(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151790
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】エアフィルタ及びエアフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20241018BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
B01D39/16 A
D04H1/541
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065500
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼吉 輝
(72)【発明者】
【氏名】西谷 崇
【テーマコード(参考)】
4D019
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC04
4D019BC05
4D019BC06
4D019BC07
4D019BC10
4D019BC11
4D019BD01
4D019CA02
4D019CB06
4D019DA03
4D019DA04
4D019DA06
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047BA09
4L047BB09
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】嵩高であると共に、洗濯しても嵩高性を十分に維持できる、再生使用可能なエアフィルタを提供すること。
【解決手段】本発明のエアフィルタは、芯鞘型複合繊維と、芯鞘型複合繊維の鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂とを有する不織布を備えている。そして、前記鞘成分により、前記不織布を構成する繊維同士が結合していることに加え、前記不織布の厚さ方向全体に分布して存在している粒状の別の有機樹脂により、不織布を構成する繊維同士が結合している。そのため、鞘成分のみで構成繊維同士が結合してなる不織布よりも、構成繊維同士が強固に結合している。その結果、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂である芯成分および前記芯成分よりも融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維と、前記鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂とを有する不織布を備えた、エアフィルタであって、
前記鞘成分により、前記不織布を構成する繊維同士が結合しており、
前記不織布の厚さ方向全体に分布して存在している粒状の前記別の有機樹脂により、前記不織布を構成する繊維同士が結合している、
エアフィルタ。
【請求項2】
前記不織布を構成する繊維はすべて、有機樹脂で構成されている繊維である、
請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記不織布の質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が40mass%より大きく95mass%以下であり、
前記不織布の質量に占める前記別の有機樹脂の質量の百分率が5mass%以上60mass%未満である、
請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記不織布を構成する繊維質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が80mass%を超える、
請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記不織布を構成する繊維はすべて、12dtex以上の繊度を有する繊維である、
請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記不織布が、前記芯鞘型複合繊維と前記別の有機樹脂のみで構成されている、
請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項7】
(工程1)有機樹脂である芯成分および前記芯成分よりも融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維と、前記鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂で構成された単繊維とが混綿された繊維ウエブを用意する工程、
(工程2)前記繊維ウエブを、前記別の有機樹脂の融点以上前記鞘成分の融点未満の温度で加熱することで前記単繊維を構成する前記別の有機樹脂を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却する工程、
(工程3)前記(工程2)を経た繊維ウエブを、前記鞘成分の融点以上前記芯成分の融点未満の温度で加熱することで前記鞘成分を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却して不織布を調製する工程、
を有する、不織布を備えたエアフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ及びエアフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の塵埃を除塵し、清浄化するために不織布を備えたエアフィルタが用いられている。このようなエアフィルタとして、例えば特許文献1(特開2013-039517号公報)には、熱で溶融させて繊維間結合したサーマルボンド不織布から構成された、洗濯により再生使用が可能な除塵フィルタが開示されている。なお、特許文献1には実施例として、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維のみを構成繊維として有する繊維ウエブを加熱し、当該芯鞘型複合繊維の鞘成分(ポリエチレン)によって構成繊維同士を結合して製造された、サーマルボンド不織布を備えた除塵フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来技術に開示されたエアフィルタの製造方法、つまり、芯鞘型複合繊維で構成された繊維ウエブを加熱し、当該芯鞘型複合繊維の鞘成分によって構成繊維同士を結合してサーマルボンド不織布を調製する工程を備える、エアフィルタの製造方法を用いて調製したエアフィルタを、再利用(再生使用)するため洗濯したところ、エアフィルタを構成する不織布が厚さ方向に大きく収縮して、エアフィルタの厚さが潰れやすいものであった。そして、本願出願人が検討したところ、洗濯することにより、芯鞘型複合繊維による構成繊維同士の結合が外れるという問題が発生したこと、および、繊維抜けが生じ易いという問題が発生したことが、問題の原因であることを見出した。
【0005】
そのため、従来技術にかかるエアフィルタを洗濯した場合には、前述した問題が発生することによって、フィルタ性能に関わる嵩高性を十分に維持できず、エアフィルタの再生使用が困難なものになると考えられた。
【0006】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、芯鞘型複合繊維の鞘成分によって構成繊維同士が結合している不織布を備えたエアフィルタであって、嵩高であると共に、洗濯しても嵩高性を十分に維持できる、再生使用可能なエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「有機樹脂である芯成分および前記芯成分よりも融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維と、前記鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂とを有する不織布を備えた、エアフィルタであって、前記鞘成分により、前記不織布を構成する繊維同士が結合しており、前記不織布の厚さ方向全体に分布して存在している粒状の前記別の有機樹脂により、前記不織布を構成する繊維同士が結合している、エアフィルタ。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記不織布を構成する繊維はすべて、有機樹脂で構成されている繊維である、請求項1に記載のエアフィルタ。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「前記不織布の質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が40mass%より大きく95mass%以下であり、前記不織布の質量に占める前記別の有機樹脂の質量の百分率が5mass%以上60mass%未満である、請求項1に記載のエアフィルタ。」である。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「前記不織布を構成する繊維質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が80mass%を超える、請求項1に記載のエアフィルタ。」である。
