(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151888
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】リフトアップ式桟橋およびその移動方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/00 20060101AFI20241018BHJP
E01D 18/00 20060101ALI20241018BHJP
E01D 15/133 20060101ALI20241018BHJP
E01D 15/24 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
E01D18/00 C
E01D15/133
E01D15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065676
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 峻一
(72)【発明者】
【氏名】小菅 憲正
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA34
2D059BB19
2D059BB24
2D059GG57
(57)【要約】
【課題】傾斜面に対向して設置可能なリフトアップ式桟橋およびその移動方法を提供する。
【解決手段】造成に伴い上昇するダム堤体2の頂面3と取付道路4とを接続するリフトアップ式桟橋1であって、取付道路4からダム堤体2の頂面3に向かって延設される橋体10と、取付道路4側に設置され橋体10を頂面3に向かって移動させる移動手段30と、橋体10の途中部分を昇降可能に支持する昇降手段50と、を備え、橋体10の基端部は、移動手段30に回動可能に支持されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造成に伴い上昇するダム堤体の頂面と取付道路とを接続するリフトアップ式桟橋であって、
前記取付道路から前記ダム堤体の前記頂面に向かって延設される橋体と、前記取付道路側に設置され前記橋体を前記頂面に向かって移動させる移動手段と、前記橋体の途中部分を昇降可能に支持する昇降手段と、を備え、
前記橋体の基端部は、前記移動手段に回動可能に支持されている
ことを特徴とするリフトアップ式桟橋。
【請求項2】
前記移動手段は、前記取付道路側に敷設されたガイドレールと、前記橋体を前記ガイドレールに沿って移動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、前記橋体の基端部を回動可能に支持した状態で前記ガイドレールに沿って移動可能な移動支持部と、前記ガイドレールに着脱可能に固定される固定部と、前記移動支持部と前記固定部との間に伸縮可能に掛け渡された伸縮ジャッキと、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のリフトアップ式桟橋。
【請求項3】
前記固定部と前記伸縮ジャッキは、前記移動支持部を挟んで前記取付道路側と前記ダム堤体側の両側に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のリフトアップ式桟橋。
【請求項4】
前記橋体の基端部には、前記取付道路に向かって延出する基端側スロープ架台が回動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のリフトアップ式桟橋。
【請求項5】
前記橋体の先端部には、前記頂面に向かって延出する先端側スロープ架台が回動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のリフトアップ式桟橋。
【請求項6】
請求項2に記載のリフトアップ式桟橋の前記移動手段によって前記橋体を前記ダム堤体側に移動させるリフトアップ式桟橋の移動方法であって、
前記固定部を反力受けとして前記伸縮ジャッキを作動させて前記移動支持部を移動させる、ことを特徴とするリフトアップ式桟橋の移動方法。
【請求項7】
請求項3に記載のリフトアップ式桟橋の前記移動手段によって前記橋体を前記ダム堤体側に移動させるリフトアップ式桟橋の移動方法であって、
