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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151827
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20241018BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20241018BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065559
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 謙太
(72)【発明者】
【氏名】藪 智明
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112EA11
2F112FA03
2F112FA21
2F112FA41
2F112FA45
2F112GA01
5J084AB01
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA11
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA50
5J084BB04
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA23
5J084CA25
5J084CA31
5J084CA32
5J084CA45
5J084EA01
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】多重反射やクラッタの影響による測距精度の低下を抑制する。
【解決手段】測距装置100は、パルス光を射出する発光部40と、対象物によるパルス光の反射光を受光し出力信号Soutを出力する受光部60と、パルス光の飛行時間を利用して対象物距離を演算する演算部210とを備える。演算部は、出力信号に基づいて、反射光の受光強度を飛行時間ごとに表したヒストグラムHGを生成するヒストグラム生成部230と、ヒストグラムにおけるピークPKの立ち上がりタイミングRTに基づいて、対象物が距離範囲にあるか否かを判定する近距離判定部240と、ヒストグラムに基づいて反射回数に関する特徴量を取得する特徴量取得部250と、対象物が近距離範囲にある場合、特徴量とピークの立ち下がりタイミングFTとに基づいて対象物距離を算出する距離算出部とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距装置(100,100b)であって、
パルス光を射出する発光部(40)と、
対象物によって反射される前記パルス光の反射光を受光し、前記反射光に基づく出力信号(Sout)を出力する受光部(60)と、
前記パルス光の飛行時間を利用して、前記対象物までの距離である対象物距離を演算する演算部(210)と、を備え、
前記演算部は、
前記出力信号に基づいて、前記受光部による前記反射光の受光強度を飛行時間ごとに表したヒストグラム(HG)を生成するヒストグラム生成部(230)と、
前記ヒストグラムにおける前記受光強度のピーク(PK)の立ち上がりタイミング(RT)に基づいて、前記対象物が予め定められた近距離範囲にあるか否かを判定する近距離判定部(240)と、
前記ヒストグラムに基づいて、前記パルス光が前記対象物と前記受光部との間を反射によって往復した回数を表す反射回数に関する特徴量を取得する特徴量取得部(250)と、
前記対象物が前記近距離範囲にある場合、前記特徴量と、前記ピークの立ち下がりタイミング(FT)と、に基づいて前記対象物距離を算出する距離算出部(260,260b)と、を有する、
測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置であって、
前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にない場合、前記立ち上がりタイミングに基づいて前記対象物距離を算出する、測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置であって、
前記立ち上がりタイミングは、前記受光強度が第1閾値(TS1)を取る第1立ち上がりタイミング(RT1)と、前記受光強度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値(TS2)を取る第2立ち上がりタイミング(RT2)と、を含み、
前記近距離判定部は、前記第2立ち上がりタイミングに基づいて、前記対象物が前記近距離範囲にあるか否かを判定し、
前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にない場合、前記第1立ち上がりタイミングに基づいて前記対象物距離を算出する、測距装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測距装置であって、
前記演算部は、前記特徴量に基づいて前記反射回数を判定する反射回数判定部(270)を更に有し、
前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にある場合、判定された前記反射回数と、前記立ち下がりタイミングと、に基づいて前記対象物距離を算出する、測距装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測距装置であって、
前記立ち下がりタイミングは、前記受光強度が前記第1閾値を取る第1立ち下がりタイミング(FT1)と、前記受光強度が前記第2閾値を取る第2立ち下がりタイミング(FT2)と、を含み、
前記反射回数判定部は、前記第1立ち上がりタイミングと前記第1立ち下がりタイミングとの間の時間幅を表す第1時間幅(PW1)と、前記第2立ち上がりタイミングと前記第2立ち下がりタイミングとの間の時間幅を表す第2時間幅(PW2)とのいずれかを前記特徴量として用いて、前記反射回数を判定する、測距装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測距装置であって、
前記反射回数判定部は、
前記対象物が前記近距離範囲にある場合、前記第2立ち上がりタイミングが予め定められた基準タイミング(ST)以前か否かを判定し、
前記第2立ち上がりタイミングが前記基準タイミングよりも後である場合、前記第2立ち上がりタイミングと前記第1時間幅との対応関係に基づいて前記反射回数を判定し、
前記第2立ち上がりタイミングが前記基準タイミング以前である場合、前記第2立ち上がりタイミングと前記第2時間幅との対応関係に基づいて前記反射回数を判定し、
前記距離算出部は、判定された前記反射回数と、前記第1立ち下がりタイミングと、に基づいて前記対象物距離を算出する、測距装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の測距装置であって、
前記距離算出部は、前記受光強度に基づいて前記対象物距離を補正する、測距装置。
【請求項8】
請求項7に記載の測距装置であって、
前記距離算出部は、前記対象物距離の算出に前記立ち上がりタイミングを用いる場合と前記立ち下がりタイミングを用いる場合とで、前記対象物距離の補正の強度を異ならせる、測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス光を発光部から射出して、対象物からの反射光を受光部で検出し、照射から受光までの光の飛行時間(TOF:Time Of Flight)を計測することで、対象物までの距離を測定する測距装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-74827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測距装置では、多重反射による信号やクラッタといった、対象物を測距するための所望信号とは異なる信号が生じる場合がある。ここでいうクラッタとは、発光部および受光部を収容する筐体の窓によって反射されたパルス光を指す。また、多重反射とは、発光部から射出されたパルス光が、対象物と受光部との間を反射によって複数回往復することを意味する。こうした多重反射やクラッタの影響によって、飛行時間を正しく計測できず、測距精度が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、測距装置(100,100b)が提供される。この測距装置は、パルス光を射出する発光部(40)と、対象物によって反射される前記パルス光の反射光を受光し、前記反射光に基づく出力信号(Sout)を出力する受光部(60)と、前記パルス光の飛行時間を利用して、前記対象物までの距離である対象物距離を演算する演算部(210)と、を備える。前記演算部は、前記出力信号に基づいて、前記受光部による前記反射光の受光強度を飛行時間ごとに表したヒストグラム(HG)を生成するヒストグラム生成部(230)と、前記ヒストグラムにおける前記受光強度のピーク(PK)の立ち上がりタイミング(RT)に基づいて、前記対象物が予め定められた近距離範囲にあるか否かを判定する近距離判定部(240)と、前記ヒストグラムに基づいて、前記パルス光が前記対象物と前記受光部との間を反射によって往復した回数を表す反射回数に関する特徴量を取得する特徴量取得部(250)と、前記対象物が前記近距離範囲にある場合、前記特徴量と、前記ピークの立ち下がりタイミング(FT)と、に基づいて前記対象物距離を算出する距離算出部(260,260b)と、を有する。
