(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151813
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】下水道本管に接続された放置取付管の補修方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20241018BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065535
(22)【出願日】2023-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】501418041
【氏名又は名称】総合開発工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086449
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 浩明
(72)【発明者】
【氏名】中浦 政章
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA02
2D063BA28
2D063BA34
2D063BA35
2D063BA37
2D063EA09
2D063EA10
(57)【要約】
【課題】放置取付管の補修方法の提供。
【解決手段】下水道本管4に接続された放置取付管11の状況把握工程と、パッカー装置21を放置取付管11の基端側管口12側に設置するパッカー装置設置工程と、パッカー装置21を介して放置取付管11内に無機系懸濁型土質安定剤を充填してゲル化させるゲル化充填工程と、パッカー装置撤去工程と、パッカー装置撤去後の基端側管口12を含む周辺部位の切削と基端側管口12寄りの無機系懸濁型土質安定剤の部分的な除去とを行う仮仕上げ工程と、基端側管口12を含む周辺部位を塞ぐように注入用型枠を設置する注入用型枠設置工程と、注入用型枠を介して耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、注入用型枠を撤去する注入用型枠撤去工程と、硬化した耐食性注入物の表面処理を行う本仕上げ工程とを経て放置取付管を補修する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道本管に基端側管口を介して接続された状態で土中に埋設されている放置取付管の位置の特定と該放置取付管の先端側に位置する閉塞不良部位の深さの電磁探査とを前記下水道本管側から送り込んだテレビカメラを介して行う状況把握工程と、
前記下水道本管の内径より外径が小径な円筒体と、該円筒体の中央外周面を除いて二分される一側外周面と他側外周面とに膨縮自在に配設された一側膨縮部と他側膨縮部とを備え、これら一側膨縮部と他側膨縮部とに空気を圧送する給気ホースと、前記中央外周面に穿設された第1噴出口と第2噴出口とのうち、前記第1噴出口に連結される第1供給ホースと、前記第2噴出口に連結される第2供給ホースとを有してなるパッカー装置を、前記中央外周面を放置取付管の前記基端側管口側に位置させ、かつ、前記一側膨縮部と前記他側膨縮部とを前記下水道本管内を塞ぐように膨出させた状態のもとで設置するパッカー装置設置工程と、
設置後の前記パッカー装置の前記中央外周面側に前記第1供給ホースと前記第2供給ホースとを介して無機系懸濁型土質安定剤を圧送してミキシングしながら粘性のある状態で放置取付管の前記基端側管口から前記放置取付管内に充填してゲル化させるゲル化充填工程と、
充填した前記無機系懸濁型土質安定剤のゲル化後に前記一側膨縮部部と前記他側膨縮部とを縮退させて前記パッカー装置を撤去するパッカー装置撤去工程と、
前記パッカー装置撤去後の前記基端側管口を含む周辺部位の切削と硬化した前記基端側管口寄りの前記無機系懸濁型土質安定剤の部分的な除去とを行う仮仕上げ工程と、
仮仕上げされた前記基端側管口を含む周辺部位を前記下水道本管側から塞ぐように注入用型枠を設置する注入用型枠設置工程と、
設置した前記注入用型枠が備える注入口から耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、
注入した前記耐食性注入物が硬化した後に前記注入用型枠を撤去する注入用型枠撤去工程と、
硬化した前記耐食性注入物の表面処理を行う本仕上げ工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする下水道管に接続された放置取付管の補修方法。