前記移動支持部よりも前記ダム堤体側の前記固定部の固定状態を解除する前方解除工程と、
前記取付道路側の前記伸縮ジャッキおよび前記ダム堤体側の前記伸縮ジャッキを伸長させて前記移動支持部および前記ダム堤体側の前記固定部を前記ダム堤体側の前方に押し出す伸長工程と、
前記ダム堤体側の前記固定部を前記ガイドレールに固定する前方固定工程と、
前記取付道路側の前記固定部の固定状態を解除する後方解除工程と、
前記取付道路側の前記伸縮ジャッキおよび前記ダム堤体側の前記伸縮ジャッキを縮退させて前記移動支持部および前記取付道路側の前記固定部を前記ダム堤体側の前方に引き寄せる縮退工程と、
前記取付道路側の前記固定部を前記ガイドレールに固定する後方固定工程と、を備えた
ことを特徴とするリフトアップ式桟橋の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトアップ式桟橋およびその移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施工に伴い頂面の標高が変化するダム堤体に建設資材の供給経路を確保するためのリフトアップ式桟橋が知られている(例えば特許文献1または2参照)。従来のリフトアップ式桟橋は、基端部がプラント側の道路に回動可能にピン結合され、先端部が昇降手段(門型の鋼製架台等)に昇降可能に支持されていた。このリフトアップ式桟橋では、桟橋の先端部を上昇させることで、高くなったダム堤体の頂面と、プラント側の道路とを接続するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-264131号公報
【特許文献2】実開昭63-121608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリフトアップ式桟橋では、橋梁の先端部は上下方向のみに移動可能であるので、ダム堤体の傾斜面(例えば、重力式コンクリートダムの下流面)に対向して設置すると、ダム堤体の上昇に伴って昇降手段からダム堤体の頂面までの距離が大きくなり、リフトアップ式桟橋の先端部がダム堤体の頂面に届かなくなる虞がある。このため、ダム建設に使用するリフトアップ式桟橋は、下流面よりも急峻に立ち上がる上流面側に設置される場合が多い。
一方、近年のダム建設工事では十分な面積の用地を確保することができず、生コン製造プラントをダム施工位置の下流側に設置せざるを得ない場合が多い。このような条件下でダム堤体を造成する場合は、ダム施工位置の下流側にリフトアップ式桟橋を設置することが好ましいが、リフトアップ式桟橋の先端部がダム堤体の頂面に届かないという問題が生じる場合には、ダム施工位置の上流側にリフトアップ式桟橋を設置せざるを得ない。ダム施工位置を挟むように生コン製造プラントとリフトアップ式桟橋を設置すると、ダム施工位置を大きく迂回するような生コン運搬ルートにせざるを得ず、道路の造成費用の増加や運搬効率の低下が発生するといった問題があった。
このような観点から、本発明は、傾斜面に対向して設置可能なリフトアップ式桟橋およびその移動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、造成に伴い上昇するダム堤体の頂面と取付道路とを接続するリフトアップ式桟橋であって、前記取付道路から前記ダム堤体の前記頂面に向かって延設される橋体と、前記取付道路側に設置され前記橋体を前記頂面に向かって移動させる移動手段と、前記橋体の途中部分を昇降可能に支持する昇降手段と、を備えている。前記橋体の基端部は、前記移動手段に回動可能に支持されていることを特徴とする。
本発明のリフトアップ式桟橋によれば、橋体の先端部を昇降手段で上昇させるとともに、橋体を移動手段でダム堤体側に移動させることができるので、ダム堤体の頂面の上昇に伴って昇降手段からダム堤体の頂面までの距離が大きくなっても、橋体の先端部をダム堤体の頂面に接続できる。つまり、本発明によれば、ダム堤体の傾斜面に対向してリフトアップ式桟橋を設置することができる。
【0006】
本発明のリフトアップ式桟橋においては、 前記移動手段は、前記取付道路側に敷設されたガイドレールと、前記橋体を前記ガイドレールに沿って移動させる移動装置と、を備え、前記移動装置は、前記橋体の基端部を回動可能に支持した状態で前記ガイドレールに沿って移動可能な移動支持部と、前記ガイドレールに着脱可能に固定される固定部と、前記移動支持部と前記固定部との間に伸縮可能に掛け渡された伸縮ジャッキと、を備えているものが好ましい。このような構成によれば、簡素で安価な機構で橋体を移動させることができる。
