(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151770
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/11 20120101AFI20241018BHJP
F16H 48/285 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
F16H48/11
F16H48/285
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065460
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉坂 正
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB01
3J027HB04
3J027HC02
(57)【要約】
【課題】一対のサイドギヤと、一方のサイドギヤに噛み合う二つの短尺ピニオンギヤと、他方のサイドギヤならびに二つの短尺ピニオンギヤに噛み合う長尺ピニオンギヤと、二つの短尺ピニオンギヤ及び長尺ピニオンギヤを保持する保持穴が形成されたハウジングとを備えた差動装置において、長尺ピニオンギヤのハウジングに対する傾きを抑制し、以って騒音の発生や差動制限力の変動を抑制する。
【解決手段】長尺ピニオンギヤ33は、一側噛み合い部331及び他側噛み合い部332を有し、一側噛み合い部331が第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32に噛み合うと共に、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22に噛み合う。第1の短尺ピニオンギヤ31と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C
1と、第2の短尺ピニオンギヤ32と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C
2とを、長尺ピニオンギヤ33の軸方向にオフセットさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドギヤと、前記一対のサイドギヤの外周に配置された複数のピニオンギヤ組と、前記複数のピニオンギヤ組をそれぞれ保持する複数の保持穴が形成されたハウジングとを備え、
前記一対のサイドギヤ及び前記ハウジングは、共通の回転軸線を中心として相対回転可能であり、
前記複数のピニオンギヤ組は、前記一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤに噛み合う第1及び第2の短尺ピニオンギヤと、前記一対のサイドギヤのうち他方のサイドギヤならびに前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤに噛み合う長尺ピニオンギヤとを有し、前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤ及び前記長尺ピニオンギヤのそれぞれが前記回転軸線と平行な自転軸を中心として回転可能に前記保持穴に保持されており、
前記長尺ピニオンギヤは、前記自転軸に沿って並ぶ一側噛み合い部及び他側噛み合い部を有し、前記一側噛み合い部が前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤに噛み合うと共に前記他側噛み合い部が前記他方のサイドギヤに噛み合い、
前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤは、前記長尺ピニオンギヤの前記一側噛み合い部を挟んで前記一方のサイドギヤの周方向に沿って離間して配置され、
前記第1の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置と、前記第2の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置とが、前記長尺ピニオンギヤの軸方向にオフセットしている、
差動装置。
【請求項2】
前記長尺ピニオンギヤの軸方向において前記第1の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置が前記第2の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置よりも前記他側噛み合い部から遠い位置にあり、
前記回転軸線まわりの前記ハウジングの回転方向において前記他側噛み合い部が前記他方のサイドギヤから受ける噛み合い反力の方向と前記一側噛み合い部が前記第1の短尺ピニオンギヤから受ける噛み合い反力の方向とが同じである、
請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記第1の短尺ピニオンギヤが前記第2の短尺ピニオンギヤよりも前記ハウジングの主たる回転方向の前方に位置している、
請求項2に記載の差動装置。
【請求項4】
前記第1の短尺ピニオンギヤの軸方向における歯幅と、前記第2の短尺ピニオンギヤの軸方向における歯幅とが同じであり、
