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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151864
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G03G21/00 312
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065617
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 慶也
(72)【発明者】
【氏名】若狹 洋平
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134HA01
2H134HA10
2H134HA13
2H134HA16
2H134HF13
2H134HF14
2H134KA11
2H134KA17
2H134KA29
2H134KB04
2H134KB09
2H134KB15
2H134KG03
2H134KG04
2H134KH16
2H270KA04
2H270KA26
2H270KA32
2H270KA38
2H270LA01
2H270LA24
2H270LA28
2H270MA28
2H270MB27
2H270MB43
2H270QB05
2H270RA10
2H270RA14
2H270RC10
2H270RC16
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】転写しきれずに像担持体上に残留した転写残トナーを好適に回収することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置の制御部は、画像形成時に、電圧印加部によって回収電圧をクリーニングローラー242に印加し、トナー像を感光体ドラム21の外周面に形成して中間転写ベルト31に転写させた後の転写残トナーのトナー帯電量を予測し、当該トナー帯電量に応じてクリーニングローラー242に印加する回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の外周面を所定の表面電位に帯電させる帯電部と、
前記帯電部によって帯電された前記像担持体の外周面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する露光部と、
前記像担持体の前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像部と、
前記像担持体の外周面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する転写部と、
前記像担持体の外周面の付着物を除去して回収するクリーニングローラーと、
前記帯電部、前記現像部、前記転写部、及び前記クリーニングローラーへの通電を制御する電圧印加部と、
前記像担持体、前記帯電部、前記現像部、前記転写部、前記クリーニングローラー、及び前記電圧印加部を制御する制御部と、
を備え、
前記電圧印加部は、前記クリーニングローラーへ両極性の電圧が印加可能であり、
前記制御部は、
画像形成時に、前記電圧印加部によって回収電圧を前記クリーニングローラーに印加し、
前記トナー像を前記像担持体の外周面に形成して前記被転写体に転写させた後の転写残トナーのトナー帯電量を予測し、
前記トナー帯電量に応じて前記クリーニングローラーに印加する前記回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
周辺環境の温度及び湿度を検出する温湿度検出部と、
前記温湿度検出部によって検出された前記温度及び前記湿度、並びに前記現像部の累積駆動時間と、前記転写残トナーの前記トナー帯電量との関係性が定められた予測テーブルが記憶された記憶部と、
を備え、
前記制御部は、前記温湿度検出部によって検出された前記温度及び前記湿度と、前記累積駆動時間とに基づき、前記予測テーブルを用いて前記転写残トナーの前記トナー帯電量を予測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体で形成された前記トナー像のトナー濃度を検出する濃度検出部と、
前記像担持体に対する前記クリーニングローラーの接触圧力を変更可能な加圧機構と、
を備え、
前記制御部は、
前記トナー像を前記像担持体の外周面に形成して前記被転写体に転写させ、
前記トナー像の前記転写残トナーが前記クリーニングローラーで回収されることなく前記像担持体の1周後まで残留する前記トナー像の未回収トナーの有無を前記濃度検出部によって検出し、
前記未回収トナーが発生する場合に、前記クリーニングローラーの回転速度を変更する、または前記加圧機構によって前記クリーニングローラーの前記接触圧力を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
当該画像形成装置の状態を報知する報知部を備え、
前記制御部は、前記未回収トナーが発生する場合に、前記現像部の交換、または前記クリーニングローラーの交換を促す情報を、前記報知部を介して報知することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像部は、前記像担持体の外周面に残留する前記トナーを回収可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、像担持体である感光体ドラムの外周面に形成した静電潜像にトナーを供給して現像することで、後に用紙に転写されるトナー像を形成する装置が広く利用されている。このような画像形成装置では、感光体ドラムから中間転写ベルトや用紙といった被転写材に転写しきれずに感光体ドラム上に残る転写残トナーが次の画像形成に影響を及ぼさないように、当該転写残トナーを回収する必要がある。