【請求項2】
前記ゲル化充填工程における前記無機系懸濁型土質安定剤の充填は、前記第1供給ホースを介して圧送される超微粒子セメント懸濁液と、前記第2供給ホースを介して圧送される無機系硬化促進材溶液とによる二重管瞬結注入手法により行う請求項1に記載の下水道管に接続された放置取付管の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道本管に接続されたまま埋設されている放置取付管の内部空間を充填物で満たして地面の陥没や下水道本管側に土砂を流れ込ませないように修復する下水道本管に接続された放置取付管の補修方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
既存家屋が解体撤去されて道路が拡張されたような場合には、下水道本管側に汚水を流下させるために汚水溜桝を介して引き出されている取付管側が埋設された状態のままとなって取り残されてしまうことがある。
【0003】
図9は、埋設されたまま取り残されてしまった取付管(本明細書では、「放置取付管」という。)の従来状態を模式的に示す説明図であり、放置取付管11にあって、もとは汚水溜桝等に接続されていた土中2の地上に近い先端側の閉塞不良部位13からは、その内部空間14内に土砂8が入り込んで空洞化を招き、該空洞化により地面を陥没させたり、下水道本管4内を大量の雨水等が流下する際に放置取付管11内の土砂8が基端側管口12から取り込まれて下水道本管4側へと流入させて下水の円滑な流下を阻害するなどの事例があった。
【0004】
本発明者は、このような過去事例に鑑み、その効果的な解決手法として「下水道本に接続された放置取付管の補修方法」を下記特許文献1に示すように既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
すなわち、特許文献1の開示技術によれば、放置取付管の位置特定と該放置取付管の地上寄りに位置する先端側閉塞不良部位の深さとを把握する状況把握工程と、放置取付管の基端側管口を仮閉止して該管口内へと土質安定剤を充填してゲル化させるゲル化閉塞工程と、該土質安定剤のゲル化を待って前記仮閉止を解いて充填用型枠を設置して土質安定剤の硬化を待つ硬化待機工程と、硬化後に前記充填用型枠を撤去する充填用型枠撤去工程と、該充填用型枠を撤去した後の前記基端側管口回りの切削と土質安定剤の部分的除去を行う仮仕上げ工程と、仮仕上げ後の前記管基端側口を下水道本管側から塞ぐように注入用型枠を設置する注入用型枠設置工程と、該注入用型枠の注入口から耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、その硬化後に前記注入用型枠を撤去する注入用型枠撤去工程と、硬化後の耐食性注入物を表面処理を行う仕上げ工程とを経ることで、放置取付管の現場状況に柔軟に対応させながら地面の陥没や下水道本管側への土砂の流入を確実に阻止するための補修を行うことができることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の開示技術によっても下水道本管との接続部位を含む放置取付管の補修を効果的に行うことはできる。しかし、ゲル化閉塞工程では、放置取付管の基端側管口の仮閉止作業が必要になる煩雑さがあるほか、現場状況の如何によっては、下水道本管内における下水の流下を阻止した状態のもとで放置取付管の基端側に位置して下水道本管側と連通している管口側から放置取付管内に土質安定剤を充填する必要がある場合もある。このような具体的な現場状況にも柔軟に対応させるためには、放置取付管の補修を確実に行うことができる代替手法の開発による補修技術の多様化や豊富化が求められていた。
【0008】
本発明は、特許文献1の開示技術にみられた上記課題に鑑み、放置取付管内に土質安定剤を充填する際に下水道本管内を流下する下水を確実に止水しながら下水道本管に接続された放置取付管を円滑に、かつ、効率よく補修することができる下水道本管に接続された放置取付管の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成すべくなされたものであり、下水道本管に基端側管口を介して接続された状態で土中に埋設されている放置取付管の位置の特定と該放置取付管の先端側に位置する閉塞不良部位の深さの電磁探査とを前記下水道本管側から送り込んだテレビカメラを介して行う状況把握工程と、前記下水道本管の内径より外径が小径な円筒体と