(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151768
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20241018BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01B13/012 D
H02G3/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065453
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DD01
5G357DD14
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】原価の低減を図ること。
【解決手段】ハーネス組み立て工程と、複数組のワイヤハーネス1を組み立てる際、ハーネス組み立て工程を終える度に、ワイヤハーネスに対して離型部材600を載せ置く離型部材設置工程と、ワイヤハーネスの構成部品同士をワイヤハーネスの組毎に接合する接合工程と、を有し、ハーネス組み立て工程は、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材20の内、一方の外層の外装部材20Aを治具板500に設置する第1外層設置工程と、一方の外層の外装部材に少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11を配策する内層設置工程と、保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた外装部材に対して、複数枚の外装部材の内の他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる第2外層設置工程と、を有し、接合工程では、ワイヤハーネスの組毎に、ワイヤハーネスにおける複数枚の外装部材を接合すること。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを組み立てるハーネス組み立て工程と、
複数組の前記ワイヤハーネスを組み立てる際、前記ハーネス組み立て工程を終える度に、前記ハーネス組み立て工程を終えた前記ワイヤハーネスに対して、隣り合う前記ワイヤハーネスの間の貼り付きの抑止が可能な離型部材を載せ置く離型部材設置工程と、
前記ワイヤハーネスの構成部品同士を前記ワイヤハーネスの組毎に接合する接合工程と、
を有し、
前記ハーネス組み立て工程は、
外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材の内、一方の外層の前記外装部材を治具板に設置する第1外層設置工程と、
前記一方の外層の前記外装部材に少なくとも1本の配索電線の保護対象部を配策する内層設置工程と、
前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対して、複数枚の前記外装部材の内の他方の外層の前記外装部材を重ね合わせる第2外層設置工程と、
を有し、
前記接合工程では、前記ワイヤハーネスの組毎に、前記ワイヤハーネスにおける複数枚の前記外装部材を接合することを特徴としたワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程は、前記ワイヤハーネスの組毎に用意したアンビルとホーンを用いて、前記ワイヤハーネスの組毎に、前記ワイヤハーネスにおける前記一方の外層の前記外装部材側と前記他方の外層の前記外装部材側から前記アンビルと前記ホーンで挟み込んで加圧し、前記ホーンから印加した超音波振動で当該ワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材を溶着させる工程であり、
前記接合工程では、接合対象となる前記ワイヤハーネスの前記一方の外層の前記外装部材側に前記離型部材及び当該接合対象のワイヤハーネスとは別の前記ワイヤハーネスが存在する場合、当該離型部材の接合具挿通孔及び当該別のワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材の接合具挿通孔に差し込んだ前記アンビルの先端を前記接合対象のワイヤハーネスの前記一方の外層の前記外装部材に接触させ、かつ、前記接合対象のワイヤハーネスの前記他方の外層の前記外装部材側に前記離型部材及び当該接合対象のワイヤハーネスとは別の前記ワイヤハーネスが存在する場合、当該離型部材の接合具挿通孔及び当該別のワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材の接合具挿通孔に差し込んだ前記ホーンの先端を前記接合対象のワイヤハーネスの前記他方の外層の前記外装部材に接触させることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項3】
前記接合工程は、前記ワイヤハーネスの組毎に用意した第1電極と第2電極を用いて、前記ワイヤハーネスの組毎に、前記ワイヤハーネスにおける前記一方の外層の前記外装部材側と前記他方の外層の前記外装部材側から前記第1電極と前記第2電極で挟み込んで加圧し、前記第1電極と前記第2電極との間の通電に伴い当該ワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材を加熱して熱溶着させる工程であり、
前記接合工程では、接合対象となる前記ワイヤハーネスの前記一方の外層の前記外装部材側に前記離型部材及び当該接合対象のワイヤハーネスとは別の前記ワイヤハーネスが存在する場合、当該離型部材の接合具挿通孔及び当該別のワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材の接合具挿通孔に差し込んだ前記第1電極の先端を前記接合対象のワイヤハーネスの前記一方の外層の前記外装部材に接触させ、かつ、前記接合対象のワイヤハーネスの前記他方の外層の前記外装部材側に前記離型部材及び当該接合対象のワイヤハーネスとは別の前記ワイヤハーネスが存在する場合、当該離型部材の接合具挿通孔及び当該別のワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材の接合具挿通孔に差し込んだ前記第2電極の先端を前記接合対象のワイヤハーネスの前記他方の外層の前記外装部材に接触させることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項4】
前記接合工程は、前記ワイヤハーネスの組毎に、前記ワイヤハーネスにおける前記他方の外層の前記外装部材に電子銃からマイクロ波を照射し、当該ワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材を高周波溶着させる工程であり、
