(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151856
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】鉄道車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20241018BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065602
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】釋迦野 佑
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泉
(72)【発明者】
【氏名】梅田 周作
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
【Fターム(参考)】
3D101AA03
3D101AA05
3D101AA12
3D101AA24
3D101AB02
3D101AB03
3D101AB05
3D101AB17
5H161AA01
5H161MM02
5H161MM15
5H161NN11
(57)【要約】
【課題】設置作業及びメンテナンス作業を省力化することができる鉄道車両用通信システムを提供する。
【解決手段】鉄道車両用通信システム500は、プラットホームPFに対して固定された地上装置210と、鉄道車両900に搭載された車上装置100とを備える。地上装置210と車上装置100との一方から他方に送信される無線信号WSであって、その送信の時刻を表す時刻情報を含む無線信号WSを用いて、地上装置210と車上装置100との距離を測定する測距処理が繰り返し行われる。地上装置210は、鉄道車両900が停止許容領域PRに停車した旨を、車上装置100又は制御装置300に通知する。制御装置300によってホームドアが開かれると、制御装置300から地上装置210と車上装置100との少なくとも一方に、ホームドアが開かれた旨が通知される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームに対して固定された地上装置と、
前記プラットホームに入線する鉄道車両に搭載され、前記地上装置との間で無線通信を行う車上装置と、
を備え、
前記プラットホームには、乗客が乗降する乗降場を前記鉄道車両が通行する領域から仕切っているホームドアが設置されており、
前記地上装置と前記車上装置との一方から他方に送信される無線信号であって、その送信の時刻を表す時刻情報を含む前記無線信号を用いて、前記地上装置と前記車上装置との間における前記無線信号の伝播時間に基づいて前記地上装置と前記車上装置との距離を測定する測距処理が繰り返し行われ、
前記地上装置は、前記測距処理で測定された前記距離と、前記距離の変動とに基づいて、前記鉄道車両が停車したこと、及び前記鉄道車両の停車位置が予め定められた停止許容領域に含まれることが検知された場合、前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車した旨を、前記車上装置、又は前記ホームドアを制御する制御装置に通知し、
前記制御装置によって前記ホームドアが開かれると、前記制御装置から前記地上装置と前記車上装置との少なくとも一方に、前記ホームドアが開かれた旨が通知される、
鉄道車両用通信システム。
【請求項2】
前記無線信号は、超広帯域無線通信によって前記地上装置と前記車上装置との一方から他方に送信される、
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項3】
前記地上装置は、互いに異なる位置に固定された複数のアンカー装置を有し、
前記測距処理では、各々の前記アンカー装置と前記車上装置との距離が測定される、
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項4】
複数の前記アンカー装置は、前記鉄道車両の線路に沿って並んで配置されている、
請求項3に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項5】
前記プラットホームには、前記ホームドアが複数設置されており、
前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車したことが検知された場合に、前記地上装置又は前記車上装置から、前記制御装置に向けて、前記ホームドアを開くことを指示するホームドア開指示信号が出力され、
前記ホームドア開指示信号に、前記鉄道車両の車種を表す情報、前記鉄道車両の編成数を表す情報、前記鉄道車両における連結の有無を表す情報、及び前記鉄道車両のいずれの車両扉が開かれるかを特定する情報、の少なくとも1つの情報が含まれる、
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項6】
前記プラットホームには、前記ホームドアが複数設置されており、
前記停止許容領域に停車した前記鉄道車両の車両扉が開かれる前に、前記地上装置から前記車上装置に対して、各々の前記ホームドアについて該ホームドアを開くことが可能か否かを表す情報が無線で通知される、
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項7】
前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車したことが検知された後に、前記車上装置から前記地上装置を介して前記制御装置に、前記ホームドアを開くことを指示するホームドア開指示信号が出力され、
前記ホームドア開指示信号を前記制御装置に出力した前記地上装置から、前記車上装置に対して、前記ホームドア開指示信号が前記制御装置に出力された旨又は前記ホームドアが開かれた旨を表すホームドア開受諾信号が返信される、
請求項1から4のいずれか1項又は請求項6に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項8】
前記制御装置によって前記ホームドアが開かれ、前記鉄道車両に対する前記乗客の乗降が完了した後、前記地上装置又は前記車上装置から、前記制御装置に向けて、前記ホームドアを閉じることを指示するホームドア閉指示信号が出力される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の鉄道車両用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、鉄道車両の位置を表す距離の測定(以下、測距という。)を繰り返し行う鉄道車両用通信システムが知られている。この鉄道車両用通信システムは、測定された距離が変動しないことをもって、鉄道車両のプラットホームへの停車を検知し、次いでホームドアを開く制御を行う。
