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特開2024-151778出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム
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  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図1
  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図2
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  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図4
  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図5
  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図6
  • 特開-出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151778
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241018BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065477
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近田 尚章
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA11
5H030AA10
5H030BB03
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】不安定な充電電流が供給される場合でも、満充電状態を適切に検出することができる出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】出力電圧調整装置は、蓄電システムに設けられた電圧変換装置の出力電圧を調整するものであって、二次電池の電池電圧を取得する取得部と、電池電圧に基づき、電圧変換装置の出力電圧と電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、出力電圧を制御する制御回路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電システムに設けられた電圧変換装置の出力電圧を調整する出力電圧調整装置であって、
二次電池の電池電圧を取得する取得部と、
前記電池電圧に基づき、前記電圧変換装置の出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する制御回路と
を備える
出力電圧調整装置。
【請求項2】
前記蓄電システムは、前記二次電池に対する充電電流を出力する電流制御回路を備え、
前記制御回路は、
前記電流制御回路における発熱量が許容発熱量以下となるように、前記出力電圧を制御する
請求項1に記載の出力電圧調整装置。
【請求項3】
前記取得部は、
定電流回路から出力され、前記二次電池に対する充電電流をさらに取得し、
前記制御回路は、
前記充電電流と、前記定電流回路における発熱量に対する許容発熱量とに基づき、前記発熱量が前記許容発熱量となるような電圧差を算出するΔV算出部と、
前記電圧差および前記電池電圧に基づき、前記出力電圧を決定する出力電圧決定部と
を有する
請求項1に記載の出力電圧調整装置。
【請求項4】
電力を蓄える二次電池と、
外部から供給される電圧を出力電圧に変換する電圧変換装置と、
前記二次電池に対する充電電流を制御する電流制御回路と、
前記二次電池の電池電圧を取得する取得部と、
前記電池電圧に基づき、前記出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する制御回路と
を備える
蓄電システム。
【請求項5】
前記電流制御回路は、
一定の電流を出力する定電流回路である
請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記電流制御回路は、
抵抗素子である
請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記二次電池の劣化度合いに応じて、前記出力電圧を調整する
請求項6に記載の蓄電システム。
【請求項8】
蓄電システムに設けられた電圧変換装置の出力電圧を調整する出力電圧調整方法であって、
二次電池の電池電圧を取得し、
前記電池電圧に基づき、前記出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する
