(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151753
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20241018BHJP
G01N 21/93 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G01N21/93
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065397
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松竹 涼汰
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正紀
(72)【発明者】
【氏名】亀井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田畑 凌
(72)【発明者】
【氏名】剱持 あかり
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA61
2G051AB20
2G051BA01
2G051BA08
2G051BA10
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB03
2G051BB11
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
(57)【要約】
【課題】検査において、過検出を抑制することが好ましい。
【解決手段】被検査デバイスを検査する検査装置であって、前記被検査デバイスに第1の光および前記第1の光とは照射特性の異なる第2の光を照射する光源と、前記第1の光および前記第2の光のそれぞれについて前記被検査デバイスからの反射光を検出する撮像部と、前記撮像部における前記第1の光および前記第2の光の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する判定部とを備える検査装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査デバイスを検査する検査装置であって、
前記被検査デバイスに第1の光および前記第1の光とは照射特性の異なる第2の光を照射する光源と、
前記第1の光および前記第2の光のそれぞれについて前記被検査デバイスからの反射光を検出する撮像部と、
前記撮像部における前記第1の光および前記第2の光の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する判定部と
を備える検査装置。
【請求項2】
前記第1の光と前記第2の光は拡散度合が異なる光である
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1の光は同軸光であり、前記第2の光は拡散光である
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記同軸光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定し、前記判定の結果が不良の場合、前記拡散光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記同軸光の波長と前記拡散光の波長は異なっており、
前記撮像部は、前記同軸光についての前記被検査デバイスからの前記反射光と前記拡散光についての前記被検査デバイスからの前記反射光を同時に検出する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第1の光と前記第2の光は波長が異なる光である
請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記第1の光および前記第2の光はともに拡散光である
請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記第1の光と前記第2の光は前記被検査デバイスに対する照射角が異なる光である
請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
前記検査装置は、表面に斑点模様およびプローブ痕を有するキャリブレーション用チップを用いて、設定されたタイミングで、前記被検査デバイスに照射する前記同軸光の強度を決定するキャリブレーション動作を行い、
前記キャリブレーション動作において、前記キャリブレーション用チップに照射する前記同軸光の強度を徐々に増加させ、前記斑点模様の画像の輝度と、前記プローブ痕の画像の輝度の差異が設定値以上となる前記同軸光の強度を予め測定する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項10】
前記被検査デバイスは表面に斑点模様を有する半導体チップであり、
前記光源は、前記半導体チップの型式に応じて前記同軸光の強度を調整する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項11】
被検査デバイスを検査する検査方法であって、
前記被検査デバイスに第1の光を照射し、前記第1の光について前記被検査デバイスからの反射光を検出する第1撮像段階と、
