(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151865
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】シール部材およびそれを備えたトナー収容容器
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G03G15/08 390B
G03G15/08 343
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065618
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陽介
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AA03
2H077AA05
2H077AB02
2H077AB15
2H077AB18
2H077AD02
2H077AD06
2H077BA08
2H077BA09
2H077CA12
2H077FA22
(57)【要約】
【課題】シール性、摺動性、および耐ヘタリ性に優れたシール部材を備え、トナー融着やトナー漏れを抑制可能なシール部材およびそれを備えたトナー収容容器を提供する。
【解決手段】シール部材は、容器本体に対向する第1シール層と、キャップ部材に対向し、シール部材全体の厚みに対する厚み比率が50%以上の第2シール層と、を含む複数のシール層を有する積層構造であり、第1シール層の圧縮滑り抵抗ρ[N]、第1シール層の圧縮率k[%]、第1シール層の厚みT
1[mm] 、第1シール層の圧縮残留歪みε
1[%]、第2シール層の厚みT
2[mm] 、第2シール層の圧縮残留歪みε
2[%]、第1シール層および第2シール層以外のシール層の厚みT
n[mm] 、第1シール層および第2シール層以外のシール層の圧縮残留歪みε
n[%]が、0<ρ/k<0.3、および0.04<T
2ε
2/(T
1ε
1+T
2ε
2+・・・T
nε
n)<0.48を満たす。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを収容して回転する円筒状の容器本体と、
前記容器本体の一端側の外周面に周方向の移動が規制された状態で装着され、前記容器本体に回転駆動力を伝達する伝達ギアと、
前記容器本体の回転軸線方向の一端部に設けられる開口部を覆い、前記容器本体および前記伝達ギアの回転時に回転停止状態を保持するか、若しくは前記容器本体および前記伝達ギアよりも低速で回転するキャップ部材と、
を備え、画像形成装置に対し着脱可能なトナー収容容器の、前記容器本体と前記キャップ部材との隙間に配置されるシール部材であって、
前記容器本体に対向する第1シール層と、
前記キャップ部材に対向し、シール部材全体の厚みに対する厚み比率が50%以上の第2シール層と、
を含む複数のシール層を有する積層構造であり、以下の式(1)、(2)を満たすことを特徴とするシール部材。
0<ρ/k<0.3 ・・・(1)
0.04<T2ε2/(T1ε1+T2ε2+・・・Tnεn)<0.48 ・・・(2)
ただし、
ρ;前記第1シール層の圧縮滑り抵抗[N]、
k;前記第1シール層の圧縮率[%]、
T1; 前記第1シール層の積層方向の厚み[mm]、
ε1; 前記第1シール層の圧縮残留歪み[%]、
T2; 前記第2シール層の積層方向の厚み[mm]、
ε2; 前記第2シール層の圧縮残留歪み[%]、
Tn; 前記第1シール層および前記第2シール層以外の前記シール層の積層方向の厚み[mm]、
εn; 前記第1シール層および前記第2シール層以外の前記シール層の圧縮残留歪み[%]、
である。
【請求項2】
前記シール層が、前記第1シール層と前記第2シール層のみから成ることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第1シール層は、密度200~480[kg/m3]の発泡ウレタンで形成されることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項4】
前記シール部材は、外力を加えない状態での全体の厚みが、前記隙間に対して1.1~2倍であることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項5】
前記キャップ部材の前記開口部との対向面に固定されることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項6】
トナーを収容して回転する円筒状の前記容器本体と、
前記容器本体の一端側の外周面に周方向の移動が規制された状態で装着され、前記容器本体に回転駆動力を伝達する前記伝達ギアと、
前記容器本体の回転軸線方向の一端部に設けられる開口部を覆い、前記容器本体および前記伝達ギアの回転時に回転停止状態を保持するか、若しくは前記容器本体および前記伝達ギアよりも低速で回転する前記キャップ部材と、
前記容器本体と前記キャップ部材との隙間に配置される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のシール部材と、
