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特開2024-151897画像編集システム、及び画像編集プログラム
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  • 特開-画像編集システム、及び画像編集プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151897
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】画像編集システム、及び画像編集プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G06T1/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065692
(22)【出願日】2023-04-13
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 宏
(72)【発明者】
【氏名】千北 茉瑚
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057BA23
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE11
5B057CE17
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC25
(57)【要約】
【課題】感覚的な操作で画像データを簡単に編集することができる画像編集システム、及び画像編集プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】画像編集システム1は、編集対象の元画像である第1画像を受信すると、色味を表す単語に関連付けた特徴パラメータの変化量についてユーザー毎の調整を行う。特徴パラメータの調整は、数パターンのサンプル画像からユーザーが選択したサンプル画像の特徴パラメータを基準値として変化量を演算して、該変化量からなる固有特徴パラメータをユーザー毎に単語と対応付けて登録する。そして、固有特徴パラメータを第1画像に適用して編集画像としての第2画像を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像を受信する第1画像受信部と、
色調整のための複数の特徴パラメータが対応付けられた所定の単語が登録された単語記憶部と、
前記単語に対応するそれぞれの前記特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するサンプル画像生成部と、
前記所定の画像を基準に、ユーザにより選択された任意の一の前記サンプル画像に適用された前記特徴パラメータの変化量を演算する変化量演算部と、
ユーザー毎に、前記変化量演算部で演算した変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを前記単語に関連付けて登録する固有特徴パラメータ記憶部と、
前記第1画像に、前記固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成する第2画像生成部と、を備える
画像編集システム。
【請求項2】
画像を表示する画像表示部、それぞれ表示された前記単語が異なり押下可能な複数の単語表示部を含む表示部を有し、
押下された前記単語表示部に表示された前記単語に関連付けられた前記固有特徴パラメータが前記変化量で変化し、変化後の前記固有特徴パラメータを前記第1画像に適用した画像を前記画像表示部に表示する
請求項1に記載の画像編集システム。
【請求項3】
前記変化量演算部で演算される前記変化量は、直前に選択された前記サンプル画像を基準画像とする近傍探索により複数回繰り返し演算した平均値または中央値である
請求項1または請求項2に記載の画像編集システム。
【請求項4】
前記単語は、擬態語、擬音語、形容詞、動詞及び名詞を含む
請求項1または請求項2に記載の画像編集システム。
【請求項5】
前記特徴パラメータは彩度、明度、コントラストを含む
請求項1または請求項2に記載の画像編集システム。
【請求項6】
前記サンプル画像生成部で生成される前記サンプル画像に適用された前記特徴パラメータは、他のユーザーの前記固有特徴パラメータに基づいて制御される
請求項1または請求項2に記載の画像編集システム。
【請求項7】
前記単語記憶部には、任意に選択された新規の単語をユーザー情報と関連付けて追加登録できる
請求項1または請求項2に記載の画像編集システム。
【請求項8】
第1画像を受信するステップと、
所定の単語について対応付けられた色調整のための複数の特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するステップと、
前記所定の画像を基準に、ユーザにより選択された任意の一の前記サンプル画像に適用された前記特徴パラメータの変化量を演算するステップと、
ユーザー毎に、前記変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを前記単語に関連付けるステップと、