、該円筒体の中央外周面を除いて二分される一側外周面と他側外周面とに膨縮自在に配設された一側膨縮部と他側膨縮部とを備え、これら一側膨縮部と他側膨縮部とに空気を圧送する給気ホースと、前記中央外周面に穿設された第1噴出口と第2噴出口とのうち、前記第1噴出口に連結される第1供給ホースと、前記第2噴出口に連結される第2供給ホースとを有してなるパッカー装置を、前記中央外周面を放置取付管の前記基端側管口側に位置させ、かつ、前記一側膨縮部と前記他側膨縮部とを前記下水道本管内を塞ぐように膨出させた状態のもとで設置するパッカー装置設置工程と、設置後の前記パッカー装置の前記中央外周面側に前記第1供給ホースと前記第2供給ホースとを介して無機系懸濁型土質安定剤を圧送してミキシングしながら粘性のある状態で放置取付管の前記基端側管口から前記放置取付管内に充填してゲル化させるゲル化充填工程と、充填した前記無機系懸濁型土質安定剤のゲル化後に前記一側膨縮部部と前記他側膨縮部とを縮退させて前記パッカー装置を撤去するパッカー装置撤去工程と、前記パッカー装置撤去後の前記基端側管口を含む周辺部位の切削と硬化した前記基端側管口寄りの前記無機系懸濁型土質安定剤の部分的な除去とを行う仮仕上げ工程と、仮仕上げされた前記基端側管口を含む周辺部位を前記下水道本管側から塞ぐように注入用型枠を設置する注入用型枠設置工程と、設置した前記注入用型枠が備える注入口から耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、注入した前記耐食性注入物が硬化した後に前記注入用型枠を撤去する注入用型枠撤去工程と、硬化した前記耐食性注入物の表面処理を行う本仕上げ工程と少なくとも含むことを最も主要な特徴とする。
【0010】
この場合、前記ゲル化充填工程における前記無機系懸濁型土質安定剤の充填は、前記第1供給ホースを介して圧送される超微粒子セメント懸濁液と、前記第2供給ホースを介して圧送される無機系硬化促進材溶液とによる二重管瞬結注入手法により行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、下水道本管に接続された状態で土中に埋設されている放置取付管の内部空間及びこれに連通する閉塞不良部位(空洞部)の状況を的確に把握した上で、基端側管口から粘性のある無機系懸濁型土質安定剤を圧送して閉塞不良部位を含む内部空間及びこれに連通する空洞部を充填してこれを急速硬化させることで、取付管内に土砂が流入したり、下水道本管内を大量の雨水等が流下する際に取付管内の土砂を取り込んで流出させたりするのを確実に阻止して地面の陥没を未然に防ぐ補修工事を、円滑、かつ短時間で行うことができる。
【0012】
また、充填して硬化させた後の無機系懸濁型土質安定剤は、比較的脆弱な硬度を保持した状態にあるため、放置取付管内から除去する必要が生じた際には容易に掻き出すことができる。
【0013】
また、下水道本管内は、パッカー装置設置工程を経ることにより、流下しようとする下水を確実に止水することができるので、下水道本管に接続された放置取付管の補修を円滑、かつ、確実に行うことができる。
【0014】
さらに、請求項2に係る発明によれば、無機系懸濁型土質安定剤の放置取付管内への充填は、第1供給ホースを介して圧送される超微粒子セメント懸濁液と、第2供給ホースを介して圧送される無機系硬化促進材溶液とによる二重管瞬結注入手法により行うことができるので、充填作業をより円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における状況把握工程例を模式的に示す説明図。
【
図2】本発明におけるパッカー装置設置工程例を模式的に示す説明図。
【
図3】本発明におけるパッカー装置の具体的な構成例を示す説明図であり、そのうちの(a)は、下水道本管内への設置前の状態例を、(b)は、下水道本管内への設置後の状態例をそれぞれ示す。
【
図4】パッカー装置設置後の放置取付管と下水道本管との間の配置関係例を模式的に示す説明図。
【
図5】本発明における仮仕上げ工程例を模式的に示す説明図であり、そのうちの(a)は、仮仕上げ中の状態例を、(b)は、仮仕上げ後の状態例をそれぞれ示す。
【
図6】本発明における耐食処理工程例を模式的に示す説明図であり、そのうちの(a)は、注入用型枠設設置工程を経た後に行われる耐食処理中の状態例を、(b)は、耐食処理後の状態例をそれぞれ示す。
【
図7】本発明における本仕上げ工程例を模式的に示す説明図であり、そのうちの(a)は、本仕上げ中の状態例を、(b)は、本仕上げ後の状態例をそれぞれ示す。