を備えたトナー収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いる画像形成装置に装着され、トナーを収容するトナー収容容器の容器本体とキャップ部材の連結部に用いられるシール部材、およびシール部材を備えたトナー収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(例えば感光体ドラム)の表面に形成された静電潜像に現像器からトナーを供給することで、現像処理を行っている。このような現像処理に用いられるトナーは、トナー収容容器から現像器に供給されている。トナー収容容器は、トナーを収容して回転する容器本体を備えるものが知られている。
【0003】
上記のような構成のトナー収容容器では、容器本体の回転時に回転しないカバーによって容器本体の開口部を覆う場合がある。このような場合には、容器本体の回転時にカバーが容器本体と一体に回転するような場合と比較して、容器本体とカバーの間からトナーが漏出しやすくなる。
【0004】
そこで、容器本体とカバーとの連結部にシール部材を備えるトナー容器が知られている。特許文献1には、容器本体の開口部の周囲に対向する位置に、容器本体との隙間を封止する環状のシール材が貼着されたトナー容器が開示されている。また、特許文献2には、軟質ウレタンフォームを粘着テープにより高分子シートと積層し、圧縮前の軟質ウレタンフォームの厚みが2~50mmであり、圧縮後の厚みが0.5~2mmとなるようにした積層構造のトナーシール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-18375号公報
【特許文献2】特開2004-226721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトナー容器では、シール性を高めるたにはシール部材を高圧縮させて使用する必要があり、摺動熱の上昇に伴うトナー凝集や、長期保管時の圧縮残留歪みを発生させてしまうおそれがあった。また、特許文献2のトナーシール材では、シール部材の表面摩擦係数を下げることによって駆動トルクや摺動熱を低減しているが、高分子シート等の低反発材料を摺動面に設けた場合、シール性が不十分となりトナー漏れを発生させてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、シール性、摺動性、および耐ヘタリ性に優れたシール部材を備え、トナー融着やトナー漏れを抑制可能なトナー収容容器およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、容器本体と、伝達ギアと、キャップ部材と、を備え、画像形成装置に対し着脱可能なトナー収容容器の、容器本体とキャップ部材との隙間に配置されるシール部材である。容器本体は、円筒状であってトナーを収容して回転する。伝達ギアは、容器本体の一端側の外周面に周方向の移動が規制された状態で装着され、容器本体に回転駆動力を伝達する。キャップ部材は、容器本体の回転軸線方向の一端部に設けられる開口部を覆い、容器本体および伝達ギアの回転時に回転停止状態を保持するか、若しくは容器本体および伝達ギアよりも低速で回転する。シール部材は、容器本体に対向する第1シール層と、キャップ部材に対向し、シール部材全体の厚みに対する厚み比率が50%以上の第2シール層と、を含む複数のシール層を有する積層構造であり、以下の式(1)、(2)を満たす。
0<ρ/k<0.3 ・・・(1)
0.04<T2ε2/(T1ε1+T2ε2+・・・Tnεn)<0.48 ・・・(2)
ただし、
ρ;第1シール層の圧縮滑り抵抗[N]、
k;第1シール層の圧縮率[%]、
T1; 第1シール層の積層方向の厚み[mm]、
ε1; 第1シール層の圧縮残留歪み[%]、
T2; 第2シール層の積層方向の厚み[mm]、
ε2; 第2シール層の圧縮残留歪み[%]、
Tn; 第1シール層および第2シール層以外のシール層の積層方向の厚み[mm]、
εn; 第1シール層および第2シール層以外のシール層の圧縮残留歪み[%]、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の構成によれば、第1シール層および第2シール層を含むシール層が式(1)、(2)を満たすことにより、シール部材の温度上昇によるトナー癒着の発生を抑制するとともに、シール部材の耐ヘタリ性を向上させることができる。従って、シール性、および容器本体の回転時における摺動性を両立することができ、さらに長期保管時のトナー漏れも抑制可能なシール部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の内部構成を示す概略図
【
図3】本発明の一実施形態に係るトナーコンテナ4a~4dとコンテナ装着部30a~30dを示す斜視図
【
図4】本実施形態のトナーコンテナ4dを挿入方向上流側から見た斜視図
【
図5】本実施形態のトナーコンテナ4dの挿入方向下流側の端部の分解斜視図
【