前記接合工程では、接合対象となる前記ワイヤハーネスの前記一方の外層の前記外装部材側に前記離型部材及び当該接合対象のワイヤハーネスとは別の前記ワイヤハーネスが存在する場合、前記電子銃から出射した前記マイクロ波を当該離型部材のマイクロ波照射孔及び当該別のワイヤハーネスの複数枚の前記外装部材のマイクロ波照射孔から前記接合対象のワイヤハーネスの前記他方の外層の前記外装部材に照射させることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記内層設置工程は、前記一方の外層の前記外装部材と前記他方の外層の前記外装部材との間に介在させる前記保護対象部の層数に応じて、前記保護対象部の配索と、複数枚の前記外装部材の内の内層の前記外装部材の設置と、を交互に繰り返す工程であり、
前記内層設置工程では、前記保護対象部の層数に応じて、前記外装部材に対する前記保護対象部の配索と、前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対する前記内層の前記外装部材の重ね合わせと、を前記内層の前記外装部材が最終層になるまで交互に繰り返し、その後、最終層の前記保護対象部を前記最終層の前記内層の前記外装部材に配策し、
前記第2外層設置工程では、前記最終層の前記保護対象部と当該最終層の前記保護対象部が載せ置かれた前記最終層の前記内層の前記外装部材に対して、前記他方の外層の前記外装部材を重ね合わせることを特徴とした請求項1,2,3又は4に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
前記内層設置工程では、前記保護対象部を配策する際に、前記治具板上で前記保護対象部の配索経路に沿わせて配置された2本の電線配索ピンの間の隙間に前記保護対象部を通し、
前記第1外層設置工程と前記第2外層設置工程では、それぞれの工程で前記外装部材を設置する際に、前記外装部材における網目の貫通孔に対して当該貫通孔よりも太い前記電線配索ピンを挿通させることを特徴とした請求項1,2,3又は4に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスにおいては、その電線を車体やパワートレーン等の構造物に沿わせるなどして配索される。このため、このワイヤハーネスにおいては、電線を周辺部品との干渉等から保護する外装部材として、電線に巻き付ける粘着テープや電線を収容するコルゲートチューブが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-241790号公報
【特許文献2】特開2020-10453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスは、粘着テープを電線に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に電線を差し込んだりして、外装部材を電線に組み付ける。このため、従来のワイヤハーネスにおいては、殊に、電線の配索経路が複雑であったり、電線が分岐していたりすると、組付け後の品質の安定化を図るべく、外装部材を手作業で電線に組み付ける必要がある。よって、従来のワイヤハーネスは、その製造過程で原価を低減させる余地が残っている。
【0005】
そこで、本発明は、原価の低減を図り得るワイヤハーネスの製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワイヤハーネスを組み立てるハーネス組み立て工程と、複数組の前記ワイヤハーネスを組み立てる際、前記ハーネス組み立て工程を終える度に、前記ハーネス組み立て工程を終えた前記ワイヤハーネスに対して、隣り合う前記ワイヤハーネスの間の貼り付きの抑止が可能な離型部材を載せ置く離型部材設置工程と、前記ワイヤハーネスの構成部品同士を前記ワイヤハーネスの組毎に接合する接合工程と、を有し、前記ハーネス組み立て工程は、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材の内、一方の外層の前記外装部材を治具板に設置する第1外層設置工程と、前記一方の外層の前記外装部材に少なくとも1本の配索電線の保護対象部を配策する内層設置工程と、前記保護対象部と当該保護対象部が載せ置かれた前記外装部材に対して、複数枚の前記外装部材の内の他方の外層の前記外装部材を重ね合わせる第2外層設置工程と、を有し、前記接合工程では、前記ワイヤハーネスの組毎に、前記ワイヤハーネスにおける複数枚の前記外装部材を接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、配索電線の保護対象部を一対の外装部材で挟み込むだけで、その保護対象部に外装部材を組み付けることができる。このため、このワイヤハーネスの製造方法は、従来のように、粘着テープを保護対象部に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に保護対象部を差し込んだりしなくてもよいので、配索電線の配索経路が複雑であったり、配索電線が分岐していたりしていても、手作業に頼ることなく保護対象部に外装部材を組み付けることができる。そして、このワイヤハーネスの製造方法は、最終組のワイヤハーネスのハーネス組み立て工程を終えるまで、外装部材と同様の設置方法で、そのハーネス組み立て工程を終える度に離型部材を配置し、複数組のワイヤハーネスを立て続けに組み立てることができる。従って、本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、その製造工程の自動化に寄与することとなり、これ故、原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の治具板を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の1組目の第1外層設置工程について説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態の1組目の内層設置工程(電線設置工程)について説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態の1組目の第2外層設置工程について説明する説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態の離型部材設置工程について説明する説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態の2組目の第1外層設置工程について説明する説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態の2組目の内層設置工程(電線設置工程)について説明する説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態の2組目の第2外層設置工程について説明する説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態の2組目の第2外層設置工程について説明する説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態の接合工程について説明する説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態のワイヤハーネスの変形形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るワイヤハーネスの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法の実施形態の1つを