出力電圧調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載の出力電圧調整方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の機器等を動作させるための電源として、ニッケル水素二次電池等の充放電可能な二次電池が普及している。二次電池は、通常、効率的に充電が行われるように、供給される電圧および電流が制御される。例えば、二次電池がニッケル水素二次電池である場合には、二次電池に対する充電電流が一定となる定電流充電方式により、充電が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
定電流充電方式による充電を行う従来の蓄電システムは、例えば、DC-DCコンバータ、充電制御回路としての定電流回路、および二次電池を備えている。このような蓄電システムにおいて、外部から充電のための電力が供給されると、DC-DCコンバータは、所定の電圧に変換した出力電圧を生成し、定電流回路に供給する。定電流回路は、DC-DCコンバータから供給された出力電圧に基づき、所定の充電電流を出力する。二次電池は、定電流回路から出力された充電電流によって充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-236233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電処理の際、定電流回路には、DC-DCコンバータの出力電圧と、二次電池の電池電圧との差分となる電圧が印加され、定電流回路は、この印加電圧と充電電流とによって発熱する。定電流充電方式で充電される二次電池の電池電圧は、充電状態に応じて変化するので、固定値であるDC-DCコンバータの出力電圧と、二次電池の電池電圧との電圧差も、充電状態に応じて変化する。すなわち、二次電池に対する充電状態に応じて、定電流回路に印加される電圧が変化する。
【0006】
そのため、定電流回路に印加される電圧が大きい場合には、それに伴って定電流回路における発熱量も大きくなってしまうという問題点があった。従来は、定電流回路における発熱を低減させるために、定電流回路にヒートシンク等の放熱手段が設けられるが、このような放熱手段を設けた場合、蓄電システムが大型化してしまう。
【0007】
本開示は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、電流制御回路における発熱を低減させることができる出力電圧調整装置、蓄電システム、出力電圧調整方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る二次電池の出力電圧調整装置は、
蓄電システムに設けられた電圧変換装置の出力電圧を調整する出力電圧調整装置であって、
二次電池の電池電圧を取得する取得部と、
前記電池電圧に基づき、前記電圧変換装置の出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する制御回路と
を備える。
【0009】
また、本開示に係る蓄電システムは、
電力を蓄える二次電池と、
外部から供給される電圧を出力電圧に変換する電圧変換装置と、
前記二次電池に対する充電電流を制御する電流制御回路と、
前記二次電池の電池電圧を取得する取得部と、
前記電池電圧に基づき、前記出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する制御回路と
を備える。
【0010】
さらに、本開示に係る出力電圧調整方法は、
蓄電システムに設けられた電圧変換装置の出力電圧を調整する出力電圧調整方法であって、
二次電池の電池電圧を取得し、
前記電池電圧に基づき、前記出力電圧と前記電池電圧との差が所定の電圧差以下となるように、前記出力電圧を制御する。
【0011】
さらにまた、本開示に係るプログラムは、
上記の出力電圧調整方法を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電流制御回路における発熱を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態1に係る蓄電システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1のDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路図である。
図3図1の定電流回路の構成の一例を示す回路図である。
図4図1の制御回路の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】本実施の形態1に係る蓄電システムによる出力電圧調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本実施の形態1の変形例に係る蓄電システムの構成の一例を示すブロック図である。
図7】定電圧および定電流を出力する構成の一例について説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0015】
<実施の形態1>