【
図8】本発明による補修後の放置取付管の状態例を示す説明図。
【
図9】埋設されたままの放置取付管の従来状態例を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図7は、本発明の各工程における主要な工程例を模式的に示す説明図であり、
図1に示す状況把握工程と、
図2に示すパッカー装置設置工程と、
図4に示すゲル化充填工程と、パッカー装置撤去後に行われる
図5に示す仮仕上げ工程と、注入用型枠設置後に行われる
図6に示す耐食処理耐食工程と、注入用型枠撤去後に行われる
図7に示す本仕上げ工程とを少なくとも含んで、その全体が構成されている。
【0017】
これらの各工程のうち、
図1に示す状況把握工程は、下水道本管4に接続されまま土中2に埋設されている放置取付管11の位置を特定してその閉塞不良部位13を含む管内状況を把握するために行われる。
【0018】
ここで状況把握工程を具体的に説明すれば、まず、
図1に示されているように地上1から第1マンホール3を経て下水道本管4内へと第1走行ロボット31が送り込まれる。該第1走行ロボット31は、地上1のTVカメラ処理を行う第1作業車41内にいる作業者W
1による走行制御のもとで下水道本管4内を移動させることができる。
【0019】
作業者W1は、下水道本管5と桝6との間を繋いで現に使用されたり使用されなくなっている取付管5や、埋設されたままの放置取付管11の位置を第1走行ロボット31が備える照明灯付きの親テレビカメラ32を用いて側視撮影することで把握し、さらにその内部に照明灯付きの子テレビカメラ33を送り込んで内部状況をさらに詳しく把握すると同時に、その様子を第1作業車41内のビデオテープ等の記録媒体に収録する。
【0020】
この場合、放置取付管11の基端側管口12からその内部空間14内に送り込まれた子テレビカメラ33は、先端側に位置する閉塞不良部位13を第1作業車41内のディスプレイ42に映像として映し出してその存在を作業者W1に知らせるとともに、内部の詳細な状況をデータ化する。なお、このようにしてアナログデータやデジタルデータとして得られる内部データは、無機懸濁型土質安定剤28を含む使用材料の量や種類を定める上での基準データとなるほか、各種の必要機材の準備データとして活用されることになる。
【0021】
その際、作業者W1は、土中2である放置取付管11内の閉塞不良部位13に位置する子テレビカメラ33側から地上1の方向に向けて電磁波Eを発信させる。地上1にいる作業者W2は、受信機43を用いて子テレビカメラ部33側から発信された電磁波Eを受信し、その放置取付管11の閉塞不良部位13の位置やその深さなどを特定する。
【0022】
状況把握工程を経て放置取付管11の位置の特定やその閉塞不良部位13を含む管内状況が明らかになって第1走行ロボット31を地上1に退去させた後は、
図2に示すパッカー装置設置工程へと移行する。
【0023】
パッカー装置設置工程で用いられるパッカー装置21は、
図3(a)からも明らかなように今回作業の対象となっている下水道本管4の内径より外径が小径な適宜長さの円筒体22と、該円筒体22の中央外周面22aを除いて二分される一側外周面22bと他側外周面22cとにゴム材等の弾性材を用いて膨縮自在に配設されて気密構造が付与された一側膨縮部23と他側膨縮部24とを備えるとともに、円筒体22の前後各2カ所に車輪21aが付設されてその全体が形成されている。
【0024】
また、一側膨縮部23が備える一側給気口23aと他側膨縮部24が備える他側給気口24aとには、地上1に配置されて必要な圧送プラント処理を行う第2作業車44から引き出されて
図2に示されているように第2マンホール7を経由させた給気ホース45が
図3に示すように接続されており、作業者W
3による操作に従い一側膨縮部23と他側膨縮部24とに圧縮空気を供給することができるようになっている。
【0025】
さらに、円筒体22の中央外周面22aには、
図3に示すように第1噴出口25と第2噴出口26とが設けられており、第1噴出口25には、第2作業車44側から引き出されて
図2に示されているように第2マンホール7を経由させた第1供給ホース47の先端部が、第2噴出口26には、同様にして引き出された第2供給ホース47の先端部が、それぞれ連結されている。
【0026】