前記第1画像に、前記固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成するステップと、をコンピュータに実行させるための
画像編集プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像編集システム、及び画像編集プログラムに関する。詳しくは、感覚的な操作で画像データを簡単に編集することができる画像編集システム、及び画像編集プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の画像編集ソフトの普及により、これら画像編集ソフトを用いてユーザーが自ら画像データの編集を行う機会が増加している。一般的に画像編集ソフトで提供される画像処理パラメータは、色味を編集するものにおいても例えば色相、彩度、明るさ、コントラスト等の多岐にわたる。そしてユーザーは、自身が思い描いた色味となるように、これら画像処理パラメータの数値を操作して画像データの編集作業を行う。
【0003】
しかしながら、前記した画像編集ソフトをある程度のレベルで使いこなすには、色彩やツールの使用方法に関する予備知識が必要であり、特にツールの操作に不慣れな初心者にとっては、自身が思い描いたイメージ通りの色味を出すように各画像処理パラメータの数値を操作して画像編集を行うことは容易ではない。このような問題を解決するためには、ユーザーが画像処理パラメータを直接操作するのではなく、ユーザーが感覚的に変化量を表現できる仕組みを画像編集に導入することが効果的であると考えられる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、色味を表す単語を選択し、その単語に対応した色彩データを元画像に適用することで画像データを編集する画像編集システムが開示されている。具体的には、「綺麗に」、「やさしく」、「鮮やかに」、「スマートに」、「明るめに」、「奇抜に」といった色味を表す抽象的な単語と、各単語に応じて調整された色彩データとが対応付けてデータベースに登録されている。そしてユーザーは、データベースから自身が思い描くイメージに近い単語を選択すると、自動的にその単語に対応した色彩データが適用されて画像編集ができるため、ユーザーは複雑な編集操作を行うことなく画像データを編集することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-6979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、前記特許文献1に係る画像編集システムでは、各単語に対する色彩データは一義的に決められている。ここで、例えば「鮮やか」や「明るめに」といった単語から思い描く感覚は各ユーザーによりそれぞれ異なるものであるが、前記特許文献1のように、各単語と色彩データが一義的に決められたものである場合、選択した単語に基づいて編集した画像の出力結果とユーザーの感覚との間にはズレが生じる虞があり、必ずしもユーザーが思い描いた編集結果とはならない可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり感覚的な操作で画像データを簡単に編集することができる画像編集システム、及び画像編集プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の画像編集システムは、第1画像を受信する第1画像受信部と、色調整のための複数の特徴パラメータが対応付けられた所定の単語が登録された単語記憶部と、前記単語に対応するそれぞれの前記特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するサンプル画像生成部と、ユーザーにより選択された任意の一の前記サンプル画像を基準に前記特徴パラメータの変化量を演算する変化量演算部と、ユーザー毎に、前記変化量演算部で演算した変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを前記単語に関連付けて登録する固有特徴パラメータ記憶部と、前記第1画像に、前記固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成する第2画像生成部とを備える。
【0009】
ここで、第1画像を受信する第1画像受信部を備えることにより、画像編集の元画像となる第1画像を受信し、画像編集に供することができる。
【0010】
また、色調整のための複数の特徴パラメータが対応付けられた所定の単語が登録された単語記憶部を備えることにより、例えば色味を直観的に把握しやすい単語と、その単語に関連した色調整のための特徴パラメータを関連付けてデータベース化することができる。そして、後記する通り、このデータベースを利用して、ユーザーの感覚に応じて単語に対応する色調整のための特徴パラメータを調整することができる。
【0011】
また、単語に対応するそれぞれの特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するサンプル画像生成部を備えることにより、単語に対応する色調整のための特徴パラメータを所定の画像に適用したサンプル画像を複数生成し、ユーザーは生成されたサンプル画像から自身の感覚に近い任意の画像を選択することで、ユーザーの感覚により近い画像に基づいて特徴パラメータの調整を行うことができる。
【0012】