【0007】
このような形態によれば、対象物が近距離範囲にある場合、反射回数に関する特徴量と、ピークの立ち下がりタイミングとに基づいて対象物距離が算出される。立ち下がりタイミングに基づいて対象物距離が算出されることで、クラッタの影響による測距精度の低下が抑制される。また、反射回数に関する特徴量に基づいて対象物距離が算出されることで、多重反射の影響による測距精度の低下が抑制される。そのため、多重反射やクラッタの影響による測距精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の測距装置の概略構成を示す説明図。
図2】受光アレイの構成を模式的に示す説明図。
図3】SPAD回路の構成を模式的に示す回路図。
図4】第1実施形態の測距装置の概略構成を示すブロック図。
図5】ヒストグラムの一例を示す説明図。
図6】ヒストグラムの模式図。
図7】対象物が遠距離範囲にある場合のヒストグラムの例を示す模式図。
図8】測距処理のフローチャート。
図9】反射回数判定処理のフローチャート。
図10】第1関係データを説明する図。
図11】第2関係データを説明する図。
図12】対象物が近距離範囲にある場合のヒストグラムの例を示す第1の模式図。
図13】対象物が近距離範囲にある場合のヒストグラムの例を示す第2の模式図。
図14】第2実施形態の測距装置の概略構成を示すブロック図。
図15】第2実施形態における補正データを説明する図。
図16】他の実施形態における補正データを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示す測距装置100は、測距のためのパルス光を射出して外部物体からの反射光を受ける光学系30と、制御装置200とを備える。光学系30は、パルス光としてのレーザ光を射出する発光部40と、レーザ光を予め定められた視野範囲80内で走査させる走査部50と、外部物体からの反射光や外乱光を含む入射光を受光するための受光部60とを備える。測距装置100は、前面に窓92を有する筐体90に収容されている。パルス光は、窓92を介して測距装置100の外部へと射出され、その反射光は、窓92を介して測距装置100内へと入射する。窓92は、パルス光の多くを透過し、一部を反射する。
【0010】
測距装置100は、例えば、自動車などの車両に搭載される車載用のLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)である。車両が水平な路面を走行している場合に、視野範囲80の横方向は水平方向Xと一致し、縦方向は鉛直方向Yと一致する。
【0011】
発光部40は、パルス光としてのレーザ光を射出するレーザ素子41と、レーザ素子41の駆動回路を組み込んだ回路基板43と、レーザ素子41から射出されたレーザ光を平行光にするコリメートレンズ45とを備える。レーザ素子41は、いわゆる短パルスレーザを発振可能なレーザダイオードである。本実施形態において、レーザ素子41は、複数のレーザダイオードを鉛直方向に沿って配列させることにより矩形状のレーザ発光領域を構成する。レーザ素子41が出力するレーザ光の強度は、レーザ素子41に供給される電圧に応じて調整可能に構成されている。
【0012】
走査部50は、いわゆる一次元スキャナによって構成される。走査部50は、ミラー54と、ロータリソレノイド58と、回転部56とによって構成される。ミラー54は、コリメートレンズ45により平行光とされたレーザ光を反射する。ロータリソレノイド58は、制御装置200からの制御信号を受けて、予め定められた角度範囲内で正転および逆転を繰り返す。回転部56は、ロータリソレノイド58によって駆動し、鉛直方向を軸方向とする回転軸で正転および逆転を繰り返し、ミラー54を水平方向に沿った一方向に走査させる。コリメートレンズ45を介してレーザ素子41から射出されたレーザ光は、ミラー54によって反射され、ミラー54の回転により水平方向に沿って走査される。図1に示す視野範囲80は、このレーザ光の全走査範囲に相当する。視野範囲80内の各画素位置で受光強度が得られるので、視野範囲80内の受光強度の分布は一種の画像を構成する。なお、走査部50を省略して、発光部40から視野範囲80内の全体にわたってパルス光を射出するとともに、受光部60で視野範囲80内の全体にわたる反射光を受光するようにしてもよい。本実施形態では、走査範囲内における各位置、つまり、視野範囲80内の各画素位置に対してパルス光が照射される。そして、このパルス光の照射と各画素位置からの反射光に基づく後述の測距処理とが、各画素位置について所定の時間間隔で実行される。
【0013】
発光部40から出力されるレーザ光は、人や車などの外部物体(反射物)があると、その表面で乱反射し、その一部が反射光として走査部50のミラー54に戻る。この反射光は、ミラー54で反射され、外乱光とともに入射光として受光部60の受光レンズ61に入射し、受光レンズ61で集光されて受光アレイ65に入射する。なお、測距装置100から出力されるレーザ光は、外部物体に限らず、測距装置100内部の物体、例えば、窓92においても乱反射し、その反射光の一部は、受光アレイ65に入射する。
【0014】
図2に示すように、受光アレイ65は、二次元配列された複数の画素66で構成される。1つの画素66は、水平方向にH個、鉛直方向にV個となるように配列された複数のSPAD(Single Photon Avalanche Diode)回路68で構成されている。H及びVはそれぞれ1以上の整数である。本実施形態ではH=V=5であり、水平方向および鉛直方向においてそれぞれ5個のSPAD回路68で構成されている。なお、画素66を構成するSPAD回路68の数は任意であってよく、例えば、一つのSPAD回路68で画素66を構成してもよい。1つの画素66の受光結果は、視野範囲80内の1つの画素位置における受光強度となる。
【0015】
図3に示すように、SPAD回路68は、電源Vccと接地ラインとの間に直列にアバランシェダイオードDaとクエンチ抵抗器Rqとを接続し、その接続点の電圧を論理演算素子の一つである反転素子INVに入力し、電圧レベルが反転したデジタル信号に変換している。反転素子INVの出力信号Soutは、外部にそのまま出力される。本実施形態においてクエンチ抵抗器RqはFETとして構成されており、選択信号SCがアクティプとなっていれば、そのオン抵抗がクエンチ抵抗器Rqとして働く。選択信号SCがノンアクティブとなれば、クエンチ抵抗器Rqはハイインピーダンス状態となるので、光がアバランシェダイオードDaに入射しても、クエンチ電流は流れず、結果的にSPAD回路68は、動作しない。選択信号SCは、画素66内の5×5個のSPAD回路68に対しては、一括して出力され、各画素66からの信号を読み出すか否かを指定するのに用いられる。本実施形態では、アバランシェダイオードDaをガイガーモードで動作させているが、アバランシェダイオードDaをリニアモードで用い、その出力をアナログ信号のまま扱ってもよい。また、アバランシェダイオードDaに代えて、PINフォトダイオードを用いてもよい。
【0016】
SPAD回路68に光が入射していなければ、アバランシェダイオードDaは、非導通状態に保たれる。このため、反転素子INVの入力側は、クエンチ抵抗器Rqを介してプルアップされた状態、つまりハイレベルに保たれている。従って、反転素子INVの出力はロウレベルに保たれる。各SPAD回路68に外部から光が入射すると、アバランシェダイオードDaは、入射した光(フォトン)により通電状態となる。この結果、クエンチ抵抗器Rqを介して大きな電流が流れ、反転素子INVの入力側は一旦ロウレベルとなり、反転素子INVの出力はハイレベルに反転する。クエンチ抵抗器Rqを介して大きな電流が流れた結果、アバランシェダイオードDaに印加される電圧が低下することで、アバランシェダイオードDaへの電力供給が止まり、アバランシェダイオードDaは、非導通状態に戻る。この結果、反転素子INVの出力信号も反転してロウレベルに戻る。結果的に、反転素子INVは、各SPAD回路68に光(フォトン)が入射すると、ごく短時間、ハイレベルとなるパルス信号を出力する。そこで、各SPAD回路68が光を受光するタイミングに合わせて、選択信号SCをハイレベルにすれば、反転素子INVの出力信号、つまり各SPAD回路68からの出力信号Soutは、アバランシェダイオードDaの状態を反映したデジタル信号となる。そして、この出力信号Soutは、照射光が走査範囲に存在する外部物体や窓92等に反射して戻ってくる反射光や外乱光を含む入射光の受光により生じるパルス信号に相当する。
