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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151898
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】加熱殺菌用包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241018BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20241018BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/34 U
B65D81/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065694
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】松本 興長
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E013BA30
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF26
3E013BF32
3E013BF36
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067CA07
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE48
3E067FA01
3E067FB07
3E067FB12
3E067FB13
3E067FC01
3E067GB05
3E067GC02
3E067GD01
3E067GD02
3E067GD07
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA02
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB68
3E086BB71
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA03
3E086DA03
(57)【要約】
【課題】レトルト殺菌等の高温での加熱殺菌に付された場合にも、包装袋の密封性を確保可能なシール強度を有すると共に、電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構を形成した場合には、内圧が上昇した際に糸引きなどの不都合を生じることなく、シール層の剥離がスムーズに進行可能なシール強度を有する加熱殺菌用包装袋を提供する。
【解決手段】シール層を備えた多層フィルムを、該シール層が互いに面するように重ね合わせシールして成る加熱殺菌用包装袋において、前記シール層が、MFR(230℃,2.16kg荷重)が1.8~2.2g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Aと、MFRが3.2~3.8g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Bを、A:B=85:15~95:5の割合で含有するブレンド物から成ることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層を備えた多層フィルムを、該シール層が互いに面するように重ね合わせシールして成る加熱殺菌用包装袋において、
前記シール層が、単層又は複層であり、
前記単層のシール層又は複層のシール層の最内面が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~60:40の割合で含有し、MFR(230℃,2.16kg荷重)が1.8~2.2g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Aと、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~60:40の割合で含有し、MFR(230℃,2.16kg荷重)が3.2~3.8g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Bを、A:B=85:15~95:5の割合で含有するブレンド物から成ることを特徴とする加熱殺菌用包装袋。
【請求項2】
前記複層のシール層が、前記最内層、外層、及び最内層と外層の間に位置する中間層を備えた少なくとも3層構成を有し、
前記外層が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~70:30の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Cから成り、
前記中間層が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、95:5~70:30の質量比で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Cと、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=60:40~30:70の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Dを、C:D=60: 40~95:5の割合で含有するブレンド物から成る請求項1に記載の加熱殺菌用包装袋。
【請求項3】
80℃におけるシール強度が13.7N以上である請求項1又は2に記載の加熱殺菌用包装袋。
【請求項4】
100℃におけるシール強度が24.2N未満である請求項1又は2に記載の加熱殺菌用包装袋。
【請求項5】
電子レンジ加熱用の蒸気抜き孔を備える請求項4記載の加熱殺菌用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱殺菌用包装袋に関するものであり、より詳細には、内容物充填後のレトルト殺菌におけるシール不良等の発生が有効に防止された加熱殺菌用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の内容物を包装袋に充填・密封して成る包装袋詰め食品は種々提案されており、このような包装袋詰め食品は、内容物の充填時に、レトルト殺菌等の加熱殺菌が行われていることから、レトルト殺菌等でも包装袋の密封性が損なわれないようなシール強度を有することが必要である。