前記第1の短尺ピニオンギヤが前記第2の短尺ピニオンギヤよりも前記他側噛み合い部から遠い位置に配置されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の差動装置。
【請求項5】
前記第1の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅と、前記第2の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅とが異なり、これらの噛み合い歯幅の違いによって前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置が前記長尺ピニオンギヤの軸方向にオフセットしている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、入力される駆動力を一対のサイドギヤから差動を許容して出力する差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力される駆動力を一対のサイドギヤから差動を許容して出力する差動装置が車両のデファレンシャル装置として用いられている。差動装置には、一対のサイドギヤの相対回転を抑制し、例えば左右の車輪の一方がスリップしても他方の車輪に駆動力を伝達できる差動制限機能を備えたものがある。本出願人は、このような差動装置として、特許文献1に記載のものを提案している。
【0003】
特許文献1に記載の差動装置は、第1及び第2のサイドギヤと、第1のピニオンギヤに二つの第2のピニオンギヤを噛み合わせてなる複数のピニオンギヤ組と、複数のピニオンギヤ組を保持するハウジングとを備えている。第1及び第2のピニオンギヤは、第1及び第2のサイドギヤと平行となるように、ハウジングに形成されたボアに保持されている。第1のピニオンギヤは、第2のピニオンギヤよりも軸方向の長さが長く、第1のサイドギヤに噛み合う軸方向一端側ギヤ部と、二つの第2のピニオンギヤに噛み合う軸方向他端側ギヤ部とを一体に有している。二つの第2のピニオンギヤは、第2のサイドギヤの周方向に離れた位置で第2のサイドギヤにそれぞれ噛み合い、第1のピニオンギヤの軸方向他端側ギヤ部は、第2のサイドギヤの径方向外側にあたる位置で二つの第2のピニオンギヤに噛み合う。第1及び第2のサイドギヤが差動回転すると、第1及び第2のピニオンギヤの歯先面がボアの内面を摺動する。この摺動によって発生する摩擦力は、第1及び第2のサイドギヤの差動回転を抑制する差動制限力となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された差動装置では、第1のピニオンギヤが第1のサイドギヤや第2のピニオンギヤから受ける噛み合い反力によってボア内でハウジングに対して傾斜してしまうと、騒音が発生したり、差動制限力が所期のものから変動してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤに噛み合う二つの短尺ピニオンギヤと、他方のサイドギヤならびに二つの短尺ピニオンギヤに噛み合う長尺ピニオンギヤと、二つの短尺ピニオンギヤ及び長尺ピニオンギヤを保持する保持穴が形成されたハウジングとを備え、長尺ピニオンギヤのハウジングに対する傾きを抑制することが可能な差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、一対のサイドギヤと、前記一対のサイドギヤの外周に配置された複数のピニオンギヤ組と、前記複数のピニオンギヤ組をそれぞれ保持する複数の保持穴が形成されたハウジングとを備え、前記一対のサイドギヤ及び前記ハウジングは、共通の回転軸線を中心として相対回転可能であり、前記複数のピニオンギヤ組は、前記一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤに噛み合う第1及び第2の短尺ピニオンギヤと、前記一対のサイドギヤのうち他方のサイドギヤならびに前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤに噛み合う長尺ピニオンギヤとを有し、前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤ及び前記長尺ピニオンギヤのそれぞれが前記回転軸線と平行な自転軸を中心として回転可能に前記保持穴に保持されており、前記長尺ピニオンギヤは、前記自転軸に沿って並ぶ一側噛み合い部及び他側噛み合い部を有し、前記一側噛み合い部が前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤに噛み合うと共に前記他側噛み合い部が前記他方のサイドギヤに噛み合い、前記第1及び第2の短尺ピニオンギヤは、前記長尺ピニオンギヤの前記一側噛み合い部を挟んで前記一方のサイドギヤの周方向に沿って離間して配置され、前記第1の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置と、前記第2の短尺ピニオンギヤと前記一側噛み合い部との噛み合い歯幅の中心位置とが、前記長尺ピニオンギヤの軸方向にオフセットしている、差動装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る差動装置によれば、長尺ピニオンギヤのハウジングに対する傾きを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る差動装置を示す斜視図であり、(a)は装置全体の外観を示し、(b)はハウジングの一部を破断してその内部を示している。
