(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151850
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電源供給制御装置および電源供給制御方法
(51)【国際特許分類】
B61L 19/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B61L19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065593
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】千田 政明
(72)【発明者】
【氏名】荻原 武
(57)【要約】
【課題】信号保安装置の省電力化を実現すること。
【解決手段】電源供給制御装置30は、対象駅に係る信号保安装置への電源供給路をオン/オフする電源スイッチ20a~20gを制御する。電源供給制御装置30は、対象駅の駅構内の列車在線状況を取得する在線状況取得部31と、対象駅への列車の接近信号を取得する接近信号取得部33と、列車在線状況が列車在線無しの場合に電源スイッチ20a~20gをオフし、接近信号が取得された場合に電源スイッチ20a~20gをオンするスイッチ制御部35と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象駅に係る信号保安装置への電源供給路をオン/オフするスイッチを制御する電源供給制御装置であって、
前記対象駅の駅構内の列車在線状況を取得する在線状況取得手段と、
前記対象駅への列車の接近信号を取得する接近信号取得手段と、
前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記スイッチをオフし、前記接近信号が取得された場合に前記スイッチをオンするスイッチ制御手段と、
を備える電源供給制御装置。
【請求項2】
前記スイッチは、信号機、軌道回路、転てつ機、踏切保安設備、および現場入出力リレーへの前記電源供給路のうち少なくとも1つをオン/オフするスイッチである、
請求項1に記載の電源供給制御装置。
【請求項3】
前記スイッチは、連動装置を構成する所定の動作部への前記電源供給路をオン/オフするスイッチである、
請求項1に記載の電源供給制御装置。
【請求項4】
前記信号保安装置は、複数の装置を含み、
前記複数の装置は、第1の装置グループおよび第2の装置グループの少なくとも2つのグループにグループ分けされており、
前記スイッチ制御手段は、前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記第1の装置グループの前記スイッチをオフし、前記列車在線状況が列車在線無しであり且つ所定条件を満たした場合に前記第2の装置グループの前記スイッチをオフする、
請求項1~3の何れか一項に記載の電源供給制御装置。
【請求項5】
前記所定条件は、所定の時間帯条件である、
請求項4に記載の電源供給制御装置。
【請求項6】
前記接近信号取得手段は、前記対象駅の近傍に設置された列車接近検知手段が検知した信号を、前記接近信号として取得する、
請求項1に記載の電源供給制御装置。
【請求項7】
前記接近信号取得手段は、前記対象駅の隣の駅を列車が出発する際の信号、又は、前記対象駅と前記隣の駅との間の閉そくが確保されたことを示す信号を、前記接近信号として取得する、
請求項1に記載の電源供給制御装置。
【請求項8】
対象駅に係る信号保安装置への電源供給路をオン/オフするスイッチを制御する電源供給制御方法であって、
前記対象駅の駅構内の列車在線状況を取得することと、
前記対象駅への列車の接近信号を取得することと、
前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記スイッチをオフし、前記接近信号が取得された場合に前記スイッチをオンする制御を行うことと、
を含む電源供給制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給制御装置および電源供給制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連動装置は、対象駅の駅構内において安全な列車運転を行うため、信号機や転てつ機、軌道回路等の現場機器を連鎖関係を保ちつつ動作させる装置である(例えば、特許文献1を参照)。これら連動装置や現場機器等を含む列車運転の安全を確保するための装置を、信号保安装置という。
【0003】