本発明のリフトアップ式桟橋においては、前記固定部と前記伸縮ジャッキは、前記移動支持部を挟んで前記取付道路側と前記ダム堤体側の両側に配置されているものが好ましい。このような構成によれば、重量の大きい橋体を容易に移動させることができる。
本発明のリフトアップ式桟橋においては、前記橋体の基端部に、前記取付道路に向かって延出する基端側スロープ架台が回動可能に設けられているものが好ましい。このような構成によれば、車両がスムーズに走行できる。
本発明のリフトアップ式桟橋においては、前記橋体の先端部に、前記頂面に向かって延出する先端側スロープ架台が回動可能に設けられているものが好ましい。このような構成によれば、車両がスムーズに走行できる。
【0007】
また、前記課題を解決するための第二の本発明は、リフトアップ式桟橋の前記移動手段によって前記橋体を前記ダム堤体側に移動させるリフトアップ式桟橋の移動方法であって、
前記固定部を反力受けとして前記伸縮ジャッキを作動させて前記移動支持部を移動させる、ことを特徴とする。
本発明のリフトアップ式桟橋の移動方法によれば、ダム堤体の傾斜面に対向してリフトアップ式桟橋を設置できるとともに、容易な手順で確実に橋体を移動することができる。
【0008】
また、前記課題を解決するための第三の本発明は、リフトアップ式桟橋の前記移動手段によって前記橋体を前記ダム堤体側に移動させるリフトアップ式桟橋の移動方法であって、前記移動支持部よりも前記ダム堤体側の前記固定部の固定状態を解除する前方解除工程と、前記取付道路側の前記伸縮ジャッキおよび前記ダム堤体側の前記伸縮ジャッキを伸長させて前記移動支持部および前記ダム堤体側の前記固定部を前記ダム堤体側の前方に押し出す伸長工程と、前記ダム堤体側の前記固定部を前記ガイドレールに固定する前方固定工程と、前記取付道路側の前記固定部の固定状態を解除する後方解除工程と、前記取付道路側の前記伸縮ジャッキおよび前記ダム堤体側の前記伸縮ジャッキを縮退させて前記移動支持部および前記取付道路側の前記固定部を前記ダム堤体側の前方に引き寄せる縮退工程と、前記取付道路側の前記固定部を前記ガイドレールに固定する後方固定工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明のリフトアップ式桟橋の移動方法によれば、ダム堤体の傾斜面に対向してリフトアップ式桟橋を設置できるとともに、容易な手順で確実に橋体を移動することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリフトアップ式桟橋およびその移動方法によれば、ダム堤体の傾斜面に対向して設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋を示した図であって、(a)はリフトアップ式桟橋が低位置にある場合を示した側面図、(b)はリフトアップ式桟橋が中位置にある場合を示した側面図、(c)はリフトアップ式桟橋が高位置にある場合を示した側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の橋体の基端部と移動手段を示した図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の橋体と先端側スロープ架台を示した側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の移動手段および移動方法を説明するための図であって、(a)は固定状態を示した側面図、(b)は伸長工程を示した側面図、(c)は縮退工程を示した側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の昇降手段を示した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の昇降手段と橋体を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋および移動方法について、添付した図面を参照しながら説明する。本実施形態では、重力式コンクリートダムの下流面に対向してリフトアップ式桟橋を設置した場合を例に挙げて説明する。