以下、本開示の実施の形態1について説明する。本実施の形態1に係る蓄電システムは、例えば、定電流充電方式を用いて、一定の充電電流で二次電池を充電するシステムである。
【0016】
[蓄電システム100の構成]
図1は、本実施の形態1に係る蓄電システム100の構成の一例を示すブロック図である。図2は、図1のDC-DCコンバータ20の構成の一例を示す回路図である。図3は、図1の定電流回路30の構成の一例を示す回路図である。図4は、図1の制御回路10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、蓄電システム100は、制御回路10と、DC-DCコンバータ20と、定電流回路30と、二次電池40と、検出部50とを備えている。本実施の形態1では、制御回路10および検出部50により、本開示の出力電圧調整装置が構成される。
【0018】
DC-DCコンバータ20は、本開示の電圧変換装置に相当するものであり、外部から供給される電圧を所定の電圧に変換して出力する。本実施の形態1において、DC-DCコンバータ20は、外部から供給される電圧を、制御回路10から供給される制御信号が示す電圧である出力電圧V1に変換して出力する。
【0019】
図2に示すように、DC-DCコンバータ20は、定電圧出力回路21および電圧可変回路22を備えている。
【0020】
定電圧出力回路21は、例えば、昇圧回路であり、外部から供給される電圧を、任意の電圧に昇圧する。定電圧出力回路21は、インダクタ211、スイッチング素子212、ダイオード213、コンデンサ214およびスイッチング制御部215を有している。
【0021】
インダクタ211は、定電圧出力回路21(DC-DCコンバータ20)の入力端に接続されている。ダイオード213は、電流の逆流を防止するための逆流防止素子であり、インダクタ211に直列接続されている。
【0022】
スイッチング素子212は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の半導体素子を用いて構成され、インダクタ211とダイオード213との間に接続されている。スイッチング素子212は、スイッチング制御部215から供給されるスイッチング信号に基づき、ONまたはOFFとなるスイッチング動作を行う。
【0023】
コンデンサ214は、定電圧出力回路21から出力される電圧を平滑化する平滑コンデンサであり、ダイオード213の出力端に接続されている。
【0024】
スイッチング制御部215は、スイッチング素子212を制御するものであり、PWM(Pulse Width Modulation)端子およびフィードバック(FB;Feed Back)端子を有している。スイッチング制御部215は、電圧可変回路22から供給されるフィードバック信号(FB信号)がFB端子に入力される。スイッチング制御部215は、入力されたFB信号に基づき、定電圧出力回路21からの出力電圧V1が一定となるようにスイッチング素子212を制御するための、PWM電圧であるスイッチング信号を生成する。そして、スイッチング制御部215は、生成したスイッチング信号をPWM端子から出力し、スイッチング素子212に供給する。
【0025】
なお、この例では、定電圧出力回路21が昇圧回路であるように説明したが、これに限られず、降圧型または昇降圧型の回路であってもよい。また、定電圧出力回路21は、非同期型であってもよいし、同期整流型であってもよい。
【0026】
電圧可変回路22は、制御回路10から受け取った制御信号を、定電圧出力回路21に供給するフィードバック信号に変換して出力する。電圧可変回路22は、オペアンプ221を含む複数の素子を有している。
【0027】
電圧可変回路22は、制御回路10から受け取った制御信号をオペアンプ221で増幅し、フィードバック信号として出力する。電圧可変回路22から出力されたフィードバック信号は、定電圧出力回路21のスイッチング制御部215に供給される。
【0028】
ここで、詳細は後述するが、電圧可変回路22に供給される制御回路10からの制御信号は、二次電池40の電池電圧に応じて変化する。そのため、定電圧出力回路21に供給されるFB信号は、電池電圧に応じて変化する。
【0029】
また、スイッチング制御部215に供給されるPWM信号は、FB信号に基づき生成される。このことから、スイッチング制御部215に供給されるPWM信号は、電池電圧に応じて変化することになる。そのため、DC-DCコンバータ20から出力される出力電圧V1もまた、電池電圧に応じて変化する。
【0030】
すなわち、スイッチング制御部215は、電池電圧との電圧差が所定の電圧差以下となるように、スイッチング信号を出力し、スイッチング素子212に供給する。したがって、DC-DCコンバータ20は、制御回路10からの制御信号に基づき、二次電池40の電池電圧に応じた出力電圧V1を出力する。
【0031】
図1の定電流回路30は、本開示の電流制御回路に相当するものであり、二次電池40に対する充電電流Iを制御する。本実施の形態1において、定電流回路30は、DC-DCコンバータ20から出力される出力電圧V1に基づいて一定の充電電流Iを出力し、二次電池40に対して供給する。
