(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151869
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/048 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01G9/048 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065624
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】595122132
【氏名又は名称】サン電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達也
(57)【要約】
【課題】低背化に対応して密封性能を低下させず、振動による引出端子の損傷を防止できる電解コンデンサを提供する。
【解決手段】軸方向の一端を閉塞面2aにより閉塞して他端に開口部2bを有した筒状の本体ケース2と、セパレータ13を介して対向するとともに引出端子7、8をそれぞれ接続した陰極箔11及び陽極箔12から成る一対の電極箔を巻回して本体ケース2に収納されるコンデンサ素子10と、一対の貫通孔5aを有して開口部2bを封止する封口体5とを備えた電解コンデンサ1において、引出端子7、8は、貫通孔5aに挿通される円柱状の柱状部23と、加締め部により電極箔に接合される薄板状の平板部25とを有し、平板部25の板厚が柱状部23から離れるに従って薄く形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端を閉塞面により閉塞して他端に開口部を有した筒状の本体ケースと、セパレータを介して対向するとともに引出端子をそれぞれ接続した陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、一対の貫通孔を有して前記開口部を封止する封口体と、を備えた電解コンデンサにおいて、
前記引出端子は、前記貫通孔に挿通される円柱状の柱状部と、加締め部により前記電極箔に接合される薄板状の平板部とを有し、前記平板部の板厚が前記柱状部から離れるに従って薄く形成されることを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子の径方向の長さが前記開口部側から前記閉塞面側に向かって小さくなるとともに、軸方向における前記コンデンサ素子の径方向の長さの減少率が前記平板部の板厚の減少率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記引出端子が軸方向に並ぶ複数の前記加締め部により前記電極箔に接合され、軸方向の前記加締め部の長さ及び前記電極箔の巻回方向に沿う前記加締め部の長さを前記柱状部から離れるに従って小さくしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記電極箔の巻回方向に沿う前記平板部の幅を前記柱状部から離れるに従って小さくしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記柱状部が軸方向に対して傾斜した傾斜端面を有し、軸方向に対する前記傾斜端面の傾斜角度が前記平板部の板厚方向に交差する面の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極箔に引出端子を接続した電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサは特許文献1に開示されている。この電解コンデンサは、コンデンサ素子を有底筒状の本体ケース内に収納し、本体ケースの開口部がゴム製の封口体により封止される。コンデンサ素子はセパレータを介して対向した陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して形成され、電極箔にはそれぞれ引出端子が接続されている。引出端子は封口体に設けた貫通孔を貫通して本体ケース外に引き出され、回路基板にはんだ付けされる。
【0003】
引出端子は封口体の貫通孔に圧入される円柱状の柱状部と、電極箔を加締めにより接続される薄板状の平板部とを有している。柱状部は軸方向に対して傾斜した傾斜端面を有し、傾斜端面よりも軸方向に対する傾斜角度が小さい補強部が傾斜端面と平板部とに跨って設けられる。車載時の振動等により平板部が振り子のように揺動することで平板部と柱状部との間に生じる亀裂を補強部によって防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-158184号公報(第4頁~第10頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電解コンデンサによると、補強部が設けられるため、電極箔の封口体側の一端がセパレータを挟んで傾斜した補強部に接近して対向する。このため、電極箔の巻回時のズレや電極箔のエッジのバリが発生した場合に電極箔が補強部に接触してショートしやすくなる問題があった。