図1から
図13に基づいて説明する。
【0011】
図1及び
図2の符号1は、本実施形態の製造方法で組み立てられたワイヤハーネスを示す。このワイヤハーネス1は、少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11をシート状の一対の外装部材20で挟み込んだものを最少構成として持っている(
図1及び
図2)。このワイヤハーネス1は、外表面に絶縁性を持たせた網目状で且つシート状の複数枚の外装部材20と、重ね合わせた一対の外装部材20に保護対象部11が挟み込まれた少なくとも1本の配索電線10と、を備える。
【0012】
配索電線10とは、1本の電線又は複数本の電線が束ねられた電線束のことである。この配索電線10は、車体やパワートレーン等の構造物に沿わせるなどして配索される。このため、この配索電線10においては、周辺部品との干渉等が想定される場所を保護対象部11とし、この保護対象部11を外装部材20で包み込んで外側から保護する。
【0013】
外装部材20は、網目状に成形されたシート状の部材であり、挟み込んだ配索電線10の形に追従させるなどの変形を可能にするべく、柔軟性を持たせている。この外装部材20は、柔軟性を全体に持たせつつ、外表面に絶縁性を持たせるべく、例えば、合成ゴム等の絶縁性材料で成形される。
【0014】
また、この外装部材20は、挟み込んだ配索電線10の位置ずれを抑えるべく、外表面の摩擦係数が大きい絶縁性材料で成形されることが望ましい。
【0015】
また、この外装部材20は、変形後の形状を保持させるべく、金属製の素線を補強糸の如く内部に包含させてもよい。例えば、この外装部材20においては、その素線を網目状に織り込み、この網目状の形状保持部材の網目に沿う形で網目状の絶縁部を合成ゴム等の絶縁性材料で形成してもよい。ここで、その網目状の形状保持部材については、所謂編組の如くシールド部材として機能させることも可能である。よって、この外装部材20は、配索電線10を別途編組で包み込まずとも、一対の外装部材20で配索電線10を挟み込むだけで、外部からのノイズの侵入等を抑えることができる。
【0016】
複数枚の外装部材20は、積層され、その一対の外装部材20の間に配索電線10の保護対象部11を挟み込む。この複数枚の外装部材20は、その少なくとも一部分同士が接合された接合部25を有する(
図1)。複数枚の外装部材20は、その全てが同じ部材であってもよく、その全て又はその一部が例えば形状や原材料の違う別の部材であってもよい。この例示では、全てに同じ矩形の外装部材20を用いている。
【0017】
このワイヤハーネス1は、換言するならば、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとを備え、かつ、この一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に保護対象部11が挟み込まれた配索電線10を備える層構成のものが最少構成となる(
図1及び
図2)。つまり、このワイヤハーネス1は、保護対象部11の配置されている層(以下、「電線層」という。)が1層のみのものが最少構成となる。そして、このワイヤハーネス1は、電線層を一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層設けた構成にすることもできる。
【0018】
このワイヤハーネス1は、治具板500の上で組み立てられる(
図3から
図10)。ここでは、その治具板500の上で複数組のワイヤハーネス1を立て続けに組み立てることが可能な製造方法について説明する。
【0019】
この製造方法は、ワイヤハーネス1を組み立てるハーネス組み立て工程(
図4から
図6及び
図8から
図10)と、複数組のワイヤハーネス1を組み立てる際、ハーネス組み立て工程を終える度に、ハーネス組み立て工程を終えたワイヤハーネス1に対して、隣り合うワイヤハーネス1の間の貼り付きの抑止が可能な離型部材600を載せ置く離型部材設置工程(
図7)と、ワイヤハーネス1の構成部品同士をワイヤハーネス1の組毎に接合する接合工程(
図11)と、を有する。接合工程は、ハーネス組み立て工程を終える度に実施してもよく、全ての組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えてから全てのワイヤハーネス1に対して一纏めに実施してもよい。ここでは、全ての組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えてから接合工程を実施する。
【0020】
ハーネス組み立て工程は、第1外層設置工程と内層設置工程と第2外層設置工程を有している。
【0021】
ここでは、先ず、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に1層の電線層を配置する場合のハーネス組み立て工程について説明する。
【0022】
第1外層設置工程では、複数枚の外装部材20の内、一方の外層の外装部材20Aを治具板500に設置する(
図4)。そして、内層設置工程では、その一方の外層の外装部材20Aに少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11を配策する(
図5)。
【0023】
内層設置工程では、保護対象部11を配策する際に、その治具板500上で保護対象部11の配索経路に沿わせて配置された2本の電線配索ピン510の間の隙間に保護対象部11を通す(
図5)。ここで、治具板500には、少なくとも2本で1組となる電線配索ピン510が保護対象部11の配索経路に沿って複数箇所に立設されている(
図3から
図10)。例えば、電線配索ピン510は、保護対象部11の配索経路に沿う形で、保護対象部11の曲げ点となる場所等に少なくとも2本を1組にして配置される。
【0024】
その電線配索ピン510は、第1外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、その外装部材20Aの直下に存在していなければ、この外装部材20Aの設置作業の邪魔にはならない。しかしながら、保護対象部11の配索経路如何では、第1外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、電線配索ピン510が外装部材20Aの直下に存在することもある。ここで挙げている例示では、この状況を表している(
図4)。よって、第1外層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aを設置する際に、この外装部材20Aにおける網目の貫通孔21(
