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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151812
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】周波数変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/08 20060101AFI20241018BHJP
   H03B 28/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H03L7/08 220
H03B28/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065534
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】面 充徳
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106BB10
5J106CC39
5J106FF07
5J106GG01
5J106GG06
5J106JJ04
5J106KK39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基準信号を逓倍した2つの周波数の和を生成する周波数変換回路を小型化することを目的とする。
【解決手段】周波数変換回路1は、基準信号を出力する基準信号発生器11と、基準信号を入力信号とした出力信号との位相の同期を取る第1のPLL12と、事前に設定した周波数と前記基準信号を入力信号とした入力周波数の逓倍の複数の周波数を出力するDDS13と、DDS13から出力される複数の周波数から所望の周波数を出力するBPF14と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号発生器から出力される基準信号を入力信号とした出力信号との位相の同期を取るPLL(Phase Locked Loop)と、
事前に設定した周波数と前記基準信号を入力信号とした入力周波数の逓倍の複数の周波数を出力するDDS(Direct Digital Synthesizer)と、
前記DDSから出力される複数の周波数から所望の周波数を出力するBPF(BandPass Filter)と、
を備えることを特徴とする周波数変換回路。
【請求項2】
前記DDSの入力周波数の逓倍を表す0以上の整数N及び前記PLLの周波数逓倍数であり正の数のM及び前記基準信号の設定周波数frを乗算したN×M×frに、前記DDSに事前に設定した周波数fDDSの和であるfDDS+N×M×frとなる周波数を所望波として、取り出すBPFと、
を備えることを特徴とする請求項1記載の周波数変換回路。
【請求項3】
前記DDSの入力周波数逓倍数Mと前記基準信号の設定周波数frを乗算したM×frを、2より大きい整数Kで除算したM×fr/Kを、前記DDSに事前に設定した周波数fDDSとして、前記DDSに設定することを特徴とする請求項2記載の周波数変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、レーダシステム、無線通信システム等の送信機に用いられる周波数変換回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダシステム、無線通信システム等に用いられる送信機では、送信周波数を生成するため、送信機内部の構成品である基準信号発生器の出力信号を任意の逓倍数で周波数逓倍し、この周波数逓倍された2つの異なる信号を使用して、両者の周波数の和を周波数とする新たな信号を生成して使用している。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、このような2つの信号の周波数の和を周波数とする信号の生成は、一般的には、周波数変換部にミキサを使用し、その入力部に逓倍回路、出力部にフィルタを追加して実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-28303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような、従来の周波数変換回路では、基準信号を逓倍して生成した異なる2つの信号をミキサに入力するために、ミキサの入力部にフェーズロックループ(PLL(Phase Locked Loop))回路が2つ必要となる課題がある。また、ミキサの出力には、目的の周波数の信号の他に、ミキサに入力した周波数が混変調して生成された複数の異なる周波数の信号が含まれるため、目的の周波数の信号を取り出すためにバンドパスフィルタ(BPF(Band Pass Filter))が必要となり、混変調により生成された周波数が目的の周波数の近くに発生するため、急峻な抑圧特性のBPFが必要となることから、ミキサ出力部のBPFが大きくなるといった問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、基準信号を逓倍した2つの周波数の和を生成する周波数変換回路を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の周波数変換回路は、基準信号を出力する基準信号発生器11と、基準信号を入力信号とした出力信号との位相の同期を取る第1のPLL12と、事前に設定した周波数と前記基準信号を入力信号とした入力周波数の逓倍の複数の周波数を出力するDDS13と、DDS13から出力される複数の周波数から所望の周波数を出力するBPF14と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示による周波数変換回路によれば、ミキサの代わりにダイレクトディジタルシンセサイザ(DDS(Direct