(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151794
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無線受信装置およびバースト検出方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/22 20060101AFI20241018BHJP
H04L 7/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04L27/22 D
H04L7/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065510
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢晃
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA02
5K047BB01
5K047HH53
(57)【要約】
【課題】バースト通信のスループットを向上することが可能な無線受信装置およびバースト検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】無線通信装置のバースト検出部87は、受信信号の振幅を正規化する正規化部871と、振幅が正規化された受信信号からプリアンブル信号を抽出するLPF872と、抽出されたプリアンブル信号の信号電力を算出する電力算出部873と、信号電力の平均値と電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値よりも大きい場合に、プリアンブル信号を検出したと判定する判定部875と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信されたデータフレームを受信して受信信号を出力する受信手段と、
前記受信信号の振幅を正規化する正規化手段と、
振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出するバースト検出手段と、
を備えることを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、
前記第1の信号抽出手段により抽出された前記プリアンブル信号の信号電力を算出してその平均値を求める電力算出手段と、
前記プリアンブル信号の信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記プリアンブル信号の信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を第1の方向にシフトして第1の周波数シフト信号を生成する第1の周波数シフト手段と、
前記第1の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、
前記第1の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第1の信号電力を算出してその平均値を求める第1の電力算出手段と、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を前記第1の方向とは反対側の第2の方向にシフトして第2の周波数シフト信号を生成する第2の周波数シフト手段と、
前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第2の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第2の信号抽出手段と、
前記第2の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第2の信号電力を算出してその平均値を求める第2の電力算出手段と、
前記第1の信号電力の平均値と、前記第2の信号電力の平均値とを比較し、いずれか大きいほうを出力する電力比較手段と、
前記電力比較手段から出力された信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を、前記第1の信号抽出手段の信号抽出特性の範囲内に入らないようにシフトして第3の周波数シフト信号を生成する第3の周波数シフト手段と、
前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第3の周波数シフト信号から雑音信号を抽出する第3の信号抽出手段と、
前記雑音信号の信号電力を算出してその平均値を求める第3の電力算出手段と、
前記雑音信号の信号電力の平均値に基づいて前記電力閾値を算出する電力閾値算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
バースト送信されたデータフレームの到来を検出するバースト検出方法であって、
データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信された前記データフレームを受信して受信信号を出力し、
前記受信信号の振幅を正規化し、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出する、
ことを特徴とするバースト検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バースト送信されたデータフレームを検出する無線受信装置およびバースト検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TDM(時分割多重化:Time Division Multiplexing)通信などで用いられるバースト通信では、不連続な信号が不定期に送信(以下、バースト送信ともいう)されるため、無線受信装置は信号をいつ受信するか分からない。そのため、バースト通信を行なう無線受信装置では、バースト送信された信号を検出するバースト検出が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
バースト通信に用いられるデータフレームは、
図16(A)に示すように、データ信号と、データ信号の先頭に付加されたプリアンブル信号とから構成されている。プリアンブル信号には、バースト検出に用いられる無変調のCW信号と、クロック誤差の補正に用いられる交番信号(「1」と「0」の交番パターン)とが含まれる。
【0004】
バースト検出は、
図16(B)に示すように、LPF(Low-pass filter)100により、データフレームを受信して出力された受信信号からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部101によりCW信号の信号電力を算出し、平均化部102により信号電力の平均値を求める。判定部103は、信号電力の平均値と、予め設定された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値以上であるときにCW信号を検出したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバースト検出では、受信信号の信号電力が定格より低いときには、AGC(Automatic Gain Control)により受信信号の信号電力を増幅してからバースト検出を行なっている。そのため、受信信号の信号電力が定格より低いときには、