【0006】
一方で、平板部を長く形成して補強部から電極箔を遠ざけると、車載時の振動等による平板部の揺動が大きくなるため、耐振性が不十分で亀裂発生の原因となる問題がある。加えて、電解コンデンサの高さが大きくなり、低背化という市場の要求に応えることができない問題もある。
【0007】
また、補強部を封口体の貫通孔内に収めることで平板部の揺動を抑制すると、封口体に貫通している柱状部が短くなるため電解コンデンサの密封性能が低下する。これにより、電解液漏れにより回路基板が汚染してショートする虞があるとともに、電解液の蒸散速度が速くなるため電解コンデンサの寿命が短くなる問題がある。
【0008】
本発明は、低背化に対応して密封性能を低下させず、振動による引出端子の損傷を防止できる電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、軸方向の一端を閉塞面により閉塞して他端に開口部を有した筒状の本体ケースと、セパレータを介して対向するとともに引出端子をそれぞれ接続した陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、一対の貫通孔を有して前記開口部を封止する封口体と、を備えた電解コンデンサにおいて、
前記引出端子は、前記貫通孔に挿通される円柱状の柱状部と、加締め部により前記電極箔に接合される薄板状の平板部とを有し、前記平板部の板厚が前記柱状部から離れるに従って薄く形成されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子の径方向の長さが前記開口部側から前記閉塞面側に向かって小さくなるとともに、軸方向における前記コンデンサ素子の径方向の長さの減少率が前記平板部の板厚の減少率よりも大きいことを特徴としている。
【0011】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記引出端子が軸方向に並ぶ複数の前記加締め部により前記電極箔に接合され、軸方向の前記加締め部の長さ及び前記電極箔の巻回方向に沿う前記加締め部の長さを前記柱状部から離れるに従って小さくしたことを特徴としている。
【0012】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記電極箔の巻回方向に沿う前記平板部の幅を前記柱状部から離れるに従って小さくしたことを特徴としている。
【0013】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記柱状部が軸方向に対して傾斜した傾斜端面を有し、軸方向に対する前記傾斜端面の傾斜角度が前記平板部の板厚方向に交差する面の傾斜角度よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、引出端子の薄板状の平板部の板厚を円柱状の柱状部から離れるに従って薄くしている。このため、平板部の根元の形状変化が緩やかになり、平板部の根元付近の振動による応力の集中が緩和される。また、平板部の板厚が根元付近で大きくなるため、平板部の強度が向上する。また、平板部に接合される電極箔を巻回したコンデンサ素子と本体ケースとの径方向の隙間が開口部側で狭くなるため、コンデンサ素子の揺動が抑制される。加えて、コンデンサ素子の重心が封口体に固定される柱状部に近づけられるため、コンデンサ素子の揺動がより抑制される。これらにより、電解コンデンサの耐振性が向上し、車載時の振動等による引出端子の損傷を防止することができる。
【0015】
また、上記によって従来例のような補強部を設ける必要がない。このため、補強部と電極箔と接触によるショートや封口体の密封性能低下を防止できるとともに、電解コンデンサの低背化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の電解コンデンサを示す縦断面図
【
図2】本発明の第1実施形態の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す斜視図
【
図3】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの引出端子を示す正面図
【
図4】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの引出端子を示す側面図
【