図1)に対して当該貫通孔21よりも太い電線配索ピン510を挿通させる。
【0025】
このワイヤハーネス1においては、外装部材20が網目状に成形されているので、その貫通孔21を利用することによって、別の貫通孔を設けるなどの細工を外装部材20に施さずとも、治具板500に外装部材20を設置することができる。更に、このワイヤハーネス1においては、外装部材20の網目の貫通孔21を電線配索ピン510よりも小さくすることによって、その外装部材20の網目の貫通孔21と電線配索ピン510を利用して、治具板500上での外装部材20の位置ずれを抑えることができる。
【0026】
この例示の治具板500には、2本で1組となる電線配索ピン510が3箇所に配置され、かつ、3本で1組となる電線配索ピン510が1箇所に配置されている(
図3から
図10)。そして、この例示の内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aに2本の配索電線10の保護対象部11が配策される。
【0027】
一対の電線配索ピン510は、3箇所とも、保護対象部11が一対の外装部材20で挟み込まれた配索電線10を一対の外装部材20の間から外へと引き出すための場所(所謂電線引出口となる場所)に配置されている(
図3から
図10)。この3箇所の一対の電線配索ピン510の内の1つ(一対の電線配索ピン510A)は、2本の配索電線10の一端側を一対の外装部材20の間から外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置されている(
図5)。残りの2箇所の一対の電線配索ピン510は、その内の一方(一対の電線配索ピン510B)が一方の配索電線10の他端側を外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置され、その内の他方(一対の電線配索ピン510C)が他方の配索電線10の他端側を外へと引き出すための電線引出口を設ける場所に配置されている(
図5)。
【0028】
また、3本で1組の電線配索ピン510(510D)は、それぞれに三角形の頂点に配置され、2本の電線配索ピン510Dの間の隙間を3箇所に形成する(
図3から
図8)。この3本の電線配索ピン510Dにおいては、3箇所の隙間の内の1つに、一対の電線配索ピン510Aの隙間を通した2本の配索電線10の保護対象部11を通す(
図5)。そして、この3本の電線配索ピン510Dにおいては、残りの2箇所の隙間の内の一方に一方の配索電線10の保護対象部11を通し、その内の他方に他方の配索電線10の保護対象部11を通す(
図5)。この3本の電線配索ピン510Dは、その一方の隙間を通した一方の配索電線10の保護対象部11を一対の電線配索ピン510Bに向けて配索させ、その他方の隙間を通した他方の配索電線10の保護対象部11を一対の電線配索ピン510Cに向けて配索させる(
図5)。
【0029】
この例示では、その2本の配索電線10の保護対象部11による1層のみが電線層になる。よって、この例示の内層設置工程は、配索電線10の保護対象部11のみを配策する電線設置工程と云える。
【0030】
第2外層設置工程では、保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた外装部材20に対して、複数枚の外装部材20の内の他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる(
図6)。この例示の第2外層設置工程では、他方の外層の外装部材20Bを設置する際に、第1外層設置工程と同じように、その外装部材20Bにおける網目の貫通孔に対して電線配索ピン510を挿通させる。この例示の第2外層設置工程では、2本の配索電線10の保護対象部11と当該2本の保護対象部11が載せ置かれた一方の外層の外装部材20Aに対して、他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる。
【0031】
この製造方法においては、その第2外層設置工程を実施し終えることによって、1組目のワイヤハーネス1Aのハーネス組み立て工程を終える。この製造方法では、2組目のワイヤハーネス1Bのハーネス組み立て工程に入る前に、離型部材設置工程を実施する(
図7)。
【0032】
離型部材設置工程では、ハーネス組み立て工程を終えたワイヤハーネス1Aの上(つまり、このワイヤハーネス1Aにおける他方の外層の外装部材20Bの上)に離型部材600を載せ置く(
図7)。その離型部材600は、シート状に成形され、2組のワイヤハーネス1(1A,1B)の間で外装部材20同士が引っ付かないように配置する。この離型部材600は、例えば、外装部材20と同等以上の大きさに成形され、ハーネス組み立て工程を終えたワイヤハーネス1Aに対して、他方の外層の外装部材20Bを覆い隠すように載せ置く。例えば、ここでは、離型部材600として、所謂離型紙や離型フィルム等を用いる。
【0033】
この例示の離型部材設置工程では、離型部材600の直下に電線配索ピン510が存在している。このため、離型部材600は、電線配索ピン510毎に当該電線配索ピン510を挿通させるべく、外装部材20と同じように網目状に成形され、その網目の貫通孔に対して電線配索ピン510を差し込ませる。尚、離型部材600は、網目状に成形しないのであれば、治具板500上の電線配索ピン510の配置に合わせて、その電線配索ピン510毎に当該電線配索ピン510の挿通が可能な貫通孔を設けてもよい。
【0034】
この製造方法においては、ワイヤハーネス1Aの上(他方の外層の外装部材20Bの上)に離型部材600を載せ置いてから、次の組のワイヤハーネス1Bのハーネス組み立て工程を開始する(
図8から
図10)。この2組目のワイヤハーネス1Bに関しては、第1外層設置工程で、複数枚の外装部材20の内、一方の外層の外装部材20Aを離型部材600に載せ置く(
図8)。そして、内層設置工程では、その一方の外層の外装部材20Aに少なくとも1本の配索電線10の保護対象部11を配策する(
図9)。第2外層設置工程では、その保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた外装部材20(一方の外層の外装部材20A)に対して、複数枚の外装部材20の内の他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる(
図10及び
図11)。
【0035】
この製造方法においては、最終組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えるまで、ハーネス組み立て工程と離型部材設置工程を交互に繰り返す。ここでは、2組目のワイヤハーネス1Bを最終組とする。
【0036】