このような構造を備えるパッカー装置21を用いて行われるパッカー装置設置工程は、空気を抜いて一側膨縮部23と他側膨縮部24とを縮退させてなるパッカー装置21を第2マンホール7側から送り入れ、車輪21aに案内させながら方向転換させることにより下水道本管4内へと送り込む。
【0027】
下水道本管4内に送り込まれたパッカー装置21は、
図2に示すように適宜のTVカメラ処理を行う第3作業車48から第1マンホール3を経由させて下水道本管4内に送り込まれた第2走行ロボット34を作業者W
4が操作して誘導引き込みすることで放置取付管11の基端側管口12に中央外周面22cが向き合う位置へと移動させることができる。なお、
図2中の第4作業車49は、必要な高圧洗浄処理を行うためのものである。
【0028】
下水道本管4内のパッカー装置21を
図3(a)に示すように位置決めして配置した後は、給気ホース45を介して一側膨縮部23と他側膨縮部24とに空気を圧送して
図3(b)に示すように膨出させて下水道本管4の内周面4aに密着させて
図4に示す状態とした上でパッカー装置設置工程を終える。つまり、パッカー装置21は、その中央外周面22cと下水道本管4の内周面4aとの間に空間を確保し、かつ、放置取付管11の基端側管口12側とのみ連通された状態となって設置されることになる。
【0029】
パッカー装置設置工程を経た後は、パッカー装置21の中央外周面22a側へと第1供給ホース46と第2供給ホース47とを介して比重が水よりも軽い無機系懸濁型土質安定剤(例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋アロフィクスMC-2号」)28を圧送して第1噴出口25と第2噴出口26とから同時噴出させることでミキシングしながら粘性のある状態のもとで放置取付管11の基端側管口12から放置取付管11内に充填してゲル化させるための
図4に示すゲル化充填工程へと移行する。
【0030】
すなわち、ゲル化充填工程では、例えば第1供給ホース46から供給される超微粒子セメント懸濁液(例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋アロフィクスMC」)と、第2供給ホース47から供給される無機系硬化促進材(例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋アロフィクスSS」)の溶液とを、例えば径の異なる外管と内管とを同心として組み合わせてなる二重管を用いて瞬時にゲル化させて注入する二重管瞬結注入手法などを用いて放置取付管11内へとミキシングしながら充填することで行われる。放置取付管11内に無機系懸濁型土質安定剤28が完全に充填されたか否かは、地上1の第2作業車44で作業者W3が充填時における圧力状態をチェックすることで確実に確認することができる。
【0031】
ゲル化充填工程を経て充填した無機系懸濁型土質安定剤28をゲル化させた後は、パッカー装置設置工程での処理手順とは逆の手順を踏むことで一側膨縮部23と他側膨縮部24とを縮退させた上で第2マンホール7からパッカー装置21を撤去するパッカー装置撤去工程(図示せず)へと移行する。
【0032】
パッカー装置撤去工程を経た後は、基端側管口12を含む周辺部位の切削と硬化した基端側管口12寄りの無機系懸濁型土質安定剤28の部分的な除去とを行う
図5に示す仮仕上げ工程へと移行する。
【0033】
仮仕上げ工程では、第2走行ロボット34を退去させた後、同じく地上1側からの走行制御が自在に形成されている
図5(a)に示すような第3走行ロボット35を第1マンホール3から下水道本管4側へと送り込み、該第3走行ロボット35が備える切削研磨装置35aを作動させて基端側管口12の周辺部位の切削と該基端側管口12寄りのゲル化充填後の無機系懸濁型土質安定剤28の部分的な除去とを含む必要な仮仕上げを行った後に第3走行ロボット35を退去させることで、
図5(b)に示すように基端側管口12回りを整えてその処理を終えることができる。
【0034】
仮仕上げ工程を経た後は、基端側管口12を含む周辺部位を下水道本管4側から塞ぐように注入用型枠37を設置する注入用型枠設置工程へと移行する。
【0035】
注入用型枠設置工程では、
図6(a)に示されている第4走行ロボット36に注入用型枠37と固定バンド38とを保持させて下水道本管4側から送り込み、該第4走行ロボット36を介して注入用型枠37を放置取付管11の基端側管口12側に固定バンド38で押し付けて設置してその処理を終える。
【0036】
注入用型枠設置工程を経た後は、注入用型枠37が備える注入口37aから耐食性注入物39を注入して硬化させる
