(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151854
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】換気扇、座金留め具および換気扇の施工方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/10 20060101AFI20241018BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20241018BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F24F7/10 101B
F24F13/32
F16M13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065600
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和真
(72)【発明者】
【氏名】古谷 靖明
(57)【要約】
【課題】天吊金具の連結孔にアンカーボルトを挿入する作業を行う際に、連結孔よりも上のワッシャーの落下を抑制することができる換気扇を得ること。
【解決手段】換気扇は、筐体1aとファン1bとを有する換気扇本体1と、連結孔5eが形成された天吊金具5と、連結孔5eよりも上と下とに少なくとも1つずつ配置されるワッシャー6と、最も上に配置されるワッシャー6よりも上に少なくとも1つ配置されるとともに最も下に配置されるワッシャー6よりも下に少なくとも1つ配置されるナット7と、連結孔5eと連結孔5eよりも上に配置されるワッシャー6との間に配置される座金留め具8とを備えている。座金留め具8には、アンカーボルト14を挿入可能でありアンカーボルト14の外径よりも大きい挿入孔が形成されている。挿入孔の内壁には、アンカーボルト14に向かって突出してアンカーボルト14の外周面に接触する突起部が形成されている。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に設置される換気扇であって、
室内の空気を吸気する吸気口および吸気した空気を排気する排気口が形成された箱状の筐体と、前記筐体の内部に配置されたファンとを有する換気扇本体と、
前記天井の上方に形成された天井裏に吊り下げられたアンカーボルトと前記筐体とを連結し、前記アンカーボルトが挿入される連結孔が形成された天吊金具と、
前記アンカーボルトに取り付けられて、前記連結孔よりも上と下とに少なくとも1つずつ配置されるワッシャーと、
前記アンカーボルトに取り付けられて、複数の前記ワッシャーのうち最も上に配置される前記ワッシャーよりも上に少なくとも1つ配置されるとともに、複数の前記ワッシャーのうち最も下に配置される前記ワッシャーよりも下に少なくとも1つ配置されるナットと、
前記アンカーボルトに取り付けられて、前記連結孔と前記連結孔よりも上に配置される前記ワッシャーとの間に配置される座金留め具と、
を備え、
前記座金留め具には、前記アンカーボルトを挿入可能であり前記アンカーボルトの外径よりも大きい挿入孔が形成され、
前記挿入孔の内壁には、前記アンカーボルトに向かって突出して前記アンカーボルトの外周面に接触する突起部が形成されていることを特徴とする換気扇。
【請求項2】
アンカーボルトに取り付けられる座金留め具であって、
前記座金留め具には、前記アンカーボルトを挿入可能であり前記アンカーボルトの外径よりも大きい挿入孔が形成され、
前記挿入孔の内壁には、前記アンカーボルトに向かって突出して前記アンカーボルトの外周面に接触する突起部が形成されていることを特徴とする座金留め具。
【請求項3】
複数の前記突起部が、前記挿入孔の内壁の周方向に互いに間隔を空けて配置され、
複数の前記突起部の突端を結んだ仮想線は、円形であり、
前記円形の直径は、前記アンカーボルトの外径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の座金留め具。
【請求項4】
前記突起部は、前記座金留め具の厚さ方向の中心に位置していることを特徴とする請求項2または3に記載の座金留め具。
【請求項5】
前記突起部の厚さは、前記座金留め具の厚さ以下であり、かつ、前記アンカーボルトに接触した状態で前記挿入孔からはみ出さない厚さであることを特徴とする請求項2または3に記載の座金留め具。
【請求項6】
前記座金留め具の素材は、弾性素材であることを特徴とする請求項2または3に記載の座金留め具。
【請求項7】
室内の空気を吸気する吸気口および吸気した空気を排気する排気口が形成された箱状の筐体と、前記筐体の内部に配置されたファンとを有する換気扇本体を準備する換気扇本体準備工程と、
アンカーボルトが挿入される連結孔が形成された天吊金具を前記筐体の外面に取り付ける天吊金具取付工程と、
天井裏にアンカーボルトを設置するアンカーボルト設置工程と、
前記アンカーボルトに、上から順に第1のナット、第1のワッシャー、第1の座金留め具、第2のワッシャーおよび第2のナットを取り付け、前記第1の座金留め具と前記第2のワッシャーとの上下方向の間隔を空けて前記天吊金具の前記連結孔に前記アンカーボルトを挿入するための挿入領域を形成する挿入領域形成工程と、
前記アンカーボルトのうち前記挿入領域に対応する部分を前記天吊金具の前記連結孔に挿入するアンカーボルト挿入工程と、
前記第1のナットと前記第2のナットとを締め付けて、前記アンカーボルトに前記天吊金具を固定する天吊金具固定工程と、
を備えることを特徴とする換気扇の施工方法。
【請求項8】
前記挿入領域形成工程では、前記アンカーボルトのうち前記第1の座金留め具と前記第2のワッシャーとの間の部分に第2の座金留め具を取り付け、前記第1の座金留め具と前記第2の座金留め具との上下方向の間隔を空けて前記天吊金具の前記連結孔に前記アンカーボルトを挿入するための前記挿入領域を形成することを特徴とする請求項7に記載の換気扇の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の天井に設置される換気扇、この換気扇の施工に用いられる座金留め具および換気扇の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の天井に設置される換気扇が知られている。このような天井取付型の換気扇は、室内の空気を吸い込む換気扇本体を備え、換気扇本体に接続されたダクトを通じて室内の空気を室外に排気する。
【0003】