図1は本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋を示した側面図、
図2は本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の橋体の基端部と移動手段を示した平面図および側面図、
図3はリフトアップ式桟橋の橋体と先端側スロープ架台を示した側面図、
図4はリフトアップ式桟橋の移動手段を示した側面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るリフトアップ式桟橋1は、造成に伴い上昇するダム堤体2の頂面3と取付道路4とを接続するものである。ダム堤体2は、重力式コンクリートダムの堤体である。重力式コンクリートダムは、ダムの自重で水を支えるものであり、下部から所定高さで順次コンクリートが打設されて建造される。ダム堤体2の頂面3は、造成に伴って徐々に高くなっていく。重力式コンクリートダムは、下方に向かうに従って厚さが漸増する断面形状となっている。ダム堤体2の上流面(貯水に接する面)は、底面から略鉛直に立ち上がり、ダム堤体2の下流面は、上流面よりも緩やかな勾配で傾斜する傾斜面となっている。
取付道路4は、図示しない生コン製造プラント(コンクリートの混練設備)からダム施工位置の下流側に至る工事用道路であり、コンクリートを運搬する車両等が通行する。
【0013】
リフトアップ式桟橋1は、橋体10の鉛直方向の移動のみならず、橋体10の橋軸方向の移動も可能とするものである。リフトアップ式桟橋1は、橋体10と、移動手段30と、昇降手段50と、を備えている。橋体10は、取付道路4からダム堤体2の頂面3に向かって延設されている。本実施形態では、橋体10の取付道路4側の端部を「基端部」とし、ダム堤体2側の端部を「先端部」とする。橋体10は、例えばトラス構造にて形成されており、トラス11と走行路12とを備えている。走行路12は、トラス11の内側に設けられ、鋼板等を敷設することで形成されている。橋体10の基端部は、移動手段30に回動可能に支持されている。すなわち、橋体10は、その基端部を中心にして上下方向に回動可能である。橋体10の途中部分(本実施形態では先端部近傍)は、昇降手段50に昇降可能に支持されている。橋体10と移動手段30との取り合い、および橋体10と昇降手段50との取り合いは後記する。
【0014】
橋体10の基端部には、基端側スロープ架台13が設けられている。基端側スロープ架台13は、
図2に示すように、路面部14と引上げジャッキ15とを備えている。路面部14は、橋体10の基端部から取付道路4に向かって延出する板状の部材であって、例えば鋼板にて構成されている。路面部14は、走行路12の基端部にピン16を介して接続されており、ピン16を中心軸として上下方向に回動可能である。引上げジャッキ15は、路面部14を回動させる部材である。引上げジャッキ15は、トラス11の上端基端部から後方に張り出す片持ち梁17の先端部と、路面部14の側面の途中部分との間に掛け渡されている。引上げジャッキ15を縮退させると路面部14が引き上げられ、伸長させると路面部14が下がって取付道路4に摺りつけられる。引上げジャッキ15の伸縮量は、路面部14の勾配が一定になるように設定されている。
【0015】
図3に示すように、橋体10の先端部には、先端側スロープ架台18が設けられている。先端側スロープ架台18は、
図2に示すように、路面部19と引上げ用ウインチ20とを備えている。路面部19は、橋体10の先端部からダム堤体2の頂面3に向かって延出する部材であって、例えば鋼板にて構成されている。路面部19は、走行路12の先端部にピン21を介して接続されており、ピン21を中心軸として、上下方向に回動可能である。引上げ用ウインチ20は、路面部19を上方に回動させて引き上げる際に使用される。引上げ用ウインチ20は、橋体10のトラス11の上部に設置されている。引上げ用ウインチ20から延びるワイヤ22は、路面部19に立設された引上げ用ポスト23の上端に接続されている。引上げ用ウインチ20でワイヤ22を巻き取ると、路面部19がピン21を中心に上方に回動する。ワイヤ22の巻上量は、路面部19の重心がピン21よりも基端側に移動しないように設定されている。引上げ用ウインチ20でワイヤ22を送り出すと、路面部19がピン21を中心に下方に回動する。ワイヤ22は、路面部19の先端が頂面3に当接するまで送り出される。なお、路面部19を引き上げる機構は、引上げ用ウインチ20に限定されるものではなく、伸縮ジャッキ等の他の機構であってもよい。
