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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151793
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20241018BHJP
   H02K 3/38 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02K3/34 D
H02K3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065508
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 顕史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604PB02
5H604PC03
(57)【要約】
【課題】絶縁のためにコイルの隣接する接合部の間に絶縁部を配置する装置において、装置構成を簡素化することが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】この回転電機100は、シャフト11を含むロータ101と、ステータコア20と、セグメント導体21a同士を接合した複数の接合部23が軸方向の一方側に設けられ、ステータコア20から軸方向の一方側に突出するコイルエンド部22aを有するコイル21と、を含む、ステータ102と、ロータ101およびステータ102を覆うモータハウジング103と、を備える。モータハウジング103には、隣接する接合部23の間に配置され、隣接する接合部23間を絶縁する絶縁部40が一体的に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを含むロータと、
ステータコアと、セグメント導体同士を接合した複数の接合部が軸方向の一方側に設けられ、前記ステータコアから前記軸方向の一方側に突出するコイルエンド部を有するコイルと、を含む、ステータと、
前記ロータおよび前記ステータを覆うモータハウジングと、を備え、
前記モータハウジングには、隣接する前記接合部の間に配置され、前記隣接する前記接合部間を絶縁する絶縁部が一体的に設けられている、回転電機。
【請求項2】
前記モータハウジングは、
開口を有する中空のハウジングケースと、
前記絶縁部が一体的に設けられ、前記開口を塞ぐように前記ハウジングケースに取り付けられるハウジングカバーと、を含み、
前記ハウジングカバーは、前記ハウジングケースに取り付けられることにより、前記絶縁部を隣接する前記接合部の間に配置するように構成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ハウジングカバーは、前記絶縁部が一体的に設けられた樹脂製の樹脂カバー部と、前記シャフトを支持する金属製の金属カバー部とにより形成されている、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記コイルの前記接合部は、前記ステータコアから離間する前記軸方向の一方に向けて延びており、
前記コイルは、絶縁被膜と、前記絶縁被膜が剥離された前記接合部とを有し、
前記絶縁部は、モータハウジング本体から前記軸方向の他方に突出しており、
前記絶縁部の前記軸方向の他方側の先端部は、前記接合部を越えて隣接する前記絶縁被膜の間まで延びている、請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメント導体同士を電気的に接続する接続部において、隣接する接続部間を絶縁する絶縁部を備える回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステータコアの一端から突出するセグメント導体同士を電気的に接続する複数の接続部(接合部)が設けられたコイルを含むステータと、コイルの複数の接続部を覆うカバーと、ロータとを備える回転電機が開示されている。上記カバーは、軸方向の一方側からステータコアに取り付けられ、軸方向の一方側から接続部を含むコイルエンド部を覆っている。カバーは、隣接する接続部間を絶縁する絶縁部を有している。カバーは、ステータコアに取り付けられることにより、絶縁部を、隣接する接続部の間に配置する。絶縁部の先端位置は、隣接する接続部の間に配置される。その結果、絶縁部により、隣接する接続部間が絶縁される。また、回転電機は、ロータ、ステータおよびカバーを覆うケースをさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-117469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の回転電機では、コイルの複数の接続部(接合部)が、絶縁部を有するカバーと、ロータ、ステータおよびカバーを覆うケースとの両方に2重で覆われており、構造が複雑化している。