図6】本実施形態のトナーコンテナ4dの挿入方向下流側の端部を軸方向に沿って切断した断面図
【
図8】トナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着された状態で、トナーコンテナ4dの挿入方向下流側の端部を軸方向に沿って切断した断面図
【
図9】シール部材43の圧縮率と圧縮滑り抵抗との関係を示すグラフ
【
図10】シール部材43を圧縮した後の放置時間と圧縮率との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す概略図であり、
図2は、
図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式のカラープリンターであり、以下のような構成になっている。画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(
図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
【0013】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1cおよび1dが配設されている。さらに
図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ユニット9において記録媒体の一例としての用紙S上に一度に転写される。さらに、定着部13において用紙S上に定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを
図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0014】
トナー像が転写される用紙Sは、画像形成装置100の本体下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9へと搬送される。中間転写ベルト8には継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。
【0015】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。以下、画像形成部Paについて詳細に説明するが、画像形成部Pb~Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
図2に示すように、感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(
図2の時計回り方向)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置7aが配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6aが配置されている。また、感光体ドラム1aに対し中間転写ベルト8の回転方向上流側には中間転写ベルト8を挟んでテンションローラー11に対向するベルトクリーニングユニット19が配置されている。
【0016】
次に、画像形成装置100における画像形成手順について説明する。ユーザーにより画像形成開始が入力されると、先ず、メインモーター(図示せず)により感光体ドラム1a~1dの回転が開始され、帯電装置2a~2dの帯電ローラー20によって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5から出射されたビーム光(レーザー光)によって感光体ドラム1a~1dの表面を光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。
【0017】
現像装置3a~3dには、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの各色のトナーが所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dの現像ローラー21により感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0018】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置7a~7dのクリーニングブレード22および摺擦ローラー23により除去される。
【0019】
ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー10の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、用紙Sがレジストローラー対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部13へと搬送される。中間転写ベルト8の表面に残存したトナーはベルトクリーニングユニット19によって除去される。
【0020】
定着部13に搬送された用紙Sは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が用紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面印字された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0021】