【0003】
特許文献1で開示された従来の画像形成装置は、感光体ドラムから用紙に転写しきれずに感光体ドラム上に残ったトナーを、トナーと逆極性のバイアスを印加したクリーニングローラーによって回収する。さらに、当該画像形成装置は、クリーニングローラーで回収されずに感光体ドラム上に残ったトナーを、感光体ドラム上の静電潜像にトナーを供給する現像カートリッジ等によって回収する。そして、当該トナーの回収制御において、クリーニングローラーの回転中にタイミングを計って、クリーニングローラーに印加するバイアスを制御している。これにより、トナーを良好に回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-87416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、感光体ドラム上に残留したトナーの帯電特性によっては、回収効率を高めることができず、未回収トナーが発生する虞があることに課題があった。これにより、未回収トナーが次の画像形成に影響を及ぼし、画像不良が発生することが懸念された。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、転写しきれずに像担持体上に残留した転写残トナーを好適に回収することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部と、クリーニングローラーと、電圧印加部と、制御部と、を備える。前記像担持体は、外周面に感光層が形成される。前記帯電部は、前記像担持体の外周面を所定の表面電位に帯電させる。前記露光部は、前記帯電部によって帯電された前記像担持体の外周面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する。前記現像部は、前記像担持体の前記静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する。前記転写部は、前記像担持体の外周面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する。前記クリーニングローラーは、前記像担持体の外周面の付着物を除去して回収する。前記電圧印加部は、前記帯電部、前記現像部、前記転写部、及び前記クリーニングローラーへの通電を制御する。前記制御部は、前記像担持体、前記帯電部、前記現像部、前記転写部、前記クリーニングローラー、及び前記電圧印加部を制御する。前記電圧印加部は、前記クリーニングローラーへ両極性の電圧が印加可能である。前記制御部は、画像形成時に、前記電圧印加部によって回収電圧を前記クリーニングローラーに印加し、前記トナー像を前記像担持体の外周面に形成して前記被転写体に転写させた後の転写残トナーのトナー帯電量を予測し、前記トナー帯電量に応じて前記クリーニングローラーに印加する前記回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、転写しきれずに像担持体上に残留した転写残トナーのトナー帯電量に応じて、クリーニングローラーの回収電圧が調整される。このようにして調整したクリーニングローラーの回収電圧を用いることで、像担持体上の転写残トナーを好適に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の画像形成装置の概略断面正面図である。
図2図1の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の画像形成装置の画像形成部周辺の概略断面正面図である。
図4】現像部のトナー帯電量と転写残トナーのトナー帯電量との関係を示すグラフである。
図5A】転写時に正帯電する転写残トナーの帯電状態の推移を示す画像形成部周辺の模式的概略正面図である。
図5B】クリーニングローラーによる転写残トナーの回収原理を示す説明図である。
図5C】現像ローラーによる転写残トナーの回収原理を示す説明図である。
図6A】転写時に負帯電する転写残トナーの帯電状態の推移を示す画像形成部周辺の模式的概略正面図である。
図6B】クリーニングローラーによる転写残トナーの回収原理を示す説明図である。
図7A】クリーニングローラーの回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、転写残トナーの回収性が通常の状態を示す説明図である。
図7B】クリーニングローラーの回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、正側の回収電圧を印加した状態を示す説明図である。
図7C】クリーニングローラーの回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、転写残トナーのトナー帯電量が0付近である場合を示す説明図である。
図8】実施例1のクリーニングローラーに印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。
図9】実施例2のクリーニングローラーに印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。
