(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151805
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】曲げ衝撃試験用のパンチ、曲げ衝撃試験装置、及び曲げ衝撃試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20241018BHJP
G01M 7/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N3/30 N
G01M7/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065526
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB04
2G061BA04
2G061DA01
(57)【要約】
【課題】種々の衝突形態を対象とした曲げ衝撃試験を、簡易な構成で、より精度よく再現可能な曲げ衝撃試験を提供可能とする。
【解決手段】評価部材7に荷重を負荷する曲げ衝撃試験用のパンチ1であって、上記評価部材7への当接部が、周面側を上記評価部材7側に向けた複数の管状中空体3で構成された曲げ衝撃試験用のパンチ1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価部材に荷重を負荷する曲げ衝撃試験用のパンチであって、
上記評価部材に荷重を負荷する当接部が、周面側を上記評価部材側に向けた複数の管状中空体で構成された、
曲げ衝撃試験用のパンチ。
【請求項2】
上記複数の管状中空体は、上記評価部材の上記荷重が負荷される面と対向する面に沿って配列している、
請求項1に記載した曲げ衝撃試験用のパンチ。
【請求項3】
板状の基台部を備え、
上記各管状中空体は、上記基台部の上記評価部材側の面である一方の面から、当該評価部材に向けて突出し、
上記基台部の上記一方の面と反対側を向く面側に、上記当接部に荷重を伝達する荷重伝達部材の先端部が、着脱可能に連結する構造となっている、
請求項1に記載した曲げ衝撃試験用のパンチ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の曲げ衝撃試験用のパンチを備える、
曲げ衝撃試験装置。
【請求項5】
評価部材に当接する当接部が複数の管状中空体からなるパンチを用いて、上記評価部材に荷重を負荷する、
曲げ衝撃試験方法。
【請求項6】
上記複数の管状中空体の配置位置、各管状中空体の強度、各管状中空体の剛性、各管状中空体の断面形状、及び上記管状中空体の本数のうちから選択した1つ以上の条件を変更することで、上記パンチによる上記評価部材への入力を制御する、
請求項5に記載した曲げ衝撃試験方法。
【請求項7】
上記評価部材への目標とする入力に応じて、上記複数の管状中空体の配置位置、各管状中空体の強度、各管状中空体の剛性、各管状中空体の断面形状、及び上記管状中空体の本数のうちから選択した1つ以上の条件を調整し、調整後の上記パンチを用いて曲げ衝撃試験を行う、
請求項5に記載した曲げ衝撃試験方法。
【請求項8】
上記評価部材は、自動車の車体構造部材であり、
上記目標とする入力を、上記自動車の衝突試験で上記車体構造部材に生じる曲げ変形の形態を再現可能な入力とする、
請求項7に記載した曲げ衝撃試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価部材の曲げ衝撃試験に関する技術である。本発明は、特に、自動車用の車体構造部材の曲げ衝撃試験など、衝突吸収用の部材を評価部材とした曲げ性能評価に好適な技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野では、乗員保護の観点から衝突安全基準の厳格化が進められている。そして、自動車分野では、高強度鋼の適用拡大や衝突安全性能に優れる車両開発が、強く求められている。そのため、各自動車会社では、衝突安全性に優れた車体設計のため、車体1台を使用したフルカー(実車)での衝突試験が行われる。
しかし、車両を構成するモジュール部材単位での設計の段階においては、部材単位での評価に落とし込んだ評価試験により、その部材の評価を行うことが多い。その理由は、コスト及び納期の削減のためである。また、その理由は、評価対象の単純化のためである。
【0003】
部材単位での評価試験を行う上で、その評価試験の方法が、実際のフルカーの衝突試験と同様な拘束条件や変形モードで実施できるか否かが重要である。
【0004】