次に、トナーコンテナ4a~4dについて説明する。
図3は、トナーコンテナ4a~4dとコンテナ装着部30a~30dを示す斜視図である。なお、
図3では、トナーコンテナ4dのみがコンテナ装着部30dに装着途中の状態で示され、トナーコンテナ4a~4cはコンテナ装着部30a~30cへの装着が完了した状態で示されている。
【0022】
図3に示すように、トナーコンテナ4a~4dは、それぞれ画像形成装置100の前側(
図3の右手前側)から後側(
図3の左奥側)に向かう挿入方向に沿ってコンテナ装着部30a~30dに装着されている。コンテナ装着部30a~30dは、左右方向に並んでいる。コンテナ装着部30a~30dは、前後方向に延びる筒状を成している。ブラックのトナーが収容されるトナーコンテナ4dの外径は、イエロー、シアン、マゼンタのトナーを収容するトナーコンテナ4a~4cの外径よりも大きい。コンテナ装着部30dの内径は、コンテナ装着部30a~30cの内径よりも大きい。
【0023】
各コンテナ装着部30a~30dの下部であって挿入方向の下流側には、トナー補給口303(
図8参照)が設けられている。トナー補給口303は、上下方向に沿って延びる補給管304(
図8参照)を介して、各画像形成部Pa~Pdの現像装置3a~3dの内部と連通している。
【0024】
図4は、本実施形態のトナーコンテナ4dを挿入方向上流側から見た斜視図である。
図5は、本実施形態のトナーコンテナ4dの挿入方向下流側(
図4の右奥側)の端部の分解斜視図である。
図6は、本実施形態のトナーコンテナ4dの挿入方向下流側の端部を軸方向に沿って切断した断面図である。以下、ブラックのトナーを収容するトナーコンテナ4dについて説明するが、イエロー、シアン、マゼンタのトナーを収容するトナーコンテナ4a~4cについても同様の構成である。
【0025】
図4、
図5に示すように、トナーコンテナ4dは、容器本体40と、容器本体40の後部に装着される伝達ギア41と、伝達ギア41の後側に設けられるキャップ部材42と、キャップ部材42の内側に収容されるシール部材43と、を備えている。
【0026】
容器本体40は、コンテナ装着部30dに対する挿入方向(矢印A方向)に沿って延びる円筒状である。本実施形態では、画像形成装置100の前後方向が容器本体40の長手方向である。容器本体40は、長手方向に延びる回転軸線Yを中心に回転可能に構成されている。容器本体40の内部には、ブラックのトナー(図示せず)が収容されている。容器本体40の内部に収容されたトナーは、画像形成装置100の前側から後側(挿入方向の上流側から下流側)に向かって搬送される。
【0027】
容器本体40は、取手部401と、トナー搬送方向(矢印A方向)に対し取手部401の下流側に設けられる大径筒部402と、大径筒部402の下流側に設けられる中径筒部403と、中径筒部403の下流側に設けられる小径筒部404と、を有する。
【0028】
取手部401は、容器本体40の挿入方向上流側の端部に設けられている。取手部401の内部空間は、大径筒部402の内部空間と連通している。大径筒部402、中径筒部403、および小径筒部404は、回転軸線Yを中心とする円筒状に形成されている。中径筒部403は、大径筒部402と小径筒部404の間に設けられている。中径筒部403の外径は大径筒部402の外径よりも小さく、小径筒部404の外径よりも大きい。
【0029】
容器本体40の外周面には、大径筒部402と中径筒部403の間に略円環状の第1段差部405が形成され、中径筒部403と小径筒部404の間に螺旋状の第2段差部406が形成されている。第1段差部405の段差(大径筒部402と中径筒部403の外径差)は、第2段差部406の段差(中径筒部403と小径筒部404の外径差)よりも小さい。
【0030】
容器本体40の大径筒部402、中径筒部403、および小径筒部404の内周面には、1本の螺旋状の搬送リブ407が連続的に設けられている。搬送リブ407は、容器本体40の内周面から径方向内側に向かって略V字状に突出している。
【0031】
小径筒部404の外周面には、一対の第1係合突起50(回転規制部)が設けられている。一対の第1係合突起50の一方は、搬送リブ407と重ならないように配置されている。一対の第1係合突起50の他方は、搬送リブ407と重なるように配置されている。一対の第1係合突起50は、回転軸線Yに対して点対称となる位置に設けられている。
【0032】
小径筒部404の外周面には、一対の第2係合突起部51(移動規制部)が設けられている。第2係合突起51は、それぞれ搬送リブ407と重ならないように配置されている。各第2突起部52は、第1係合突起50に対して90度ずつ周方向の位置をずらして配置されている。即ち、一対の第1係合突起50と一対の第2係合突起51は、互いに周方向の位置が重ならないように配置されている。
【0033】