また、所定の画像を基準に、ユーザにより選択された任意の一のサンプル画像に適用された特徴パラメータの変化量を演算する変化量演算部を備えることにより、任意の一のサンプル画像に適用された特徴パラメータについて、所定の画像の特徴パラメータからの変化量をユーザの感覚に応じて調整することができる。
【0013】
また、ユーザー毎に、変化量演算部で演算した変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを単語に関連付けて登録する固有特徴パラメータ記憶部を備えることにより、サンプル画像に基づいて、ユーザー毎に調整した特徴パラメータである固有特徴パラメータを単語と対応付けてデータベース化することができる。
【0014】
また、第1画像に固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成する第2画像生成部を備えることにより、画像編集の元画像となる第1画像に、ユーザー毎の特徴パラメータである固有特徴パラメータを適用することで、ユーザーの感覚に合致した編集画像である第2画像を生成することができる。
【0015】
また、画像を表示する画像表示部、それぞれ表示された単語が異なり押下可能な複数の単語表示部を含む表示部を有することで、編集対象となる第1画像を画像表示部に、色味の状態を表す複数の擬態語等を単語表示部にそれぞれ表示して、ユーザーが感覚的に簡単に操作可能なユーザーインターフェースを実現することができる。
【0016】
また、単語表示部を押下することで、押下された単語表示部に表示された単語に関連付けられた固有特徴パラメータが所定の変化量で変化し、変化後の固有特徴パラメータを第1画像に適用した画像を画像表示部に表示する場合には、単語表示部を押下する度に、画像表示部に表示された第1画像の色味が変化するため、ユーザーは複雑な操作をすることなく、色味の変化を確認しながら画像編集することができる。
【0017】
また、変化量演算部で演算される変化量は、ユーザーが選択したサンプル画像(2回以上の繰り返しの場合には、ユーザーが直前に選択したサンプル画像)を基準画像とする近傍探索により複数回繰り返し演算した平均値または中央値である場合には、近傍探索を複数回繰り返すことで、演算負荷を少なくし、ユーザーの感覚により近い変化量で変化する特徴パラメータを得ることができる。
【0018】
また、単語は、擬態語、擬音語、形容詞、動詞、及び名詞を含む場合には、「きらきら」、「ぴかぴか」、「さらさら」、「こんがり」、「どんより」といった擬態語をはじめとして、色味を表現するあらゆる単語を使用することができる。そして、ユーザーは、これら単語から好みの単語を選択することで、ユーザーの感覚に近い画像編集を実現することができる。
【0019】
また、特徴パラメータは彩度、明度、コントラストを含む場合には、これらパラメータを適宜調整することで、ユーザーの感覚に合致した色味を表現することができる。
【0020】
また、サンプル画像生成部で生成されるサンプル画像に適用された特徴パラメータは、他のユーザーの固有特徴パラメータに基づいて制御される場合には、予め準備された既存の特徴パラメータだけではなく、過去の他のユーザーが行った調整結果に基づいて制御された特徴パラメータを適用することで、より汎用性を高めることができる。
【0021】
また、単語記憶部には、任意に選択された新規の単語をユーザー情報と関連付けて追加登録できる場合には、色味を表す単語として、予め準備された既存の単語だけでなく、ユーザー毎にオリジナルな単語を登録することができるため、画像編集の自由度を高めることができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の画像編集プログラムは、第1画像を受信するステップと、所定の単語について対応付けられた色調整のための複数の特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するステップと、ユーザーにより選択された任意の一の前記サンプル画像を基準に前記特徴パラメータの変化量を演算するステップと、ユーザー毎に、前記変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを前記単語に関連付けるステップと、前記第1画像に、前記固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0023】
ここで、第1画像を受信するステップを備えることにより、画像編集の元画像となる第1画像を受信し、画像編集に供することができる。
【0024】
また、所定の単語について対応付けられた色調整のための複数の特徴パラメータを所定の画像に適用して複数のサンプル画像を生成するステップを備えることにより、単語に対応する色調整のための特徴パラメータを所定の画像に適用したサンプル画像を複数生成し、ユーザーは生成されたサンプル画像から自身の感覚に近い任意の画像を選択することで、ユーザーの感覚により近い画像に基づいて特徴パラメータの調整を行うことができる。
【0025】
また、所定の画像を基準に、ユーザにより選択された任意の一のサンプル画像に適用された特徴パラメータの変化量を演算するステップを備えることにより、任意の一のサンプル画像に適用された特徴パラメータについて、所定の画像の特徴パラメータからの変化量をユーザの感覚に応じて調整することができる。