この製造方法においては、ハーネス組み立て工程を終える度に接合工程を実施してもよく、全ての組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えてから、接合工程を実施してもよい。この例示では、全ての組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えてから、接合工程を実施する。
【0037】
接合工程では、ワイヤハーネス1の組毎に、そのワイヤハーネス1における複数枚の外装部材20を接合する。ワイヤハーネス1においては、この接合工程を経ることによって、組毎に接合部25が形成される。その接合部25では、複数枚の外装部材20にて、重ね合わせた一対の外装部材20毎に当該一対の外装部材20の少なくとも一部分同士が接着又は溶着される。
【0038】
例えば、接合工程では、ワイヤハーネス1の組毎に、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bの少なくとも一部分同士を接着剤で接着してもよい。また、接合工程では、外装部材20に粘着性や吸着性を持たせることによって、ワイヤハーネス1の組毎に、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを互いに自己粘着させてもよい。
【0039】
また、接合工程では、ワイヤハーネス1の組毎に、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bの少なくとも一部分同士を超音波溶着等の周知の溶着技術を用いて溶着してもよい。例えば、この接合工程では、重ね合わせた一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bをアンビル701とホーン702で挟み込んで加圧し、その外装部材20Aと外装部材20Bにホーン702から超音波振動を伝えて、この外装部材20Aと外装部材20Bの少なくとも一部分同士を溶着する(
図12)。ここでは、外装部材20が網目状に成形されているので、その網目の貫通孔よりも太いアンビル701とホーン702を用いる。
【0040】
ここで示す接合工程は、ワイヤハーネス1の組毎に用意したアンビル701とホーン702を用いて、ワイヤハーネス1の組毎に、ワイヤハーネス1における一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側からアンビル701とホーン702で挟み込んで加圧し、ホーン702から印加した超音波振動で当該ワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20を溶着させる工程である。よって、この接合工程では、ワイヤハーネス1の組毎にずらして配置されたアンビル701とホーン702の組み合わせが用いられる。
【0041】
この接合工程では、接合対象となるワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20A側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600の貫通孔(以下、「接合具挿通孔」という。)602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20の貫通孔(以下、「接合具挿通孔」という。)22に差し込んだアンビル701の先端を接合対象のワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20Aに接触させ、かつ、接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20B側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600の接合具挿通孔602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20の接合具挿通孔22に差し込んだホーン702の先端を接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20Bに接触させる(
図12)。
【0042】
この例示の接合工程では、1組目のワイヤハーネス1Aの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bをアンビル701Aとホーン702Aで挟み込む(
図12)。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20B側の全ての離型部材600と2組目以降のワイヤハーネス1(ワイヤハーネス1B等)の複数枚の外装部材20に、そのホーン702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602、22が予め形成されている。ここでは、1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置いた離型部材600にホーン702Aの挿通用の接合具挿通孔602Aが形成され、かつ、2組目のワイヤハーネス1Bにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bにホーン702Aの挿通用の接合具挿通孔22Aが形成されている(
図12)。尚、この接合工程では、治具板500からアンビル701Aを立設させている。但し、この接合工程では、治具板500をアンビル701Aとして利用してもよい。
【0043】
また、この接合工程では、2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bをアンビル701Bとホーン702Bで挟み込む。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目と2組目のワイヤハーネス1A、1Bの間の離型部材600、及び、1組目のワイヤハーネス1Aにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bに、そのアンビル701Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aに辿り着かせるための接合具挿通孔602B、22Bが形成されている(
図12)。1組目のワイヤハーネス1Aのハーネス組み立て工程においては、第1外層設置工程と第2外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを設置する際に、例えば治具板500から立設されているアンビル701Bを接合具挿通孔22Bに挿通させる。そして、離型部材設置工程では、離型部材600を1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置く際に、そのアンビル701Bを接合具挿通孔602Bに挿通させる。
【0044】
