(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151872
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】メッシュベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/54 20060101AFI20241018BHJP
C21D 1/00 20060101ALN20241018BHJP
F27D 3/12 20060101ALN20241018BHJP
F27B 9/24 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B65G15/54
C21D1/00 113Z
F27D3/12 Z
F27B9/24 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065630
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】599084348
【氏名又は名称】東洋炉工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512027647
【氏名又は名称】原金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】岡野 豊
(72)【発明者】
【氏名】大村 一弘
【テーマコード(参考)】
3F024
4K034
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
3F024AA09
3F024CA04
3F024EA03
4K034AA05
4K034AA18
4K034BA10
4K034EA11
4K034EB41
4K050AA02
4K050BA01
4K050BA14
4K050CG09
4K055AA05
4K055AA06
4K055HA07
4K055HA14
4K055HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】伸縮可能で、かつピッチの小さいメッシュベルトを提供する。
【解決手段】本発明のメッシュベルト100は、金属線材を金網状に編み合わせたメッシュベルトである。メッシュベルト100は、その幅方向に延び、長手方向に並列に、かつ交互に複数ずつ並べられた巻き方向の異なる2種のらせん部材11,12と、隣接する2種のらせん部材11,12の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材11,12を連結する波線棒状の力骨3と、隣接する2種のらせん部材11,12の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材11,12の軸間距離が離間する方向に当該隣接する2種のらせん状部材11,12を付勢する波線状のばね部材2を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材を金網状に編み合わせたメッシュベルトであって、
メッシュベルトの幅方向に延び、前記幅方向に垂直な長手方向に並列に、かつ交互に複数ずつ並べられた巻き方向の異なる2種のらせん部材と、
隣接する2種のらせん部材の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材を連結する波線棒状の力骨と、
隣接する2種のらせん部材の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材の軸間距離が離間する方向に当該隣接する2種のらせん状部材を付勢する波線状のばね部材と
を備えることを特徴とするメッシュベルト。
【請求項2】
前記ばね部材は、当該メッシュベルトの幅方向の一端のみで、らせん部材に溶接されている請求項1に記載のメッシュベルト。
【請求項3】
前記ばね部材は、メッシュベルトの長手方向に複数設けられ、当該複数のばね部材は、らせん部材に溶接される側の端部が、前記メッシュベルトの幅方向の一端側と他端側で交互に入れ替わる請求項2に記載のメッシュベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属線を金網状に編合わせたメッシュベルトに関し、特に、巻き方向の異なる2種のらせん部材を交互に並べて連結したメッシュベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製品の焼き入れ工程におけるワークの搬送や、加工食品の蒸し処理工程や洗浄処理工程等における食材の搬送等、耐熱性や耐食性を要する工程に用いられるベルトコンベアには、金属線材からなるらせん部材を、同じく金属線を波線棒状に形成した力骨で連結して金網状に編合わせたメッシュベルトが用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
かかるメッシュベルトは、剛性が高いために、その上に落下してくるワークに傷がつくという問題や、ベルトコンベアを駆動するチェーンの延びを拘束して、チェーンとベルトを連結する連結部材を破損させるという問題が有った。
【0004】
そこで、特許文献1では、波線棒状の力骨を2本重ね、長手方向の所定間隔ごとに2本の力骨を溶接するとともに、当該溶接部の間において2本の力骨が笹葉状に広がるよう設けたばね部材と、1本の波線棒状部材からなる通常の力骨を交互に設けたメッシュベルトが開示されている。特許文献1のメッシュベルトは、ばね部材の笹葉状に広がる部分の幅を収縮させることで、メッシュベルトを搬送方向に伸長させ、メッシュベルト上に落下してくるワークを傷つけないようにするものである。ちなみに、特許文献1のばね部材では、それを構成する波線棒状の力骨の波の部分にらせん部材のらせんを係止するよう構成されている。