【0026】
また、ユーザー毎の変化量からなる特徴パラメータとしての固有特徴パラメータを単語に関連付けるステップを備えることにより、サンプル画像に基づいてユーザー毎に調整した特徴パラメータである固有特徴パラメータを単語と対応付けることができる。
【0027】
また、第1画像に、固有特徴パラメータを適用して第2画像を生成するステップを備えることにより、画像編集の元画像となる第1画像に、ユーザー毎の特徴パラメータである固有特徴パラメータを適用することで、ユーザーの感覚に合致した編集画像である第2画像を生成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る画像編集システム、及び画像編集プログラムは、感覚的な操作で画像データを簡単に編集することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る画像編集システムとユーザー端末とがインターネット回線を介して接続された状態を示す図である。
図2】画像編集システムの内部構成を示すブロック図である。
図3】画像編集システムで実行される画像編集の流れを示すイメージ図である。
図4】各単語に対応付けられた特徴パラメータの例を示す図である。
図5】サンプル画像生成部で生成されたサンプル画像の例を示す図である。
図6】画像編集のためのユーザーインターフェースの例を示す図である。
図7】画像編集プログラムの代表的なフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、画像編集システム、及び画像編集プログラムに関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0031】
まず、本発明の実施形態に係る画像編集システム1を含むネットワーク構成全体の概略について図1を用いて説明する。本発明の実施形態に係る画像編集システム1は、画像編集プログラムを動作させるためのコンピュータであり、インターネット回線2を介してユーザー端末3との間で互いに通信可能に接続されている。
【0032】
ここで、必ずしも、画像編集システム1とユーザー端末3とはインターネット回線2を介して互いに接続されている必要はなく、いかなる通信手段により接続されていてもよい。さらにユーザー端末3に画像編集プログラムをインストールすることで、インターネット回線2を介することなく、ユーザー端末3にて画像編集プログラムを実行することも可能である。
【0033】
また、ユーザー端末3は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末、タブレット型端末等であれば画像編集プログラムが実行可能であり、端末装置として特定の端末に限定されるものではない。
【0034】
図2は、画像編集システムの内部構造を示すブロック図である。画像編集システム1は、外部端末から送信された編集前の元画像(第1画像)を受信する第1画像受信部10、各種のデータが記憶されたデータベース(DB)20、後記するサンプル画像を生成するサンプル画像生成部30、ユーザー毎に設定される色味を表現するためのパラメータ(特徴パラメータ)の変化量を演算する変化量演算部40、編集画像(第2画像)を生成する第2画像生成部50、から主に構成されている。
【0035】
そして、以上の構成からなる画像編集システム1で実行される画像編集プログラムでは、図3に示すように、大きくチューニングフェーズと利用フェーズとに分かれており、チューニングフェーズでは彩度、明度、コントラストからなる特徴パラメータの変化量をユーザー別に調整し、利用フェーズでは調整した特徴パラメータ(固有特徴パラメータ)を編集対象となる画像に適用して画像編集が実行される。以下、画像編集システム1の各構成について詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明の実施形態では、特徴パラメータのうち彩度と明度は、HSV色空間における色の鮮やかさや明るさの指標であり、0~100の値で表される。コントラストは、画像の濃淡の分布幅を示す。本発明の実施形態においては、濃淡の幅が大きくなり、輪郭がはっきりとするコントラスト強調を用いている。
【0037】
[第1画像受信部]
第1画像受信部10は、第1画像を受信する機能を有している。第1画像は、例えばユーザー端末3に保存されているデータのうち、ユーザーが任意に選択した画像が画像編集システム1に送信される。第1画像受信部10で受信した第1画像はデータベース20に一時的に記憶され、画像編集に利用される。
【0038】
[データベース]
データベース20は、OSや、画像編集プログラム等のアプリケーションソフト、各設定データなどが格納される不揮発性メモリであり、単語記憶部201、画像記憶部202、固有特徴パラメータ記憶部203から構成されている。
【0039】
単語記憶部201には、画像編集に際して使用する複数の単語が登録されている。単語は、例えば「きらきら」、「ぴかぴか」、「さらさら」、「こんがり」、「どんより」といった色味を表現する擬態語からなるものであり、本発明の実施形態においては、直接的に色味をイメージできる単語、または間接的に色味をイメージできる単語からそれぞれ任意に15語ずつ選び、30語がイニシャルの単語として登録されている(表1参照)。