【0017】
図4に示すように、制御装置200は、CPU205と、記憶部290と、入出力インターフェイス295とを備える。CPU205と記憶部290と入出力インターフェイス295とは、それぞれバス299を介して双方向に通信可能に接続されている。入出力インターフェイス295には、発光部40、走査部50および受光部60が、それぞれ制御信号線を介して接続されている。記憶部290は、例えば、ROMやRAMやEEPROMを含む。CPU205は、記憶部290に記憶された各種のプログラム291を実行することにより、発光制御部206や演算部210として機能する。記憶部290は、プログラム291の他、後述する第1関係データRD1、第2関係データRD2および判定値データJD等の各種情報を記憶している。判定値データJDには、後述する第1判定値J、第2判定値J、第3判定値Jおよび第4判定値Jが含まれる。他の実施形態では、制御装置200の機能の一部や全部は、ハードウェア回路によって実現されてもよい。また、例えば、演算部210が、制御装置200とは別体に構成されていてもよい。
【0018】
発光制御部206は、発光部40および走査部50を制御する。より詳細には、発光制御部206は、例えば、発光部40に対する発光制御信号の送信や、走査部50に対する角度制御信号の送信を実行する。
【0019】
演算部210は、パルス光P1の飛行時間を利用して、対象物距離を演算する。対象物距離とは、測距装置100から対象物までの距離を指す。図4に示すように、発光部40から射出されたパルス光P1は、外部物体において反射され、外部物体からパルス光P1による反射光P2が出力される。また、パルス光P1は、窓92の内側表面においても反射され、窓92からパルス光P1による反射光P3が出力される。本明細書では、反射光P3のように、窓92の内側表面においてパルス光P1が反射されて得られる反射光を「クラッタ」と呼ぶ。また、測距装置100では、多重反射による反射光P4が生じる場合がある。「多重反射」とは、発光部40から射出されたパルス光P1が、対象物と受光部60との間を反射によって複数回往復することを意味する。反射光P4は、対象物によって複数回反射された後に受光部60に到達するパルス光P1に相当する。受光部60には、こうした反射光P2、P3、P4が届く。そして、パルス光P1の射出から反射光P2、P3、P4の受光までの時間が光の飛行時間として特定される。演算部210は、対象物距離の演算に、この飛行時間を利用する。
【0020】
なお、多重反射は、対象物が高い反射率を有する物体(例えば、車両の後方に設けられたリフレクタ)である場合に生じやすい。また、多重反射は、通常、対象物からの反射光が受光部60によって再び対象物に向かって反射されることに起因して生じ、時には、対象物からの反射光が窓92によって再び対象物に向かって反射されることに起因して生じる。以下では、パルス光が対象物と受光部60との間を反射によって往復した回数のことを、反射回数とも呼ぶ。反射回数は、パルス光が受光部60によって受光されるまでに対象物によって反射された回数を表しているとも言える。多重反射が生じている状態は、反射回数が2回以上である状態に相当する。
【0021】
図4に示すように、演算部210は、加算部220と、ヒストグラム生成部230と、近距離判定部240と、特徴量取得部250と、距離算出部260とを備える。更に、本実施形態における演算部210は、反射回数判定部270を備える。
【0022】
加算部220は、受光アレイ65を構成する画素66に含まれる各SPAD回路68の出力を加算する。入射する光パルスが一つの画素66に入射すると、画素66に含まれるSPAD回路68が動作する。SPAD回路68は、一つのフォトンが入射しただけでこれを検出することが可能である。しかし、SPAD回路68において、外部物体OBJから出力される限られた光の検出は確率的なものにならざるを得ない。そこで、加算部220は、確率的にしか入射光を検出し得ないSPAD回路68からの出力信号Soutを加算する。
【0023】
ヒストグラム生成部230は、出力信号Soutに基づいて、受光部60による反射光の受光強度を飛行時間ごとに表したヒストグラムHGを生成する。より詳細には、ヒストグラム生成部230は、加算部220による加算結果を取得するとともに、加算結果を予め定められた時間間隔Ti(例えば、1ナノ秒)で時系列的に記録した結果に基づいてヒストグラムHGを生成し、記憶部290に記憶させる。ヒストグラムHGにおける受光強度は、一画素66内における受光したSPAD回路68の合計数によって表される。図5では、ヒストグラムHGは、横軸を飛行時間とし、縦軸を受光強度とする模式的なグラフによって表されている。ヒストグラム生成部230は、このようなヒストグラムHGを、時間間隔Tiで記録された各受光強度ssを線形補間することによって生成する。この線形補間が実行されることによって、ヒストグラムHGの時間分解能は、時間間隔Tiによる時間分解能よりも高くなる。
【0024】
図5は、対象物が後述する近距離範囲にある場合に生成されるヒストグラムHGの例を示している。図5に示したヒストグラムHGには、受光強度のピークPKが現れている。ピークPKは、ピークPKの頂点TPに向かって立ち上がる部分である立ち上がり部PRと、頂点TPから立ち下がる部分である立ち下がり部PFとを有している。立ち上がり部PRは、ピークPKのうち、その受光強度がピーク強度TPvに向かって上昇する部分であるとも言える。ピーク強度TPvは、ピークPKの頂点TPにおける受光強度を指す。また、立ち下がり部PFは、その受光強度がピーク強度TPvから下降する部分であるとも言える。以下では、立ち上がり部PRが生じるタイミングのことを立ち上がりタイミングRTとも呼び、立ち下がり部PFが生じるタイミングのことを立ち下がりタイミングFTとも呼ぶ。本実施形態では、立ち上がりタイミングRTと立ち下がりタイミングFTとは、それぞれ、飛行時間によって表される。
【0025】
図5に示すように、立ち上がりタイミングRTは、第1立ち上がりタイミングRT1と、第2立ち上がりタイミングRT2とを含む。第1立ち上がりタイミングRT1は、立ち上がりタイミングRTのうち、受光強度が第1閾値TS1を取るタイミングである。第2立ち上がりタイミングRT2は、立ち上がりタイミングRTのうち、受光強度が第2閾値TS2を取るタイミングである。第2閾値TS2は、第1閾値TS1よりも大きい。また、第2立ち下がりタイミングFT2は、第1立ち下がりタイミングFT1と、第2立ち下がりタイミングFT2とを含む。第1立ち下がりタイミングFT1は、立ち下がりタイミングFTのうち、受光強度が第1閾値TS1を取るタイミングである。第2立ち下がりタイミングFT2は、立ち下がりタイミングFTのうち、受光強度が第2閾値TS2を取るタイミングである。第1閾値TS1および第2閾値TS2の詳細については後述する。
【0026】
図5には、第1時間幅PW1と第2時間幅PW2とが示されている。第1時間幅PW1は、ヒストグラムHGにおける第1立ち上がりタイミングRT1と第1立ち下がりタイミングFT1との間の時間幅を表す。第2時間幅PW2は、ヒストグラムHGにおける第2立ち上がりタイミングRT2と第2立ち下がりタイミングFT2との間の時間幅を表す。
【0027】
図6では、図5のピークPKが模式的に示されている。図6に示すように、図5に示したピークPKは、互いに重畳するクラッタピークPcと所望信号ピークPdと多重反射ピークPmとが合成されたピークである。クラッタピークPcは、反射光P3に基づくピーク、つまり、クラッタによるピークを表す。所望信号ピークPdは、反射光P2に基づくピークを表す。より具体的には、所望信号ピークPdは、反射回数が1回である反射光に基づくピークであり、クラッタピークPcとも多重反射ピークPmとも異なるピークである。多重反射ピークPm2は、反射光P4に基づくピーク、つまり、多重反射によるピークを表す。より詳細には、多重反射ピークPm2は、2回目の反射による多重反射ピークである。以下では、多重反射によるピークのことを、その反射回数に関わらず、単に、多重反射ピークPmとも表記する。なお、図6では、便宜上、クラッタピークPcと所望信号ピークPdとがそれぞれ同じ受光強度を有する場合の例が示されているが、通常、クラッタピークPcの受光強度は、所望信号ピークPdの受光強度よりも低い。また、多重反射ピークPmの受光強度は、所望信号ピークPdの受光強度と同程度の場合もあれば、所望信号ピークPdの受光強度より低い場合もある。