【0011】
本発明の請求項5にかかる発明は、「前記不織布を構成する繊維はすべて、12dtex以上の繊度を有する繊維である、請求項1に記載のフィルタ。」である。
【0012】
本発明の請求項6にかかる発明は、「前記不織布が、前記芯鞘型複合繊維と前記別の有機樹脂のみで構成されている、請求項1に記載のエアフィルタ。」である。
【0013】
本発明の請求項7にかかる発明は、「(工程1)有機樹脂である芯成分および前記芯成分よりも融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維と、前記鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂で構成された単繊維とが混綿された繊維ウエブを用意する工程、(工程2)前記繊維ウエブを、前記別の有機樹脂の融点以上前記鞘成分の融点未満の温度で加熱することで前記単繊維を構成する前記別の有機樹脂を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却する工程、(工程3)前記(工程2)を経た繊維ウエブを、前記鞘成分の融点以上前記芯成分の融点未満の温度で加熱することで前記鞘成分を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却して不織布を調製する工程、を有する、不織布を備えたエアフィルタの製造方法。」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1にかかるエアフィルタは、芯鞘型複合繊維と、芯鞘型複合繊維の鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂とを有する不織布を備えている。そして、前記鞘成分により、前記不織布を構成する繊維同士が結合していることに加え、前記不織布の厚さ方向全体に分布して存在している粒状の別の有機樹脂により、不織布を構成する繊維同士が結合している。そのため、鞘成分のみで構成繊維同士が結合してなる不織布よりも、構成繊維同士が強固に結合している。
それに加え、粒状の形状を有する別の有機樹脂が厚さ方向全体に分布して存在している。別の有機樹脂が粒状の形状を有することで、エアフィルタの洗濯でエアフィルタに水圧などの外部からの力がかかった際に、有機樹脂が破壊されにくい。また、別の有機樹脂が不織布の厚さ方向全体に分布しているということは、別の有機樹脂により不織布が厚さ方向全体にわたって強固に接着されている。
その結果、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【0015】
本発明の請求項2にかかるエアフィルタは、エアフィルタが備える不織布を構成する繊維はすべて、有機樹脂で構成されている。有機樹脂から構成された繊維は無機繊維などの他の繊維に比べて柔軟な傾向があることから、洗濯した際に不織布を構成する繊維が破断しにくい。その結果、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから好ましい。また、例えば無機繊維などの他の繊維に比べて取扱いやすく、廃棄が簡単な点でも、好ましい。
【0016】
本発明の請求項3にかかるエアフィルタは、エアフィルタに備える不織布の質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が40mass%より大きく95mass%以下であり、前記不織布の質量に占める前記別の有機樹脂の質量の百分率が5mass%以上60mass%未満であるという構成を有している。
その結果、エアフィルタに備える不織布に、多くの芯鞘型複合繊維が含まれること、また、ある程度の量の別の有機樹脂が含まれることで、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【0017】
本発明の請求項4にかかるエアフィルタは、エアフィルタに備える不織布を構成する繊維質量に占める前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が80mass%を超えるという構成を有している。
その結果、エアフィルタに備える不織布に、多くの芯鞘型複合繊維が含まれることで、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【0018】
本発明の請求項5にかかるエアフィルタは、エアフィルタが備える不織布を構成する繊維はすべて12dtex以上の繊度を有する繊維であるという構成を有している。
その結果、繊度が大きく剛性に富む繊維のみで構成されていることで剛性に富む不織布を備える、剛性に富むエアフィルタであることによって、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【0019】
本発明の請求項6にかかるエアフィルタは、エアフィルタに備える不織布が、前記芯鞘型複合繊維と前記別の有機樹脂のみで構成されているという構成を有している。
その結果、芯鞘型複合繊維および別の有機樹脂による、構成繊維同士の結合効果が最大限発揮されることで、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【0020】
本発明の請求項7にかかるエアフィルタの製造方法は、単繊維由来の粒状の別の有機樹脂によって、構成繊維同士が結合された状態の繊維ウエブに対し、当該繊維ウエブを構成する芯鞘型複合繊維の鞘成分を溶融させ、当該鞘成分によって繊維ウエブの構成繊維同士を結合することを特徴とする。
【0021】
本発明にかかるエアフィルタの製造方法によって、前記鞘成分の融点以上前記芯成分の融点未満の温度で加熱する工程へ、別の有機樹脂により構成繊維同士が結合された状態の繊維ウエブを供することができる。次いで、この別の有機樹脂により構成繊維同士が結合された状態の繊維ウエブを加熱して鞘成分を溶融させるが、当該加熱する工程において、別の有機樹脂により構成繊維同士が結合された状態であるためか、加熱中に繊維ウエブが厚さ方向へ潰れ難いことで、嵩高な不織布を備えたエアフィルタを製造できる。
【0022】
また、本発明にかかるエアフィルタの製造方法によって、前記鞘成分の他に、厚さ方向全体に分布して存在している粒状の別の有機樹脂によっても結合した、構成繊維同士が強固に結合している先述した本発明にかかる不織布を備えたエアフィルタを製造できる。
【0023】
その結果、本発明にかかる製造方法によって、嵩高であると共に、洗濯しても嵩高性を十分に維持できる、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のエアフィルタの主面(エアフィルタの最も面積の広い面)を撮影した、電子顕微鏡写真(倍率:150倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のエアフィルタは、有機樹脂である芯成分および前記芯成分より融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維を含む不織布を備えている。本発明のエアフィルタに備える不織布の質量に占める、前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率は、大きければ大きいほど、エアフィルタの剛性が高い傾向があることから、40mass%より大きいのが好ましく、50mass%より大きいのがより好ましく、60mass%以上が更に好ましく、65mass%以上が更に好ましい。一方、エアフィルタに備える不織布の質量に占める、前記芯鞘型複合繊維の質量の百分率が高すぎると、エアフィルタに備える不織布の構成成分のうち、芯鞘型複合繊維と異なる別の有機樹脂の含有割合が少なく、エアフィルタを洗濯した際に嵩高性を十分に維持できないおそれがあることから、95mass%以下が好ましく、90mass%未満が更に好ましい。なお、本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維は、1種類のみ含んでいても、構成樹脂、繊度、繊維長のうち少なくとも1種類以上が異なる2種類以上含んでいてもよい。