【0040】
【表1】
【0041】
そして各単語には、イニシャル設定として特徴パラメータが対応付けられている。具体的には、図4に示すように1単語について彩度、明度、コントラストの各パラメータがランダムに設定された8パターンの特徴パラメータが対応付けられ、単語記憶部201に格納されている。
【0042】
ここで、必ずしも、単語記憶部201に登録されている単語は前記した擬態語に限定されるものではなく、その他の擬態語をはじめとして、擬音語、形容詞、動詞、名詞など、色味を直接的または間接的にイメージできる単語を登録することができる。また、ユーザーは任意に選択した単語を単語記憶部201に追加登録できるようにしてもよい。
【0043】
また、必ずしも、単語記憶部201には、1単語について8パターンの異なる特徴パラメータが対応付けられている必要はなく、1単語に対応付けられる特徴パラメータのパターン数は適宜変更することができる。
【0044】
また、1単語に対応付けられる特徴パラメータは、各単語で異なるパターンを対応付けてもよく、或いは各単語について全て共通のパターンで対応付けられてもよい。さらに他のユーザーによる過去のチューニング結果に基づいて、各単語において、その単語の色味として選択され易い傾向のある特徴パラメータを優先的に適用してもよい。
【0045】
画像記憶部202には、前記した第1画像受信部10で受信した編集対象の元画像である第1画像、或いは画像編集システム1により編集された第2画像について、ユーザー情報と対応付けて記憶される。
【0046】
固有特徴パラメータ記憶部203は、チューニングフェーズにおいて、ユーザー毎に設定した変化量を有する特徴パラメータである固有特徴パラメータをユーザー情報と対応付けて記憶される。
【0047】
ここで、必ずしも、画像記憶部202と固有特徴パラメータ記憶部203とは、それぞれ独立の記憶領域を有している必要はなく、例えばユーザー別の記憶領域を設けておき、当該ユーザー別の記憶領域内に第1画像、第2画像、及び固有特徴パラメータをユーザー情報と対応付けてまとめて登録するようにしてもよい。
【0048】
[サンプル画像生成部]
サンプル画像生成部30は、チューニングフェーズにおいて、ユーザーが選択した単語に対応付けられた特徴パラメータを第1画像に適用した画像を生成する。前記した通り、単語にはランダムに設定された8パターンの特徴パラメータが対応付けられており、これら特徴パラメータが適用された8つの画像がサンプル画像としてユーザー端末3に表示される。ユーザー端末3には、図5に示すように、上段の紙面に向かって左側には選択された単語(図5の例では「きらきら」)、向かって右側に元画像である第1画像が表示され、第1画像の下方に特徴パラメータが適用された8パターンのサンプル画像が上下2段に表示される。
【0049】
ユーザーは、表示されたサンプル画像の中から、単語(「きらきら」)の印象に最も近い任意の一のサンプル画像を選択する。ユーザーにより任意のサンプル画像が選択されると、さらに選択されたサンプル画像に基づいて、新たなサンプル画像が生成される。このサンプル画像の生成と選択を繰り返すことで、後記する変化量演算部40で特徴パラメータの変化量が演算される。
【0050】
ここで、必ずしも、サンプル画像の生成において第1画像を利用する必要はない。チューニングフェーズにおいては、各単語に対するユーザー毎の色合いの変化量を調整できればよいため、第1画像とは異なる専用画像を準備しておき、当該専用画像に対して特徴パラメータを適用してサンプル画像を生成するようにしてもよい。
【0051】
[変化量演算部]
変化量演算部40では、元画像である第1画像に適用される特徴パラメータを初期値とする近傍探索により、各単語の特徴パラメータについて、ユーザーの印象に近い変化量を演算する機能を有している。
【0052】
具体的には、まず、第1画像に適用される特徴パラメータを初期値として、近傍解候補となるサンプル画像が8つ生成される。近傍解候補としては、初期値に対して、例えば特徴パラメータのうち彩度、明度の変化量がランダムに+5、±0、-5され、同じくコントラストの変化量はランダムに+15、±0、-15される。
【0053】
ユーザーは、生成された8つのサンプル画像の中から任意の一のサンプル画像を選択すると、新たな近傍解候補としてのサンプル画像がさらに8つ提示され、再びユーザーは単語の印象に合致するサンプル画像を選択する。これらの一連の操作を各単語に対して5回(5世代分)繰り返した平均値を特徴パラメータの変化量として定義する。
【0054】
ここで、必ずしも、変化量演算部40の演算における統計処理として近傍探索を用いる必要はない。例えば遺伝的アルゴリズム、或いはベイズ統計など、公知の統計処理から適宜選択することができる。なお、発明者らが検討した結果では、近傍探索による統計処理が最も短時間で正確に変化量を演算できるため、本発明の実施形態においては近傍探索による統計処理を採用することが好ましい。
【0055】
また、必ずしも、近傍解候補の生成において、彩度、明度、及びコントラストを前記した変化量で変化させる必要はなく、これら特徴パラメータの変化量は適宜変更することができる。
【0056】
また、必ずしも、近傍探索を5世代分の平均値を変化量と定義する必要はなく、繰り返し演算の回数は適宜変更することができ、また、平均値に代えて中央値を採用してもよい。