【0005】
また特許文献2では、波線状でない直棒状の線材を2本重ね、特許文献1のばね部材と同様に、当該2本の線材を所定間隔ごとに溶接するとともに、溶接部の間において2本の線材が笹葉状に広がるよう構成したチェーン駆動式のメッシュベルトが開示されている。特許文献2のメッシュベルトでは、メッシュベルトを伸長可能とすることで、チェーン駆動時のチェーンの延びに合わせてメッシュベルトを伸長させてチェーンとメッシュベルトを連結する支持部の破損を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6778935号公報
【特許文献2】特許第6775267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1や特許文献2のメッシュベルトでは、力骨が2本の線材からなるため、らせん部材のピッチを狭くしたい場合には使えないという問題が有った。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、らせん部材のピッチが小さい場合にも利用可能なばね部材を備えたメッシュベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、金属線材を金網状に編み合わせたメッシュベルトであって、メッシュベルトの幅方向に延び、前記幅方向に垂直な長手方向に並列に、かつ交互に複数ずつ並べられた巻き方向の異なる2種のらせん部材と、隣接する2種のらせん部材の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材を連結する波線棒状の力骨と、隣接する2種のらせん部材の両方に挿通するようにして当該2種のらせん部材の軸間距離が離間する方向に当該隣接する2種のらせん状部材を付勢する波線状のばね部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のメッシュベルトは、このように、ばね部材を1本の波線状部材により構成したので、特許文献1や特許文献2のメッシュベルトのように2本の線材を溶接したばね部材を用いる場合に比べて、隣接する2種のらせん部材間のピッチ(軸間距離)を小さくできる。
【0010】
前記ばね部材は、当該メッシュベルトの幅方向の一端のみで、らせん部材に溶接されていることが好ましい。
ばね部材の両端とも溶接せず、ばね部材をらせん部材に対しフリーにすると、メッシュベルトが伸縮を繰り返すうちに、ばね部材がメッシュベルトの幅方向に位置ずれする虞がある。また、ばね部材の両端をらせん部材に溶接で固定してしまうと、ばね部材が拘束されるため弾性変形できない虞がある。これに対し、ばね部材を片方の端部のみでらせん部材に溶接することで、ばね部材の弾性変形を拘束することなく、メッシュベルトに対するばね部材の位置ずれを防止することができる。
【0011】
前記ばね部材は、メッシュベルトの長手方向に複数設けられ、当該複数のばね部材は、らせん部材に溶接される側の端部が、前記メッシュベルトの幅方向の一端側と他端側で交互に入れ替わることが好ましい。こうすることで、メッシュベルトが一様に伸縮するよう構成できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明のメッシュベルトによれば、らせん部材のピッチを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一の実施の形態に係るメッシュベルトの(a)側面図、(b)平面図である。
【
図2】
図1に示したメッシュベルトの幅方向の一端を伸長させた状態の(a)側面図、(b)平面図である。
【
図3】
図1に示した(a)右らせん部材、(b)左らせん部材、(c)ばね部材、(d)力骨の平面図である。
【
図4】
図1に示した力骨に2種のらせん部材が係合する様子を示した要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るメッシュベルト100を示している。メッシュベルト100は、
図1に示すように、らせん方向の異なる2種のらせん部材(右らせん部材11、及び左らせん部材12、以下「右らせん部材」と「左らせん部材」をあわせて「らせん部材」ともいう。)と、ばね部材2と、力骨3とをそれぞれ多数連結して構成されている。2種のらせん部材11,12、ばね部材2、及び力骨3は、いずれも金属線材により形成されている。
【0016】
メッシュベルト100の各部材を形成する金属線としては、適宜の弾性強度を備えていれば特に限定されないが、SUS304やSUS316等のステンレス鋼線や、亜鉛引き鋼線が好ましく用いられる。
【0017】
右らせん部材11、及び左らせん部材12は、
図1(b)に示すように、メッシュベルト100の長手方向(
図1(b)の左右方向)にそれぞれ複数ずつ並列に、かつ交互に並べられている。右らせん部材11は、メッシュベルト100の幅方向の一端側(
図1(a)の紙面手前側、もしくは
図1(b)の上側)から見て、メッシュベルト100の一端側から他端側に向けて右巻きのらせん状に延びるよう巻回されており、左らせん部材12は、当該一端側から他端側に向けて、左巻きのらせん状に延びるよう巻回されている。右らせん部材11、及び左らせん部材12は、らせんの1周分からなるらせんの輪12a,11aを、相手方のらせんの輪11a,12aの間隙に挿入するようにしてメッシュベルト100の長手方向に一部重なり、当該重なった部分にばね部材2や力骨3が挿通されて連結されている。右らせん部材11、及び左らせん部材12は、