ここで、自動車の衝突時における、自動車部材(車体構造部材)の衝突変形形態は、曲げ圧壊と軸圧壊とに大別される。曲げ圧壊は、部材の軸方向が曲げ変形を伴う衝突変形形態である。軸圧壊は、部材の軸方向に荷重を受け変形する衝突変形形態である。上記2つの衝突変形形態のうち、曲げ圧壊での変形は、構造部材の軸方向に対し垂直方向から衝突荷重が負荷されることで、構造部材の断面が塑性変形する変形モードである。このような変形モードは、自動車の側面衝突におけるBピラーやドアインパクトビームといった車体構造部材で発生する。
【0005】
部材単位で、このような変形モードの評価試験を行う場合、例えば、3点曲げ衝撃試験等が採用される。ドアインパクトビームのような長尺の部材では、側面衝突時に、弓なりに変形した後に、曲げ圧壊が発生する。そのため、部材単位で試験を行う際は、部材の支持点に対して並進や回転の拘束を適切に付与して、曲げ圧壊の評価を行う。その簡便な評価方法としては、曲げ圧壊時の発生荷重により評価する試験方法がある。その方法は、例えば、評価部材両端部を回転支持した状態で行う方法である。且つ、その方法は、評価部材の長手方向中央部をパンチで押し込むことで、曲げ荷重を付与する方法である。この評価方法によって、曲げ圧壊に至るまでの荷重の評価が行えると考えられる。
【0006】
ここで、評価部材に当接するパンチ形状(先端部形状)が、半球形状や円筒形状などの単純な断面円弧形状の場合を考える。この場合、評価部材の変形モードは、パンチによる荷重が、評価部材の1点に集中して負荷されることで曲げ圧壊に至るモードが多いと考えられる。
【0007】
しかし、車体構造部材は、側面衝突時の乗員への傷害を低減する手段が施された状態で、車両に組み込まれる。このため、単純形状のパンチで3点曲げ衝撃試験を行う場合、実際のフルカーの衝突試験と同様な変形モードでの評価試験とならないおそれがある。
ここで、フルカーでの側面衝突を模した衝突試験は、車体側方からバリア台車を衝突させることで行われる(
図5(a)参照)。この場合、ドアインパクトビームは、バリア台車から受ける荷重を広範囲に分散させて曲げ圧壊しないように構成されている。その理由は、1点の荷重集中によりドアインパクトビームを曲げ圧壊させた場合、乗員に対してドアの侵入速度が増加し、乗員傷害値の増加につながるためである。
【0008】
したがって、ドアインパクトビームのような車体構造部材を評価部材とした場合、次のようなことが再現できるような試験方法の工夫が必要である。すなわち、荷重入力時に、実車状態で評価部材に加わる入力(せん断力やモーメント等)の状態を再現できるような試験方法の工夫が必要である。
【0009】
そのような工夫を有する試験方法として、特許文献1や特許文献2に記載の方法がある。
特許文献1では、評価部材の両端部にアクチュエーターによる引張荷重を付与した状態で、当該評価部材に断面円弧状のパンチで曲げ荷重を負荷する方法が提案されている。これによって、特許文献1では、フルカーでのドアインパクトビームへの入力を再現する。
【0010】
また、特許文献2では、ドアインパクトビーム等の長尺の部材に対し、試験片の上面を覆う剛体を追加して負荷する方法が提案されている。これによって、特許文献2では、フルカーでの入力を再現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-194446号公報
【特許文献2】特開2017-116494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の方法では、評価部材に対し、軸方向に向けた引張力を負荷する。このために、特許文献1の方法は、アクチュエーターや回転拘束治具といった大掛かりな設備を必要とする。この結果、特許文献1では、導入のコストが高くなり、その実施機会が制限される可能性が高いと考えられる。
また、特許文献1の方法は、評価部材の長手方向の一カ所に断面円弧状のパンチで荷重を負荷する構成である。このため、特許文献1の方法が対象としている側面衝突形態は、一カ所に荷重が集中して衝撃が入力されるような、Pole側面衝突の再現のみである(
図5(b)参照)。すなわち、特許文献1の方法では、車体側方から、所定の衝突面を有するバリア台車が衝突するような入力条件を再現することができない。なお、所定の衝突面は、パンチの当接部における、評価部材に接触する面に相当する。
【0013】
また、特許文献2は、試験片の上面を覆う剛体と共に評価することが前提となっている。このため、特許文献2の方法では、実際の自動車部材のような複雑な部材形状に対応しようとした場合、上面を覆う剛体の形状が制限されることが考えられる。したがって、特許文献2の方法では、種々の衝突条件による入力状態の変化の再現に対応し難いおそれがある。
【0014】
また、特許文献2に記載の4点曲げ衝撃試験では、パンチを構成する剛体に対し、評価部材の長手方向に離れた2点に凸部若しくは接触部からなる当接部を有する。そして、その2点の当接部で評価部材に当接して、当該評価部材に荷重を伝達する構成となっている。しかし、特許文献2に記載の当接部は剛体である。このため、評価部材は、その当接部が当接した部分に局所的に入力荷重が集中してしまい、バリア台車側面衝突による入力状態の再現ができないおそれがあるという課題もある。
