(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151800
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】リニアモータ断線検出装置、リニアモータ駆動制御装置及びリニアモータシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20241018BHJP
H02P 4/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065520
(22)【出願日】2023-04-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1 令和4年8月22日、リニアモータ断線検出装置、リニアモータ駆動制御装置、及びリニアモータシステムに関する資料 2 令和4年9月1日、WEB会議 3 令和5年2月16日、リニアモータ断線検出装置、リニアモータ駆動制御装置、及びリニアモータシステムに関する資料
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】畑 誠
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501DD10
5H501LL22
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置を実現する。
【解決手段】リニアモータ断線検出装置5は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御する1つの駆動制御部14から、複数のリニアモータ2a,2bにそれぞれ供給される電力の差に基づいて、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出する断線検出部15を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を制御する1つの駆動制御部から、前記複数のリニアモータにそれぞれ供給される電力の差に基づいて、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出する断線検出部を有する、
リニアモータ断線検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアモータ断線検出装置において、
前記断線検出部は、
電気的に並列に接続された前記複数のリニアモータにおける同相の電流をそれぞれ検出する電流検出部と、
前記電流検出部によって検出された電流の差が所定値以上の場合に、断線検出信号を生成して出力する断線検出信号生成部と、
を有する、
リニアモータ断線検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリニアモータ断線検出装置において、
前記断線検出部の検出結果に基づいて、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を判定する断線判定部をさらに有する、
リニアモータ断線検出装置。
【請求項4】
電気的に並列に接続された複数のリニアモータに電力を供給して前記複数のリニアモータの駆動を制御する1つの駆動制御部と、
請求項1から3のいずれか一つに記載のリニアモータ断線検出装置と、
を有する、
リニアモータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリニアモータ駆動制御装置と、
電気的に並列に接続され、前記リニアモータ駆動制御装置によって駆動される複数のリニアモータと、
を有する、
リニアモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータの断線を検出するリニアモータ断線検出装置、それを備えたリニアモータ駆動制御装置及びリニアモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送台車システムなどの移動体システムに利用されているリニアモータが知られている。例えば特許文献1には、移動体と、前記移動体の移動経路とを備えている移動体システムが開示されている。前記移動体は、リニアモータシステムによって前記移動経路に沿って移動する。
【0003】
前記リニアモータシステムは、前記移動体を走行させる駆動力を供給する。前記リニアモータシステムは、界磁と、電機子とを備えている。前記界磁は、前記移動経路に設けられている。前記界磁は、極性(N極、S極)が交互に異なるように配列された永久磁石が並んだ構成を有する固定子である。前記電機子は、前記界磁に対して対向配置されている可動子である。前記電機子は、コイル及びコアを備えている。前記コイルは、前記コアの外側に巻き回されている。
【0004】
前記移動体は、前記電機子のコイルに電流を供給する駆動制御部を有する。前記駆動制御部によって前記電機子のコイルに電流が供給されることにより、前記電機子に磁界が発生する。これにより、前記リニアモータシステムの前記界磁及び前記電機子によって、前記移動体を前記移動経路に沿って移動させることができる。
