境認識装置あるいはセンサの検知範囲を変更する指示を作成する。これにより、検知範囲を適正化することができ信頼度を向上させることができるので、高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【0098】
さらに、信頼度が向上することにより、実施の形態3に示したように、位置推定装置2の認識部22に車両3の将来の位置を予測する車両位置予測部224を備えていれば、車両の将来位置の予測精度もさらに向上する。
【0099】
実施の形態5.
以下に、実施の形態5に係る位置推定装置及び交通管制システムについて図を用いて説明する。なお、実施の形態1から3と重複する説明は省略する。本実施の形態5に係る位置推定装置は、実施の形態3の構成に加え、信頼度比較部の作成する信頼度が低い場合に車両への信頼度確認動作指示を作成する機能を備えている。
【0100】
<交通管制システムの構成>
図22は実施の形態5に係る交通管制システムを構成する各機能部の機能ブロック図である。実施の形態5に係る交通管制システムの構成は実施の形態2の
図5と同様である。また、環境認識装置4の構成は実施の形態1から3と同様であり、車両3の構成は実施の形態2、3と同様である。
【0101】
<位置推定装置2の構成>
位置推定装置2は、
図22に示されるように、環境認識装置4及び車両3から送られてくる情報を受信する情報受信部21、取得した周辺環境情報Xおよび制御物体情報Yを公知の技術であるセンサフュージョン技術により統合する認識部22、各情報を車両3に送信する情報送信部23、及び検知した車両の位置情報等を記録する情報記録部24を備える。認識部22は、取得した周辺環境情報Xおよび制御物体情報Yを統合化する情報統合部221、環境認識装置4毎もしくはセンサ毎の信頼度を算出する信頼度算出部222、算出された信頼度を比較し、比較結果に応じて補正情報を作成する信頼度比較部223、に加え、確認動作指示作成部226及び動作確認部227を備える。
【0102】
確認動作指示作成部226は、信頼度算出部222、信頼度比較部223で作成された信頼度及びその比較結果を基に、最も高い信頼度が第3の基準値より小さい場合は環境認識装置4のセンサの信頼度確認するために車両3に行わせる動作を選択し、確認動作指示Zeを作成する。動作確認部227は、確認動作指示作成部226で作成された確認動作指示Zeを車両が実行することにより、期待通りの結果が得られたか確認を行う。確認動作指示Zeの作成方法及びその動作確認方法については後述する。ここで第3の基準値は実施の形態3で説明した第2の基準値と同じかそれより小さい値に設定する。
【0103】
<位置推定装置2の動作>
次に、位置推定装置2の動作について、
図23のフローチャートを用いて説明する。
なお、実施の形態1から3と同様の動作は簡略して説明する。
まず、ステップS501において、位置推定装置2は、実施の形態1のステップS101と同様に周辺環境情報Xを収集する(周辺情報取集工程)。
【0104】
次に、実施の形態2のステップS202と同様にステップS502において、車両3から送信される少なくとも目標経路、目標車速、車両の目標車速、自車位置、姿勢を含む制御物体情報Yである車両情報を受信する(車両情報取集工程)。
【0105】
次に、ステップS503において、実施の形態1のステップS102と同様に情報統合部221において各周辺環境情報Xを公知の技術により、統合する(情報統合工程)。
【0106】
次に、実施の形態2のステップS204と同様にステップS504において、環境認識装置4毎またはセンサ毎の信頼度、及び制御物体情報Yの信頼度を算出する(信頼度算出工程)。信頼度の算出については実施の形態2と同様である。
【0107】
次に、ステップS505において,算出された信頼度のうち最も高い信頼度が予め設定された第3の基準値より小さいか否か判定する(信頼度確認工程)。信頼度が予め設定された第3の基準値以上の場合(ステップS505でNo)、ステップS506に進む。ステップS506では、車両3に送信する補正情報Zcを作成する(補正情報作成工程)。補正情報Zcの作成は実施の形態2と同様である。
【0108】
ステップS505において、最も高い信頼度が予め設定された第3の基準値より小さいと判定された場合(ステップS505でYes)、ステップS507に進む。
ステップS507において、数周期以内に信頼度を確認するための確認動作指示Zeを作成したかを確認する(動作指示確認工程)。数周期以内に確認動作指示Zeを作成していない場合(ステップS507でNo)は、ステップS509へ進み、車両が存在している場所、環境認識装置4から検知できる車両状態を基に確認動作を決定し、指示を作成する(動作指示決定及び指示作成工程)。