【0016】
移動手段30は、橋体10を橋軸方向に移動させるものであり、橋体10の基端部に設置されている。
図2に示すように、移動手段30は、橋体10の幅方向両側にそれぞれ設けられている。
図4にも示すように、移動手段30は、ガイドレール31と、移動装置32と、を備えている。ガイドレール31は、移動装置32および橋体10の移動をガイドするものであって、取付道路4に敷設されている。ガイドレール31は、例えばH型鋼にて構成されており、取付道路4から橋体10の橋軸方向に延在している。
【0017】
移動装置32は、橋体10をガイドレール31に沿って移動させるものであり、ガイドレール31の上フランジの上に設置されている。移動装置32は、移動支持部33と、固定部34と、伸縮ジャッキ35と、を備えている。移動支持部33は、橋体10の基端部を回動可能に支持しており、かつ、ガイドレール31に沿って移動可能である。移動支持部33は、下側にローラ(図示せず)を備え、ローラがガイドレール31上を転動することで移動支持部33が移動する。移動支持部33の上部には、橋体10の脚部を回動可能に支持するピン36が設けられている。橋体10は、ダム堤体2側の途中部分が上昇すると、ピン36を中心に上向きに回動する。
【0018】
固定部34は、ガイドレール31に固定される部位であり、伸縮ジャッキ35のロッドの先端に取り付けられている。本実施形態では、固定部34は、ガイドレール31の上フランジを挟持することで、ガイドレール31を把持する。固定部34は、ガイドレール31に対して着脱可能である。移動支持部33を移動させる場合(すなわち、伸縮ジャッキ35を伸縮させる場合)、一対の固定部34,34のうちの一方は、ガイドレール31に固定し、伸縮ジャッキ35の反力受けとする。他方の固定部34は、ガイドレール31への固定を解除することで、ガイドレール31に沿って移動可能な状態とする。
伸縮ジャッキ35は、移動支持部33と固定部34とを互いに近接離間させる力を発生するものであり、移動支持部33と固定部34との間に伸縮可能に掛け渡されている。伸縮ジャッキ35は、ガイドレール31の長手方向に沿って延在するように配置されている。伸縮ジャッキ35が伸長すると、移動支持部33と固定部34とが互いに離間し、伸縮ジャッキ35が縮退すると、移動支持部33と固定部34とが互いに近接する。
本実施形態では、固定部34と伸縮ジャッキ35は、移動支持部33の前後両側(取付道路4側とダム堤体2側)にそれぞれ配置されている。橋体10を固定する際には、両方の固定部34,34でガイドレール31を把持することで、固定部34,34をガイドレール31に固定する(
図4の(a)参照)。
【0019】
以下に、前記構成の移動手段30により橋体10をダム堤体2側に移動させるリフトアップ式桟橋の移動方法を説明する。本実施形態のリフトアップ式桟橋の移動方法は、前方解除工程と、伸長工程と、前方固定工程と、後方解除工程と、縮退工程と、後方固定工程と、を備えている。
前方解除工程は、前側(移動支持部33よりもダム堤体2側)の固定部34の固定状態(把持状態:ガイドレール31を把持してガイドレール31に固定された状態)を解除する工程である。前方解除工程では、
図4の(a)の状態から前方(ダム堤体2側)の固定部34の固定状態のみが解除され、後方(取付道路4側)の固定部34の固定状態は維持されている。
【0020】
伸長工程は、後方の伸縮ジャッキ35および前方の伸縮ジャッキ35を伸長させる工程である。伸長工程では、
図4の(b)に示すように、後方の固定部34を伸縮ジャッキ35の反力受けとして、両方の伸縮ジャッキ35を同じ長さ伸長させる。これにより、移動支持部33は、後方の伸縮ジャッキ35のストロークの長さ分、前方に押し出され、前方の固定部34は、後方の伸縮ジャッキ35のストロークと前方の伸縮ジャッキ35のストロークを合わせた長さ分、前方に押し出される。
前方固定工程は、前方の固定部34をガイドレール31に固定する工程である。前方固定工程では、前後の固定部34がガイドレール31を把持した状態となり、移動支持部33が一旦固定される。
【0021】
後方解除工程は、後方の固定部34の固定状態を解除する工程である。後方解除工程では、後方の固定部34の固定状態のみが解除され、前方の固定部34の固定状態は維持されている。