【0005】
なお、前記特許文献1には、前記移動体が、2つのモータに対してそれぞれ電流を供給する2つの駆動制御部を有している点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1のように、駆動制御部によって電機子のコイルに電流が供給されることにより、リニアモータは駆動する。また、前記特許文献1のリニアモータシステムでは、2つのモータに対して2つの駆動制御部からそれぞれ電流が供給される。
【0008】
これに対し、複数のリニアモータのコイルを電気的に並列に接続して、前記複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動させるリニアモータシステムが考えられている。このような構成を有するリニアモータシステムでは、前記駆動制御部の数が少なくなるため、同期制御等が不要になる。
【0009】
しかしながら、前記1つの駆動制御部によって前記複数のリニアモータを駆動させるリニアモータシステムでは、一つのリニアモータ内の配線または前記一つのリニアモータに電力を供給する配線に断線が生じた場合でも、他のリニアモータに電流が流れ続けるため、前記駆動制御部による断線の検出が難しい。
【0010】
本発明の目的は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係るリニアモータ断線検出装置は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を制御する1つの駆動制御部から、前記複数のリニアモータにそれぞれ供給される電力の差に基づいて、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出する断線検出部を有する(第1の構成)。
【0012】
1つの駆動制御部によって、電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を制御することにより、各リニアモータを別の駆動制御部によって駆動制御する場合に比べて、駆動制御部の数を減らすことができる。よって、リニアモータの駆動を制御するリニアモータ駆動制御装置の小型化を図れる。
【0013】
しかも、前記1つの駆動制御部によって、前記複数のリニアモータの駆動を制御することにより、複数の駆動制御部を同期制御させる必要がない。よって、前記複数のリニアモータを容易に駆動制御することができる。
【0014】
そして、上述の構成により、前記1つの駆動制御部によって前記複数のリニアモータの駆動を制御する場合でも、断線検出部によって、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出することができる。
【0015】
したがって、電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置を実現できる。
【0016】
前記第1の構成において、前記断線検出部は、電気的に並列に接続された前記複数のリニアモータにおける同相の電流をそれぞれ検出する電流検出部と、前記電流検出部によって検出された電流の差が所定値以上の場合に、断線検出信号を生成して出力する断線検出信号生成部と、を有する(第2の構成)。
【0017】
これにより、断線検出部は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータにおける同相の電流の差が所定値以上の場合に、複数のリニアモータ内の配線、または、駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線のうち少なくとも一方の配線の断線を検出する信号を出力することができる。よって、前記断線検出部は、前記断線を容易に検出することができる。
【0018】
したがって、電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置を実現できる。
【0019】
前記第1の構成において、リニアモータ断線検出装置は、前記断線検出部の検出結果に基づいて、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を判定する断線判定部をさらに有する(第3の構成)。
【0020】
これにより、リニアモータ断線検出装置は、断線検出部の検出結果に基づいて、断線判定を行うことができる。よって、複数のリニアモータ内の配線、または、駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線をより精度良く検出することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係るリニアモータ駆動制御装置は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータに電力を供給して前記複数のリニアモータの駆動を制御する1つの駆動制御部と、前記第1から第3の構成のうちいずれか一つに記載のリニアモータ断線検出装置と、を有する(第4の構成)。
【0022】
