(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151767
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20241018BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
H02G3/04
B60R16/02 620Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065452
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G357DG04
(57)【要約】
【課題】原価の低減を図ること。
【解決手段】外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材20と、重ね合わせた一対の外装部材20に保護対象部11が挟み込まれた少なくとも1本の配索電線10と、を備え、複数枚の外装部材20は、積層され、かつ、その少なくとも一部分同士が接合された接合部25を有すること。例えば、接合部25は、複数枚の外装部材20に貫通して一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から挟み込んで加締め圧着させたハトメ留め具30を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材と、
重ね合わせた一対の前記外装部材に保護対象部が挟み込まれた少なくとも1本の配索電線と、
を備え、
複数枚の前記外装部材は、積層され、かつ、その少なくとも一部分同士が接合された接合部を有することを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記接合部は、複数枚の前記外装部材に貫通して一方の外層の前記外装部材側と他方の外層の前記外装部材側から挟み込んで加締め圧着させたハトメ留め具を備えることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記接合部では、複数枚の前記外装部材にて、重ね合わせた一対の前記外装部材毎に当該一対の外装部材の少なくとも一部分同士が接着又は溶着されることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材の内、一方の外層の前記外装部材を治具板に設置する第1外層設置工程と、
前記一方の外層の前記外装部材に少なくとも1本の配索電線の保護対象部を配策する内層設置工程と、
前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対して、複数枚の前記外装部材の内の他方の外層の前記外装部材を重ね合わせる第2外層設置工程と、
複数枚の前記外装部材を接合する接合工程と、
を有することを特徴としたワイヤハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記内層設置工程は、前記一方の外層の前記外装部材と前記他方の外層の前記外装部材との間に介在させる前記保護対象部の層数に応じて、前記保護対象部の配索と、複数枚の前記外装部材の内の内層の前記外装部材の設置と、を交互に繰り返す工程であり、
前記内層設置工程では、前記保護対象部の層数に応じて、前記外装部材に対する前記保護対象部の配索と、前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対する前記内層の前記外装部材の重ね合わせと、を前記内層の前記外装部材が最終層になるまで交互に繰り返し、その後、最終層の前記保護対象部を前記最終層の前記内層の前記外装部材に配策し、
前記第2外層設置工程では、前記最終層の前記保護対象部と当該最終層の前記保護対象部が載せ置かれた前記最終層の前記内層の前記外装部材に対して、前記他方の外層の前記外装部材を重ね合わせることを特徴とした請求項4に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
前記内層設置工程では、前記保護対象部を配策する際に、前記治具板上で前記保護対象部の配索経路に沿わせて配置された2本の電線配索ピンの間の隙間に前記保護対象部を通し、
前記第1外層設置工程と前記第2外層設置工程では、それぞれの工程で前記外装部材を設置する際に、前記外装部材における網目の貫通孔に対して当該貫通孔よりも太い前記電線配索ピンを挿通させることを特徴とした請求項4に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
筒部と鍔部を有するハトメ留め具を前記第1外層設置工程の実施前に前記治具板上のハトメ設置部に対して設置するハトメ設置工程を有し、
前記第1外層設置工程と前記第2外層設置工程では、それぞれの工程で前記外装部材を設置する際に、前記筒部を前記外装部材に貫通させ、
前記接合工程では、複数枚の前記外装部材に対して前記ハトメ留め具を前記一方の外層の前記外装部材側と前記他方の外層の前記外装部材側から挟み込んで加締め圧着させることを特徴とした請求項4に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスにおいては、その電線を車体やパワートレーン等の構造物に沿わせるなどして配索される。このため、このワイヤハーネスにおいては、電線を周辺部品との干渉等から保護する外装部材として、電線に巻き付ける粘着テープや電線を収容するコルゲートチューブが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-241790号公報