【0003】
上記鉄道車両用通信システムは、プラットホームに対して固定された地上装置と、プラットホームに入線する鉄道車両に搭載された車上装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鉄道車両用通信システムにおいて地上装置及び車上装置は、鉄道車両の停車を検知する機能と、鉄道車両が停車した旨を通知する機能とを両立させたものではなかった。このため、設置作業及びメンテナンス作業に手間を要していた。
【0006】
本開示の目的は、設置作業及びメンテナンス作業を省力化することができる鉄道車両用通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る鉄道車両用通信システムは、
プラットホームに対して固定された地上装置と、
前記プラットホームに入線する鉄道車両に搭載され、前記地上装置との間で無線通信を行う車上装置と、
を備え、
前記プラットホームには、乗客が乗降する乗降場を前記鉄道車両が通行する領域から仕切っているホームドアが設置されており、
前記地上装置と前記車上装置との一方から他方に送信される無線信号であって、その送信の時刻を表す時刻情報を含む前記無線信号を用いて、前記地上装置と前記車上装置との間における前記無線信号の伝播時間に基づいて前記地上装置と前記車上装置との距離を測定する測距処理が繰り返し行われ、
前記地上装置は、前記測距処理で測定された前記距離と、前記距離の変動とに基づいて、前記鉄道車両が停車したこと、及び前記鉄道車両の停車位置が予め定められた停止許容領域に含まれることが検知された場合、前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車した旨を、前記車上装置、又は前記ホームドアを制御する制御装置に通知し、
前記制御装置によって前記ホームドアが開かれると、前記制御装置から前記地上装置と前記車上装置との少なくとも一方に、前記ホームドアが開かれた旨が通知される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る鉄道車両用通信システムによれば、地上装置及び車上装置によって、鉄道車両の停車を検知する機能と、鉄道車両が停車した旨を通知する機能とを両立することが可能である。このため、鉄道車両用通信システムの設置作業及びメンテナンス作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る鉄道車両用通信システムの構成を示す概念図
【
図6】実施形態8に係る鉄道車両用通信システムの構成を示す概念図
【
図7】実施形態9に係るアンカー装置の設置の態様を示す概念図
【
図8】実施形態10に係るアンカー装置の設置の態様を示す概念図
【
図9】実施形態11に係るアンカー装置の設置の態様を示す概念図
【
図10】参考形態1に係るアンカー装置の設置の態様を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、実施形態に係る鉄道車両用通信システムについて説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0011】
[実施形態1]
図1に、本実施形態に係る鉄道車両用通信システム500の構成を示す。この鉄道車両用通信システム500は、鉄道駅のプラットホームPFに入線した鉄道車両900の停車を検知する停車検知機能と、鉄道車両900の停車が検知された後に、ホームドア400を開閉する制御機能とを有する。
【0012】
まず、ホームドア400について説明する。プラットホームPFの縁部には、複数のホームドア400が、線路RTに沿って並んで設置されている。各々のホームドア400は、プラットホームPFにおいて乗客が乗降する乗降場RAを、鉄道車両900が通行する通行領域RBから仕切っている。
【0013】
各々のホームドア400は、プラットホームPFに固定される戸袋体410と、戸袋体410から進退するスライド扉420と、スライド扉420の進退を制御する個別制御盤430とを有する。
【0014】
スライド扉420が戸袋体410へ退避することが、ホームドア400が開くことに相当する。スライド扉420が戸袋体410から進出することが、ホームドア400が閉じることに相当する。
【0015】
本実施形態に係る鉄道車両用通信システム500は、上述した制御機能を担うものとして、各々のホームドア400の開閉を制御する制御装置300を備える。制御装置300は、複数の個別制御盤430の各々を制御する総合制御盤320と、総合制御盤320につながれたホームドア連携装置310とを有する。
【0016】
また、本実施形態に係る鉄道車両用通信システム500は、上述した停車検知機能を担うものとして、プラットホームPFに対して固定された地上装置210と、プラットホームPFに入線する鉄道車両900に搭載された車上装置100とを備える。
【0017】
車上装置100及び地上装置210は、鉄道車両900の位置をモニタリングすることにより、鉄道車両900が乗降場RAに停車したことを、協働して検知する。
【0018】
具体的には、車上装置100及び地上装置210は、鉄道車両900の先端部分が、予め定められた仮想的な目標停止位置SPを含む停止許容領域PRに静止したことをもって、乗降場RAへの鉄道車両900の停車を検知する。以下では、“鉄道車両900が乗降場RAに停車する”とは、鉄道車両900が停車したときの鉄道車両900の先端部分の停車位置が停止許容領域PRに含まれることを意味する。
【0019】
地上装置210はプラットホームPFに固定されており、かつ地上装置210の位置は既知である。また、車上装置100は鉄道車両900に固定されている。従って、鉄道車両900の先端部分の、線路RT上における位置(以下、単に位置という。)は、地上装置210と車上装置100との距離によって把握できる。
【0020】
そこで、車上装置100と地上装置210とは、鉄道車両900の位置を把握するために、地上装置210と車上装置100との距離を測定する測距処理を繰り返し行う。なお、その距離の測定には、無線信号WSが用いられる。
【0021】
測距処理で測定された距離の値によって、鉄道車両900の先端部分が、停止許容領域PRに存在することを特定できる。また、測定された距離が変動しないことをもって、鉄道車両900の停車を検知できる。
【0022】
なお、地上装置210と車上装置100との距離を測定することは、鉄道車両900の任意の位置を把握することと等価である。鉄道車両900において、車上装置100の設置個所と鉄道車両900の先端部分とが離れている場合は、それらの間の既知の距離(以下、オフセット距離という。)を、地上装置210と車上装置100との距離の測定結果に含めてもよい。