小径筒部404の挿入方向下流側の端部には、円形の開口部52が設けられている。開口部52の周縁部には、径方向外側に向かって突出する環状のフランジ部53が設けられている。
【0034】
伝達ギア41は、容器本体40の小径筒部404の外周面に装着されている。伝達ギア41は、回転軸線Yを中心とする円筒状に形成されている。伝達ギア41は、大径部411と、トナー搬送方向に対し大径部411の下流側に設けられる中径部412と、中径部412の下流側に設けられる小径部413と、を有する。伝達ギア41の外径は、大径部411、中径部412、小径部413の順に小さくなっている。
【0035】
大径部411の外周面にはギア歯55が設けられている。ギア歯55を含む大径部411の直径は、容器本体40の大径筒部402および中径筒部403の外径よりも小さく、小径筒部404の外径よりも大きい。挿入方向に対し大径部411の上流側の端部は、容器本体40の第2係合突起51と対向している。
【0036】
伝達ギア41の大径部411および中径部412の内周面の全域には、挿入方向に沿って延びる複数の係合リブ56が設けられている。複数の係合リブ56は、周方向に所定の間隔を隔てて(例えば、等間隔で10個~20個)設けられている。
【0037】
複数の係合リブ56のうち、2組の係合リブ56の間には、一対の第1係合突起50が挿入される。これにより、容器本体40に対する伝達ギア41の回転が規制される。なお、上記2組の係合リブ56以外の係合リブ56(第1係合突起50が挿入されていない係合リブ56)は、伝達ギア41を補強する補強部として機能している。
【0038】
キャップ部材42は、容器本体40の開口部52を覆っている。キャップ部材42は、本体部421と、本体部421から挿入方向上流側に向かって延出する保持部422と、本体部421から挿入方向下流側に向かって突出する係合筒部423と、係合筒部423の上側に設けられるカバー側規制部424と、本体部421、保持部422および係合筒部423の下側に設けられるカバー側シャッター425と、を有する。
【0039】
本体部421の内部には、容器本体40の開口部52を介して容器本体40のトナー収容空間と連通する連通部60が設けられている。連通部60の下端にはトナー排出口61が設けられている。
【0040】
保持部422は、回転軸線Yを中心として本体部421から容器本体40側に突出する略円筒状を成している。保持部422の内周面は、伝達ギア41の中径部412および小径部413の外周面と対向している。キャップ部材42の保持部422の内周面には、計4箇所の係止部62が設けられている。各係止部82は、本体部421との隙間Dに容器本体40のフランジ部53(挿入方向下流側の端部)およびシール部材43を挟持している。隙間Dは、フランジ部53とシール部材43の厚みの合計よりも狭い。そのため、シール部材43は所定の厚みに圧縮されており、容器本体40とキャップ部材42とのシール性が維持される。
【0041】
保持部422は、容器本体40の第2係合突起51との間に伝達ギア41を挟み込んでいる。これにより、容器本体40に対する伝達ギア41の挿入方向の移動が規制されると共に、容器本体40からの伝達ギア41の脱落が防止される。
【0042】
シール部材43はリング状に形成されており、キャップ部材42の保持部422の径方向内側に配置されている。シール部材43は、圧縮された状態で、容器本体40のフランジ部53とキャップ部材42の本体部421の間に配置されている。
【0043】
シール部材43は、キャップ部材42の本体部421の、フランジ部53との対向面(挿入方向上流側の面)に固定されている。なお、シール部材43を容器本体40のフランジ部53に固定してもよいが、シール部材43をフランジ部53に固定した場合、容器本体40にキャップ部材42を装着する際にシール部材43が保持部422に接触して破損するおそれがある。そのため、トナーコンテナ4dの組み立て性の観点からシール部材43をキャップ部材42の本体部421に固定することが好ましい。
【0044】
図7は、シール部材43の層構成を示す分解図である。シール部材43は、第1シール層431と、第1接着層432と、第2シール層433と、第2接着層434と、を備える。第1シール層431は、シール部材43の最表面層を構成しており、容器本体40のフランジ部53と対向する。第1シール層431は、例えば弾性材料であるウレタンフォームによって構成される。第1接着層432は、第1シール層431の裏面側(挿入方向下流側)に積層される。第1接着層432は、例えば両面テープによって構成されており、第1シール層431と第2シール層433を接着する。
【0045】
第2シール層433は、第1接着層432の裏面側(挿入方向下流側)に積層される。第2シール層433の厚みは、シール部材42の全体の厚みに対して50%以上である。第2シール層433は、例えば弾性材料であるウレタンフォームによって構成される。第2接着層434は、第2シール層433の裏面側(挿入方向下流側)に積層される。第2接着層434は、例えば両面テープによって構成されており、第2シール層433とキャップ部材42の本体部421を接着する。
【0046】