【特許文献2】特開2020-10453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスは、粘着テープを電線に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に電線を差し込んだりして、外装部材を電線に組み付ける。このため、従来のワイヤハーネスにおいては、殊に、電線の配索経路が複雑であったり、電線が分岐していたりすると、組付け後の品質の安定化を図るべく、外装部材を手作業で電線に組み付ける必要がある。よって、従来のワイヤハーネスは、その製造過程で原価を低減させる余地が残っている。
【0005】
そこで、本発明は、原価の低減を図り得るワイヤハーネス及びその製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワイヤハーネスは、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材と、重ね合わせた一対の前記外装部材に保護対象部が挟み込まれた少なくとも1本の配索電線と、を備え、複数枚の前記外装部材は、積層され、かつ、その少なくとも一部分同士が接合された接合部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材の内、一方の外層の前記外装部材を治具板に設置する第1外層設置工程と、前記一方の外層の前記外装部材に少なくとも1本の配索電線の保護対象部を配策する内層設置工程と、前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対して、複数枚の前記外装部材の内の他方の外層の前記外装部材を重ね合わせる第2外層設置工程と、複数枚の前記外装部材を接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法は、配索電線の保護対象部を一対の外装部材で挟み込むだけで、その保護対象部に外装部材を組み付けることができる。このため、このワイヤハーネス及びその製造方法は、従来のように、粘着テープを保護対象部に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に保護対象部を差し込んだりしなくてもよいので、配索電線の配索経路が複雑であったり、配索電線が分岐していたりしていても、手作業に頼ることなく保護対象部に外装部材を組み付けることができる。従って、本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法は、その製造工程の自動化に寄与することとなり、これ故、原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の治具板を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のハトメ設置工程について説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態の第1外層設置工程について説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態の内層設置工程(電線設置工程)について説明する説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第2外層設置工程について説明する説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態の接合工程について説明する説明図である。
【
図9】
図9は、ハトメ留め具について説明する斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法の実施形態の1つを
図1から
図10に基づいて説明する。
【0012】
図1及び
図2の符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。このワイヤハーネス1は、少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11をシート状の一対の外装部材20で挟み込んだものを最少構成として持っている(
図1及び
図2)。このワイヤハーネス1は、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材20と、重ね合わせた一対の外装部材20に保護対象部11が挟み込まれた少なくとも1本の配索電線10と、を備える。
【0013】
配索電線10とは、1本の電線又は複数本の電線が束ねられた電線束のことである。この配索電線10は、車体やパワートレーン等の構造物に沿わせるなどして配索される。このため、この配索電線10においては、周辺部品との干渉等が想定される場所を保護対象部11とし、この保護対象部11を外装部材20で包み込んで外側から保護する。
【0014】
外装部材20は、網目状に成形されたシート状の部材であり、挟み込んだ配索電線10の形に追従させるなどの変形を可能にするべく、柔軟性を持たせている。この外装部材20は、柔軟性を全体に持たせつつ、外表面に絶縁性を持たせるべく、例えば、合成ゴム等の絶縁性材料で成形される。
【0015】
また、この外装部材20は、挟み込んだ配索電線10の位置ずれを抑えるべく、外表面の摩擦係数が大きい絶縁性材料で成形されることが望ましい。
【0016】