なお、回転電機の分野では、構造の複雑化を解消して構造を簡素化することが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、絶縁のためにコイルの隣接する接合部の間に絶縁部を配置する構成において、構造を簡素化することが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による回転電機では、上記のように、シャフトを含むロータと、ステータコアと、セグメント導体同士を接合した複数の接合部が軸方向の一方側に設けられ、ステータコアから軸方向の一方側に突出するコイルエンド部を有するコイルと、を含む、ステータと、ロータおよびステータを覆うモータハウジングと、を備え、モータハウジングには、隣接する接合部の間に配置され、隣接する接合部間を絶縁する絶縁部が一体的に設けられている。
【0008】
この発明の一の局面による回転電機では、上記のように、ロータおよびステータを覆うモータハウジングに、隣接する接合部の間に配置され、隣接する接合部間を絶縁する絶縁部を一体的に設ける。これによって、従来のような絶縁部を有するカバーと、ロータ、ステータおよびカバーを覆うケースとの両方を備える構造(2重で接続部を覆って、絶縁部により隣接する接続部間を絶縁する構造)とは異なり、絶縁部が一体的に設けられ、ロータおよびステータを覆うモータハウジングのみにより、隣接する接合部間を絶縁することができる。その結果、回転電機の部品点数を削減することができるので、絶縁のためにコイルの隣接する接合部の間に絶縁部を配置する構成において、構造を簡素化することができる。また、従来のようなカバーが不要となるので、回転電機を小型化することができる。また、従来のような2重のカバーの組み付けが不要となり、回転電機の組立工程を簡略化することができる。
【0009】
上記一の局面による回転電機において、好ましくは、モータハウジングは、開口を有する中空のハウジングケースと、絶縁部が一体的に設けられ、開口を塞ぐようにハウジングケースに取り付けられるハウジングカバーと、を含み、ハウジングカバーは、ハウジングケースに取り付けられることにより、絶縁部を隣接する接合部の間に配置するように構成されている。
【0010】
このように構成すれば、モータハウジングを構成するハウジングカバーをハウジングケースに取り付けるだけで、絶縁部を隣接する接合部の間に配置して、隣接する接合部間を絶縁することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、ハウジングカバーは、絶縁部が一体的に設けられた樹脂製の樹脂カバー部と、シャフトを支持する金属製の金属カバー部とにより形成されている。
【0012】
このように構成すれば、絶縁部が一体的に設けられた樹脂製の樹脂カバー部により隣接する接合部間の絶縁を確保することができるとともに、樹脂製の樹脂カバー部と比較して剛性の高い金属製の金属カバー部によりシャフトを安定して支持することができる。
【0013】
この発明の一の局面による回転電機では、上記のように、コイルの接合部は、ステータコアから離間する軸方向の一方に向けて延びており、コイルは、絶縁被膜と、絶縁被膜が剥離された接合部とを有し、絶縁部は、モータハウジング本体から軸方向の他方に突出しており、絶縁部の軸方向の他方側の先端部は、接合部を越えて隣接する絶縁被膜の間まで延びている。
【0014】
このように構成すれば、絶縁部の先端部が接合部を越えて隣接する絶縁被膜の間まで延びているので、隣接する接合部の間の全体に絶縁部を配置して、隣接する接合部の間の絶縁距離(導体間の空間を介した短絡が起こらないように確保すべき導体間の離間距離)を大きく確保することができる。
【0015】
上記回転電機に関して、以下のような構成も考えられる。
【0016】
(付記項1)
たとえば、上記絶縁部の先端部が隣接する絶縁被膜の間まで延びている構成において、好ましくは、絶縁部の軸方向の他方側の先端部は、他方側に向けて先細りするように形成されている。
【0017】
このように構成すれば、絶縁部の先細りする先端部を利用して、絶縁部を隣接する接合部の間に容易に挿入して配置することができる。
【0018】
(付記項2)
また、上記モータハウジングがハウジングケースと絶縁部が一体的に設けられたハウジングカバーとを含む構成において、好ましくは、ハウジングカバーのステータコア側の端面には、ステータコアから離間する軸方向の一方に向けて窪む凹部が設けられ、絶縁部は、凹部の軸方向の一方側の底面部分に配置され、凹部は、内部に接合部を冷却する冷媒が流れるように構成されている。
【0019】
このように構成すれば、凹部を流れる冷媒を接合部(導体)に直接接触させて熱交換することによりコイルエンド部を効果的に冷却することができる。
【0020】
(付記項3)
また、上記回転電機において、好ましくは、絶縁部は、径方向および軸方向の各方向に延びる複数列の壁部を有し、複数列の壁部により複数の接合部間を区画する格子状に形成されている。
【0021】