【0028】
クラッタピークPcは、所望信号ピークPdよりも時間的に早く現れ、多重反射ピークPmは、所望信号ピークPdよりも時間的に遅く現れる。なお、反射回数が3回以上である場合、3回目以降の反射に起因するピークが多重反射ピークPm2よりも時間的に遅く現れ、多重反射ピークPm2に重畳し得る。本明細書において、「所望信号ピークPdに多重反射ピークPmが重畳する」の意味は、所望信号ピークPdに直接的に多重反射ピークPmが重畳することのみならず、所望信号ピークPdに重畳する多重反射ピークPmに更に多重反射ピークPmすることをも含む。また、反射回数が1回である場合には、多重反射ピークPmは、現れない。
【0029】
図4に示した近距離判定部240は、ヒストグラムHGにおける立ち上がりタイミングRTに基づいて、対象物が予め定められた近距離範囲にあるか否かを判定する。近距離範囲とは、測距装置100から予め定められた程度以上に近い範囲のことを指す。より詳細には、近距離範囲は、ヒストグラムHGにおいて、所望信号ピークPdにクラッタピークPcが重畳する程度に近い範囲として、実験やシミュレーションに基づいて定められる。本明細書では、近距離範囲よりも遠い範囲のことを遠距離範囲とも呼ぶ。
【0030】
図7には、ヒストグラムの例として、対象物が遠距離範囲にある場合に生成されるヒストグラムHG2が模式的に示されている。ヒストグラムHG2では、図5図6に示したヒストグラムHGとは違って、クラッタピークPcが、所望信号ピークPdに重畳していない。これは、遠距離範囲では、対象物と測距装置100との距離が比較的遠いことに起因して、受光部60において、クラッタが受光されてから比較的に長時間が経過した後に対象物による反射光が受光されるからである。また、このように対象物と測距装置100との距離が比較的遠いと、仮に多重反射が生じる場合であっても、受光部60において、対象物による反射光が受光されてから比較的に長時間が経過した後に多重反射による反射光が受光される。この結果、遠距離範囲では、クラッタピークPcだけでなく、多重反射ピークPmも所望信号ピークPdに重畳しない。例えば、図7に示したヒストグラムHG2では、多重反射ピークPm2は、所望信号ピークPdに重畳していない。
【0031】
図4に示した特徴量取得部250は、ヒストグラム生成部230によって生成されたヒストグラムHGに基づいて、ピークPKに関する種々の特徴量を取得する。この特徴量には、反射回数に関する特徴量である反射回数特徴量が含まれる。本実施形態では、特徴量取得部250は、反射回数特徴量として、反射回数と相関する特徴量である第1時間幅PW1と第2時間幅PW2とを取得する。対象物が近距離範囲にある場合、反射回数がより多いほど、第1時間幅PW1や第2時間幅PW2は、より大きくなる傾向を有する。これは、近距離範囲では、反射回数が多いほど、所望信号ピークPdに対して、より多数の多重反射ピークPmが重畳するからである。
【0032】
反射回数判定部270は、後述するように、対象物が近距離範囲にある場合、反射回数特徴量に基づいて反射回数を判定する。
【0033】
距離算出部260は、対象物距離を算出する。距離算出部260は、対象物が近距離範囲にある場合には、反射回数特徴量と立ち下がりタイミングFTとに基づいて対象物距離を算出する。後述するように、本実施形態では、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にある場合、立ち下がりタイミングFTと、反射回数特徴量に基づいて判定された反射回数とに基づいて対象物距離を算出する。また、本実施形態では、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にない場合、立ち上がりタイミングRTに基づいて対象物距離を算出する。
【0034】
図8に示す測距処理は、対象物距離を測定するために実行される。測距処理は、例えば、ヒストグラム生成部230によりヒストグラムが生成されたタイミングで、演算部210によって開始される。
【0035】
ステップS10にて、特徴量取得部250は、生成されたヒストグラムHGにおいてピークPKを特定するとともに、そのピークPKに関する種々の特徴量を取得する。より詳細には、特徴量取得部250は、ステップS10において、第1立ち上がりタイミングRT1と、第2立ち上がりタイミングRT2と、第1立ち下がりタイミングFT1と、第2立ち下がりタイミングFT2とをそれぞれ特定するとともに、各タイミングを表す飛行時間の値を取得する。また、特徴量取得部250は、第1時間幅PW1と第2時間幅PW2とを、取得したこれらの値に基づいて算出することによって取得する。例えば、特徴量取得部250は、ピークPKにおいて受光強度が第1閾値TS1を取る2つの飛行時間を特定し、特定した2つの飛行時間のうち、時間的により早い時間を第1立ち上がりタイミングRT1と特定し、時間的により遅い時間を第1立ち下がりタイミングFT1と特定する。また、略同様に、特徴量取得部250は、ピークPKにおいて受光強度が第2閾値TS2を取る2つの飛行時間に基づいて、第2立ち上がりタイミングRT2と第2立ち下がりタイミングFT2とを特定する。
【0036】
ステップS20にて、近距離判定部240は、対象物が近距離範囲にあるか否かを判定する。本実施形態におけるステップS20では、近距離判定部240は、第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて、対象物が近距離範囲にあるか否かを判定する。ステップS20では、近距離判定部240は、例えば、第2立ち上がりタイミングRT2を表す時間が、予め定められた時間の閾値以下である場合に、対象物が近距離範囲にあると判定する。なお、他の実施形態では、演算部210は、例えば、第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて距離を算出し、その距離が予め定められた距離閾値以下である場合に、対象物が近距離範囲にあると判定してもよい。
【0037】
なお、図5に示した第2閾値TS2は、例えば、ピーク強度TPvの80%以上かつ100%以下の値に定められると好ましく、本実施形態では、ピーク強度TPvの100%の値である。上述したように、クラッタピークPcの受光強度は、一般的に、所望信号ピークPdの受光強度よりも小さい。そのため、第2閾値TS2をピーク強度TPvの80%以上に設定することで、第2立ち上がりタイミングRT2にクラッタピークPcによる影響が及びにくくなる。
【0038】
ステップS20で対象物が近距離範囲にないと判定された場合、ステップS30にて、距離算出部260は、立ち上がりタイミングRTに基づいて対象物距離を算出する。より詳細には、本実施形態におけるステップS30では、距離算出部260は、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて対象物距離を算出する。例えば、距離算出部260は、第1立ち上がりタイミングRT1が表す時間に時間値Δt1を加算することによって算出される値を、パルス光P1および反射光P2の飛行時間として利用して対象物距離を算出する。時間値Δt1は、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて所望信号ピークPdの中心位置を算出するための値として、例えば、パルス光P1の波形に基づいて予め定められる。
【0039】
なお、図5に示した第1閾値TS1は、例えば、ピーク強度TPvの40%以上かつ70%以下の値に定められると好ましく、本実施形態では、ピーク強度TPvの50%の値である。立ち上がりタイミングRTのうち、その受光強度がピーク強度TPvの40%以上かつ70%以下の値を取る範囲では、線形補間の精度がより高い。そのため、上記のように第1閾値TS1を設定することで、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて、より精度良く対象物距離を算出できる。なお、通常、第1立ち上がりタイミングRT1における線形補間の精度は、第2立ち上がりタイミングRT2における線形補間の精度よりも高い。そのため、第1立ち上がりタイミングRT1を用いることで、第2立ち上がりタイミングRT2を用いる場合と比較して、より精度良く対象物距離を算出できる。同様に、通常、第1立ち下がりタイミングFT1における線形補間の精度は、第2立ち下がりタイミングFT2における線形補間の精度よりも高い。