図6に示す耐食処理工程へと移行する。
【0037】
耐食処理工程では、
図6(a)に示すように第4走行ロボット36が備える注入ノズル36aを注入用型枠37が備える注入口37a内に差し込んで耐食性注入物39を注入し、
図6(b)に示す状態のもとでその処理を終える。この場合、耐食性注入物39としては、耐食性や耐薬品性に優れているエポキシ系樹脂を好適に用いることができる。
【0038】
耐食処理工程を経た後は、注入した耐食性注入物39が硬化した後に注入用型枠37を撤去する図示しない注入用型枠撤去工程へと移行する。
【0039】
注入用型枠撤去工程では、注入ノズル36aを注入用型枠37の注入口37aから引き抜いた
図6(a)に示されている第4走行ロボット36を待避させた上でその硬化を待ち、退避中の第4走行ロボット36を再び用いて固定バンド38と注入用型枠37とを外して回収することでその処理を終了する。
【0040】
注入用型枠撤去工程を経た後は、硬化した耐食性注入物39の表面処理を行う
図7に示す本仕上げ工程へと移行する。
【0041】
本仕上げ工程では、第4走行ロボット36を退去させた後、再び第3走行ロボット35を
図7(a)に示すように下水道本管4側から送り込み、該第3走行ロボット35が備える切削研磨装置35aを作動させて注入用型枠37を撤去した後の基端側管口12回りの硬化した耐食性注入物39の表面研磨処理を行ってその処理を終える。
【0042】
このようにして全ての工程を終了することにより、放置取付管11は、
図8に示すように閉塞不良部位13へと至る内部空間14及び該内部空間14と連通する空洞部15内に無機系懸濁型土質安定剤28が充填され、かつ、その基端側管口12回りの表面(下水道本管4との対面側)も硬化した後の耐食性注入物39で覆われて補修処理を終了する。
【0043】
このため、本発明によれば、下水道本管4に接続された状態で土中2に埋設されている放置取付管11の内部空間14及びこれに連通する閉塞不良部位13(空洞部15)の状況を的確に把握した上で、基端側管口12から粘性のある無機系懸濁型土質安定剤28を圧送して閉塞不良部位13を含む内部空間14及びこれに連通する空洞部15を充填してこれを急速硬化させることで、取付管11内に
図9に示すように土砂7が流入したり、下水道本管4内を大量の雨水等が流下する際に放置取付管11内の土砂7を取り込んで流出させたりするのを確実に阻止して地面の陥没を未然に防ぐ補修工事を円滑、かつ短時間で行うことができる。
【0044】
また、放置取付管11内に充填して硬化させた後の無機系懸濁型土質安定剤28は、比較的脆弱な硬度を保持した状態となっているため、これを放置取付管11内から除去する必要が生じた際には、容易に掻き出すことができる。
【0045】
さらに、下水道本管4内は、パッカー装置設置工程を経て設置されたパッカー装置21により封止することができるので、該下水道本管4内を流下しようとする下水を確実に止水した上で、下水道本管4に接続された放置取付管11の補修を円滑、かつ、確実に行うことができる。
【0046】
しかも、放置取付管11の基端側管口12回りは、
図8に示すように硬化した耐食性注入物39で覆うことができるので、酸性成分の強い液やアルカリ成分の強い液が下水道本管4内を流下することがあっても、放置取付管11の基端側管口12回りの無機系懸濁型土質安定剤28が腐食させられるのを確実に阻止してその耐久性を高めてやることができる。
【0047】
さらにまた、無機系懸濁型土質安定剤28の放置取付管11内への充填が、第1供給ホース46を介して圧送される超微粒子セメント懸濁液と、第2供給ホース47を介して圧送される無機系硬化促進材溶液とによる二重管瞬結注入手法により行われる場合には、無機系懸濁型土質安定剤28を瞬時にゲル化させながら充填できるので、充填作業をより円滑に、かつ、確実に行うことができることになる。
【0048】
以上は、本発明方法を第1走行ロボット31,第2走行ロボット34,第3走行ロボット35及び第4走行ロボット36を用いて実施する場合を例に説明してあるが、これら走行ロボットに代えて人手により実施することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 地上
2 土中
3 第1マンホール
4 下水道本管
5 使用中の取付管
6 桝
7 第2マンホール
8 土砂
11 放置取付管
12 基端側管口
13 閉塞不良部位
14 内部空間
15 空洞部
21 パッカー装置
21a 車輪
22 円筒体
22a 中央外周面