このように構成すれば、複数列の壁部により格子状に形成された絶縁部によって複数の接合部間を区画することができるので、隣接する接合部間の絶縁をより効果的に確保することができる。
【0022】
(付記項4)
また、上記モータハウジングがハウジングケースと絶縁部が一体的に設けられたハウジングカバーとを含む構成において、好ましくは、ハウジングカバーは、絶縁部を含む全体が樹脂製であり、樹脂製の絶縁部を隣接する接合部の間に配置するように構成されている。
【0023】
このように構成すれば、絶縁部が一体的に設けられたハウジングカバーを、樹脂成形により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態による回転電機の全体構成を径方向から示した断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図2のIII-III線に沿った矢視図であり、ハウジングカバーの図示を省略してステータを示した図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】実施形態による回転電機内の冷媒であるオイルの流れについて説明するための図である。
図6】変形例によるハウジングカバーを径方向から示した断面図である。
図7】変形例によるモータハウジングを備える回転電機の全体構成を径方向から示した断面図である。
図8】変形例による溶接部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
[実施形態]
(回転電機の全体構成)
図1図5を参照して、実施形態による回転電機100について説明する。
【0027】
各図では、シャフト11の軸方向をX方向により示す。また、ステータコア20側から後述する接合部23側を向く方向をX1方向により示し、その反対方向をX2方向により示す。なお、シャフト11に沿って延びる回転電機100の回転中心軸線Cは、X方向に延びている。
【0028】
各図では、シャフト11の径方向をY方向により示す。また、シャフト11の径方向外側をY1方向により示し、その反対方向をY2方向により示す。
【0029】
各図では、シャフト11の周方向をR方向により示す。
【0030】
図1に示すように、回転電機100は、ロータ101と、ステータ102と、ロータ101およびステータ102を覆うモータハウジング103とを備えている。
【0031】
モータハウジング103は、ロータ101およびステータ102を径方向外側から覆うとともに、軸方向の両側からも覆っている。すなわち、モータハウジング103は、ロータ101およびステータ102の全体を覆っている。モータハウジング103は、ハウジングケース3と、ハウジングカバー4とを含んでいる。
【0032】
ここで、本実施形態のハウジングカバー4は、壁状の絶縁部40(図2参照)が一体的に設けられている。ハウジングカバー4は、ハウジングケース3に取り付けられることにより、絶縁部40を隣接する接合部23の間に配置するように構成されている。その結果、絶縁部40によって隣接する接合部23間が絶縁される。詳細については後述する。
【0033】
(ロータの構成)
ロータ101は、ロータコア10と、シャフト11とを備えている。
【0034】
ロータ101は、ステータ102に対向するようにステータ102の径方向内側に配置されている。すなわち、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。
【0035】
ロータコア10は、円環状に形成されている。ロータコア10は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成されている。ロータコア10は、磁束を通過可能に構成されている。ロータコア10は、シャフト挿入孔10aと、永久磁石が配置される複数の磁石孔(図示せず)とを含んでいる。
【0036】
シャフト11は、回転電機100の回転中心となる軸部分である。一例ではあるが、シャフト11は、鋼材により形成されている。
【0037】
(ステータの構成)
ステータ102は、ステータコア20と、ステータコア20に配置されたコイル21とを備えている。
【0038】
ステータコア20は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。ステータコア20には、コイル21を軸方向に通すための空間であるスロット(図示せず)と、コイル21が巻き付けられるティース(図示せず)とが設けられている。
【0039】
コイル21は、外部電源に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。コイル21は、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。
【0040】
コイル21は、ステータコア20から軸方向の一方側(X1方向側)に突出するコイルエンド部22a(図3参照)と、ステータコア20から軸方向の他方側(X2方向側)に突出するコイルエンド部22bとを有している。