【0040】
図8のステップS20で対象物が近距離範囲にあると判定された場合、ステップS40にて、反射回数判定部270は、反射回数を判定する。本実施形態におけるステップS40では、反射回数判定部270は、図9に示す反射回数判定処理を実行することによって反射回数を判定する。
【0041】
図9のステップS405にて、反射回数判定部270は、図8のステップS10で特定された第2立ち上がりタイミングRT2が、図10図11に示す基準タイミングST以前であるか否かを判定する。基準タイミングSTは、第2立ち上がりタイミングRT2と反射回数特徴量とを用いて反射回数を判定する場合に、反射回数特徴量として第1時間幅PW1を用いるか、あるいは、第2時間幅PW2を用いるかを決定するために用いられる。後述するように、反射回数判定部270は、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングSTよりも後である場合、第1時間幅PW1を反射回数特徴量として用いる。一方で、反射回数判定部270は、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前である場合、第2立ち上がりタイミングRT2を反射回数特徴量として用いる。
【0042】
第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングSTよりも後である場合、図9のステップS410からステップS430にて、反射回数判定部270は、第2立ち上がりタイミングRT2と、反射回数特徴量としての第1時間幅PW1との対応関係に基づいて、反射回数を判定する。まず、反射回数判定部270は、ステップS410において、第1時間幅PW1が第1判定値J以下であるか否かを判定する。本実施形態における第1判定値Jは、第2立ち上がりタイミングRT2の関数として定義され、下記式(1)によって表される。
=at+b …(1)
時間tは、第2立ち上がりタイミングRT2を表す。係数aおよび係数bは、図10に示す第1関係データRD1に基づいて定められる。第1関係データRD1の詳細については後述する。
【0043】
第1時間幅PW1が第1判定値J以下である場合、反射回数判定部270は、ステップS415にて、反射回数が1回であると判定する。一方で、第1時間幅PW1が第1判定値Jより大きい場合、図8のステップS420にて、反射回数判定部270は、第1時間幅PW1が第2判定値J以下であるか否かを判定する。本実施形態における第2判定値Jは、第1判定値Jと同様に、第2立ち上がりタイミングRT2の関数として定義され、下記式(2)によって表される。
=at+b …(2)
係数aおよび係数bは、上記の係数aおよび係数bと略同様に、第1関係データRD1に基づいて定められる。第1時間幅PW1が第2判定値J以下である場合、反射回数判定部270は、ステップS425にて、反射回数が2回であると判定する。また、第1時間幅PW1が第2判定値Jより大きい場合、反射回数判定部270は、ステップS430にて、反射回数が3回であると判定する。
【0044】
図10に示した第1関係データRD1は、対象物が近距離範囲にある場合における、測距ごとの第2立ち上がりタイミングRT2と第1時間幅PW1との関係を表すデータである。以下では、この第2立ち上がりタイミングRT2と第1時間幅PW1との関係を第1関係RP1とも呼ぶ。第1関係データRD1は、実験やシミュレーションによって予め実行された測距に関するデータであり、例えば、実験やシミュレーションの結果に基づいて、測距ごとの第2立ち上がりタイミングRT2と第1時間幅PW1とを関連付けて記録することによって生成される。図10では、第1関係データRD1は、横軸を第2立ち上がりタイミングRT2とし、縦軸を第1時間幅PW1とするグラフによって、より詳細には、各第1関係RP1をデータ点として表す散布図によって表されている。なお、図10では、第1関係RP1を表すデータ点のうち、一部のみが代表的に示されている。第1関係データRD1には、多重反射が生じない場合の第1関係RP1だけでなく、多重反射が生じた場合の第1関係RP1も含まれる。例えば、図10に示した第1関係データRD1には、反射回数がそれぞれ1回、2回、3回である場合における第1関係RP1が含まれている。また、図10に示した第1関係データRD1には、所望信号ピークPdに対するクラッタピークPcの重畳が生じた場合における第1関係RP1が含まれている。なお、本実施形態における第1関係データRD1では、各第1関係RP1に反射回数が関連付けられている。
【0045】
図10には、それぞれ複数のデータ点を含む第1群Gp1と第2群Gp2と第3群Gp3とが示されている。図10では、第1群Gp1が右上がりのハッチングによって示され、第2群Gp2が右下がりのハッチングによって示され、第3群Gp3が点模様のハッチングによって示されている。第1群Gp1と第2群Gp2と第3群Gp3とは、それぞれ、反射回数が1回、2回、3回である場合における第1関係RP1の群を表している。図10に示すように、第1群Gp1と第2群Gp2と第3群Gp3とは、第2立ち上がりタイミングRT2が大きいほど、互いに離れて分布する。これは、対象物までの距離が遠いほど、多重反射ピークPmが所望信号ピークPdに対して時間的により遅く重畳し、反射回数の増加による第1時間幅PW1の増分がより大きくなるからである。
【0046】
上述した第1判定値Jの係数aおよび係数bは、第1関係データRD1における基準タイミングSTよりも時間的に遅い範囲で、第1判定値Jを表す直線が第1群Gp1と第2群Gp2との間に位置するように定められる。例えば、係数aおよび係数bは、第1関係データRD1において、第1判定値Jを表す直線が、第1群Gp1と第2群Gp2との間に位置し、かつ、第1群Gp1と第2群Gp2とに含まれる各データ点からより遠くに位置するように定められる。また、第2判定値Jの係数aおよび係数bは、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングSTよりも後である場合に、第1関係データRD1上で、第2判定値Jを表す直線が第2群Gp2と第3群Gp3との間に位置するように定められる。例えば、係数aおよび係数bは、係数aおよび係数bと略同様に、第2判定値Jを表す直線が、第2群Gp2と第3群Gp3との間に位置し、かつ、第2群Gp2と第3群Gp3とに含まれる各データ点からより遠くに位置するように定められる。こうして定められる係数aは、係数aよりも大きい値であり、係数bは、係数bよりも大きい値である。
【0047】
第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前である場合、図9のステップS435からステップS455にて、反射回数判定部270は、第2立ち上がりタイミングRT2と、反射回数特徴量としての第2時間幅PW2との対応関係に基づいて、反射回数を判定する。まず、反射回数判定部270は、ステップS435において、第2時間幅PW2が第3判定値J以下であるか否かを判定する。本実施形態における第3判定値Jは、第1判定値Jや第2判定値Jと同様に、第2立ち上がりタイミングRT2の関数として定義され、下記式(3)によって表される。
=at+b …(3)
係数aおよび係数bは、図11に示す第2関係データRD2に基づいて定められる。第2関係データRD2の詳細については後述する。
【0048】
第2時間幅PW2が第3判定値J以下である場合、反射回数判定部270は、図9のステップS440にて、反射回数が1回であると判定する。第2時間幅PW2が第3判定値Jより大きい場合、ステップS445にて、反射回数判定部270は、第2時間幅PW2が第4判定値J以下であるか否かを判定する。本実施形態における第4判定値Jは、第1判定値Jから第3判定値Jと同様に、第2立ち上がりタイミングRT2の関数として定義され、下記式(4)によって表される。
=at+b …(4)
係数aおよび係数bは、係数aおよび係数bと同様に、第2関係データRD2に基づいて定められる。第2時間幅PW2が第4判定値J4以下である場合、反射回数判定部270は、ステップS450にて、反射回数が2回であると判定する。また、第2時間幅PW2が第4判定値J4より大きい場合、反射回数判定部270は、ステップS455にて、反射回数が3回であると判定する。
【0049】
図11に示した第2関係データRD2は、対象物が近距離範囲にある場合における、測距ごとの第2立ち上がりタイミングRT2と第2時間幅PW2との関係を表すデータである。以下では、この第2立ち上がりタイミングRT2と第2時間幅PW2との関係を第2関係RP2とも呼ぶ。第2関係データRD2は、第1関係データRD1と同様に、実験シミュレーションによって予め実行された測距に関するデータであり、例えば、第1関係データRD1と略同様に、測距ごとの第2立ち上がりタイミングRT2と第2時間幅PW2とを関連付けて記録することによって生成される。図11では、第2関係データRD2は、図10と略同様に、各第2関係RP2をデータ点として表す散布図によって表されている。