また、この外装部材20は、変形後の形状を保持させるべく、金属製の素線を補強糸の如く内部に包含させてもよい。例えば、この外装部材20においては、その素線を網目状に織り込み、この網目状の形状保持部材の網目に沿う形で網目状の絶縁部を合成ゴム等の絶縁性材料で形成してもよい。ここで、その網目状の形状保持部材については、所謂編組の如くシールド部材として機能させることも可能である。よって、この外装部材20は、配索電線10を別途編組で包み込まずとも、一対の外装部材20で配索電線10を挟み込むだけで、外部からのノイズの侵入等を抑えることができる。
【0017】
複数枚の外装部材20は、積層され、その一対の外装部材20の間に配索電線10の保護対象部11を挟み込む。この複数枚の外装部材20は、その少なくとも一部分同士が接合された接合部25を有する(
図1)。複数枚の外装部材20は、その全てが同じ部材であってもよく、その全て又はその一部が例えば形状や原材料の違う別の部材であってもよい。この例示では、全てに同じ矩形の外装部材20を用いている。
【0018】
このワイヤハーネス1は、換言するならば、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとを備え、かつ、この一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に保護対象部11が挟み込まれた配索電線10を備える層構成のものが最少構成となる(
図1及び
図2)。つまり、このワイヤハーネス1は、保護対象部11の配置されている層(以下、「電線層」という。)が1層のみのものが最少構成となる。そして、このワイヤハーネス1は、電線層を一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層設けた構成にすることもできる。
【0019】
このワイヤハーネス1は、治具板500の上で組み立てられる(
図3から
図8)。このワイヤハーネス1は、第1外層設置工程と内層設置工程と第2外層設置工程と接合工程を経て組み付けられる。但し、このワイヤハーネス1は、後述するように、第1外層設置工程の前にハトメ設置工程を実施する。
【0020】
ここでは、先ず、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に1層の電線層を配置する場合の製造方法について説明する。
【0021】
第1外層設置工程では、複数枚の外装部材20の内、一方の外層の外装部材20Aを治具板500に設置する(
図5)。そして、内層設置工程では、その一方の外層の外装部材20Aに少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11を配策する(
図6)。
【0022】
内層設置工程では、保護対象部11を配策する際に、その治具板500上で保護対象部11の配索経路に沿わせて配置された2本の電線配索ピン510の間の隙間に保護対象部11を通す(
図6)。ここで、治具板500には、少なくとも2本で1組となる電線配索ピン510が保護対象部11の配索経路に沿って複数箇所に立設されている(
図3から
図8)。例えば、電線配索ピン510は、保護対象部11の配索経路に沿う形で、保護対象部11の曲げ点となる場所等に少なくとも2本を1組にして配置される。
【0023】
その電線配索ピン510は、第1外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、その外装部材20Aの直下に存在していなければ、この外装部材20Aの設置作業の邪魔にはならない。しかしながら、保護対象部11の配索経路如何では、第1外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、電線配索ピン510が外装部材20Aの直下に存在することもある。ここで挙げている例示では、この状況を表している(
図5)。よって、第1外層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、この外装部材20Aにおける網目の貫通孔21(
図1)に対して当該貫通孔21よりも太い電線配索ピン510を挿通させる。
【0024】
このワイヤハーネス1においては、外装部材20が網目状に成形されているので、その貫通孔21を利用することによって、別の貫通孔を設けるなどの細工を外装部材20に施さずとも、治具板500に外装部材20を設置することができる。更に、このワイヤハーネス1においては、外装部材20の網目の貫通孔21を電線配索ピン510よりも小さくすることによって、その外装部材20の網目の貫通孔21と電線配索ピン510を利用して、治具板500上での外装部材20の位置ずれを抑えることができる。
【0025】
この例示の治具板500には、2本で1組となる電線配索ピン510が3箇所に配置され、かつ、3本で1組となる電線配索ピン510が1箇所に配置されている(
図3から
図8)。そして、この例示の内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aに2本の配索電線10の保護対象部11が配策される。
【0026】
一対の電線配索ピン510は、3箇所とも、保護対象部11が一対の外装部材20で挟み込まれた配索電線10を一対の外装部材20の間から外へと引き出すための場所(所謂電線引出口となる場所)に配置されている(
図3から
図8)。この3箇所の一対の電線配索ピン510の内の1つ(一対の電線配索ピン510A)は、2本の配索電線10の一端側を一対の外装部材20の間から外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置されている(