図5】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの電極箔の加締め部を示す側面図
【
図6】本発明の第1実施形態の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す概略上面図
【
図7】本発明の第1実施形態の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す概略正面断面図
【
図8】本発明の第2実施形態の電解コンデンサの引出端子を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の電解コンデンサ1を示す縦断面図である。電解コンデンサ1は、本体ケース2、コンデンサ素子10及び封口体5を備えている。
【0018】
本体ケース2はアルミニウム等の金属または樹脂により断面円形の有底筒状に形成され、軸方向の一端を閉塞面2aにより塞がれて他端に開口部2bを開口する。加工性及び密封性能の面から本体ケース2をアルミニウムにより形成すると好ましい。本体ケース2内にコンデンサ素子10が収納され、開口部2bが封口体5により封止される。本体ケース2には、ガスの発生により内圧が上昇した場合に備えて防爆弁や防爆用の肉薄部を設けることができる。
【0019】
図2はコンデンサ素子10の斜視図を示している。コンデンサ素子10は長尺の帯状に形成された陰極箔11、陽極箔12及びセパレータ13を有している。セパレータ13を介して対向する陰極箔11及び陽極箔12から成る一対の電極箔を略円筒状に巻回してコンデンサ素子10が形成される。陰極箔11またはセパレータ13の終端は粘着テープ14によって固定される。
【0020】
セパレータ13の短手方向(軸方向)の幅は陰極箔11及び陽極箔12の短手方向の幅よりも大きく形成される。これにより、セパレータ13は陰極箔11及び陽極箔12に対して閉塞面2a側及び開口部2b側に突出し、陰極箔11と陽極箔12とのショートが防止される。
【0021】
陰極箔11はアルミニウム等の金属により形成され、表面はエッチング加工により粗面化されている。陰極箔11の表面にカーボン、チタン等の無機系コーティング層を形成してもよい。また、陰極箔11の表面に自然酸化皮膜または化成液中で電圧を印加することによる化成酸化皮膜が形成されていてもよい。
【0022】
陽極箔12はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属により形成され、表面はエッチング加工により粗面化されている。陽極箔12には化成液中で電圧を印加することで、誘電体層となる化成酸化皮膜が形成されている。
【0023】
セパレータ13には、天然セルロース繊維や、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の化学繊維を抄いた紙、不織布が用いられる。セパレータ13は多孔性であり、内部の空隙に電解質を保持することができる。セパレータ13の厚みは陰極箔11及び陽極箔12のバリ等の突起の大きさよりも厚い方が好ましく、例えば20μm~60μmに形成される。
【0024】
また、陰極箔11と陽極箔12との間には電解質が設けられている。電解質には電解液及び固体電解質の一方または両方が用いられる。電解質は陰極箔11及び陽極箔12の少なくとも一部を覆い、電解質の一部はセパレータ13にも保持される。
【0025】
電解液として、γ-ブチロラクトンやスルホラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の高沸点極性溶媒に溶質が溶解された溶液が用いられる。溶質には、無機酸(リン酸、ホウ酸等)、有機酸(フタル酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、アジピン酸等)、無機酸と有機酸との複合化合物(ボロジグリコール酸やボロジサリチル酸等)が用いられる。電解液として、常温で液体であるイオン液体を用いることもできる。電解液は陰極箔11及び陽極箔12の少なくとも一部を覆うとともに、セパレータ13に含浸された状態で存在する。
【0026】
固体電解質には導電性高分子を用いることができる。導電性高分子にはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、及びこれらの誘導体を用いることができ、ドーパントとしてp-トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等を用いることができる。導電性高分子はコンデンサ素子10内で重合反応させることで形成することができる。予め重合反応させた導電性高分子を水に分散させた分散体としてコンデンサ素子10に含浸した後に乾燥させることにより、コンデンサ素子10内に導電性高分子を保持してもよい。