【0041】
コイルエンド部22bは、ステータコア20の軸方向の他方側(X2方向側)において、一のスロットから導出されて、折り返された上で他のスロットに導入されている。
【0042】
図3に示すように、コイル21には、セグメント導体21a同士を接合した複数の接合部23が軸方向の一方側に設けられている。詳細には、コイル21(コイルエンド部22a)は、絶縁被膜24と、絶縁被膜24が剥離された接合部23とを有している。接合部23は、絶縁被膜24が剥離されて露出した同相の2つの金属導線部分を接合することにより形成されている。
【0043】
一例ではあるが、接合部23を形成する接合とは、Tig溶接である。Tig溶接の結果、接合部23の軸方向の一方側の端部は、丸みを帯びた形状になる(図4参照)。したがって、接合部23は、軸方向の一方側(X1方向側)に向けて先細りするように形成されている。接合部23は、絶縁性を有する樹脂などにより被覆されてはおらず、金属導線部分が露出している。なお、本実施形態では、絶縁被膜24が剥離された部分(露出した金属導線部分)の全体を接合部23として説明する。
【0044】
図2に示すように、コイルエンド部22aを構成する複数のセグメント導体21aは、径方向および周方向に複数列で並ぶように配置されている。コイルエンド部22aを構成する複数のセグメント導体21aは、径方向内側(最内列)から径方向外側(最外列)に向けて、列毎に周方向の一方側および周方向の他方側に交互に折り曲げられている。そして、互いに逆方向に曲げられた径方向に隣接する列の2つのセグメント導体21aの端部を絶縁被膜24を剥離した上で接合することによって、接合部23が形成されている。
【0045】
コイル21の接合部23は、ステータコア20から離間する軸方向の一方(X1方向)に向けて延びている(図3参照)。接合部23は、軸方向の一方に向けて直線状に延びている。
【0046】
接合部23は、コイルエンド部22aに複数設けられている。複数の接合部23は、径方向および軸方向に並ぶように複数列設けられており、全体として円環状に配列されている。径方向に並ぶ接合部23は、径方向に距離D1を隔てて等間隔で配置されている。周方向に並ぶ接合部23は、周方向に距離D2を隔てて等間隔で配置されている。径方向の距離D1は、周方向の距離D2よりも小さい(D1<D2)。
【0047】
(モータハウジングの構成)
図1に示すように、モータハウジング103には、隣接する接合部23の間に配置され、隣接する接合部23間を絶縁する絶縁部40が一体的に設けられている。詳細には、モータハウジング103は、開口33を有する中空のハウジングケース3と、開口33を塞ぐようにハウジングケース3に取り付けられるハウジングカバー4とを含んでいる。ハウジングカバー4には、絶縁部40が一体的に設けられている。
【0048】
ハウジングケース3は、内周面にステータコア20が固定される筒状の側壁部31と、筒状の側壁部31の軸方向の他方側(X2方向側)の端部に設けられる円形状の底壁部32と、筒状の側壁部31の軸方向の一方側(X1方向側)の端部に設けられる上記開口33とを有している。
【0049】
ハウジングケース3には、軸方向の他方側(X2方向側)のコイルエンド部22bを覆うカバー部30aが設けられている。カバー部30aは、ハウジングケース3に対して一体的な構成であってもよいし、別体の構成であってもよい。
【0050】
ハウジングカバー4は、ロータ101およびステータ102が収容されたハウジングケース3に対して位置決めされた状態で、ハウジングケース3に固定部材Fによって固定されるように構成されている。一例ではあるが、ハウジングカバー4は、固定部材Fとして位置決め機能を有するボルトによって、ハウジングケース3に取り付けられる。なお、位置決めピン、および、位置決め機能を有さないボルトなどにより、ハウジングカバーをハウジングケースに取り付けてもよい。固定部材Fは、ハウジングカバー4の径方向外側の外縁に沿って、所定角度間隔で複数設けられている。
【0051】
ハウジングカバー4をハウジングケース3に取り付ける際、ハウジングカバー4とハウジングケース3との間にはシール部材Sが設置される。詳細には、シール部材Sは、ハウジングカバー4のステータコア20側(X2方向側)の端面41に沿って配置されている。また、シール部材Sは、シャフト11を中心として配置された環状の部材であり、ハウジングカバー4の後述する凹部42の径方向外側と、凹部42の径方向内側とにそれぞれ設置されている。
【0052】
一例ではあるが、シール部材Sは、Oリングである。なお、シール部材は、シート状の封止部材などであってもよい。シール部材Sは、凹部42内を流れる後述する冷媒が凹部42から漏れ出るのを防ぐ機能を有している。図示しないが、ハウジングケース3のカバー部30aにも同様のシール部材が設置されている。
【0053】