図6)。残りの2箇所の一対の電線配索ピン510は、その内の一方(一対の電線配索ピン510B)が一方の配索電線10の他端側を外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置され、その内の他方(一対の電線配索ピン510C)が他方の配索電線10の他端側を外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置されている(
図6)。
【0027】
また、3本で1組の電線配索ピン510(510D)は、それぞれに三角形の頂点に配置され、2本の電線配索ピン510Dの間の隙間を3箇所に形成する(
図3から
図8)。この3本の電線配索ピン510Dにおいては、3箇所の隙間の内の1つに、一対の電線配索ピン510Aの隙間を通した2本の配索電線10の保護対象部11を通す(
図6)。そして、この3本の電線配索ピン510Dにおいては、残りの2箇所の隙間の内の一方に一方の配索電線10の保護対象部11を通し、その内の他方に他方の配索電線10の保護対象部11を通す(
図6)。この3本の電線配索ピン510Dは、その一方の隙間を通した一方の配索電線10の保護対象部11を一対の電線配索ピン510Bに向けて配索させ、その他方の隙間を通した他方の配索電線10の保護対象部11を一対の電線配索ピン510Cに向けて配索させる(
図6)。
【0028】
この例示では、その2本の配索電線10の保護対象部11による1層のみが電線層になる。よって、この例示の内層設置工程は、配索電線10の保護対象部11のみを配策する電線設置工程と云える。
【0029】
第2外層設置工程では、保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた外装部材20に対して、複数枚の外装部材20の内の他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる(
図7)。この例示の第2外層設置工程では、他方の外層の外装部材20Bを設置する際に、第1外層設置工程と同じように、その外装部材20Bにおける網目の貫通孔21に対して電線配索ピン510を挿通させる。この例示の第2外層設置工程では、2本の配索電線10の保護対象部11と当該2本の保護対象部11が載せ置かれた一方の外層の外装部材20Aに対して、他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる。
【0030】
接合工程は、第2外層設置工程を終えた後で実施する。この接合工程では、複数枚の外装部材20を接合して、この複数枚の外装部材20が散けないようにする。ここで、この例示のワイヤハーネス1において、接合部25は、複数枚の外装部材20に貫通して一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から挟み込んで加締め圧着させたハトメ留め具30を備える(
図1及び
図2)。ここで示すハトメ留め具30は、金属材料で成形されている。
【0031】
ここで例示する製造方法は、そのハトメ留め具30を第1外層設置工程の実施前に設置するハトメ設置工程を有する(
図4)。このハトメ設置工程では、筒部31aと鍔部31bを有するハトメ留め具30(
図9)を第1外層設置工程の実施前に治具板500上のハトメ設置部520(
図3)に対して設置する。例えば、ハトメ設置部520は、治具板500から立設させたピン形状の部材であり、ハトメ留め具30の筒部31aに鍔部31b側から挿通させることによって、治具板500上にハトメ留め具30を設置する。
【0032】
この例示では、3本で1組の電線配索ピン510の各隙間を通る2本の配索電線10の保護対象部11について、それぞれの隙間毎に2つのハトメ留め具30で挟み込む(
図8)。そこで、この例示では、かかるハトメ留め具30の配置を可能にする場所に、ハトメ設置部520を3つ設けている。
【0033】
また、この例示のワイヤハーネス1では、ハトメ留め具30に複数枚の外装部材20の接合機能を担わせているので、その複数枚の外装部材20が散けないように、その接合機能に適した場所(ここでは他の2箇所)にハトメ留め具30を設けている(
図1及び
図8)。
【0034】
第1外層設置工程と第2外層設置工程では、それぞれの工程で外装部材20(一方の外層の外装部材20A、他方の外装部材20B)を設置する際に、ハトメ留め具30の筒部31aを外装部材20(一方の外層の外装部材20A、他方の外層の外装部材20B)に貫通させる。この第1外層設置工程と第2外層設置工程においては、ハトメ留め具30の筒部31aとその内方のピン形状のハトメ設置部520とを外装部材20(一方の外層の外装部材20A、他方の外層の外装部材20B)に貫通させる。
【0035】
ここで、ハトメ留め具30は、その筒部31aを外装部材20の網目の貫通孔21に差し入れることが可能な太さに形成することが望ましい。この場合、第1外層設置工程と第2外層設置工程においては、ハトメ留め具30の筒部31aとその内方のピン形状のハトメ設置部520を外装部材20(一方の外層の外装部材20A、他方の外層の外装部材20B)における網目の貫通孔21に挿通させる。一方、外装部材20においては、ハトメ留め具30の筒部31aが網目の貫通孔21に差し入れ難い太さの場合、例えば、この筒部31aの差し入れが可能な大きさの貫通孔を形成する。
【0036】
