(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151769
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】活魚締め具および活魚締め方法
(51)【国際特許分類】
A22B 3/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A22B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065458
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】523139272
【氏名又は名称】株式会社CRANE CRAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100157107
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 道弘
(57)【要約】
【課題】腕力がない者でも簡単かつ迅速に活魚を締めることができる活魚締め具が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る活魚締め具は、棒状体の活魚締め具であって、前方に、開口した収納空間を有する魚頭収納部を備えるとともに、後方に、把持部を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体の活魚締め具であって、
前方に、開口した収納空間を有する魚頭収納部を備えるとともに、
後方に、把持部を有することを特徴とする活魚締め具。
【請求項2】
前記開口が略楕円状または楕円状に形成されたものであって、且つ前記収納空間が深部に向かって狭くなるテーパー状に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の活魚締め具。
【請求項3】
前記魚頭収納部が、
前記開口の内側面が魚の頭頂部および下顎部に当接するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の活魚締め具。
【請求項4】
前記把持部が、
外周が後方に向かって漸次小さくなるように形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の活魚締め具。
【請求項5】
前記把持部が、
前記棒状体から突出した突出部材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の活魚締め具。
【請求項6】
前記魚頭収納部に、
前記収納空間と外部とを連通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の活魚締め具。
【請求項7】
前記魚頭収納部と前記把持部が着脱可能であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の活魚締め具。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の活魚締め具を用いた活魚締め方法であって、
魚頭収納部に活魚の頭部を収納する収納工程と、
前記魚頭収納部の開口の上端部および下端部の内側面を前記活魚の頭頂部および下顎部に当接させる当接工程と、
把持部を力点とするとともに前記開口の上端部または下端部の内側面と当接した前記活魚の頭頂部を支点として、前記魚頭収納部に収納した前記活魚の頭部を背びれ側に曲げることによって作用点となる前記活魚の背骨を折る締め工程を備えることを特徴とする活魚締め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活魚を締めるための締め具に関するものである。詳しくは、てこの原理を用いることによって、腕力がない者でも簡単かつ迅速に活魚を締めることができる締め具に関するものである。また、当該締め具を用いた活魚締め方法に関するものである。なお、本発明の活魚締め具は、背骨(首)を折ることによって締める魚において特に有用な締め具となるものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は、刺身や寿司等、魚を生で食べる文化を有する国であることから、魚の鮮度を保つため、釣り上げた魚に対して「締める(活け締め)」という処理が行われている。また、味を良くする目的でも「締める」処理が行われている。この「締める」という処理は、外国においてはほとんど見られないものであり、脳天締め、神経締め、氷締め、サバ折り、血抜き等各種の方法が知られている。そして、このような「締める」処理を行うための締め具も各種のものが提案されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-4581号公報
【特許文献2】特開平8-84558号公報
【特許文献3】特開2000-217502号公報