図10】実施例3のクリーニングローラーに印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態の画像形成装置1の概略断面正面図である。図2は、図1の画像形成装置1の構成を示すブロック図である。図3は、図1の画像形成装置1の画像形成部20周辺の概略断面正面図である。本実施形態の画像形成装置1の一例としては、外部のコンピュータから印刷ジョブに係る画像データ及び印刷指令を受け付け、中間転写ベルト31を用いてトナー像を用紙Sに転写するタンデム方式のカラープリンターである。画像形成装置1は、例えば印刷、スキャン(画像読取)、ファクシミリ送信等の機能を備えたいわゆる複合機であっても良い。
【0012】
画像形成装置1は、図1図2及び図3に示すように、その本体2に設けられた、用紙供給部3、用紙搬送部4、露光部5、画像形成部20、転写部30、定着部6、用紙排出部7、制御部8及び記憶部9を備える。
【0013】
本体2は、操作パネル2cを備える。操作パネル2cは、例えば本体2の正面上部に配置され、液晶ディスプレイ等の表示部2dを含む。操作パネル2cは、例えば印刷に使用する用紙Sの種類やサイズ、拡大縮小、片面印刷、両面印刷、集約印刷といった印刷条件などの設定、及び実行指令等の入力に係る画面の画像を表示部2dに表示し、その入力をユーザー自身から直接受け付ける。さらに、表示部2dは、例えば画像形成装置1の状態や注意事項、エラーメッセージなどを表示することで、それらをユーザーに対して報知するための報知部としての役割も果たす。
【0014】
用紙供給部3は、本体2の底部に配置される。用紙供給部3は、印刷前の複数枚の用紙Sを収容し、印刷時に用紙Sを1枚ずつ分離して送り出す。用紙搬送部4は、本体2の側壁に沿って上下方向に延びる。用紙搬送部4は、用紙供給部3から送り出された用紙Sを二次転写部33及び定着部6へと搬送し、さらに定着後の用紙Sを用紙排出口4aから用紙排出部7に排出する。露光部5は、本体2の上部に配置される。露光部5は、画像データに基づき制御されたレーザー光を画像形成部20に向かって照射する。
【0015】
画像形成部20は、露光部5の下方、且つ中間転写ベルト31の上方に配置される。画像形成部20は、イエロー用の画像形成部20Yと、シアン用の画像形成部20Cと、マゼンタ用の画像形成部20Mと、ブラック用の画像形成部20Bと、を含む。これらの4つの画像形成部20は、基本的な構成が同じである。これにより、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、各色を表す「Y」、「C」、「M」、「B」の識別記号は省略することがある。
【0016】
画像形成部20は、所定の方向(図1及び図3における反時計回り)に回転可能に支持された感光体ドラム(像担持体)21を備える。画像形成部20は、さらに感光体ドラム21の周囲に、その回転方向に沿って配置された帯電部22と、現像部23と、ドラムクリーニング部(クリーニング部)24と、を備える。なお、現像部23とドラムクリーニング部24との間に一次転写部32が配置される。
【0017】
感光体ドラム21は、外周面に感光層が形成されている。帯電部22は、感光体ドラム21の外周面を所定の表面電位に帯電させる。露光部5は、帯電部22によって帯電された感光体ドラム21の外周面を露光し、帯電を減衰させた原稿画像の静電潜像を感光体ドラム21の外周面に形成する。現像部23は、感光体ドラム21の外周面の静電潜像にトナーを供給して現像し、トナー像を形成する。4つの画像形成部20それぞれは、異なる色のトナー像を形成する。
【0018】
ドラムクリーニング部24は、トナー像が中間転写ベルト31の外周面に一次転写された後に、感光体ドラム21の外周面に残留するトナー等の付着物を除去して回収する。なお、ドラムクリーニング部24によって回収しきれず(転写残トナー)に感光体ドラム21の外周面に残留したトナーは、帯電部22の箇所を通過した後に現像部23によって回収される。このようにして、画像形成部20は、後に用紙Sに転写される画像(トナー像)を形成する。
【0019】
転写部30は、中間転写ベルト(ベルト)31と、一次転写部32Y、32C、32M、32Bと、二次転写部33と、ベルトクリーニング部34と、を備える。中間転写ベルト31は、4つの画像形成部20の下方、且つ用紙供給部3の上方に配置される。中間転写ベルト31は、4つの感光体ドラム21と対向配置される。中間転写ベルト31は、所定の方向(図1における時計回り)に回転可能に支持され、4つの画像形成部20それぞれで形成されたトナー像が順次重ねて一次転写される無端状の中間転写体である。4つの画像形成部20は、中間転写ベルト31の回転方向上流側から下流側に向けて一列に並んだいわゆるタンデム方式にして配置される。
【0020】
一次転写部32Y、32C、32M、32Bは、中間転写ベルト31を挟んで、各色の画像形成部20Y、20C、20M、20Bの下方に配置される。二次転写部33は、用紙搬送部4の用紙搬送方向に対して定着部6よりも上流側であって、中間転写ベルト31の回転方向に対して4つの画像形成部20Y、20C、20M、20Bよりも下流側に配置される。ベルトクリーニング部34は、中間転写ベルト31の回転方向に対して二次転写部33よりも下流側に配置される。
【0021】
一次転写部32は、感光体ドラム21の外周面に形成されたトナー像を中間転写ベルト31の外周面に転写する。言い換えれば、トナー像は、各色の一次転写部32Y、32C、32M、32Bで中間転写ベルト31の外周面に一次転写される。そして、中間転写ベルト31の回転とともに所定のタイミングで4つの画像形成部20のトナー像が連続して重ねて中間転写ベルト31に転写されることにより、中間転写ベルト31の外周面にはイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0022】