図16(C)に示すように、CW信号の信号電力が電力閾値を超えるまでに時間がかかり、バースト検出に遅延が発生してスループットが低下するという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、バースト通信のスループットを向上することが可能な無線受信装置およびバースト検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信されたデータフレームを受信して受信信号を出力する受信手段と、前記受信信号の振幅を正規化する正規化手段と、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出するバースト検出手段と、を備えることを特徴とする無線受信装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線受信装置において、前記バースト検出手段は、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、前記第1の信号抽出手段により抽出された前記プリアンブル信号の信号電力を算出してその平均値を求める電力算出手段と、前記プリアンブル信号の信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記プリアンブル信号の信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の無線受信装置において、前記バースト検出手段は、振幅が正規化された前記受信信号の周波数を第1の方向にシフトして第1の周波数シフト信号を生成する第1の周波数シフト手段と、前記第1の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、前記第1の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第1の信号電力を算出してその平均値を求める第1の電力算出手段と、振幅が正規化された前記受信信号の周波数を前記第1の方向とは反対側の第2の方向にシフトして第2の周波数シフト信号を生成する第2の周波数シフト手段と、前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第2の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第2の信号抽出手段と、前記第2の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第2の信号電力を算出してその平均値を求める第2の電力算出手段と、前記第1の信号電力の平均値と、前記第2の信号電力の平均値とを比較し、いずれか大きいほうを出力する電力比較手段と、前記電力比較手段から出力された信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の無線受信装置において、前記バースト検出手段は、振幅が正規化された前記受信信号の周波数を、前記第1の信号抽出手段の信号抽出特性の範囲内に入らないようにシフトして第3の周波数シフト信号を生成する第3の周波数シフト手段と、前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第3の周波数シフト信号から雑音信号を抽出する第3の信号抽出手段と、前記雑音信号の信号電力を算出してその平均値を求める第3の電力算出手段と、前記雑音信号の信号電力の平均値に基づいて前記電力閾値を算出する電力閾値算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、バースト送信されたデータフレームの到来を検出するバースト検出方法であって、データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信された前記データフレームを受信して受信信号を出力し、前記受信信号の振幅を正規化し、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および5に記載の発明によれば、受信信号の信号レベルが低い場合に従来行なわれていたAGCによるレベル調整が不要となるので、検出遅延を抑制してフレームデータのスループットを向上させることが可能である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、振幅が正規化された受信信号の信号電力の平均値と、電力閾値とを比較してバースト検出を行なうので、電力閾値を例えば所望のSNR(Signal-to-Noise Ratio)が得られるような値に設定することにより、精度よくバースト検出を行なうことが可能である。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、受信信号の周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号を生成し、この2種類の周波数シフト信号それぞれについて信号抽出手段によりプリアンブル信号の抽出を行なうことにより、信号抽出手段の帯域幅を狭くすることができる。そのため、周波数オフセット耐性を従来と同等に維持したまま、雑音耐性を向上させることが可能である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、所望のSNRを満たすために必要な電力閾値を雑音電力から算出してバースト検出に用いるので、バースト信号を受信していないときに受信信号の振幅が正規化されてもSNRは低いままなので、誤検出を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す無線通信装置の送信部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1に示す無線通信装置の受信系の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図3に示すバースト検出部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】(A)は
図2に示す送信部から送信されるデータフレームのフレーム構成を示し、(B)は受信信号の信号電力を正規化したバースト検出を示す説明図である。
【
図6】
図3に示すバースト検出部によるバースト検出の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】この発明の実施の形態2に係るバースト検出部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図7に示すバースト検出部によるバースト検出時の受信信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【
図9】
図7に示すバースト検出部によるバースト検出の手順を示すフローチャートである。
【
図10】この発明の実施の形態3に係るバースト検出部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】
図10に示すバースト検出部によるバースト検出時の受信信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【
図12】
図10に示すバースト検出部によるバースト検出の手順を示すフローチャートである。
【
図13】この発明の実施の形態4に係るバースト検出部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図13に示すバースト検出部によるバースト検出時の受信信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【
図15】