加熱殺菌用包装袋に使用されるシール層(ヒートシール層)としては、耐熱性に優れていると共に安価であることから、一般にプロピレンブロック共重合体又はエチレン-プロピレンランダム共重合体に熱可塑性エラストマー成分をブレンドして成るプロピレン系組成物が使用されている(特許文献1等)。
【0003】
しかしながら、上記プロピレン系重合体を用いた場合でも、レトルト殺菌等の加熱殺菌を施すと、レトルト時にシール部が後退するなど、加熱後のシール強度が十分満足するものではなかった。
このような問題を解決するものとして、例えば下記特許文献2には、(A)(a)ポリプロピレンブロック95~70質量%と、(b)プロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック5~30質量%からなるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる両外層と、(B)(1)示差走査型熱量計を用いて測定される結晶化温度曲線において、温度105~110℃に主結晶化ピーク温度(TCP1)を有し、温度65~85℃に副次結晶化ピーク温度(TCP2)を有し、かつ主結晶化ピーク面積(TCA1)に対する、副次結晶化ピーク面積(TCA2)の割合(AR)が、多くとも4.0%以下であり、(2)温度25℃におけるキシレン可溶分(XI)が10~30質量%であり、(3)副次結晶化ピーク温度(TCP2)と温度25℃におけるキシレン可溶分(XI)との関係が式:TCP2≦-1.05XI+104を満足するプロピレン系重合体組成物からなる中間層との少なくとも3層からなる多層積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-152596号公報
【特許文献2】特開2000-255012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記加熱殺菌用包装袋において、電子レンジ加熱のために、蒸気抜き機構を有するものが知られている。かかる蒸気抜き機構は、包装袋内の内圧が上昇すると、蒸気抜き孔周囲のシール層がその端縁から蒸気抜き孔に向かって剥離することにより、内圧を開放するものであるが、上述したように、レトルト殺菌等によるシール強度の低下を防ぐために、包装袋を構成する積層体のシール層同士のシール強度を高くすると、内圧が上昇しても剥離がスムーズに進まず、シール層同士が剥がれきらずに伸びが生じて、所謂「糸引き」を生じてしまう場合があった。このような糸引きが生じると、蒸気抜き孔を塞いでしまい、内圧を正常に開放することができないおそれがある。
【0006】
従って本発明の目的は、レトルト殺菌等の高温での加熱殺菌に付された場合にも、包装袋の密封性を確保可能なシール強度を有すると共に、蒸気抜き機構を形成した場合には、内圧が上昇した際に糸引きなどの不都合を生じることなく、シール層の剥離がスムーズに進行可能なシール強度を有する加熱殺菌用包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、シール層を備えた多層フィルムを、該シール層が互いに面するように重ね合わせシールして成る加熱殺菌用包装袋において、前記シール層が、単層又は複層であり、前記単層のシール層又は複層のシール層の最内面が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~60:40の割合で含有し、MFR(230℃,2.16kg荷重)が1.8~2.2g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Aと、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~60:40の割合で含有し、MFR(230℃,2.16kg荷重)が3.2~3.8g/10分の範囲にあるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Bを、A:B=85:15~95:5の割合で含有するブレンド物から成ることを特徴とする加熱殺菌用包装袋が提供される。
【0008】
本発明の加熱殺菌用包装袋においては、
(1)前記複層のシール層が、前記最内層、外層、及び最内層と外層の間に位置する中間層を備えた少なくとも3層構成を有し、前記外層が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~70:30の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Cから成り、前記中間層が、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、95:5~70:30の質量比で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Cと、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=60:40~30:70の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Dを、C:D=60:40~95:5の割合で含有するブレンド物から成ること、
(2)80℃におけるシール強度が13.7N以上であること、
(3)100℃におけるシール強度が24.2N未満であること、
(4)電子レンジ加熱用の蒸気抜き孔を備えること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱殺菌用包装袋によれば、内容物の充填後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行った場合にもシール部の後退や内容物の漏洩等を生じることなく、優れた密封性を維持することが可能である。また、電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構を形成した場合には、内圧上昇に応じてシール部がスムーズに剥離して、蒸気抜き機構が正常に機能することが可能となる。