中間転写ベルト31の外周面のカラートナー像は、用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Sに、二次転写部33に形成される二次転写ニップ部で転写される。ベルトクリーニング部34は、二次転写後に中間転写ベルト31の外周面に残留するトナー等の付着物を除去してクリーニングする。このようにして、転写部30は、感光体ドラム21の外周面に形成されたトナー像を用紙Sに転写(記録)する。
【0023】
定着部6は、二次転写部33の上方に配置される。定着部6は、トナー像が転写された用紙Sを加熱、加圧してトナー像を用紙Sに定着させる。
【0024】
用紙排出部7は、転写部30の上方に配置される。トナー像が定着されて印刷が完了した用紙Sは、用紙排出部7に搬送される。用紙排出部7は、上方から印刷後の用紙(印刷物)が取り出される。
【0025】
制御部8は、CPU、画像処理部、並びにその他の電子回路及び電子部品を含む(いずれも不図示)。CPUは、記憶部9に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、画像形成装置1に設けられた各構成要素の動作を制御して画像形成装置1の機能に係る処理を行う。用紙供給部3、用紙搬送部4、露光部5、画像形成部20、転写部30及び定着部6のそれぞれは、制御部8から個別に指令を受け、連動して用紙Sへの印刷を行う。
【0026】
記憶部9は、例えばプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置(不図示)と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置(不図示)との組み合わせで構成される。
【0027】
また、画像形成装置1は、図1及び図2に示すように、電圧印加部12と、濃度検出部14と、をさらに備える。
【0028】
電圧印加部12は、例えば電源部及び制御回路を含む(いずれも不図示)。電圧印加部12は、帯電部22のチャージワイヤー221及びグリッド電極222と、現像部23の現像ローラー234と、ドラムクリーニング部24のクリーニングローラー242と、転写部30の一次転写ローラー321及び二次転写ローラー331と、に電気的に接続される。電圧印加部12は、帯電部22、現像部23、クリーニングローラー242、及び転写部30への通電を制御する。
【0029】
詳細に言えば、電圧印加部12は、チャージワイヤー221への帯電電流及びグリッド電極222への帯電電圧を印加し、現像ローラー234に現像電圧(現像バイアス)を印加し、クリーニングローラー242に回収電圧(クリーニングバイアス)を印加し、一次転写ローラー321及び二次転写ローラー331に転写電圧(転写電流)を印加する。制御部8は、電圧印加部12を介し、チャージワイヤー221、グリッド電極222、現像ローラー234、クリーニングローラー242、一次転写ローラー321及び二次転写ローラー331のそれぞれへの電圧(電流)の印加タイミング、電圧値(電流値)、極性、印加時間等を制御する。
【0030】
濃度検出部14は、中間転写ベルト31の回転方向に対し、二次転写部33の上流側に配置される。濃度検出部14は、中間転写ベルト31の外周面と対向する。濃度検出部14は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を含む発光部と、例えばフォトダイオード等の受光素子を含む受光部と、を有する反射型光学センサーを備える。発光部は、中間転写ベルト31の外周面に転写されたトナー像に向けて所定角度で検出光を照射する。受光部は、発光部がトナー像に向けて照射し、トナー像で反射した検出光を受ける。
【0031】
受光部は、トナー像で反射した検出光のうち、正反射光を受ける正反射光受光部と、拡散反射光を受ける拡散反射光受光部と、を含む。中間転写ベルト31の外周面にトナーが無い場合、発光部から照射された検出光はトナーによって拡散反射されることなく正反射され、正反射光受光部に多く入射される。そして、中間転写ベルト31の外周面のトナー量が増加するほど、多くの光がトナーによって拡散反射されるようになり、徐々に拡散反射光受光部の入射量が多くなる。
【0032】
このようにして、濃度検出部14は、検出光を発光部からトナー像に向けて照射し、当該トナー像で反射させて受光部(正反射光受光部及び拡散反射光受光部)で受けた検出光に基づき、中間転写ベルト31の外周面に転写されたトナー像のトナー濃度を検出する。言い換えれば、濃度検出部14は、画像形成部20において感光体ドラム21の外周面に形成されたトナー像のトナー濃度を検出する。
【0033】
続いて、画像形成部20とその周辺の構成について、図3を用いて説明する。なお、各色の画像形成部20それぞれは基本的な構成が同じであるので、特に限定する必要がある場合を除き、構成要素について各色を表す識別記号の記載と、説明とを省略する。
【0034】
画像形成部20は、感光体ドラム21と、帯電部22と、現像部23と、ドラムクリーニング部24と、を備える。
【0035】
感光体ドラム21は、中心軸線を水平にして回転可能に支持された円筒形状であり、駆動部(不図示)によって中心軸線回りに一定速度で回転される。感光体ドラム21は、例えばアルミニウム等の金属製のドラム素管の外周面に、例えば有機感光体(Organic Photoconductor、OPC)で構成される感光層を有する。感光体ドラム21の外周面には、静電潜像が形成される。
【0036】