図13に示すバースト検出部によるバースト検出の手順を示すフローチャートである。
【
図16】(A)は従来のバースト通信に用いられるデータフレームのフレーム構成を示し、(B)は従来のバースト検出部の概略構成を示し、(C)はCW信号を用いた従来のバースト検出を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態に係る無線通信装置(無線受信装置)2を用いた無線通信システム1の概略構成を示す図である。無線通信システム1を構成する無線通信の送受信局のそれぞれに、無線通信装置2およびアンテナ3が配置される。無線通信装置2同士は、アンテナ3を介して無線回線4によって相互に接続される。なお、無線回線4には、通信衛星などが中継局として用いられる場合がある。
【0020】
まず、この実施の形態において、本発明に係る無線受信装置に相当する無線通信装置2の概略構成を説明する。
【0021】
無線通信装置2は、インターフェース部5と、送信部6と、分波器7と、受信部8と、を備える(
図1の下側参照)。
【0022】
ここで、無線通信装置2は、送信用の機序と受信用の機序とを備えて送受信を行う装置であるところ、以下の説明では、送信用の機序を用いて送信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「送信側」と称し、受信用の機序を用いて受信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「受信側」と称する。
【0023】
インターフェース部5は、主として、データ回線終端装置51(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)を備える。インターフェース部5は、通信対象の伝送データの入力を受け、この伝送データを、データ回線終端装置51を介して、送信部6へと出力する。
【0024】
送信部6は、インターフェース部5から出力される伝送データの入力を受け、伝送データをマッピング処理したデータ信号と、データ信号の先頭に配置されるプリアンブル信号とを結合してデータフレームを生成し、さらに、データフレームに所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調する。なお、プリアンブル信号には、バースト検出に用いられる無変調のCW信号と、クロック誤差の補正に用いられる交番信号とが含まれる。また、無線通信システム1において用いられる変調方式は、特定の方式に限定されるものではないものの、例えば直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が用いられる。
【0025】
送信部6は、デジタル変調されたデータフレームをアナログ信号に変換した上で、所定周波数よりも高周波の高周波信号に周波数変換し、パワーアンプで増幅した上で送信信号として出力する。送信信号は、送信部6から分波器7を介してアンテナ3へと導かれ、アンテナ3から無線回線4を介して他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと、電波としてバースト送信される。
【0026】
また、他方の(言い換えると、この通信では送信側になる)無線通信装置2のアンテナ3から無線回線4を介して送信信号が当該の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと電波としてバースト送信されると、アンテナ3は、受信した電波を電気信号(受信信号)へと変換して出力する。
【0027】
アンテナ3から出力される受信信号は、分波器7を介して受信部8へと導かれる。受信部8は、受信信号の入力を受け、受信信号を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるチャンネルフィルタを通過させた上で、前記高周波よりも低い周波数の信号に変換する。受信部8は、さらに、周波数変換した受信信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0028】
受信部8は、デジタルの受信信号に対して直交検波処理(復調)を施して位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とを生成する。なお、以降の説明では同相成分と直交成分との各々別々に着目する必要がある場合を除いて同相成分と直交成分とを特に区別することなくどちらにも共通する内容として説明し、また、図面では同相成分の信号と直交成分の信号とを1つの信号線で表す。
【0029】
受信部8は、復調されたベースバンド信号に基づいてバースト検出を行なう。このバースト検出によりデータフレームの到来が検出されると、受信したデータフレームに周波数オフセット補正、クロック誤差の補正、位相補正などを施す。そして、受信部8は、各種補正が施されたデータフレームからプリアンブル信号を分離し、データ信号にデマッピング処理を施して伝送データを生成し、インターフェース部5へと出力する。
【0030】
本実施の形態に係るバースト検出では、受信信号の振幅を正規化し、振幅が正規化された受信信号からプリアンブル信号を検出することにより、データフレームの到来を検出する。より具体的には、受信信号の振幅を正規化し、振幅が正規化された受信信号からプリアンブル信号を抽出し、抽出されたプリアンブル信号の信号電力を算出してその平均値を求める。そして、プリアンブル信号の信号電力の平均値と、予め設定された電力閾値とを比較し、プリアンブル信号の信号電力の平均値が電力閾値よりも大きい場合に、プリアンブル信号を検出したと判定する。これにより、受信信号の信号電力が定格よりも低い場合に従来行なわれていたAGCによるレベル調整の完了を待たずにCW信号を検出することができるので、検出遅延を抑制してフレームデータのスループットを向上させることが可能である。
【0031】
図2は、送信部6の概略構成を示す機能ブロック図である。送信部6は、FIFOメモリ61と、マッピング部62と、CW信号生成部63aと、交番信号生成部63bと、結合部64と、送信ROF65と、直交変調部66と、DAC(Digital Analog Converter)67と、混合器68と、局部発振器69と、パワーアンプ610と、を備える。
【0032】
FIFOメモリ61は、インターフェース部5から出力された伝送データを一時的に記憶してマッピング部62へ出力するメモリであり、いわゆる、先入れ先出し法により伝送データをマッピング部62へ転送する。
【0033】
マッピング部62は、伝送データのバイナリデータ列に対し、所定の信号点配置になるようにマッピング処理を施してシンボル列からなるデータ信号を生成して結合部64へ出力する。CW信号生成部63aは、バースト検出に用いられる無変調の連続波であるCW信号を生成して結合部64へ出力する。交番信号生成部63bは、クロック誤差の補正に用いられる交番信号を生成して結合部64へ出力する。
【0034】
結合部64は、マッピング部62から入力されたデータ信号の先頭に、CW信号生成部63aから入力されたCW信号と、交番信号生成部63bから入力された交番信号とを結合してデータフレームDF(
図5(A)参照)を生成して送信ROF65へ出力する。送信ROF65は、ロールオフフィルタの機能を備え、結合部64から入力されたデータフレームDFに帯域制限処理を施して直交変調部66へ出力する。
【0035】
直交変調部66は、送信ROF65から入力されたデータフレームDFに所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調してDAC67へ出力する。なお、直交変調部66において用いられる変調方式は、特定の方式に限定されるものではないものの、例えば直交振幅変調が用いられる。