【0023】
本実施形態では、地上装置210が、プラットホームPFにおける互いに異なる位置に固定された複数のアンカー装置、具体的には、第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、及び第3アンカー装置213によって構成されている。
【0024】
第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、及び第3アンカー装置213は、線路RTに沿って並んで分布している。第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、及び第3アンカー装置213の各々の位置は既知である。
【0025】
上記測距処理では、第1アンカー装置211と車上装置100との距離(以下、第1距離という。)、第2アンカー装置212と車上装置100との距離(以下、第2距離という。)、及び第3アンカー装置213と車上装置100との距離(以下、第3距離という。)の各々が測定される。
【0026】
そして、第1距離、第2距離、及び第3距離によって、鉄道車両900の位置が特定される。このため、地上装置210が1つのみのアンカー装置で構成されている場合に比べると、鉄道車両900の位置をより正確に特定することができる。
【0027】
なお、鉄道車両900の位置の特定は、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213のうち、第1アンカー装置211が主体となって行う。
【0028】
具体的には、第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、及び第3アンカー装置213は、互いに無線通信が可能である。そして、第1アンカー装置211は、自己が測定した第1距離と、第2アンカー装置212から無線通信で取得した第2距離と、第3アンカー装置213から無線通信で取得した第3距離とによって、鉄道車両900の位置を特定する。
【0029】
このようにして、鉄道車両900の位置をリアルタイムにモニタリングし、鉄道車両900が乗降場RAに停車したことが第1アンカー装置211によって検知された場合は、ホームドア400を開閉する開閉処理が行われる。
【0030】
また、本実施形態に係る鉄道車両用通信システム500は、開閉処理において、車上装置100又は地上装置210と制御装置300との間の通信を中継する中継装置220も備える。中継装置220は、車上装置100又は地上装置210と制御装置300との間での、ホームドア400の開閉のタイミングに関わる信号の通信を円滑に行う役割を果たす。なお、中継装置220と、車上装置100又は地上装置210とは無線通信を行う。
【0031】
以下、上述した測距処理及び開閉処理について具体的に説明する。
【0032】
図2を参照し、まず、測距処理について説明する。以下に述べる測距処理は、鉄道車両900が鉄道駅の構内に入線し、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213の各々と車上装置100との無線通信が確立されたときに、自ずと開始される。
【0033】
まず、第1アンカー装置211が、車上装置100に対して、無線信号WSとしての往信号を送信する(ステップS101)。往信号には、その往信号が第1アンカー装置211から送信された時刻を表す時刻情報としての第1送信時刻情報が含まれる。
【0034】
次に、車上装置100が往信号の受信に成功すると(ステップS102)、車上装置100が、第1アンカー装置211に対して、無線信号WSとしての復信号を返信する(ステップS103)。復信号には、その復信号が車上装置100から送信された時刻を表す時刻情報としての第2送信時刻情報と、ステップS102で車上装置100が往信号を受信した時刻を表す第1受信時刻情報とが含まれる。
【0035】
次に、第1アンカー装置211が復信号を受信する(ステップS104)。そして、第1アンカー装置211は、上述した第1距離、即ち、第1アンカー装置211と車上装置100との距離を算出する(ステップS105)。
【0036】
具体的には、第1アンカー装置211は、復信号に含まれる第1送信時刻情報と第1受信時刻情報とを用いて、受信時刻と送信時刻との差、即ち、第1アンカー装置211と車上装置100との間における上記往信号の伝播時間を特定する。そして、第1アンカー装置211は、その特定した伝播時間に基づいて、第1距離を算出する。無線信号WSの伝播速度に伝播時間を掛け算すれば伝播距離が求まる。
【0037】
また、第1アンカー装置211は、復信号に含まれる第2送信時刻情報が表す送信時刻と、ステップS104で復信号を受信した時刻とを用いて、第1アンカー装置211と車上装置100との間における上記復信号の伝播時間を特定し、その特定した伝播時間に基づいて、第1距離を算出することもできる。
【0038】
ステップS105での算出結果は、上記往信号の伝播時間に基づいて算出された第1距離でもよいし、上記復信号の伝播時間に基づいて算出された第1距離でもよいし、それらの平均値であってもよい。
【0039】
以上の要領で、第1アンカー装置211は、第1距離を算出する。同様の処理が、第2アンカー装置212及び第3アンカー装置213の各々と、車上装置100との間で並行して行われる。
【0040】
つまり、第2アンカー装置212も、ステップS101からS105の処理と同様の処理によって、上述した第2距離、即ち、第2アンカー装置212と車上装置100との距離を算出する。第1アンカー装置211は、第2アンカー装置212から第2距離の算出結果を無線信号WSによって取得する(ステップS106)。
【0041】
また、第3アンカー装置213も、ステップS101からS105の処理と同様の処理によって、上述した第3距離、即ち、第3アンカー装置213と車上装置100との距離を算出する。第1アンカー装置211は、第3アンカー装置213から第3距離の算出結果を無線信号WSによって取得する(ステップS107)。
【0042】
そして、第1アンカー装置211は、第1距離の算出結果、第2距離の算出結果、及び第3距離の算出結果を用いて、車上装置100の位置を特定する(ステップS108A)。なお、既述のとおり、車上装置100の位置を特定することは、必要に応じてオフセット距離を考慮して、鉄道車両900の位置を特定することと等価である。車上装置100又は鉄道車両900の位置の特定には、三角測量を用いてもよい。
【0043】
次に、第1アンカー装置211は、鉄道車両900の位置が停止許容領域PRに静止したか否かを判定する(ステップS109)。