建物の天井に換気扇を設置する方法としては、特許文献1に開示されているように、換気扇本体に固定した天吊金具を、天井裏に吊り下げられたアンカーボルトに固定する方法が一般的である。
【0004】
特許文献1に開示された天吊金具には、アンカーボルトが挿入される連結孔が形成されている。アンカーボルトには、上下方向に互いに間隔を空けて2つのワッシャーが取り付けられている。また、アンカーボルトには、上側のワッシャーよりも上と下側のワッシャーよりも下とにナットが1つずつ取り付けられている。
【0005】
特許文献1に開示された技術では、アンカーボルトのうち2つのワッシャーの間に位置する部分を天吊金具の連結孔に挿入して、2つのナットを締め付けてナットとワッシャーとで連通孔の開口縁を上下両側から挟み込むことにより、アンカーボルトに天吊金具を固定している。なお、特許文献1に開示された技術では、換気扇本体をアンカーボルトまで持ち上げてから換気扇本体に固定した天吊金具をアンカーボルトに固定するまでの間、作業者が常に換気扇本体を保持し続ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、ワッシャーの内径がアンカーボルトの外径よりも大きいため、ワッシャーをアンカーボルトに通すと、ワッシャーがアンカーボルトに沿って重力で落下する。連結孔よりも上のワッシャーが落下すると、アンカーボルトのうち2つのワッシャーの間に位置する部分を天吊金具の連結孔に挿入することが困難になる。このため、作業者が連結孔よりも上のワッシャーを保持しながら、天吊金具の連結孔にアンカーボルトを挿入する作業を行う必要がある。これにより、天吊金具の連結孔にアンカーボルトを挿入する作業を行う際に、作業者が換気扇本体と、連結孔よりも上のワッシャーとの両方を常に保持し続ける必要がある。したがって、特許文献1に開示された技術では、換気扇本体の取付作業に多大な労力および時間がかかってしまい、施工コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、天吊金具の連結孔にアンカーボルトを挿入する作業を行う際に、連結孔よりも上のワッシャーの落下を抑制することができる換気扇を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる換気扇は、天井に設置される換気扇であって、室内の空気を吸気する吸気口および吸気した空気を排気する排気口が形成された箱状の筐体と、筐体の内部に配置されたファンとを有する換気扇本体と、天井の上方に形成された天井裏に吊り下げられたアンカーボルトと筐体とを連結し、アンカーボルトが挿入される連結孔が形成された天吊金具と、を備えている。また、本開示にかかる換気扇は、アンカーボルトに取り付けられて、連結孔よりも上と下とに少なくとも1つずつ配置されるワッシャーと、アンカーボルトに取り付けられて、複数のワッシャーのうち最も上に配置されるワッシャーよりも上に少なくとも1つ配置されるとともに、複数のワッシャーのうち最も下に配置されるワッシャーよりも下に少なくとも1つ配置されるナットと、アンカーボルトに取り付けられて、連結孔と連結孔よりも上に配置されるワッシャーとの間に配置される座金留め具と、を備えている。座金留め具には、アンカーボルトを挿入可能でありアンカーボルトの外径よりも大きい挿入孔が形成されている。挿入孔の内壁には、アンカーボルトに向かって突出してアンカーボルトの外周面に接触する突起部が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、天吊金具の連結孔にアンカーボルトを挿入する作業を行う際に、連結孔よりも上のワッシャーの落下を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる換気扇の取り付け状態を示す鉛直断面図
【
図2】実施の形態1にかかる換気扇を示す下面図であって、化粧グリルが装着されていない状態であり端子カバーが閉じた状態を示す図
【
図3】実施の形態1にかかる換気扇を示す下面図であって、化粧グリルが装着されていない状態であり端子カバーが開いた状態を示す図
【
図5】実施の形態1にかかる換気扇本体への天吊金具の取り付けを説明するための斜視図
【
図6】実施の形態1にかかる天吊金具とアンカーボルトとの接続状態を示す斜視図
【
図7】実施の形態1にかかる座金留め具を示す斜視図
【
図8】実施の形態1にかかる座金留め具とアンカーボルトとを示す鉛直断面図であって、座金留め具の挿入孔にアンカーボルトが挿入されていない状態を示す図
【
図9】実施の形態1にかかる座金留め具とアンカーボルトとを示す鉛直断面図であって、座金留め具の挿入孔にアンカーボルトが挿入された状態を示す図
【
図10】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法を示すフローチャート
【
図11】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の換気扇本体準備工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図12】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の天吊金具取付工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図13】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法のアンカーボルト設置工程および挿入領域形成工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図14】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法のアンカーボルト挿入工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図15】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の天吊金具固定工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図16】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の換気扇本体固定工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図17】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の天井設置工程を模式的に示す鉛直断面図