【
図3】(a)は
図2のO-B線断面図、(b)は
図2のO-C線断面図、(c)は
図2のO-D線断面図である。
【
図5】長尺ピニオンギヤを単体で示す側面図である。
【
図6】第1のハウジング部材の一部を示す斜視断面図である。
【
図7】(a)は、本実施の形態に係る第1の短尺ピニオンギヤ、第2の短尺ピニオンギヤ、及び長尺ピニオンギヤの位置関係を模式的に示す説明図である。(b)は、比較例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る差動装置1を示す斜視図であり、(a)は装置全体の外観を示し、(b)はハウジング4の一部を破断してその内部を示している。
図2は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図3(a)は、
図2のO-B線断面図、
図3(b)は、
図2のO-C線断面図、
図3(c)は、
図2のO-D線断面図である。
【0012】
差動装置1は、車両に搭載され、入力された駆動力を一対の駆動軸に差動を許容して配分するために用いられる。本実施の形態では、エンジン等の駆動源の駆動力を左右の車輪に連結されたドライブシャフトに差動を許容して配分するために差動装置1を用いる場合について説明するが、差動装置1を四輪駆動車に搭載し、前後のプロペラシャフトに駆動力を配分するセンターデファレンシャルとして用いることも可能である。
【0013】
差動装置1は、一対のサイドギヤ21,22と、一対のサイドギヤ21,22の外周に配置された複数のピニオンギヤ組3と、複数のピニオンギヤ組3をそれぞれ保持する複数の保持穴40が形成されたハウジング4と、センタワッシャ50及びサイドワッシャ51,52とを備えている。本実施の形態では、三組のピニオンギヤ組3がハウジング4に保持されている。一対のサイドギヤ21,22及びハウジング4は、共通の回転軸線Oを中心として相対回転可能である。
【0014】
一対のサイドギヤ21,22は、回転軸線Oに沿って並んでいる。以下、一対のサイドギヤ21,22のうち、
図3(a)~(c)における図面左側のサイドギヤ21を一方のサイドギヤ21といい、図面右側のサイドギヤ22を他方のサイドギヤ22という。ただし、
図3(a)~(c)における図面左右方向は、必ずしも車両への搭載状態における左右方向に対応するものではない。
【0015】
図4は、一組のピニオンギヤ組3を示す斜視図である。ピニオンギヤ組3は、一方のサイドギヤ21に噛み合う第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32と、他方のサイドギヤ22ならびに第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32に噛み合う長尺ピニオンギヤ33とを有している。第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32、ならびに長尺ピニオンギヤ33は、外周面に斜歯が形成された斜歯歯車である。第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32及び長尺ピニオンギヤ33のそれぞれは、回転軸線Oと平行な自転軸を中心として回転可能にハウジング4の保持穴40に保持されている。
【0016】
図4では、第1の短尺ピニオンギヤ31の中心軸線O
1、第2の短尺ピニオンギヤ32の中心軸線O
2、及び長尺ピニオンギヤ33の中心軸線O
3を一点鎖線で示している。また、
図4では、第1の短尺ピニオンギヤ31の軸方向における歯幅をW
01で示し、第2の短尺ピニオンギヤ32の軸方向における歯幅をW
02で示している。第1の短尺ピニオンギヤ31、第2の短尺ピニオンギヤ32、及び長尺ピニオンギヤ33は、それぞれ中心軸線O
1,O
2,O
3を自転軸として保持穴40内で自転する。
【0017】
第1の短尺ピニオンギヤ31は、第2の短尺ピニオンギヤ32よりもハウジング4の主たる回転方向の前方に位置している。ハウジング4の主たる回転方向は、差動装置1が搭載された車両の前進走行時におけるハウジング4の回転方向である。
図4では、ハウジング4の主たる回転方向を矢印Dで示している。
【0018】
第1の短尺ピニオンギヤ31及び第2の短尺ピニオンギヤ32は、ピッチ円直径や歯幅等の仕様が共通である。つまり、第1の短尺ピニオンギヤ31と第2の短尺ピニオンギヤ32とは、形状、大きさ、及び材質等が同じであり、同一の工程で製造されたものを用いることができる。
【0019】
図4に示すように、第2の短尺ピニオンギヤ32は、歯幅W
02の全体が長尺ピニオンギヤ33に噛み合うが、第1の短尺ピニオンギヤ31は、歯幅W
01の一部が長尺ピニオンギヤ33に噛み合わず、第2の短尺ピニオンギヤ32に対して軸方向に位置ずれしている。この位置ずれの作用及び効果については後述する。