【0044】
鉄道車両900の位置がまだ停止許容領域PRに達していない場合は(ステップS109;NO)、再びステップS101に戻る。このようにして、ステップS101からS108Aまでの測距処理が繰り返し行われる。
【0045】
測距処理におけるステップS108Aで特定した鉄道車両900の位置が、前回の測距処理におけるステップS108Aで特定した鉄道車両900の位置から変動している場合は、鉄道車両900が動いていることを意味する。そのような場合、つまり、鉄道車両900が停車したとは言えない場合も、再びステップS101に戻る。
【0046】
鉄道車両900の位置が停止許容領域PRに存在しており、かつ鉄道車両900の位置に変動がみられない場合は(ステップS109;YES)、鉄道車両900が乗降場RAに停車したと言える。その場合に、ホームドア400を開閉する開閉処理が行われる(ステップS200)。
【0047】
図3を参照し、続けて開閉処理について説明する。以下に述べる開閉処理は、既述のとおり、測距処理で測定された距離と、その距離の変動とに基づいて、乗降場RAへの鉄道車両900の停車が第1アンカー装置211によって検知された場合に遂行される。
【0048】
まず、第1アンカー装置211は、車上装置100に対して、乗降場RAへの鉄道車両900の停車を検知した旨を通知する(ステップS201)。なお、この通知も無線信号WSを用いて行われる。
【0049】
次に、上記通知を受けた車上装置100は、鉄道車両900の停車が検知された旨を乗務員へ報知させる制御を、鉄道車両900に搭載されている図示せぬユーザインタフェース機器に対して行う。ここで“乗務員”の概念には、車掌及び運転士が含まれる。
【0050】
次に、車上装置100は、ホームドア400を開くことを許容する旨の乗務員の操作を契機として、中継装置220を介して制御装置300に、ホームドア400を開くことを指示するホームドア開指示信号を送信する(ステップS202A)。なお、このホームドア開指示信号も無線信号WSである。
【0051】
中継装置220は、ステップS202Aにおいて、車上装置100からホームドア開指示信号を無線で受信し、受信したホームドア開指示信号を制御装置300に出力する。なお、中継装置220から制御装置300へのホームドア開指示信号の出力は、無線を通じて行われてもよいし、有線を通じて行われてもよい。
【0052】
ステップS202Aでホームドア開指示信号を制御装置300に出力した中継装置220は、車上装置100に対して、ホームドア開指示信号が制御装置300に出力された旨を表すホームドア開受諾信号を返信する(ステップS203)。なお、このホームドア開受諾信号も無線信号WSである。
【0053】
次に、ステップS202Aでホームドア開指示信号を受信した制御装置300によって、ホームドア400が開かれる(ステップS204)。具体的には、ホームドア連携装置310が中継装置220からホームドア開指示信号を受信し、受信したホームドア開指示信号を総合制御盤320に出力する。これにより、総合制御盤320から各々の個別制御盤430に対してホームドア開指示信号が出力されホームドア400が開かれる。
【0054】
また、ステップS204では、制御装置300によってホームドア400が開かれると、制御装置300から中継装置200を介して車上装置100に、ホームドア400が開かれた旨を通知するホームドア開完了信号が送信される。なお、制御装置300は、ホームドア開完了信号を地上装置210に送信してもよい。この場合、地上装置210から車上装置100にホームドア開完了信号を転送することが可能である。また、制御装置300は、ホームドア開完了信号を地上装置210と車上装置100との双方に送信してもよい。
【0055】
次に、ステップS203でホームドア開受諾信号を受信し、かつステップS204でホームドア開完了信号を受信した車上装置100は、ホームドア400を開く指示が完了した旨を乗務員へ報知させる制御を、上記ユーザインタフェース機器に対して行う。その報知を受けた乗務員は、鉄道車両900の扉(以下、車両扉という。)910を開く操作を行う。これにより、車両扉910が開かれる(ステップS205)。
【0056】
以上のように、ステップS201の通知の後、中継装置220から車上装置100へのホームドア開受諾信号及びホームドア開完了信号の送信を待ってから、車両扉910が開かれる。これにより、先にホームドア400を開いた後に、車両扉910を開くことができる。このため、鉄道車両900に搭乗しようとする乗客にとって、ホームドア400が邪魔とならない。
【0057】
なお、本実施形態において、ステップS203は省略可能である。その場合でも、ホームドア400が開かれた旨がホームドア開完了信号を通じて車上装置100に通知されるので、先にホームドア400を開いた後に、車両扉910を開くことができる。
【0058】
次に、鉄道車両900に対する乗客の乗降が完了し、その完了が駅務員、乗務員等によって確認された後に、鉄道車両900において、車両扉910を閉じる操作が乗務員によって行われる。そして、その操作を契機として車両扉910が閉じられる(ステップS206)。
【0059】
次に、車上装置100は、ホームドア400を閉じることを許容する旨の乗務員の操作を契機として、中継装置220を介して制御装置300に、ホームドア400を閉じることを指示するホームドア閉指示信号を送信する(ステップS207)。なお、このホームドア閉指示信号も無線信号WSである。
【0060】
次に、ホームドア閉指示信号を受信した制御装置300によって、ホームドア400が閉じられる(ステップS208)。
【0061】
次に、ステップS207でホームドア閉指示信号を制御装置300に出力した中継装置220は、車上装置100に対して、ホームドア400が閉じられたことを通知するホームドア閉完了信号を返信する(ステップS209)。なお、このホームドア閉完了信号も無線信号WSである。
【0062】
ホームドア閉完了信号を受信した車上装置100は、ホームドア400が閉じられた旨を乗務員へ報知させる制御を、上記ユーザインタフェース機器に対して行う。その報知を受けた乗務員は、鉄道車両900を次駅に向けて出発させる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両用通信システム500によれば、地上装置210及び車上装置100によって、乗降場RAへの鉄道車両900の停車を検知する機能(
図2のステップS109)と、乗降場RAに鉄道車両900が停車した旨を通知する機能(
図3のステップS201)とを両立することが可能である。このため、鉄道車両用通信システム500の設置作業及びメンテナンス作業を省力化することができる。