縮退工程は、後方の伸縮ジャッキ35および前方の伸縮ジャッキ35を縮退させる工程である。縮退工程では、
図4の(c)に示すように、前方の固定部34を伸縮ジャッキ35の反力受けとして、両方の伸縮ジャッキ35を同じ長さ縮退させる。これにより、移動支持部33は、前方の伸縮ジャッキ35のストロークの長さ分、前方に引き寄せられ、後方の固定部34は、後方の伸縮ジャッキ35のストロークと前方の伸縮ジャッキ35のストロークを合わせた長さ分、前方に引き寄せられる。これにより、移動支持部33と前後一対の固定部34は、移動前の状態から前後一対の伸縮ジャッキ35のストロークを合わせた長さ分、前方に移動することとなる。
後方固定工程は、後方の固定部34をガイドレール31に固定する工程である。後方固定工程では、前後の固定部34がガイドレール31を把持した状態となり、移動支持部33がガイドレール31に固定され、橋体10の移動が完了する。
【0022】
図5は本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の昇降手段を示した斜視図、
図6は本発明の実施形態に係るリフトアップ式桟橋の昇降手段と橋体を示した正面図である。
昇降手段50は、橋体10の途中部分を昇降可能に支持する部位である。昇降手段50により橋体10の途中部分(本実施形態では先端部近傍)を昇降させることで、橋体10がピン36を中心軸として上下に回動し、先端部が上下移動する。
図5および
図6に示すように、昇降手段50は、門型支柱51と、橋体支持フレーム52と、昇降装置53とを備えている。
門型支柱51は、橋体10を幅方向両側から挟むように配置されており、橋体10の幅方向外側に、柱体54が二本ずつ立設されている。二本の柱体54,54は、橋体10の橋軸方向に間隔をあけて配置されている。二本の柱体54,54の間には、後記する伸縮ジャッキ62が配置される。柱体54には、ピン孔55が形成されている。ピン孔55は、後記する昇降装置53の固定ピン64が挿入される穴であって、橋体10の幅方向に沿って、内側から外側に向かって延在している。ピン孔55は、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0023】
橋体支持フレーム52は、橋体10を支持する部位である。橋体支持フレーム52は、橋体10の途中部分を下側から支持しており、橋体10を支持した状態で昇降する。また、橋体支持フレーム52は、橋体10を、橋軸方向(長手方向)に移動可能に支持する。橋体支持フレーム52は、受梁57と、支持ローラ58とを備えている。受梁57は、橋体10の幅方向に沿って延在し、両側の柱体54間に掛け渡されている。受梁57の両端部は、後記する昇降装置53の下部プレート60にそれぞれ固定されている。受梁57の下部には、渡り廊下(図示せず)が設けられており、作業員が幅方向に対向する柱体54,54間を移動できるようになっている。支持ローラ58は、橋体10を橋軸方向に移動可能に支持するためのもので、受梁57の上で、幅方向両側にそれぞれ設けられている。支持ローラ58の上に橋体10の底部が載置されている(
図6参照)。
【0024】
昇降装置53は、橋体支持フレーム52を昇降させる装置である。昇降装置53は、下部プレート60と、上部プレート61と、伸縮ジャッキ62とを備えた尺取虫方式のものである。
下部プレート60は、前後に並ぶ柱体54,54の内側面にそれぞれ固定される板材であって、例えば鋼板にて構成されている。下部プレート60の外側には、作業足場63が一体的に固定されている。橋体10の幅方向に対向する下部プレート60,60には、橋体支持フレーム52が掛け渡されている。下部プレート60は、柱体54のピン孔55に相当する位置に形成されたピン挿通孔66(
図6参照)を備えている。そして、作業足場63側から、柱体54のピン孔55およびピン挿通孔66に固定ピン(かんざしピン)64を挿通することで、下部プレート60および作業足場63が柱体54に固定される。
【0025】
上部プレート61は、前後に並ぶ柱体54,54の内側面で、下部プレート60の上方の位置にそれぞれ固定される板材であって、例えば鋼板にて構成されている。上部プレート61および下部プレート60は、伸縮ジャッキ62の上端部および下端部がそれぞれ固定される。上部プレート61の外側には、作業足場63が一体的に固定されている。上部プレート61は、柱体54のピン孔55に相当する位置に形成されたピン挿通孔66(