次に、トナーコンテナ4a~4dをコンテナ装着部30a~30dに装着する動作について説明する。なお、各トナーコンテナ4a~4dの装着動作は同様であるため、以下、トナーコンテナ4dをコンテナ装着部30dに装着する動作についてのみ説明を行い、トナーコンテナ4a~4cをコンテナ装着部30a~30cに装着する動作については説明を省略する。
【0047】
トナーコンテナ4dをコンテナ装着部30dに装着する際には、
図2に示すように、トナーコンテナ4dを挿入方向下流側の端部(キャップ部材42側)からコンテナ装着部30dに挿入していく。
【0048】
図8は、トナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着された状態で、トナーコンテナ4dの挿入方向下流側の端部を軸方向に沿って切断した断面図である。トナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着されると、
図8に示すように、トナーコンテナ4dのキャップ部材42の係合筒部423とコンテナ装着部30dの装着部側シャッター301のボス302が係合した状態で、キャップ部材42の本体部421がボス302を押圧する。これにより、装着部側シャッター301が閉止位置から開放位置まで移動し、コンテナ装着部30dのトナー補給口303が開放される。
【0049】
また、トナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着されると、キャップ部材42に設けられたカバー側シャッター425が閉位置から開位置まで移動し、キャップ部材42の本体部421のトナー排出口61が開放される。そのため、本体部421の連通部60が補給管304と連通する。
【0050】
また、上記のようにトナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着されると、トナーコンテナ4dのキャップ部材42のカバー側規制部424に設けられた嵌合突起63がコンテナ装着部30dの装着部側規制部305に嵌合する。これにより、トナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに対して位置決めされる。
【0051】
次に、画像形成装置100において、トナーコンテナ4dから画像形成部Pdの現像装置3dにトナーを補給する動作について説明する。なお、トナーコンテナ4a~4cから画像形成部Pa~Pcの現像装置3a~3cにトナーを補給する動作についても同様であるため説明を省略する。
【0052】
トナーコンテナ4dから画像形成部Pdの現像装置3dにトナーを補給する際には、
図7に示すようにトナーコンテナ4dがコンテナ装着部30dに装着された状態で、トナー補給モーター(図示せず)を駆動させる。これにより、トナー補給モーターからの回転駆動力がギア列および駆動入力ギア(いずれも図示せず)を介してトナーコンテナ4dの伝達ギア41に伝達され、伝達ギア41が回転する。
【0053】
伝達ギア41が回転すると、これに伴ってトナーコンテナ4dの容器本体40が伝達ギア41と一体となって回転する。即ち、伝達ギア41によってトナー補給モーターからの回転駆動力が容器本体40に伝達される。
【0054】
一方、トナーコンテナ4dのキャップ部材42およびシール部材43は、容器本体40の回転時に回転せず、回転停止状態を保持する。そのため、容器本体40がキャップ部材42およびシール部材43に対して相対的に回転する。
【0055】
容器本体40が回転すると、容器本体40の搬送リブ407によって容器本体40内のトナーがトナー搬送方向上流側から下流側に向かって搬送され、開口部52を介して容器本体40から排出される。容器本体40から開口部52を介して排出されたトナーは、キャップ部材42の本体部421の連通部60に導入される。連通部60に導入されたトナーは、本体部421のトナー排出口61を介して連通部60から排出される。連通部60からトナー排出口61を介して排出されたトナーは、コンテナ装着部30dのトナー補給口303を介して補給管304に導入され、補給管304から画像形成部Pdの現像装置3dに補給される。
【0056】
本実施形態のトナーコンテナ4a~4dでは、容器本体40とキャップ部材42を、少なくとも一部が弾性材料で形成されたシール部材43によってフレキシブルに接続している。これにより、容器本体40が回転する際のキャップ部材42に対する摺動性を確保するとともに、容器本体40とキャップ部材42の接続部のシール性を確保してトナー漏れを抑制することができる。
【0057】
ここで、シール部材43の摩耗やヘタリが発生すると、容器本体40とキャップ部材42との摺動性が低下するとともに、容器本体40とキャップ部材42の間からトナーが漏れ易くなる。そのため、トナーコンテナ4a~4dの使用期間の終期までシール部材43の摺動性を維持しつつ、耐ヘタリ性を確保することが重要である。また、使用済みのトナーコンテナ4a~4dにトナーを充填して再利用する場合は、シール部材43の摺動性、および耐ヘタリ性を向上させてシール部材43の耐用期間(寿命)をさらに延長する必要がある。