【0032】
図3に示すように、定電流回路30は、電流センス抵抗301、オペアンプ302、MOSFET303および複数の抵抗素子を有している。電流センス抵抗301は、一端がDCコンバータ20の出力端に接続され、他端がMOSFET303のソース端子に接続されている。
【0033】
オペアンプ302は、非反転入力端子および反転入力端子が電流センス抵抗301の両端に接続されている。また、オペアンプ302は、出力端子がMOSFET303のゲート端子に接続されている。
【0034】
MOSFET303は、二次電池40への電流を制御するために設けられている。MOSFET303は、ソース端子が電流センス抵抗301に接続されている。また、MOSFET303は、ゲート端子がオペアンプ302の出力端子に接続され、ドレイン端子が二次電池40に接続されている。
【0035】
図1の二次電池40は、例えば、1または複数の二次電池セルで構成されている。二次電池40が複数の二次電池セルで構成される場合、二次電池40は、例えば、二次電池セルが直列に接続されて構成される。二次電池40は、例えば、ニッケル水素二次電池である。なお、二次電池40の種類は、この例に限られず、リチウムイオン二次電池等のニッケル水素二次電池以外の二次電池であってもよい。
【0036】
二次電池40は、電流制御回路である定電流回路30から供給される充電電流Iによって充電され、電力を蓄える。本実施の形態1において、二次電池40は、定電流回路30から供給される一定の充電電流Iを用いた定電流充電方式によって充電される。
【0037】
なお、この例では、1つの二次電池40が設けられているが、これに限られず、2つ以上の複数の二次電池40が設けられてもよい。二次電池40が複数設けられる場合、複数の二次電池40は、例えば並列に接続される。
【0038】
検出部50は、本開示の取得部に相当するものであり、例えば、各種のセンサで構成されるセンサ群である。検出部50は、二次電池40に関する状態量を定期的に検出し、検出した状態量を制御回路10に供給する。本実施の形態1において、検出部50は、二次電池40を充電する充電処理の際に、二次電池40の電池電圧V2および充電電流Iを状態量として検出する。
【0039】
制御回路10は、この蓄電システム100全体を制御する。制御回路10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備えている(いずれも図示せず)。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して蓄電システム100の動作を集中制御する。
【0040】
本実施の形態1において、制御回路10は、検出部50で検出された二次電池40の電池電圧V2および充電電流Iに基づいてDC-DCコンバータ20を制御し、DC-DCコンバータ20から出力される出力電圧V1を調整する出力電圧調整処理を行う。出力電圧調整処理の詳細については、後述する。
【0041】
図4に示すように、制御回路10は、状態量取得部11、ΔV算出部12、出力電圧決定部13および記憶部14を有している。なお、図4には、制御回路10が備える構成のうち、出力電圧調整処理に関連する機能についての処理部のみが示されている。
【0042】
状態量取得部11は、検出部50で検出された電池電圧V2および充電電流Iを二次電池40に関する状態量として取得する。取得された電池電圧V2は、出力電圧決定部13に供給される。また、取得された充電電流Iは、ΔV算出部12に供給される。
【0043】
ΔV算出部12は、状態量取得部11で取得された充電電流Iと、記憶部14に記憶された、定電流回路30における発熱量Wに対する許容発熱量とに基づき、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量以下となるような電圧差ΔVを算出する。
【0044】
ここで、許容発熱量は、定電流回路30において許容できる最大発熱量を示し、定電流回路30を構成する各種の回路素子の絶対最大定格等に基づき得られる発熱量である。また、電圧差ΔVは、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1と二次電池40の電池電圧V2との電圧差である。この電圧差ΔVは、実質的に、定電流回路30に印加される電圧を示す。
【0045】
出力電圧決定部13は、ΔV算出部12で算出された電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を決定する。このときの電圧差は、定電流回路30における発熱量が許容発熱量となるようにしたときの電圧差ΔVである。出力電圧決定部13は、決定した出力電圧V1をDC-DCコンバータ20から出力させるための制御信号を、DC-DCコンバータ20に対して出力する。
【0046】
記憶部14は、制御回路10で用いられる各種の情報を記憶する。本実施の形態1において、記憶部14は、ΔV算出部12で電圧差ΔVを算出する際に用いられる許容発熱量を予め記憶している。
【0047】
[出力電圧調整処理]