【0027】
ポリチオフェンの誘導体としてポリエチレンジオキシチオフェンを用い、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものは、導電性や安定性に優れる分散体として好ましく用いられる。また、ポリチオフェンの誘導体として分子内にスルホン酸基を設けると、自己ドープ型の導電性高分子として水などの溶媒に可溶性の導電性高分子として用いることができる。
【0028】
また,コンデンサ素子10に固体電解質を形成し、更に電解液を含浸したハイブリッド型の電解コンデンサ1とすることができる。コンデンサ素子10に固体電解質を形成し、更にエチレングリコールやポリエチレングリコール等の機能性液体、または酸を含む溶質等を溶解させておいた高分子のポリエチレングリコール等の常温固体電解質を含浸した電解コンデンサ1とすることもできる。
【0029】
陰極箔11には引出端子7が接続され、陽極箔12には引出端子8が接続される。引出端子7、8は同じ形状に形成される。
図3、
図4は引出端子7、8の正面図及び側面図を示している。引出端子7、8は、柱状部23及び平板部25を有した第1部材21と、第1部材21に接続される第2部材22とを有する。第1部材21は例えばアルミニウムより形成され、第2部材22は例えば鉄線の外周面に銅層を設けたCP線により形成される。
【0030】
第2部材22は第1部材21の柱状部23に設けた孔部21aに挿入して溶接される。これにより、第1部材21と第2部材22が機械的、電気的に固定されている。第2部材22の開放端は回路基板にはんだ付けされる接続端子を形成する。本体ケース2を支持する樹脂製の座板を設け、第2部材22を座板の底面上で折り曲げて接続端子を形成してもよい。
【0031】
第1部材21の柱状部23は円柱状に形成され、平板部25側の一端に傾斜端面24を有する。柱状部23は第1部材21を形成する丸棒(例えば、円柱状アルミニウム材)の形状を活用して形成される。後述するように、柱状部23は封口体5の貫通孔5a(
図1参照)に圧入される。これにより、第2部材22が本体ケース2の外に引き出された状態となる。
【0032】
平板部25は細長い薄板状に形成され、平板部25の幅Wは柱状部23から先端に亘って一定に形成される。平板部25は第1部材21を形成する丸棒の一端側をプレス加工し、不要な部分を切断することで形成される。プレス加工時に柱状部23の傾斜端面24も同時に形成される。平板部25はプレス加工する金型によって柱状部23から離れるに従って板厚を連続的に薄くしている。プレス加工後に切削等によって平板部25の板厚を連続的に薄く形成してもよい。
【0033】
平板部25の板厚を柱状部23から離れるに従って薄くするため、平板部25の根元の形状変化が緩やかになり、平板部25の根元付近の振動による応力の集中が緩和される。また、平板部25の板厚が根元付近で大きくなるため、平板部25の強度が向上する。
【0034】
このとき、軸方向に対する傾斜端面24の傾斜角度θ2は、平板部25の板厚方向に交差する面の傾斜角度θ1よりも大きく形成される。これにより、平板部25を柱状部23に近づけた状態で、電極箔を傾斜端面24から軸方向に離すことができる。このため、電極箔の巻回時のズレや電極箔のエッジのバリが発生しても、電極箔と傾斜端面24との接触によるショートを防止することができる。
【0035】
平板部25には陰極箔11または陽極箔12が加締め部15により機械的及び電気的に接続固定される。
図5は加締め部15の側面図を示している。平板部25には軸方向に並ぶ複数の加締め部15が設けられる。加締め部15は陰極箔11または陽極箔12と引出端子7、8の平板部25を重ね合わせ、ピンカシメ加工またはパンチ穴カシメ加工により形成される。
【0036】
ピンカシメ加工は、先端部が四角錐形状のグサリ針を貫通させることで電極箔及び平板部25のカエリを形成し、カエリをプレス加工で電極箔上に冷間圧接する。パンチ穴カシメ加工は、電極箔に穴を開けた後に平板部25を重ね合わせてグサリ針を貫通させることで平板部25のカエリを形成し、カエリをプレス加工で電極箔上に冷間圧接する。
【0037】
プレス加工されたカエリによって加締め部15は、
図5に示すように花びら形状に形成され、電極箔と平板部25とが機械的に接続される。また、針による穴開け加工及びプレス加工によって電極箔及び平板部25の化成酸化皮膜または自然酸化皮膜が破壊され、電極箔と平板部25とが電気的に接続される。
【0038】
花びら形状の加締め部15の大きさは、同じサイズのグサリ針を用いた場合では平板部25の板厚に比例する。すなわち、軸方向の加締め部15の長さ及び電極箔の巻回方向に沿う加締め部15の長さは平板部25の板厚に比例する。このため、加締め部15の大きさは、柱状部23側が大きく、先端側に向かうにつれて小さくなる。