これにより、電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を1つの駆動制御部によって制御するリニアモータ駆動制御装置において、複数のリニアモータ内の配線、または、駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能な構成を実現できる。
【0023】
本発明の一実施形態に係るリニアモータシステムは、前記第1から第3のいずれか一つに記載のリニアモータ駆動制御装置と、電気的に並列に接続され、前記リニアモータ駆動制御装置によって駆動される複数のリニアモータと、を有する(第5の構成)。
【0024】
これにより、電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を1つの駆動制御部によって制御するリニアモータシステムにおいて、複数のリニアモータ内の配線、または、駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能な構成を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態に係るリニアモータ断線検出装置は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータの駆動を制御する1つの駆動制御部から、前記複数のリニアモータにそれぞれ供給される電力の差に基づいて、前記複数のリニアモータ内の配線、または、前記駆動制御部から前記複数のリニアモータに電力を供給する配線の断線を検出する断線検出部を有する。
【0026】
これにより、電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリニアモータ駆動制御装置を含む移動体システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、リニアモータ駆動制御装置の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、差分検出部によって検出される、2つのモータにおいて同相に流れる電流を、差分検出部によって検出した結果の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係るリニアモータ断線検出装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、その他の実施形態に係るリニアモータ駆動制御装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るリニアモータ駆動制御装置1を含む移動体システム100の構成を模式的に示す図である。リニアモータ駆動制御装置1は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御する。複数のリニアモータ2a,2bは、例えば、移動体を搬送する移動体システム100の駆動源として用いられる。この移動体システム100は、複数のリニアモータ2a,2bを有するリニアモータシステム130によって、駆動される。
【0030】
移動体システム100は、例えば、天井走行車によって物品を搬送する搬送システムである。移動体システム100は、軌道110と、搬送台車120と、リニアモータシステム130とを有する。軌道110は、例えば、走行レールなどを含む。軌道110は、設備の天井に設けられている。搬送台車120は、例えば、天井走行車である。搬送台車120は、リニアモータシステム130によって、軌道110に沿って移動可能である。
【0031】
リニアモータシステム130は、リニアモータ駆動制御装置1と、複数のリニアモータ2a,2bとを有する。リニアモータ2a,2bは、それぞれ、界磁21(リニアモータの固定子)と、モータ22a,22b(リニアモータの可動子)とを有する。界磁21は、軌道110に設けられている。界磁21は、極性が交互に異なるように並んだ状態で軌道110に固定された複数の永久磁石を有する。モータ22a,22bは、搬送台車120に設けられている。モータ22a,22bは、電気角が界磁21の磁極と同期するように変化する磁界を生じる。
【0032】
モータ22a,22bは、コイル23と、図示しないコアとを有する。コイル23は、前記コアに巻き回されている。本実施形態では、モータ22a,22bは、三相(U相、V相、W相)のコイル23を有する。以下の説明において、モータ22a,22bのU相のコイル23には、U1,U2の符号を付し、モータ22a,22bのV相のコイル23には、V1,V2の符号を付し、モータ22a,22bのW相のコイル23には、W1,W2の符号を付す。なお、コイル23は、モータ22a,22b内の配線45の一部である。コイル23は、配線41a,41b,42a,42b,43a,43bを介してリニアモータ駆動制御装置1と電気的に接続されている。
【0033】