【0015】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、種々の衝突形態を対象とした曲げ衝撃試験を、簡易な構成で、より精度よく再現可能な曲げ衝撃試験を提供可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者は、パンチの当接部を変形可能な構成とすることで、評価部材に掛かる荷重が広範囲に分散して、1点への荷重集中を抑えることが可能となる、との知見を得た。そして、発明者は、入力する荷重が金属体への曲げ衝撃荷重であることを考慮しつつも、簡易な構成で、入力する荷重の制御が可能な手段を種々検討して、本発明を成した。
【0017】
そして、課題解決のために、本発明の一態様は、評価部材に荷重を負荷する曲げ衝撃試験用のパンチであって、上記評価部材に荷重を負荷する当接部が、周面側を上記評価部材側に向けた複数の管状中空体で構成された曲げ衝撃試験用のパンチである。
また、本発明の態様は、評価部材に当接する当接部が複数の管状中空体からなるパンチを用いて、上記評価部材に荷重を負荷する、曲げ衝撃試験方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、パンチの評価部材への当接部(荷重入力部)が管状中空体から構成される。そして、評価部材への荷重入力に応じて、当接した管状中空体の断面が変形する。このため、当接部での入力荷重の集中が自動的に緩和して、荷重分散が発生する。この結果、本発明の態様によれば、評価部材を広い面積で曲げ変形するように制御できる。また、例えば、実際の自動車での衝突試験時に構造部材に発生する衝突変形モードに近い評価を、部材単体に対し行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明の態様によれば、パンチの当接部を鋼管等の管状中空体から構成することで、パンチ当接時の荷重入力の調整が容易となり、簡易な構成で、種々の衝突条件に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係るパンチを示す斜視図である。
【
図2】本発明に基づく実施形態に係るパンチを示す図である。(a)は、評価部材側から見た平面図、(b)は断面図である。
【
図4】評価部材の例を示す図である。(a)は上面図、(b)はA-A断面図である。
【
図5】フルカー(実車)での側面衝突試験を示す模式図である。(a)はバリア台車での衝突試験を、(b)はポール(剛体)での衝突試験を示す図である。
【
図6】比較の衝撃試験でのひずみ分布の例を説明する図である。
【
図7】フルカー衝突試験でのひずみ分布の例を説明する図である。
【
図8】比較の衝撃試験及びフルカー衝突試験でのモーメント線図を示す図である。
【
図9】パンチでの衝突状態を示す模式図である。(a)は比較のパンチの例である。(b)は仮想パンチの例である。
【
図10】仮想パンチでのひずみ分布の例を説明する図である。
【
図11】仮想パンチでのモーメント線図を示す図である。
【
図12】改善曲げ衝撃試験でのひずみ分布の例を説明する図である。
【
図13】改善曲げ衝撃試験でのモーメント線図を示す図である。
【
図14】強度及び間隔変更時のひずみ分布の例を説明する図である。
【
図15】強度及び間隔変更時のモーメント線図を示す図である。
【
図16】当接部調整時のモーメント線図を示す図である。
【
図18】実施例における、評価部材の組成を示す図である。
【
図19】実施例の結果を示す図である。(a)は実施例の試験結果を、(b)は比較例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、評価部材として自動車用の車体構造部材を想定して説明する。しかし、本発明は、自動車用の車体構造部材以外の部材に対する、曲げ衝撃試験にも適用可能である。
評価部材は、短冊状などの平板形状でも良い。しかし、曲げ衝撃を評価するため、評価部材は、成形品を模した立体形状に加工されていることが好ましい。
【0022】
曲げ衝撃試験は、評価部材(試験片)の長手方向両端部側をそれぞれ支持部材で支持させた状態で、当該評価部材の長手方向中央部をパンチで押し込む。すなわち、曲げ衝撃試験は、パンチの先端部で評価部材を押し込むことで荷重を入力して、評価部材を曲げ変形させる衝撃試験である。なお、パンチの押し込みには、定速度でストロークさせる静的な方法と、加速を付けてパンチをストロークさせる動的な方法とがある。本発明は、どちらのストローク方法にも適用可能である。
なお、本実施形態の特徴の一つは、パンチにおける、評価部材に接触する当接部の構造にある。
【0023】
(パンチ1)