【0058】
そこで本発明では、シール部材43を構成する第1シール層431の圧縮率と圧縮滑り抵抗との関係、およびシール部材43を構成する各シール層(本実施形態では第1シール層431、第2シール層433)の厚みと圧縮残留歪みとの関係を規定した。これにより、シール部材43のシール性、摺動性、および耐ヘタリ性が向上することを見出した。以下、シール部材43について詳細に説明する。なお、第1接着層432、第2接着層434(
図7参照)は、本明細書でいうシール層には含まれないものとする。
【0059】
(圧縮滑り抵抗)
圧縮滑り抵抗は、シール部材43を所定の圧縮率で圧縮した状態で、シール部材43と容器本体40のフランジ部53との間に発生する滑り抵抗である。本実施形態では、以下に示す試験法に基づいて圧縮滑り抵抗を測定した。
【0060】
シール部材43を所定の大きさ(30mm×30mm)の試験片とし、摺動物(ABS)を圧接させて圧縮率を10%、20%、30%の3段階に圧縮した。試験片を圧縮した状態で、摺動物(ABS)を一定速度(200mm/s)で摺動させ、摺動物が移動し始めた際の引張り強度(圧縮滑り抵抗値)を測定した。シール部材43の圧縮率と圧縮滑り抵抗との関係を
図9に示す。
【0061】
図9に示すように、シール部材43の圧縮率が大きくなるほど圧縮滑り抵抗は上昇している。そして、圧縮滑り抵抗が大きくなるほどシール部材43の温度が上昇し、シール部材43へのトナー融着が発生し易くなる。一方、シール部材43の温度上昇を抑えるために圧縮率を下げると、シール部材43とフランジ部53との隙間にトナーが進入し、トナー融着が発生し易くなる。
【0062】
後述の実施例で示すように、シール部材43の積層構成を変化させて圧縮滑り抵抗に対する摺動温度の関係を測定することにより、シール部材43へのトナー癒着が発生しない条件を調査した。その結果、第1シール層431の圧縮率k[%]に対する圧縮滑り抵抗ρ[N]の変化率(傾き)ρ/kが以下の式(1)
0<ρ/k<0.3 ・・・(1)
を満たすことにより、トナー癒着が発生しないことを見出した。
【0063】
(圧縮残留歪み)
図10は、シール部材43を圧縮した状態で放置したときの、放置時間[hr]とシール部材43の食い込み量[%]との関係を示すグラフである。
図10に示すように、シール部材43の食い込み量は、圧縮した状態での放置時間が長くなるにつれて小さくなる。即ち、放置時間が長くなるにつれて圧縮残留歪みが大きくなる。圧縮残留歪みは、物体を圧縮したときフックの法則により残留応力に対応する歪みである。本実施形態では、日本工業規格(JIS K6401)に基づいてシール部材43の各層の圧縮残留歪みを測定した。シール部材43の初期厚みをT0[mm]、試験後の厚みをTxとするとき、圧縮残留歪みは以下の計算式により算出される。
圧縮残留歪み[%]={(T0-Tx)/T0}×100
【0064】
シール部材43の圧縮残留歪みが大きくなるほど耐ヘタリ性が低下し、トナー漏れが発生し易くなる。一方、シール部材43のヘタリを抑えるために圧縮残留歪みの小さい材質にすると、圧縮滑り抵抗が大きくなりトナー融着が発生し易くなる。
【0065】
後述の実施例で示すように、シール部材43の積層構成を変化させて圧縮残留歪みに対する耐ヘタリ性の関係を測定することにより、トナー漏れが発生しない条件を調査した。その結果、第1シール層431の積層方向の厚みT1[mm]、圧縮残留歪みε1[%]、第2シール層433の積層方向の厚みT2[mm]、圧縮残留歪みε2[%]、それ以外のシール層(本実施形態では無し)の積層方向の厚みTn[mm]、圧縮残留歪みεn[%]が、以下の式(2)
0.04<T2ε2/(T1ε1+T2ε2+・・・Tnεn)<0.48 ・・・(2)
を満たすことにより、トナー漏れが発生しないことを見出した。
【0066】
(その他の好ましい構成)
シール部材43の第1シール層431は、ウレタンフォーム(発泡ウレタン)で形成されており、密度が200~480[kg/m3]であることが好ましい。
【0067】
また、外力を加えない状態でのシール部材43の全体の厚みT0[mm]が、容器本体40のフランジ部53とキャップ部材42のシール部材貼り付け面との隙間[mm]に対して1.1~2倍であることが好ましい。このように構成することで、第1シール層421の厚みを固定した場合に第2シール層433の厚みが増加するため、第2シール層433による耐ヘタリ性の向上が期待できる。
【0068】
本実施形態によれば、トナーコンテナ4a~4dの容器本体40とキャップ部材42の連結部に配置されるシール部材43において、第2シール層433に圧縮残留歪みが低い材料を用いることにより、シール部材43の寿命を延ばすことができ、長期保管時のトナー漏れを抑制することができる。
【0069】
さらに、表層に低摩擦、且つ弾性を有するウレタンフォーム層からなる第1シール層431を積層することにより、シール性、および容器本体40の回転時における摺動性を両立することができる。また、シール部材43と容器本体40(フランジ部53)との摺動摩擦力(圧縮滑り抵抗)が大きい場合、シール部材43の温度上昇により、シール部材43と容器本体40との摺動部においてトナー凝集や融着が発生するおそれがあるが、本実施形態では、圧縮滑り抵抗を一定の範囲に抑えることでトナー凝集や融着を抑制することができる。