図1に示すように、本実施形態では、リニアモータシステム130は、2つのリニアモータ2a,2bを有する。よって、搬送台車120には、2つのモータ22a,22bが設けられている。2つのモータ22a,22bは、電気的に並列に接続されている。すなわち、2つのモータ22a,22bにおいて、一方のモータ22aのU相のコイルU1と、他方のモータ22bのU相のコイルU2とは、電気的に並列に接続されている。一方のモータ22aのV相のコイルV1と、他方のモータ22bのV相のコイルV2とは、電気的に並列に接続されている。一方のモータ22aのW相のコイルW1と、他方のモータ22bのW相のコイルW2とは、電気的に並列に接続されている。
【0034】
2つのモータ22a,22bにおいて、U相のコイルU1,U2に電気的に接続される配線41a,41bは、配線41に対して電気的に並列に接続されている。V相のコイルV1,V2に電気的に接続される配線42a,42bは、配線42に対して電気的に並列に接続されている。W相のコイルW1,W2に電気的に接続される配線43a,43bは、配線43に対して電気的に並列に接続されている。配線41,42,43は、それぞれ、リニアモータドライバ10に電気的に接続されている。なお、モータ22a,22b内のU相のコイルU1,U2、V相のコイルV1,V2及びW相のコイルW1,W2は、モータ22a,22b内の配線45に含まれる。
【0035】
図2は、リニアモータ駆動制御装置1の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。
【0036】
リニアモータ駆動制御装置1は、リニアモータドライバ10と、リニアモータ断線検出装置5に含まれる断線検出部15とを有する。よって、リニアモータ駆動制御装置1は、リニアモータ断線検出装置5を含む。本実施形態のリニアモータ断線検出装置5は、断線検出部15を有する。
【0037】
断線検出部15は、配線41a,41b,42a,42b,43a,43bに流れる電流をそれぞれ検出して、2つのモータ22a,22bにおける同相の電流の差分に基づいて、2つのモータ22a,22b内の配線45、または、2つのモータ22a,22bとリニアモータ駆動制御装置1とを接続する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出する。具体的には、断線検出部15は、前記電流の差分を、リニアモータドライバ10に信号として出力する。前記信号は、正常の場合(断線が生じていない場合)、2つのモータ22a,22bにおける同相の電流の差分はほとんど生じないため、一定の信号になる。一方、断線が生じた場合、2つのモータ22a,22bにおける同相の負荷状態が変化して、前記同相には正常時と同様の電流が流れなくなるため、前記同相に流れる電流に差分が生じて、前記信号は、正常時と異なる信号になる。前記信号は、後述する断線判定部13で前記断線を判定するために用いられる。前記信号は、後述する断線検出信号を含む。
【0038】
なお、断線検出部15とリニアモータドライバ10との間の信号の授受は、有線によって行われてもよいし、無線によって行われてもよい。また、断線検出部15は、移動体システム100の図示しないコントローラとの間で信号の授受を行ってもよい。この場合、断線検出部15と前記コントローラとの間の信号の授受は、有線によって行われてもよいし、無線によって行われてもよい。
【0039】
断線検出部15は、電流検出器31~36(電流検出部)と、差分検出部37~39(断線検出信号生成部)とを有する。
【0040】
電流検出器31は、一方のモータ22aのU相のコイルU1に流れる電流を配線41aで検出する。電流検出器32は、一方のモータ22aのV相のコイルV1に流れる電流を配線42aで検出する。電流検出器33は、一方のモータ22aのW相のコイルW1に流れる電流を配線43aで検出する。電流検出器34は、他方のモータ22bのU相のコイルU2に流れる電流を配線41bで検出する。電流検出器35は、他方のモータ22bのV相のコイルV2に流れる電流を配線42bで検出する。電流検出器36は、他方のモータ22bのW相のコイルW2に流れる電流を配線43bで検出する。
【0041】
電流検出器31~36は、それぞれ、検出した電流を、電圧の信号として出力する。電流検出器31,34から出力された信号は、差分検出部37に入力される。電流検出器32,35から出力された信号は、差分検出部38に入力される。電流検出器33,36から出力された信号は、差分検出部39に入力される。なお、電流検出器31~36は、検出した電流を電圧以外の信号として出力してもよい。電流検出器31~36の構成は、従来の電流検出器の構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0042】
差分検出部37~39は、電流検出器31~36によって検出された、2つのモータ22a,22bにおける同相の電流の差分を検出する。詳しくは、差分検出部37は、電流検出器31によって検出されたコイルU1に流れる電流と電流検出器34によって検出されたコイルU2に流れる電流との差分を検出する。差分検出部38は、電流検出器32によって検出されたコイルV1に流れる電流と電流検出器35によって検出されたコイルV2に流れる電流との差分を検出する。差分検出部39は、電流検出器33によって検出されたコイルW1に流れる電流と電流検出器36によって検出されたコイルW2に流れる電流との差分を検出する。