【
図18】実施の形態1にかかる換気扇の施工方法の化粧グリル取付工程を模式的に示す鉛直断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態にかかる換気扇、座金留め具および換気扇の施工方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる換気扇100の取り付け状態を示す鉛直断面図である。
図2は、実施の形態1にかかる換気扇100を示す下面図であって、化粧グリル4が装着されていない状態であり端子カバー10が閉じた状態を示す図である。
図3は、実施の形態1にかかる換気扇100を示す下面図であって、化粧グリル4が装着されていない状態であり端子カバー10が開いた状態を示す図である。
図4は、実施の形態1にかかる換気扇100を示す上面図である。
図1に示すように、換気扇100は、換気扇本体1と、ダクト接続口2と、副吸込側ダクト接続口3と、化粧グリル4と、天吊金具5とを備えている。
【0014】
天井19には、室内と天井裏20とを連通する設置孔19aが形成されている。
図1において、天井19の紙面上側が天井裏20で、天井19の紙面下側が室内となる。換気扇100は、天井19に形成された設置孔19aを用いて天井19に設置される。天井19の上方には、天井裏20が形成されている。換気扇100は、設置孔19aから天井裏20に亘って設置される。天井裏20は、天井19と上部構造体21との間に形成された空間である。上部構造体21は、例えば、梁、上階スラブである。天井裏20には、複数本のアンカーボルト14が吊り下げられている。アンカーボルト14は、上部構造体21から吊り下げられている。
【0015】
換気扇本体1は、箱状の筐体1aと、筐体1aの内部に配置されたファン1bとを有している。
【0016】
筐体1aには、室内の空気を吸気する吸気口1gおよび吸気した空気を排気する排気口1hが形成されている。吸気口1gは、筐体1aの下面1cに形成されている。吸気口1gは、換気扇100の直下に位置する室内の空気を吸気する。下面1cのうち吸気口1gの周縁には、吸気口1gの中心から離れる方向に水平に張り出す本体フランジ部1jが形成されている。本体フランジ部1jには、
図2に示されるねじ孔1kが形成されている。ねじ孔1kを通じて天井19に図示しないねじを捩じ込むことにより、換気扇本体1が天井19に固定される。排気口1hは、筐体1aのうち1つの側面1eに形成されている。筐体1aのうち排気口1hが形成された側面1eとは反対側の側面1fには、別室の空気を吸気する副吸気口1iが形成されている。
【0017】
ファン1bは、筐体1aの内部に配置されて、吸気口1gおよび副吸気口1iから筐体1aの内部に流入して排気口1hから流出する空気流を生成する機器である。ファン1bは、ファンケーシング1mと、モータ1nと、羽根1oとを有している。
【0018】
ファンケーシング1mは、ファン1bの風路を形成している。ファンケーシング1mの下面には、吸気口1gから筐体1aの内部に流入した空気を吸い込む吸込口1qが形成されている。ファンケーシング1mのうち1つの側面には、ファンケーシング1mの内部の空気を排気口1hに向けて流出する流出口1rが形成されている。ファンケーシング1mのうち流出口1rが形成された側面とは反対側の側面には、副吸気口1iから筐体1aの内部に流入した空気を吸い込む副吸込口1sが形成されている。ファンケーシング1mは、図示しないねじにより筐体1aの天面1dに固定されている。ファンケーシング1mの下面には、スプリング固定部1tが取り付けられている。
【0019】
モータ1nは、羽根1oを回転させる。モータ1nは、筐体1aの天面1dに固定されている。羽根1oは、ファンケーシング1mの内部に配置されている。羽根1oは、モータ1nのシャフト1pに取り付けられている。
【0020】
ダクト接続口2は、排気口1hに連通するように筐体1aの側面1eに着脱可能に取り付けられて、ダクト15が接続される部材である。ダクト接続口2は、換気扇本体1の側面1eから側面1eの直角方向に延びている。ダクト接続口2は、筐体1aからの空気の排出位置をダクト15に連通する位置まで延長する役割を果たしている。ダクト接続口2の外形は、直径の異なる部分を有する段差状である。ダクト接続口2の外形が直径の異なる部分を有する段差状であることにより、内径が異なる複数のダクト15を選択的にダクト接続口2に接続可能であるとともに、ダクト接続口2にダクト15を固定するためのテープの巻き付け作業が容易になる。ダクト15は、室外に繋がっている。ダクト15は、室外まで延びて建物の外壁に備え付けられた図示しないフードなどと連結し、建物内の空気を換気する換気風路を形成している。
【0021】
ダクト接続口2の内部には、風圧にて開閉するシャッタ9が設置されている。シャッタ9は、換気扇100の運転時には風圧で開き、換気扇100の停止時にはシャッタ9の自重でダクト接続口2の内部を閉鎖する。ダクト接続口2の内部にシャッタ9が設置されることにより、換気扇100の停止時に外気がダクト15を通じて室内に侵入することを防止できる。
【0022】
副吸込側ダクト接続口3は、副吸気口1iに連通するように筐体1aの側面1fに着脱可能に取り付けられて、副吸込側ダクト16が接続される部材である。副吸込側ダクト接続口3は、換気扇本体1の側面1fから側面1fの直角方向に延びている。副吸込側ダクト接続口3は、筐体1aの空気の吸気位置を副吸込側ダクト16に連通する位置まで延長する役割を果たしている。副吸込側ダクト接続口3の外形は、直径の異なる部分を有する段差状である。副吸込側ダクト接続口3の外形が直径の異なる部分を有する段差状であることにより、内径が異なる複数の副吸込側ダクト16を選択的に副吸込側ダクト接続口3に接続可能であるとともに、副吸込側ダクト接続口3に副吸込側ダクト16を固定するためのテープの巻き付け作業が容易になる。副吸込側ダクト16は、部屋間を連通する。
【0023】
換気扇100は、筐体1aの吸気口1gから室内の空気を吸い込んで、排気口1h、ダクト接続口2およびダクト15を通じて室外に向かって排気する。また、換気扇100は、副吸込側ダクト16、副吸込側ダクト接続口3および筐体1aの副吸気口1iから別室の空気を吸い込んで、排気口1h、ダクト接続口2およびダクト15を通じて室外に向かって排気する。
【0024】