図6参照)を備えている。そして、作業足場63側から、柱体54のピン孔55およびピン挿通孔67に固定ピン64を挿通することで、上部プレート61および作業足場63が柱体54に固定される。橋体支持フレーム52の高さ位置が固定された通常時では、上部プレート61は、下部プレート60が固定されたピン孔55の2つ上のピン孔55の高さ位置に固定されている。
【0026】
伸縮ジャッキ62は、橋体支持フレーム52を昇降させるためのものであって、油圧ジャッキにて構成されている。伸縮ジャッキ62の油圧装置65は、橋体支持フレーム52の受梁57の下部に固定されている。伸縮ジャッキ62は、上下方向に延在し、下部プレート60と上部プレート61との間に掛け渡されている。伸縮ジャッキ62を伸縮させると、下部プレート60と上部プレート61との離間距離が変動する。伸縮ジャッキ62は、橋体10の橋軸方向に間隔をあけて配置された柱体54,54の間に配置されている。
【0027】
以下に、前記構成の昇降手段50により橋体10を上昇させる昇降方法を説明する。橋体10を昇降させる昇降方法は、上方固定解除工程と、伸長工程と、上方固定工程と、下方固定解除工程と、縮退工程と、下方固定工程と、を備えている。
上方固定解除工程は、柱体54,54に対する上部プレート61の固定状態を解除する工程である。上方固定解除工程では、作業足場63側から固定ピン64を抜き取る。これにより、上部プレート61の固定が解除され、上部プレート61および作業足場63が柱体54に対して昇降可能となる。
伸長工程は、伸縮ジャッキ62を伸長させる工程である。伸長工程では、伸縮ジャッキ62を伸長させて、上部プレート61および作業足場63を上昇させる。伸縮ジャッキ62の伸長長さは、上下に隣り合うピン孔55,55間の長さとする。これにより、上部プレート61および作業足場63は、一つ上のピン孔55の高さ位置まで上昇する。
【0028】
上方固定工程は、上昇した上部プレート61を柱体54に固定する工程である。上方固定工程では、作業足場63側から柱体54のピン孔55およびピン挿通孔67に固定ピン64を挿通する。これにより、上部プレート61が柱体54に固定される。
下方固定解除工程は、柱体54,54に対する下部プレート60の固定状態を解除する工程である。下方固定解除工程では、作業足場63側から固定ピン64を抜き取る。これにより、下部プレート60の固定が解除され、下部プレート60および作業足場63が柱体54に対して昇降可能となる。
縮退工程は、伸縮ジャッキ62を縮退させる工程である。縮退工程では、伸縮ジャッキ62を縮退させることで、下部プレート60および作業足場63を上昇させる。伸縮ジャッキ62の縮退長さは、上下に隣り合うピン孔55,55間の長さとし、伸縮ジャッキ62を伸長前の状態に戻す。これにより、下部プレート60、作業足場63および橋体支持フレーム52は、一つ上のピン孔55の高さ位置まで上昇する。
【0029】
下方固定工程は、上昇した下部プレート60を柱体54に固定する工程である。下部固定工程では、作業足場63側から柱体54のピン孔55およびピン挿通孔67に固定ピン64を挿通する。これにより、下部プレート60が柱体54に固定される。以上の工程により、橋体10の上昇が完了する。
【0030】
次に、本実施形態のリフトアップ式桟橋1およびその移動方法の作用効果を説明する。本実施形態のリフトアップ式桟橋1によれば、昇降手段50で橋体10の先端部を上昇させるとともに、移動手段30で橋体10をダム堤体2側に移動させることで、橋体10の先端部がダム堤体2の下流側の傾斜面に沿って上昇する。すなわち、リフトアップ式桟橋1によれば、ダム堤体2の上昇に伴って昇降手段50からダム堤体2の頂面3までの距離が大きくなっても、橋体10を頂面3まで延出させることができる。これによって、ダム堤体2の傾斜面(下流面)に対向する位置にリフトアップ式桟橋1を設置することができる。したがって、生コン製造プラントを重力式コンクリートダムの施工位置の下流側に設置した場合でも、ダム施工位置を迂回するような生コン運搬ルート(生コン運搬車両の移動経路)を確保する必要は無く、生コン製造プラントから最短経路で供給できるので、取付道路4の造成費用の増加や運搬効率の低下を抑制することができる。