【0036】
DAC67は、直交変調部66から入力されたデータフレームDFをアナログ信号の送信信号に変換して混合器68へ出力する。局部発振器69は、所定の固定周波数を持つ局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を混合器68へ出力する。混合器68は、DAC67から入力された送信信号に局部発振信号を混合して所定の周波数よりも高周波の信号に変換する。
【0037】
パワーアンプ610は、混合器68にて周波数変換された送信信号を増幅してアンテナ3へ出力する。アンテナ3は、パワーアンプ610にて増幅された送信信号を他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと、電波として送信する。なお、図示してはいないが、パワーアンプ610とアンテナ3との間には分波器7が接続されている。
【0038】
図3は、受信部8の概略構成を示す機能ブロック図である。受信部8は、チャンネルフィルタ81と、混合器82と、局部発振器83と、可変ATT(attenuator)84と、ADC(Analog Digital Converter)85と、直交検波部86と、バースト検出部87と、タイミング制御部88と、AFC(Automatic frequency control)89と、受信ROF810と、シンボル再生部811と、APC(Automatic Phase Control)812と、分離部813と、デマッピング部814と、AGC815と、DAC816と、を備える。
【0039】
アンテナ3は、受信した電波を電気信号(受信信号)へと変換してチャンネルフィルタ81へ出力する。アンテナ3とチャンネルフィルタ81との間には分波器7が接続されている。チャンネルフィルタ81は、アンテナ3から入力された受信信号のうち所定の周波数帯域を通過させて混合器82へ出力する。局部発振器83は、所定の固定周波数を持つ局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を混合器82へ出力する。混合器82は、チャンネルフィルタ81から入力された受信信号に局部発振信号を混合して所定の周波数よりも低い周波数の信号に変換し、可変ATT84へ出力する。
【0040】
可変ATT84は、減衰器を含み、混合器82から出力された受信信号を、外部からの信号に応じて減衰量を調整して減衰させてADC85へ出力する。可変ATT84における減衰量は、DAC816を介して供給されるAGC815の制御信号に基づいて変化する。
【0041】
ADC85は、可変ATT84から入力された受信信号をデジタル信号に変換する。直交検波部86は、受信信号に直交検波処理を施して位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とを生成する。
【0042】
バースト検出部87は、直交検波部86から入力されたベースバンド信号からバースト検出を行なう。バースト検出部87は、バースト検出によりデータフレームDFの到来が検出した場合には、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する。検出フラグが入力されたタイミング制御部88は、各モジュールに対しデータフレームDFに対する処理を行なわせるためのイネーブル信号を出力する。
【0043】
AFC89は、タイミング制御部88からのイネーブル信号に応じて、ベースバンド信号のデータフレームDFに周波数オフセット補正を行なって受信ROF810へ出力する。受信ROF810は、ロールオフフィルタの機能を備え、AFC89から入力されたベースバンド信号に帯域制限処理を施してシンボル再生部811へ出力する。
【0044】
シンボル再生部811は、受信ROF810から入力されたベースバンド信号のデータフレームDFに含まれる交番信号を用いてクロック誤差を補正し、APC812へ出力する。APC812は、シンボル再生部811から入力されたベースバンド信号のデータフレームDFに位相補正を行い分離部813へ出力する。
【0045】
分離部813は、データフレームDFからデータ信号を分離してデマッピング部814へ出力する。デマッピング部814は、分離部813から入力されたシンボル列データからなる信号(同相成分と直交成分とのそれぞれ)に対してデマッピング処理(復号処理)を施し、シンボル列データをバイナリデータ列の伝送データに変換してインターフェース部5へ出力する。
【0046】
図4は、バースト検出部87の概略構成を示す機能ブロック図である。バースト検出部87は、正規化部(正規化手段)871と、LPF(第1の信号抽出手段)872と、電力算出部(電力算出手段)873と、平均化部(電力算出手段)874と、判定部(判定手段)875と、を備える。
【0047】
正規化部871は、
図5(B)に示すように、受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、振幅を1に正規化する。LPF872は、受信信号からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873へ出力する。電力算出部873は、LPF872から入力された受信信号の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874へ出力する。平均化部874は、電力算出部873により算出された信号電力の平均値を求め、判定部875へ出力する。
【0048】
判定部875は、平均化部874から入力された信号電力の平均値と、予め設定された電力閾値とを比較し、
図5(B)に示すように、信号電力の平均値が電力閾値以上であるときにCW信号を検出したと判定する。なお、電力閾値は、所望のSNRが得られるような値が予め設定されて図示しないメモリなどに記憶され、判定部875へ出力される。
【0049】
次に上記の実施の形態におけるバースト検出部87の作用について、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
バースト検出部87は、直交検波部86からデータフレームDFの受信信号が入力されると、正規化部871が受信信号の振幅を正規化する(ステップS1)。
【0051】
バースト検出部87のLPF872は、振幅が正規化された受信信号からCW信号を抽出して雑音を抑圧する(ステップS2)。
【0052】
バースト検出部87の電力算出部873は、LPF872から入力されたCW信号の信号電力を算出し、平均化部874は、電力算出部873から入力された信号電力の平均値を算出する。(ステップS3)。
【0053】
バースト検出部87の判定部875は、平均化部874から入力された信号電力の平均値と、メモリから読み出して入力された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値よりも大きい場合にCW信号を検出したと判定し、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する(ステップS4)。
【0054】
以上で説明したように、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、AGCによる受信レベルの調整を待たずに電力閾値を超えるCW信号が検出できるので、受信信号のレベル調整を待つ間に発生していた検出遅延を抑制してバースト通信のスループットを向上させることが可能である。
【0055】
(実施の形態2)