本実施形態のパンチ1は、評価部材に荷重を負荷する曲げ衝撃試験用のパンチである。
本実施形態のパンチ1は、
図1及び
図2に示すような構成となっている。本実施形態のパンチ1は、パンチ本体と、パンチ本体の裏面側に設けられた土台部4とを備える。
【0024】
<パンチ本体>
パンチ本体は、板状の基台部2と、基台部2の一方の面2A側に設けられた当接部とを備える。一方の面2A側が、評価部材と対向する面となる。
当接部は、基台部2の一方の面2Aから評価部材側に突出する複数の突出部で構成される。
本実施形態では、当接部を構成する各突出部が、それぞれ管状中空体3から構成される。その複数の管状中空体3は、基台部2の面2Aに沿って配列する。本例では、複数の管状中空体3が、間隔を開けて一方向に向けて並んで配置される。本例では、この複数の管状中空体3の軸心はそれぞれ互いに平行となるように配置している。また、基台部2の面2Aが、評価部材の荷重が負荷される面と対向する面を構成する。評価部材の荷重が負荷される面と対向する面は、仮想平面であってもよい。
【0025】
[基台部2]
基台部2の一方の面2Aには、各管状中空体3の配置位置を位置決めするための複数状の切欠き2Aaが形成されている。各切欠き2Aaは、管状中空体3の並び方向に直交する方向に延びている。
図1では、断面三角形状の切欠き2Aaが例示されている。しかし、管状中空体3を位置決め可能であれば、切欠き2Aaの断面形状に制限はない。
また、基台部2には、固定される管状中空体3(突出部)と干渉しない位置に、板厚方向に貫通する2以上の貫通穴2Bが開口している。
【0026】
[管状中空体3]
各管状中空体3は、基台部2の切欠き2Aaからなる溝に位置決めされている。すなわち、管状中空体3の軸が切欠き2Aaの延在方向と同方向に向けた状態となっている。その状態で、管状中空体3の周面(外径面)が、基台部2の各切欠き2Aaに固定されている。管状中空体3の切欠き2Aaへの固定は、例えば溶接にて行われている。
図1では、基台部2から突出する当接部としての管状中空体3が、3本の場合を例示している。管状中空体3の数は、2本でも良いし、4本以上でも良い。
【0027】
本実施形態の管状中空体3は、鋼管などの金属製のパイプから構成されている。曲げ衝撃試験を行うパンチであるため、当接部である管状中空体3には所定の剛性が要求される。このため、管状中空体3は金属製とした。
ここで、管状中空体3は、管状中空体3の断面中心が、基台部2の一方の面2Aよりも評価部材側(押圧側)に変位した状態で、当該基台部2に固定されていることが好ましい。このように、断面中心を基台部2の一方の面2Aよりも突出させた状態とすることで、管状中空体3は、荷重に応じて断面変形しやすくなる。
【0028】
また、本実施形態の管状中空体3は、断面円形の中空体を例示している。管状中空体3の断面は、断面円形以外の多角形形状等でもよい。しかし、円形や楕円形など、円周方向に沿って角部が無い形状が好ましい。
また、管状中空体3がパイプから構成されることが、簡易で好ましい。しかし、管状中空体に、パイプを縦割りしたような、断面円弧形状などの部品を使用しても良い。この場合、円弧の凸方向を評価部材側に向けた状態で、円弧形状に沿った左右両端部を基台部2に固定する。これによって、基台部2と断面円弧形状の部材との間に、管状中空部が形成されることで、管状中空体が構成される。
【0029】
<土台部4>
土台部4は、基台部2の裏面側に設けられる板状部材である。土台部4は、パンチ本体の剛性を高める補剛板でもある。また土台部4は、パンチ本体を、荷重伝達部の先端部に連結する連結部の役割も有する。
土台部4は、基台部2に対し着脱可能に連結する構成となっている。このために、土台部4は、基台部2の貫通穴2Bと同軸に開口した貫通穴4Cを有する(
図2(b)参照)。なお、土台部4は、複数種類のパンチ本体を連結可能なように、複数の貫通穴を有する。
また、土台部4における、基台部2側とは反対側の面4Bには、荷重伝達部5の先端部を位置決めするための凹部4Baが形成されている(
図2(b)参照)。
【0030】
そして、ボルト(不図示)を、基台部2の一方の面2A側から、基台部2の貫通穴2Bに通す。更に、基台部2の貫通穴2Bと土台部4の貫通穴4Cを貫通したボルトの先端部を、荷重伝達部5の先端部に設けた雌ネジに螺合する。これによって、パンチ1は、荷重伝達部5に着脱可能に連結する。
荷重伝達部5の他端部は、荷重を発生するアクチュエーターとしてのシリンダ装置のロッドに連結して用いられる。
【0031】
ここで、突出部(当接部)を構成する管状中空体3は、評価部材が高強度になるほど、評価時に多く変形することが予想される。したがって、曲げ衝撃試験を実行することで、パンチ本体の管状中空体3が塑性変形した際は、パンチ本体の交換が必要となる。本実施形態では、コスト低減のため、当接部となる管状中空体3を有する基台部2を、土台部4と着脱可能な構造とした。本実施形態では、この2つの部位2、4はボルト等で拘束されており、管状中空体3が塑性変形した場合には突出形状を有する部位のみ交換が可能な構成となっている。