【0064】
また、時刻情報を含む無線信号WSを用いて測距処理が行われるので、鉄道車両900の位置のモニタリングに失敗しにくい。また、従来技術で使用されていた、鉄道車両900からの反射波を測距処理に用いる必要がないので、第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、及び第3アンカー装置213を固定する箇所が制約されにくい。
【0065】
なお、無線信号WSは、超広帯域無線通信(UWB:Ultra Wide Band)によって、地上装置210と車上装置100との間で送受されることが好ましい。これにより、いっそうノイズの影響を受けにくくなり、鉄道車両900の位置のモニタリングに失敗する可能性をいっそう低減できる。
【0066】
なお、本明細書において“超広帯域無線通信”とは、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communication Commission)が定義する無線技術を指すものとする。超広帯域無線通信によれば、無線信号WSは、20%以上の比帯域幅(FBW:Fractional Band Width)、又は500MHz以上の帯域幅を有する。また、超広帯域無線通信によれば、無線信号WSは、パルス信号であり、かつ無線信号WSのパルス幅は、1ns以上、200ps以下と非常に狭い。
【0067】
地上装置210を設置する場所によっては、無線信号WSが伝播する経路に、その無線信号WSを反射させる部材が存在することがあり得る。特に駅構内では無線信号WSを反射させる部材が多い。このため、従来は無線を使い難かった。これに対し、本実施形態で無線信号WSがパルス信号である場合には、受信した信号から最初に到達した信号を分離することで、直接波を容易に特定できる。このため、無線信号WSの反射波が測距処理の正確性に及ぼす影響を抑えることができる。パルス幅が狭いほど、この効果が大きい。
【0068】
[実施形態2]
図3には、ホームドア400が開かれた後に、車両扉910が開かれる開閉処理を例示したが、車両扉910が開かれた後に、ホームドア400が開かれてもよい。
【0069】
一例として、
図3において、ステップS205は、ステップS201とS202Aとの間に配置されてもよい。つまり、
図3のステップS201とS202Aとの間において、鉄道車両900の停車が検知された旨の報知を受けた乗務員の操作によって、車両扉910が開かれてもよい。
【0070】
そして、
図3のステップS202Aでは、車両扉910を開く旨の乗務員の操作(以下、車両扉開操作という。)を契機として、車上装置100が、中継装置220を介して制御装置300にホームドア開指示信号を送信してもよい。本実施形態では、
図3のステップS203は省略される。
【0071】
[実施形態3]
上記実施形態1では、
図3のステップS207で、ホームドア400を閉じることを許容する旨の乗務員の操作を契機として、ホームドア閉指示信号が送信されることとしたが、その操作は省略可能である。
【0072】
図3のステップS206では、既述のとおり、車両扉910を閉じる旨の操作(以下、車両扉閉操作という。)が乗務員によって行われる。そこで、本実施形態に係るステップS207では、その車両扉閉操作を契機として、車上装置100が、中継装置220を介して制御装置300にホームドア閉指示信号を送信する。本実施形態では、ホームドア400を閉じることを許容する旨の乗務員の操作は省略される。他の処理は、実施形態1と同様である。なお、以上説明した実施形態3を実施形態2と併用することも可能である。
【0073】
[実施形態4]
図4に、本実施形態に係る開閉処理のフローチャートを示す。本実施形態では、
図3のステップS201は省略される。
図4のステップS202Bでは、鉄道車両900の停車を検知した第1アンカー装置211が、その鉄道車両900の停車の検知を契機として、中継装置220を介して制御装置300にホームドア開指示信号を送信する。
【0074】
このため、本実施形態では、ホームドア400を開くことを許容する旨の乗務員の操作は不要である。なお、本実施形態において、ステップS202Bにおける、第1アンカー装置211から制御装置300へのホームドア開指示信号の送信は、乗降場RAに鉄道車両900が停車した旨の制御装置300への通知の一例である。他の処理は、実施形態1と同様である。
【0075】
[実施形態5]
本実施形態では、
図3のステップS202Aで、車上装置100から中継装置220を介して制御装置300に送信されるホームドア開信号に、鉄道車両900の車種を表す情報、鉄道車両900の編成数を表す情報、鉄道車両900における連結の有無を表す情報、及び鉄道車両900のいずれの車両扉910が開かれるかを特定する情報、の少なくとも1つの情報(以下、車両情報という。)が含まれるものとする。
【0076】
車両情報によれば、プラットホームPFのすべてのホームドア400のうち、いずれのホームドア400が、停車した鉄道車両900の車両扉910と対峙するかを特定できる。車両扉910と対峙するホームドア400のみが開閉されればよく、車両扉910と対峙しないホームドア400は、閉じられたままでよい。
【0077】
そこで、本実施形態では、
図3のステップS204において、制御装置300は、ホームドア開信号に含まれる車両情報に基づいて、プラットホームPFのすべてのホームドア400のうち、車両扉910と対峙するホームドア400のみを開く。ステップS208でも同様に、車両扉910と対峙するホームドア400のみが閉じられる。
【0078】
このように、本実施形態によれば、鉄道車両900の構成に応じて必要なホームドア400のみを開閉させることができる。他の処理は、実施形態1と同様である。
【0079】
[実施形態6]
本実施形態では、
図3又は
図4のステップS205で鉄道車両900の車両扉910が開かれる前に、地上装置210から車上装置100に対して、各々のホームドア400についてそのホームドア400を開くことが可能か否かを表す情報(以下、ホームドア情報という。)が無線で通知されるものとする。
【0080】
具体的には、本実施形態では、
図3又は
図4のステップS203で、制御装置300から中継装置220を介して車上装置100に送信されるホームドア開受諾信号に、ホームドア情報が含まれる。
【0081】
ホームドア情報によれば、各々停車した鉄道車両900の車両扉910と対峙する複数のホームドア400のうち、いずれのホームドア400が開かれないかを特定できる。鉄道車両900においては、開かれるホームドア400と対峙する車両扉910を開けばよく、開かれないホームドア400と対峙する車両扉910は、閉じられたままでよい。
【0082】