尚、3組目以降のワイヤハーネス1も組み立てられている場合、この接合工程を実施するに際しては、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20B側に配置されている全ての離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20に、ホーン702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602A、22Bが予め形成されている。そして、その離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20には、ホーン702Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602B、22Bが予め形成されている。
【0045】
外装部材20と離型部材600のそれぞれの接合具挿通孔22、602は、アンビル701とホーン702の組み合わせ毎に適宜設ける。
【0046】
尚、組立順で最終組となるワイヤハーネス1においては、他方の外層の外装部材20Bが最終層になり、この外装部材20Bに離型部材600が載せ置かれないので、この外装部材20Bにホーン702の先端を接触させることができる。この例示の製造方法においては、2組のワイヤハーネス1を組み立てる。よって、ここでは、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bが最終層になる。
【0047】
ここまでは、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に介在させる電線層が1層のみのハーネス組み立て工程について説明した。そこで、次は、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層の電線層を配置する場合のハーネス組み立て工程について説明する。
【0048】
この場合、内層設置工程は、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に介在させる保護対象部11の層数に応じて、保護対象部11の配索と、複数枚の外装部材20の内の内層の外装部材20Cの設置と、を交互に繰り返す工程となる(
図13)。この内層設置工程では、保護対象部11の層数に応じて、外装部材20に対する保護対象部11の配索と、その保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた外装部材20に対する内層の外装部材20Cの重ね合わせと、を内層の外装部材20Cが最終層になるまで交互に繰り返し、その後、最終層の保護対象部11を最終層の内層の外装部材20Cに配策する。
【0049】
例えば、内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aに少なくとも1本(具体例では2本)の配索電線10の保護対象部11を配策し、その保護対象部11と当該保護対象部11が載せ置かれた一方の外層の外装部材20Aに対して、内層の外装部材20Cを1枚重ね合わせる。この内層設置工程では、電線配索ピン510が内層の外装部材20Cの直下に存在する場合、その外装部材20Cを設置する際に、この外装部材20Cにおける網目の貫通孔21に対して電線配索ピン510を挿通させる。また、この内層設置工程では、アンビル701を内層の外装部材20Cの接合具挿通孔22に適宜挿通させる。接合工程では、ホーン702を内層の外装部材20Cの接合具挿通孔22に適宜挿通させ、そのアンビル701やホーン702を用いて、一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bとが超音波溶着される。
【0050】
この具体例では、その外装部材20Cが最終層の内層の外装部材20Cになるので、この最終層の内層の外装部材20Cに少なくとも1本(ここでは2本)の配索電線10の保護対象部11を最終層の保護対象部11として配策する。よって、第2外層設置工程では、その最終層の保護対象部11と当該最終層の保護対象部11が載せ置かれた最終層の内層の外装部材20Cに対して、他方の外層の外装部材20Bを重ね合わせる。
【0051】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1の製造方法は、配索電線10の保護対象部11を一対の外装部材20で挟み込むだけで、その保護対象部11に外装部材20を組み付けることができる。このため、このワイヤハーネス1の製造方法は、従来のように、粘着テープを保護対象部11に巻き付けたり、コルゲートチューブの中に保護対象部11を差し込んだりしなくてもよいので、配索電線10の配索経路が複雑であったり、配索電線10が分岐していたりしていても、手作業に頼ることなく保護対象部11に外装部材20を組み付けることができる。そして、このワイヤハーネス1の製造方法は、最終組のワイヤハーネス1のハーネス組み立て工程を終えるまで、外装部材20と同様の設置方法で、そのハーネス組み立て工程を終える度に離型部材600を配置し、複数組のワイヤハーネス1を立て続けに組み立てることができる。従って、本実施形態のワイヤハーネス1の製造方法は、その製造工程の自動化に寄与することとなり、これ故、原価の低減を図ることができる。
【0052】
ところで、先の例示の接合工程では外装部材20同士の接合に超音波溶着を適用したが、接合工程では、これに替えて、熱溶着で外装部材20同士を接合してもよい。ここでは、超音波溶着の説明で示したアンビル701及びホーン702をそれぞれ第1電極701及び第2電極702に置き換える。
【0053】
この接合工程は、ワイヤハーネス1の組毎に用意した第1電極701と第2電極702を用いて、ワイヤハーネス1の組毎に、ワイヤハーネス1における一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から第1電極701と第2電極702で挟み込んで加圧し、第1電極701と第2電極702との間の通電に伴い当該ワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20を加熱して熱溶着させる工程である。
【0054】
この接合工程では、接合対象となるワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20A側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600の接合具挿通孔602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20の接合具挿通孔22に差し込んだ第1電極701の先端を接合対象のワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20Aに接触させ、かつ、接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20B側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600の接合具挿通孔602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20の接合具挿通孔22に差し込んだ第2電極702の先端を接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20Bに接触させる(