【0032】
また、複数条件での曲げ衝撃試験を実施する場合には、管状中空体3の強度や剛性、管状中空体3の配置(突出間隔、突出量など)、当接部を構成する管状中空体3の本数の少なくとも1つの条件が異なる、複数種類のパンチ本体を用意して、各曲げ衝撃試験に使用すれば良い。
【0033】
(曲げ衝撃試験装置)
本実施形態の曲げ衝撃試験装置は、
図3に示すように、上記説明した本実施形態のパンチ1と、左右の支持部6とを備える。左右の支持部6は、評価部材7(試験片)の長手方向両端部側を支持する。パンチ1は、評価部材7(試験片)に向けてストローク可能に構成される。
曲げ衝撃試験装置は、評価部材7の長手方向両端部を左右の支持部6で支持させた状態で、評価部材7の長手方向途中部に、パンチ1の当接部を当接させる。続いて、当該パンチ1を押し込み方向に更にストロークさせる。この例では、パンチ1の当接部となる管状中空体3の軸心は、評価部材7の荷重が負荷される評価基準面とは平行となる位置関係としている。また、パンチ1の当接部となる管状中空体3の軸心は、評価部材7の長手方向とは直角となる位置関係としている。
なお、支持部6による評価部材7の端部の支持方法は、回転支持でも固定支持でも良い。支持方法は、3点曲げ試験で用いられる公知の支持方法を適宜適用すればよい。
【0034】
パンチ1からの荷重入力の初期は、
図3に示すように、基台部2の面から突出した複数の管状中空体3の各周面(外径面)が評価部材7の上面に当接した状態となる。
この状態から、荷重伝達部5を介してパンチ1の当接部から評価部材7に荷重を入力する。このとき、パンチ1の評価部材7への押し込みにつれて、複数の管状中空体3から評価部材7に衝撃荷重(衝撃負荷)が入力される。これによって、パンチ1を用いた曲げ衝撃試験が実行される。
【0035】
曲げ衝撃試験は、パンチ1の押し込み(ストローク)を、例えば、評価部材7が曲げ座屈に至るまで実行する。そして、曲げ衝撃試験は、例えば、その曲げ座屈に至るまでに評価部材7に発生するせん断力やモーメント分布などや、曲げ座屈の際に発生するせん断力やモーメント分布などで、評価部材7を評価する。
【0036】
ここで、当接部を構成する管状中空体3の強度や剛性、隣り合う管状中空体3間の間隔、各管状中空体3の基台部2からの突出量、管状中空体3の本数などを調整すると良い。その調整は、例えば、車両衝突の衝撃により評価部材7に発生させる目標値に応じて調整すると良い。目標値は、例えば、実車での側面衝突時に評価部材7に発生するであろう、曲げモーメントやひずみ分布である。すなわち、入力する目標値は、自動車の衝突試験で、その自動車に組み込まれた評価部材7に対応する車体構造部材に生じる、曲げ変形の形態を再現可能な入力条件とする。すなわち、目標とする入力を、自動車の衝突試験で車体構造部材に生じる曲げ変形の形態を再現可能な入力とする。そして、例えば、後述のように、CAE解析で、対象とする曲げ変形の形態で発生する曲げモーメント、モーメント分布などを求め、その求めた曲げモーメント、モーメント分布などに近似した状態を再現可能なパンチ1による入力条件とする。
(作用)
【0037】
本実施形態の曲げ衝撃試験について、CAE解析で評価した。そして、CAEを用いて、評価部材7に対して目標とする曲げモーメント、モーメント分布範囲を達成するパンチの仕様を検討した。その検討結果に基づき、管状中空体3の位置、形状、強度等を決定した。
【0038】
ここでは、評価部材7として、
図4に示すような、ドアインパクトビームを模した試験片を用いた。試験片の材料組成は、後述の
図18と同じ条件とした。また、各管状中空体3として鋼管を例示した。その鋼管として、引張強度1.5GMPa級Φ34を採用した。
【0039】
本例の管状中空体3は鋼管からなる。これによって、本例では、パンチの当接部(荷重入力部)は、剛体ではなく、変形体から構成される。これによって、パンチ1の当接部からの荷重の入力状態の制御が容易となる。
評価部材7に当接する当接部を剛体にした場合、当接部が当接した評価部材の箇所に大きな荷重集中が発生する。このため、パンチによる入力の制御が困難になる。これに対し、本実施形態のように、荷重入力部(当接部)を変形体構造とすることで、当接部が当接する当接部位置での荷重集中が緩和する。この結果、より大きな面での荷重の入力が可能となり、バリア台車側面衝突による入力の再現精度がより高くなる。また、2本以上の管状中空体3で当接部を構成することで、より荷重入力の面が増大し、よりバリア台車側面衝突による入力が再現可能となる。
また、管状中空体3を金属製とすることで、所定の荷重を伝達しながら変形させることが可能となる。
【0040】