【0039】
加締め部15が大きいほど、電極箔と引出端子7、8との接続の接触抵抗が小さくなるとともに、機械的強度が高く接合が安定する。振動時に応力が強くかかる柱状部23に近い位置の加締め部15が大きく形成されるため、振動による電極箔と引出端子7、8との剥離による断線を起きにくくすることができる。従って、強い振動に対しても陰極箔11または陽極箔12から引出端子7、8が外れることを防止できる。
【0040】
また、柱状部23に近い位置の加締め部15の固定強度が強く安定しているため、平板部25に設ける加締め部15の数を最小限に少なくすることができる。これらにより、電解コンデンサ1の特性に悪影響の原因となりやすい加締め加工の際のバリや箔粉の発生を少なくすることができる。このため、特性が安定した電解コンデンサ1を得ることができる。更に加締め加工による加工硬化や金属疲労も抑えることができるため、耐振動性が向上して引出端子7、8の損傷を防止することができる。
【0041】
また、加締め部15の数を減らすことで、平板部25の長さも短くすることができる。このため、セパレータ13を介して対向する陰極箔11と陽極箔12の面積が増え、静電容量を増やすことができる。更に、平板部25の先端と陰極箔11または陽極箔12の箔端部との距離を長くすることができる。このため、平板部25と電極箔端部との干渉が抑制され、陰極箔11または陽極箔12のひび割れや破断の発生を防止することができる。
【0042】
図1において、封口体5はブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等の絶縁体の弾性体の成形品により円板状に形成され、一対の貫通孔5aを有している。一対の貫通孔5aにはコンデンサ素子10の引出端子7、8が圧入により挿通される。
【0043】
本体ケース2の開口部2bに封口体5を配した状態で、本体ケース2には外周面を押圧する絞り加工が施される。これにより、本体ケース2には内面側に突出する絞り加工部2cが形成される。絞り加工部2cによって封口体5の外周面が内周方向に圧縮され、本体ケース2の内周面に密着する。また、封口体5の圧縮により貫通孔5aの内面が引出端子7、8に密着する。これにより、本体ケース2の開口部2bが封口体5により封止される。
【0044】
本体ケース2の開口部2b側の端部は封口体5側に湾曲して折り曲げた折曲部2dが形成される。折曲部2d及び絞り加工部2cによって封口体5が本体ケース2外に抜け出ることを防止している。
【0045】
図6、
図7はコンデンサ素子10の概略上面図及び概略正面断面図を示している。これらの図において、陰極箔11を太線の実線、陽極箔12を中線の実線、セパレータ13を破線でそれぞれ示している。前述したように、陰極箔11及び陽極箔12にはそれぞれ引出端子7、8の平板部25が加締め部15(
図5参照)により接続されている。セパレータ13を介して対向する陰極箔11及び陽極箔12は巻き芯を用いて略円筒状に巻回される。電極箔を巻回されたコンデンサ素子10は抜き板に引っ掛けることで巻き芯から外される。
【0046】
引出端子7、8の平板部25の板厚は柱状部23側から先端に向けて連続的に薄く形成される。このため、コンデンサ素子10の径方向の長さが引出端子7、8の導出側(開口部2b側)から閉塞面2a(
図1参照)側に向かって小さくなっている。
【0047】
これにより、コンデンサ素子10と本体ケース2との径方向の隙間が封口体5の近傍で狭くなり、本体ケース2内でのコンデンサ素子10の可動範囲が小さくなる。その結果、電解コンデンサ1の振動時にコンデンサ素子10の揺動が抑制されるため、電解コンデンサ1の耐振動性が向上して引出端子7、8の損傷を防止することができる。
【0048】
尚、巻き芯の位置を固定しながら引っ張る力を加えて陰極箔11及び陽極箔12を巻回することで、平面部の先端側の巻回テンションが高められる。これにより、コンデンサ素子10の径方向の長さの減少率を、平板部25の板厚の減少率よりも大きくすることができる。このため、コンデンサ素子10と本体ケース2との開口部2b側の径方向の隙間をより狭くすることができ、電解コンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。
【0049】