帯電部22は、感光体ドラム21の外周面に対して所定の間隔を空けて対向配置される。帯電部22は、チャージワイヤー221と、グリッド電極222と、を有する。チャージワイヤー221は、感光体ドラム21の軸線方向と平行に延びる線状の電極であり、感光体ドラム21との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極222は、感光体ドラム21の軸線方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー221と感光体ドラム21との間に配置される。帯電部22は、チャージワイヤー221に所定の帯電電流が印加されてコロナ放電を発生し、さらにグリッド電極222に所定の帯電電圧が印加されることで、感光体ドラム21の外周面(表面)を所定の表面電位に一様に帯電させる。
【0037】
現像部23は、感光体ドラム21の回転方向に対し、帯電部22の下流側に配置される。現像部23は、現像容器231と、攪拌パドル232と、供給ローラー233と、現像ローラー234と、を有する。
【0038】
現像容器231は、感光体ドラム21の軸線方向(図3の紙面奥行き方向)に沿って延びる細長い形状であって、その長手方向を水平にして配置される。現像容器231は、感光体ドラム21と対向する一部に開口部231aを有する。現像容器231は、現像剤として非磁性一成分のトナーを収容する。すなわち、現像容器231は、感光体ドラム21に供給するトナーを収容する。
【0039】
攪拌パドル232は、現像容器231内の上部であって、開口部231aから現像ローラー234及び供給ローラー233を隔てた位置に配置される。攪拌パドル232は、感光体ドラム21と平行に延びる軸線回りに回転可能にして現像容器231に支持される。攪拌パドル232は、さらに径方向に延びる可撓性のフィルム部を有する。攪拌パドル232は、軸線回りに回転することで、現像容器231内のトナーを攪拌する。
【0040】
供給ローラー233は、現像容器231内の下部であって、開口部231aと攪拌パドル232との間に配置される。供給ローラー233は、現像ローラー234と対向配置される。供給ローラー233は、感光体ドラム21と平行に延びる軸線回りに回転可能にして現像容器231に支持される。供給ローラー233は、現像ローラー234との対向領域において現像ローラー234の外周面に供給するトナーを担持する。供給ローラー233は、現像ローラー234と同方向に回転する。
【0041】
現像ローラー234は、現像容器231の開口部231aに配置され、その一部が現像容器231から露出する。現像ローラー234は、感光体ドラム21と対向配置され、感光体ドラム21と接触する。現像ローラー234は、感光体ドラム21の軸線と平行に延びる軸線回りに回転可能にして現像容器231に支持される。現像ローラー234は、感光体ドラム21との対向領域において感光体ドラム21の外周面に供給するトナーを担持する。現像ローラー234は、感光体ドラム21と逆方向に回転する。現像ローラー234は、現像容器231内のトナーを感光体ドラム21の外周面に供給し、静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0042】
ドラムクリーニング部24は、感光体ドラム21の回転方向に対し、一次転写部32の下流側に配置される。ドラムクリーニング部24は、回収容器241と、クリーニングローラー242と、を有する。
【0043】
回収容器241は、感光体ドラム21の軸線方向(図3の紙面奥行き方向)に沿って延びる細長い形状であって、その長手方向を水平にして配置される。回収容器241は、クリーニングローラー242によって感光体ドラム21の外周面から除去され、回収されたトナー等の付着物を収容する。
【0044】
クリーニングローラー242は、その一部が回収容器241から露出し、感光体ドラム21と対向配置される。クリーニングローラー242は、感光体ドラム21の軸線と平行に延びる軸線回りに回転可能にして回収容器241に支持される。クリーニングローラー242は、例えば所定のセル径を有するスポンジローラーで構成される。クリーニングローラー242は、画像形成時に、電圧印加部12によって回収電圧が印加される。クリーニングローラー242は、一次転写後に感光体ドラム21の外周面に残留するトナーを含む付着物を除去し、回収する。
【0045】
なお、クリーニングローラー242は、感光体ドラム21の外周面に所定の圧力で接触する。画像形成部20は、感光体ドラム21に対するクリーニングローラー242の接触圧力を変更可能な加圧機構243を備える。加圧機構243は、例えばクリーニングローラー242を感光体ドラム21に向けて付勢する付勢部材(バネ等)と、接触圧力を変更するためのカム、及び当該カムの駆動源(モーター等)と、を含む。
【0046】
クリーニングローラー242は、スポンジのセル内にトナーを回収する。ドラムクリーニング部24の累積駆動時間が長期化すると、セル内にトナーが貯留し、クリーニングローラー242によるトナーの回収が困難になってくる。クリーニングローラー242によるトナーの回収性能は、クリーニングローラー242の回収電圧(クリーニングバイアス)を適正に調整することにより、向上させることが可能である。
【0047】
続いて、転写残トナーの回収性と、転写残トナーのトナー帯電量との関係性について説明する。
【0048】
図4は、現像部23のトナー帯電量と転写残トナーのトナー帯電量との関係を示すグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸は現像部23のトナー帯電量であり、縦軸は一次転写部32とドラムクリーニング部24との間において感光体ドラム21上に残留した転写残トナーのトナー帯電量である。
【0049】