なお、当接部からの荷重の入力は、評価部材7への衝撃負荷となる。その衝撃負荷としては、直接の入力荷重と、その荷重入力で評価部材7に発生するモーメントやひずみ分布が例示できる。
【0041】
ここで、
図5(a)は、実車両10を用いたバリア台車11を用いた側面衝突試験のイメージ図である。この例では、車体側面に対し、先端部に大きな面積を有する衝突体12を車体側面に衝突させることで試験が行われる。また、
図5(b)は、車体側面に対する、剛体からなるポール13の衝突によるポール衝突試験のイメージ図である。本実施形態の曲げ衝撃試験は、主にバリア台車側面衝突試験を再現可能な技術である。もっとも、本実施形態の曲げ衝撃試験は、ポール衝突の衝突試験も再現可能である。
【0042】
以下の例では、3本の管状中空体3で当接部を構成する場合を例示する。
ここで、当接部の荷重の入力は、評価部材7への衝撃負荷となり、その衝撃負荷としては、直接の入力荷重と、その荷重入力で評価部材7に発生するモーメントが例示できる。そして、上述のように、鋼管の強度、鋼管の配置(突出間隔、突出量)、当接部を構成する鋼管の本数によって、その入力や入力のタイミングの制御が可能である。
【0043】
<比較の解析例>
CAEを用いて、フルカーを用いた衝突試験と、比較の衝撃試験とにおける、評価部材7を構成するドアインパクトビームへの入力を調査した。フルカーを用いた衝突試験は、実車10の側面にバリア台車11の衝突体12を側面衝突させる衝突試験である(
図5(a)参照)。以下、この衝突試験をフルカー衝突試験と呼ぶ。
また、比較の衝撃試験は、先端部が断面円弧状の剛体からなるポール13をパンチとして用いた3点曲げ衝撃試験である。なお、座屈が発生するまでパンチを押し込むことを解析条件としている。
【0044】
その結果を、
図6~
図8に示す。
図6は、比較の衝撃試験による、評価部材7に発生したひずみ分布の図である。
図7は、フルカー衝突試験による、評価部材7に発生したひずみ分布の図である。なお、
図6及び
図7は、評価部材7でのモーメントが最大となったときのひずみ分布である。
図8は、その比較の衝撃試験とフルカー衝突試験の各モーメント線図を示す。
図8のX軸である「L番線」とは、評価部材7の長手方向を示しており、X=0付近が、パンチ1の当接位置である。ドアインパクトビームの長手方向は、車両の全長方向に相当する。
【0045】
図6~
図8から、比較の衝撃試験では、ポール13からなるパンチの当接位置であるドアインパクトビームの中央部に、ひずみとモーメントが集中していることが分かった。一方、フルカー衝突試験では、ひずみ及びモーメント共に広範囲に分散していることが分かった。
【0046】
このことを概念的(モデル的)に図示したのが、
図9である。比較の衝撃試験では、
図9(a)のように、ポール13を模したパンチ20から、評価部材7の長手方向一点に荷重入力が行われる。一方、フルカー衝突試験では、
図9(b)のように、衝突初期より、衝突体12を模した仮想パンチ21からの受圧面積が拡大する。そして、評価部材7であるドアインパクトビーム中央部への応力集中が抑制されるように、荷重入力が行われる。この場合、ドアインパクトビームは、側面衝突時に、弓なりに変形した後に、曲げ圧壊が発生するような変形モードとなる。
【0047】
<仮想パンチ21の解析例>
そこで、発明者は、
図9(b)に示すような、仮想パンチ21の当接部形状(先端形状)での曲げ衝撃試験の試験を行った。このとき、パンチ形状以外の条件は、比較の衝撃試験と同じ条件とした。なお、仮想パンチ21は剛体とした。すなわち、応力集中抑制を目的として、仮想パンチ21でドアインパクトビーム中央部へ曲げ荷重を入力する、曲げ衝撃試験を解析した。
【0048】
その結果を、
図10及び
図11に示す。
図10は、仮想パンチ21を用いた曲げ衝撃試験による、評価部材7に発生したひずみ分布の図である。
図10は、評価部材7でのモーメントが最大となったときのひずみ分布である。また、
図11は、そのモーメント線図である。その
図11には、比較の衝撃試験とフルカー衝突試験とのモーメント線図も併記した。
【0049】
図11に示すように、この仮想パンチ21を用いることで、ドアインパクトビーム中央部の応力集中の抑制とモーメント分布の広範囲化が再現できた。しかし、仮想パンチ21が剛体のため、モーメントの最大値を制御することは困難であることが分かった。
【0050】
発明者は、このような新たな知見に基づき、評価部材7に当接する当接部を弾塑性体で構成することを考えた。そして、発明者は、平面視で評価部材7の長手方向に並ぶ複数の鋼管(管状中空体3)で、上記の仮想パンチ21を表現することを考えた。当接部を弾塑性体とする際に、当接部を複数の鋼管(管状中空体3)で構成することで、弾塑性体となる当接部の作製及びその剛性や強度などの調整を簡易に実行可能となる。
【0051】
<本実施形態の解析例>