信号保安装置は、フェールセーフを実現するため、電力を常に消費している。例えば、軌道回路は、常に通電されて列車検知を行っている。具体的には、例えば、軌道回路は、送信点から左右のレール間に電気を流し、左右のレールが列車により短絡されることで軌道リレーが落下して列車の在線を検知している。フェールセーフの観点から、送信点から常に電気を流してリレーを扛上させており、断線等の異常が生じた際はリレーが落下するように構成されている。連動装置も同様に常に通電されて動作(例えばリレーの扛上)しており、信号機も同様に常に動作(点灯)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、列車が駅から出発して駅構内に列車が在線しなくなった後、当該駅に列車が接近するまでの間は、当該駅に係る信号保安装置は不要な電力を消費している状態である。特に、列車本数の少ない路線では、駅に列車が在線しない時間が長くなるため、無駄な電力消費が顕著であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、信号保安装置の省電力化が実現可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、対象駅に係る信号保安装置への電源供給路をオン/オフするスイッチ(例えば、
図2に示す電源スイッチ20a~20g)を制御する電源供給制御装置であって、前記対象駅の駅構内の列車在線状況を取得する在線状況取得手段(例えば、
図6に示す在線状況取得部31)と、前記対象駅への列車の接近信号を取得する接近信号取得手段(例えば、
図6に示す接近信号取得部33)と、前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記スイッチをオフし、前記接近信号が取得された場合に前記スイッチをオンするスイッチ制御手段(例えば、
図6に示すスイッチ制御部35)と、を備える電源供給制御装置である。
【0008】
第1の発明によれば、対象駅の駅構内に列車が在線していない場合に当該対象駅に係る信号保安装置への電源供給路のオン/オフのスイッチをオフし、対象駅に列車が接近するまでの間は、信号保安装置への電力供給を遮断することができる。これによれば、信号保安装置の省電力化が実現できる。
【0009】
第2の発明は、上記の発明において、前記スイッチは、信号機、軌道回路、転てつ機、踏切保安設備、および現場入出力リレーへの前記電源供給路のうち少なくとも1つをオン/オフするスイッチである、電源供給制御装置である。
【0010】
また、第3の発明は、上記の発明において、前記スイッチは、連動装置を構成する所定の動作部への前記電源供給路をオン/オフするスイッチである、電源供給制御装置である。
【0011】
また、第4の発明は、上記の発明において、前記信号保安装置は、複数の装置を含み、前記複数の装置は、第1の装置グループおよび第2の装置グループの少なくとも2つのグループにグループ分けされており、前記スイッチ制御手段は、前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記第1の装置グループの前記スイッチをオフし、前記列車在線状況が列車在線無しであり且つ所定条件を満たした場合に前記第2の装置グループの前記スイッチをオフする、電源供給制御装置である。
【0012】
第4の発明によれば、信号保安装置を、第1の装置グループと第2の装置グループとにグループ分けし、信号保安装置のうちの第1の装置グループの装置については、対象駅の駅構内に列車が在線していない場合に電源供給を遮断することができる。また、第2の装置グループの装置については、対象駅の駅構内に列車が在線していない場合であって、所定条件を満たした場合に、電源供給を遮断することができる。
【0013】
第5の発明は、上記の発明において、前記所定条件は、所定の時間帯条件である、電源供給制御装置である。
【0014】
第5の発明によれば、第2の装置グループの装置について、時間帯が条件を満たす場合に、所定条件を満たすとして電力供給を遮断することができる。
【0015】
第6の発明は、上記の発明において、前記接近信号取得手段は、前記対象駅の近傍に設置された列車接近検知手段が検知した信号を、前記接近信号として取得する、電源供給制御装置である。
【0016】
第6の発明によれば、対象駅の近傍に設置された列車接近検知手段が検知した信号を接近信号として取得することで、信号保安装置への電源供給路のオン/オフのスイッチをオンして起動することができる。
【0017】
第7の発明は、上記の発明において、前記接近信号取得手段は、前記対象駅の隣の駅を列車が出発する際の信号、又は、前記対象駅と前記隣の駅との間の閉そくが確保されたことを示す信号を、前記接近信号として取得する、電源供給制御装置である。
【0018】
第7の発明によれば、対象駅の隣の駅を列車が出発する際の信号や、対象駅と前記隣の駅との間の閉そくが確保されたことを示す信号を接近信号として取得することで、信号保安装置への電源供給路のオン/オフのスイッチをオンして起動することができる。
【0019】
第8の発明は、対象駅に係る信号保安装置への電源供給路をオン/オフするスイッチを制御する電源供給制御方法であって、前記対象駅の駅構内の列車在線状況を取得することと、前記対象駅への列車の接近信号を取得することと、前記列車在線状況が列車在線無しの場合に前記スイッチをオフし、前記接近信号が取得された場合に前記スイッチをオンする制御を行うことと、を含む電源供給制御方法である。