図2に示すように、ファンケーシング1mの下面には、開閉可能な端子カバー10が取り付けられている。端子カバー10は、円柱状の回転軸10aを有している。ファンケーシング1mには、回転軸10aを回転可能に支持する支持部1uが設けられている。支持部1uには、回転軸10aが挿入される回転穴が形成されている。端子カバー10は、回転軸10aを中心にして回転する。端子カバー10は、開閉可能である。端子カバー10の下面には、作業者が指を掛けるための指引掛部10bが設けられている。これにより、端子カバー10の開閉が容易になっている。
【0025】
図3に示すように、端子カバー10で覆われた空間には、図示しない外部電源と接続される電源接続装置11が配置されている。端子カバー10は閉じているときに電源接続装置11を覆う。電源接続装置11は、端子カバー10にて風路と隔離されている。これにより、風路から電源接続装置11への埃、湿気などの侵入を抑制することができる。ファンケーシング1mには、端子カバー10の周囲を取り囲む保護壁1vが設けられている。端子カバー10が閉じているときには、端子カバー10と保護壁1vとにより電源接続装置11を収納する収納部の密閉度を向上させることができる。一方で、端子カバー10が開いているときには、室内側から電源接続装置11へのアクセスが可能となるため、外部電源と電源接続装置11とを接続する外部電源電線12を電源接続装置11に室内側から容易に接続可能である。外部電源電線12は、天面1d側からブッシュ13を通じて電源接続装置11の収納部に引き込まれている。外部電源電線12は、電源接続装置11に差し込まれている。
【0026】
図3に示される電源接続装置11と
図4に示されるモータ1nとは、図示しないモータ電線により電気的に接続されている。図示しない外部電源から供給された電力は、
図3に示される外部電源電線12、電源接続装置11およびモータ電線を介して、
図4に示されるモータ1nに伝わる。電気エネルギーが
図1に示されるモータ1nのシャフト1pの回転運動に変換されることにより、モータ1nの回転運動が羽根1oに伝達されて、羽根1oが回転する。羽根1oが回転することにより、ファンケーシング1mで形成された風路内に、吸気口1gおよび副吸気口1iから排気口1hに向かう気流が生成される。
【0027】
化粧グリル4は、設置孔19aを下方から覆うように、天井19の下面に配置されている。化粧グリル4は、筐体1aの下面を覆っている。化粧グリル4は、ファン1bなどの内部部品を室内側から見えないように隠すための意匠部品である。これにより、室内側から換気扇100を見たときの見栄えが損なわれない。化粧グリル4は、スプリング4aを有している。スプリング4aは、スプリング固定部品4bにより化粧グリル4に取り付けられている。ファンケーシング1mに取り付けられているスプリング固定部1tにスプリング4aを引っ掛けることにより、化粧グリル4はファンケーシング1mに固定される。また、副吸込側ダクト16のうち換気扇本体1とは反対側の端部には、図示しない副吸込側化粧グリルが取り付けられている。
【0028】
天吊金具5は、天井裏20に吊り下げられたアンカーボルト14と筐体1aとを連結する金属製の部材である。
図5は、実施の形態1にかかる換気扇本体1への天吊金具5の取り付けを説明するための斜視図である。天吊金具5の形状は、L字状である。天吊金具5は、基部5aと、ボルト固定部5bとを有している。
【0029】
基部5aは、上下方向に延びていて、筐体1aに固定される板状の部分である。基部5aは、筐体1aの側面1e,1fのいずれか1つと天面1dとに固定されている。基部5aには、引掛部5cが形成されている。引掛部5cは、基部5aの一部を切り起こして形成されている。引掛部5cは、基部5aから筐体1aに向かって水平に延びた後、筐体1aの天面1dに向かって下方に延びている。筐体1aの天面1dには、引掛部5cの先端が嵌まる凹部1wが形成されている。
【0030】
基部5aのうち引掛部5cよりも下の部分には、ねじ孔5dが形成されている。筐体1aの側面1e,1fには、ねじ孔5dに連通するねじ孔1xが形成されている。筐体1aの側面1e,1fのうちねじ孔1xが形成される部分は、筐体1aの外部への空気流の漏れを防止するために薄肉部となっている。そのため、ねじ17を捩じ込む前に薄肉部を貫通させてねじ孔1xを形成する必要がある。基部5aのねじ孔5dと筐体1aのねじ孔1xとには、ねじ17が挿入される。基部5aの引掛部5cを筐体1aの凹部1wに引っ掛けるとともに、基部5aのねじ孔5dと筐体1aのねじ孔1xとに筐体1aの内部からねじ17を捩じ込むことにより、天吊金具5が筐体1aに固定されている。
【0031】
ボルト固定部5bは、基部5aの上端部から筐体1aと離れる方向に延びていて、アンカーボルト14に固定される板状の部分である。ボルト固定部5bは、基部5aの上端部から基部5aと交差する方向に延びている。ボルト固定部5bには、アンカーボルト14が挿入される連結孔5eが形成されている。連結孔5eは、ボルト固定部5bを上下方向に貫通している。また、連結孔5eは、基部5aと反対側を向く部分が開口している。連結孔5eは、ボルト固定部5bの先端から基部5aに向かってU字状に切り欠かれている。ボルト固定部5bのうち連結孔5eの両脇には、一対のアーム部5fが形成されている。一対のアーム部5fの先端には、下方に向かって曲げられたストッパ部5gが形成されている。
【0032】
図6は、実施の形態1にかかる天吊金具5とアンカーボルト14との接続状態を示す斜視図である。換気扇100は、2つのワッシャー6と、3つのナット7と、2つの座金留め具8とをさらに備えている。
【0033】
ワッシャー6は、アンカーボルト14に取り付けられて、連結孔5eよりも上と下とに1つずつ配置されている。ワッシャー6の形状は、環状である。以下、2つのワッシャー6を区別する場合には、上から順に第1のワッシャー6A、第2のワッシャー6Bと称する。
【0034】
ナット7は、アンカーボルト14に取り付けられて、複数のワッシャー6のうち最も上に配置されるワッシャー6よりも上に配置されるとともに、複数のワッシャー6のうち最も下に配置されるワッシャー6よりも下に配置されている。ナット7の形状は、内周が円形で外周が六角形である。本実施の形態では、第1のワッシャー6Aよりも上に配置されるナット7の数は1つであり、第2のワッシャー6Bよりも下に配置されるナット7の数は2つである。以下、3つのナット7を区別する場合には、上から順に第1のナット7A、第2のナット7B、第3のナット7Cと称する。なお、ナット7は、複数のワッシャー6のうち最も上に配置されるワッシャー6よりも上に少なくとも1つ配置されるとともに、複数のワッシャー6のうち最も下に配置されるワッシャー6よりも下に少なくとも1つ配置されていればよい。