そこで、本実施形態では、
図3又は
図4のステップS205において、ホームドア開受諾信号に含まれるホームドア情報に基づいて、開かれたホームドア400と対峙する車両扉910だけが開かれる。本実施形態によれば、開く必要のない車両扉910までもが開かれてしまうことを回避できる。
【0083】
なお、以上説明した実施形態6を先の実施形態5と併用することも可能である。これにより、鉄道車両900が停車した場合に、車両扉910と対峙しないホームドア400を閉じたままとすることができ、かつ開かないホームドア400と対峙する車両扉910を閉じたままとすることができる。
【0084】
[実施形態7]
本実施形態では、鉄道車両900の運転室、車掌室等に、その鉄道車両900の位置を表示する図示せぬ表示装置が搭載されているものとする。以下、本実施形態に係る測距処理について説明する。
【0085】
図5に示すように、本実施形態に係るステップS108Bでは、第1アンカー装置211は、車上装置100の位置を特定した後、その位置を表す位置情報を車上装置100に送信する。なお、この位置情報の通信も無線信号WSを用いて行われる。
【0086】
そして、本実施形態では、位置情報を受信した車上装置100が、その位置情報を表示装置に表示させる(ステップS110)。表示装置は、車上装置100から取得する位置情報に基づいて、目標停止位置SP及び停止許容領域PRに対する鉄道車両900の相対的な位置関係を表示する。なお、表示装置は、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213の位置をさらに表示してもよい。
【0087】
図5に示す測距処理が繰り返されるたびに、表示装置に表示される鉄道車両900の位置が更新される。このようにして、鉄道車両900の位置の変動がリアルタイムに表示装置に表示される。このため、乗務員は表示装置の表示を通じて、目標停止位置SPに対する鉄道車両900の現在の位置を直観的に把握することができる。他の構成は実施形態1-6と同様である。
【0088】
[実施形態8]
上述した測距処理で測定される距離には、線路RTに平行な方向の距離のみならず、線路RTに直角な方向の距離も反映される。従って、測距処理で測定される距離によって、互いに異なる線路RTを通行する複数の鉄道車両900の位置を特定することもできる。以下、具体的に説明する。
【0089】
図6に示すように、本実施形態では、鉄道駅の或るプラットホーム(以下、第1プラットホームという。)PF1に入線する第1鉄道車両900Aに、第1車上装置100Aが搭載される。同じ鉄道駅の別のプラットホーム(以下、第2プラットホームという。)PF2に入線する第2鉄道車両900Bには、第2車上装置100Bが搭載される。
【0090】
そして、第1車上装置100Aと第2車上装置100Bとで共用される第1アンカー装置211から第3アンカー装置213が、第1プラットホームPF1に固定されている。なお、
図6では、
図1に示した制御装置300の図示を省略している。
図1に示した制御装置300は、第1プラットホームPF1のホームドア400の開閉のみならず、第2プラットホームPF2のホームドア400の開閉も行う。
【0091】
但し、
図1に示した中継装置220は、プラットホームPFごとに配置されている。つまり、
図6において、第1プラットホームPF1には、第1中継装置220Aが配置されており、第2プラットホームPF2には、第2中継装置220Bが配置されている。
【0092】
第1アンカー装置211から第3アンカー装置213が第1車上装置100Aと協働して、
図2又は
図5に示す測距処理を行う点は、実施形態1又は7の場合と同じである。また、第1プラットホームPF1のホームドア400に対する開閉制御の手順も、実施形態1の場合と同じである。開閉制御において、第1車上装置100Aは、第1中継装置220Aを介して、図示せぬ制御装置300との間で無線信号WSを用いた通信を行う。
【0093】
また、本実施形態では、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213は、第2車上装置100Bと協働して、
図2又は
図5に示す測距処理を行うこともできる。測距処理の手順は、実施形態1又は7の場合と同様である。第1アンカー装置211から第3アンカー装置213の各々と、第2車上装置100Bとの距離によって、第2プラットホームPF2の乗降場RAへの、鉄道車両900Bの停車を検知することができる。
【0094】
また、第2車上装置100B、第2中継装置220B、及び図示せぬ制御装置300は、実施形態1の場合と同様の手順で、第2プラットホームPF2のホームドア400に対する開閉制御を行う。その開閉制御において、第2車上装置100Bは、第2中継装置220Bを介して、図示せぬ制御装置300との間で無線信号WSを用いた通信を行う。
【0095】
以上のように、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213は、互いに異なる線路RTを通行する複数の鉄道車両900の各々に搭載された車上装置100と協働して、測距処理を行うことができる。第1アンカー装置211から第3アンカー装置213は、プラットホームPFに対して固定されていればよく、その固定の場所及び固定の態様は特に限定されない。
【0096】
ここで“プラットホームPFに対して固定”とは、測距処理の対象である鉄道車両900が入線するプラットホームPFに固定することのみならず、そのプラットホームPFに対して固定されている構造物、具体的には、そのプラットホームPFとは別のプラットホームPFに固定することも含む意味とする。
【0097】
具体的には、
図6において、第2プラットホームPF2は、第1プラットホームPF1に対して固定された構造物に該当する。従って、第1プラットホームPF1に固定された第1アンカー装置211から第3アンカー装置213は、第2プラットホームPF2に対しても固定されていると言える。
【0098】
[実施形態9]
以下では、鉄道車両900が進む方向を“前方”といい、前方とは反対の方向を“後方”という。
【0099】
図1には、停止許容領域PRよりも後方に、2つのアンカー装置としての第1アンカー装置211及び第2アンカー装置212が配置され、停止許容領域PRよりも前方に、他の1つのアンカー装置としての第3アンカー装置213が配置された構成を例示した。アンカー装置の個数及びアンカー装置を設置する場所は特に限定されない。以下、アンカー装置の他の設置態様について述べる。
【0100】