前記被検査デバイスに前記第1の光とは照射特性が異なる第2の光を照射し、前記第2の光について前記被検査デバイスからの反射光を検出する第2撮像段階と、
前記第1撮像段階および前記第2撮像段階の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する判定段階と
を備える検査方法。
【請求項12】
前記第1の光は同軸光であり、前記第2の光は拡散光である
請求項11に記載の検査方法。
【請求項13】
前記判定段階は、前記同軸光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定し、前記判定の結果が不良の場合、前記拡散光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する
請求項12に記載の検査方法。
【請求項14】
前記第1撮像段階の前に、表面に斑点模様およびプローブ痕を有するキャリブレーション用チップを用いて、設定されたタイミングで、前記被検査デバイスに照射する前記同軸光の強度を決定するキャリブレーション段階を備え、
前記キャリブレーション段階において、前記キャリブレーション用チップに照射する前記同軸光の強度を徐々に増加させ、前記斑点模様の画像の輝度と、前記プローブ痕の画像の輝度の差異が設定値以上となる前記同軸光の強度を予め測定する
請求項12に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照射光として拡散光を照射する表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2021-179331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
検査において、過検出を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、被検査デバイスを検査する検査装置を提供する。前記検査装置は、前記被検査デバイスに第1の光および前記第1の光とは照射特性の異なる第2の光を照射する光源を備えてよい。前記いずれかの検査装置は、前記第1の光および前記第2の光のそれぞれについて前記被検査デバイスからの反射光を検出する撮像部を備えてよい。前記いずれかの検査装置は、前記撮像部における前記第1の光および前記第2の光の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する判定部を備えてよい。
【0005】
前記いずれかの検査装置において、前記第1の光と前記第2の光は拡散度合が異なる光であってよい。
【0006】
前記いずれかの検査装置において、前記第1の光は同軸光であり、前記第2の光は拡散光であってよい。
【0007】
前記いずれかの検査装置において、前記判定部は、前記同軸光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定し、前記判定の結果が不良の場合、前記拡散光についての前記検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定してよい。
【0008】
前記いずれかの検査装置において、前記同軸光の波長と前記拡散光の波長は異なっていてよい。前記いずれかの検査装置において、前記撮像部は、前記同軸光についての前記被検査デバイスからの前記反射光と前記拡散光についての前記被検査デバイスからの前記反射光を同時に検出してよい。
【0009】
前記いずれかの検査装置において、前記第1の光と前記第2の光は波長が異なる光であってよい。
【0010】
前記いずれかの検査装置において、前記第1の光および前記第2の光はともに拡散光であってよい。
【0011】
前記いずれかの検査装置において、前記第1の光と前記第2の光は前記被検査デバイスに対する照射角が異なる光であってよい。
【0012】
前記いずれかの検査装置は、表面に斑点模様およびプローブ痕を有するキャリブレーション用チップを用いて、設定されたタイミングで、前記被検査デバイスに照射する前記同軸光の強度を決定するキャリブレーション動作を行ってよい。前記いずれかの検査装置は、前記キャリブレーション動作において、前記キャリブレーション用チップに照射する前記同軸光の強度を徐々に増加させ、前記斑点模様の画像の輝度と、前記プローブ痕の画像の輝度の差異が設定値以上となる前記同軸光の強度を予め測定してよい。
【0013】
前記いずれかの検査装置において、前記被検査デバイスは表面に斑点模様を有する半導体チップであってよい。前記いずれかの検査装置において、前記光源は、前記半導体チップの型式に応じて前記同軸光の強度を調整してよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、被検査デバイスを検査する検査方法を提供する。前記検査方法は、前記被検査デバイスに第1の光を照射し、前記第1の光について前記被検査デバイスからの反射光を検出する第1撮像段階を備えてよい。前記いずれかの検査方法は、前記被検査デバイスに前記第1の光とは照射特性が異なる第2の光を照射し、前記第2の光について前記被検査デバイスからの反射光を検出する第2撮像段階を備えてよい。前記いずれかの検査方法は、前記第1撮像段階および前記第2撮像段階の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記被検査デバイスの良否を判定する判定段階を備えてよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例における検査装置10を示す図である。