【0035】
座金留め具8は、アンカーボルト14に取り付けられて、2つのワッシャー6の間に配置されている。座金留め具8の形状は、環状である。本実施の形態では、2つのワッシャー6の間に配置される座金留め具8の数は2つである。座金留め具8は、連結孔5eと連結孔5eよりも上に配置されるワッシャー6との間に少なくとも1つ配置されていればよい。以下、2つの座金留め具8を区別する場合には、上から順に第1の座金留め具8A、第2の座金留め具8Bと称する。第1の座金留め具8Aは、第1のワッシャー6Aが第1の座金留め具8Aよりも下に移動することを抑制する役割を果たしている。第2の座金留め具8Bは、第2のワッシャー6Bが第2の座金留め具8Bよりも上に移動することを抑制する役割を果たしている。
【0036】
上から、第1のナット7A、第1のワッシャー6A、第1の座金留め具8A、連結孔5e、第2の座金留め具8B、第2のワッシャー6B、第2のナット7B、第3のナット7Cの順に配置されている。連結孔5eよりも上には、第1のナット7A、第1のワッシャー6Aおよび第1の座金留め具8Aが配置され、連結孔5eよりも下には、第2の座金留め具8B、第2のワッシャー6B、第2のナット7Bおよび第3のナット7Cが配置されている。
【0037】
アンカーボルト14の半径方向からアンカーボルト14のうち2つの座金留め具8の間に位置する部分を天吊金具5の連結孔5eに挿入して、ナット7を締め付けて2つのワッシャー6と2つの座金留め具8と3つのナット7とで連結孔5eの開口縁となる一対のアーム部5fを挟み込むことにより、天吊金具5がアンカーボルト14に固定されている。ストッパ部5gは、アンカーボルト14と天吊金具5とが水平方向に相対的に移動した際に、第2の座金留め具8Bに接触して連結孔5eからアンカーボルト14が抜けることを抑制する役割を果たしている。なお、ストッパ部5gは、アーム部5fの先端から上方に向かって曲げられていてもよい。このような構成の場合には、ストッパ部5gは、第1の座金留め具8Aに接触可能となる。
【0038】
次に、
図7を参照して、座金留め具8の構成についてさらに詳しく説明する。
図7は、実施の形態1にかかる座金留め具8を示す斜視図である。
【0039】
座金留め具8は、厚さを有する環状の部材である。座金留め具8の素材は、弾性素材である。弾性素材は、例えば、ゴム、軟質合成樹脂である。座金留め具8には、厚さ方向に貫通する挿入孔8aが形成されている。挿入孔8aは、座金留め具8の上面から下面にかけて貫通している。挿入孔8aは、
図6に示されるアンカーボルト14を挿入可能でありアンカーボルト14の外径よりも大きい。挿入孔8aの内壁には、複数の突起部8bが形成されている。複数の突起部8bのそれぞれは、アンカーボルト14に向かって突出してアンカーボルト14の外周面に接触する。複数の突起部8bは、挿入孔8aの内壁の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の突起部8bの突端を結んだ仮想線Lは、円形である。この円形の直径は、アンカーボルト14の外形よりも小さい。
【0040】
突起部8bは、座金留め具8の厚さ方向の中心に位置している。言い換えると、突起部8bは、挿入孔8aの深さ方向の中心に位置している。突起部8bの厚さは、座金留め具8の厚さ以下であり、かつ、突起部8bがアンカーボルト14に接触した状態で挿入孔8aからはみ出さない厚さであることが好ましい。言い換えると、突起部8bの厚さは、挿入孔8aの深さ以下であり、かつ、突起部8bがアンカーボルト14に接触して撓んだ状態で挿入孔8aからはみ出さない厚さであることが好ましい。座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14が挿入された状態で、突起部8bがアンカーボルト14の外周面に圧接する。これにより、座金留め具8がアンカーボルト14に引っ掛かった状態となり、アンカーボルト14に仮固定される。すなわち、作業者が座金留め具8から手を離しても、座金留め具8がアンカーボルト14に沿って落下しない。
【0041】
図8および
図9を参照して、座金留め具8とアンカーボルト14との関係について詳細に説明する。
図8は、実施の形態1にかかる座金留め具8とアンカーボルト14とを示す鉛直断面図であって、座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14が挿入されていない状態を示す図である。
図9は、実施の形態1にかかる座金留め具8とアンカーボルト14とを示す鉛直断面図であって、座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14が挿入された状態を示す図である。
図8および
図9に示される符号Cは、座金留め具8およびアンカーボルト14の中心線Cを表している。
【0042】
図8に示される符号Rgは、座金留め具8の複数の突起部8bの突端を結んだ仮想線Lの半径を表している。符号Raは、アンカーボルト14の半径を表している。アンカーボルト14の半径Raは、仮想線Lの半径Rgよりも大きい。本実施の形態では、Ra>Rgの関係になる。これにより、上下方向に沿って見たときに、座金留め具8の突起部8bの一部は、アンカーボルト14と重複する。以下、突起部8bのうちアンカーボルト14と重複する部分を重複部と称する。重複部の長さは、Ra-Rgである。符号T0は、座金留め具8の厚さを表している。符号T1は、座金留め具8の各突起部8bの厚さを表している。座金留め具8の各突起部8bは、座金留め具8の厚さT0の中央に設けられる。すなわち、座金留め具8の上面から各突起部8bまでの段差高さT2および座金留め具8の下面から各突起部8bまでの段差高さT2は、同じである。本実施の形態では、T0=T2+T1+T2の関係になる。
【0043】
ここで、
図9に示すように、座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14を挿入すると、座金留め具8の突起部8bのうちアンカーボルト14との重複部が下方向に撓む。つまり、突起部8bは、重複部の長さであるRa-Rg分だけ下方向に撓む。
図9に示される符号Tbは、重複部の撓み量を表している。本実施の形態では、Tb=Ra-Rgの関係になる。Tb≦T2とすることで、突起部8bが撓んでも、突起部8bが挿入孔8aからはみ出さないようにすることができる。すなわち、撓んだ突起部8bが挿入孔8aからはみ出さないようにするためには、Ra-Rg≦(T0-T1)/2とすればよい。言い換えると、座金留め具8の突起部8bのうちアンカーボルト14との重複部の長さが、座金留め具8の上面および下面のそれぞれから各突起部8bまでの段差高さT2以下とすればよい。