図12)。
【0055】
この例示の接合工程では、1組目のワイヤハーネス1Aの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを第1電極701Aと第2電極702Aで挟み込む(
図12)。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20B側の全ての離型部材600と2組目以降のワイヤハーネス1(ワイヤハーネス1B等)の複数枚の外装部材20に、その第2電極702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602、22が予め形成されている。ここでは、1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置いた離型部材600に第2電極702Aの挿通用の接合具挿通孔602Aが形成され、かつ、2組目のワイヤハーネス1Bにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bに第2電極702Aの挿通用の接合具挿通孔22Aが形成されている(
図12)。尚、この接合工程では、治具板500から第1電極701Aを立設させている。但し、この接合工程では、治具板500を第1電極701Aとして利用してもよい。
【0056】
また、この接合工程では、2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを第1電極701Bと第2電極702Bで挟み込む。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目と2組目のワイヤハーネス1A、1Bの間の離型部材600、及び、1組目のワイヤハーネス1Aにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bに、その第1電極701Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aに辿り着かせるための接合具挿通孔602B、22Bが形成されている(
図12)。1組目のワイヤハーネス1Aのハーネス組み立て工程においては、第1外層設置工程と第2外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを設置する際に、例えば治具板500から立設されている第1電極701Bを接合具挿通孔22Bに挿通させる。そして、離型部材設置工程では、離型部材600を1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置く際に、その第1電極701Bを接合具挿通孔602Bに挿通させる。
【0057】
尚、3組目以降のワイヤハーネス1も組み立てられている場合、この接合工程を実施するに際しては、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20B側に配置されている全ての離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20に、第2電極702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602A、22Bが予め形成されている。そして、その離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20には、第2電極702Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるための接合具挿通孔602B、22Bが予め形成されている。
【0058】
外装部材20と離型部材600のそれぞれの接合具挿通孔22、602は、第1電極701と第2電極702の組み合わせ毎に適宜設ける。
【0059】
尚、ここでは、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bが最終層になり、この外装部材20Bに離型部材600が載せ置かれないので、この外装部材20Bに第2電極702の先端を接触させることができる。
【0060】
この例示の内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層の電線層を配置する場合、内層の外装部材20Cの接合具挿通孔22に第1電極701を適宜挿通させる。接合工程では、第2電極702を内層の外装部材20Cの接合具挿通孔22に適宜挿通させ、その第1電極701や第2電極702を用いて、一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bとが熱溶着される。
【0061】
更に、接合工程では、高周波溶着で外装部材20同士を接合してもよい。
【0062】
この接合工程は、ワイヤハーネス1の組毎に、ワイヤハーネス1における他方の外層の外装部材20Bに電子銃(図示略)からマイクロ波を照射し、当該ワイヤハーネスの複数枚の外装部材20を高周波溶着させる工程である。
【0063】
この接合工程では、接合対象となるワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20A側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、電子銃から出射したマイクロ波を当該離型部材600の貫通孔(以下、「マイクロ波照射孔」という。)602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20の貫通孔(以下、「マイクロ波照射孔」という。)22から接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20Bに照射させる。ここでは、超音波溶着の説明で示した接合具挿通孔602,22をそれぞれマイクロ波照射孔602,22に置き換えている。
【0064】
具体的に、この接合工程は、ワイヤハーネス1の組毎に用意した第1加圧部材701と第2加圧部材702を用いて、ワイヤハーネス1の組毎に、ワイヤハーネス1における一方の外層の外装部材20A側と他方の外層の外装部材20B側から第1加圧部材701と第2加圧部材702で挟み込んで加圧して、当該ワイヤハーネス1における他方の外層の外装部材20Bに電子銃からマイクロ波を照射し、当該ワイヤハーネスの複数枚の外装部材20を高周波溶着させる工程である。ここでは、超音波溶着の説明で示したアンビル701及びホーン702をそれぞれ第1加圧部材701及び第2加圧部材702に置き換えている。
【0065】