図7に示すように、本実施形態では、平面視において、第1鉄道車両900Aの停止許容領域PR(以下、第1停止許容領域PR1という。)、及び第2鉄道車両900Bの停止許容領域PR(以下、第2停止許容領域PR2という。)を囲む位置に、第1アンカー装置211、第2アンカー装置212、第3アンカー装置213、及び第4アンカー装置214が配置されている。
【0101】
即ち、平面視において、第1アンカー装置211から第4アンカー装置214をつないで構成される仮想多角形、具体的には仮想四角形によって、第1停止許容領域PR1及び第2停止許容領域PR2が囲まれている。
【0102】
第1アンカー装置211から第4アンカー装置214が、第1車上装置100A及び第2車上装置100Bの各々と協働して測距処理を行う点は、実施形態8と同様である。なお、本実施形態では、アンカー装置の数を4つとしたが、アンカー装置の数は3つでもよいし、5つ以上であってもよい。
【0103】
[実施形態10]
図8に示すように、第1停止許容領域PR1及び第2停止許容領域PR2よりも前方に、複数のアンカー装置、具体的には、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213を配置してもよい。
【0104】
なお、本実施形態では、第1停止許容領域PR1に停車する第1鉄道車両900Aにとっての前方も、第2停止許容領域PR2に停車する第2鉄道車両900Bにとっての前方も、
図8の紙面の上方とする。
【0105】
[実施形態11]
ホームドア400は、制御装置300によって開閉されるが、鉄道車両900が停車するまでは、閉じられたままである。このため、ホームドア400も、プラットホームPFに対して固定されている既述の構造物に該当する。そこで、ホームドア400にアンカー装置を固定してもよい。
【0106】
図9に示すように、本実施形態では、ホームドア400に第1アンカー装置211及び第2アンカー装置212が固定されている。具体的には、第1アンカー装置211は、戸袋体410に固定されている。第2アンカー装置212は、スライド扉420に固定されている。また、プラットホームPFの下部の、線路RTに面する端面に、第3アンカー装置213が固定されている。
【0107】
[実施形態12]
図2には、車上装置100と地上装置210とで、鉄道車両900の停車を検知する構成を例示した。鉄道車両900の停車の検知には、車上装置100及び地上装置210とは別に、停車を検知するためのセンサを併用してもよい。
【0108】
本実施形態では、鉄道車両用通信システム500が、鉄道車両900の速度を検出する速度センサをさらに備える。速度センサは、鉄道車両900又はプラットホームPFに設置することができる。速度センサによって、鉄道車両900が停車したことを表す測定結果が得られたことが、
図2のステップS109で“YES”と判定されるための条件に加えられる。
【0109】
[実施形態13]
図2には、第1アンカー装置211が主体となって測距処理を行う構成、即ち、ステップS106からS108Aの処理を第1アンカー装置211が行う構成を例示した。地上装置210が複数のアンカー装置で構成される場合に、自己以外のアンカー装置から距離の測定結果を取得し、自己の測定結果を加味して、鉄道車両900の位置を特定する機能(以下、マスター機能という。)は、いずれのアンカー装置が果たしてもよい。また、マスター機能を果たす主体が、それら複数のアンカー装置の間で適時に変更されてもよい。
【0110】
本実施形態では、第1アンカー装置211に故障又は不具合が発生した際は、マスター機能を果たす主体が、第1アンカー装置211から他のアンカー装置、具体的には、第2アンカー装置212に変更される。これにより、鉄道車両用通信システム500の冗長化が図られる。
【0111】
[参考形態1]
鉄道車両800は、基地局、中央装置といった、沿線の管理のための地上装置との間で無線通信を行いつつ運行される。現状、その無線通信を実現するためのアンテナとして、線路RTに沿って敷かれた漏えい同軸ケーブル(LCX: Leaky Coaxial Cable )が用いられている。しかし、漏えい同軸ケーブルの設置、メンテナンス等には多大な労力を要する。
【0112】
図10に示すように、本参考形態では、第1基地局811と第2基地局812との間のゾーン境界領域820に、複数のアンカー装置831、832、833を分布させる。ゾーン境界領域820では、第1基地局811からの電波も、第2基地局812からの電波も直接的には届きにくいが、本実施形態では、複数のアンカー装置831、832、833が電波を中継する役割を果たす。
【0113】
このため、ゾーン境界領域820でも安定した無線通信が行える。本参考形態によれば、線路RTに沿って漏えい同軸ケーブルを敷く必要がないので、漏えい同軸ケーブルの設置、メンテナンス等に要していた労から解放される。
【0114】
[参考形態2]
鉄道駅の構内で業務に従事する各々の駅務員の所持する携帯端末に、車上装置100と同等の機能をもつタグ装置を取り付けてもよい。そして、そのタグ装置と、鉄道駅の構内に設置されたアンカー装置との間で測距処理が行われてもよい。
【0115】
アンカー装置は、鉄道車両900の位置を把握するための既述の測距処理と、駅務員の位置を把握するための測距処理とに共用されてもよい。タグ装置とアンカー装置とで行われる測距処理の結果に基づいて、各々の駅務員の所持する携帯端末に、他の駅務員の位置が表示されてもよい。本参考形態によれば、駅務員どうしでの位置の把握の迅速化が図られる。このことは、スムーズな乗客対応に資する。
【0116】
以上、実施形態及び参考形態について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0117】
図1には、時刻情報を含む無線信号WSが地上装置210と車上装置100との間で送受される構成、つまり、地上装置210から車上装置100に送信される無線信号WSと、車上装置100から地上装置210に送信される無線信号WSとの各々を用いて距離の測定が可能な構成を例示した。地上装置210から車上装置100に送信される無線信号WSと、車上装置100から地上装置210に送信される無線信号WSとの一方のみを用い、他方は省略して、距離の測定を行ってもよい。
【0118】
測距処理においては、鉄道車両900の位置の特定に三角測量を用いてもよい。少なくとも2つのアンカー装置を用いることで、一方のアンカー装置と車上装置100との距離と、他方のアンカー装置と車上装置100との距離と、アンカー装置どうしの距離とを用いて、三角測量により鉄道車両900の位置を特定できる。3つ以上のアンカー装置を使用する場合は、使用するアンカー装置の群から選択される任意の一対のアンカー装置ごとに三角測量を適用できる。但し、三角測量は必至ではない。鉄道車両900は線路RTに沿って1次元に移動するので、アンカー装置を1つのみ用いる場合でも、そのアンカー装置と車上装置100との距離によって鉄道車両900の位置を一意に特定し得る。