【0057】
変化量演算部40において各単語の変化量が演算されると、係る変化量からなる特徴パラメータを固有特徴パラメータとして定義し、前記した通り、ユーザー毎に単語と対応付けて固有特徴パラメータ記憶部203に記憶され、利用フェーズにおける画像編集に利用される。
【0058】
[第2画像生成部]
第2画像生成部50は、チューニングフェーズで定義された固有特徴パラメータを第1画像に適用することで、編集画像である第2画像を生成する機能を有している。そして図6に示すような表示部60に表示されたユーザーインターフェースを通じて、第1画像が編集され第2画像が生成される。
【0059】
表示部60は、例えばユーザー端末3のモニターに表示される操作画面であり、画像を表示する画像表示部601、ユーザーが選択した単語が表示される単語表示部602から構成されている。単語表示部602は、ポインタ、或いはタッチパネルで押下可能となっており、ユーザーは第1画像が画像表示部601に表示された状態で、イメージする色合いとなるように各単語表示部602を押下すると、前記した変化量で特徴パラメータが加算され、それに合わせて第1画像の色合いが順に変化する。
【0060】
なお、本発明の実施形態においては、各単語表示部602を押下する順序によって特徴パラメータの総変化量に影響を受けないものとなっている。即ち、「きらきら」の単語を2回、「どんより」の単語を1回押下した場合の編集結果は、その押下する順序に関わらず最終的な編集結果は同一となる。
【0061】
編集の結果、生成された第2画像がユーザーが想定する印象と異なる画像となった場合には、「リセット」を押下することで、イニシャルの状態に戻り、再度、画像編集を行うことができる。
【0062】
ここで、必ずしも、各単語表示部602を押下することで、特徴パラメータが加算されるように構成する必要はない。例えば、各単語表示部602に隣接して「+」と「-」を表記した表示部を別途設け、「+」を押下すると単語に対応する特徴パラメータが変化量で加算され、「-」を押下すると単語に対応する特徴パラメータが変化量で減算されるように構成してもよい。
【0063】
また、必ずしも、各単語表示部602を押下する回数が同じであれば、その押下順序に関わらず編集結果を同一にする必要はない。各単語表示部602を押下する回数が同じであっても、例えばその順序を入れ替えることで、変化量に重み付けをして異なる編集結果となるようにしてもよい。
【0064】
以上が、本発明の実施形態に係る画像編集システム1の構成である。次に、画像編集システム1で実行される画像編集プログラムについて図7に基づいて説明する。
【0065】
まず、チューニングフェーズにおいては、編集対象となるユーザーが指定する第1画像を受信する(STEP1)。次に、ユーザーは画像編集に用いる任意の単語を選択し、選択されたそれぞれの単語について、特徴パラメータの変化量の調整を行う。
【0066】
変化量の調整は、前記した通り、第1画像に適用される特徴パラメータを初期値として、近傍解候補となる8つのサンプル画像が生成・表示される(STEP2)。ユーザーは、生成されたサンプル画像から単語の印象に最も近い任意の一のサンプル画像を選択すると、新たに解候補となる8つのサンプル画像が生成・表示される。この解候補の生成・表示とユーザーによる選択を所定の回数繰り返し、その平均値から変化量を演算する(STEP3)。
【0067】
STEP3で演算した変化量からなる特徴パラメータが固有特徴パラメータとして定義され、ユーザー毎に単語と対応付けて固有特徴パラメータ記憶部203に記憶される(STEP4)。以上のSTEP1~STEP4をユーザーが選択した各単語について繰り返すことで、ユーザー毎の画像編集に使用する単語の各固有特徴パラメータが定義される。
【0068】
チューニングフェーズにおいて固有特徴パラメータが適されると、利用フェーズにおいて各固有特徴パラメータを第1画像に適用して、ユーザーの好みに応じた画像編集を行い、第2画像を生成する(STEP5)。
【0069】
チューニングフェーズにおいて定義されたユーザー別の各単語に応じた固有特徴パラメータは、固有特徴パラメータ記憶部203に記憶される。そして、次回以降に画像編集システム1にユーザーがログインした際には、固有特徴パラメータ記憶部203に記憶された固有特徴パラメータを読み出すことで、チューニングフェーズを経ることなく利用フェーズに進むことが可能となる。
【0070】
但し、必ずしも、過去に設定した固有特徴パラメータを利用する必要はなく、例えばログインの都度、チューニングフェーズにおいて各単語の特徴パラメータの変化量を調整するようにしてもよい。
【0071】
以上、本発明に係る画像編集システム、及び画像編集プログラムは、感覚的な操作で画像データを簡単に編集することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0072】
1 画像編集システム
10 第1画像受信部
20 データベース
201 単語記憶部
202 画像記憶部
203 固有特徴パラメータ記憶部
30 サンプル画像生成部
40 変化量演算部
50 第2画像生成部
60 表示部
601 画像表示部
602 単語表示部
2 インターネット回線
3 ユーザー端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7