この接合工程では、接合対象となるワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20A側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600のマイクロ波照射孔602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20のマイクロ波照射孔22に差し込んだ第1加圧部材701の先端を接合対象のワイヤハーネス1の一方の外層の外装部材20Aに接触させ、かつ、接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20B側に離型部材600及び当該接合対象のワイヤハーネス1とは別のワイヤハーネス1が存在する場合、当該離型部材600のマイクロ波照射孔602及び当該別のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20のマイクロ波照射孔22に差し込んだ第2加圧部材702の先端を接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20Bに接触させる。そして、この接合工程では、電子銃から出射したマイクロ波を筒状の第2加圧部材702の内部を通して接合対象のワイヤハーネス1の他方の外層の外装部材20Bに照射させる。
【0066】
この例示の接合工程では、1組目のワイヤハーネス1Aの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを第1加圧部材701Aと第2加圧部材702Aで挟み込む。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20B側の全ての離型部材600と2組目以降のワイヤハーネス1(ワイヤハーネス1B等)の複数枚の外装部材20に、その第2加圧部材702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるためのマイクロ波照射孔602、22が予め形成されている。ここでは、1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置いた離型部材600に第2加圧部材702Aの挿通用のマイクロ波照射孔602Aが形成され、かつ、2組目のワイヤハーネス1Bにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bに第2加圧部材702Aの挿通用のマイクロ波照射孔22Aが形成されている。尚、この接合工程では、治具板500から第1加圧部材701Aを立設させている。但し、この接合工程では、治具板500を第1加圧部材701Aとして利用してもよい。
【0067】
また、この接合工程では、2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを第1加圧部材701Bと第2加圧部材702Bで挟み込む。よって、この接合工程を実施するに際しては、1組目と2組目のワイヤハーネス1A、1Bの間の離型部材600、及び、1組目のワイヤハーネス1Aにおける一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bに、その第1加圧部材701Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aに辿り着かせるためのマイクロ波照射孔602B、22Bが形成されている。1組目のワイヤハーネス1Aのハーネス組み立て工程においては、第1外層設置工程と第2外層設置工程で一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bを設置する際に、例えば治具板500から立設されている第1加圧部材701Bをマイクロ波照射孔22Bに挿通させる。そして、離型部材設置工程では、離型部材600を1組目のワイヤハーネス1Aに載せ置く際に、その第1加圧部材701Bをマイクロ波照射孔602Bに挿通させる。
【0068】
尚、3組目以降のワイヤハーネス1も組み立てられている場合、この接合工程を実施するに際しては、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20B側に配置されている全ての離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20に、第2加圧部材702Aの先端を1組目のワイヤハーネス1Aの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるためのマイクロ波照射孔602A、22Bが予め形成されている。そして、その離型部材600と3組目以降のワイヤハーネス1の複数枚の外装部材20には、第2加圧部材702Bの先端を2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bに辿り着かせるためのマイクロ波照射孔602B、22Bが予め形成されている。
【0069】
外装部材20と離型部材600のそれぞれのマイクロ波照射孔22、602は、第1加圧部材701と第2加圧部材702の組み合わせ毎に適宜設ける。
【0070】
尚、ここでは、2組目のワイヤハーネス1Bの他方の外層の外装部材20Bが最終層になり、この外装部材20Bに離型部材600が載せ置かれないので、この外装部材20Bに第2加圧部材702の先端を接触させることができる。但し、この製造方法においては、2組目のワイヤハーネス1Bの一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとが加圧せずに接触している場合、この2組目のワイヤハーネス1Bに対する第1加圧部材701と第2加圧部材702を設けることなく、その他方の外層の外装部材20Bに接合工程で電子銃からマイクロ波を照射してもよい。
【0071】
この例示の内層設置工程では、一方の外層の外装部材20Aと他方の外層の外装部材20Bとの間に複数層の電線層を配置する場合、内層の外装部材20Cのマイクロ波照射孔22に第1加圧部材701を挿通させる。接合工程では、第2加圧部材702を内層の外装部材20Cのマイクロ波照射孔22に適宜挿通させ、その第1加圧部材701や第2加圧部材702を用いて一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bとを挟み込んで加圧する。そして、この接合工程では、電子銃から出射したマイクロ波を筒状の第2加圧部材702の内部を通してその他方の外層の外装部材20Bに照射して、その一方の外層の外装部材20Aと内層の外装部材20Cと他方の外層の外装部材20Bとが高周波溶着される。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B ワイヤハーネス
10 配索電線
11 保護対象部
20 外装部材
20A 一方の外層の外装部材
20B 他方の外層の外装部材
20C 内層の外装部材
21 貫通孔
22 接合具挿通孔、マイクロ波照射孔
500 治具板
510 電線配索ピン
600 離型部材
602 接合具挿通孔、マイクロ波照射孔
701 アンビル、第1電極、第1加圧部材
702 ホーン、第2電極、第2加圧部材