【0043】
差分検出部37~39は、検出した同相の電流の差分が所定値以上の場合に、断線検出信号を出力する。例えば、一方のモータ22a内の配線45、または、一方のモータ22aに電気的に接続される配線41a,41b,42a,42b,43a,43bに断線が生じている場合には、一方のモータ22aに流れる電流と他方のモータ22bに流れる電流との差分が大きくなる。このような場合に、差分検出部37~39は、前記断線検出信号を出力する。前記断線検出信号は、例えば、電圧の信号である。
【0044】
差分検出部37~39は、例えば、交流入力に対応しているフォトカプラである。これにより、差分検出部37~39で前記所定値以上の電流の差分が検出された場合、すなわち、前記断線検出信号が出力される場合に、光で報知することができる。よって、前記電流の差分を容易に把握することができる。なお、差分検出部37~39は、入力される電流の差分を検出可能な構成を有していれば、フォトカプラ以外の構成であってもよい。
【0045】
本実施形態では、差分検出部37~39の出力は、互いに電気的に並列に接続されている。差分検出部37~39は、後述するリニアモータ駆動制御装置1の断線検出部15に電気的に接続されている。差分検出部37~39のうち一つの差分検出部でも前記断線検出信号を出力すると、断線判定部13に前記断線検出信号が入力される。
【0046】
リニアモータドライバ10は、2つのリニアモータ2a,2bの駆動を制御するとともに、2つのリニアモータ2a,2b内の配線45及び2つのモータ22a,22bとリニアモータ駆動制御装置1とを接続する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を判定する。リニアモータドライバ10は、駆動部11と、制御部12と、断線判定部13とを有する。駆動部11及び制御部12によって、本発明の駆動制御部14が構成される。すなわち、リニアモータドライバ10は、駆動制御部14を有する。
【0047】
駆動部11は、2つのリニアモータ2a,2bに対して電力を供給する、インバータなどの電力変換回路を含む。特に図示しないが、駆動部11は、前記電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子を有する。制御部12は、駆動部11における複数のスイッチング素子の駆動(ONまたはOFF)を制御する。
【0048】
駆動部11には、2つのリニアモータ2a,2bに含まれる2つのモータ22a,22bにおける、U相コイルU1,U2、V相コイルV1,V2及びW相コイルW1,W2が、配線41a,41b,42a,42b,43a,43b,41,42,43を介して電気的に接続されている。よって、駆動部11から出力された電力は、2つのモータ22a,22bのU相コイルU1,U2、V相コイルV1,V2及びW相コイルW1,W2にそれぞれ供給される。
【0049】
断線判定部13は、断線検出部15から出力される信号に基づいて、2つのモータ22a,22b内の配線45及び2つのモータ22a,22bとリニアモータ駆動制御装置1とを接続する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を判定する。具体的には、断線判定部13は、断線検出部15から断線検出信号が出力された場合に、配線45,41a,41b,42a,42b,43a,43bのいずれかが断線していると判定する。すなわち、断線判定部13は、断線検出部15によって検出される、2つのモータ22a,22bにおいて同相に流れる電流の差分が、所定値以上の場合に、配線45,41a,41b,42a,42b,43a,43bのいずれかに断線が生じたと判定する。
【0050】
図3は、断線検出部15によって検出される、2つのモータ22a,22bにおいて同相に流れる電流を、断線検出部15によって検出した結果の一例を示す図である。なお、
図3は、電流検出器31~36のうち同相の電流を検出する一対の電流検出器の出力(電圧)の時系列変化の一例を示している。
【0051】
図3に示すように、2つのモータ22a,22bのうち、例えば一方のモータ22aに断線が生じた場合、2つのモータ22a,22bにおいて同相に流れる電流に差が生じる。断線検出部15は、前記電流の差が所定値以上の場合に、
図3に示すパルス状の断線検出信号を出力する。前記所定値は、
図3に示す電流検出器出力の差がDに相当する。
【0052】
断線判定部13は、断線検出部15から出力される前記断線検出信号の立ち上がりを検出した後、立ち下がりを検出し、再び立ち上がりを検出した際に、2つのモータ22a,22b内の配線45、または、2つのモータ22a,22bとリニアモータ駆動制御装置1とを接続する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bに断線が生じたと判定する。
【0053】
なお、断線判定部13は、前記断線検出信号の立ち上がりを検出した際に、前記断線が生じたと判定してもよいし、前記断線検出信号の立ち上がりを検出した後、立ち下がりを検出した際に、前記断線が生じたと判定してもよい。断線判定部13が前記断線検出信号に基づいて前記断線を判定するタイミングは、前記断線検出信号のいずれのタイミングであってもよい。