Digital Synthesizer))を周波数変化部として用いることで、ミキサを周波数変化部として使用した場合に比べ、周波数変換部の入力部を小型化することができるため、2つの信号の周波数の和を周波数とする信号を生成する周波数変換回路の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る周波数変換回路のブロック図である。
図2】従来および実施の形態1に係る周波数変換回路のDDSの出力周波数を示す図である。
図3】実施の形態1に係る周波数変換回路のBPFの出力周波数を示す図である。
図4】異なる2つの周波数の和を生成する一般的な周波数変換回路を示すブロック図である。
図5】一般的な周波数変換回路のミキサの出力周波数を示す図である。
図6】一般的な周波数変換回路の出力に現れる周波数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。な
お、以下に説明される実施の形態により本開示が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1
図1を参照して、本開示の実施の形態1に係る周波数変換回路1について説明する。図1は実施の形態を示す周波数変換回路のブロック図である。
【0012】
周波数変換回路1は、基準信号発生器11、第1のPLL12、DDS13、BPF14、を有する。ここで、基準信号発生器11は、周波数変換回路1の中に含まれても良い。
【0013】
図1において、基準信号発生器11は、設定周波数frを出力する。第1のPLL12は、基準発生器から入力される信号の周波数をM倍して出力する。DDS13は、周波数変換部であり、第1のPLL12から入力される信号をクロックとして使用し、外部制御により設定した周波数を出力する。BPF14は、DDS13の出力信号に含まれる複数の周波数から、所望の周波数を選択する。ここで、MはDDS13前段の第1のPLL12の周波数逓倍数であり、正の数である。
【0014】
まず、本開示の実施の形態1に係る周波数変換部であるDDS13の説明のため、従来のDDSの説明をする。従来のDDSは外部制御により、従来のDDSに入力されるクロック周波数の1/2以下の周波数を従来のDDSの出力周波数として設定し、従来のDDSの後段に配置するフィルタにて不要波を除去して、設定した周波数を取り出す。
一方、本開示の実施の形態1に係るDDS13では外部制御により設定した周波数ではなく、設定に伴い付随して出力される周波数を取り出して使用することを特徴とする。
【0015】
DDS13の動作を図2図3により説明する。図2は、従来および実施の形態1に係るDDSの出力周波数を示す図である。図3は、実施の形態1に係る周波数変換回路のBPFの出力周波数を示す図である。
【0016】
図2は、横軸が周波数、縦軸は電力を表す。DDSの出力周波数には、周波数101~105の複数の周波数が出現することを表している。周波数101はfDDSの値を持つ周波数、周波数102はM×fr-fDDSの値を持つ周波数、周波数103はM×fr+fDDSを持つ周波数、周波数104はN×M×fr―fDDSの値を持つ周波数、周波数105はN×M×fr+fDDSを持つ周波数、である。fDDSは、DDSの設定周波数である。ここで、NはDDS13の入力周波数の逓倍数を表す0以上の整数である。
【0017】
従来のDDSを用いた周波数変換回路では、図2における周波数101~105の内、DDSの設定周波数であるfDDS、つまり周波数101をフィルタで取り出す。
【0018】
一方、実施の形態1に係る周波数変換回路1では、図2におけるDDS13で出力した周波数101~105の内、BPF14により、周波数105を取り出す。
【0019】
BPF14の動作を図3により説明する。図3は、実施の形態1に係る周波数変換回路のBPFの出力周波数を示す図である。
【0020】
図3において、106はBPFにより周波数を選択する周波数選択ウインドウである。そして、周波数101~104は選択されなかった周波数として点線で表し、周波数105は、周波数選択ウインドウ106により選択された周波数として実線で表す。
【0021】
BPF14では、図3に示す周波数105、つまり、式(1)に示す周波数を取り出す。式(1)において、NはDDS13の入力周波数の逓倍数を表す整数、MはDDS13前段の第1のPLL12の周波数逓倍数、frは基準信号発生器11の出力周波数である。
【0022】
fDDS+N×M×fr 式(1)
【0023】
ここで、式(1)におけるDDSの設定周波数fDDSは、DDS13の入力周波数M×frと2より大きいKを使用して、式(2)と表すことができる。
【0024】
fDDS=M×fr/K 式(2)
【0025】
さらに、式(1)と式(2)から、本開示の実施の形態1における所望波として取り出す周波数は、式(3)と表すことができる。
【0026】
M×fr/K+N×M×fr 式(3)
【0027】