【0020】
第8の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する電源供給制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】駅構内に設置される信号保安装置の一例を示す図。
【
図6】電源供給制御装置の機能構成例を示すブロック図。
【
図7】電源供給制御装置が行う処理の流れを示すフローチャート。
【
図9】変形例におけるスイッチ制御を説明するための図。
【
図10】他の変形例におけるスイッチ制御を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0023】
図1は、鉄道の駅の駅構内に設置される信号保安装置の一例を示す図である。また、
図2は、信号保安装置の電源系統を示す図である。
図1又は
図2に示すように、駅構内には、信号機1、転てつ機3、軌道回路5、踏切保安設備7等の現場機器が設置される。そして、各現場機器を制御する連動装置11と、連動装置11と現場機器との接続に用いられる現場入出力リレー9と、が設置される。また、駅によっては、CTC(Centralized Traffic Control)の駅装置(CTC駅装置)13が設置されることもある。CTC駅装置13は、指令所等から遠隔制御される。本実施形態では、駅構内の現場機器(信号機1、転てつ機3、軌道回路5および踏切保安設備7)と、現場入出力リレー9と、連動装置11と、CTC駅装置13と、の7種類の装置を、駅に係る信号保安装置として示す。
【0024】
各信号保安装置は、電源供給路を介して外部電源(AC)と接続される。外部電源から各信号保安装置への電源供給路には、当該電源供給路をオン/オフする電源スイッチ20a~20gが設けられている。
【0025】
連動装置11は、駅に到着した列車の走行経路や駅構内における列車の在線位置等に応じて現場機器の相互間を連鎖させて、到着列車の出発進路を構成する。具体的には、進路内に他の列車が在線していないことを軌道回路5により照査し、転てつ機3を所定の方向に転換制御した上で鎖錠し、信号機(出発信号機)1に停止現示以外の所定の現示を行って、出発進路を構成する。これにより、当該列車を駅から出発させることができる。列車が踏切道を通過する際には、所定の手順で踏切保安設備7を制御する。具体的には、列車の接近前に踏切警報機を鳴動させ、踏切しゃ断機を降下させて踏切道を遮断する。
【0026】
また、連動装置11は、駅に列車が接近したときには、信号機(場内信号機)1に所定の現示を行うことで、当該列車を駅に到着させることができる。駅への列車の接近は、列車接近検知手段により検知される。列車接近検知手段は、例えば、軌道上に設置された車軸検知装置15を用いる。車軸検知装置15は、車両の車軸(車輪)を検知した場合に、連動装置11等へ検知信号を出力する。なお、列車接近検知手段として、短小軌道回路を含めた軌道回路を用いることしてもよい。
【0027】
ところで、信号保安装置のそれぞれには、電源の電力が常に供給可能な状態となっている。しかし、列車が駅から出発して駅構内に列車が在線しなくなった場合、新たな列車が駅に接近するまでの間は、当該駅に係る信号保安装置への電力供給は必須ではない。当該駅に列車が接近していないときには、軌道回路5による列車検知の必要はないからである。同様に、信号機1を点灯させておく必要はなく、転てつ機3や踏切保安設備7を動作させる必要もない。現場入出力リレー9への電源供給も不要である。そして、現場機器の制御等が必要ないため、連動装置11やCTC駅装置13への電源供給も不要である。ただし、駅への列車の接近を検知するため、車軸検知装置15には、常に電力を供給して動作させておく必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、駅に電源供給制御装置30(
図6を参照)を設置する。電源供給制御装置30は、設置された対象駅に係る信号保安装置の電源スイッチ(対象駅の各信号保安装置それぞれへの電源供給路に設けられた電源スイッチ)20a~20gのオン/オフを切り替えて、電源供給を制御するスイッチ制御を行う。
【0029】
[スイッチ制御について]
図3~
図5は、電源供給制御装置30が行うスイッチ制御を説明するための図である。
図3に示すように、電源供給制御装置30は、対象駅10から列車Tが出発し、駅構内に列車Tが在線しなくなった場合には、対象駅10の駅構内の各信号保安装置への電源供給をオフする制御を行う。具体的には、信号機1や転てつ機3、軌道回路5、踏切保安設備7といった現場機器と、現場入出力リレー9と、連動装置11と、CTC駅装置13と、の電源スイッチ20a~20gをオフする制御を行う。これにより、各信号保安装置それぞれへの電源供給が遮断される。
【0030】
その後は、対象駅10に列車が接近するまでの間は、各信号保安装置への電源供給は遮断されたままとなる(
図4の状態)。