【
図2A】半導体チップ表面のイメージ図と実施例における判定結果を示す図である。
【
図2B】本実施例における検査手順を示す図である。
【
図3A】半導体チップ表面のイメージ図と比較例における判定結果を示す図である。
【
図4】同軸光の強度を変化させた場合の半導体チップの変化を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書では、各図における同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上一部の構成を図示しない場合がある。
【0018】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0019】
図1は、実施例における検査装置10を示す図である。検査装置10は被検査デバイス30を検査する。本例の検査装置10は、被検査デバイス30の画像を撮影し、その結果に基づいて被検査デバイス30の良否を検査する。被検査デバイス30は一例として半導体チップである。本例の被検査デバイス30の表面には、金属のパッドまたは電極が設けられている。パッドまたは電極は、アルミニウムを含んでよい。検査装置10は、金属のパッドまたは電極の表面の画像に基づいて、被検査デバイス30の良否を判定してよい。検査装置10は、光源12、撮像部14および判定部16を備える。検査装置10は、ハーフミラー20および拡散ドーム22を備えてよい。
【0020】
光源12は、被検査デバイス30に光を照射する。本例の検査装置10は、光源12-1および光源12-2を有する。光源12は、被検査デバイス30に第1の光41および第1の光41とは照射特性の異なる第2の光42を照射してよい。本例では、光源12-1が第1の光41を照射し、光源12-2が第2の光42を照射する。照射特性とは、後述する光の拡散度合であってよく、光の波長であってよく、被検査デバイス30に対する光の照射角であってよく、光の強度であってもよい。第1の光41および第2の光42は、白色光であってよく、特定の波長の光であってもよい。
【0021】
第1の光41と第2の光42は拡散度合が異なる光であってよい。拡散度合とは、光が所定の距離進む間に、光が広がる度合いであってよい。第1の光41は同軸光であり、第2の光は拡散光であってよい。同軸光とは、指向性が高く、拡散度合の低い光である。同軸光は平行光であってよい。同軸光は、被検査デバイス30に単一の入射角で入射し、且つ、単一の出射角で被検査デバイス30から出射してよい。被検査デバイス30の平坦部分に同軸光を照射した場合、当該入射角と当該出射角は同一であってよい。拡散光とは、同軸光よりも指向性が低く、同軸光よりも拡散度合の高い光である。拡散光は、複数の方向から被検査デバイス30へ入射する光であってよい。一例として、光源12-1はレーザー光源であり、光源12-2はLEDである。
【0022】
第1の光41は、光源12-1からハーフミラー20によって被検査デバイス30に照射されてよい。光源12-2は、拡散ドーム22の内部に配置されてよい。第2の光42は、光源12-2から照射され、拡散ドーム22の内部で反射して被検査デバイス30に入射してよい。本例の被検査デバイス30は、拡散ドーム22の内部に配置されている。
【0023】
拡散ドーム22は、内壁が反射率の高い材料でコーティングされており、半球状のドーム型をしている。拡散ドーム22には、第1の光41および被検査デバイス30からの反射光43が通過する孔が設けられている。このため、拡散ドーム22を移動させることなく第1の光41を照射することができる。
【0024】
光源12-2は、拡散ドーム22の外部に配置されていてもよい。光源12-1および光源12-2は同じ期間に光を照射していてもよい。光源12-1が第1の光41を照射している間は、光源12-2は第2の光42を照射しなくてもよい。光源12-2が第2の光42を照射している間は、光源12-1は第1の光41を照射しなくてもよい。
【0025】
被検査デバイス30からの反射光43は、ハーフミラー20を透過して撮像部14に入射してよい。撮像部14は、被検査デバイス30からの反射光43を検出する。本例の撮像部14は、第1の光41および第2の光42のそれぞれについて被検査デバイス30からの反射光43を検出する。撮像部14は、第1の光41および第2の光42を、互いに異なる期間に検出してよい。第1の光41および第2の光42の波長が異なる場合、撮像部14は、第1の光41および第2の光42を、波長分離して同時に検出してもよい。一例として、撮像部14はCCDイメージセンサである。検査装置10は撮像部14を複数備え、それぞれの撮像部14が異なる光を検出してもよい。撮像部14は検出結果を判定部16へ出力する。撮像部14は検出結果から画像を生成し、当該画像を判定部16へ出力してもよい。
【0026】
判定部16は、撮像部14における第1の光41および第2の光42の少なくとも一方の検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定する。判定部16における判定の手順については後述する。
【0027】