【0031】
また、移動手段30は、ガイドレール31と、移動装置32と、を備えており、移動装置32は、移動支持部33と、固定部34と、伸縮ジャッキ35と、を備えているので、簡素で安価な機構で橋体10を移動させることができる。特に、本実施形態の移動手段30は、固定部34と伸縮ジャッキ35が、移動支持部33を挟んで移動方向の両側に配置されているので、二本の伸縮ジャッキ35で移動支持部33を移動させることができる。よって、重量の大きい橋体10を容易に移動させることができる。さらに、一度の移動工程で、橋体10を、伸縮ジャッキ32のストロークの2倍分の距離移動させることができる。
【0032】
橋体10の基端部に、基端側スロープ架台13が設けられているので、路面部14を取付道路4に摺りつけることができる。これによって、橋体10の傾斜角度に関わらず、走行路12と取付道路4とを段差なく接続することができるので、車両がスムーズに走行できる。
橋体10の先端部に、先端側スロープ架台18が設けられているので、路面部19をダム堤体2の頂面3に摺りつけることができる。これによって、橋体10の傾斜角度に関わらず、走行路12と頂面3とを段差なく接続することができるので、車両がスムーズに走行できる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、移動手段30の固定部34と伸縮ジャッキ35が、移動支持部33を挟んで移動方向の両側に配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、固定部と伸縮ジャッキが、移動支持部よりもダム堤体側の一方に配置されていてもよい。この場合、リフトアップ式桟橋の移動方法は、解除工程と、伸長工程と、固定工程と、縮退工程と、を備える。
解除工程は、移動支持部よりもダム堤体側に配置された固定部の固定状態を解除する固定である。解除工程で、固定部のガイドレールの固定状態を解除することで、固定部がガイドレールに沿って移動可能となる。
伸長工程は、伸縮ジャッキを伸長させる固定である。伸長工程では、伸縮ジャッキを伸長することで、固定部がダム堤体側に移動する。
【0034】
固定工程は、前方に移動した固定部をガイドレールに固定する工程である。固定工程では、固定部がガイドレールを把持する。
縮退工程は、伸縮ジャッキを縮退させる工程である。縮退工程では、固定部を伸縮ジャッキの反力受けとし、伸縮ジャッキを縮退することで、移動支持部が前方の固定部側に引き寄せられ、移動支持部が前方に移動する。以上の工程により、橋体の横方向への移動が完了する。
以上のような構成のリフトアップ式桟橋およびその移動方法によれば、橋体の重量が比較的小さい場合に、移動手段を簡素な形状とすることができるので、前記実施形態と比較して、施工費用の低減を達成できる。
【0035】
なお、固定部と伸縮ジャッキは、移動支持部よりも取付道路側の一方に配置されていてもよい。この場合は、リフトアップ式桟橋の移動方法は、伸長工程と、解除工程と、縮退工程と、固定工程と、を備える。
伸長工程は、伸縮ジャッキを伸長させる工程である。伸長工程では、固定部を伸縮ジャッキの反力受けとし、伸縮ジャッキを伸長することで、移動支持部がダム堤体側に押し出され、移動支持部が前方に移動する。
解除工程は、移動支持部よりも後方(取付道路側)に配置された固定部の固定状態を解除する固定である。解除工程で、固定部のガイドレールの固定状態を解除することで、固定部がガイドレールに沿って移動可能となる。
縮退工程は、伸縮ジャッキを縮退させる固定である。縮退工程では、伸縮ジャッキを縮退することで、移動支持部側に引き寄せられ、前方に移動する。
固定工程は、前方に移動した固定部をガイドレールに固定する工程である。固定工程では、固定部がガイドレールを把持する。以上の工程により、橋体の横方向への移動が完了する。
以上のような構成のリフトアップ式桟橋およびその移動方法によっても、橋体の重量が比較的小さい場合に、移動手段を簡素な形状とすることができるので、前記実施形態と比較して、施工費用の低減を達成できる。
【符号の説明】
【0036】
1 リフトアップ式桟橋
2 ダム堤体
3 頂面
4 取付道路
10 橋体
13 基端側スロープ架台
18 先端側スロープ架台
30 移動手段
31 ガイドレール
32 移動装置
33 移動支持部
34 固定部
35 伸縮ジャッキ
50 昇降手段