【0031】
また、
図5に示すように、列車Tが対象駅10に接近すると、列車Tの通過に伴い車軸検知装置15が車軸を検知して、検知信号を出力する。電源供給制御装置30は、当該検知信号を接近信号として取得し、接近信号を取得した場合は、対象駅10の各信号保安装置の電源スイッチ20a~20gをオンする制御を行う。これにより、各信号保安装置が起動して動作可能な状態となる。
【0032】
そして、駅構内に列車が在線しなくなった場合(ここでは、対象駅10から列車Tが出発して、駅構内から抜けたことで駅構内に列車が在線しなくなった場合)には、電源供給制御装置30は、対象駅10の各信号保安装置の電源スイッチ20a~20gをオフする制御を行う(
図3の状態)。
【0033】
より詳細には、本実施形態では、信号保安装置である信号機1、転てつ機3、軌道回路5、踏切保安設備7、現場入出力リレー9、連動装置11およびCTC駅装置13の7種類の装置が、予め第1の装置グループおよび第2の装置グループの2つのグループにグループ分けされている。具体的には、信号機1、転てつ機3、軌道回路5および踏切保安設備7(つまり現場機器)が第1の装置グループの装置とされ、現場入出力リレー9、連動装置11およびCTC駅装置13が第2の装置グループの装置とされている。
【0034】
そして、電源供給制御装置30は、第1の装置グループの装置については、駅構内に列車が在線しなくなった場合に電源スイッチ20a~20dをオフする制御を行う。一方、電源供給制御装置30は、第2の装置グループの装置については、駅構内に列車が在線しなくなったことに加えて、所定条件を満たしたことを条件に電源スイッチ20e~20gをオフする制御を行う。所定条件は、所定の時間帯条件とすることができる。例えば、時間帯条件は、「早朝又は夜間の時間帯内(日中の時間帯外)であること」等とすることができる。したがって、電源供給制御装置30は、連動装置11およびCTC駅装置13については、駅構内に列車が在線しなくなった場合であって、現在時刻が早朝又は夜間の時間帯内である場合に、電源スイッチ20e~20gをオフする。現在時刻が日中の時間帯内であれば、電源スイッチ20e~20gはオフしない。具体的な時間帯については、予め設定しておけばよい。着発列車の時間間隔が比較的長い時間帯があり、連動装置11およびCTC駅装置13が起動して動作準備が完了するまでに時間を要する場合に特に好適である。
【0035】
また、信号保安装置を3つ以上のグループにグループ分けすることとしてもよい。その場合は、グループ毎に、異なる時間帯条件や列車間隔条件を所定条件として設定しておくこととができる。
【0036】
[機能構成について]
図6は、電源供給制御装置30の機能構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、電源供給制御装置30は、在線状況取得部31と、接近信号取得部33と、スイッチ制御部35と、を備える。
【0037】
在線状況取得部31は、対象駅の駅構内の列車在線状況を取得する。例えば、対象駅の駅構内の各軌道回路5が列車の在線を検知しているか否かの情報を、連動装置11から取得することで実現できる。
【0038】
接近信号取得部33は、対象駅への列車の接近信号を取得する。本実施形態では、車軸検知装置15からの検知信号が電源供給制御装置30に入力されるようになっている。接近信号取得部33は、車軸検知装置15から入力される検知信号を、接近信号として取得する。
【0039】
スイッチ制御部35は、在線状況取得部31によって取得された列車在線状況が列車在線無しの場合、具体的には、対象駅の駅構内の全ての軌道回路5が列車の在線を検知していない場合に、対象駅に係る信号保安装置の電源スイッチ20a~20gをオフする制御を行う。また、スイッチ制御部35は、接近信号取得部33によって接近信号が取得された場合に、オフされている電源スイッチ20a~20gをオンする制御を行う。本実施形態では、スイッチ制御部35は、上記した要領で第1の装置グループおよび第2の装置グループの2つのグループ毎にスイッチ制御を行い、電源スイッチ20a~20gのオン/オフを切り替える。
【0040】
[処理の流れについて]
図7は、電源供給制御装置30が行う処理の流れを示す図である。本処理では、先ず、在線状況取得部31が、対象駅の駅構内の列車在線状況を取得する(ステップS1)。そして、スイッチ制御部35が、ステップS1で取得された列車在線状況に基づいて、対象駅の駅構内における列車の在線の有無を判定する。駅構内の何れかの軌道回路5が列車を検知しており、列車在線状況が列車在線有りの場合には(ステップS3:NO)、列車在線状況の取得(ステップS1)と、列車の在線有無の判定(ステップS3)と、を繰り返す。
【0041】