被検査デバイス30が半導体チップの場合の、半導体チップの良否について説明する。半導体チップに設けられたパッドまたは電極の表面には、プローブ痕が形成される場合がある。プローブ痕は、半導体チップの表面から深さ方向に所定の深さだけ窪んでいる部分である。例えばプローブ痕は、検査装置10による検査より前に実施された他の導通試験等において、パッドまたは電極にプローブピンが押圧されることで形成される。プローブ痕の窪みが浅い場合には問題ないが、プローブ痕が深い場合は製品として好ましくない。そのため、半導体チップが深いプローブ痕を有する場合を判別できることが望ましい。
【0028】
一方、半導体チップのパッドまたは電極は、表面に多数の斑点模様を有する。斑点模様は、製品の製造時等に形成される模様である。斑点模様は、製品の電気的な特性に大きな影響を及ぼすものではない。斑点模様には、半導体チップのパッドまたは電極の表面にある比較的に小さい異物、小さなキズまたは薬品による痕などが含まれていてもよい。パッドまたは電極の表面に比較的に大きな異物が付着している半導体チップは、他の検査で予め除外されていてよい。
【0029】
斑点模様の中には、プローブ痕と色彩または形状が類似しているものがある。そのため、画像検査において、良品と判別すべき斑点模様を、不良である深いプローブ痕として誤検出してしまう場合がある。本例の半導体チップの良否の判定においては、プローブ痕の深さの判定と、プローブ痕と斑点模様の切り分けを行う。これにより、不良として検出すべき深いプローブ痕と、良品として検出すべき浅いプローブ痕および斑点模様とを判別することができる。本明細書では、プローブ痕と色彩または形状が類似している斑点模様を類似の斑点模様と称し、プローブ痕と類似しない斑点模様を通常の斑点模様と称する場合がある。
【0030】
図2Aは、半導体チップ表面の撮影画像と、検査装置10による判定結果(装置判定)を示す図である。
図2Aでは、検査員による、それぞれの半導体チップの目視判定の結果を合わせて示している。検査装置10の判定結果は、目視判定の結果と一致することが好ましい。
【0031】
図2Aでは、検査対象のそれぞれの半導体チップの特徴(チップ特徴)を示している。チップ特徴には、正常品、斑点模様、プローブ痕(浅い)、プローブ痕(深い)が含まれる。「正常品」とは、プローブ痕と非類似の通常の斑点模様を有するが、プローブ痕に類似の斑点模様およびプローブ痕は有さない半導体チップであることを示している。「斑点模様」とは、通常の斑点模様に加えて類似の斑点模様を有するが、プローブ痕は有さない半導体チップであることを示している。「プローブ痕(浅い)」は、良品と判別すべき浅いプローブ痕を有する半導体チップであることを示している。「プローブ痕(深い)」は、不良と判別すべき深いプローブ痕を有する半導体チップであることを示している。正常品以外の半導体チップも、通常の斑点模様を有する。
【0032】
図2Aでは、半導体チップを同軸照明および拡散照明のそれぞれの照明環境下で撮影した撮影画像の概略を示している。同軸照明とは、同軸光を半導体チップに照射することを指している。拡散照明とは、拡散光を半導体チップに照射することを指している。本例において同軸光は、半導体チップの表面と垂直な方向から入射し、垂直な方向へ反射する。プローブ痕は半導体チップの深さ方向に窪んでいる。プローブ痕の底面は、プローブ痕がないパッドおよび電極の表面に比べて、凹凸が大きくなる傾向がある。プローブ痕による窪みに同軸光が入射すると、プローブ痕の底面および側面で光が乱反射する。このため、窪みに入射した同軸光が垂直方向に反射する光量は、窪んでいない他の表面に入射した同軸光が垂直方向に反射する光量よりも少なくなる。また、プローブ痕の窪みの側面は半導体チップの表面と平行でないため、当該側面によって反射された反射光は撮像部14に検知されない。そのため、プローブ痕は、同軸照明による撮影画像において黒く写り、半導体チップは不良と判断される。図中では、同軸照明におけるプローブ痕を黒塗りの楕円で示している。
【0033】
プローブ痕の底面の状態は、プローブ痕の深さによってあまり変化しない。また、浅いプローブ痕も側面を有する。同軸照明での撮影画像では、浅いプローブ痕と深いプローブ痕は共に同じような写り方をするので、両者を判別することは難しい。そのため、同軸照明のみを用いた場合、浅いプローブ痕を有する半導体チップを不良とする誤った判定(正否×)が下されてしまう。
【0034】
拡散光は複数の方向から半導体チップに照射される。そのため、プローブ痕の深さによって写り方が異なる。プローブ痕に入射した光は、プローブ痕の底面および側面で乱反射を繰り返す。プローブ痕の開口に向かう方向に反射した光が、プローブ痕から出射する。プローブ痕が深いほど、半導体チップの表面に対して垂直方向以外の方向に進む光が出射しにくくなる。このため、プローブ痕が深いほど、プローブ痕から出射する光において、チップ表面に対して垂直方向に進む光の割合が大きくなる。本例の撮影画像においては、深いプローブ痕は比較的に輝度の高い白色となり、浅いプローブ痕は比較的に輝度の低い白色となる。そのためプローブ痕の深さを判別することができる。図中では、拡散照明における通常の斑点模様を黒丸で示し、類似の斑点模様および深いプローブ痕を白塗りの楕円で示している。
【0035】
しかし、類似の斑点模様と深いプローブ痕は、拡散照明での撮影画像において同じような写り方をするので、両者を判別することは難しい。その結果、拡散照明のみを用いた場合、類似の斑点模様を有する半導体チップを不良とする誤った判定(正否×)が下されてしまう。