ハウジングカバー4のステータコア20側(X2方向側)の端面41には、ステータコア20から離間する軸方向の一方(X1方向)に向けて窪む凹部42が設けられている。ハウジングカバー4の凹部42内には、ハウジングケース3と、ステータコア20とにより、密閉された閉空間が形成されている。ハウジングカバー4は、凹部42の径方向外側の端面41においてハウジングケース3に当接しており、凹部42の径方向内側の端面41においてステータコア20に当接している。絶縁部40は、凹部42の軸方向の一方側(X1方向側)の底面部分42aに配置されている。
【0054】
絶縁部40は、モータハウジング103本体(底面部分42a)から軸方向の他方(X2方向)に突出している。したがって、絶縁部40の全体は、凹部42内に配置されている。なお、上記モータハウジング103本体は、ハウジングケース3から絶縁部40を除いた部分の意味である。
【0055】
絶縁部40の軸方向の他方側の先端部40aは、他方側に向けて先細りするように形成されている(図4参照)。一例ではあるが、先端部40aは、縁部が斜めに形成されるC面取りの加工が施されている。なお、先端部は、縁部が円弧状に形成されるR面取りの加工が施されていてもよい。
【0056】
図2に示すように、絶縁部40は、径方向および軸方向の各方向に延びる複数列の壁部40bを有している。絶縁部40は、複数列の壁部40bにより複数の接合部23間を区画する格子状に形成されている。絶縁部40は、周方向に隣接する2つの壁部40bの略中央位置に接合部23が配置される。絶縁部40は、径方向に隣接する2つの壁部40bの略中央位置に接合部23が配置される。なお、絶縁部40は、接合部23に接触していてもよい。一例ではあるが、径方向に延びる壁部40bの厚みは、周方向に延びる壁部40bの厚みよりも大きい。
【0057】
図4に示すように、絶縁部40の軸方向の他方側(X2方向側)の先端部40aは、接合部23を越えて隣接する絶縁被膜24の間まで延びている。すなわち、径方向および周方向において、隣接する接合部23の間には、必ず絶縁部40が配置されている。したがって、絶縁部40は、径方向に並ぶ接合部23に対して、絶縁部40の先端部40aの軸方向の他方側(X2方向側)の空間を介して比較的大きな絶縁距離D3(屈曲した破線で示す部分の長さ)を確保することができる。当然、絶縁距離D3は、径方向に並ぶ接合部23間の距離D1(図2参照)よりも大きい。
【0058】
なお、径方向に隣接する2つの接合部23の絶縁距離D3は、周方向に隣接する2つの接合部23の絶縁距離(図示せず)3よりも小さくなる。これは、上記説明したように、径方向に並ぶ接合部23間の距離D1(図2参照)が、周方向に並ぶ接合部23間の距離D2(図2参照)よりも小さいためである。
【0059】
図5に示すように、凹部42は、内部に接合部23(コイル21)を冷却する冷媒が流れるように構成されている。一例ではあるが、冷媒は、冷却用のオイルである。詳細には、回転電機100には、オイルポンプ104aと、オイルクーラー104bと、凹部42内にオイルを循環させるためのオイル循環路104cとが設けられている。オイルクーラー104bで冷却されたオイルは、オイルポンプ104aによって凹部42内に送られる。
【0060】
詳細なオイルの流れとしては、はじめに、オイルポンプ104aによってオイルクーラー104bから軸方向の他方側(X2方向側)のコイルエンド部22b(カバー部30a内)にオイルが供給される。そして、ステータコア20に設けられた軸方向に延びる冷媒孔(図示せず)を介して、凹部42内にオイルが供給される。凹部42内において周方向にオイルを循環させた後、オイルクーラー104bにオイルが戻される。
【0061】
ハウジングカバー4は、絶縁部40が一体的に設けられた樹脂製(たとえばPPS樹脂製)の樹脂カバー部43aと、シャフト11を支持する金属製(たとえばアルミ製)の金属カバー部43bとにより形成されている。一例ではあるが、ハウジングカバー4は、インサート成形により形成されている。
【0062】
樹脂カバー部43aは、絶縁部40と、絶縁部40を取り囲む絶縁部40の周辺部分を一体的に含んでいる。金属カバー部43bは、樹脂カバー部43aを、軸方向の一方側、径方向外側および径方向内側から覆っている。金属カバー部43bは、軸受11aを介してシャフト11を支持している。樹脂カバー部43aは、凹部42内の冷媒に接触する位置に設けられている一方、金属カバー部43bは、凹部42内の冷媒に接触することがない。したがって、ハウジングカバー4は、樹脂カバー部43aによって凹部23内の冷媒から熱が伝わりにくい構造を有している。このため、ハウジングカバー4は、凹部23内の冷媒からのハウジングカバー4を介した放熱を抑制することが可能である。
【0063】
(回転電機の組付方法)
図1および図4を参照して、回転電機100の組付方法(製造方法)について説明する。
【0064】
回転電機100の組付方法は、第1工程として、ハウジングケース3内にロータ101およびステータ102が収容する工程を備えている。
【0065】