【0020】
図1(b)に示すように、一方のサイドギヤ21は、外周面に第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32と噛み合う斜歯が形成された斜歯歯車である。他方のサイドギヤ22は、外周面に長尺ピニオンギヤ33と噛み合う斜歯が形成された斜歯歯車である。一方のサイドギヤ21の斜歯の捩れ方向と、他方のサイドギヤ22の斜歯の捩れ方向とは互いに逆向きである。一方のサイドギヤ21は、他方のサイドギヤ22よりもピッチ円径及び歯先円直径が小さく形成されている。
【0021】
図3(a)~(c)に示すように、一方のサイドギヤ21の中心部には、左右のドライブシャフトのうち一方のドライブシャフトが相対回転不能に連結されるスプライン嵌合孔210が形成されている。また、他方のサイドギヤ22の中心部には、左右のドライブシャフトのうち他方のドライブシャフトが相対回転不能に連結されるスプライン嵌合孔220が形成されている。一方のサイドギヤ21と他方のサイドギヤ22との間には、センタワッシャ50が配置されている。
【0022】
長尺ピニオンギヤ33は、その軸方向長さが第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32の軸方向長さよりも長く、一方のサイドギヤ21の外周側及び他方のサイドギヤ22の外周側にわたって配置されている。第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32は、一方のサイドギヤ21の外周側に配置されている。長尺ピニオンギヤ33は、その自転軸に沿って並ぶ一側噛み合い部331及び他側噛み合い部332を一体に有し、一側噛み合い部331が第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32に噛み合うと共に、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22に噛み合っている。
【0023】
図5は、長尺ピニオンギヤ33を単体で示す側面図である。一側噛み合い部331と他側噛み合い部332とは、歯数が同一であり、歯筋33a及び歯溝33bが連続して形成されている。ただし、歯筋33a及び歯溝33bは、必ずしも連続していなくてもよい。一側噛み合い部331の歯先面331a及び他側噛み合い部332の歯先面332aは、長尺ピニオンギヤ33の周方向に所定の幅を有している。一側噛み合い部331は、長尺ピニオンギヤ33の軸方向の中央部333よりも軸方向の一端側に設けられ、他側噛み合い部332は、中央部333よりも軸方向の他端側に設けられている。長尺ピニオンギヤ33の中央部333は、センタワッシャ50の外周側にあたる位置に配置されている。
【0024】
一側噛み合い部331は、他側噛み合い部332よりもピッチ円直径及び歯先円直径が小さく形成されている。
図5に示すように、一側噛み合い部331のピッチ円直径をP
1とし、他側噛み合い部332のピッチ円直径をP
2とすると、P
2はP
1よりも大きく、P
1に対するP
2の比率(P
2/P
1)は、例えば1.05~1.15である。また、一側噛み合い部331における歯筋33aの捩れ角をθ
1とし、他側噛み合い部332における歯筋33aの捩れ角をθ
2とすると、θ
2はθ
1よりも大きく、その比率は、例えば一側噛み合い部331と他側噛み合い部332のピッチ円直径の比率と同じである。
【0025】
第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32は、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331を挟んで一方のサイドギヤ21の周方向に沿って離間して配置され、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331に噛み合っている。第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32は、ピッチ円直径及び歯筋の捩れ角が軸方向の全体にわたって均一である。中央部333では、一側噛み合い部331側から他側噛み合い部332側に向かってピッチ円直径及び歯先円直径が徐々に大きくなっている。
【0026】
第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32は、その軸方向長さが長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331の軸方向長さに相当する長さであり、他方のサイドギヤ22の外周側には第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32が位置していない。長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331は、一方のサイドギヤ21の径方向外側にあたる位置で第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32に噛み合っている。長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331と一方のサイドギヤ21との間には僅かな隙間が形成されている。