接合工程では、複数枚の外装部材20に対してハトメ留め具30を一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から挟み込んで加締め圧着させる(
図2及び
図8)。例えば、ハトメ留め具30は、筒部31aと鍔部31bを有するハトメ本体31のみで構成されたものであってもよく、このハトメ本体31と環状の座金32とを備えるものであってもよい(
図2及び
図9)。前者の場合、接合工程では、ハトメ設置工程で設置されたハトメ本体31の筒部31aを加締め変形させる。後者の場合には、ハトメ設置工程でハトメ本体31を設置する(
図4)。そして、後者の場合、接合工程では、他方の外装部材20Bから飛び出ているハトメ本体31の筒部31aに座金32を組み付けて、ハトメ本体31の筒部31aを加締め変形させながら、この筒部31aと他方の外装部材20Bの間に座金32を挟み込む(
図2及び
図9)。
【0037】
ところで、接合部25は、ハトメ留め具30を備えるものに替えて、重ね合わせた一対の外装部材20の少なくとも一部分同士を接着又は溶着したものであってもよく、ハトメ留め具30を備えるものと接着又は溶着されたものとが併存してもよい。接合部25では、接着又は溶着によるものである場合、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20の少なくとも一部分同士が接着又は溶着される。
【0038】
例えば、接合工程では、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bの少なくとも一部分同士を接着剤で接着してもよく、外装部材20に粘着性や吸着性を持たせることによって、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを互いに自己粘着させてもよい。
【0039】
また、接合工程では、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bの少なくとも一部分同士を超音波溶着等の周知の溶着技術を用いて溶着してもよい。例えば、この接合工程では、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを治具板500とホーン(図示略)で挟み込んで加圧し、その外装部材20Aと外装部材20Bにホーンから超音波振動を伝えて、この外装部材20Aと外装部材20Bの少なくとも一部分同士を溶着する。ここでは、治具板500をホーンと対になるアンビルとして利用する。また、ここでは、外装部材20が網目状に成形されているので、その網目の貫通孔21よりも太いホーンを用いる。
【0040】
ここまでは、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に介在させる電線層が1層のみの製造方法について説明した。そこで、次は、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層の電線層を配置する場合の製造方法について説明する。
【0041】
この場合、内層設置工程は、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に介在させる保護対象部11の層数に応じて、保護対象部11の配索と、複数枚の外装部材20の内の内層の外装部材20Cの設置と、を交互に繰り返す工程となる(
図10)。この内層設置工程では、保護対象部11の層数に応じて、外装部材20に対する保護対象部11の配索と、その保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた外装部材20に対する内層の外装部材20Cの重ね合わせと、を内層の外装部材20Cが最終層になるまで交互に繰り返し、その後、最終層の保護対象部11を最終層の内層の外装部材20Cに配策する。
【0042】
例えば、内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aに少なくとも1本(具体例では2本)の配索電線10の保護対象部11を配策し、その保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた一方の外層の外装部材20Aに対して、内層の外装部材20Cを1枚重ね合わせる。この内層設置工程では、電線配索ピン510が内層の外装部材20Cの直下に存在する場合、その外装部材20Cを設置する際に、この外装部材20Cにおける網目の貫通孔21に対して電線配索ピン510を挿通させる。また、この内層設置工程では、ハトメ留め具30をワイヤハーネス1に適用する場合、内層の外装部材20Cを設置する際に、そのハトメ留め具30の筒部31aを外装部材20Cに貫通させる。
【0043】
この具体例では、その外装部材20Cが最終層の内層の外装部材20Cになるので、この最終層の内層の外装部材20Cに少なくとも1本(ここでは2本)の配索電線10の保護対象部11を最終層の保護対象部11として配策する。よって、第2外層設置工程では、その最終層の保護対象部11と当該最終層の保護対象部11が載せ置かれた最終層の内層の外装部材20Cに対して、他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる。
【0044】
接合工程では、複数枚の外装部材20に対してハトメ留め具30を一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から挟み込んで加締め圧着させることによって、一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bとがハトメ留め具30で接合される。