次に、ミキサを使用し、基準信号を逓倍して生成した異なる2つの信号の周波数の和を周波数とする信号を生成する方法と実施の形態1が等価であることを図4図6により説明する。
【0028】
図4は、異なる2つの周波数の和を生成する一般的な周波数変換回路を示すブロック図、図5は、一般的な周波数変換回路のミキサの出力周波数を示す図、図6は、一般的な周波数変換回路の出力に現れる周波数を示す図、である。
【0029】
図4において、一般的な周波数変換回路2は、基準信号発生器11、第2のPLL21、第3のPLL22、ミキサ23、BPF14、を有する。
【0030】
一般的な周波数変換回路2を図4により説明する。図4において、基準信号発生器11は、周波数frを出力する。第2のPLL21は、基準信号発生器11から入力される信号の周波数をA倍して出力する。第3のPLL22は、基準信号発生器から入力される信号の周波数をB倍して出力する。ミキサ23は、第2のPLL21と第3のPLL22から入力される周波数の和の周波数を生成する。BPF14は、ミキサ23の出力信号に含まれる複数の周波数から、所望の周波数を選択する。
【0031】
ミキサ23が出力する周波数について、図5により説明する。図5において、横軸は周波数、縦軸は電力を表す。ミキサ23の出力には、周波数201~205の複数の周波数が出現することを表している。周波数201はB×fr-2×A×frの値を持つ周波数、周波数202はB×fr―A×frの値を持つ周波数、周波数203はB×frを持つ周波数、周波数204はB×fr+A×frの値を持つ周波数、周波数205はB×fr+2×A×frを持つ周波数、である。つまり、ミキサ23の出力には図5に示す周波数201~205が含まれている。ここで、Aは第2のPLL21の周波数逓倍数、Bは第3のPLL22の周波数の逓倍数、である。
【0032】
BPF14の動作を図6により説明する。図6において、206はBPFにより周波数を選択するウインドウである。そして、周波数201~203、205は選択されなかった周波数として点線で表し、周波数204は、ウインドウ206により選択された周波数として実線で表す。
【0033】
BPF14では、図6に示す周波数204、つまり、式(4)に示す周波数を取り出す。式(4)において、Aは第2のPLL21の周波数逓倍数、Bは第3のPLL22の周波数逓倍数、frは基準信号発生器21の出力周波数である。
【0034】
B×fr+A×fr 式(4)
【0035】
実施の形態における所望波である式(3)とミキサを使用し2つの信号の周波数の和として取り出した信号の周波数である式(4)は、どちらもfrを逓倍した2つの信号の周波数の加算を表している。実施の形態におけるMとKは式(5)及び式(6)と表すことができる。
【0036】
M=B/N 式(5)
【0037】
K=B/(A×N) ただし、K>2 式(6)
【0038】
したがって、本開示の実施の形態1における周波数の生成方法は、ミキサ23を使用して周波数の和を生成する方法と等価であることがわかる。
【0039】
以上説明した実施の形態1に係る周波数変換回路1は、図1に示すように、必要なPLLは1つであるため、図4に示す従来の一般的な構成の周波数変換回路2に比べてPLLの数を減じることができる。
【0040】
また、実施の形態1に係る周波数変換回路1における所望波である周波数105と隣接する不要波の周波数104の周波数差は、図3から、2×fDDSである。式(2)を適用すると式(7)となる。さらに、式(7)に式(5)と式(6)を適用すると、式(8)となる。
【0041】
2×fDDS=2×M×fr/K 式(7)
【0042】
2×fDDS=2×M×fr/K=2×A×fr 式(8)
【0043】
一方、従来の一般的な周波数変換回路2における所望はである周波数204と隣接する不要波の周波数203の周波数差は、図5から、A×frである。つまり、実施の形態1に係る周波数変換回路1における所望波と隣接する不要波の周波数差は式(8)より、2×A×frであるのに対し、従来の一般的な周波数変換回路2における所望波と隣接する不要波の周波数差はA×frである。
【0044】
すなわち、実施の形態1に係る周波数変換回路1における隣接する不要波の周波数差の方が。従来の一般的な周波数変換回路2に係る周波数変換回路1における隣接する不要波の周波数差よりも大きいことから、不要波を抑圧するBPFの性能を緩和でき、BPFを小型化できる。
【0045】
以上のように実施の形態1では、周波数変換回路の入力部を小型化することができるため、周波数変換回路の小型化が可能となる。
【0046】
本開示による周波数変換回路によれば、ミキサの代わりにダイレクトディジタルシンセサイザ(DDS(Direct Digital Synthesizer))を周波数変化部として用いることで、ミキサを周波数変換部として使用した場合に比べ、周波数変換部の入力部を小型化することができるため、2つの信号の周波数の和を周波数とする信号を生成する周波数変換回路の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 周波数変換回路
11 基準信号発生器
12 第1のPLL
13 DDS
14 BPF
101~105 周波数
106 周波数選択ウインドウ
2 周波数変換回路
21 第2のPLL
22 第3のPLL
23 ミキサ
201~205 周波数
206 周波数選択ウインドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6