【0027】
ハウジング4は、有底円筒状の第1のハウジング部材41と、第1のハウジング部材41の開口側に固定された第2のハウジング部材42とを有している。第1のハウジング部材41には、ピニオンギヤ組3の長尺ピニオンギヤ33ならびに第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32を保持する保持穴40が形成されている。本実施の形態では、差動装置1が三組のピニオンギヤ組3を有しているので、第1のハウジング部材41には、三つの保持穴40が形成されている。保持穴40は、第1のハウジング部材41の開口側に開放されている。
【0028】
第1のハウジング部材41は、三つの保持穴40が形成された円筒部411と、円筒部411の一端部から内方に突出して形成された底部412と、円筒部411の他端部から外方に突出して形成されたフランジ部413と、底部412の中央部から軸方向に突出して一方のドライブシャフトの連結部(等速ジョイントのステム部)を挿通させる導管部414とを一体に有している。第1のハウジング部材41の円筒部411には、その外周面から内方に向かって凹陥部410が凹設されている。凹陥部410は、円筒部411の内周面に開口している。底部412と他方のサイドギヤ22との間には、サイドワッシャ52が配置されている。底部412には、潤滑油を流動させる油孔412aが形成されている。導管部414の内面には、潤滑油を流動させる油溝414aが形成されている。
【0029】
図6は、第1のハウジング部材41の一部を示す斜視断面図である。保持穴40は、第1の短尺ピニオンギヤ31を収容する第1の短穴401、第2の短尺ピニオンギヤ32を収容する第2の短穴402、及び長尺ピニオンギヤ33を収容する長穴403によって形成されている。第1の短穴401、第2の短穴402、及び長穴403は、回転軸線Oと平行に延在している。第2の短穴402は、長穴403よりも短く形成されており、第1の短穴401は、第2の短尺ピニオンギヤ32に対する第1の短尺ピニオンギヤ31の位置ずれ分だけ、第2の短穴402よりもさらに短く形成されている。第1の短尺ピニオンギヤ31は、軸方向の一部が第1の短穴401に収容され、軸方向の他の一部が第1の短穴401から突出する。第2の短尺ピニオンギヤ32は、軸方向の全体が第2の短穴402に収容される。
【0030】
長尺ピニオンギヤ33は、軸方向の全体が長穴403に収容される。長穴403は、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331を収容する小径穴部404と、長尺ピニオンギヤ33の他側噛み合い部332を収容する大径穴部405と有して形成されている。小径穴部404は、第1の短穴401及び第2の短穴402と連通している。
【0031】
第1の短穴401の内面401a及び第2の短穴402の内面402aは、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32の歯先円直径の2分の1に対応する曲率半径で形成された湾曲面である。長穴403の小径穴部404の内面404aは、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331の歯先円直径の2分の1に対応する曲率半径で形成された湾曲面であり、長穴403の大径穴部405の内面405aは、長尺ピニオンギヤ33の他側噛み合い部332の歯先円直径の2分の1に対応する曲率半径で形成された湾曲面である。
【0032】
第1の短尺ピニオンギヤ31は、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331との噛み合い反力により、歯先面31aが第1の短穴401の内面401aに押し付けられる。第1の短尺ピニオンギヤ31が第1の短穴401内で回転するとき、第1の短尺ピニオンギヤ31の歯先面31aが第1の短穴401の内面401aを摺動する。
【0033】
同様に、第2の短尺ピニオンギヤ32は、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331との噛み合い反力により、歯先面32aが第2の短穴402の内面402aに押し付けられる。第2の短尺ピニオンギヤ32が第2の短穴402内で回転するとき、第2の短尺ピニオンギヤ32の歯先面32aが第2の短穴402の内面402aを摺動する。
【0034】
長尺ピニオンギヤ33は、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32との噛み合い反力により、一側噛み合い部331の歯先面331aが小径穴部404の内面404aに押し付けられ、他方のサイドギヤ22との噛み合い反力により他側噛み合い部332の歯先面332aが大径穴部405の内面405aに押し付けられる。長尺ピニオンギヤ33が長穴403内で回転するとき、一側噛み合い部331の歯先面331aが小径穴部404の内面404aを摺動し、他側噛み合い部332の歯先面332aが大径穴部405の内面405aを摺動する。
【0035】