【0026】
本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維は、上述の通り、芯成分、及び、鞘成分の2種類の有機樹脂から構成されている。前記芯成分、及び、鞘成分の構成樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素あるいは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)、ビニロン繊維など、公知の有機樹脂からなることができる。これらの中でも、芯成分、及び、鞘成分ともにポリエステル系樹脂であると、ポリエステル系樹脂は他の樹脂と比べて融点が比較的高くエアフィルタの耐熱性が優れること、また、炎を近づけた時に、炎との接触点がすぐに溶融して、エアフィルタが炎から遠ざかり難燃性に優れる効果を得ることができること、更に、ポリエステル系樹脂から構成されたエアフィルタは加熱されたときに有害なガスが出ないので、環境性能に優れること、更に、ポリエステル系樹脂は表面が水で濡れやすく、洗濯により再生使用が可能なエアフィルタ用途に適していること、更に、ポリエステル樹脂は比較的極性の大きい樹脂であることから、有機樹脂同士の分子間力が大きい傾向がありエアフィルタを構成する不織布の繊維間結合が強く、エアフィルタを洗濯した際の剛性の低下及び収縮が小さいことから、好ましい。
【0027】
本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維は、繊維断面を観察した際に、芯成分が繊維の中心に位置する芯鞘型複合繊維でもよいし、繊維断面を観察した際に、芯成分が繊維の中心以外に位置する偏心芯鞘型複合繊維でもよいが、繊維強度が優れる傾向があることから、繊維断面を観察した際に、芯成分が繊維の中心に位置する芯鞘型複合繊維が好ましい。なお、芯鞘型複合繊維の断面形状は、円形であっても、楕円形等の円形以外であってもよい。
【0028】
本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維の、芯鞘型複合繊維の芯成分の融点と、芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点との差{(芯鞘型複合繊維の芯成分の融点)-(芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点)}は、鞘成分が溶融する温度において芯成分が溶融せず、芯鞘型複合繊維の繊維形状が保てるように、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
【0029】
なお、本発明における「融点」とは、JIS L 1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」、8.16.1(融点)に規定されているA法により得られる値を意味する。
【0030】
本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維の繊度は、特に限定するものではないが、5~70dtexが好ましく、10~60dtexがより好ましく、15~55dtexが更に好ましい。なお、本発明における「繊度」は、JIS L 1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる値を意味する。
【0031】
本発明のエアフィルタを構成する芯鞘型複合繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、10~130mmが好ましく、20~110mmがより好ましく、35~80mmが更に好ましい。なお、本発明における「繊維長」は、JIS L 1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」、8.4.1(直接法)に規定されているC法によって測定した平均繊維長を意味する。
【0032】
本発明のエアフィルタは、エアフィルタを構成する不織布において、芯鞘型複合繊維と、芯鞘型複合繊維の鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂とを有する不織布を備えている。そして、前記鞘成分により、前記不織布を構成する繊維同士が結合している(例えば
図1における1)ことに加え、前記不織布の厚さ方向全体に分布して存在している粒状の別の有機樹脂(例えば
図1における2)により、不織布を構成する繊維同士が結合している。これにより、前記鞘成分のみで構成繊維同士が結合してなる不織布よりも、構成繊維同士が強固に結合している。
【0033】
なお、本発明における「粒状」とは、エアフィルタに含まれる別の有機樹脂をエアフィルタの主面、及び前記主面に直交するエアフィルタの厚さ方向の切断面の2面から観察した際に、いずれの面からも円形、楕円形、四角形、あるいはそれらに類似する面形状を示す、3次元の形状を有する状態にあることを指し、具体的な「粒状」の形状としては、球形、直方体、立方体、円柱形、ないし中央部が太く両端に向かって次第に細くなる紡錘形、あるいはそれらに類似する形状を例示できる。これらの観察は、例えば光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察可能である。なお、
図1において、別の有機樹脂は直方体に類似する形状をしている。
【0034】
そして、粒状の形状を有する別の有機樹脂が厚さ方向全体に分布して存在している。別の有機樹脂が粒状の形状を有することで、例えば膜状の有機樹脂よりも、エアフィルタの洗濯でエアフィルタに水圧などの外部からの力がかかった際に、有機樹脂が破壊されにくい。また、別の有機樹脂が不織布の厚さ方向全体に分布しているということは、別の有機樹脂により不織布が厚さ方向全体にわたって強固に接着されている。その結果、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる。
この粒状の形状を有する別の有機樹脂の大きさは、別の有機樹脂により不織布の構成繊維同士が強固に結合でき、その結果、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいように、また、別の有機樹脂が大きすぎるとエアフィルタの圧力損失が増大するおそれがあることから、30~3000μmが好ましく、50~2000μmがより好ましく、100~1000μmが更に好ましい。なお、「別の有機樹脂の大きさ」は、電子顕微鏡、光学顕微鏡などで、不織布の主面における不織布を構成する繊維同士を結合している別の有機樹脂の写真を撮影し、前記写真に写った別の有機樹脂の面積を求め、この面積を真円に換算した際の真円の直径を求める。これを10個の別の有機樹脂に対して行い、得られた真円の直径の平均値のことをいう。
【0035】
なお、「別の有機樹脂が厚さ方向全体に分布して存在している」とは、エアフィルタの断面を切り取って厚さ方向の切断面を厚さ方向に3等分して上層部、中層部、下層部の3つの領域に分け、前記3つの領域のすべてで粒状の別の有機樹脂を確認できることをいう。また、粒状の別の有機樹脂を確認する方法としては、目視で確認する他、エアフィルタの構成繊維及び別の有機樹脂を染色して、光学顕微鏡でエアフィルタの厚さ方向の切断面を観察すること、あるいは電子顕微鏡で厚さ方向の切断面を観察することで確認できる。
【0036】
また、前記粒状の別の有機樹脂は、不織布の繊維交点に存在していると、洗濯などで不織布に外力が掛かっても繊維同士の距離が近いことからより結合が外れにくく、これにより繊維抜けが生じにくく、洗濯しても嵩高性をより維持できることから好ましい。
【0037】
本発明のエアフィルタに備える不織布の質量に占める、別の有機樹脂の質量の百分率は、構成繊維同士が強固に結合できるように、また前記別の有機樹脂の質量の百分率が大きすぎると、前記不織布の質量に占める芯鞘型複合繊維の質量の百分率が小さくなり、構成繊維同士が強固に結合できなくなるおそれがあること、及び、別の有機樹脂が不織布の空隙を塞ぎやすくなり、エアフィルタの圧力損失が増大するおそれがあることから、5mass%以上60mass%未満であるのが好ましく、10mass%より大きく50mass%未満であるのがより好ましく、15mass%以上45mass%以下であるのがより好ましく、20mass%以上40mass%以下であるのが更に好ましい。
【0038】