【0036】
本実施例においては、同軸照明と拡散照明を組み合わせて検査を行う。同軸照明での検査によって、斑点模様を除去することができ、拡散照明での検査によって、深いプローブ痕のみを検出することができる。このため、不良とすべきでない半導体チップを不良と判別する過検出を防げる。
【0037】
半導体チップを目視で検査する場合、深いプローブ痕を有する半導体チップを判定することができるが、検査員の労力と多くの時間がかかってしまう。本実施例によれば、検査工程を自動化し、過検出を抑制することができる。
【0038】
図2Bは、実施例における検査手順を示す図である。検査方法は、被検査デバイス30に第1の光41を照射し、第1の光41について被検査デバイス30からの反射光43を検出する第1撮像段階(S100)を備える。本例における第1の光41は同軸光である。検査方法は、被検査デバイス30に第1の光41とは照射特性が異なる第2の光42を照射し、第2の光42について被検査デバイス30からの反射光43を検出する第2撮像段階(S102)を備える。本例における第2の光42は拡散光である。
【0039】
検査方法は、撮影した画像を二値化するステップ(S104、S108)を備えてよい。検査方法は、第1撮像段階および第2撮像段階の少なくとも一方の検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定する判定段階(S106、S110)を備えてよい。判定部16は、撮像部14における第1の光41および第2の光42の少なくとも一方の検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定してよい。ステップS106が、同軸照明画像の判定を示しており、ステップS110が拡散証明画像の判定を示している。
【0040】
判定部16は、撮影した画像または二値化した画像の輝度に基づいて半導体チップの良否を判定してよい。判定部16は、所定の値以下または以上の輝度を有する各領域を検出する。各領域は、輝度値が当該条件を満たす画素が、互いに隣接して分布している領域である。判定部16は、所定の閾値より大きい面積の領域が1つでも存在する場合、当該半導体チップを不良と判断してよい。判定部16は、所定の閾値より大きい面積の領域が1つも存在しない場合(すなわち全ての領域について、面積の値が閾値以下の場合)、半導体チップは良品と判断してよい。撮像部14がステップS100、S102を行い、判定部16がステップS104~S110を行ってよい。
【0041】
判定部16は、同軸光についての検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定し、判定の結果が不良の場合、拡散光についての検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定してよい。すなわち、同軸照明で撮影した画像の判定(S106)を行い、判定結果が不良の場合に拡散照明で撮影した画像の判定(S110)を行ってよい。ほとんどの半導体チップは斑点模様を有するが、プローブ痕を有する半導体チップは限られている。同軸照明の判定を先に行うことでプローブ痕を有さない半導体チップの検査工程を少なくでき、検査時間を短縮することができる。ただし、判定部16は、拡散光についての検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定し、判定の結果が不良の場合、同軸光についての検出結果に基づいて被検査デバイス30の良否を判定してもよい。
【0042】
検査装置10が同軸照明で被検査デバイス30の画像を撮影し(S100)、判定部16が同軸画像の判定(S106)を行い、判定結果が不良に場合に、検査装置10が拡散照明で被検査デバイス30の画像を撮影してもよい(S102)。同様に、検査装置10が拡散照明で被検査デバイス30の画像を撮影し(S102)、判定部16が拡散画像の判定(S108)を行い、判定結果が不良に場合に、検査装置10が同軸照明で被検査デバイス30の画像を撮影してもよい(S100)。これによって検査工程が少なくなり、検査時間を短縮することができる。
【0043】
図3Aは、半導体チップ表面のイメージ図と比較例における判定結果を示す図である。半導体チップ表面のイメージ図は、
図2Aの拡散証明と同様である。比較例では、拡散照明のみを用いて画像を撮影し検査を行った。そのため、深いプローブ痕と斑点模様の判別が十分でなく、深いプローブ痕を有さない場合でも、不良と判定してしまう場合がある。
【0044】
図3Bは、比較例における検査手順を示す図である。
図3BにおけるステップS200は、
図2BにおけるステップS102と同様であり、ステップS202は、ステップS108と同様であり、ステップS204は、ステップS110と同様である。比較例では、拡散照明のみを用いて画像を撮影し検査を行った。
【0045】
図4は、同軸光の強度を変化させた場合の撮影画像の変化を示す図である。図中の黒丸が斑点模様を示し、黒塗りの楕円がプローブ痕を示している。
図4における各撮影画像は、画像中のコントラストを示している。各撮影画像の間では、輝度の絶対値は異なっていてよい。同軸光の強度が弱い場合、プローブ痕の輝度と、斑点模様の輝度との差異が小さく、同一の撮影画像中にプローブ痕と斑点模様とが含まれる。この場合、プローブ痕と斑点模様とを区別することが難しい。同軸光の強度を強くしていくと、プローブ痕と斑点模様との輝度差が大きくなり、プローブ痕と斑点模様の区別が明確になる。