第1の短尺ピニオンギヤ31の歯先面31aと第1の短穴401の内面401aとの間に発生する摩擦力、第2の短尺ピニオンギヤ32の歯先面32aと第2の短穴402の内面402aとの間に発生する摩擦力、ならびに長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331の歯先面331a及び他側噛み合い部332の歯先面332aと小径穴部404の内面404a及び大径穴部405の内面405aとの間に発生する摩擦力は、サイドギヤ21,22の差動回転を制限する差動制限力となる。
【0036】
第2のハウジング部材42は、第1のハウジング部材41の開口側における複数の保持穴40の一端を閉塞する環板部421と、第1のハウジング部材41のフランジ部413に突き当てられるフランジ部422と、環板部421から軸方向に突出して他方のドライブシャフトの連結部を挿通させる導管部423とを一体に有している。導管部423の内面には、潤滑油を流動させる油溝423aが形成されている。環板部421と一方のサイドギヤ21との間には、サイドワッシャ51が配置されている。
【0037】
環板部421には、各ピニオンギヤ組3の第1の短尺ピニオンギヤ31の一部を収容する収容穴420が形成されている。収容穴420は、第1のハウジング部材41の第1の短穴401から突出した第1の短尺ピニオンギヤ31の一部を収容している。第1の短穴401の軸方向長さと収容穴420の軸方向長さとを合わせた長さは、第1の短尺ピニオンギヤ31の軸方向長さよりも僅かに長く形成されている。
【0038】
第1のハウジング部材41のフランジ部413と、第2のハウジング部材42のフランジ部422とは、複数のボルト43(
図1参照)によって締結されている。ハウジング4は、図略の軸受によってデフキャリアに回転可能に支持され、
図3に仮想線(二点鎖線)で示すリングギヤ61から入力される駆動力により回転軸線Oまわりに回転する。第1及び第2のハウジング部材41,42のフランジ部413,422には、リングギヤ61を固定するためのボルト62の軸部を挿通させるボルト挿通孔413a,422aがそれぞれ形成されている。また、第1のハウジング部材41のフランジ部413には、ボルト43が螺合するねじ孔413b(
図6参照)が形成されている。
【0039】
リングギヤ61から入力される駆動力によってハウジング4が回転すると、その駆動力が第1のハウジング部材41に保持された複数のピニオンギヤ組3に伝達され、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32から一方のサイドギヤ21に、また長尺ピニオンギヤ33から他方のサイドギヤ22に、それぞれ駆動力が配分される。一方のサイドギヤ21と他方のサイドギヤ22とが同じ速度で回転する場合には、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32ならびに長尺ピニオンギヤ33が保持穴40内で回転(自転)しない。
【0040】
一方、例えば旋回走行時等において一方のサイドギヤ21と他方のサイドギヤ22との間に回転速差が生じると、その回転速差に応じた速度で第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32ならびに長尺ピニオンギヤ33が保持穴40内で回転し、差動制限力が発生する。また、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32との噛み合いによって一方のサイドギヤ21に発生する軸方向のスラスト力、及び長尺ピニオンギヤ33との噛み合いによって他方のサイドギヤ22に発生する軸方向のスラスト力により、両サイドギヤ21,22とセンタワッシャ50又はサイドワッシャ51,52との摺動によって発生する摩擦力も、一方のサイドギヤ21と他方のサイドギヤ22との差動回転を制限する差動制限力となる。
【0041】
次に、第1の短尺ピニオンギヤ31が第2の短尺ピニオンギヤ32に対して軸方向に位置ずれしている本実施の形態の構成の作用について、
図7を参照して説明する。
【0042】
図7(a)は、本実施の形態に係る第1の短尺ピニオンギヤ31、第2の短尺ピニオンギヤ32、及び長尺ピニオンギヤ33の位置関係を模式的に示す説明図である。前述のように、本実施の形態では第1の短尺ピニオンギヤ31が第2の短尺ピニオンギヤ32に対して軸方向に位置ずれしており、第1の短尺ピニオンギヤ31が第2の短尺ピニオンギヤ32よりも他側噛み合い部332から遠い位置に配置されている。
図7(b)は、第1の短尺ピニオンギヤ31が長尺ピニオンギヤ33の軸方向において第2の短尺ピニオンギヤ32と同じ位置に配置された比較例を模式的に示す説明図である。
【0043】
図7(a)及び(b)では、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331と第1の短尺ピニオンギヤ31との噛み合い歯幅をW
1で、一側噛み合い部331と第2の短尺ピニオンギヤ32との噛み合い歯幅をW
2で、長尺ピニオンギヤ33の他側噛み合い部332と他方のサイドギヤ22との噛み合い歯幅をW
3で、それぞれ示している。ここで、噛み合い歯幅とは、各ギヤ同士が噛み合っている部分の軸方向の幅をいう。