【0044】
次に、
図10から
図18を参照して、本実施の形態にかかる換気扇100の施工方法について説明する。
図10は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法を示すフローチャートである。
図11は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の換気扇本体準備工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図12は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の天吊金具取付工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図13は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法のアンカーボルト設置工程および挿入領域形成工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図14は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法のアンカーボルト挿入工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図15は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の天吊金具固定工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図16は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の換気扇本体固定工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図17は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の天井設置工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図18は、実施の形態1にかかる換気扇100の施工方法の化粧グリル取付工程を模式的に示す鉛直断面図である。
図11から
図18では、簡略化のため、一部の部材のみに断面ハッチングを付している。
【0045】
図10に示すように、換気扇100の施工方法は、換気扇本体準備工程と、天吊金具取付工程と、アンカーボルト設置工程と、挿入領域形成工程と、アンカーボルト挿入工程と、天吊金具固定工程と、換気扇本体固定工程と、天井設置工程と、化粧グリル取付工程とを含んでいる。
【0046】
図11に示すように、換気扇本体準備工程は、室内の空気を吸気する吸気口1gおよび吸気した空気を排気する排気口1hが形成された箱状の筐体1aと、筐体1aの内部に配置されたファン1bとを有する換気扇本体1を準備する工程である。換気扇本体準備工程では、ファン1bのモータ1nを筐体1aの天面1dに図示しないねじで固定する。
【0047】
図12に示すように、天吊金具取付工程は、アンカーボルト14が挿入される連結孔5eが形成された天吊金具5を筐体1aの外面に取り付ける工程である。天吊金具取付工程では、天吊金具5の引掛部5cを筐体1aの凹部1wに引っ掛けるとともに、天吊金具5のねじ孔5dと筐体1aのねじ孔1xとに筐体1aの内部からねじ17を捩じ込む。これにより、天吊金具5が筐体1aの外面に取り付けられる。
【0048】
図13に示すように、アンカーボルト設置工程は、天井裏20にアンカーボルト14を設置する工程である。アンカーボルト設置工程では、上部構造体21から複数本のアンカーボルト14を吊り下げる。
【0049】
図13に示すように、挿入領域形成工程は、複数本のアンカーボルト14のそれぞれに、上から順に第1のナット7A、第1のワッシャー6A、第1の座金留め具8A、第2の座金留め具8B、第2のワッシャー6B、第2のナット7Bおよび第3のナット7Cを取り付け、第1の座金留め具8Aと第2の座金留め具8Bとの上下方向の間隔を空けて天吊金具5の連結孔5eにアンカーボルト14を挿入するための挿入領域Tを形成する工程である。なお、
図13では、理解の容易化のために第1のワッシャー6Aと第1の座金留め具8Aとを上下方向に離した状態および第2のワッシャー6Bと第2のナット7Bとを上下方向に離した状態を図示しているが、実際の施工時には
図14に示すように第1のワッシャー6Aは第1の座金留め具8Aの位置まで落下し、第2のワッシャー6Bは第2のナット7Bの位置まで落下する。
【0050】
挿入領域形成工程において、第1の座金留め具8Aおよび第2の座金留め具8Bにアンカーボルト14を挿入すると、
図9に示される突起部8bがアンカーボルト14の外周面に接触して、突起部8bのうちアンカーボルト14との重複部が下方向に撓んで弾性変形する。このとき、第1の座金留め具8Aおよび第2の座金留め具8Bがアンカーボルト14に引っ掛かった状態となる。この状態では、第1の座金留め具8Aおよび第2の座金留め具8Bから作業者が手を放しても、それ以上第1の座金留め具8Aおよび第2の座金留め具8Bが落下せず、第1の座金留め具8Aおよび第2の座金留め具8Bがアンカーボルト14に仮固定される。このため、第1の座金留め具8Aによって第1のワッシャー6Aの落下を抑制することができるとともに、第1の座金留め具8Aと第2の座金留め具8Bとの間に挿入領域Tを形成することができる。
【0051】
なお、
図13に示すようにナット7とワッシャー6と座金留め具8とを配置する場合には、第1のワッシャー6Aの落下を抑制するために第1の座金留め具8Aは必要であるが、第2の座金留め具8Bが設置されなくても第2のワッシャー6Bは第2のナット7Bの位置まで落下するため、挿入領域Tを形成することができる。このため、第2の座金留め具8Bを省略してもよい。このように第2の座金留め具8Bを省略する場合には、挿入領域形成工程では、第1の座金留め具8Aと第2のワッシャー6Bとの上下方向の間隔を空けて天吊金具5の連結孔5eにアンカーボルト14を挿入するための挿入領域Tを形成すればよい。
【0052】