次に、本発明の無線受信装置およびバースト検出方法を用いた実施の形態2に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態2に係る無線通信システムは、振幅を正規化した受信信号からバースト検出を行なう際に、電力閾値を雑音電力から算出して用いる点で実施の形態1と異なる。なお、以下では、実施の形態1に係る無線通信システム1と同一の構成については、同じ符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0056】
実施の形態1のバースト検出部87では、バースト信号を受信していないときに受信信号の振幅が正規化されて誤検出が発生する可能性がある。そのため、本実施の形態2のバースト検出では、所望のSNRを満たすために必要な電力閾値を雑音電力から算出してバースト検出に用いる。これにより、バースト信号を受信していないときに受信信号の振幅が正規化されてもSNRは低いままなので、誤検出を防ぐことが可能となる。
【0057】
図7は、本実施の形態2に係る無線通信システム1のバースト検出部87の概略構成を示す機能ブロック図である。バースト検出部87は、正規化部(正規化手段)871と、周波数シフト部(第3の周波数シフト手段)876と、LPF(第3の信号抽出手段)877と、電力算出部(第3の電力算出手段)878と、平均化部(第3の電力算出手段)879と、電力閾値算出部(電力閾値算出手段)8710と、判定部(判定手段)875と、を備える。
【0058】
実施の形態1と同様に、正規化部871は、
図5(B)に示すように、受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、振幅を1に正規化する。
【0059】
図8(A)は、振幅が正規化された受信信号Rのスペクトラムを示す。
図8(B)に示すように、LPF872は、図中破線で示すフィルタ特性(信号抽出特性)を備えており、振幅が正規化された受信信号からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873へ出力する。なお、LPF872のフィルタ特性は、受信信号Rの想定される周波数オフセットが±Δfである場合、通常は周波数オフセットΔfの2倍の帯域幅である2Δfが用いられる。
【0060】
実施の形態1と同様に、電力算出部873は、LPF872から入力された受信信号の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874へ出力する。平均化部874は、電力算出部873により算出された信号電力の平均値を求め、判定部875へ出力する。
【0061】
周波数シフト部876は、
図8(C)に示すように、振幅が正規化された受信信号RをLPF877の帯域幅2Δfに入らない周波数、例えば、-fsym/4(fsym:シンボル周波数)にシフトして周波数シフト信号(第3の周波数シフト信号)Rsを生成する。LPF877は、
図8(D)に破線で示すように、LPF872と同じフィルタ特性を有しており、周波数シフト信号Rsから雑音信号を抽出する。
【0062】
電力算出部878は、LPF877から入力された雑音信号の信号電力を算出し、平均化部879は、電力算出部878から入力された信号電力の平均値(以下、雑音電力ともいう)を算出する。
【0063】
電力閾値算出部8710は、平均化部879から入力された雑音電力に基づいて電力閾値を算出し、判定部875へ出力する。ここで、SNRは、下記式(1)により求められる。したがって、下記式(2)に示すように、雑音電力に目標とするSNR(以下、SNR閾値という)を乗算することにより、SNR閾値を得るために必要な電力閾値が求められる。
SNR=信号電力/雑音電力・・・・・・・(1)
電力閾値=SNR閾値×雑音電力・・・・(2)
【0064】
判定部875は、平均化部874から入力された信号電力の平均値と、電力閾値算出部8710から入力された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値以上である場合にCW信号を検出したと判定し、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する。
【0065】
次に上記の実施の形態2におけるバースト検出部87の作用について、
図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0066】
バースト検出部87は、直交検波部86からデータフレームDFの受信信号が入力されると、正規化部871が受信信号の振幅を正規化する(ステップS1)。
【0067】
バースト検出部87のLPF872は、振幅が正規化された受信信号からCW信号を抽出して雑音を抑圧する(ステップS2)。
【0068】
バースト検出部87の電力算出部873は、LPF872から入力されたCW信号の信号電力を算出し、平均化部874は、電力算出部873から入力された信号電力の平均値を算出する。(ステップS3)。
【0069】
一方、バースト検出部87の周波数シフト部876は、振幅が正規化された受信信号がLPF877の帯域幅2Δfに入らない位置に周波数をシフトして周波数シフト信号を生成する(ステップS5)。LPF877は、周波数シフト信号から雑音信号を抽出する(ステップS6)。
【0070】
電力算出部878は、LPF877から入力された雑音信号の信号電力を算出し、平均化部879は、電力算出部878から入力された信号電力の平均値(雑音電力)を算出する(ステップS7)。
【0071】
電力閾値算出部8710は、平均化部879から入力された雑音電力と、所望のSNR閾値とに基づいて電力閾値を算出し、判定部875へ出力する(ステップS8)。
【0072】
判定部875は、平均化部874から入力された信号電力の平均値と、電力閾値算出部8710から入力された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値以上である場合にCW信号を検出したと判定し、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する(ステップS4)。
【0073】
以上で説明したように、本実施の形態2に係る無線通信システム1によれば、所望のSNRを満たすために必要な電力閾値を雑音電力から算出してバースト検出に用いる。これにより、バースト信号を受信していないときに受信信号の振幅が正規化されてもSNRは低いままなので、誤検出を防ぐことが可能となる。また、実施の形態1と同様に、AGCによる受信レベルの調整を待たずに電力閾値を超えるCW信号が検出できるので、受信信号のレベル調整を待つ間に発生していた検出遅延を抑制してバースト通信のスループットを向上させることが可能である。
【0074】
(実施の形態3)
次に、本発明の無線受信装置およびバースト検出方法を用いた実施の形態3に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態3に係る無線通信システムは、受信信号の周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号を生成し、この2種類の周波数シフト信号それぞれについてLPFによるCW信号の抽出を行い、抽出した2種類のCW信号のうち信号電力が大きいほうを電力閾値と比較してバースト検出を行なう点で実施の形態1と異なっている。なお、以下では、実施の形態1に係る無線通信システム1と同一の構成については、同じ符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0075】