一方、全ての軌道回路5が列車を検知しておらず、列車在線状況が列車在線無しの場合には(ステップS3:YES)、スイッチ制御部35は、時間帯条件を判定する。そして、現在時刻が早朝又は夜間の時間帯内であり時間帯条件を満たす場合には(ステップS5:YES)、スイッチ制御部35は、第1の装置グループおよび第2の装置グループの各装置(つまり、対象駅に係る全ての信号保安装置)の電源スイッチ20a~20gをオフする制御を行う(ステップS7)。一方、現在時刻が日中の時間帯内であり時間帯条件を満たさない場合には(ステップS5:NO)、スイッチ制御部35は、第1の装置グループの各装置(つまり、対象駅に係る信号保安装置のうちの現場機器)の電源スイッチ20a~20dをオフする制御を行う(ステップS9)。
【0042】
なお、本処理では、ステップS3で列車在線無しと判定されるとすぐにステップS5~ステップS9の処理を行い、電源スイッチ20a~20gの一部又は全部をオフするが、列車在線無しと判定されてから所定時間が経過した後でオフする構成としてもよい。具体的な時間の長さは、適宜設定しておくことができる。
【0043】
その後は、接近信号取得部33が、車軸検知装置15からの検知信号の入力を監視して、入力された検知信号を対象駅への列車の接近信号として取得する。そして、接近信号取得部33によって接近信号が取得された場合には(ステップS11:YES)、スイッチ制御部35は、オフされている電源スイッチ20a~20gをオンする制御を行って、信号保安装置を起動する(ステップS13)。
【0044】
そして、ステップS15で終了判定を行い、終了と判定するまでは(ステップS15:NO)、ステップS1に戻って上記した処理を繰り返す。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象駅の駅構内に列車が在線していない場合は各信号保安装置の電源スイッチ20a~20gをオフし、対象駅への列車の接近を検知した場合には、電源スイッチ20a~20gをオンして各信号保安装置を起動することができる。これによれば、信号保安装置の省電力化が実現できる。
【0046】
また、本実施形態のスイッチ制御は、対象駅に係る信号保安装置への電源供給路に電源スイッチ20a~20gを設け、対象駅に電源供給制御装置30を設置することで実現できる。列車に搭載される車上装置やCTCの中央制御装置等は既存の設備のままでよいため、導入が容易である。万一、列車の接近時に信号保安装置が正常に起動しない事態が生じたとしても、接近した列車に対して進行現示が現示されないため、列車運転の安全を確保できる。
【0047】
なお、本発明を適用可能な形態は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0048】
[変形例1]
例えば、連動装置については、外部電源の電源供給路をオン/オフする構成に限らず、連動装置のうちの所定の動作部への電源供給路をオン/オフする構成としてもよい。
【0049】
図8は、連動装置が継電連動装置の場合の構成例を示す図である。
図8に示すように、継電連動装置は、配電盤111と、制御盤113と、リレー架115と、を備える。本変形例は、所定の動作部がリレー架115の場合の例である。配電盤111は、リレー架115への電源供給路をオン/オフする電源スイッチ112を備える。そして、本変形例では、電源供給制御装置30Aは、所定の動作部をリレー架115とし、対象駅に列車が在線しなくなった場合に電源スイッチ112をオフする制御を行い、対象駅への列車の接近を検知した場合は、電源スイッチ112をオンする制御を行う。
【0050】
なお、所定の動作部を制御盤113として、制御盤113への電源供給路をオン/オフする構成としてもよい。また、連動装置が電子連動装置の場合には、連動装置を構成する動作部のうち、現場機器の制御を担う現場機器制御部への電源供給路をオン/オフする構成としてもよい。
【0051】
[変形例2]
また、上記実施形態では、駅毎に電源供給制御装置を設置する例を説明したが、電源供給制御装置の機能を連動装置が備えた構成とすることもできる。例えば、連動装置が継電連動装置の場合であれば、電源供給制御装置の機能をリレー回路により実現することとしてもよい。その場合は、当該リレー回路に関わる部分の電源供給路にはスイッチを設けずに常に電源が供給されるものとする。そして、対象駅に列車が在線しなくなった場合は、当該リレー回路により電源スイッチ20a~20g(
図2を参照)をオフし、対象駅への列車の接近を検知した場合は、当該リレー回路により電源スイッチ20a~20gをオンする制御を行う。
【0052】
[変形例3]
また、接近信号は、対象駅の隣の駅から取得する構成としてもよい。
図9は、本変形例の電源供給制御装置30Bが行うスイッチ制御を説明する図である。
図9では、注目する対象駅10において信号保安装置の一部(第1の装置グループのみ)又は全部(第1の装置グループおよび第2の装置グループの両方)の電源スイッチがオフされている場合であって、対象駅10の隣の駅10-1において列車Tの出発進路が構成され、出発信号機1-1の現示が停止現示から進行現示に変わった場面(
図9の(a)→(b))を示している。
【0053】