【0054】
断線判定部13は、3つの差分検出部37~39の少なくとも一つから前記断線検出信号が出力された場合に、前記断線を検出する。
【0055】
断線判定部13は、前記断線が生じたと判定した場合に、断線信号を出力する。前記断線信号は、制御部12に出力されてもよいし、リニアモータ駆動制御装置1以外の装置に出力されてもよい。なお、制御部12は、断線判定部13によって断線が生じたと判定された場合に、それに合わせて、リニアモータの駆動制御を変えてもよい。
【0056】
以上より、本実施形態のリニアモータ断線検出装置5は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御する1つの駆動制御部14から、複数のリニアモータ2a,2bにそれぞれ供給される電力の差に基づいて、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出する断線検出部15を有する。
【0057】
以上の構成により、断線検出部15によって、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出することができる。よって、1つの駆動制御部14によって複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御する場合でも、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出することができる。
【0058】
このように、1つの駆動制御部14によって、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御することにより、各リニアモータを別の駆動制御部によって駆動制御する場合に比べて、駆動制御部の数を減らすことができる。よって、リニアモータ駆動制御装置1の小型化を図れる。
【0059】
しかも、1つの駆動制御部14によって、複数のリニアモータ2a,2bの駆動を制御することにより、複数の駆動制御部を同期制御させる必要がない。よって、複数のリニアモータ2a,2bを容易に駆動制御することができる。
【0060】
そして、上述の構成により、複数のリニアモータ2a,2bを1つの駆動制御部14によって駆動制御する場合に、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出可能な構成を実現できる。
【0061】
また、本実施形態では、断線検出部15は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bにおける同相の電流をそれぞれ検出する電流検出器31~36と、電流検出器31~36によって検出された電流の差が所定値以上の場合に、断線検出信号を生成して出力する差分検出部37~39と、を有する。
【0062】
これにより、断線検出部15は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータ2a,2bにおける同相の電流の差が所定値以上の場合に、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出する信号を出力することができる。よって、断線検出部15は、前記断線を容易に検出することができる。
【0063】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係るリニアモータ断線検出装置205の構成を模式的に示す図である。本実施形態のリニアモータ断線検出装置205は、断線判定部213を有する点で、実施形態1のリニアモータ断線検出装置5とは異なる。以下では、実施形態1と異なる構成についてのみ説明し、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図4に示すように、リニアモータ断線検出装置205は、実施形態1の断線検出部15と同様の構成を有する断線検出部215に加えて、実施形態1の断線判定部13と同様の構成を有する断線判定部213を有する。なお、リニアモータ駆動制御装置201は、リニアモータ断線検出装置205と、リニアモータドライバ210とを有する。
【0065】
これにより、リニアモータ断線検出装置205は、断線検出部215だけでなく、断線判定部213も有する。したがって、リニアモータ断線検出装置205は、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を検出して判定することができる。
【0066】
しかも、リニアモータ断線検出装置205が断線検出部215及び断線判定部213を有するため、リニアモータ断線検出装置205をユニット化することができる。これにより、リニアモータ断線検出部205を、既存のリニアモータ駆動制御装置に後付けすることができる。しかも、上述のようにリニアモータ断線検出装置205をユニット化することにより、リニアモータ断線検出装置205の断線判定部213の判定結果を移動体システム100に直接出力することができる。よって、断線が生じた場合に、移動体システム100の稼働状況に応じて搬送台車120の駆動を適切に制御することができる。