【0050】
図11には、それぞれ複数のデータ点を含む第4群Gp4と第5群Gp5と第6群Gp6とが示されている。図11では、第4群Gp4が右上がりのハッチングによって示され、第5群Gp5が右下がりのハッチングによって示され、第6群Gp6が点模様のハッチングによって示されている。第4群Gp4と第5群Gp5と第6群Gp6とは、それぞれ、反射回数が1回、2回、3回である場合における第2関係RP2の群を表している。図11に示すように、第4群Gp4と第5群Gp5と第6群Gp6とは、図10の第1群Gp1から第3群Gp3と略同様に、第2立ち上がりタイミングRT2が大きいほど、互いに離れて分布する。
【0051】
上述した第3判定値Jの各係数は、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前である場合に、第2関係データRD2上で、第3判定値Jを表す直線が第4群Gpと第5群Gpとの間に位置するように定められる。また、第4判定値Jの各係数は、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前である場合に、第2関係データRD2上で、第4判定値Jを表す直線が第5群Gp5と第6群Gp6との間に位置するように定められる。これらの各係数は、例えば、第1判定値Jの各係数や第2判定値Jの各係数と略同様に定められる。このように定められる係数aは、係数aより大きく、かつ、係数aより小さい値である。また、係数bは、係数bより大きく、かつ、係数bより小さい値である。また、係数aは、係数aより小さい値であり、係数bは、係数bより小さい値である。
【0052】
なお、他の実施形態では、第1判定値Jや第2判定値Jや第3判定値Jや第4判定値Jは、一次関数として定義されていなくてもよい。例えば、これらの判定値は、第2立ち上がりタイミングRT2に関する二次以上の関数や指数関数等として定義されていてもよい。
【0053】
図12には、ヒストグラムHGの例としてヒストグラムHG3が示されている。ヒストグラムHG3には、互いに重畳する所望信号ピークPdと多重反射ピークPm2と多重反射ピークPm3とが合成されたピークPK3が示されている。多重反射ピークPm3は、3回目の反射に起因する多重反射ピークPmである。図12では、多重反射ピークPm3の強度は、第1閾値TS1よりも高く、かつ、第2閾値TS2よりも低い。
【0054】
図12に示した例では、多重反射ピークPmの受光強度が第2閾値TS2よりも低いことに起因して、第2時間幅PW2の範囲から多重反射ピークPmが除外される。そのため、この場合に第2時間幅PW2を反射回数特徴量として用いると、反射回数が実際よりも少なく判定される可能性が高い。例えば、図11に示した第7群Gp7は、反射回数が2回であり、かつ、多重反射ピークPmの受光強度が第2閾値TS2よりも低い場合における第2関係RP2の群を表している。図11では、第7群Gp7は、第5群Gp5と同様に右上がりのハッチングによって示されている。第7群Gp7は、図11において、第4群Gp4と重なっている。そのため、多重反射ピークPmの受光強度が第2閾値TS2よりも低い場合、実際の反射回数が2回であっても、第3判定値Jに基づいて反射回数が1回であると判定される可能性がある。また、第8群Gp8は、反射回数が3回であり、かつ、3回目の反射に起因するピークの受光強度が第2閾値TS2よりも低い場合における第2関係RP2の群を表している。図11では、第8群Gp8は、第6群Gp6と同様に点模様のハッチングによって示されている。第8群Gp8は、図11において、第5群Gp5と重なっている。そのため、3回目の反射に起因するピークの受光強度が第2閾値TS2よりも低い場合、実際の反射回数が3回であっても、第3判定値Jおよび第4判定値Jに基づいて反射回数が2回であると判定される可能性がある。
【0055】
図11に示すように、第7群Gp7や第8群Gp8によって表される第2関係RP2は、第2立ち上がりタイミングRT2が時間的により後である場合に生じやすい。これは、多重反射によるピークの受光強度は、対象物までの距離が遠いほど、測距装置100と対象物との間におけるパルス光の減衰に起因して低下しやすいからである。そのため、上述した基準タイミングSTは、反射回数が実際よりも少ない回数に判定されることを抑制できる程度に、時間的に早いタイミングとして定められると好ましい。つまり、基準タイミングSTは、第2時間幅PW2を用いることで反射回数が実際よりも少ない回数に判定される可能性が高い場合に、第2時間幅PW2が反射量特徴量として選択されないタイミングとして定められると好ましい。
【0056】
図13には、ヒストグラムHGの例としてヒストグラムHG4が示されている。ヒストグラムHG4には、互いに重畳するクラッタピークPcと所望信号ピークPdと多重反射ピークPm2とが合成されたピークPK4が示されている。図13では、クラッタピークPcの強度は、第1閾値TS1よりも高く、かつ、第2閾値TS2よりも低い。
【0057】
図13に示した例では、クラッタピークPcの受光強度が第1閾値TS1よりも高いことに起因して、第1時間幅PW1の範囲にクラッタピークPcが含まれる。この場合、第1時間幅PW1を反射回数特徴量として用いると、反射回数を実際よりも多い回数に判定する可能性がある。特に、対象物までの距離が近い場合、クラッタピークPcと所望信号ピークPdとが時間的に近くなるため、クラッタピークPcの受光強度が第1閾値TS1よりも高いことに起因して、反射回数が実際よりも多い回数に判定されやすい。そのため、上述した基準タイミングSTは、第1時間幅PW1を反射回数特徴量として用いる場合に反射回数が実際よりも多く判定されることを抑制できる程度に、時間的に遅いタイミングとして定められると好ましい。つまり、基準タイミングSTは、第1時間幅PW1を用いることで反射回数が実際よりも多い回数に判定される可能性が高い場合に、第1時間幅PW1が反射量特徴量として選択されないタイミングとして定められると好ましい。
【0058】
図8のステップS50にて、距離算出部260は、ステップS40で判定された反射回数と、第2立ち下がりタイミングFT2とに基づいて対象物距離を算出する。例えば、距離算出部260は、第1立ち下がりタイミングFT1が表す時間を反射回数によって除した値から時間値Δt2を差し引くことによって算出される値を、パルス光P1および反射光P2の飛行時間として利用して対象物距離を算出する。時間値Δt2は、第1立ち下がりタイミングFT1に基づいて所望信号ピークPdの中心位置を算出するための値として、例えば、パルス光P1の波形に基づいて予め定められる。
【0059】
以上で説明した本実施形態の測距装置100によれば、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にある場合、反射回数特徴量と、ピークの立ち下がりタイミングFTとに基づいて対象物距離を算出する。このような形態によれば、対象物が近距離範囲にある場合に、ピークの立ち下がりタイミングFTに基づいて対象物距離が算出されるので、所望信号ピークPdへのクラッタピークPcの重畳に起因する測距精度の低下を抑制できる。また、反射回数特徴量に基づいて対象物距離が算出されるので、所望信号ピークPdへの多重反射ピークPmの重畳に起因する測距精度の低下を抑制できる。そのため、クラッタピークPcや多重反射ピークPmの重畳に起因する測距精度の低下を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にない場合、立ち上がりタイミングRTに基づいて対象物距離を算出する。そのため、対象物が近距離範囲にない場合には、立ち上がりタイミングRTに基づいて簡易に対象物距離を算出できる。
【0061】
また、本実施形態では、近距離判定部240は、受光強度が第1閾値TS1よりも大きい第2閾値TS2を取る第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて、対象物が近距離範囲にあるか否かを判定し、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にない場合、受光強度が第1閾値TS1を取る第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて対象物距離を算出する。このようにすれば、第1立ち上がりタイミングRT1に比較してクラッタピークPcによる影響が及びにくい第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて、対象物距離が近距離範囲にあるか否かを判定できる。また、対象物距離が近距離範囲にない場合、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて対象物距離を算出するので、例えば、第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて対象物距離を算出する場合と比較して、より精度良く対象物距離を算出できる。