一方で、第2の座金留め具8Bを第2のワッシャー6Bよりも上に配置しておくと、第2のワッシャー6Bが第2の座金留め具8Bよりも上に移動することを抑制できるため、第2のワッシャー6Bがアンカーボルト14に斜めに引っ掛かって挿入領域Tに保持されて、次工程のアンカーボルト挿入工程の障害になることを抑制できる。また、第2の座金留め具8Bを第2のワッシャー6Bよりも上に配置しておくと、アンカーボルト14に仮固定された第1の座金留め具8Aと第2の座金留め具8Bとの上下方向の間隔が挿入領域Tとなり、挿入領域Tを明確にすることができるため、次工程のアンカーボルト挿入工程を容易に行うことができる。
【0053】
図14に示すように、アンカーボルト挿入工程は、アンカーボルト14のうち挿入領域Tに対応する部分を天吊金具5の連結孔5eに挿入する工程である。アンカーボルト挿入工程では、換気扇本体1をアンカーボルト14まで持ち上げて、アンカーボルト14が連結孔5eに挿入されるように換気扇本体1を移動させる。アンカーボルト挿入工程では、アンカーボルト14の半径方向からアンカーボルト14を連結孔5eに挿入する。連結孔5eがボルト固定部5bの先端から基部5aに向かってU字状に切り欠かれているため、アンカーボルト14の半径方向からアンカーボルト14を連結孔5eに挿入することができる。また、挿入領域Tが形成されていることにより、アンカーボルト挿入工程を容易に行うことができる。
【0054】
図15に示すように、天吊金具固定工程は、第1のナット7Aと第2のナット7Bとを締め付けて、アンカーボルト14に天吊金具5を固定する工程である。天吊金具固定工程では、換気扇本体1の高さ位置が所望する高さ位置となった状態で、第1のナット7Aと第2のナット7Bとを締め付けて2つのワッシャー6と2つの座金留め具8と2つのナット7とでアーム部5fを上下両側から挟み込む。これにより、天吊金具5がアンカーボルト14に固定されて、換気扇本体1とアンカーボルト14とが天吊金具5を介して互いに連結される。この天吊金具固定工程の段階では、換気扇本体1の荷重はねじ17にかかっている。天吊金具固定工程では、第2のナット7Bが下から上に向かうように第3のナット7Cを締め付けることにより、第2のナット7Bの緩みを防止することができる。なお、少なくとも第1のナット7Aと第2のナット7Bとがあれば、アンカーボルト14に天吊金具5を固定することができるため、第3のナット7Cを省略してもよい。
【0055】
図16に示すように、換気扇本体固定工程は、換気扇本体1と建物とを固定する工程である。換気扇本体固定工程では、換気扇本体1の本体フランジ部1jの上面に接触する高さ位置に鉄骨22を配置して、鉄骨22を建物に固定する。そして、換気扇本体1の本体フランジ部1jと鉄骨22とをねじ18により固定する。これにより、換気扇本体1は、鉄骨22を介して建物に固定される。換気扇本体固定工程の完了時点では、換気扇本体1の荷重はねじ18にかかっている。なお、天吊金具固定工程の後で換気扇本体固定工程の前に、
図1に示すように筐体1aの側面1eにダクト接続口2を取り付け、筐体1aの側面1fに副吸込側ダクト接続口3を取り付ける。また、ダクト接続口2にダクト15を取り付け、副吸込側ダクト接続口3に副吸込側ダクト16を取り付ける。続いて、
図3に示すように電源接続装置11に外部電源電線12を接続する。
【0056】
図17に示すように、天井設置工程は、天井19を建物に設置する工程である。天井設置工程では、換気扇本体1の本体フランジ部1jの外形に合わせて天井19に設置孔19aを開ける。続いて、天井19の設置孔19aの内側に本体フランジ部1jが位置するように天井19を配置して、図示しないねじで天井19を鉄骨22に固定する。これにより、天井19と換気扇本体1とが鉄骨22を介して固定される。なお、鉄骨22を配置せずに、天井19と換気扇本体1とを直接固定してもよい。この場合には、天井設置工程が換気扇本体工程の一部となり、換気扇本体固定工程では、換気扇本体1の本体フランジ部1jの上面に接触する高さ位置に設置孔19aが開いた天井19を配置して、天井19を建物に固定する。そして、換気扇本体1の本体フランジ部1jと天井19とをねじ18により固定する。これにより、換気扇本体1は、天井19を介して建物に固定される。
【0057】
図18に示すように、化粧グリル取付工程は、換気扇本体1の下面を覆うように化粧グリル4を取り付ける工程である。以上の工程を行うことにより、換気扇100の施工が完了する。
【0058】
次に、本実施の形態にかかる換気扇100の効果について説明する。
【0059】
本実施の形態では、
図6および
図7に示すように、座金留め具8には、アンカーボルト14を挿入可能でありアンカーボルト14の外径よりも大きい挿入孔8aが形成されている。また、挿入孔8aの内壁には、アンカーボルト14に向かって突出してアンカーボルト14の外周面に接触する突起部8bが形成されている。これらの構成により、座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14を挿入すると、突起部8bがアンカーボルト14の外周面に接触して、座金留め具8がアンカーボルト14に引っ掛かった状態となる。この状態では、座金留め具8から作業者が手を放しても、それ以上座金留め具8が下がらず、座金留め具8がアンカーボルト14に仮固定される。このため、座金留め具8によって連結孔5eよりも上の第1のワッシャー6Aの落下を抑制することができる。これにより、天吊金具5の連結孔5eにアンカーボルト14を挿入する作業を行う際に、作業者が第1のワッシャー6Aを常に保持し続ける必要がなく、換気扇本体1を保持するだけでよい。したがって、天吊金具5の連結孔5eにアンカーボルト14を挿入する作業を容易に行うことができるため、換気扇本体1の取付作業に掛かる労力および時間を減らして、施工コストの削減を図ることができる。
【0060】
本実施の形態では、
図7に示すように、複数の突起部8bが挿入孔8aの内壁の周方向に互いに間隔を空けて配置され、複数の突起部8bの突端を結んだ仮想線Lが円形である。また、円形の直径は、アンカーボルト14の外径よりも小さい。これらの構成により、座金留め具8の挿入孔8aにアンカーボルト14を挿入したときに、突起部8bがアンカーボルト14の外周面に確実に接触して、座金留め具8をアンカーボルト14に確実に仮固定することができる。
【0061】
本実施の形態では、
図7に示すように、突起部8bは、座金留め具8の厚さ方向の中心に位置している。この構成により、突起部8bがアンカーボルト14に接触した状態において挿入孔8aの上下の開口からはみ出しにくくなる。
【0062】
本実施の形態では、
図7に示すように、突起部8bの厚さは、座金留め具8の厚さ以下であり、かつ、アンカーボルト14に接触した状態で挿入孔8aからはみ出さない厚さである。この構成により、突起部8bがアンカーボルト14に接触した状態において挿入孔8aの上下の開口から確実にはみ出さない。