図4に示す条件Aのように、現像部23のトナー帯電量が高くなるほど、転写残トナーのトナー帯電量は高くなる傾向にある。一方、現像部23のトナー帯電量が低くなり、さらに転写電流が大きくなって転写電流による負電荷のチャージが大きくなると、図4に示す条件Bのように、転写残トナーのトナー帯電量は負側に変化する傾向にある。
【0050】
図5Aは、転写時に正帯電する転写残トナーの帯電状態の推移を示す画像形成部20周辺の模式的概略正面図である。図5Aは、図4に示す条件Aのように現像部23におけるトナー帯電量が高く、転写残トナーTが転写時に正帯電する状態を示している。この場合、ドラムクリーニング部24には、正帯電した転写残トナーTが到達する。
【0051】
図5Bは、クリーニングローラー242による転写残トナーの回収原理を示す説明図である。図5Bの縦軸は、感光体ドラム21の表面電位と、クリーニングローラー242の回収電圧との電位差を示している。
【0052】
ドラムクリーニング部24では、感光体ドラム21の表面電位と、クリーニングローラー242へ印加される回収電圧との電位差によって電界が生じ、当該電界の作用により感光体ドラム21上の転写残トナーがクリーニングローラー242上へ移動して回収される。転写残トナーが正帯電しているため、ドラムクリーニング部24において転写残トナーの好適な回収を望む場合、クリーニングローラー242へ負側の回収電圧を印加することが好ましい。
【0053】
図5Cは、現像ローラー234による転写残トナーの回収原理を示す説明図である。図4Bの縦軸は、感光体ドラム21の表面電位と、感光体ドラム21上の露光部と、現像ローラー234の現像電圧との電位差を示している。
【0054】
現像部23では、感光体ドラム21上の非露光領域の電位と、現像ローラー234へ印加される現像電圧との電位差によって電界が生じ、当該電界の作用により感光体ドラム21上の転写残トナーが現像ローラー234上へ移動して回収される。感光体ドラム21上の露光領域へトナー像として供給されたトナーは、このような回収の影響を受けない。
【0055】
このように、現像部23は、感光体ドラム21の外周面に残留した転写残トナーを回収可能である。この構成によれば、ドラムクリーニング部24で回収しきれなかった転写残トナーを、現像部23で回収することができる。これにより、クリーニングローラー242の回収電圧の使用可能範囲に余裕が生じ、すなわち当該使用可能範囲を広げることが可能になる。したがって、転写残トナーの回収性能を向上させることが可能である。
【0056】
図6Aは、転写時に負帯電する転写残トナーの帯電状態の推移を示す画像形成部20周辺の模式的概略正面図である。図6Aは、図4に示す条件Bのように現像部23におけるトナー帯電量が低く、転写残トナーTが転写時に負帯電する状態を示している。この場合、ドラムクリーニング部24には、負帯電した転写残トナーTが到達する。
【0057】
図6Bは、クリーニングローラー242による転写残トナーの回収原理を示す説明図である。図6Bの縦軸は、感光体ドラム21の表面電位と、クリーニングローラー242の回収電圧との電位差を示している。
【0058】
図6Bに示すように、転写残トナーが負帯電しているため、ドラムクリーニング部24において転写残トナーの好適な回収を望む場合、クリーニングローラー242へ正側の回収電圧を印加することが好ましい。なお、ドラムクリーニング部24を通過した転写残トナーは、図6Aに示すように帯電部22において正帯電する。このため、現像部23に到達した転写残トナーは、図5Cを用いて説明した回収原理と同様の原理で、現像ローラー234上へ回収される。
【0059】
転写残トナーがドラムクリーニング部24及び現像部23で回収されることなく感光体ドラム21の1周後まで残留した未回収トナーを0にするためには、クリーニングローラー242に印加される回収電圧を好適に調整する必要がある。
【0060】
図7Aは、クリーニングローラー242の回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、転写残トナーの回収性が通常の状態を示す説明図である。図7Aに示すグラフにおいて、横軸はクリーニングローラー242に印加する回収電圧であり、縦軸は回収可能トナー量である。これら横軸及び縦軸の定義は、図7B図7Cについても同様である。
【0061】
図7Aは、図4に示す条件Aのように現像部23におけるトナー帯電量が高く、転写残トナーが転写時に正帯電する状態を示している。トナーが正帯電している場合、図7Aに示すように、クリーニングローラー242に印加する回収電圧が負側に大きいほど、転写残トナーに対する回収可能トナー量が増加する。
【0062】
なお、転写残トナーの回収性は、環境や印字条件によっても異なる。例えば、高湿環境では、トナーと感光体間の液架橋力が強まり、転写残トナーの回収性が低下する。また、低湿環境では、トナーの帯電性が高くなるため、静電気力が向上して電界で移動し易くなり、転写残トナーの回収性が向上する。また、印字パターンの状況によって、例えばパッチ画像の様にドラム長手方向で局所的にトナー乗り量が増える場合、トナーが乗っていない部分に転写電流が流れ込んでしまうため、転写残トナー量が増加する。これにより、転写残トナーの回収性が低下し、未回収トナーが発生し易くなる。
【0063】
図7Bは、クリーニングローラー242の回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、正側の回収電圧を印加した状態を示す説明図である。図7Bは、図4に示す条件Bのように現像部23におけるトナー帯電量が低く、転写残トナーが転写時に負帯電する状態を示している。
【0064】