次に、本実施の形態1に係る蓄電システム100による出力電圧調整処理について説明する。出力電圧調整処理は、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量以下となるように、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を調整する処理である。
【0048】
(定電流回路30の発熱)
背景技術の項でも説明したが、一般に、定電流回路30は、印加される電圧と充電電流Iとによって発熱する。定電流回路30では、定電流回路30を構成する回路素子の絶対最大定格等に基づき、許容できる最大発熱量を示す許容発熱量が規定される。したがって、二次電池40に対して充電を行う場合には、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量を超えないようにすることが必要である。
【0049】
図1に示す蓄電システム100において、充電処理の際の定電流回路30における発熱量Wは、式(1)に基づき算出される。また、式(1)における電圧差ΔVは、式(2)に基づき算出される。
発熱量W=電圧差ΔV×充電電流I ・・・(1)
電圧差ΔV=出力電圧V1-電池電圧V2 ・・・(2)
【0050】
さらに、定電流充電方式を用いて二次電池40が充電される場合には、二次電池40に対する充電電流Iが一定の値となるため、定電流回路30における発熱量Wは、電圧差ΔVによって変化する。
【0051】
ここで、一般に、二次電池40の電池電圧V2は、充電状態によって変化する。例えば、二次電池40の充電率を示すSOC(State Of Charge)が高くなるに従って、電池電圧V2もそれに応じて高くなる。また、DC-DCコンバータ20は、通常、二次電池40の充電状態に関わらず一定の出力電圧V1を出力するように動作する。
【0052】
このように、出力電圧V1が固定値である場合には、電池電圧V2の変化に応じて電圧差ΔVが変化し、定電流回路30における発熱量Wも変化する。そのため、電池電圧V2が小さい場合には、式(2)に示す関係から電圧差ΔVが大きくなるので、定電流回路30における発熱量Wが大きくなり、許容発熱量を超えてしまう可能性がある。
【0053】
例えば、図3に示す定電流回路30において、電流センス抵抗301およびMOSFET303には、DCコンバータ20からの出力電圧V1と、二次電池40の電池電圧V2との差分となる電圧差ΔVが常に印加される。また、電流センス抵抗301およびMOSFET303に流れる充電電流Iは、一定である。
【0054】
そのため、出力電圧V1が固定値であり、かつ、電池電圧V2が低い場合に、電流センス抵抗301およびMOSFET303に印加される電圧差ΔVが最大となり、充電電流Iが一定であることから電力も最大となるので、発熱量Wも最大となる。したがって、発熱量Wが許容発熱量を超えてしまうような場合には、ヒートシンク等の放熱手段を用いて放熱する必要がある。
【0055】
一方、充電電流Iが固定値である場合には、式(1)の関係から、電圧差ΔVを小さくすることにより、定電流回路30における発熱量Wを小さくすることができる。電圧差ΔVは、式(2)に示すように、出力電圧V1と電池電圧V2との差であるので、発熱量Wを抑えるためには、電圧差ΔVが小さくなるように、電池電圧V2に応じて出力電圧V1を変化させればよい。
【0056】
このとき、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、電池電圧V2に応じて出力電圧V1を変化させれば、定電流回路30における発熱量Wを許容発熱量以下にすることができる。これにより、発熱量Wが増加して定電流回路30の許容発熱量を超えることを防ぐことができる。
【0057】
そこで、本実施の形態1に係る蓄電システム100は、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、二次電池40の電池電圧V2に応じてDC-DCコンバータ20からの出力電圧V1を調整する出力電圧調整処理を行う。
【0058】
(出力電圧調整処理)
図5は、本実施の形態1に係る蓄電システム100による出力電圧調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5には、二次電池40に対する充電処理が行われる際の制御回路10による動作が示されている。
【0059】
まず、ステップS1において、制御回路10の状態量取得部11は、検出部50で検出された、状態量としての二次電池40の電池電圧V2を取得する。状態量取得部11は、取得した電池電圧V2を出力電圧決定部13に供給する。
【0060】
また、ステップS2において、状態量取得部11は、検出部50で検出された、状態量としての二次電池40に対する充電電流Iを取得する。状態量取得部11は、取得した充電電流IをΔV算出部12に供給する。なお、ステップS2の処理は、ステップS1の処理に先立って行われてもよいし、ステップS1の処理と同時に行われてもよい。
【0061】