図3(a)、(b)に示すように、らせんの輪11a,12aのピッチP1が等しく設けられている。
【0018】
ばね部材2は、
図1(b)、
図3(c)に示すように、金属線材から連続する複数の波2aを備える波線状に形成されており、
図1に示すように、隣接する2種のらせん部材11,12の両方に挿通されて、隣接する2種のらせん部材11,12を連結している。
【0019】
ばね部材2の波2aのピッチP2は、らせん部材11,12のらせんの輪11a,12aのピッチP1よりも大きく設けられている。らせん部材11,12のピッチP1よりもばね部材2のピッチP2が小さいと、ばね部材2の波2aがらせん部材11,12の輪11a,12aの間に入り込んで、ばね部材2の弾性力の源となる波2aの波高を小さくするような変形を生じない虞がある。
【0020】
また、らせん部材11,12のらせんの輪11a,12aのピッチP1と、ばね部材2のピッチP2が同じであると、すなわち、ばね部材2が後述する力骨3と同様に、隣接する2種のらせん部材11,12を連結するだけの部材となってしまう。
【0021】
ピッチP1よりもピッチP2を大きくすることで、らせん部材11,12の輪11a,12aの間にばね部材2の波2aが入り込むことを抑制して、らせん部材11とらせん部材12を離間させた状態で、らせん部材11及びらせん部材12にばね部材2を挿通することができ、当該らせん部材11とらせん部材12の軸間距離が縮まった際に、波2aがらせん部材11,12の輪に押されて波2aの波高が小さくなるような変形を起こすことができるため、ばね部材2に弾性力を形成できる。ピッチP2は、ピッチP1の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、4倍以上がさらに好ましく、5倍以上が特に好ましい。
【0022】
ばね部材2は、
図1(a)の例では、両端2b,2bのうち、一方のみが溶接されている。図中符号2bwが溶接した側の端部を示している。ただし、ばね部材2は、両端2b,2bともが、右らせん部材11、又は左らせん部材12の端部に溶接されていてもよいし、両端とも溶接されていなくてもよいし、両端のうち片側のみが、右らせん部材11、又は左らせん部材12に溶接されていてもよい。
【0023】
ただし、ばね部材2は、波高が小さくなるような変形をすると長さ方向(メッシュベルト100の幅方向)に伸びるので、両端とも溶接で固定されていると、伸びが拘束されることにより、波高が小さくなる変形ができない虞がある。
【0024】
また、ばね部材2の両端とも溶接されずフリーであると、メッシュベルト100が伸縮を繰り返すうちに、ばね部材2がメッシュベルト100の幅方向に位置ずれを起こす虞がある。
【0025】
これに対し、ばね部材2の一方のみを溶接で右らせん部材11,又は左らせん部材12の端部に溶接することで、ばね部材2は、伸びを拘束されることなく、また、位置ずれを起こすことなく、波高を小さくするような弾性変形をして、効果的に弾性力を形成でき、メッシュベルト100を伸縮可能にして、メッシュベルト100にクッション性を持たせることができる。
【0026】
ばね部材2を複数並列に並べる場合は、少なくとも一部のばね部材2について、他のばね部材2と異なる側の端部2bで右らせん部材11、又は左らせん部材12に溶接することが好ましい。多数並んだばね部材2を一定の本数ごとに溶接する端部2bwをメッシュベルト100の幅方向の一端側と他端側で変更することがより好ましく、
図1(b)に示したように、1本ごと交互に溶接する端部2bwを変更することがさらに好ましい。こうすることで、メッシュベルト100が、均一に伸縮するようにできる。
【0027】
力骨3は、
図3(d)に示すように、金属線材から波線棒状に形成されており、長さ方向(メッシュベルト100の幅方向)に交互に多数並ぶ波3a,3bを備えている。波3aは、
図4に示すように、右らせん部材11の輪11aを係止し、波3bは、左らせん部材12の輪12aを係止して、隣接するらせん部材11,12の幅方向のずれを防止しながら、隣接するらせん部材11,12を連結している。
【0028】
力骨3は、右らせん部材11、又は左らせん部材12の一方に両端が溶接で固定され、右らせん部材11、又は左らせん部材12の他方には固定されていないので、右らせん部材11,又は左らせん部材12の中で遊動可能であり、力骨3が遊動することで、隣接する右らせん部材11と左らせん部材12の軸間距離が拡縮する。
【0029】
図1の例では、メッシュベルト100の長手方向の一方向(
図1の右方向)に向かって順に、力骨3、右らせん部材11、ばね部材2、左らせん部材12、力骨3、ら右せん部材11、力骨3、左らせん部材12を並べたユニットを最小単位とする例を示している。換言すると、
図1のメッシュベルト100では、隣接する2本の力骨3,3の間に、2種のらせん部材11,12をばね部材2で連結した構成と、隣接する2本の力骨3,3の間に右らせん部材11のみが挟まれた構成が長手方向に交互に繰り返す構成となっている。ただし、すべての力骨3,3の間に、ばね部材2が挟まれる構成としてもよいし、力骨3,3の間にばね部材2が挟まれない構成を
図1の例よりも多くすることもできる。
【0030】
以上、本発明のメッシュベルトは、上述した実施形態に限らず、例えば、一部のばね部材2を、特許文献2で示した2本の線材を溶接したばね部材に交換したようなものを用いてもよい。本発明のメッシュベルトは、ベルトコンベア以外の用途に用いてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
100 メッシュベルト
11,12 らせん部材
2 ばね部材
3 力骨
3a,3b 波