【0070】
また、シール部材43単体の構成のみで、トナーコンテナ4a~4dに要求される性能を満たすことができるため、コンテナ装着部30a~30dや容器本体40の構成を複雑にする必要もなく、安価でシンプルな構成となる。そのため、トナーコンテナ4a~4dや画像形成装置100のコストアップも抑制できる。
【0071】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、シール層として第1シール層431と第2シール層433の2層を有するシール部材42について説明したが、第1シール層431および第2シール層433以外のシール層が積層された構成であってもよい。例えば、第1シール層431と第2シール層433の間や、第2シール層433とキャップ部材43の本体部431との間に1層以上のシール層が積層された構成が挙げられる。
【0072】
また、上記実施形態では、容器本体40および伝達ギア41が回転する際にキャップ部材42が固定される構成のトナーコンテナ4a~4dに用いられるシール部材42について説明したが、本発明のシール部材42は、例えばキャップ部材42が容器本体40および伝達ギア41に対し線速差をもって(低速で)回転するようなトナーコンテナに用いることもできる。
【0073】
また、上記実施形態では、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式の現像装置3a~3dが搭載された画像形成装置100に搭載され、現像装置3a~3dに補給するためのトナーを収容するトナーコンテナ4a~4dについて説明したが、本発明は、磁性トナーを用いる磁性一成分現像方式や非磁性トナーを用いる非磁性一成分現像方式の現像装置に補給するためのトナーを収容するトナーコンテナにも同様に適用可能である。
【0074】
また、本発明は
図1に示したようなタンデム型のカラープリンターに限らず、カラー複写機やカラー複合機、モノクロプリンターやモノクロ複写機、モノクロ複合機等、トナーコンテナを用いる種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果について更に詳細に説明する。
【実施例0075】
シール部材43の圧縮滑り抵抗、圧縮残留歪み、および厚みと、シール部材43の摺動性および耐ヘタリ性との関係について調査した。摺動性については、摺動温度およびトナー融着により評価した。耐ヘタリ性についてはトナー漏れにより評価した。
【0076】
摺動性の評価方法は、
図1に示したような試験機(京セラドキュメントソリューションズ社製)にトナーコンテナ4dを装着し、環境条件を28℃、80%Rhとしてトナーコンテナ4dの周辺温度を43℃まで上昇させた。この状態でテスト画像(印字率80%)を60分間連続して出力したときのシール部材43の摺動面近傍の温度を測定し、測定された温度から圧縮滑り抵抗ρ[N]を推定した。また、画像出力後にトナーコンテナ4dのキャップ部材42を取り外してシール部材43へのトナー融着の有無を目視により確認した。
【0077】
耐ヘタリ性の評価方法は、キャップ部材42にシール部材43を貼り付け、トナーが収容されていない容器本体40を連結させて空のトナーコンテナ4dを組み立て、シール部材43を圧縮率50%で圧縮させた。この状態で、空のトナーコンテナ4dを70℃/95%Rhの環境下で65日間保管した。保管終了後、空のトナーコンテナ4dからキャップ部材42を取り外し、別途用意したトナーが収容された容器本体40に取り付けてトナーの入ったトナーコンテナ4dを組み立てた。このトナーコンテナ4dをコンテナ駆動治具に取り付けて容器本体40を回転させ、トナー漏れの有無を判定した。
【0078】
摺動性および耐ヘタリ性の評価結果を、第1シール層431の厚みT1、圧縮残留歪みε1、第2シール層433の厚みT2、圧縮残留歪みε2、第1シール層431の圧縮率k[%]に対する圧縮滑り抵抗ρ[N]の変化率ρ/kと併せて表1に示す。
【0079】
【0080】
表1に示すように、シール部材43の摺動性については、ρ/kが小さいほどトナー融着が発生し難く、摺動温度が低いことが分かる。これは、摺動時の摩擦抵抗の低下による摩擦熱の低下によるものと考えられる。表1の結果より、0<ρ/k<0.3を満たすことにより、トナー融着を抑制できることが確認された。
【0081】
また、シール部材43の耐ヘタリ性については、表1の結果より、0.04<T2ε2/(T1ε1+T2ε2)<0.48を満たすことにより、長期間保管時のトナー漏れを抑制できることが確認された。この理由としては、T2ε2/(T1ε1+T2ε2)が0.48を超えると、第2シール層433のヘタリが大きいために耐ヘタリ性が低下し、T2ε2/(T1ε1+T2ε2)が0.04未満であると、第2シール層433のヘタリは小さいが、第1シール層431のヘタリが大きいためにシール部材43全体として耐ヘタリ性が低下するものと考えられる。