【特許文献4】特開2003-189788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献に示すような従前の締め具は、神経や骨等、魚を締めるための部分(ポイント)に突起部分や刃の部分を正確に当てることが難しいという課題がある。特に、締める処理は、魚を釣り上げた直後に行われることが多いことから、暴れる魚のポイントに突起部分や刃の部分を正確に当てるのは難しいという課題があった。
【0005】
また、特許文献に示すような従前の締め具は、締め具を挟む動作や刺し込む動作を伴うことから腕力が必要となる。従って、腕力に乏しい女性や子供には操作が難しいという課題があった。
【0006】
また、特許文献に示すような従前の締め具は、魚が暴れている状態では使用できない(締める作業ができない)ことから、締める際、締め具を持たない方の手で魚を押さえ付けておく必要がある。従って、腕力が必要となることに加えて、手が汚れてしまうという課題もあった。
【0007】
さらに、特許文献に示すような従前の締め具は、操作に慣れていない者が使用すると、締めるまでに時間がかかってしまうことから、その間に魚にストレスがかかってしまい、鮮度や旨みが低下してしまうという課題もあった。
【0008】
以上のことから、特許文献に示すような従前の締め具は、手慣れた者でなければ操作が難しく、女性や子供等の腕力に劣る者や初心者では使いこなすことが難しいという課題があった。
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、てこの原理を用いることによって、腕力がない者でも簡単かつ迅速に活魚を締めることができる締め具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る活魚締め具は、前方に、開口した収納空間を有する魚頭収納部を備えるとともに、後方に、把持部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る活魚締め具は、開口が略楕円状または楕円状に形成されたものであって、且つ収納空間が深部に向かって狭くなるテーパー状に形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る活魚締め具は、魚頭収納部が、開口の内側面が魚の頭頂部および下顎部に当接するものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る活魚締め具は、把持部が、外周が後方に向かって漸次小さくなるように形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る活魚締め具は、把持部が、棒状体から突出した突出部材であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に係る活魚締め具は、魚頭収納部に、収納空間と外部とを連通する貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係る活魚締め具は、魚頭収納部と把持部とが着脱可能であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る活魚締め方法は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の活魚締め具を用いた活魚締め方法であって、魚頭収納部に活魚の頭部を収納する収納工程と、魚頭収納部の開口の上端部および下端部の内側面を活魚の頭頂部および下顎部に当接させる当接工程と、把持部を力点とするとともに開口の上端部または下端部の内側面と当接した活魚の頭頂部を支点として、魚頭収納部に収納した活魚の頭部を背びれ側に曲げることによって作用点となる活魚の背骨を折る締め工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る活魚締め具および活魚締め方法によれば、背骨(首)を折って締める魚において、以下の効果を発現させることができる。
(1)てこの原理を用いて活魚を締めることができるので、子供や女性等、腕力がない者でも簡単に活魚を締めることができる。
(2)ハサミ等を用いた従前の締め方よりも、迅速に(半分程度の時間で)締めることができる。
(3)活魚に直接手を触れることなく(手を汚すことなく)、活魚を締めることができる。また、タチウオ等の歯が鋭い魚であっても、手のケガを心配することなく、安全に締めることができる。さらに、活魚に直接触れることによって生じる、身の「やけど」を防止することができる。
(4)背骨を折るだけの締め方であることから、締めた後の魚の見栄え(写真撮影時などにおける魚の見栄え)をきれいにすることができる。なお、該効果は、ハサミを用いた締め方(頭の上部を切断してしまう締め方)を行う魚(タチウオ等)において特に顕著なものとなる。
【0019】
本発明の請求項2に係る活魚締め具によれば、魚の頭部と収納した際に生じる、収納空間と魚との隙間を少なくすることができることから、魚が暴れること(魚が頭部を動かすこと)を効果的に防止することができる。また、魚の目をより隙間なく覆うことによって、より効果的に魚を鎮静化させることができる。
【0020】