【0044】
また、
図7(a)及び(b)では、第1の短尺ピニオンギヤ31と長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置をC
1で、第2の短尺ピニオンギヤ32と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置をC
2で、長尺ピニオンギヤ33の他側噛み合い部332と他方のサイドギヤ22との噛み合い歯幅の中心位置をC
3で、それぞれ示している。噛み合い歯幅の中心位置とは、各ギヤの軸方向における噛み合い歯幅の二等分点をいう。
【0045】
また、
図7(a)及び(b)では、一方のサイドギヤ21の周方向において長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力の方向及び大きさを、噛み合い歯幅の中心位置C
1から延びる矢印F
1で、一側噛み合い部331が第2の短尺ピニオンギヤ32から受ける噛み合い反力の方向及び大きさを噛み合い歯幅の中心位置C
2から延びる矢印F
2で、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22から受ける噛み合い反力の方向及び大きさを噛み合い歯幅の中心位置C
3から延びる矢印F
3で、それぞれ示している。
【0046】
図7(a)及び(b)に示すように、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331が第2の短尺ピニオンギヤ32から受ける噛み合い反力は、一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力よりも大きく、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22から受ける噛み合い反力は、一側噛み合い部331が第2の短尺ピニオンギヤ32から受ける噛み合い反力よりもさらに大きい。
【0047】
図7(b)に示す比較例では、長尺ピニオンギヤ33の軸方向における中心位置C
1の位置と中心位置C
2の位置とが同じであるので、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331が第2の短尺ピニオンギヤ32から受ける噛み合い反力の一部と第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力とが打ち消しあう。これにより、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331は、全体としては、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32から図面左側(ハウジング4の主たる回転方向側)に向かう力を受ける。一方、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331は、他方のサイドギヤ22から図面右側(ハウジング4の主たる回転方向の反対側)に向かう力を受ける。これにより、長尺ピニオンギヤ33には、軸方向に沿った長さ方向の中心点Cを中心として矢印R方向の回転力が発生する。この回転力は、保持穴40内で長尺ピニオンギヤ33をハウジング4に対して傾斜させる要因となる。
【0048】
長尺ピニオンギヤ33が保持穴40内でハウジング4に対して傾くと、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32との噛み合い不整合により長尺ピニオンギヤ33の回転時に騒音が発生したり、差動制限力が所期のものから変動してしまうおそれがある。また、例えば耐久試験時において長尺ピニオンギヤ33が傾斜して回転する状態が長く続くと、保持穴40の内面や、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32もしくは長尺ピニオンギヤ33の歯面、あるいは他方のサイドギヤ22の歯面に偏摩耗が発生するおそれもある。
【0049】
本実施の形態では、
図7(a)に示すように、第1の短尺ピニオンギヤ31と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C
1と、第2の短尺ピニオンギヤ32と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C
2とが、長尺ピニオンギヤ33の軸方向にオフセットしている。すなわち、長尺ピニオンギヤ33の長さ方向の中心点Cに関し、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力のモーメントアームの長さL
1が、一側噛み合い部331が第2の短尺ピニオンギヤ32から受ける噛み合い反力のモーメントアームの長さL
2よりも長くなっている。
【0050】