実施の形態1のバースト検出部87では、受信信号のCNR(Career-to-Noise Ratio)が低い場合におけるバースト検出精度の劣化対策として、受信信号をLPFへ入力し雑音を抑圧している。その際に、LPFの帯域幅を狭くするほど雑音への耐性は高くなるが、その一方でLPFの帯域幅を狭くすると許容できる周波数オフセットの大きさが小さくなってしまう。そのため、本実施の形態3のバースト検出では、受信信号の周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号を生成し、この2種類の周波数シフト信号それぞれについて帯域幅を狭くしたLPFによりCW信号の抽出を行なうことにより、周波数オフセット耐性を実施の形態1と同等に維持したまま、雑音耐性を向上させることが可能である。
【0076】
図10は、本実施の形態3に係る無線通信システム1のバースト検出部87の概略構成を示す機能ブロック図である。バースト検出部87は、正規化部(正規化手段)871と、第1の周波数シフト部(第1の周波数シフト手段)876Aと、LPF(第1の信号抽出手段)872Aと、電力算出部(第1の電力算出手段)873Aと、平均化部(第1の電力算出手段)874Aと、第2の周波数シフト部(第2の周波数シフト手段)876Bと、LPF(第2の信号抽出手段)872Bと、電力算出部(第2の電力算出手段)873Bと、平均化部(第2の電力算出手段)874Bと、電力比較部(比較手段)8711と、判定部(判定手段)875と、を備える。
【0077】
実施の形態1と同様に、正規化部871は、
図5(B)に示すように、受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、振幅を1に正規化する。
【0078】
図11(A)は、振幅が正規化された受信信号のスペクトラムを示す。第1の周波数シフト部876Aは、
図11(B)に示すように、受信信号の周波数を、受信信号の想定される周波数オフセットΔfの1/2だけプラス方向(第1の方向)にシフトした第1の周波数シフト信号Rs1を生成する。
【0079】
同様に、第2の周波数シフト部876Bは、
図11(D)に示すように、受信信号の周波数を、周波数オフセットΔfの1/2だけマイナス方向(第1の方向とは反対側の第2の方向)にシフトした第2の周波数シフト信号Rs2を生成する。
【0080】
LPF872Aは、
図11(C)に示すように、図中破線で示すフィルタ特性(信号抽出特性)を備えており、第1の周波数シフト信号Rs1からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873Aへ出力する。LPF872Aのフィルタ特性は、受信信号の想定される周波数オフセットが±Δfである場合、通常は周波数オフセットΔfの2倍の帯域幅である2Δfが用いられるが、本実施の形態2では、2Δfの半分のΔfが用いられる。
【0081】
LPF872Bは、
図11(E)に示すように、図中破線で示すフィルタ特性(信号抽出特性)を備えており、第2の周波数シフト信号Rs2からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873Bへ出力する。LPF872Bのフィルタ特性は、LPF872Aと同じフィルタ特性を備えており、その帯域幅はΔfとなっている。
【0082】
このように、本実施の形態3では、受信信号Rの周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2を生成し、この2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2それぞれについてLPFによりCW信号の抽出を行なうことにより、LPFの帯域幅を従来(実施の形態1)の半分にすることができる。
【0083】
実施の形態1と同様に、電力算出部873Aは、LPF872Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874Aへ出力する。平均化部874Aは、電力算出部873Aにより算出された信号電力の平均値を求め、電力比較部8711へ出力する。
【0084】
上記と同様に、電力算出部873Bは、LPF872Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874Bへ出力する。平均化部874Bは、電力算出部873Bにより算出された信号電力の平均値を求め、電力比較部8711へ出力する。
【0085】
電力比較部8711は、平均化部874Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力の平均値と、平均化部874Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力の平均値とを比較し、大きい方を判定部875へ出力する。すなわち、受信信号Rの周波数オフセットがマイナス方向のときには、第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力の平均値が第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力の平均値よりも大きくなる。また、受信信号Rの周波数オフセットがプラス方向のときには、第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力の平均値が第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力の平均値よりも大きくなる。
【0086】
判定部875は、電力比較部8711から入力された信号電力の平均値と、予め設定された電力閾値とを比較し、
図5(B)に示すように、信号電力の平均値が電力閾値以上であるときにCW信号を検出したと判定する。
【0087】
次に上記の実施の形態3におけるバースト検出部87の作用について、
図12のフローチャートに基づいて説明する。
【0088】
バースト検出部87は、直交検波部86からデータフレームDFの受信信号が入力されると、正規化部871が受信信号の振幅を正規化する(ステップS1)。
【0089】
第1の周波数シフト部876Aは、受信信号の周波数を周波数オフセットΔfの1/2だけプラス方向にシフトした第1の周波数シフト信号Rs1を生成する。同様に、第2の周波数シフト部876Bは、受信信号の周波数を周波数オフセットΔfの1/2だけマイナス方向にシフトした第2の周波数シフト信号Rs2を生成する(ステップS10)。
【0090】
バースト検出部87のLPF872Aは、第1の周波数シフト信号Rs1からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、LPF872Bは、第2の周波数シフト信号Rs2からCW信号を抽出して雑音を抑圧する(ステップS2)。
【0091】
バースト検出部87の電力算出部873Aは、LPF872Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力を算出し、平均化部874Aは、電力算出部873Aから入力された信号電力の平均値を算出する。同様に、電力算出部873Bは、LPF872Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力を算出し、平均化部874Bは、電力算出部873Bから入力された信号電力の平均値を算出する(ステップS3)。
【0092】
電力比較部8711は、平均化部874Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力の平均値と、平均化部874Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力の平均値とを比較し、大きい方を判定部875へ出力する(ステップS11)。