本発明のエアフィルタが備える不織布の厚さ方向の切断面における粒状の別の有機樹脂の個数は、粒状の別の有機樹脂により不織布の構成繊維同士が強固に結合でき、その結果、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいように、10個/cm2以上であるのが好ましく、20個/cm2以上であるのがより好ましく、30個/cm2以上であるのが更に好ましい。上限としては、200個/cm2以下が現実的である。なお、「不織布の厚さ方向の切断面における粒状の別の有機樹脂の個数」は、以下の方法で測定できる。
(1)エアフィルタが備える不織布の厚さ方向の切断面が露出し、また、前記切断面が、(たて方向の長さ:不織布の厚さ)×(よこ方向の長さ:30cm)の長方形となるように、さらに、前記不織布の厚さ方向の切断面に直交する方向(不織布の主面と平行する方向)の長さが1cmとなるように不織布を切り取り、これを試料((たて:不織布の厚さ)×(よこ:30cm)×(奥行:1cm)の直方体)とする。
(2)前記試料の厚さ方向の切断面をランダムに10点観察し、粒状の別の有機樹脂の個数を数え、1cm2あたりに換算する。なお、前記試料の厚さ方向の切断面は、目視で観察する他、不織布の構成繊維及び/又は別の有機樹脂を染色して、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で観察できる。
(3)(2)で10点観察した粒状の別の有機樹脂の換算した個数の算術平均値を、不織布の厚さ方向の切断面における粒状の別の有機樹脂の個数とする。
【0039】
本発明のエアフィルタが備える不織布に含まれる別の有機樹脂は、エアフィルタに備えられている不織布に含まれる芯鞘型複合繊維の鞘成分よりも融点が低い単繊維をエアフィルタの製造過程、特には不織布の製造過程で溶融させた、単繊維由来のものであると、別の有機樹脂が、エアフィルタが備える不織布内で厚さ方向全体に分布して粒状で存在している傾向にあり、これによりエアフィルタが備える不織布の構成繊維同士が効率よく均一に結合でき、エアフィルタを洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できる傾向にあることから好ましい。前記別の有機樹脂が単繊維由来である場合、単繊維の繊度は、繊度が大きければ大きいほど、より広範囲のエアフィルタの構成繊維をまとめて結合することができることから、前記単繊維の繊度は、1dtex以上が好ましく、5dtex以上がより好ましく、10dtex以上が更に好ましく、20dtex以上が更に好ましい。一方、前記単繊維の繊度が大きすぎると、別の有機樹脂が不織布の構成繊維を結合する際に多くの繊維をまとめすぎてしまい、不織布において単繊維由来の有機樹脂が局在化し、全体に剛性を高める効果を付与できないおそれがあるため70dtex以下が好ましい。また、前記単繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、10~130mmであるのが好ましく、20~110mmであるのがより好ましく、35~80mmであるのが更に好ましい。更に、前記単繊維の伸度は、高ければ高いほど熱を掛けた際に単繊維が収縮しやすく、不織布を構成する繊維同士が強固に結合できる一方、伸度が高すぎると不織布の形態安定性が悪くなるおそれがあることから、20~400%が好ましく、40~300%がより好ましく、50~200%が更に好ましい。なお、本発明における伸度は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法):2010、8.7.1項に規定されている方法により測定される値を意味する。また、本発明における「単繊維」とは、単一の樹脂で構成された繊維のことを指す。
【0040】
本発明のエアフィルタを構成する別の有機樹脂は、芯鞘型複合繊維の構成樹脂と同様の有機樹脂であることができる。別の有機樹脂がポリエステル系樹脂であると、炎を近づけた時に、炎との接触点がすぐに溶融して、エアフィルタが炎から遠ざかり難燃性に優れる効果を得ることができること、また、ポリエステル系樹脂から構成されたエアフィルタは加熱されたときに有害なガスが出ないので、環境性能に優れること、更に、ポリエステル系樹脂は表面が水で濡れやすく、洗濯により再生使用が可能なエアフィルタ用途に適していること、更に、ポリエステル樹脂は比較的極性の大きい樹脂であることから有機樹脂同士の分子間力が大きい傾向があり、エアフィルタを構成する不織布の繊維間結合が強く、エアフィルタを洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから好ましい。
【0041】
本発明のエアフィルタを構成する別の有機樹脂の融点は、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点よりも低い。これにより、エアフィルタが加熱されたときに、エアフィルタの骨格を構成する芯鞘型複合繊維の芯成分からの距離が前記鞘成分よりも遠い別の有機樹脂から溶融することから、エアフィルタが加熱されたときにエアフィルタの形状が崩れにくく、エアフィルタの嵩高性が維持でき、塵埃の捕集容量が保持できる。エアフィルタが加熱されたときによりエアフィルタの形状が崩れにくいように、芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点と、芯鞘型複合繊維由来でない有機樹脂の融点の差{(芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点)-(芯鞘型複合繊維由来でない有機樹脂の融点)}は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。なお、本発明のエアフィルタに2種類以上の複数種類の芯鞘型複合繊維が含まれる場合、「芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点」は、複数種類の芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点のうち、最も融点が低い芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点を指す。芯鞘型複合繊維由来でない有機樹脂の具体的な融点としては、エアフィルタの耐熱性が優れるように、またエアフィルタが加熱された時にエアフィルタの形状が崩れにくいように、70~220℃が好ましく、80~170℃がより好ましく、90~130℃が更に好ましい。
【0042】
本発明のエアフィルタは、単繊維や、後述の機能性粒子を含む繊維など、芯鞘型複合繊維以外の繊維を含んでいてもよい。また、芯鞘型複合繊維以外の繊維は、楕円形、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する異形断面繊維であっても、内部が空洞の中空繊維であってもよい。
【0043】
前記芯鞘型複合繊維以外の繊維の繊度は、特に限定するものではないが、5~70dtexが好ましく、10~60dtexがより好ましく、15~55dtexが更に好ましい。また、前記芯鞘型複合繊維以外の繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、10~130mmが好ましく、20~110mmがより好ましく、35~80mmが更に好ましい。
【0044】
本発明のエアフィルタに備える不織布を構成する繊維質量に占める、芯鞘型複合繊維の質量の百分率は、高ければ高いほど、不織布の構成繊維同士の結合がより強固となり、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから、80mass%を超えるのが好ましく、85mass%以上がより好ましく、100mass%(すなわち、エアフィルタに備える不織布を構成する繊維が、すべて芯鞘型複合繊維)が更に好ましい。また、本発明のエアフィルタに備える不織布が芯鞘型複合繊維と別の有機樹脂のみで構成されていると、不織布の構成繊維同士の結合が更に強固となり、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくいことで、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから好ましい。
【0045】
本発明のエアフィルタは、エアフィルタに備えられている不織布を構成する繊維がすべて有機樹脂で構成されていると、有機樹脂から構成された繊維は無機繊維などの他の繊維に比べて柔軟な傾向があることから、洗濯した際に不織布を構成する繊維が破断しにくい。その結果、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから好ましい。また、例えば無機繊維などの他の繊維に比べて取扱いやすく、廃棄が簡単な点でも、好ましい。