例えば、転写電流による負電荷のチャージが大きく、転写残トナーが逆極性(負)にチャージされた場合、図7Bに示すように、クリーニングローラー242に正側の回収電圧を印加する方が、転写残トナーの回収性は向上する。このような転写電流による逆チャージは、転写電流量が大きいとき、または現像部23におけるトナーの正帯電性が低いときに発生し易くなる。
【0065】
図7Cは、クリーニングローラー242の回収電圧と回収可能トナー量との関係を示すグラフであって、転写残トナーのトナー帯電量が0付近である場合を示す説明図である。図7Cは、図4に示す条件Cのように、転写残トナーのトナー帯電量が0付近である場合を示している。
【0066】
転写残トナーのトナー帯電量が0付近である場合、クリーニングローラー242の回収電圧の調整に対する転写残トナーの回収性の感度が小さくなる。言い換えれば、クリーニングローラー242の回収電圧を正側、或いは負側に大きくしても、すなわち回収電圧の絶対値を大きくしても、転写残トナーの回収性は向上しないと考えられる。また、回収電圧の絶対値を過度に大きくすると、感光体ドラム21の帯電性に影響を与え、感光体ドラム21の表面電位に不具合が生じる虞がある。図7C、及び図4に示す条件Cのような状態への対応については後述する。
【0067】
そして、本実施形態の画像形成装置1の制御部8は、例えば予め定められた印刷枚数毎といった定期的に、或いは利用者や管理者によって任意のタイミングで、非画像形成時に、クリーニングローラー242に印加する回収電圧の調整を行うキャリブレーションを実施する。
【0068】
このキャリブレーションにおいて、制御部8は、トナー像を感光体ドラム21の外周面に形成して中間転写ベルト31の外周面に転写させた後の転写残トナーのトナー帯電量を予測し、当該トナー帯電量に応じてクリーニングローラー242に印加する回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する。
【0069】
続いて、クリーニングローラー242に印加する回収電圧の調整を行うキャリブレーションについて詳細に説明する。
【0070】
制御部8は、転写残トナーのトナー帯電量の予測に際し、記憶部9に予め記憶された予測テーブル91を利用して予測する。予測テーブル91の利用に関し、画像形成装置1は、例えば温湿度検出部15と、現像駆動計測部16と、を備える。
【0071】
温湿度検出部15は、画像形成装置1の周辺環境の温度及び湿度を検出する。現像駆動計測部16は、現像部23の累積駆動時間を計測する。転写残トナーのトナー帯電量の予測テーブル91には、温湿度検出部15によって検出された温度及び湿度、並びに現像部23の累積駆動時間と、転写残トナーのトナー帯電量との関係性が予め定められている。
【0072】
制御部8は、温湿度検出部15によって検出された温度及び湿度と、現像駆動計測部16によって計測された現像部23の累積駆動時間とに基づき、予測テーブル91を用いて転写残トナーのトナー帯電量を予測する。そして、制御部8は、トナー帯電量に応じてクリーニングローラー242に印加する回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する。
【0073】
例えば、通常のトナー帯電量であれば、図4の条件A及び図7Aのように、トナーが正帯電している場合に、クリーニングローラー242に印加する回収電圧を負側に大きくすれば、転写残トナーに対する回収可能トナー量が増加する傾向にある。一方、トナー帯電量が通常よりも低下し、図4の条件B及び図7Bのように、トナーが負帯電している場合は、クリーニングローラー242に印加する回収電圧を正側に大きくすれば、転写残トナーに対する回収可能トナー量が増加する傾向にある。
【0074】
なお、上記の転写残トナーのトナー帯電量に係る情報は、他の公知の予測(推定)方法、検出方法によって取得しても良い。
【0075】
続いて、クリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲の実施例について説明する。当該回収電圧の使用可能範囲の評価に使用した画像形成装置1の条件は、表1のとおりである。
【0076】
【表1】
【0077】
また、表2のとおり、画像形成装置1の設置環境と、トナーの状態とが異なる3つの実施例1、2、3について、クリーニングローラー242の回収電圧の使用可能範囲を評価した。
【0078】
【表2】
【0079】
図8は、実施例1のクリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。図8に示すグラフにおいて、横軸はクリーニングローラー242に印加する回収電圧[V]であり、縦軸は転写残トナー量[arb. unit]である。これら横軸及び縦軸の定義は、図9図10についても同様である。
【0080】
図8に示す実施例1では、転写残トナーが正帯電しており、クリーニングローラー242の回収電圧が-150V以下の場合、未回収トナーが発生しない。これにより、未回収トナーが発生しない範囲である、クリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲は、-150V以下とすることが好ましい。
【0081】
図9は、実施例2のクリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。図9は、転写電流による負電荷のチャージが大きく、転写残トナーが逆極性(負)にチャージされた例を示している。この場合、クリーニングローラー242に印加する回収電圧を正側に高くするほど、転写残トナーの回収性は向上する。
【0082】