22b 一側外周面
22c 他側外周面
23 一側膨縮部
23a 一側給気口
24 他側膨縮部
24a 他側給気口
25 第1噴出口
26 第2噴出口
28 無懸濁型土質安定剤
31 第1走行ロボット
32 親カメラ
33 子カメラ
34 第2走行ロボット
35 第3走行ロボット
35a 切削研磨装置
36 第4走行ロボット
36a 注入ノズル
37注入用型枠
37a 注入口
38 固定バンド
39 耐食性注入物
41 第1作業車
42 ディスプレイ
43 受信機
44 第2作業車
45 給気ホース
46 第1供給ホース
47 第2供給ホース
48 第3作業車
49 第4作業車
E 電磁波
W1,W2,W3,W4 作業者
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
すなわち、ゲル化充填工程では、例えば第1供給ホース46から供給される超微粒子セメント懸濁液(例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋アロフィクスMC」)と、第2供給ホース47から供給される無機系硬化促進材(例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名「太平洋アロフィクスSS」)の溶液とを、
径の異なる外管と内管とを同心として組み合わせてなる二重管を用いて瞬時にゲル化させて注入する二重管瞬結注入手法
(図3における第1供給ホース46と第2供給ホース47とは、同図中にて一点鎖線で示すそれぞれの中間部を含めて薬液を供給する側の端部から薬液が噴出する側の端部へと至るそれぞれの流路系を、説明の便宜上独立しているように簡略化して示してはいるものの、実際の前記中間部は請求項2に記載のとおり二重管構造となっている。)を用いて放置取付管11内へとミキシングしながら充填することで行われる。放置取付管11内に無機系懸濁型土質安定剤28が完全に充填されたか否かは、地上1の第2作業車44で作業者W
3が充填時における圧力状態をチェックすることで確実に確認することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道本管に基端側管口を介して接続された状態で土中に埋設されている放置取付管の位置の特定と該放置取付管の先端側に位置する閉塞不良部位の深さの電磁探査とを前記下水道本管側から送り込んだテレビカメラを介して行う状況把握工程と、
前記下水道本管の内径より外径が小径な円筒体と、該円筒体の中央外周面を除いて二分される一側外周面と他側外周面とに膨縮自在に配設された一側膨縮部と他側膨縮部とを備え、これら一側膨縮部と他側膨縮部とに空気を圧送する給気ホースと、前記中央外周面に穿設された第1噴出口と第2噴出口とのうち、前記第1噴出口に連結される第1供給ホースと、前記第2噴出口に連結される第2供給ホースとを有してなるパッカー装置を、前記中央外周面を放置取付管の前記基端側管口側に位置させ、かつ、前記一側膨縮部と前記他側膨縮部とを前記下水道本管内を塞ぐように膨出させた状態のもとで設置するパッカー装置設置工程と、
設置後の前記パッカー装置の前記中央外周面側に前記第1供給ホースと前記第2供給ホースとを介して無機系懸濁型土質安定剤を圧送してミキシングしながら粘性のある状態で放置取付管の前記基端側管口から前記放置取付管内に充填するに際し、前記無機系懸濁型土質安定剤を前記第1供給ホースを介して圧送される超微粒子セメント懸濁液と、前記第2供給ホースを介して圧送される無機系硬化促進材溶液とによる二重管瞬結注入手法によりゲル化させて行うゲル化充填工程と、
充填した前記無機系懸濁型土質安定剤のゲル化後に前記一側膨縮部と前記他側膨縮部とを縮退させて前記パッカー装置を撤去するパッカー装置撤去工程と、
前記パッカー装置撤去後の前記基端側管口を含む周辺部位の切削と硬化した前記基端側管口寄りの前記無機系懸濁型土質安定剤の部分的な除去とを行う仮仕上げ工程と、
仮仕上げされた前記基端側管口を含む周辺部位を前記下水道本管側から塞ぐように注入用型枠を設置する注入用型枠設置工程と、
設置した前記注入用型枠が備える注入口から耐食性注入物を注入して硬化させる耐食処理工程と、
注入した前記耐食性注入物が硬化した後に前記注入用型枠を撤去する注入用型枠撤去工程と、
硬化した前記耐食性注入物の表面処理を行う本仕上げ工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする下水道管に接続された放置取付管の補修方法。