【0046】
本発明のエアフィルタは、エアフィルタに備えられている不織布を構成する繊維がすべて12dtex以上であると、繊度が大きく剛性に富む繊維のみで構成されていることで剛性に富む不織布を備える、剛性に富むエアフィルタであることによって、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることから好ましい。エアフィルタに備えられている不織布を構成する繊維の繊度が、すべて14dtex以上であるのがより好ましく、すべて16dtex以上であるのが更に好ましい。エアフィルタに備えられている不織布を構成する繊維の繊度が大きすぎると、単位質量当たりの繊維本数が少なくなり、エアフィルタに備えられている不織布の繊維交点が少なく、強度が低下するおそれがあることから、60dtex以下が好ましい。
【0047】
本発明のエアフィルタの目付は、塵埃の捕集容量が優れるように、また、取り扱い性に優れるように、50~1000g/m2が好ましく、100~800g/m2がより好ましく、150~700g/m2が更に好ましい。なお、本発明における「目付」とは、エアフィルタの最も面積の広い面(主面)1m2あたりの質量をいう。
【0048】
本発明のエアフィルタの厚さは、塵埃の捕集容量が優れるように、また、取り扱い性に優れるように、1~50mmが好ましく、3~30mmがより好ましく、8~25mmが更に好ましい。なお、本発明における「厚さ」とは、エアフィルタの一方の主面からもう一方の主面に向けて、主面上へ98Paの荷重を付加したときの両主面の長さを、高精度デジタル測長機を用いて測定した値である。
【0049】
本発明のエアフィルタは、不織布1層のみで構成されていてもよいし、2層以上の同種又は異種の複数の不織布で構成されていてもよい。また、本発明のエアフィルタに不織布以外の多孔質体など、不織布以外のものを有していてもよい。
【0050】
本発明のエアフィルタは、機能性粒子を有していてもよい。機能性粒子として、例えば、活性炭、放射性物質吸着剤(例えば、ゼオライト、紺青(プルシアンブルー)など)、抗カビ剤、触媒(例えば、酸化チタンや二酸化マンガンあるいは白金担持アルミナなど)、調湿剤(例えば、シリカゲルやシリカマイクロカプセルなど)、活性炭やカーボンブラックなどの脱臭剤、リン酸系難燃剤や水酸化アルミニウムなどの難燃剤、消臭剤、防虫剤、殺菌剤、芳香剤、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂、染料、顔料などの粒子を挙げることができる。なお、機能性粒子はエアフィルタの内部に担持して存在していても、エアフィルタの表面に存在してもよく、エアフィルタを構成する繊維中に練り込まれている態様であることもできる。
【0051】
本発明のエアフィルタは特に加工していない平板形状のものであってもよいが、プリーツ加工してもよい。エアフィルタをプリーツ加工する際のプリーツ高さは、5.0~50.0mmが好ましく、10.0~45.0mmがより好ましく、15.0~30.0mmが更に好ましい。エアフィルタをプリーツ加工する際のプリーツ間隔は、2.0~20.0mmが好ましく、3.0~15.0mmがより好ましく、3.0~10.0mmが更に好ましい。
【0052】
更に本発明のエアフィルタは、プリーツ加工以外の加工に供してもよい。本発明のエアフィルタを加工したものとしては、例えば、補強を目的としてネットをエアフィルタに付与したネット複合フィルタや、エアフィルタを巻回するように加工し、エアフィルタを巻出して使用するロールフィルタ装置用のロールフィルタなどが挙げられる。
【0053】
次に、本発明のエアフィルタの製造方法の一例について説明する。
【0054】
まず、(工程1)有機樹脂である芯成分および前記芯成分よりも融点が低い有機樹脂である鞘成分からなる芯鞘型複合繊維と、前記鞘成分よりも融点が低い別の有機樹脂で構成された単繊維とが混綿された繊維ウエブを用意する工程、について説明する。なお、繊維ウエブに前記芯鞘型複合繊維と、前記単繊維以外の繊維を含んでいても良い。
【0055】
繊維ウエブの形成は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、上述の繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法などによって製造できるが、塵埃の捕集容量が優れるようにある程度の嵩がある方が好ましいため、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法を採用するのが好ましい。
【0056】
上述のように形成した繊維ウエブは取り扱いやすいように、水流又はニードルにより絡合してもよい。ニードルにより繊維ウエブを絡合する場合、好適であるニードル絡合条件は特に限定するものではないが、針密度300~1000本/cm2で絡合するのが好ましく、300~600本/cm2で絡合するのがより好ましい。
【0057】
次に、(工程2)前記繊維ウエブを、前記別の有機樹脂の融点以上前記鞘成分の融点未満の温度で加熱することで前記単繊維を構成する前記別の有機樹脂を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却する工程、について説明する。この工程により、単繊維を構成する別の有機樹脂を溶融させ、溶融して粒状になった前記別の有機樹脂が、繊維ウエブの厚さ方向全体に分布して存在して構成繊維同士を結合し、繊維ウエブが単繊維由来の別の有機樹脂で固定された状態とする。なお、別の有機樹脂が溶融した際、毛細管現象により構成繊維同士の交点に凝集しやすいため、別の有機樹脂が粒状の状態で構成繊維同士の交点を結合しやすい。また、単繊維を構成する有機樹脂が溶融できるように、及び、単繊維を構成する別の有機樹脂及び芯鞘型複合繊維の鞘成分の両方を同時に溶融すると、繊維ウエブの形状が崩れ収縮しやすく、嵩高な不織布を備えたエアフィルタを実現できない傾向があることから、単繊維を構成する別の有機樹脂の融点以上前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点未満の温度で加熱する。(工程2)における繊維ウエブの加熱時間は、特に限定するものではないが、繊維ウエブを構成する単繊維に含まれる別の有機樹脂がムラなく溶融できるように、また、繊維ウエブの型崩れが起こりにくいように、1~30分が好ましく、3~20分がより好ましく、5~10分が更に好ましい。
【0058】
繊維ウエブを加熱する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射する方法などを用いることができる。
【0059】
また、繊維ウエブを冷却する方法として、例えば、40℃以下のいわゆる常温環境下で放置して冷却する方法、40℃以下の風を繊維ウエブに当てて冷却する方法等を挙げることができる。
【0060】
次に、(工程3)前記(工程2)を経た繊維ウエブを、前記鞘成分の融点以上前記芯成分の融点未満の温度で加熱することで前記鞘成分を溶融させ、その後、前記繊維ウエブを冷却して不織布を調製する工程、について説明する。この工程にて、繊維ウエブが単繊維由来の別の有機樹脂で固定された状態の繊維ウエブを加熱して芯鞘型複合繊維の鞘成分を溶融させ、前記鞘成分により繊維ウエブの構成繊維を結合し、エアフィルタを製造する。この製造方法により、当該加熱する工程において、繊維ウエブの構成繊維同士が単繊維由来の別の有機樹脂で固定された状態であるためか、加熱中に繊維ウエブが厚さ方向へ潰れ難いことで、嵩高な不織布を備えたエアフィルタを製造できる。芯鞘型複合繊維の鞘成分が溶融できるように、及び、芯鞘型複合繊維の芯成分が溶融すると繊維ウエブの形状が崩れエアフィルタに適した形状を保てないおそれがあることから、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の融点以上前記芯鞘型複合繊維の芯成分の融点未満の温度で加熱する。繊維ウエブに含まれる芯鞘型複合繊維の鞘成分がムラなく溶融できるように、(工程3)における繊維ウエブの加熱時間は、芯鞘型複合繊維の鞘成分がムラなく溶融できるように、また、繊維ウエブの型崩れが起こりにくいように、1~30分が好ましく、3~20分がより好ましく、5~10分が更に好ましい。なお、(工程2)で溶融させた単繊維由来の有機樹脂は(工程3)で再度溶融することになるが、溶融状態の有機樹脂は粘性が高く、ウエブ中から流出せず有機樹脂は繊維間に留まるためウエブの収縮抑制に寄与する効果を発揮する。
【0061】
この時の繊維ウエブを加熱する方法は、(工程2)で繊維ウエブを加熱する方法と同様の方法を用いることができる。また、繊維ウエブを冷却する方法は、(工程2)で繊維ウエブを冷却する方法と同様の方法を用いることができる。