本発明の請求項3に係る活魚締め具によれば、作用点となる魚の背骨部分により効果的に力を伝えること(てこの原理をより効果的に発生させること)ができる。
【0021】
本発明の請求項4、5に係る活魚締め具によれば、把持部を特定の形態とすることによって、力点にさらに効果的に力を加えることができる。
【0022】
本発明の請求項6に係る活魚締め具によれば、収納空間内の洗浄を容易に行うことができる。また、収納空間内に水やごみが溜まるのを防止することができる。
【0023】
本発明の請求項7に係る活魚締め具によれば、魚頭収納部と把持部を着脱可能とすることによって、収納空間の形状や大きさを様々に変更した複数の魚頭収納部と、1つの把持部で活魚締め具を形成することができ、省スペース化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る活魚締め具の一の実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る活魚締め具の試作品を示す写真(
図2(a)は平面から撮影した写真、
図2(b)正面から撮影した写真)である。
【
図3】本発明に係る活魚締め具の別の実施形態(
図1の変形形態)を示す模式図である。
【
図4】
図1の活魚締め具に突出部材を設けた実施形態の一例を示す模式図である。
【
図5】着脱構造の一の実施形態を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る活魚締め方法の手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0026】
(基本構成)
まず、本発明の活魚締め具の基本構成を
図1、2に基づいて説明する。
本発明の活魚締め具1は、棒状体の治具である。そして、棒状体の前方に魚頭収納部2を、棒状体の後方に把持部3を有することを基本構成とする治具である。
ここで、本発明における「棒状体」の意味は、真っ直ぐな物(棒)だけではなく、若干の曲がりや凹凸を有する物を含むとの意味である。また、断面形状(長軸に対して垂直方向の断面形状)についても、特に限定されるものではなく、円柱や楕円柱などの各種の円柱形状や、三角柱や六角柱など各種の角柱状や、これらを組み合わせた形状など、各種の断面形状の物を採用することができる。
【0027】
なお、
図2は発明者が実際に試作した活魚締め具1の試作品の写真である。具体的には、Aはアジ・サバ・メバル・カサゴ用の活魚締め具1(試作品)、Bはカマス・キス用の活魚締め具1(試作品)、Cはタチウオ用の活魚締め具1(試作品)の写真である。このように、対象とする活魚の種類(頭の形状)に応じて後記する開口4および収納空間5の形状を変化させている。
【0028】
活魚締め具1(棒状体)の材質としては特に限定されるものではなく、木、プラスチック、ゴム、金属や、これらを組み合わせた材質など、各種の材質を採用することができる。
なお、
図2に示す試作品は、実物の魚の頭部周囲を紙粘土で覆った後、魚を取り出して自然乾燥させることによって作製(固形化)したものである。
また、ゴム素材などの可撓性を有する材質で作製すれば、魚頭収納部2を握ることによって、後記する収納工程および当接工程の際、活魚の頭頂部および下顎部を開口4の内側面に容易かつ確実に当接させることができるので好適である。なお、係る場合には、魚頭収納部2が把持部3も兼ねることになる。
【0029】
(魚頭収納部)
魚頭収納部2は、開口4を持つ収納空間5の構造となっているものであり、活魚の頭部を収納するためのものである。本発明の活魚締め具1は係る構造を有することによって、締める作業を行う際、釣り上げた活魚の胴体を魚つかみで持った状態のままで活魚の頭部に魚頭収納部2を被せるだけで、活魚の頭部を簡単に収納空間5内に収納することができるのである。
また、魚頭収納部2は、開口4の内側面が活魚の頭頂部(詳しくは、エラぶたの上方に位置する頭頂部分)および下顎部(詳しくは、エラぶたの下方と下唇との間に位置する下顎部分)に当接する構造となっているものである。具体的には、
図1に示す活魚締め具1を例にすると、開口4の上端部および下端部の内側面の内の一方を活魚の頭頂部に当接させ、開口4の上端部および下端部の内側面の内の他方を活魚の下顎部に当接させる構造となっている。本発明の活魚締め具1は係る構造を有することによって活魚の頭部だけを保持(固定)することができ、後記するように、てこの原理を用いて活魚を締めることができるのである。
【0030】
(開口)
開口4の形状は、活魚の頭部を挿入することができる形状であれば特に限定されるものではなく、円形状の開口や多角形状の開口など、各種の形状を採用することができる。そしてその中でも、後記するように、活魚の頭部を収納空間5内に収納した際に開口4の内側面を活魚の頭頂部および下顎部に効果的に当接させることができることから、略楕円状または楕円状であることが好ましい。また、開口4の形状を略楕円状または楕円状とすれば、魚の頭部の断面形状と近似することとなり、活魚の頭部を収納した際に活魚の目をより隙間なく覆うことができ、効果的に活魚を鎮静化させることができるので好適である。
【0031】