ステップS3において、ΔV算出部12は、記憶部14から許容発熱量を読み出す。そして、ΔV算出部12は、状態量取得部11から受け取った充電電流Iと、記憶部14から読み出された許容発熱量とに基づき、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量以下となるような電圧差ΔVを算出する。ΔV算出部12は、算出した電圧差ΔVを出力電圧決定部13に供給する。
【0062】
ステップS4において、出力電圧決定部13は、ΔV算出部12から受け取った電圧差ΔVと、状態量取得部11から受け取った電池電圧V2とに基づき、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を決定する。ここで、電圧差ΔVと電池電圧V2とは、式(2)に示す関係にあるので、電圧差ΔVに電池電圧V2を加算することにより、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1が算出される。
【0063】
このとき算出される出力電圧V1は、電圧差ΔVが許容発熱量を用いて算出されている。そのため、出力電圧V1は、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように決定されたものである。
【0064】
制御回路10は、上述した出力電圧調整処理を定期的に繰り返し、電池電圧V2に応じて電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を制御する。
【0065】
上述した出力電圧調整処理によって出力電圧V1を調整する具体例について説明する。一例として、二次電池40のSOCが0[%]~100[%]であるときの電池電圧V2が20[V]~28[V]であり、定電流回路30から出力される充電電流Iが0.3[A]であり、許容発熱量が0.3[W]である場合について考える。
【0066】
二次電池40のSOCが0[%]であるときの電池電圧V2が20[V]である場合、ΔV算出部12で算出される電圧差ΔVは、式(1)に基づき、1[V](=0.3[W]/0.3[A])となる。そして、電圧差ΔVが1[V]であり、電池電圧V2が20[V]であることから、出力電圧決定部13で決定されるDC-DCコンバータ20の出力電圧V1は、式(2)に基づき、21[V](=20[V]+1[V])となる。したがって、この場合、制御回路10は、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1が21[V]となる制御信号を、DC-DCコンバータ20に対して出力する。
【0067】
また、例えば、二次電池40のSOCが100[%]であるときの電池電圧V2が28[V]である場合にも、ΔV算出部12で算出される電圧差ΔVは、式(1)に基づき、1[V]となる。そして、電圧差ΔVが1[V]であり、電池電圧V2が28[V]であることから、出力電圧決定部13で決定されるDC-DCコンバータ20の出力電圧V1は、式(2)に基づき、29[V](=28[V]+1[V])となる。したがって、この場合、制御回路10は、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1が29[V]となる制御信号を、DC-DCコンバータ20に対して出力する。
【0068】
このように、出力電圧調整処理によって出力電圧V1を調整することにより、電圧差ΔVは、二次電池40の電池電圧V2に関わらず1[V]となり、定電流回路30における発熱量Wは、許容発熱量である0.3[W]となる。そのため、定電流回路30における発熱を低減させ、発熱量を許容発熱量以下とすることができる。
【0069】
一方、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1が、例えば30[V]の一定値である場合、電池電圧V2が20[V]であるとすると、定電流回路30における発熱量Wは、式(1)に基づき、3[W](=(30[V]-20[V])×0.3[A])となる。
【0070】
すなわち、この場合には、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量を超えてしまうので、定電流回路30が破損する可能性がある。そのため、この場合には、定電流回路30の温度を低下させ、定電流回路30の破損を防ぐために、定電流回路30にヒートシンク等の放熱手段を設ける必要があり、蓄電システム100が大型化してしまう。
【0071】
このように、蓄電システム100では、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1が調整されることにより、定電流回路30における発熱量Wが許容発熱量以下となる。そのため、定電流回路30における発熱を低減させることができる。
【0072】
また、定電流回路30における発熱量Wが低減されることにより、定電流回路30の放熱対策として設置していたファンまたはヒートシンク等の放熱手段が不要となる。そのため、回路(システム)を小型化することができる。
【0073】
<変形例>