【0062】
本発明にかかるエアフィルタの製造方法によって、鞘成分の他に、厚さ方向全体に分布して存在している粒状の別の有機樹脂によっても結合した、構成繊維同士が強固に結合している先述した本発明にかかる不織布を備えたエアフィルタを製造できる。
【実施例0063】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
(繊維ウエブAの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)10mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブA(目付:579g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0065】
(エアフィルタAの製造)
まず、繊維ウエブAを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブAに含まれるポリエステル共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブAをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブAの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブAの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブAがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した、繊維ウエブAを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブAに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブAをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタA(目付:609g/m2、厚さ:22mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:561μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:53個/cm2)を製造した。このエアフィルタAは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分により、エアフィルタAを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタAの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタAを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0066】
(実施例2)
(繊維ウエブBの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)17.5mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)17.5mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)35mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブB(目付:240g/m2、厚さ:50mm)を形成した。
【0067】
(エアフィルタBの製造)
まず、繊維ウエブBを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブBに含まれるポリエステル共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブBをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブBの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブBの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブBがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した繊維ウエブBを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブBに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブBをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタB(目付:253g/m2、厚さ:12mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:532μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:47個/cm2)を製造した。このエアフィルタBは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分により、エアフィルタBを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタBの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタBを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0068】
(実施例3)
(繊維ウエブCの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)70mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブC(目付:105g/m2、厚さ:30mm)を形成した。
【0069】
(エアフィルタCの製造)
まず、繊維ウエブCを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブCに含まれるポリエステル共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブCをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブCの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブCの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブCがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した繊維ウエブCを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブCに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブCをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタC(目付:110g/m2、厚さ:9mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:548μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:51個/cm2)を製造した。このエアフィルタCは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維Cの鞘成分により、エアフィルタCを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタCの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタCを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0070】
(実施例4)
(繊維ウエブDの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維D(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:160℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:64mm)70mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブD(目付:593g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0071】