【0045】
ところで、この場合においても、接合部25は、ハトメ留め具30を備えるものに替えて、重ね合わせた一対の外装部材20の少なくとも一部分同士を接着又は溶着したものであってもよく、ハトメ留め具30を備えるものと接着又は溶着されたものとが併存してもよい。接合部25では、接着又は溶着によるものである場合、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20の少なくとも一部分同士が接着又は溶着される。
【0046】
例えば、接合工程では、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20の少なくとも一部分同士を接着剤で接着してもよい。また、接合工程では、外装部材20に粘着性や吸着性を持たせることによって、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20同士を互いに自己粘着させてもよい。
【0047】
また、接合工程では、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20の少なくとも一部分同士を超音波溶着等の周知の溶着技術を用いて溶着してもよい。この場合、接合工程では、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを治具板500とホーン(図示略)で挟み込んで加圧し、この一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bと内層の外装部材20Cにホーンから超音波振動を伝えて、この外装部材20Aと外装部材20Bと外装部材20Cの少なくとも一部分同士を溶着する。この接合工程では、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cの少なくとも一部分同士が溶着され、かつ、重ね合わせた内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bの少なくとも一部分同士が溶着される。尚、この接合工程では、内層の外装部材20Cが複数層存在している場合、重ね合わせた内層の外装部材20Cの少なくとも一部分同士も溶着される。
【0048】
このワイヤハーネス1では、ハトメ留め具30を複数枚の外装部材20を接合するための接合部材として用いている。但し、このハトメ留め具30は、ワイヤハーネス1を車体やパワートレーン等の構造物に固定する際の固定部としても機能させることができる。例えば、ハトメ留め具30は、貫通孔を有するものであり、ワイヤハーネス1を構造物へと固定部材で固定する際に、その貫通孔を固定部材の挿入孔や挿通孔として利用することができる。具体例を挙げるのであれば、このハトメ留め具30は、ワイヤハーネス1を構造物へと螺子止め固定する際に、その貫通孔を固定部材としての雄螺子部材の挿通孔として利用することができる。また、このハトメ留め具30は、ワイヤハーネス1を構造物へとリベット止めする際に、その貫通孔を固定部材としてのリベットの挿通孔として利用することができる。
【0049】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1及びその製造方法は、配索電線10の保護対象部11を一対の外装部材20で挟み込むだけで、その保護対象部11に外装部材20を組み付けることができる。このため、このワイヤハーネス1及びその製造方法は、従来のように、粘着テープを保護対象部11に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に保護対象部11を差し込んだりしなくてもよいので、配索電線10の配索経路が複雑であったり、配索電線10が分岐していたりしていても、手作業に頼ることなく保護対象部11に外装部材20を組み付けることができる。従って、本実施形態のワイヤハーネス1及びその製造方法は、その製造工程の自動化に寄与することとなり、これ故、原価の低減を図ることができる。
【0050】
ところで、本実施形態のワイヤハーネス1は、外装部材20に柔軟性を持たせている。このため、このワイヤハーネス1は、先に示した形状保持部材(金属製の素線を網目状に織り込んだ補強糸等)を外装部材20の内部に設けることによって、曲げや凹凸等の3次元形状を保つことができる。例えば、ワイヤハーネス1は、その配索経路上の柱状部材に跨がらせる必要がある場合、その柱状部材を避けた形状に予め形成しておくことが望ましい。この場合、例えば、第1外層設置工程では、治具板500又は治具板500上の金型の膨出部(図示略)の上に一方の外層の外装部材20Aを設置し、その膨出部を上型の溝部(図示略)に嵌め込んで、その治具板500側の膨出部に沿わせた膨出部を一方の外層の外装部材20Aに形成する。この製造方法では、その後、内層設置工程に進み、第2外層設置工程で他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせた後、これらを治具板500側の膨出部と上型の溝部とで挟み込んで、柱状部材を避ける凹みが設けられた3次元形状を形成する。
【符号の説明】
【0051】
1 ワイヤハーネス
10 配索電線
11 保護対象部
20 外装部材
20A 一方の外層の外装部材
20B 他方の外層の外装部材
20C 内層の外装部材
21 貫通孔
25 接合部
30 ハトメ留め具
31a 筒部
31b 鍔部
500 治具板
510 電線配索ピン
520 ハトメ設置部