また、閉塞面2a側で本体ケース2の周壁面とコンデンサ素子10との間の空間が広く確保される。このため、開口部2bを上方に向けた本体ケース2内に電解液を充填してコンデンサ素子10を浸積する際に、電解液の充填量を多くできる。これにより、コンデンサ素子10の電解質の含浸量を多くでき、電解コンデンサ1の長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、陰極箔11と陽極箔12との間隔が引出端子7、8の導出側よりも反対側で狭くなるため、電解質が含浸される際に引出端子7、8の導出側へと移行しやすい。このため、閉塞面2a側の空間に溜まっていた電解液がエージング工程で開口部2bを下方に配した際にコンデンサ素子10全体へ馴染むように封口体5側に流れ、加温されてエッチングピット内にも電解質が充填される。これにより、コンデンサ素子10の中心から全体に満遍なく陽極箔12の化成酸化皮膜の欠陥部を修復することができる。
【0051】
また、柱状部23側で平板部25の板厚が大きいためコンデンサ素子10の重心が封口体5に密着して固定されている柱状部23に近づけられる。このため、コンデンサ素子10の揺動が低減され、電解コンデンサ1の耐振性が向上する。特に、電解質に常温固体電解質を用いた場合には、耐振動性の向上の効果が大きい。
【0052】
本実施形態によると、引出端子7、8の薄板状の平板部25の板厚を円柱状の柱状部23から離れるに従って薄くしている。このため、平板部25の根元の形状変化が緩やかになり、平板部25の根元付近の振動による応力の集中が緩和される。また、平板部25の板厚が根元付近で大きくなるため、平板部25の強度が向上する。更に、平板部25に接合される電極箔を巻回したコンデンサ素子10と本体ケース2との径方向の隙間が開口部2b側で狭くなるため、コンデンサ素子10の揺動が抑制される。加えて、コンデンサ素子10の重心が柱状部23に近づけられるため、コンデンサ素子10の揺動がより抑制される。これらにより、電解コンデンサ1の耐振性が向上し、車載時の振動等による引出端子7、8の損傷を防止することができる。
【0053】
また、耐振性が向上するため従来例のような補強部を設ける必要がない。このため、補強部と電極箔と接触によるショートや封口体5の密封性能低下を防止できるとともに、電解コンデンサ1の低背化に対応することができる。
【0054】
また、軸方向におけるコンデンサ素子10の径方向の長さの減少率を平板部25の板厚の減少率よりも大きくすると、コンデンサ素子10と本体ケース2との開口部2b側の径方向の隙間をより狭くすることができる。従って、電解コンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。
【0055】
また、引出端子7、8が軸方向に並ぶ複数の加締め部15により電極箔と接合され、軸方向の加締め部15の長さ及び電極箔の巻回方向に沿う加締め部15の長さを柱状部23から離れるに従って小さくしている。これにより、柱状部23に近い位置の加締め部15が大きく形成され、強い振動に対しても陰極箔11または陽極箔12から引出端子7、8が外れることを防止できる。更に、加締め部15の数を減らすことができ、電解コンデンサ1の静電容量を増やすとともに、電極箔のひび割れや破断の発生を防止することができる。
【0056】
また、軸方向に対する傾斜端面24の傾斜角度θ2が平板部25の板厚方向に交差する面の傾斜角度θ1よりも大きいので、電極箔を傾斜端面24から軸方向に離すことができる。このため、電極箔の巻回時のズレや電極箔のエッジのバリが発生しても、電極箔と傾斜端面24との接触によるショートを防止することができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、
図8は第2実施形態の電解コンデンサ1の引出端子7、8を示す側面図である。前述の
図4と同様の部分には同じ符号を付している。本実施形態は引出端子7、8の平板部25の形状が第1実施形態と異なっている。電解コンデンサ1のその他の部分は第1実施形態と同一である。
【0058】
電極箔の巻回方向に沿う平板部25の幅Wは一定ではなく、柱状部23から先端に向かって離れるに従って小さく形成される。これにより、コンデンサ素子10(
図1参照)の径方向の長さを引出端子7、8の導出側(開口部2b側)から閉塞面2a側に向かってより狭くすることができる。従って、電解コンデンサ1の耐振動性がより向上して引出端子7、8の損傷を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電解コンデンサを回路に実装した自動車、電子機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 電解コンデンサ
2 本体ケース
2a 閉塞面
2b 開口部
2c 絞り加工部
2d 折曲部
5 封口体
5a 貫通孔
7、8 引出端子
10 コンデンサ素子
11 陰極箔
12 陽極箔
13 セパレータ
14 粘着テープ
15 加締め部
21 第1部材
21a 孔部
22 第2部材
23 柱状部
24 傾斜端面
25 平板部
W 幅
θ1、θ2 傾斜角度