(エアフィルタDの製造)
まず、繊維ウエブDを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブDに含まれるポリエステル共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブDをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブDの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブDの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブDがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した繊維ウエブDを温度210℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブDに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維Dの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブDをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタD(目付:624g/m2、厚さ:25mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:555μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:49個/cm2)を製造した。このエアフィルタDは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維Dの鞘成分により、エアフィルタDを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタDの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタDを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0072】
(実施例5)
(繊維ウエブEの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル中空繊維(融点:250℃、繊度:14.4dtex、繊維長:64mm)10mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブE(目付:697g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0073】
(エアフィルタEの製造)
まず、繊維ウエブEを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブEに含まれるポリエステル共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブEをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブEの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブEの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブEがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した繊維ウエブEを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブEに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Bの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブEをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタE(目付:734g/m2、厚さ:27mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:533μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:55個/cm2)を製造した。このエアフィルタEは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A及びBの鞘成分により、エアフィルタEを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタEの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタEを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0074】
(実施例6)
(繊維ウエブFの製造)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)30mass%、
ポリエステル難燃繊維(リン系難燃剤を練りこんでいる、融点:250℃、繊度:17dtex、繊維長:76mm)10mass%、
ポリエステル共重合体単繊維(融点:110℃、繊度:22dtex、繊維長:64mm、伸度:119%)30mass%を用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブF(目付:608g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0075】
(エアフィルタFの製造)
まず、繊維ウエブFを温度110℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブFに含まれるポリエステル系共重合体単繊維を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブFをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却した。これにより、溶融及び冷却によって粒状となったポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体が、繊維ウエブFの厚さ方向全体に分布して繊維ウエブFの構成繊維同士を結合し、繊維ウエブFがポリエステル共重合体単繊維由来のポリエステル共重合体で固定された状態とした。
次に、先ほど冷却した繊維ウエブFを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブFに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Bの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブFをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、不織布から構成されたエアフィルタF(目付:640g/m2、厚さ:20mm、粒状のポリエステル共重合体の大きさ:557μm、厚さ方向の切断面における粒状のポリエステル共重合体の個数:46個/cm2)を製造した。このエアフィルタFは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A及びBの鞘成分により、エアフィルタFを構成する繊維同士が結合しており、また、前記エアフィルタFの厚さ方向全体に分布して存在しているポリエステル共重合体単繊維由来の粒状のポリエステル共重合体により、前記エアフィルタFを構成する繊維の交点で繊維同士が結合していた。
【0076】
(比較例1)
(繊維ウエブGの作成)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)34mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)33mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)33mass%用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブG(目付:581g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0077】