【0093】
判定部875は、電力比較部8711から入力された信号電力の平均値と、メモリから読み出して入力された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値よりも大きい場合にCW信号を検出したと判定し、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する(ステップS4)。
【0094】
以上で説明したように、本実施の形態3に係る無線通信システム1によれば、受信信号Rの周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2を生成し、この2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2それぞれについてLPFによりCW信号の抽出を行なうことにより、LPFの帯域幅を従来(実施の形態1)の半分にすることができる。そのため、周波数オフセット耐性を実施の形態1と同等に維持したまま、雑音耐性を向上させることが可能である。また、実施の形態1と同様に、AGCによる受信レベルの調整を待たずに電力閾値を超えるCW信号が検出できるので、受信信号のレベル調整を待つ間に発生していた検出遅延を抑制してバースト通信のスループットを向上させることが可能である。
【0095】
(実施の形態4)
次に、本発明の無線受信装置およびバースト検出方法を用いた実施の形態4に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態4に係る無線通信システムは、実施の形態1と、実施の形態2と、実施の形態3とを組み合わせたものである。すなわち、本実施の形態4のバースト検出部87は、データフレームDFを受信した受信信号の振幅を正規化し、振幅を正規化した受信信号の雑音部分から電力閾値を算出するとともに、受信信号の周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号を生成し、この2種類の周波数シフト信号それぞれについてLPFによるCW信号の抽出を行い、抽出した2種類のCW信号のうち信号電力が大きいほうを電力閾値と比較してバースト検出を行なう。なお、以下では、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3に係る無線通信システム1と同一の構成については、同じ符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0096】
図13は、本実施の形態4に係る無線通信システム1のバースト検出部87の概略構成を示す機能ブロック図である。バースト検出部87は、正規化部(正規化手段)871と、第1の周波数シフト部(第1の周波数シフト手段)876Aと、LPF(第1の信号抽出手段)872Aと、電力算出部(第1の電力算出手段)873Aと、平均化部(第1の電力算出手段)874Aと、第2の周波数シフト部(第2の周波数シフト手段)876Bと、LPF(第2の信号抽出手段)872Bと、電力算出部(第2の電力算出手段)873Bと、平均化部(第2の電力算出手段)874Bと、電力比較部(比較手段)8711と、第3の周波数シフト部(第3の周波数シフト手段)876と、LPF(第3の信号抽出手段)877と、電力算出部(第3の電力算出手段)878と、平均化部(第3の電力算出手段)879と、電力閾値算出部(電力閾値算出手段)8710と、判定部(判定手段)875と、を備える。
【0097】
実施の形態1と同様に、正規化部871は、
図5(B)に示すように、受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、振幅を1に正規化する。
【0098】
図14(A)は、振幅が正規化された受信信号のスペクトラムを示す。第1の周波数シフト部876Aは、
図14(B)に示すように、受信信号の周波数を、受信信号の想定される周波数オフセットΔfの1/2だけプラス方向(第1の方向)にシフトした第1の周波数シフト信号Rs1を生成する。
【0099】
同様に、第2の周波数シフト部876Bは、
図14(D)に示すように、受信信号の周波数を、周波数オフセットΔfの1/2だけマイナス方向(第1の方向とは反対側の第2の方向)にシフトした第2の周波数シフト信号Rs2を生成する。
【0100】
LPF872Aは、
図14(C)に示すように、図中破線で示すフィルタ特性(信号抽出特性)を備えており、第1の周波数シフト信号Rs1からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873Aへ出力する。
【0101】
LPF872Bは、
図14(E)に示すように、図中破線で示すフィルタ特性(信号抽出特性)を備えており、第2の周波数シフト信号Rs2からCW信号を抽出して雑音を抑圧し、電力算出部873Bへ出力する。LPF872Bのフィルタ特性は、LPF872Aと同じフィルタ特性を備えており、その帯域幅はΔfとなっている。
【0102】
電力算出部873Aは、LPF872Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874Aへ出力する。平均化部874Aは、電力算出部873Aにより算出された信号電力の平均値を求め、電力比較部8711へ出力する。
【0103】
上記と同様に、電力算出部873Bは、LPF872Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力を算出し、算出した信号電力を平均化部874Bへ出力する。平均化部874Bは、電力算出部873Bにより算出された信号電力の平均値を求め、電力比較部8711へ出力する。
【0104】
電力比較部8711は、平均化部874Aから入力された第1の周波数シフト信号Rs1の信号電力の平均値と、平均化部874Bから入力された第2の周波数シフト信号Rs2の信号電力の平均値とを比較し、大きい方を判定部875へ出力する。
【0105】
第3の周波数シフト部876は、
図14(F)に示すように、振幅が正規化された受信信号RをLPF877の帯域幅Δfに入らない周波数、例えば、-fsym/4(fsym:シンボル周波数)にシフトして第3の周波数シフト信号Rsを生成する。LPF877は、
図14(G)に破線で示すように、LPF872A、872Bと同じフィルタ特性を有しており、周波数シフト信号Rsから雑音信号を抽出する。
【0106】
電力算出部878は、LPF877から入力された雑音信号の信号電力を算出し、平均化部879は、電力算出部878から入力された信号電力の平均値(以下、雑音電力ともいう)を算出する。
【0107】
電力閾値算出部8710は、実施の形態2と同様に、平均化部879から入力された雑音電力に基づいて電力閾値を算出し、判定部875へ出力する。
【0108】
判定部875は、電力比較部8711から入力された信号電力の平均値と、電力閾値算出部8710から入力された電力閾値とを比較し、信号電力の平均値が電力閾値以上である場合にCW信号を検出したと判定し、検出フラグをタイミング制御部88へ出力する。
【0109】
図15は、上記の実施の形態4におけるバースト検出部87の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図15に示すフローチャートは、
図6に示す実施の形態1の処理手順と、
図9に示す実施の形態2の処理手順と、
図12に示す実施の形態3の処理手順とを組み合わせたものであり、同じ処理については同じ符号を付しているため、詳しい説明は省略する。