【0109】
ステップS507において、数周期以内に信頼度を確認するための動作指示を既に作成していた場合(ステップS507でYes)、ステップS509に進み、指示した動作が期待通りに実施されたか、もしくは指示された動作を車両が実施したことによって、車両で死角になっていた検知容易な地上の目印が検知可能になったことを確認できたかを判定する(指示動作実施確認工程)。
【0110】
ステップS509において、指示による動作実施が確認できなかった場合(ステップS509でNo)、ステップS511に進み、信頼度に対応する補正情報を作成または修正する。
ステップS509において、指示による動作実施が確認できた場合(ステップS509でYes)、ステップS511に進み、信頼度を再計算する(信頼度再計算工程)。この信頼度再計算においては今回算出した方法であっても、異なる算出方法であってもよい。
ステップS510で信頼度を再計算した後、ステップS511に進み、信頼度に対応する補正情報を作成または修正する。
【0111】
位置推定装置2は
図23に示すフローを予め決められた周期(例えば1秒)で繰り返し実行する。
【0112】
<信頼度を確認する動作指示の作成方法>
次に、信頼度を確認する動作指示の作成方法について説明する。
図24は信頼度を確認する動作の指示生成方法を説明するための図で、
図24Aは車両後方から見た状態を示す図、
図24Bは車両側方から見た状態を示す図、
図24Cは、
図24Aにおいて確認動作後の状態を示す図である。
図24Aでは、環境認識装置4からは車両後方を見ることができる。しかし、環境認識装置4からは車両3が死角になり、道路上の白線を検知することができていない。この場合、車両3へ指示する信頼度確認動作としては右にハンドルを切りながら徐行するという動作が挙げられる。
【0113】
また、
図24Bでは、環境認識装置4からは車両3の側面を見ることができているが、車両3が死角となり道路上の車線(中央線)を一部検知することができない。この場合、車両3へ指示する信頼度確認動作としては、左にハンドルを切りながら徐行するという動作が挙げられる。
【0114】
図24Cは、
図24Aと比べて、道路上の白線を検知することができており、
図24Aの状態において右にハンドルを切りながら徐行するという動作指示が実行されたことが確認できる。
このように、確認動作は例えば、車両を斜めに前進させること、あるいはその場で前後させることが挙げられる。しかしながら、これに限るものではない。
なお、信頼度確認動作は信頼度を向上させるための動作である。そして、指示による動作が実行されたかの確認は、信頼度が向上したかの確認に繋がる。但し、向上したかは効果の大きさあるいは遅延の有無にもよるため、ここでは、指示による動作が実行されたかの確認としている。また、上述の例に挙げた道路上の白線または中央線を検知できるようにすることは、信頼度が向上し、定点を明確にして位置推定を行うことができるので、位置推定の精度向上に寄与する。
【0115】
以上のように、実施の形態5によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、車両自身に衛星測位センサなど高価なセンサを搭載していなくとも、位置推定装置から送信される統合環境情報に基づいて自車位置及び角度を高精度に推定可能となる。
また、実施の形態5に係る位置推定装置は、環境認識装置毎あるいはそれに具備するセンサ毎の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、移動体に確認動作を行う指示を作成する確認動作指示作成部と、動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたか確認する動作確認部と、をさらに備えた。確認動作指示作成部は、算出された信頼度のうち最も高い信頼度の値が第3の基準値よりも小さいと判定された場合、信頼度を上げるための確認動作指示を作成し、動作確認部は、確認動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたことを確認するとともに、信頼度算出部は信頼度を再計算する。これにより、信頼度の向上を図ることができ、高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【0116】