詳細には、第1工程では、ハウジングケース3の内周面にステータコア20が焼き嵌めなどにより固定される。また、ステータコア20の径方向内側にロータ101が配置される。
【0066】
次に、回転電機100の組付方法は、第2工程として、ハウジングカバー4をハウジングケース3に取り付けて、絶縁部40を隣接する接合部23の間に配置する工程を備えている。
【0067】
詳細には、第2工程として、固定部材Fによりハウジングカバー4をハウジングケース3に取り付ける。この際、所定のガイドを利用して、ハウジングケース3に対してハウジングカバー4が軸方向のみに移動可能な状態にして、ハウジングカバー4をハウジングケース3に取り付ける。その結果、絶縁部40の軸方向の他方側の先端部40aが、接合部23を越えて隣接する絶縁被膜24の間まで延びている状態となる。また、上記所定のガイドによって、互いに軸方向に延びる接合部23と絶縁部40との干渉を回避することが可能となる。なお、所定のガイドには、シャフト11や位置決め機能を有する固定部材Fなどを利用してもよいし、他の構造を利用してもよい。
【0068】
このように、回転電機100の組付方法では、ハウジングカバー4をハウジングケース3に取り付けるだけで、絶縁部40を隣接する接合部23の間に配置して、絶縁部40を隣接する接合部23間の絶縁を達成することが可能である。したがって、回転電機100の製造方法では、接合部23(導体)を樹脂被膜または粉体被膜などにより直接被覆するという絶縁のための専用の工程が不要となる。また、回転電機100は、絶縁のための上記樹脂被膜または粉体被膜などが不要となる分だけ、全体のサイズを小型化することができる。
【0069】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態では、上記のように、ロータ101およびステータ102を覆うモータハウジング103に、隣接する接合部23の間に配置され、隣接する接合部23間を絶縁する絶縁部40を一体的に設ける。これによって、従来のような絶縁部有するカバーと、ロータ、ステータおよびカバーを覆うケースとの両方を備える構造(2重で接続部を覆って、絶縁部により隣接する接続部間を絶縁する構造)とは異なり、絶縁部40が一体的に設けられ、ロータ101およびステータ102を覆うモータハウジング103のみにより、隣接する接合部23間を絶縁することができる。その結果、回転電機100の部品点数を削減することができるので、絶縁のためにコイル21の隣接する接合部23の間に絶縁部40を配置する構成において、構造を簡素化することができる。また、従来のようなカバーが不要となるので、回転電機100を小型化することができる。また、従来のような2重のカバーの組み付けが不要となり、回転電機100の組立工程を簡略化することができる。
【0071】
本実施形態では、上記のように、モータハウジング103は、開口33を有する中空のハウジングケース3と、絶縁部40が一体的に設けられ、開口33を塞ぐようにハウジングケース3に取り付けられるハウジングカバー4と、を含み、ハウジングカバー4は、ハウジングケース3に取り付けられることにより、絶縁部40を隣接する接合部23の間に配置するように構成されている。これによって、モータハウジング103を構成するハウジングカバーをハウジングケース3に取り付けるだけで、絶縁部40を隣接する接合部23の間に配置して、隣接する接合部23間を絶縁することができる。
【0072】
本実施形態では、上記のように、ハウジングカバー4は、絶縁部40が一体的に設けられた樹脂製の樹脂カバー部43aと、シャフト11を支持する金属製の金属カバー部43bとにより形成されている。これによって、絶縁部40が一体的に設けられた樹脂製の樹脂カバー部43aにより隣接する接合部23間の絶縁を確保することができるとともに、樹脂製の樹脂カバー部43aと比較して剛性の高い金属製の金属カバー部43bによりシャフト11を安定して支持することができる。
【0073】
本実施形態では、上記のように、コイル21の接合部23は、ステータコア20から離間する軸方向の一方に向けて延びており、コイル21は、絶縁被膜24と、絶縁被膜24が剥離された接合部23とを有し、絶縁部40は、モータハウジング103本体から軸方向の他方に突出しており、絶縁部40の軸方向の他方側の先端部40aは、接合部23を越えて隣接する絶縁被膜24の間まで延びている。これによって、絶縁部40の先端部40aが接合部23を越えて隣接する絶縁被膜24の間まで延びているので、隣接する接合部23の間の全体に絶縁部40を配置して、隣接する接合部23の間の絶縁距離(導体間の空間を介した短絡が起こらないように確保すべき導体間の離間距離)(D3)を大きく確保することができる。
【0074】
本実施形態では、上記のように、絶縁部40の軸方向の他方側の先端部40aは、他方側に向けて先細りするように形成されている。これによって、絶縁部40の先細りする先端部40aを利用して、絶縁部40を隣接する接合部23の間に容易に挿入して配置することができる。
【0075】