つまり、本実施の形態では、長尺ピニオンギヤ33の軸方向において第1の短尺ピニオンギヤ31と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C1が第2の短尺ピニオンギヤ32と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅の中心位置C2よりも他側噛み合い部332から遠い位置にあり、ハウジング4の回転方向において、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22から受ける噛み合い反力の方向と、一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力の方向とが同じである。
【0051】
このピニオンギヤ組3の構成により、本実施の形態では、一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力によって、中心点Cを中心として長尺ピニオンギヤ33を矢印R方向に回転させる回転力が比較例の場合よりも小さくなる。
【0052】
(実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態によれば、長尺ピニオンギヤ33のハウジング4に対する傾きを抑制することが可能となり、長尺ピニオンギヤ33の回転時に発生する騒音や差動制限力の変動を抑制することができる。また、保持穴40の内面や、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32もしくは長尺ピニオンギヤ33の歯面、あるいは他方のサイドギヤ22の歯面に偏摩耗が発生することを抑制することができる。またさらに、本実施の形態によれば、第1の短尺ピニオンギヤ31及び第2の短尺ピニオンギヤ32として同じ仕様のものを用いることができるので、部品種数の増加によってコストが上昇してしまうことを抑制することが可能となる。
【0053】
[変形例]
次に、実施の形態の二つの変形例について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9において、上記の実施の形態について説明したものに対応する部材等については、
図7に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。これらの変形例は、何れも上記の実施の形態と同様に、中心位置C
1が中心位置C
2よりも他側噛み合い部332から遠い位置にあり、他側噛み合い部332が他方のサイドギヤ22から受ける噛み合い反力の方向と、一側噛み合い部331が第1の短尺ピニオンギヤ31から受ける噛み合い反力の方向とが同じである。
【0054】
図8に示す変形例では、長尺ピニオンギヤ33の一側噛み合い部331が第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32よりも長く形成されており、第1の短尺ピニオンギヤ31の配置位置が第2の短尺ピニオンギヤ32の配置位置よりも他側噛み合い部332から遠い位置である。第1の短尺ピニオンギヤ31と第2の短尺ピニオンギヤ32とは、軸方向の長さ等の仕様が共通である。第1の短尺ピニオンギヤ31は、第1のハウジング部材41に形成された第1の短穴401に軸方向の全体が収容されている。第2の短尺ピニオンギヤ32を収容する第2の短穴402は、第1の短穴401よりも軸方向に長く形成されており、第2のハウジング部材42の環板部421には、第2の短尺ピニオンギヤ32を第2の短穴402の奥側に定位させるための突起421aが設けられている。
【0055】
図9に示す変形例では、第2の短尺ピニオンギヤ32の軸方向の一部がギヤ歯の形成されていない円筒部321となっており、この円筒部321の軸方向長さに応じて一側噛み合い部331との噛み合い歯幅W
2が短くなっている。第1の短尺ピニオンギヤ31は、第1の短穴401に軸方向の全体が収容されている。第2の短尺ピニオンギヤ32は、円筒部321が第2のハウジング部材42側となるように配置され、円筒部321を含む軸方向の全体が第2の短穴402に収容されている。
【0056】
この
図9に示す変形例では、第1の短尺ピニオンギヤ31と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅W
1と第2の短尺ピニオンギヤ32と一側噛み合い部331との噛み合い歯幅W
2との違いにより、噛み合い歯幅の中心位置C
1,C
2が長尺ピニオンギヤ33の軸方向にオフセットしている。
【0057】
これらの変形例によっても、上記の実施の形態と同様に、長尺ピニオンギヤ33のハウジング4に対する傾きを抑制することが可能となり、長尺ピニオンギヤ33の回転時に発生する騒音や差動制限力の変動を抑制することができる。また、保持穴40の内面や、第1及び第2の短尺ピニオンギヤ31,32もしくは長尺ピニオンギヤ33の歯面、あるいは他方のサイドギヤ22の歯面に偏摩耗が発生することを抑制することができる。
【0058】
(付記)
以上、本発明を実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…差動装置
21,22…サイドギヤ
3…ピニオンギヤ組
31…第1の短尺ピニオンギヤ
32…第2の短尺ピニオンギヤ
33…長尺ピニオンギヤ
331…一側噛み合い部
332…他側噛み合い部
4…ハウジング
40…保持穴
C1,C2,C3…噛み合い歯幅の中心位置
O…回転軸線
W1,W2,W3…噛み合い歯幅
W01,W02…歯幅