【0119】
本明細書において“プラットホームPFに対して固定”とは、測距処理の対象である鉄道車両900が入線するプラットホームPFに固定することのみならず、そのプラットホームPFに対して固定されている構造物又は地面に固定することも含む意味とする。固定の方法は任意である。一例として、アンカー装置は、地面に固定されていてもよいし、地面よりも上方に吊るされた状態で地面に対して固定されていてもよい。
【0120】
図1に示した中継装置220は、省略可能である。車上装置100、第1アンカー装置211は、中継装置220を介さず、制御装置300と直接的に通信することもできる。
【0121】
図2には、第1アンカー装置211が、鉄道車両900の位置を特定する構成を例示した。車上装置100が、第1アンカー装置211から第3アンカー装置213の各々との距離を算出し、かつ鉄道車両900の位置を特定してもよい。つまり、乗降場RAへの鉄道車両900の停車を検知する、
図2のステップS109の判定は、地上装置210と車上装置100とのいずれが行ってもよい。
【0122】
そして、地上装置210又は車上装置100によって乗降場RAへの鉄道車両900の停車が検知された場合には、実施形態1で述べたように、乗務員の操作を経て、制御装置300にホームドア開指示信号が出力されてもよいし、実施形態4で述べたように、乗務員の操作を経ずに、制御装置300にホームドア開指示信号が出力されてもよい。いずれの場合でも、乗降場RAへの鉄道車両900の停車が検知された際には、地上装置210又は車上装置100から制御装置300に対してホームドア開指示信号が出力される。
【0123】
本明細書において、鉄道車両900とは、電車に限らず、新幹線、モノレール、その他の、線路RTに沿って進行する車両を含む概念とする。
【0124】
以下、本開示の諸態様を付記する。
【0125】
(付記1)
プラットホームに対して固定された地上装置と、
前記プラットホームに入線する鉄道車両に搭載され、前記地上装置との間で無線通信を行う車上装置と、
を備え、
前記プラットホームには、乗客が乗降する乗降場を前記鉄道車両が通行する領域から仕切っているホームドアが設置されており、
前記地上装置と前記車上装置との一方から他方に送信される無線信号であって、その送信の時刻を表す時刻情報を含む前記無線信号を用いて、前記地上装置と前記車上装置との間における前記無線信号の伝播時間に基づいて前記地上装置と前記車上装置との距離を測定する測距処理が繰り返し行われ、
前記地上装置は、前記測距処理で測定された前記距離と、前記距離の変動とに基づいて、前記鉄道車両が停車したこと、及び前記鉄道車両の停車の位置が予め定められた停止許容領域に含まれることが検知された場合、前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車した旨を、前記車上装置、又は前記ホームドアを制御する制御装置に通知し、
前記制御装置によって前記ホームドアが開かれると、前記制御装置から前記地上装置と前記車上装置との少なくとも一方に、前記ホームドアが開かれた旨が通知される、
鉄道車両用通信システム。
【0126】
(付記2)
前記無線信号は、超広帯域無線通信によって前記地上装置と前記車上装置との一方から他方に送信される、
付記1に記載の鉄道車両用通信システム。
【0127】
(付記3)
前記地上装置は、互いに異なる位置に固定された複数のアンカー装置を有し、
前記測距処理では、各々の前記アンカー装置と前記車上装置との距離が測定される、
付記1又は2に記載の鉄道車両用通信システム。
【0128】
(付記4)
複数の前記アンカー装置は、前記鉄道車両の線路に沿って並んで配置されている、
付記3に記載の鉄道車両用通信システム。
【0129】
(付記5)
前記プラットホームには、前記ホームドアが複数設置されており、
前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車したことが検知された場合に、前記地上装置又は前記車上装置から、前記制御装置に向けて、前記ホームドアを開くことを指示するホームドア開指示信号が出力され、
前記ホームドア開指示信号に、前記鉄道車両の車種を表す情報、前記鉄道車両の編成数を表す情報、前記鉄道車両における連結の有無を表す情報、及び前記鉄道車両のいずれの車両扉が開かれるかを特定する情報、の少なくとも1つの情報が含まれる、
付記1から4のいずれかに記載の鉄道車両用通信システム。
【0130】
(付記6)
前記プラットホームには、前記ホームドアが複数設置されており、
前記停止許容領域に停車した前記鉄道車両の車両扉が開かれる前に、前記地上装置から前記車上装置に対して、各々の前記ホームドアについて該ホームドアを開くことが可能か否かを表す情報が無線で通知される、
付記1から5のいずれかに記載の鉄道車両用通信システム。
【0131】
(付記7)
前記鉄道車両が前記停止許容領域に停車したことが検知された後に、前記車上装置から前記地上装置を介して前記制御装置に、前記ホームドアを開くことを指示するホームドア開指示信号が出力され、
前記ホームドア開指示信号を前記制御装置に出力した前記地上装置から、前記車上装置に対して、前記ホームドア開指示信号が前記制御装置に出力された旨又は前記ホームドアが開かれた旨を表すホームドア開受諾信号が返信される、
付記1から4のいずれか又は付記6に記載の鉄道車両用通信システム。
【0132】
(付記8)
前記制御装置によって前記ホームドアが開かれ、前記鉄道車両に対する前記乗客の乗降が完了した後、前記地上装置又は前記車上装置から、前記制御装置に向けて、前記ホームドアを閉じることを指示するホームドア閉指示信号が出力される、
付記1から7のいずれかに記載の鉄道車両用通信システム。
【符号の説明】
【0133】
100 車上装置、100A 第1車上装置、100B 第2車上装置、210 地上装置、211 第1アンカー装置(アンカー装置)、212 第2アンカー装置(アンカー装置)、213 第3アンカー装置(アンカー装置)、214 第4アンカー装置(アンカー装置)、220 中継装置、220A 第1中継装置、220B 第2中継装置、300 制御装置、310 ホームドア連携装置、320 総合制御盤、400 ホームドア、410 戸袋体、420 スライド扉、430 個別制御盤、500 鉄道車両用通信システム、900 鉄道車両、900A 第1鉄道車両、900B 第2鉄道車両、910 車両扉、PF プラットホーム、PF1 第1プラットホーム、PF2 第2プラットホーム、PR 停止許容領域、PR1 第1停止許容領域、PR2 第2停止許容領域、RT 線路、RA 乗降場、RB 通行領域、SP 目標停止位置、WS 無線信号。