さらに、信頼度が向上するので、実施の形態3に示したように、位置推定装置2の認識部22に車両3の将来の位置を予測する車両位置予測部224を備えていれば、車両の将来位置の予測精度もさらに向上する。
【0117】
<その他の実施の形態>
(1)本開示における、交通管制システム1は、実施の形態1から5で説明したいずれかの位置推定装置2と、車両3が走行する経路の路側に設置され、位置推定装置2に車両3の周辺環境情報Xを送信する環境認識装置4と、制御対象である車両3とを備えている。そして、少なくとも位置推定装置2と環境認識装置4との間、及び位置推定装置2と車両3との間は通信が行われている。位置推定装置2は、環境認識装置4から環境認識装置4の検知範囲S内の少なくとも車両の位置、姿勢(向き、角度)及び速度が含まれる周辺環境情報Xを受信し、周辺環境情報Xから統合環境情報Zaを生成して車両に送信するので、車両3自身に自己位置を測定する機器が搭載されていなくても、車両3は高精度に推定された自己位置を取得することが可能となる。車両3は、この自己位置情報を用い、さらに統合環境情報Zaに含まれる、走行経路中の障害物等の情報を用い、制御部32により自車の速度及びハンドリング等の制御信号が生成され、ブレーキ、ハンドル等の車両を駆動する各アクチェータが駆動制御される。
【0118】
車両3が、例えば米国自動車技術会(SAE Interbational)の定義するレベル3または4相当の自動運転走行が可能なものであれば、車両3は位置推定装置2から取得した自己位置を含む統合環境情報Zaに基づいて、所望の自動運転走行を実現可能となる。
【0119】
(2)実施の形態1から5において、車両3は自身に自己位置を測定する機器が搭載されていない例を示したが、高度な自己位置測定装置が搭載されていてもよい。位置推定装置2から取得した自己位置を含む統合環境情報Zaに基づいて、自己位置測定装置の誤差を軽減することで、安定的に車両の制御を行うことができる。
【0120】
(3)実施の形態1に係る位置推定装置2を実現するハードウェア構成を
図4に例示したが、実施の形態2から5に係る位置推定装置2を実現するハードウェア構成も
図4に例示したものと同様である。
【0121】
(4)交通管制システム1において、通信手段として広域通信と狭域通信とを用いる。広域通信は、所定の広域無線通信規格、例えばLTE(Long Term Evolution)あるいは4G、5G(5th Generation;第5世代移動通信システム)に準拠したものを用いる。狭域通信は例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communications)などを用い、上述の実施の形態では説明しなかったが、他車両との通信(車車間通信)に用いることで、自車両周辺の他車両の情報を入手できある。これら通信は、一定の通信速度が担保されている。
環境認識装置4と位置推定装置との間の通信は、例えばLTEあるいは5Gを用いる。 車両3内では、例えばCAN(Control Area Network:登録商標)等を用いて接続されている。
【0122】
(5)なお、制御対象物体の移動体として、車両である自動車を例に説明したが、適用先は自動車に限るものではなく、他の各種の移動体に適用することが可能である。交通管制システムは、例えばビル内を点検するようなビル内移動ロボット、ライン点検ロボット、及びパーソナルモビリティなどの移動体の行動を管制するシステムとして使用することができる。移動体が自動車以外の場合、環境道認識装置の取得する情報においては、例えばビル内、ライン内、パーソナルモビリティが行動する範囲内に設けられた障害物情報検出部の情報を用いればよい。
【0123】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0124】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0125】
(付記1)
移動体の位置、角度及び速度を少なくとも含む第1の移動体情報と前記移動体周辺の少なくとも白線を含む道路情報を含む環境情報とを、複数の環境情報取得装置から受信する情報受信部、
受信した前記環境情報を統合化して、前記移動体の位置情報を含む統合環境情報を作成する認識部、
前記情報受信部で受信した前記第1の移動体情報及び前記環境情報と、前記認識部で作成された前記統合環境情報とを記録する情報記録部、及び
前記認識部で作成された前記統合環境情報を前記移動体に送信する情報送信部を備えた位置推定装置。
(付記2)
前記情報受信部は、