本実施の形態1に係る蓄電システム100に設けられた電流制御回路としての定電流回路30は、入力される電圧が変化した場合でも、一定の電流を出力することができるものである。一方、一定の電圧が入力された場合には、一定の電流を出力する電流制御回路として、必ずしも定電流回路30が用いられる必要はなく、定電流回路に代えて抵抗素子が用いられてもよい。以下、本実施の形態1の変形例による蓄電システムについて説明する。
【0074】
[蓄電システム100Aの構成]
図6は、本実施の形態1の変形例に係る蓄電システム100Aの構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、蓄電システム100は、制御回路10と、DC-DCコンバータ20と、抵抗素子60と、二次電池40と、検出部50とを備えている。なお、制御回路10、DC-DCコンバータ20、二次電池40および検出部50は、図1に示す蓄電システム100と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
抵抗素子60は、例えば1つの素子であり、電流の流れを制限するために設けられている。抵抗素子60の電圧降下により、出力される電流の値が決定される。すなわち、抵抗素子60は、入力されるDC-DCコンバータ20の出力電圧V1に基づき、二次電池40に対する充電電流Iを出力する。なお、抵抗素子60は、この例に限られず、例えば、直列または並列に接続された複数の素子であってもよい。
【0076】
このように、電流制御回路として抵抗素子60が用いられる場合でも、蓄電システム100Aは、実施の形態1と同様にして出力電圧調整処理を行い、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を調整する。そのため、抵抗素子60における発熱量を低減させることができるという効果を奏することができる。また、電流制御回路を1つの抵抗素子60で構成することができるため、蓄電システム100の部品点数を削減することができる。
【0077】
なお、二次電池40は、充放電が繰り返されることにより、電池容量が減少する等の劣化が生じることがある。この場合、蓄電システム100Aは、定電流充電方式における充電電流Iを通常時よりも小さくすることがある。
【0078】
変形例のように電流制御回路として抵抗素子60を使用した場合には、充電電流Iを変化させることができるため、充電電流Iを小さくしたい場合にも対応することができる。例えば、制御回路10は、二次電池40の劣化度合いに応じて、DC-DCコンバータ20の出力電圧V1を調整する。具体的には、制御回路10は、劣化した二次電池40に対して供給したい充電電流Iの値と、抵抗素子60の許容発熱量に基づき、電圧差ΔVが所定の電圧差以下となるように、出力電圧V1を決定する。
【0079】
以上、実施の形態1および実施の形態1の変形例について説明したが、本開示は、上述した実施の形態1および実施の形態1の変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0080】
実施の形態1および実施の形態1の変形例では、検出部50によって検出される充電電流Iを用いて出力電圧調整処理が行われるように説明したが、これに限られず、例えば、充電電流Iの値を予め設定しておくようにしてもよい。この場合、二次電池40に対する充電電流Iは、二次電池40の電池容量等の仕様によって決定することができる。
【0081】
また、実施の形態1および実施の形態1の変形例では、電圧変換装置が定電圧の出力電圧V1を出力し、電流制御回路から定電流の充電電流Iを出力する構成であるように説明したが、蓄電システムの構成は、この例に限られない。例えば、図7に示すように、電圧変換装置が定電圧および定電流を出力してもよい。
【0082】
図7は、定電圧および定電流を出力する構成の一例について説明するための回路図である。図7に示す例は、電圧変換装置と電流制御回路とが一体的に構成されたものであり、電圧可変回路22Aに電流センス抵抗231、オペアンプ232およびツェナーダイオード233が設けられることにより、電圧変換装置から定電圧および定電流が出力される。そのため、この例に示す電圧変換装置を用いた場合でも、実施の形態1および実施の形態1の変形例と同様に、電圧変換装置における発熱を低減させることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 制御回路
11 状態量取得部
12 ΔV算出部
13 出力電圧決定部13
14 記憶部
20、20A DC-DCコンバータ
21 定電圧出力回路
22、22A 電圧可変回路
30 定電流回路
40 二次電池
50 検出部
60 抵抗素子
100、100A 蓄電システム
211 インダクタ
212 スイッチング素子
213 ダイオード
214 コンデンサ
215 スイッチング制御部
221、232 オペアンプ
231、301 電流センス抵抗
233 ツェナーダイオード
302 オペアンプ
303 MOSFET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7