【0067】
なお、断線検出部215または断線判定部213は、リニアモータドライバ210との間で信号の授受を行ってもよい。断線検出部215または断線判定部213とリニアモータドライバ210との間の信号の授受は、有線によって行われてもよいし、無線によって行われてもよい。また、断線検出部215の信号を移動体システム100に出力する場合や、上述のように断線判定部213の判定結果を移動体システム100に直接出力する場合、断線検出部215または断線判定部214と移動体システム100のコントローラとの間の信号の授受は、有線によって行われてもよいし、無線によって行われてもよい。
【0068】
リニアモータ断線検出装置205は、断線検出部215の検出結果に基づいて、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線を判定する断線判定部213をさらに有する。
【0069】
これにより、リニアモータ断線検出装置205は、断線検出部215の検出結果に基づいて、断線判定を行うことができる。よって、複数のリニアモータ2a,2b内の配線45、または、駆動制御部14から複数のリニアモータ2a,2bに電力を供給する配線41a,41b,42a,42b,43a,43bの断線をより精度良く検出することができる。
【0070】
なお、特に図示しないが、リニアモータシステムが、上述のリニアモータ駆動制御装置201を有していてもよい。
【0071】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0072】
前記実施形態1では、リニアモータ駆動制御装置1は、リニアモータ断線検出装置5を有する。しかしながら、リニアモータ断線検出装置は、既存のリニアモータ駆動制御装置に後付け可能なようにユニット化されていてもよい。
【0073】
前記各実施形態では、リニアモータ駆動制御装置1,201は、リニアモータ断線検出装置5,205を有する。しかしながら、リニアモータ断線検出装置は、リニアモータ駆動制御装置と別の装置であってもよい。また、リニアモータ断線検出装置は、リニアモータに一体に設けられていてもよい。
【0074】
前記各実施形態では、1つの駆動制御部14が、電気的に並列に接続された2つのリニアモータ2a,2bの駆動を制御する。しかしながら、1つの駆動制御部が、3つ以上のリニアモータの駆動を制御してもよい。
【0075】
前記各実施形態では、リニアモータ駆動制御装置1,201は、断線判定部13,213を有する。しかしながら、リニアモータ駆動制御装置は、断線判定部を有していなくてもよい。また、実施形態2において、リニアモータ断線検出装置が、断線判定部を有していなくてもよい。
【0076】
前記各実施形態では、断線検出部15,215は、差分検出部37,38,39における同位相の電流の差分を断線判定部13,213に出力する。しかしながら、断線検出部の各差分検出部から断線判定部に、電流の差分に関する信号を出力してもよい。この場合、前記断線判定部は、各差分検出部から出力された信号を個別に検出してどの相が断線したかを判定するような論理回路を有していてもよい。この場合のリニアモータ駆動制御装置の構成例を、
図5に示す。
図5では、リニアモータ駆動制御装置を符号301で示し、リニアモータドライバを符号310で示し、断線判定部を符号313で示す。
【0077】
図5に示すように、差分検出部37,38,39から断線判定部313に信号が入力される。断線判定部313は、差分検出部37,38,39から入力された信号に基づいて、どの相で断線が生じたかを判定する。例えば、断線判定部313は、差分検出部37,38,39から入力された信号のうち或る相に対応する信号が閾値以下の場合や断線検出信号の立ち上がりを検出した場合には、その相で断線が生じたと判定する。なお、
図5は、実施形態1の構成に上述の構成を適用している例を示しているが、実施形態2の構成に、上述の構成を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電気的に並列に接続された複数のリニアモータを1つの駆動制御部によって駆動制御する場合に、リニアモータ内の配線、または、前記リニアモータに電力を供給する配線の断線を検出可能なリニアモータ断線検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、201、301 リニアモータ駆動制御装置
2a、2b リニアモータ
5、205 リニアモータ断線検出装置
10、210、310 リニアモータドライバ
11 駆動部
12 制御部
13、213、313 断線判定部
14 駆動制御部
15、215 断線検出部
21 界磁
22a、22b モータ
23 コイル
31、32、33、34、35、36 電流検出器(電流検出部)
37、38、39 差分検出部(断線検出信号生成部)
41、41a、41b、42、42a、42b、43、43a、43b、45 配線
100 移動体システム
110 軌道
120 搬送台車
130 リニアモータシステム
U1、U2 U相のコイル
V1、V2 V相のコイル
W1、W2 W相のコイル