(エアフィルタGの製造)
まず、前記繊維ウエブGを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブGに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブGをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、エアフィルタG(目付:612g/m2、厚さ:18mm)を製造した。
このエアフィルタGは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分のみにより、エアフィルタGを構成する繊維同士が結合していた。
【0078】
(比較例2)
(繊維ウエブHの作成)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維A(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:33dtex、繊維長:76mm)25mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維B(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:22dtex、繊維長:76mm)25mass%、
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)50mass%用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブH(目付:339g/m2、厚さ:50mm)を形成した。
【0079】
(エアフィルタHの製造)
まず前記繊維ウエブHを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブHに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブHをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、エアフィルタH(目付:357g/m2、厚さ:17mm)を製造した。
このエアフィルタHは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維A~Cの鞘成分のみにより、エアフィルタHを構成する繊維同士が結合していた。
【0080】
(比較例3)
(繊維ウエブIの作成)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維C(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:210℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:76mm)100mass%用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブI(目付:98g/m2、厚さ:30mm)を形成した。
【0081】
(エアフィルタIの製造)
まず前記繊維ウエブIを温度230℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブIに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維Cの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブIをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、エアフィルタI(目付:105g/m2、厚さ:13mm)を製造した。
このエアフィルタIは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維Cの鞘成分のみにより、エアフィルタIを構成する繊維同士が結合していた。
【0082】
(比較例4)
(繊維ウエブJの作成)
ポリエステル系芯鞘型複合繊維D(芯成分:ポリエステル樹脂(融点:250℃)、鞘成分:ポリエステル共重合体樹脂(融点:160℃)、芯成分と鞘成分の体積比=1:1、断面形状:円形、芯成分が繊維断面の中心に位置、繊度:17dtex、繊維長:64mm)100mass%用いて、カード機により開繊し、繊維ウエブJ(目付:501g/m2、厚さ:100mm)を形成した。
【0083】
(エアフィルタJの製造)
まず前記繊維ウエブJを温度210℃のドライヤーに5分間入れ、前記繊維ウエブJに含まれるポリエステル系芯鞘型複合繊維Dの鞘成分を溶融させた。
次に、前記繊維ウエブJをドライヤーから取り出し、25℃で5分間放置して冷却し、エアフィルタJ(目付:527g/m2、厚さ:8mm)を製造した。
このエアフィルタJは、ポリエステル系芯鞘型複合繊維Dの鞘成分のみにより、エアフィルタJを構成する繊維同士が結合していた。
【0084】
次に、以下の方法で、実施例及び比較例のエアフィルタを評価した。
【0085】
(圧力損失測定)
実施例及び比較例のエアフィルタを取り付け、面風速2.5m/sで空気を通過させ、エアフィルタの上下流の圧力差をコスモ計器社製デジタルマノメータDM-3500差圧計で測定した。測定は1つのエアフィルタから任意に5箇所をサンプリングして行い、その平均値をエアフィルタの圧力損失(単位:Pa)とした。
【0086】
(洗濯剛軟度変化率測定)
(1)JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の6.7.4「ガーレ法」により、実施例及び比較例のエアフィルタの剛軟度G0(mN)を測定した。
(2)以下の(A)~(E)の工程で、実施例及び比較例のエアフィルタを洗濯した。
(A)実施例または比較例のエアフィルタを10cm角に切り取った。
(B)(A)で切り取ったエアフィルタと、JIS L 1930:2014「繊維製品の家庭洗濯試験方法」の5.6.2に記載されたII型のポリエステル50%/綿50%負荷布とを加えて合計1.5kgになるように、試験用洗濯機(ワッシャー法、大栄科学精器製作所製、型式:WS-1SE)に入れた。
(C)洗濯機に40℃、60Lの温水、60gの洗濯用合成洗剤を入れ、洗濯用合成洗剤を温水に十分に溶解させた。
(D)洗濯機を起動させ、正転15秒、停止3秒、反転15秒を繰り返し、2時間洗濯を行った。
(E)洗濯機からエアフィルタを取り出し、十分な量の水につけることですすぎ、平干し乾燥させた。
(3)洗濯した実施例及び比較例のエアフィルタの剛軟度G1(mN)を、(1)と同じ方法で測定した。
(4)以下の式で洗濯剛軟度変化率(%)を求めた。
[洗濯剛軟度変化率(%)]={(G0-G1)/G0}×100
【0087】
(洗濯体積変化率測定)
(1)実施例または比較例のエアフィルタを10cm角に切り取った。
(2)(1)で切り取ったエアフィルタの寸法を測定し、体積L0(cm3)を測定した。
(3)(洗濯剛軟度変化率測定)に記載の方法と同様の方法で、実施例及び比較例のエアフィルタを洗濯した。
(4)洗濯した実施例及び比較例のエアフィルタの寸法を測定し、体積L1(cm3)を測定した。
(5)以下の式で洗濯体積変化率(%)を求めた。
[洗濯体積変化率(%)]={(L0-L1)/L0}×100
実施例のエアフィルタの物性を以下の表1に、比較例のエアフィルタの物性を以下の表2に示す。なお、繊維の質量%は繊維ウエブ形成時の配合比率であり、‐は当該繊維ウエブ形成時に配合されていないことを示す。
【0088】
【0089】
【0090】
実施例のエアフィルタの厚さは、一番薄い実施例3でも9mmと厚さが厚く、嵩高なエアフィルタであった。
【0091】
また、目付が同程度、かつ、同じポリエステル系芯鞘型複合繊維を用いている実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4とをそれぞれ比較した場合、本発明の構成を満たす実施例のエアフィルタは、別の有機樹脂を含まず芯鞘型複合繊維のみで構成繊維同士が結合された比較例のエアフィルタと比較して、洗濯剛軟度変化率が同等又は小さく、かつ、洗濯体積変化率が小さいことから、洗濯しても構成繊維同士の結合が外れにくく、繊維抜けが生じにくかった。よって、本発明の構成を有するエアフィルタは、洗濯しても嵩高性を十分に維持して、再生使用可能なエアフィルタを提供できることがわかった。
本発明のエアフィルタは、平板状やプリーツ加工されたフィルタ、及び空調設備が巻き出し及び巻き取りを行うロール状のフィルタを、例えばビルや工場、一般家庭などに取り付けられている空調設備に組み込んで使用することができる。