本実施形態に基づく、3本の鋼管で当接部を構成したパンチ1による曲げ衝撃試験のCAE解析を行った。以下、この曲げ衝撃試験を改善曲げ衝撃試験と呼ぶ。
【0052】
その結果を
図12及び
図13に示す。
図12は、その改善曲げ衝撃試験による、評価部材7に発生したひずみ分布の図である。
図12は、評価部材7でのモーメントが最大となったときのひずみ分布である。また、
図13は、その改善曲げ衝撃試験でのモーメント線図である。
図13には、比較の衝撃試験とフルカー衝突試験とのモーメント線図も併記する。
図12及び
図13から分かるように、パンチ1におけるドアインパクトビームへの当接部を弾塑性体の鋼管とすることで、応力集中の抑制とモーメント値の制御が可能であることが分かった。
【0053】
ここでは、鋼管の強度の条件は、CAEによりフルカー衝突試験による入力を再現するよう決定した。その決定の評価では、使用する鋼管として、引張強度1500MPa級、肉厚2mmの鋼管が適していたことが分かった。併せて、この鋼管の強度を変更することで、モーメント値が制御することが可能であることも分かった。
【0054】
また、この改善曲げ衝撃試験では、パンチ1の接触初期で3本の鋼管から荷重が入力される。更に、この改善曲げ衝撃試験では、パンチ1の押し込みに伴い、ドアインパクトビーム中央部が下方に撓むにつれて、中央の鋼管からの入力が相対的に小さくなるような挙動となっている。また、この挙動から、当接部として、中央部の鋼管を抜いた鋼管2本とした場合、当接部を3本の鋼管で構成した場合に比べ、衝突初期の入力荷重が変化することが分かる。
【0055】
また、この改善曲げ衝撃試験では、当接部が、入力する荷重が大きくなるに応じて変形可能な鋼管から構成されている。このため、鋼管が当接する部分での荷重の集中が抑制される。この結果、少なくともパンチ1の押し込みの途中ストロークまでにおいては、評価部材7を長手方向全長に亘って撓むように変形を付加可能となる。すなわち、入力の受圧面積を増大できることが分かる。
この挙動は、フルカー衝突試験による入力での変形モードに近似する。すなわち、実車レベルの側面衝突の際には、ドアインパクトビームは、弓なりに変形した後に、曲げ圧壊が発生するような変形モードとなる。そして、改善曲げ衝撃試験では、この変形モードに近似した変形モードとすることができる。
【0056】
<鋼管の強度、間隔の変更の解析例>
図14及び
図15に、鋼管の強度、間隔の変更の例を示す。
CAEによって、各鋼管の強度を向上した場合を確認した。具体的には、上記の例において、各鋼管の引張強度TSを初期の1.5GPaから1.8Gaと高くすることで、モーメント値が向上したことが分かった。
また、
図14に示す右端の鋼管の間隔を増加する方向に変更した場合、
図15に示すように、最大モーメントが発生するL番線範囲が、右側に拡大したことが分かった。
【0057】
これら結果から、鋼管の強度や鋼管の間隔を調整することにより、ドアインパクトビームへの入力を制御することが可能であることが分かった。
【0058】
このように、パンチ1に設ける管状中空体3の配置や強度などを適切に設計・選択するとよい。そうすることで、様々な衝突試験で必要とされる衝突条件や入力の目標値(モーメント値やひずみ分布)に合わせた、曲げ衝撃試験が可能となる。
【0059】
<管状中空体3からなる当接部の制御(調整)の例>
管状中空体3からなる当接部の制御の方法の例を、更に、
図16及び
図17を参照しつつ説明する。
(1)当接部間距離Wについて
当接部間距離Wは、
図17に示すように、当接部を形成する管状中空体3のうちの並び方向最外端に位置する、2つの管状中空体3の間の距離とする。
この当接部間距離Wは、
図16での高モーメントが発生する「L番線」(長手方向位置の)範囲により決定することができる。例えば、高モーメント発生範囲を広げたい場合には、当接部間距離を広げるように調整すればよい。
【0060】
(2)当接部の高さ(各管状中空部材の基台部2からの突出量)
当接部の高さは、高モーメント発生範囲内において、局所的に高モーメントを発生させたい場合に変更することができる。例えば
図16及び
図17のように、L番線位置の値が60となる位置の管状中空体3の突出量を、他の管状中空体よりもΔHだけ増やすことで、突出させた位置でのモーメントを局所的に増加することができる。
すなわち、部分的に局所的な高モーメントを発生したい場合に、その位置に近い管状中空体3の突出量だけを相対的に増加すればよい。なお、当接部を管状中空体で構成することで、その突出させた管状中空体の位置近傍での局所的な集中荷重が過剰となることを抑えることが可能である。
【0061】
(3)当接部(管状中空体3)の強度や剛性
なお、強度は、管状中空体3の材質の降伏応力で近似される。剛性は、管状中空体3の変形しにくさの指標である。ここでいう剛性は、例えば管状中空体3として鋼管を使用する場合であれば、鋼管の径に対する鋼管の肉厚の比率で表現できる。