【0110】
以上で説明したように、本実施の形態4に係る無線通信システム1によれば、実施の形態1と同様に、AGCによる受信レベルの調整を待たずに電力閾値を超えるCW信号が検出できるので、受信信号のレベル調整を待つ間に発生していた検出遅延を抑制してバースト通信のスループットを向上させることが可能である。
【0111】
また、本実施の形態4に係る無線通信システム1によれば、実施の形態2と同様に、所望のSNRを満たすために必要な電力閾値を雑音電力から算出してバースト検出に用いる。これにより、バースト信号を受信していないときに受信信号の振幅が正規化されてもSNRは低いままなので、誤検出を防ぐことが可能となる。
【0112】
さらに、本実施の形態4に係る無線通信システム1によれば、実施の形態3と同様に、受信信号Rの周波数をシフトして2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2を生成し、この2種類の周波数シフト信号Rs1、Rs2それぞれについてLPFによりCW信号の抽出を行なうことにより、LPFの帯域幅を従来(実施の形態1)の半分にすることができる。そのため、周波数オフセット耐性を実施の形態1と同等に維持したまま、雑音耐性を向上させることが可能である。
【0113】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0114】
例えば、上記の実施の形態では、バースト検出に用いるプリアンブル信号としてCW信号を用いたが、CW信号以外の信号、例えば交番信号などを用いてもよい。この場合、プリアンブル信号からCW信号を省略することができるので、プリアンブル信号のデータ量が小さくなりスループットが向上する。
【符号の説明】
【0115】
1 無線通信システム
2 無線通信装置
5 送信部
8 受信部(受信手段)
87 バースト検出部(バースト検出手段)
871 正規化部(正規化手段)
872、872A LPF(第1の信号抽出手段)
872B LPF(第2の信号抽出手段)
873 電力算出部(電力算出手段)
873A 第1の電力算出部(第1の電力算出手段)
873B 第2の電力算出部(第2の電力算出手段)
874、874A、874B、879 平均化部
875 判定部(判定手段)
876 周波数シフト部(第3の周波数シフト手段)
876A 第1の周波数シフト部(第1の周波数シフト手段)
876B 第2の周波数シフト部(第2の周波数シフト手段)
877 LPF(第3の信号抽出手段)
878 電力算出部(第3の電力算出手段)
8710 電力閾値算出部(電力閾値算出手段)
8711 電力比較部(電力比較手段)
DF データフレーム
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信されたデータフレームを受信して受信信号を出力する受信手段と、
復調された前記受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、前記振幅を1に正規化する正規化手段と、
振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出するバースト検出手段と、
を備えることを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、
前記第1の信号抽出手段により抽出された前記プリアンブル信号の信号電力を算出してその平均値を求める電力算出手段と、
前記プリアンブル信号の信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記プリアンブル信号の信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を第1の方向にシフトして第1の周波数シフト信号を生成する第1の周波数シフト手段と、
前記第1の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第1の信号抽出手段と、
前記第1の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第1の信号電力を算出してその平均値を求める第1の電力算出手段と、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を前記第1の方向とは反対側の第2の方向にシフトして第2の周波数シフト信号を生成する第2の周波数シフト手段と、
前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第2の周波数シフト信号から前記プリアンブル信号を抽出する第2の信号抽出手段と、
前記第2の周波数シフト信号から抽出した前記プリアンブル信号の信号電力である第2の信号電力を算出してその平均値を求める第2の電力算出手段と、
前記第1の信号電力の平均値と、前記第2の信号電力の平均値とを比較し、いずれか大きいほうを出力する電力比較手段と、
前記電力比較手段から出力された信号電力の平均値と、電力閾値とを比較し、前記信号電力の平均値が前記電力閾値よりも大きい場合に、前記プリアンブル信号を検出したと判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記バースト検出手段は、
振幅が正規化された前記受信信号の周波数を、前記第1の信号抽出手段の信号抽出特性の範囲内に入らないようにシフトして第3の周波数シフト信号を生成する第3の周波数シフト手段と、
前記第1の信号抽出手段と同じ信号抽出特性を有し、前記第3の周波数シフト信号から雑音信号を抽出する第3の信号抽出手段と、
前記雑音信号の信号電力を算出してその平均値を求める第3の電力算出手段と、
前記雑音信号の信号電力の平均値に基づいて前記電力閾値を算出する電力閾値算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
バースト送信されたデータフレームの到来を検出するバースト検出方法であって、
データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信された前記データフレームを受信して受信信号を出力し、
復調された前記受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、前記振幅を1に正規化し、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出する、
ことを特徴とするバースト検出方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信されたデータフレームを受信して受信信号を出力する受信手段と、復調された前記受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、前記振幅を1に正規化する正規化手段と、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出するバースト検出手段と、を備えることを特徴とする無線受信装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項5に記載の発明は、バースト送信されたデータフレームの到来を検出するバースト検出方法であって、データ信号の先頭にプリアンブル信号が付加されてバースト送信された前記データフレームを受信して受信信号を出力し、復調された前記受信信号の信号電力の振幅が1未満であるときに、前記振幅を1に正規化し、振幅が正規化された前記受信信号から前記プリアンブル信号を検出することにより、前記データフレームの到来を検出する、ことを特徴とする。