【0046】
光源12-1は、プローブ痕と斑点模様を区別できる強度の同軸光を照射する。同軸光を照射した場合の斑点模様の見え方は、斑点模様の光の反射特性等に応じて異なる。斑点模様の反射特性は、斑点模様を形成した薬品の組成等により変化し得る。このため、半導体チップごとに、適切な同軸光の強度が変化する場合がある。
【0047】
検査装置10は、設定されたタイミングで、被検査デバイス30に照射する同軸光の強度を決定するキャリブレーション動作を行ってよい。設定されたタイミングとは、被検査デバイス30のロットが変わるタイミングであってよく、半導体チップの種類・型式が変わるタイミングであってよく、前回のキャリブレーションから所定の期間を経過したタイミングであってもよい。
【0048】
検査装置10は、キャリブレーション動作において、キャリブレーション用チップに照射する同軸光の強度を徐々に増加させ、撮影画像において斑点模様の輝度と、プローブ痕の輝度の差異が所定値以上となる同軸光の強度を予め測定してよい。検査装置10は、斑点模様の輝度と、斑点模様以外の個所の輝度の差が所定値以下となる同軸光の強度を予め測定してもよい。キャリブレーション用チップは、被検査デバイス30のうち、表面に斑点模様およびプローブ痕を有するチップである。キャリブレーション用チップは、検査員等により被検査デバイス30から抽出されてよい。検査装置10は、
図2Bにおいて説明したいずれの検査手順においても、予めキャリブレーション動作を行ってよい。
【0049】
検査装置10は、キャリブレーション動作によって測定した強度の同軸光を用いて検査を行ってよく、当該強度の2倍の強度の同軸光を用いてもよく、当該強度の4倍の強度の同軸光を用いてもよい。当該強度よりも高い強度の同軸光を用いることで、斑点模様が検出される可能性をさらに低くすることができる。
【0050】
拡散光についても同様に、キャリブレーション動作を行ってよい。拡散光のキャリブレーション動作において検査装置10は、良否の境界の深さを有するプローブ痕の輝度と、パッドまたは電極の平坦部分における輝度との差が所定値以上となる拡散光の強度を検出してよい。他の例では、良品と判定すべき第1深さの浅いプローブ痕と、不良と判定すべき第2深さの深いプローブ痕の輝度の差が、所定値以上となる強度を測定してもよい。
【0051】
斑点模様の写りは、半導体チップの型式によっても異なる場合がある。光源12-1は、半導体チップの型式に応じて同軸光の強度を調整してよい。これにより、様々な型式の半導体チップに対して、過検出を抑制することができる。同様に光源12-2は、半導体チップの型式に応じて拡散光の強度を調整してよい。
【0052】
他の例として、第1の光41と第2の光42は波長が異なる光であってよい。斑点模様の反射特性に応じて、波長が異なることによって斑点模様の写りが異なる。このため、異なる波長の光を用いることで、斑点模様か否かを判別することができる。判定部16は、第1の光41を用いた撮影画像と、第2の光42を用いた撮影画像とで、輝度の変化が所定値以上の領域については、斑点模様と判定してよい。第1の光41と第2の光42の波長は、斑点模様以外の領域(例えばプローブ痕)における反射率の差異が、斑点模様における反射率の差異より小さい波長であることが好ましい。
【0053】
第1の光41および第2の光42はともに拡散光であってよい。拡散光を用いることによってプローブ痕の深さを判定できる。プローブ痕の深さは、第1の光41および第2の光42のいずれか一方の撮影画像で判別してよく、両方の撮影画像から判別してもよい。例えば、少なくとも一方の撮影画像において、深いプローブ痕が存在すると判別した場合、被検査デバイス30を不良と判別してよい。第1の光41と第2の光42の波長が異なり、かつ、ともに拡散光の場合、斑点模様およびプローブ痕の深さの両方を判定できる。
【0054】
第1の光41は同軸光であり、第2の光42は拡散光である場合に、同軸光の波長と拡散光の波長は異なっていてよい。この場合撮像部14は、同軸光についての被検査デバイス30からの反射光43と拡散光についての被検査デバイス30からの反射光43を同時に検出してよい。撮像部14は、一度の撮影で同軸光についての反射光43と拡散光についての反射光43を検出してよい。これによって検査時間を短縮することができる。
【0055】
他の例では、第1の光41と第2の光42は被検査デバイス30に対する照射角が異なる光であってよい。照射角とは、被検査デバイス30の表面と被検査デバイス30に入射する光のなす角であってよい。照射角を変えることで、プローブ痕の深さによって写りが変わるため、プローブ痕の深さを判定できる。第1の光41と第2の光42は、波長と照射角の両方が異なっていてもよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、フローチャート、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
10・・・検査装置、12・・・光源、14・・・撮像部、16・・・判定部、20・・・ハーフミラー、22・・・拡散ドーム、30・・・被検査デバイス、41・・・第1の光、42・・・第2の光、43・・・反射光