【0063】
本実施の形態では、座金留め具8の素材は、弾性素材である。この構成により、突起部8bがアンカーボルト14の外周面に合わせて弾性変形して、突起部8bの弾性力を用いて座金留め具8をアンカーボルト14に確実に仮固定することができる。
【0064】
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
【0065】
本実施の形態では、
図6に示すように、ナット7の数が3つであったが、少なくとも2つあればよい。すなわち、ナット7は、複数のワッシャー6のうち最も上に配置されるワッシャー6よりも上に少なくとも1つ配置されるとともに、複数のワッシャー6のうち最も下に配置されるワッシャー6よりも下に少なくとも1つ配置されていればよい。
【0066】
本実施の形態では、
図7に示すように、突起部8bの数が4つであったが、3つ以下でも5つ以上でもよい。
【0067】
本実施の形態では、
図7に示すように、突起部8bが座金留め具8の厚さ方向の中心に位置していたが、突起部8bの位置は適宜変更してもよい。
【0068】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0069】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0070】
(付記1)
天井に設置される換気扇であって、
室内の空気を吸気する吸気口および吸気した空気を排気する排気口が形成された箱状の筐体と、前記筐体の内部に配置されたファンとを有する換気扇本体と、
前記天井の上方に形成された天井裏に吊り下げられたアンカーボルトと前記筐体とを連結し、前記アンカーボルトが挿入される連結孔が形成された天吊金具と、
前記アンカーボルトに取り付けられて、前記連結孔よりも上と下とに少なくとも1つずつ配置されるワッシャーと、
前記アンカーボルトに取り付けられて、複数の前記ワッシャーのうち最も上に配置される前記ワッシャーよりも上に少なくとも1つ配置されるとともに、複数の前記ワッシャーのうち最も下に配置される前記ワッシャーよりも下に少なくとも1つ配置されるナットと、
前記アンカーボルトに取り付けられて、前記連結孔と前記連結孔よりも上に配置される前記ワッシャーとの間に配置される座金留め具と、
を備え、
前記座金留め具には、前記アンカーボルトを挿入可能であり前記アンカーボルトの外径よりも大きい挿入孔が形成され、
前記挿入孔の内壁には、前記アンカーボルトに向かって突出して前記アンカーボルトの外周面に接触する突起部が形成されていることを特徴とする換気扇。
(付記2)
アンカーボルトに取り付けられる座金留め具であって、
前記座金留め具には、前記アンカーボルトを挿入可能であり前記アンカーボルトの外径よりも大きい挿入孔が形成され、
前記挿入孔の内壁には、前記アンカーボルトに向かって突出して前記アンカーボルトの外周面に接触する突起部が形成されていることを特徴とする座金留め具。
(付記3)
複数の前記突起部が、前記挿入孔の内壁の周方向に互いに間隔を空けて配置され、
複数の前記突起部の突端を結んだ仮想線は、円形であり、
前記円形の直径は、前記アンカーボルトの外径よりも小さいことを特徴とする付記2に記載の座金留め具。
(付記4)
前記突起部は、前記座金留め具の厚さ方向の中心に位置していることを特徴とする付記2または3に記載の座金留め具。
(付記5)
前記突起部の厚さは、前記座金留め具の厚さ以下であり、かつ、前記アンカーボルトに接触した状態で前記挿入孔からはみ出さない厚さであることを特徴とする付記2から4のいずれか1つに記載の座金留め具。
(付記6)
前記座金留め具の素材は、弾性素材であることを特徴とする付記2から5のいずれか1つに記載の座金留め具。
(付記7)
室内の空気を吸気する吸気口および吸気した空気を排気する排気口が形成された箱状の筐体と、前記筐体の内部に配置されたファンとを有する換気扇本体を準備する換気扇本体準備工程と、
アンカーボルトが挿入される連結孔が形成された天吊金具を前記筐体の外面に取り付ける天吊金具取付工程と、
天井裏にアンカーボルトを設置するアンカーボルト設置工程と、
前記アンカーボルトに、上から順に第1のナット、第1のワッシャー、第1の座金留め具、第2のワッシャーおよび第2のナットを取り付け、前記第1の座金留め具と前記第2のワッシャーとの上下方向の間隔を空けて前記天吊金具の前記連結孔に前記アンカーボルトを挿入するための挿入領域を形成する挿入領域形成工程と、
前記アンカーボルトのうち前記挿入領域に対応する部分を前記天吊金具の前記連結孔に挿入するアンカーボルト挿入工程と、
前記第1のナットと前記第2のナットとを締め付けて、前記アンカーボルトに前記天吊金具を固定する天吊金具固定工程と、
を備えることを特徴とする換気扇の施工方法。
(付記8)
前記挿入領域形成工程では、前記アンカーボルトのうち前記第1の座金留め具と前記第2のワッシャーとの間の部分に第2の座金留め具を取り付け、前記第1の座金留め具と前記第2の座金留め具との上下方向の間隔を空けて前記天吊金具の前記連結孔に前記アンカーボルトを挿入するための前記挿入領域を形成することを特徴とする付記7に記載の換気扇の施工方法。
【符号の説明】
【0071】
1 換気扇本体、1a 筐体、1b ファン、1c 下面、1d 天面、1e,1f 側面、1g 吸気口、1h 排気口、1i 副吸気口、1j 本体フランジ部、1k,1x,5d ねじ孔、1m ファンケーシング、1n モータ、1o 羽根、1p シャフト、1q 吸込口、1r 流出口、1s 副吸込口、1t スプリング固定部、1u 支持部、1v 保護壁、1w 凹部、2 ダクト接続口、3 副吸込側ダクト接続口、4 化粧グリル、4a スプリング、4b スプリング固定部品、5 天吊金具、5a 基部、5b ボルト固定部、5c 引掛部、5e 連結孔、5f アーム部、5g ストッパ部、6 ワッシャー、6A 第1のワッシャー、6B 第2のワッシャー、7 ナット、7A 第1のナット、7B 第2のナット、7C 第3のナット、8 座金留め具、8A 第1の座金留め具、8B 第2の座金留め具、8a 挿入孔、8b 突起部、9 シャッタ、10 端子カバー、10a 回転軸、10b 指引掛部、11 電源接続装置、12 外部電源電線、13 ブッシュ、14 アンカーボルト、15 ダクト、16 副吸込側ダクト、17,18 ねじ、19 天井、19a 設置孔、20 天井裏、21 上部構造体、22 鉄骨、100 換気扇、L 仮想線、T 挿入領域。