【0062】
また、本実施形態では、反射回数判定部270は、対象物が近距離範囲にある場合、反射回数特徴量に基づいて反射回数を判定し、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にある場合、判定された反射回数と立ち下がりタイミングFTとに基づいて対象物距離を算出する。そのため、反射回数特徴量に基づいて反射回数を判定できるとともに、判定された反射回数に基づいて対象物距離を算出できる。
【0063】
また、本実施形態では、反射回数判定部270は、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングSTよりも後である場合、第2立ち上がりタイミングRT2と第1時間幅PW1との対応関係に基づいて反射回数を判定し、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前である場合、第2立ち上がりタイミングRT2と第2時間幅PW2との対応関係に基づいて反射回数を判定する。そして、距離算出部260は、反射回数と、第1立ち下がりタイミングFT1とに基づいて対象物距離を算出する。このようにすれば、クラッタピークPcの受光強度が第1時間幅PW1に与える影響や、多重反射ピークPmの受光強度が第2時間幅PW2に与える影響を加味して、より適切に反射回数を判定でき、このように判定された反射回数を対象物距離の算出に用いることができる。また、第1立ち下がりタイミングFT1に基づいて反射回数を判定するので、例えば、第2立ち下がりタイミングFT2に基づいて反射回数を判定する場合と比較して、より精度良く対象物距離を算出できる。そのため、より適切に対象物距離を算出できる。
【0064】
B.第2実施形態:
図14に示すように、第2実施形態における測距装置100bの記憶部290bは、第1実施形態とは違って、補正データCDを記憶している。また、本実施形態における距離算出部260bは、後述するように、ヒストグラムHGにおける受光強度に基づいて、対象物距離を補正する。第2実施形態における測距装置100bの構成のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0065】
補正データCDは、受光強度に基づいて対象物距離を補正するためのデータである。測距装置100では、対象物までの距離が同じであっても、反射光の強度に依存してピークPKの形状が変化し得る。これは、画素66を構成するSPAD回路68の個数が有限であり、かつ、画素66を構成するSPAD回路68による反射光の検出が確率的であることに起因する。例えば、反射光の強度が比較的高い場合(例えば、対象物が高い反射率を有する物体である場合)、反射光が画素66に到達した初期の段階や終期の段階であっても多数のSPAD回路68が光を検出するため、立ち上がりタイミングRTが時間的に早くなり、立ち下がりタイミングFTが時間的に遅くなる。一方で、反射光の強度が比較的低い場合、反射光が画素66に到達した初期の段階や終期の段階では少数のSPAD回路68のみが光を検出するため、立ち上がりタイミングRTが時間的に遅くなり、立ち下がりタイミングFTが時間的に早くなる。本実施形態における距離算出部260bは、補正データCDを用いて対象物距離を補正することで、対象物距離の算出結果に、上記のように反射光の強度に依存して立ち上がりタイミングRTや立ち下がりタイミングFTが変化することによる影響が及ぶことを抑制する。
【0066】
また、本願発明者らは、立ち上がりタイミングRTと立ち下がりタイミングFTとの間で、反射光の強度による変化の傾向がそれぞれ異なることを見出した。より詳細には、本願発明者らは、反射光の強度による立ち下がりタイミングFTの変化量が、反射光P2の強度による立ち上がりタイミングRTの変化量と比較して小さいことを見出した。本実施形態における補正データCDは、上記の傾向の差異に対応して、対象物距離の算出に立ち上がりタイミングRTを用いる場合と立ち下がりタイミングFTを用いる場合とで、それぞれ異なる強度で対象物距離を補正できるように定義されている。
【0067】
図15に示すように、本実施形態における補正データCDは、時間値Δt1や時間値Δt2をピーク強度TPvに基づいて補正するためのデータである。第1実施形態で説明したように、時間値Δt1は、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて対象物距離を算出するのに用いられ、時間値Δt2は、第1立ち下がりタイミングFT1に基づいて対象物距離を算出するのに用いられる。以下では、時間値Δt1と時間値Δt2とを区別しない場合、両者を単に時間値Δtとも呼ぶ。図15に示した補正データCDは、時間値Δt1を補正するための補正値cv1と、時間値Δt2を補正するための補正値cv2とを含んでいる。本実施形態では、補正値cv1は、ピーク強度TPvに関する正の一次関数として定義されている。また、補正値cv2は、ピーク強度TPvに関する負の一次関数として定義されている。なお、他の実施形態では、補正値cv1や補正値cv2は、例えば、ピーク強度TPvに関する二次以上の関数や指数関数等として定義されていてもよい。
【0068】
補正値cv1と補正値cv2とは、それぞれ、補正の強度が異なるように定義されている。例えば、ピーク強度TPvが強度ss1である場合、補正値cv1は、値c1であり、補正値cv2は、値c2である。値c1の絶対値は、値c2の絶対値よりも大きい。本実施形態では、このような補正の強度の差異は、補正値cv1の傾きの絶対値が補正値cv2の傾きの絶対値よりも大きいことによって実現されている。
【0069】
本実施形態では、距離算出部260bは、図8のステップS30において、補正データCDに含まれる補正値cv1に基づいて補正された時間値Δt1を用いて、対象物距離を算出する。また、距離算出部260bは、ステップS50において、補正値cv2に基づいて補正された時間値Δt2を用いて、対象物距離を算出する。このようにすることで、距離算出部260bによって算出される対象物距離が受光強度に基づいて、より詳細には、ピーク強度TPvに基づいて補正される。また、対象物距離の算出に立ち上がりタイミングRTを用いる場合と立ち下がりタイミングFTを用いる場合とで補正の強度が異なるように、対象物距離が補正される。
【0070】
以上で説明した第2実施形態によれば、距離算出部260bは、受光強度に基づいて対象物距離を補正する。このようにすれば、受光強度に基づいて対象物距離を補正できる。そのため、対象物距離の算出結果に、反射光の強度に依存して立ち上がりタイミングRTや立ち下がりタイミングFTが変化することによる影響が及ぶことを抑制できる。従って、より精度良く対象物距離を算出できる。
【0071】
また、本実施形態では、距離算出部260bは、対象物距離の算出に立ち上がりタイミングRTを用いる場合と立ち下がりタイミングFTを用いる場合とで、対象物距離の補正の強度を異ならせる。そのため、対象物距離の算出に立ち上がりタイミングRTを用いる場合と立ち下がりタイミングFTを用いる場合とのいずれの場合であっても、対象物距離をより適切に補正できる可能性が高まる。
【0072】
なお、第2実施形態では、距離算出部260bは、時間値Δt1や時間値Δt2を受光強度に基づいて補正することで対象物距離を補正しているが、他の実施形態では、上記と異なる方法で受光強度に基づいて対象物距離を補正してもよい。例えば、距離算出部260bによって算出された対象物距離が、受光強度に基づいて補正されてもよい。また、第1立ち上がりタイミングRT1や第1立ち下がりタイミングFT1を受光強度に基づいて補正することによって、対象物距離を補正してもよい。また、第2立ち上がりタイミングRT2や第2立ち下がりタイミングFT2を受光強度に基づいて補正してもよいし、第2立ち上がりタイミングRT2や第2立ち下がりタイミングFT2を利用して算出される外部物体までの距離を受光強度に基づいて補正してもよい。また、こうした補正は、対象物距離の算出のみならず、例えば、ステップS20における対象物が近距離範囲にあるか否かの判定や、図9の各種ステップにおける判定に用いられてもよい。