駅間が単線の場合、出発進路が構成されると、隣の駅(進行方向の次の駅)との駅間の閉そくが確保される。本変形例では、その場合に、各駅の電源供給制御装置30Bが接近信号を送受するようになっている。
図9の例では、駅10-1を対象駅とする電源供給制御装置30Bが、進行方向の次の駅である対象駅10の電源供給制御装置30Bへと接近信号を出力する(
図9の(b))。電源供給制御装置30Bは、接近信号を受信したならば、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする制御を行う。
【0054】
なお、対象駅10と隣の駅10-1との間の閉そくが確保されたことを示す信号を、接近信号として取得することで、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする制御を行うこととしてもよい。
【0055】
また、本変形例の場合、列車Tが隣の駅10-1を出発し、対象駅10に接近するまでには時間差がある。そのため、電源供給制御装置30Bは、接近信号を受信(取得)してすぐにスイッチ制御を行うのではなく、当該取得から所与の時間が経過した場合にスイッチ制御を行って、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする構成としてもよい。具体的な時間の長さは、適宜設定してよい。例えば、駅間の走行時間等をもとに設定しておくことができる。
【0056】
[変形例4]
また、隣の駅からの接近信号は、当該駅から列車が出発した場合に送信される構成としてもよい。
図10は、本変形例の電源供給制御装置30Cが行うスイッチ制御を説明する図である。
図10では、注目する対象駅10において信号保安装置の一部(第1の装置グループのみ)又は全部(第1の装置グループおよび第2の装置グループの両方)の電源スイッチがオフされている場合であって、対象駅10の隣の駅10-2において出発信号機1-2の現示が進行現示に変わり列車Tが出発した場面(
図10の(a)→(b))を示している。
【0057】
駅間が単線の場合、駅から列車が出発すると、隣の駅(進行方向の次の駅)との駅間に列車が在線することとなる。本変形例では、その場合に、各駅の電源供給制御装置30Cが接近信号を送受するようになっている。
図10の例では、駅10-2を対象駅とする電源供給制御装置30Cが、進行方向の次の駅である対象駅10の電源供給制御装置30Cへと接近信号を出力する(
図10の(b))。電源供給制御装置30Cは、接近信号を受信したならば、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする制御を行う。
【0058】
なお、対象駅10と隣の駅10-2との間で閉そくが確保され、列車が出発(駅間に在線)した際の信号を接近信号として取得することで、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする制御を行うこととしてもよい。
【0059】
また、本変形例の場合も、変形例3と同様に、隣の駅10-2を出発した列車Tが対象駅10に接近するまでには時間差がある。そのため、電源供給制御装置30Cは、接近信号を受信(取得)してすぐにスイッチ制御を行うのではなく、当該取得から所与の時間が経過した場合にスイッチ制御を行って、オフされている信号保安装置の電源スイッチをオンする構成としてもよい。具体的な時間の長さは、変形例3と同様に適宜設定しておけばよい。
【0060】
[変形例5]
また、列車接近検知手段の他の例として、接近信号は、列車から取得する構成も可能である。例えば、電源供給制御装置は、列車の車上装置との間で無線通信を行って、車上装置から送信される接近信号を受信(取得)するようにしてもよい。また、車上装置が列車の走行位置を計測している場合には、現在の走行位置を電源供給制御装置に送信する構成としてもよい。その場合、電源供給制御装置は、受信した走行位置をもとに、列車の接近を検知することができる。
【0061】
[その他の変形例]
また、信号保安装置として信号機、転てつ機、軌道回路、踏切保安設備、現場入出力リレー、連動装置およびCTC駅装置の7種類の装置を例示し、全ての信号保安装置をスイッチ制御の対象とする例を示したが、そのうちの一部(1つでもよいし2つ以上でもよい)の装置をスイッチ制御の対象とする構成でもよい。また、種類毎に時間帯条件や列車間隔条件を設定しておき、対応する条件を用いて各種類の装置の電源スイッチをオフする構成としてもよい。
【0062】
また、CTCの中央制御装置からの指令に応じて、各信号保安装置の電源スイッチのオン/オフを制御する構成も可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号機、3 転てつ機、5 軌道回路、7 踏切保安設備、9 現場入出力リレー、11 連動装置、13 CTC駅装置、15 車軸検知装置、20a~20g 電源スイッチ、30,30A,30B,30C 電源供給制御装置、31 在線状況取得部、33 接近信号取得部、35 スイッチ制御部、T 列車