前記移動体から少なくとも目標経路、目標車速、位置、姿勢を含む第2の移動体情報を受信し、
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、最も高い信頼度を有する前記環境情報取得装置からの前記統合環境情報または前記第2の移動体情報を選択し、
前記情報送信部は、前記信頼度比較部で選択された情報を前記位置情報として前記移動体に送信する、付記1に記載の位置推定装置。
(付記3)
前記認識部の前記信頼度比較部は、
最も高い前記信頼度が予め設定された第1の基準値より小さい場合に、前記移動体の少なくとも前記位置情報を含む補正情報を作成し、選択された最も高い信頼度を有する前記環境情報取得装置からの前記統合環境情報または前記第2の移動体情報とともに出力する、付記2に記載の位置推定装置。
(付記4)
前記認識部は、
前記移動体の将来の位置を予測する車両位置予測部をさらに備え、
前記信頼度比較部において、最も高い前記信頼度が予め設定された第1の基準値以上の場合に、
前記車両位置予測部は、前記第2の移動体情報、地図情報及び前記情報記録部に記録されている走行経路履歴のうちのいずれかに基づいて、前記移動体の将来位置と前記目標経路とが一致するか否か予測し、前記移動体の将来位置と前記目標経路とが一致しないと予測した場合、前記移動体の少なくとも位置情報及び角度を含む補正情報を作成する、付記3に記載の位置推定装置。
(付記5)
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、前記環境情報取得装置の検知範囲を変更する指示を作成する検知範囲変更指示作成部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、前記算出された前記信頼度のうち最も高い前記信頼度が第2の基準値より小さいか否か比較し、
前記検知範囲変更指示作成部は、前記信頼度が第2の基準値よりも小さいと判定された場合、前記環境情報取得装置の検知範囲を変更する指示を作成する、付記1から4のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記6)
前記認識部は、
前記環境情報を取得した前記環境情報取得装置毎の信頼度及び第2の移動体情報の信頼度を算出する信頼度算出部と、算出された前記信頼度を比較する信頼度比較部と、前記移動体に確認動作を行う指示を作成する確認動作指示作成部と、前記確認動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたか確認する動作確認部と、をさらに備え、
前記信頼度比較部は、前記算出された前記信頼度のうち最も高い前記信頼度が第3の基準値より小さいか否か比較し、
前記確認動作指示作成部は、前記信頼度が第3の基準値よりも小さいと判定された場合、前記信頼度を上げるための確認動作指示を作成し、
前記動作確認部は、前記確認動作指示作成部により作成された指示による動作が実施されたことを確認するとともに、
前記信頼度算出部は前記信頼度を再計算する、付記1から4のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記7)
付記1から6のいずれか1項に記載の位置推定装置と、複数の前記環境情報取得装置と、前記移動体と、を備え、前記位置推定装置と複数の前記環境情報取得装置との間及び前記位置推定装置と前記移動体との間で通信が行われる交通管制システムであって、
前記移動体は、
前記位置推定装置から受信した前記位置情報に基づいて自己位置を取得するとともに、前記統合環境情報及び前記自己位置に基づいて走行する、交通管制システム。
【符号の説明】
【0126】
1:交通管制システム、 2:位置推定装置、 21:情報受信部、 22:認識部、 221:情報統合部、 222:信頼度算出部、 223:信頼度比較部、 224:車両位置予測部、 225:検知範囲変更指示作成部、 226:確認動作指示作成部、 227:動作確認部、 23:情報送信部、 24:情報記録部、 3:車両、 3b:他の車両、 31:情報受信部、 32:制御部、 33:自己情報取得部、 34:推測航法部、 35:情報送信部、 4:環境認識装置、 41:環境情報取得部、 42:通信部、 201:プロセッサ、 202:メモリ、 203:補助記憶装置、 204:送信装置、 205:受信装置、 S:検知範囲、 X:周辺環境情報、 Y:制御物体情報、 Za:統合環境情報、 Zb:信頼度情報、 Zc:補正情報、 Zd:検知範囲変更情報、 Ze:確認動作指示。