本実施形態では、上記のように、ハウジングカバー4のステータコア20側の端面41には、ステータコア20から離間する軸方向の一方に向けて窪む凹部42が設けられ、絶縁部40は、凹部42の軸方向の一方側の底面部分42aに配置され、凹部42は、内部に接合部23を冷却する冷媒が流れるように構成されている。これによって、凹部42を流れる冷媒を接合部23(導体)に直接接触させて熱交換することによりコイルエンド部22aを効果的に冷却することができる。
【0076】
本実施形態では、上記のように、絶縁部40は、径方向および軸方向の各方向に延びる複数列の壁部40bを有し、複数列の壁部40bにより複数の接合部23間を区画する格子状に形成されている。これによって、複数列の壁部40bにより格子状に形成された絶縁部40によって複数の接合部23間を区画することができるので、隣接する接合部23間の絶縁をより効果的に確保することができる。
【0077】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記実施形態では、ハウジングカバーを、樹脂製の樹脂カバー部と金属製の金属カバー部とにより形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図6に示すように、ハウジングカバー204を、樹脂のみにより形成してもよい。詳細には、ハウジングカバー204は、絶縁部40を含む全体が樹脂製であり、樹脂製の絶縁部40を隣接する接合部23(図1参照)の間に配置するように構成される。
【0079】
また、上記実施形態では、絶縁部を、ハウジングカバーに設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図7に示すモータハウジング103aのように、絶縁部40を、ハウジングカバー304ではなくハウジングケース303に設けてもよい。この場合、ハウジングカバー304は、軸方向の他方(X2方向)のコイルエンド部22b側に配置される。
【0080】
また、上記実施形態では、接合部をTig溶接によって形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図8に示すように、接合部23aをレーザ溶接によって形成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、軸方向の他方側のコイルエンド部から軸方向の一方側のコイルエンド部にステータコアを介してオイルを流した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向の他方側のコイルエンド部と軸方向の一方側のコイルエンド部との各々に対してオイルポンプから直接オイルを供給してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、オイルのみによって回転電機を冷却した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイルだけではなく、水によって回転電機を冷却してもよい。たとえば、ステータコアの外周面に接触する管路を設けて、管路に水を流すことによりステータコアを冷却してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、絶縁部を格子状の壁部により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁部を周方向に延びる複数の円環状の壁部のみにより形成してもよい。この他に、絶縁部を径方向に延びる複数の直線状の壁部のみにより形成してもよい。また、個々の接合部に対して1つずつ設けられる筒状の絶縁部などであってもよい。この場合、筒状の絶縁部内に接合部を配置して絶縁を行う。
【0084】
また、上記実施形態では、ハウジングカバーの樹脂カバー部と、ハウジングカバーの金属カバー部とをインサート成形することによって、ハウジングカバーを形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ハウジングカバーの樹脂カバー部と、ハウジングカバーの金属カバー部とをボルトにより締結することによって、ハウジングカバーを形成してもよい。この他に、ハウジングカバーの樹脂カバー部と、ハウジングカバーの金属カバー部とを接着するなどにより、ハウジングカバーを形成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
3 ハウジングケース
4、204 ハウジングカバー
10 シャフト
20 ステータコア
21 コイル
21a セグメント導体
22a コイルエンド部
23、23a 接合部
24 絶縁被膜
33 (ハウジングケースの)開口
40 絶縁部
40a (絶縁部の)先端部
43a (ハウジングカバーの)樹脂カバー部
43b (ハウジングカバーの)金属カバー部
100 回転電機
101 ロータ
102 ステータ
103、103a モータハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8