さらに、本発明の活魚締め具1は、後記するように、開口4の内側面を活魚の頭頂部および下顎部に当接させることができれば足りることから、活魚の頭頂部および下顎部が当接する部分以外の部分を削ったり、抉ったりした形態とすることもできる。係る形態とすれば、活魚締め具1の厚みをより薄くすることができ、道具箱(タックルボックス)への収納もスペースを取らずに収納することができるので好適である。このような形態としては、例えば、
図3に示すように、開口4を構成する周面の内、左右の側面(活魚の頭頂部および下顎部が当接する上下の側面以外の部分)を削った形態が挙げられる。
【0032】
開口4の大きさは、収納空間5に対象とする活魚の頭の大きさに応じて設定すればよいが、開口の内側面を活魚の頭頂部および下顎部に効果的に当接させるためには、開口4の上端部から下端部までの長さを1~10cmにすることが好ましく、その中でも2~6cmにすることが好ましい。
また、開口4を略楕円状または楕円状にする際には、長径を1~10cm、短径を1~7cmにすることが好ましく、その中でも長径を2~6cm、短径を1~5cmにすることが好ましい。
なお、
図2に示す試作品においては、以下の寸法となっている。
A(アジ・サバ・メバル・カサゴ用) 長径:5cm、短径:2.5cm
B(カマス・キス用) 長径:3cm、短径:2cm
C(タチウオ用) 長径:4.5cm、短径:1.2cm
【0033】
活魚締め具1における開口4の位置については、棒状体の前方の位置に設けられているものであれば特に限定されない。例えば、
図1のように棒状体の前方向に向かって開口する形態でも良いし、棒状体の横方向に向かって開口する形態(図示せず)でも良い。
【0034】
なお、開口4は未使用時には蓋などで閉じる構造とすることもできる。
【0035】
(収納空間)
収納空間5は、活魚の頭部を収納することができる形状であれば特に限定されるものではなく、筒状など各種の形状を採用することができる。そしてその中でも、活魚が暴れること(活魚が頭部を動かすこと)を効果的に防止できることから、魚の頭部の形状に合わせた形態となる、深部に向かって狭くなるテーパー状に形成された形態を採用することが好ましい。
なお、収納空間5をテーパー状に形成した場合のテーパー角度(θ)は、対象とする活魚の頭の角度に合わせればよいが、45~89°にすることが好ましく、その中でも45~80°にすることが好ましい。
【0036】
さらに、収納空間5には外部と連通する貫通孔6を設けることもできる。係る貫通孔6を設けておけば、収納空間5内に水やごみが溜まるのを防止することができ、また、収納空間内の洗浄を容易に行うことができるので好適である。
【0037】
(把持部)
把持部3は、使用者が把持(握持)する部分である。使用者は、係る把持部3を握って活魚の頭部を開口4に挿入するとともに収納空間5内に収納することになる。そして、活魚の頭部を収納空間5内に収納した後、係る把持部3を操作して活魚の背骨を折ることによって活魚を締めるのである。
【0038】
把持部3の形状は、使用者が握って操作することができる形状であれば特に限定されるものではなく、各種の形状を採用することができる。そしてその中でも、握り易さおよび操作のし易さの観点から、
図1~3に示すような、外周が後方に向かって漸次小さくなる形状とすることが好ましく、角柱状よりも円柱状(特に楕円柱状)とすることが好ましい。具体的には、最も太い部分の直径が2~10cmの円柱(楕円柱の場合は最も太い部分の長径を2~10cm)にすることが好ましく、その中でも2~6cmの円柱(楕円柱の場合は長径を2~6cm)にすることが好ましい。
【0039】
また、把持部3にストラップ(図示せず)を取り付けて魚つかみを連結しておけば、釣り上げた魚を魚つかみで掴んだ際、別の手でストラップを介してぶら下がっている活魚締め具1(把持部3)を持って締めることができる。従って、道具箱から活魚締め具1を探して取り出す時間や手間を短縮することができるので好適である。
さらに、把持部3に目盛(メジャー)を印刷しておけば、写真撮影時にも活用できるので好適である。
【0040】
(突起部材)
さらに、把持部3については、
図4に示すように、棒状体から突出した突出部材7を設けることもできる。係る形態とすれば、使用者がより握り易くなり、活魚締め具1をより操作をし易くなるので好適である。
なお、突出部材7の形状については特に限定されるものではなく、ガングリップ形状(
図4)、シフトレバー形状、ハンドル形状など、各種の形状のものを採用することができる。
【0041】
(着脱構造)
また、
図1~4に示す活魚締め具1は魚頭収納部2と把持部3が一体構造の形態となっているが、
図5に示すように、魚頭収納部2と把持部3とを分離して着脱可能な構造とすることもできる。係る構造とすれば、対象とする活魚に合わせて収納空間5の形状や大きさを変更した複数の魚頭収納部2を用意するだけで、把持部3は1つだけで活魚締め具1を構成することができ、省スペース化を行うことができる。なお、着脱構造は、従前の着脱構造を採用すればよく、嵌合構造8、螺合構造、係止構造、掛止構造、マグネット構造、面ファスナー構造など各種の着脱構造が挙げられる。
【0042】
次に、上記のように構成された活魚締め具1の動作(活魚締め方法)および作用を