図9に示す実施例2では、転写残トナーが負帯電しており、クリーニングローラー242の回収電圧が300V以上の場合、未回収トナーが発生しない。これにより、未回収トナーが発生しない範囲である、クリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲は、300V以上とすることが好ましい。
【0083】
上記のようにして、制御部8は、転写残トナーのトナー帯電量を予測し、当該トナー帯電量に応じてクリーニングローラー242に印加する回収電圧の絶対値、または極性の少なくとも一方を変更する。この構成によれば、転写しきれずに感光体ドラム21上に残留した転写残トナーのトナー帯電量に応じて、クリーニングローラー242の回収電圧が調整される。このようにして調整したクリーニングローラー242の回収電圧を用いることで、感光体ドラム21上の転写残トナーを好適に回収することが可能になる。
【0084】
また、上記のクリーニングローラー242の回収電圧の調整に際し、制御部8は、画像形成装置1の周辺環境の温度及び湿度と、現像部23の累積駆動時間とに基づき、予測テーブル91を用いて転写残トナーのトナー帯電量を予測する。この構成によれば、複雑な計測や制御を行うことなく、容易に転写残トナーのトナー帯電量を取得することができる。したがって、クリーニングローラー242の回収電圧の調整を効率良く実施することが可能である。
【0085】
図10は、実施例3のクリーニングローラー242に印加する回収電圧の使用可能範囲を示すグラフである。図10は、トナーが劣化し、帯電性や感光体ドラム21への付着性が変わり、実施例1と比較して転写残トナーの回収性が低下している例を示している。
【0086】
図10に示す実施例3では、クリーニングローラー242の回収電圧が-450V以下の場合、未回収トナーが発生しない。しかしながら、前述のように、回収電圧の絶対値を過度に大きくすると、感光体ドラム21の帯電性に影響を与え、感光体ドラム21の表面電位に不具合が生じる虞がある。
【0087】
そこで、制御部8は、転写残トナーがベルトクリーニング部24及び現像部23で回収されることなく感光体ドラム21の1周後まで残留する未回収トナーの有無を濃度検出部14によって検出する。そして、未回収トナーが発生する場合に、クリーニングローラー242の回転速度を変更する、または加圧機構243によってクリーニングローラー242の感光体ドラム21に対する接触圧力を変更する。
【0088】
この構成によれば、クリーニングローラー242による転写残トナーの回収性を向上させることができる。したがって、感光体ドラム21上の転写残トナーを好適に回収することが可能になる。これにより、未回収トナー量が0になり、高品質な画像形成を実現することができる。
【0089】
さらに、転写残トナーの回収性が低下すると、クリーニングローラー242の回転速度の変更や、クリーニングローラー242の感光体ドラム21に対する接触圧力の変更では対応できなくなる。したがって、制御部8は、クリーニングローラー242の回収電圧の調整後に、未回収トナーが発生する場合に、現像部23の交換、またはクリーニングローラー242の交換を促す情報を、表示部2dを介してユーザーに報知することにしても良い。
【0090】
この構成によれば、ユーザーは、感光体ドラム21上で未回収トナーが発生することを未然に防ぐことが可能になる。したがって、画像形成装置1において、未回収トナーに起因する画像不良の発生を抑制することができ、ユーザーは、高品質な画像形成が行われた印刷物を継続的に得ることが可能になる。
【0091】
なお、現像部23が画像形成部20に一体として構成されて個別に交換できない装置の場合、現像部23の交換に際し、画像形成部20の交換を促すことにして良い。同様に、クリーニングローラー242がドラムクリーニング部24または画像形成部20に一体として構成されて個別に交換できない装置の場合、クリーニングローラー242の交換に際し、ドラムクリーニング部24または画像形成部20の交換を促すことにして良い。
【0092】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0093】
例えば、上記実施形態において、画像形成装置1は、4つの画像形成部20で形成されたトナー像が順次重ねて転写される中間転写ベルト31を備える構成こととしたが、このような装置に限定されるわけではない。本発明は、例えば感光体ドラムからトナー像が転写される用紙を搬送する搬送ベルトを備える画像形成装置にも適用可能である。
【0094】
また、上記実施形態において、画像形成装置1は、いわゆるタンデム型のカラー印刷用の画像形成装置であることとしたが、このような機種に限定されるわけではない。画像形成装置は、中間転写ベルトを備える機種であれば、タンデム型ではない他の形式のカラー印刷用の画像形成装置であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、画像形成装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 画像形成装置
2 本体
2d 表示部(報知部)
1 画像形成装置
2 本体
2d 表示部(報知部)
5 露光部
6 定着部
8 制御部
9 記憶部
12 電圧印加部
14 濃度検出部
15 温湿度検出部
16 現像駆動計測部
20 画像形成部
21 感光体ドラム(像担持体)
22 帯電部
23 現像部
24 ドラムクリーニング部
30 転写部
31 中間転写ベルト(被転写体)
32 一次転写部
33 二次転写部
91 予測テーブル
234 現像ローラー
242 クリーニングローラー
243 加圧機構
321 一次転写ローラー
S 用紙
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10