【0073】
また、図16に示した他の実施形態における補正データCDbは、補正データCDとは異なり、時間値Δt2の補正値として、反射回数が1回である場合における補正値cv2aと、反射回数が2回である場合における補正値cv2bと、反射回数が3回である場合における補正値cv2cとを含んでいる。補正値cv2aと補正値cv2bと補正値cv2cとは、それぞれ、図15の補正値cv2と同様にピーク強度TPvに関する負の関数として定義されており、各補正値の傾きは、それぞれ異なる。より詳細には、各補正値の傾きの絶対値は、補正値cv2a、cv2b、cv2cの順に大きい。なお、図16では、時間値Δt1の補正値は省略されている。距離算出部260bは、図8のステップS50において、この補正データCDbを用いることで、判定された反射回数に応じて対象物距離の補正の強度を異ならせることができる。例えば、受光強度が強度ss2である場合、補正値cv2aは値c3を取り、補正値cv2bは値c4を取り、補正値cv2cは値c5を取る。これら値の絶対値は、値c3、c4、c5の順に大きい。
【0074】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にない場合、第1立ち上がりタイミングRT1に基づいて対象物距離を算出しているが、このように対象物距離を算出しなくてもよい。例えば、距離算出部260は、第2立ち上がりタイミングRT2に基づいて対象物距離を算出してもよい。また、距離算出部260は、立ち上がりタイミングRTではなく、第1立ち下がりタイミングFT1や第2立ち下がりタイミングFT2に基づいて対象物距離を算出してもよい。
【0075】
(C-2)上記実施形態では、距離算出部260は、対象物が近距離範囲にない場合、第1立ち下がりタイミングFT1に基づいて対象物距離を算出しているが、例えば、第2立ち下がりタイミングFT2に基づいて対象物距離を算出してもよい。この場合、例えば、第2立ち上がりタイミングRT2が基準タイミングST以前であるか後であるかに関わらず、第2立ち上がりタイミングRT2を反射回数特徴量として用いて反射回数を判定してもよい。より詳細には、例えば、図12の例では、上述したように、第2立ち上がりタイミングRT2と第2時間幅PW2との対応関係に基づいて反射回数を判定すると、反射回数が2回と判定される。しかし、この場合、第2立ち下がりタイミングFT2は、多重反射ピークPm2の立ち下がりタイミングに対応する。そのため、この場合、第2立ち下がりタイミングFT2と反射回数(2回)とに基づいて対象物距離を測定すれば、反射回数が実際よりも少なく判定されることに起因して測距精度が低下することを抑制できる。
【0076】
(C-3)上記実施形態では、例えば、予め生成された機械学習モデルを用いて、反射回数が判定されてもよい。この機械学習モデルは、例えば、反射回数特徴量を含む各種特徴量に基づいて反射回数を判定できるように、反射回数特徴量を含む各種特徴量と反射回数との関係を予め機械学習させることによって生成される。このような機械学習モデルとしては、例えば、ニューラルネットワークや決定木やサポートベクターマシン等を適用できる。また、機械学習には、教師あり学習や教師なし学習や強化学習といった種々の機械学習のアルゴリズムが用いられてよい。
【0077】
(C-4)上記実施形態では、演算部210は、反射回数判定部270を有しているが、反射回数判定部270を有していなくてもよい。例えば、測距処理において、対象物が近距離範囲にある場合に、反射回数を判定することなく、立ち下がりタイミングFTと反射回数特徴量とに基づいて対象物距離を算出してもよい。
【0078】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0079】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0080】
<形態1>測距装置(100,100b)は、パルス光を射出する発光部(40)と、対象物によって反射される前記パルス光の反射光を受光し、前記反射光に基づく出力信号(Sout)を出力する受光部(60)と、前記パルス光の飛行時間を利用して、前記対象物までの距離である対象物距離を演算する演算部(210)と、を備える。前記演算部は、前記出力信号に基づいて、前記受光部による前記反射光の受光強度を飛行時間ごとに表したヒストグラム(HG)を生成するヒストグラム生成部(230)と、前記ヒストグラムにおける前記受光強度のピーク(PK)の立ち上がりタイミング(RT)に基づいて、前記対象物が予め定められた近距離範囲にあるか否かを判定する近距離判定部(240)と、前記ヒストグラムに基づいて、前記パルス光が前記対象物と前記受光部との間を反射によって往復した回数を表す反射回数に関する特徴量を取得する特徴量取得部(250)と、前記対象物が前記近距離範囲にある場合、前記特徴量と、前記ピークの立ち下がりタイミング(FT)と、に基づいて前記対象物距離を算出する距離算出部(260,260b)と、を有する。
【0081】
<形態2>上記形態1の測距装置において、前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にない場合、前記立ち上がりタイミングに基づいて前記対象物距離を算出してもよい。
【0082】
<形態3>上記形態2の測距装置において、前記立ち上がりタイミングは、前記受光強度が第1閾値(TS1)を取る第1立ち上がりタイミング(RT1)と、前記受光強度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値(TS2)を取る第2立ち上がりタイミング(RT2)と、を含み、前記近距離判定部は、前記第2立ち上がりタイミングに基づいて、前記対象物が前記近距離範囲にあるか否かを判定し、前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にない場合、前記第1立ち上がりタイミングに基づいて前記対象物距離を算出してもよい。
【0083】
<形態4>上記形態3の測距装置において、前記演算部は、前記特徴量に基づいて前記反射回数を判定する反射回数判定部(270)を更に有し、前記距離算出部は、前記対象物が前記近距離範囲にある場合、判定された前記反射回数と、前記立ち下がりタイミングと、に基づいて前記対象物距離を算出してもよい。
【0084】
<形態5>上記形態4の測距装置において、前記立ち下がりタイミングは、前記受光強度が前記第1閾値を取る第1立ち下がりタイミング(FT1)と、前記受光強度が前記第2閾値を取る第2立ち下がりタイミング(FT2)と、を含み、前記反射回数判定部は、前記第1立ち上がりタイミングと前記第1立ち下がりタイミングとの間の時間幅を表す第1時間幅(PW1)と、前記第2立ち上がりタイミングと前記第2立ち下がりタイミングとの間の時間幅を表す第2時間幅(PW2)とのいずれかを前記特徴量として用いて、前記反射回数を判定してもよい。
【0085】
<形態6>上記形態5の測距装置において、前記反射回数判定部は、前記対象物が前記近距離範囲にある場合、前記第2立ち上がりタイミングが予め定められた基準タイミング(ST)以前か否かを判定し、前記第2立ち上がりタイミングが前記基準タイミングよりも後である場合、前記第2立ち上がりタイミングと前記第1時間幅との対応関係に基づいて前記反射回数を判定し、前記第2立ち上がりタイミングが前記基準タイミング以前である場合、前記第2立ち上がりタイミングと前記第2時間幅との対応関係に基づいて前記反射回数を判定し、前記距離算出部は、判定された前記反射回数と、前記第1立ち下がりタイミングと、に基づいて前記対象物距離を算出してもよい。
【0086】
<形態7>上記形態1から6のいずれか一の形態の測距装置において、前記距離算出部は、前記受光強度に基づいて前記対象物距離を補正してもよい。
【0087】
<形態8>上記形態7の測距装置において、前記距離算出部は、前記対象物距離の算出に前記立ち上がりタイミングを用いる場合と前記立ち下がりタイミングを用いる場合とで、前記対象物距離の補正の強度を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
40…発光部、60…受光部、100,100b…測距装置、210…演算部、230…ヒストグラム生成部、240…近距離判定部、250…特徴量取得部、260,260b…距離算出部、270…反射回数判定部、FT…立ち上がりタイミング、HG…ヒストグラム、PK…ピーク、RT…立ち上がりタイミング、Sout…出力信号
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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