管状中空体3の強度や剛性は、評価部材7での目標とするモーメント値により変更することができる。
そして、管状中空体3の強度及び剛性の少なくとも一方を増加させると、曲げ衝撃試験の条件(パンチ1の押し込みストローク量、支点距離などの条件)を変更しなくても、モーメント値及びモーメントの傾きが増加する(
図16参照)。
【0062】
(4)管状中空体3の径
本実施形態の曲げ衝撃試験では、パンチ1のストローク増加によって、高モーメントが負荷(入力)される範囲が次第に広がっていく。当接部を形成する管状中空体3のうち、並び方向で最外端にある管状中空体3を構成するパイプの径を大きくすることで、ストロークの増加に伴う高モーメント負荷範囲の増大割合を大きくすることができる。
【0063】
以上の調整例は一例である。例えば、CAE解析によって、目標値(再現する衝突条件)を求める。そして、その目標値に近づくように、管状中空体3の本数、管状中空体3の間隔、管状中空体3の強度や剛性、各管状中空体3間の突出量の差などをパラメータとしてCAE解析を行う。そして、そのCAEの解析結果によって、入力が目標値となるような、管状中空体3の条件に制御すれば良い。
【0064】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)評価部材に荷重を負荷する曲げ衝撃試験用のパンチであって、
上記評価部材に荷重を負荷する当接部が、周面側を上記評価部材側に向けた複数の管状中空体で構成された、
曲げ衝撃試験用のパンチ。
(2) 上記複数の管状中空体は、上記評価部材の上記荷重が負荷される面と対向する面に沿って配列している。
(3)板状の基台部を備え、
上記各管状中空体は、上記基台部の上記評価部材側の面である一方の面から、当該評価部材に向けて突出し、
上記基台部の上記一方の面と反対側を向く面側に、上記当接部に荷重を伝達する荷重伝達部材の先端部が、着脱可能に連結する構造となっている。
(4)本開示の曲げ衝撃試験用のパンチを備える、
曲げ衝撃試験装置。
(5)評価部材に当接する当接部が複数の管状中空体からなるパンチを用いて、上記評価部材に荷重を負荷する、
曲げ衝撃試験方法。
(6)上記複数の管状中空体の配置位置、各管状中空体の強度、各管状中空体の剛性、各管状中空体の断面形状、上記管状中空体の本数のうちから選択した1つ以上の条件を変更することで、上記パンチによる上記評価部材への入力を制御する。
(7)上記評価部材への目標とする入力に応じて、上記複数の管状中空体の配置位置、各管状中空体の強度、各管状中空体の剛性、各管状中空体の断面形状、上記管状中空体の本数のうちから選択した1つ以上の条件を調整し、調整後の上記パンチを用いて曲げ衝撃試験を行う。
(8)上記評価部材は、自動車の車体構造部材であり、
上記目標とする入力を、上記自動車の衝突試験で上記車体構造部材に生じる曲げ変形の形態を再現可能な入力とする。
【実施例0065】
本実施形態に基づく実施例を示す。
(実施例)
本実施形態に基づくパンチ1を用いて評価部材7の曲げ衝撃試験を実施した。
<試験条件>
実施例の条件は、次の通りである。
当接部として3本の管状中空体3を採用した。
各管状中空体3の条件は、次の通りである。
管状中空体3は鋼管で構成した。鋼管の寸法は、長さ200mm、肉厚2mm、直径Φ34mmとした。また、鋼管の材質はSTKM13Aとし、隣合うパイプ間隔を83mmに設定した。
【0066】
評価部材7は、
図4に示す形状の鋼材から構成した。この評価部材7は、ドアインパクトビームを模した試験片である。
その評価部材7の材質を、
図18に示す。
【0067】
そして、評価部材7の長手方向両端部を、支持間隔:842mmで支持して、評価部材7の長手方向中央部を、パンチ1で押し込む曲げ衝撃試験を実施した。そのときのパンチ1のストローク速度を0.01km/hとした。
【0068】
(比較例)
また、比較のために、従来の3点曲げによる曲げ衝撃試験(比較例)も実施した。
パンチとして、パンチ先端部がR100の断面円弧状のパンチを使用した以外は、実施例と同様の条件で、曲げ衝突試験を行った。なお、パンチの材質は、管状中空体3と同じ材質であるが、比較例のパンチは中実体である。
【0069】
(評価結果)
図19に、曲げ衝撃試験後の試験片の状態を示す。
図19(a)は、実施例での試験結果である。
図19(b)は、比較例での試験結果である。
図19(a)から分かるように、実施例の曲げ衝撃試験では、バリア台車を用いたフルカーでの衝突試験と同様に、広範囲で変形するモードを再現することができることが分かった。
一方、
図19(b)から分かるように、比較例の曲げ衝撃試験では、変形がパンチと接触した部分に集中してしまい、評価部材7が折れ曲がってしまった。すなわち、比較例の曲げ衝撃試験では、広範囲で変形するモードを再現することができないことが分かった。