図6に基づいて説明する。なお、
図6は
図1に示す活魚締め具1を用いた際の動作および作用となる。
【0043】
まず、釣り上げた活魚Fの胴体を魚つかみ9で保持する。次に、魚つかみ9を持たない方の手で活魚締め具1の把持部3を握り、魚頭収納部2を釣り上げた活魚F(タチウオ)の頭部に被せるようにして活魚Fの頭部を収納空間5内に収納する(
図6(a):収納工程)。この際、釣り針を予め外してから魚頭収納部2を活魚Fの頭部に被せてもよいが、収納の際に釣り針が邪魔にならないようであれば、釣り針が掛かった状態のままで魚頭収納部2を活魚Fの頭部に被せることもできる。
【0044】
次に、魚頭収納部2の開口の上端部の内側面10または開口の下端部の内側面11のいずれか一方を活魚の頭頂部F1に当接させる。そして、開口の上端部の内側面10または開口の下端部の内側面11のいずれか他方を活魚の下顎部F2に当接させる(
図6(b):当接工程)。なお、
図6(b)においては、開口の上端部の内側面10を活魚の頭頂部F1に当接させ、開口の下端部の内側面11を活魚の下顎部F2に当接させているが、逆になっても構わない。
【0045】
次に、魚つかみ9で保持した方の手は固定し、把持部3を握った方の手および腕を動かして、魚頭収納部2に収納した活魚Fの頭部を背びれ側に折り曲げる(
図6(c)、
図6(d):締め工程)。そうすると、把持部3(握った部分)が力点になり、開口の上端部の内側面10に当接した活魚の頭頂部F1が支点になり、活魚の背骨(首)F3の部分が作用点となることから、作用点となる活魚の背骨(首)F3の部分に荷重が掛かり、当該部分を折る(骨折させる)ことができるのである。つまり、てこの原理を用いていわゆるサバ折りの処理ができることになり、活魚を少ない力で簡単かつ迅速に締めることができることになるのである。また、係る動作は、単に活魚Fの頭部を曲げているだけであるので、活魚Fの頭を胴体から切断したり引きちぎったりすることなく、活魚を締めることができるのである。
ここで、
図6(c)、(d)においては把持部3を握った方の手だけを動かしているが、魚つかみ9で保持した方の手も動かして、小枝を折るような動きで活魚の背骨(首)F3の部分を折ることもできる。なお、この場合は、把持部3(握った部分)に加えて魚つかみ9で保持した部分も力点となる。
また、
図6(d)においては活魚Fを持ち上げた状態で活魚締め具1を用いているが、釣り上げた活魚Fを地面に置いた状態で上記と同様の動作を行ってもよい。
【0046】
最後に、収納空間5内から活魚Fの頭部を抜き取ることによって締め処理を終了する。なお、釣り針が掛かった状態のままで収納工程を行った場合には、この段階で釣り針を外せばよいので、釣り上げた状態(活魚が暴れている状態)で釣り針を外す動作に比べて安全に釣り針を外すことができる。
そして、締め処理が終わった魚をクーラーボックス等に保管して一連の作業を終了する。
【0047】
従って、以下の効果を発現させることができるのである。
(1)てこの原理を用いて活魚を締めることができるので、子供や女性等、腕力がない者でも簡単に活魚を締めることができる。
(2)ハサミ等を用いた従前の締め方よりも、迅速に(半分程度の時間で)締めることができる。
(3)活魚に直接手を触れることなく(手を汚すことなく)、活魚を締めることができる。また、タチウオ等の歯が鋭い魚であっても、手のケガを心配することなく、安全に締めることができる。さらに、活魚に直接触れることによって生じる、身の「やけど」を防止することができる。
(4)背骨を折るだけの締め方であることから、締めた後の魚の見栄え(写真撮影時などにおける魚の見栄え)をきれいにすることができる。なお、該効果は、ハサミを用いた締め方(頭の上部を切断してしまう締め方)を行う魚(タチウオ等)において特に顕著なものとなる。
【実施例0048】
次に、本発明に係る活魚締め具を実施例および比較例に基づいて詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
発明者においてタチウオ釣りを行い、指3~3.5本サイズのタチウオを30本釣り上げた。そして、その内の15本については釣り上げた際に
図2のCの活魚締め具(タチウオ用の活魚締め具)を用いて締め処理を行った(実施例)。そして、残りの15本については釣り上げた際にハサミを用いて頭頂部から背骨(延髄)を断ち切るようにして締め処理を行った(比較例)。
【0050】
その結果、実施例の締め処理は比較例の締め処理に比べて、約半分の時間(実施例:3~5秒/本、比較例:10~15秒/本)で締め処理を完了することができた。また、比較例の締め処理はハサミで背骨(延髄)を断ち切ることからある程度の腕力が必要であったが、実施例の締め処理はてこの原理を用いることからほとんど力を入れずに処理を行うことができた。さらに、比較例の締め処理はタチウオを素手で保持していたことから、ハサミを用いる際にタチウオが暴れて手が汚れたり、歯が当たりそうになったりして危険であったが、実施例の締め処理は活魚締め具をタチウオの頭に被せるだけであることから、手がタチウオから十分に離れた状態で処理を行うことができ、安心して処理することができた。