すなわち、後述する実施例の結果からも明らかなように、本発明の加熱殺菌用包装袋によれば、レトルト殺菌等の加熱殺菌時を想定した温度である80℃でのシール強度が13.7N以上であると、十分な密封性を発現可能である。また、電子レンジ加熱を想定した温度である100℃でのシール強度が24.2N未満であると、電子レンジ加熱により蒸気抜き孔周辺のシール部が確実に剥離して、包装袋の内圧を確実に開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の加熱殺菌用包装袋に用いられる多層フィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明の加熱殺菌用包装袋の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の加熱殺菌用包装袋においては、シール層を備えた多層フィルムから成り、このシール層の最内面となる層が、MFRが1.8~2.2g/10minのプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体A(以下、「A成分」ということがある)及びMFRが3.2~3.8g/10minのプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体B(以下、「B成分」ということがある)の2種のプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を、A:B=85:15~95:5の割合(質量比)で含有するブレンド物から成ることが重要な特徴である。
かかるシール層を最内層として有することにより、最内層同士が向き合うように重ね合わせ、周縁をシールして成る包装袋は、80℃において13.7N以上のシール強度を有し且つ100℃において24.2N未満のシール強度を有しており、レトルト殺菌等の加熱殺菌時における密封性及び電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構を形成した場合の確実な蒸気抜きが可能となる。
【0012】
(シール層)
本発明におけるA成分及びB成分は、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~60:40の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体から成る。
【0013】
上記A成分及びB成分において、(a)ポリプロピレンブロックとしては、ホモポリプロピレン、またはプロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィン5質量%以下とのランダム共重合体が挙げられる。α-オレフィンの共重合割合は、5質量%以下であり、特に4.5質量%以下であることが好適である。共重合割合が5質量%を超えると剛性、耐熱性が阻害されたり、低結晶性成分が多くなり、フィルムのブロッキングが発生したりして好ましくない。
【0014】
また、上記A成分及びB成分において、(b)エラストマーブロックは、プロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーから成る。
A成分及びB成分において、上記(a)成分と上記(b)成分は、a:b=95:5~70:30の範囲の割合(質量比)で含有されている。(b)成分の割合が5質量%未満ではレトルト殺菌処理後のヒートシール強度の低下が大きい上、耐衝撃性及び耐寒性に劣るので好ましくない。一方、(b)成分が30質量%を超えると耐熱性が劣り、レトルト処理などの加熱殺菌によりフィルム同士がブロッキングする問題がある。
【0015】
上記(a)成分及び(b)成分におけるα-オレフィンとしては、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは1種類でもよく2種類以上を混合して使用することもできる。
【0016】
A成分及びB成分のMFR(メルトフローレート)はJIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定したものであり、A成分は1.8~2.2g/10minの範囲、B成分は3.2~3.8g/10minの範囲にあることが重要である。
このようにMFRの異なる2種のプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を組み合わせることにより、製膜性を損なうことなく、耐衝撃強度やレトルト殺菌処理後のシール強度低下を防止することが可能となる。
【0017】
A成分及びB成分は、前述した通り、A:B=85:15~95:5、特に90:10~95:5の割合でブレンドされており、上記範囲よりもA成分が多い場合には、高温耐性が低下し、シール強度は低下する。その一方上記範囲よりもB成分が多い場合には、シール強度が高くなり過ぎて、蒸気抜き機構を形成した場合に、電子レンジ加熱により内圧が上昇しても剥離がスムーズに進まず、シール層同士が剥がれきらずに伸びが生じて糸引きを生じるおそれがある。
【0018】
本発明の加熱殺菌用包装袋を構成する多層フィルムにおけるシール層は、上述したA成分及びB成分のブレンド物から成る単層であってもよいが、このブレンド物を最内層とし、外層、及び最内層と外層の間に位置する中間層を更に備えた3層構成のシール層とすることが好適である。
外層は、上述したポリプロピレンブロック(a)と、上述したプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=95:5~70:30の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体C(以下、「C成分」ということがある)から成ることが好適である。(a)成分及び(b)成分が上記割合で含有されていることにより、剛性に優れていると共に、耐熱性にも優れ、レトルト殺菌等によるヒートシール強度の低下が有効に防止されている。
【0019】
外層を構成するC成分における(a)ポリプロピレンブロックとしては、前述したA成分及びB成分における(a)成分と同様に、ホモポリプロピレン、またはプロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィン5質量%以下とのランダム共重合体が挙げられる。(a)成分におけるα-オレフィンの共重合割合は、5質量%以下であり、特に4.5質量%以下であることが好適である。共重合割合が5質量%を超えると剛性、耐熱性が阻害されたり、低結晶性成分が多くなり、フィルムのブロッキングが発生したりして好ましくない。
同様に上記C成分における(b)エラストマーブロックにおいても、前述したA成分及びB成分における(b)成分と同様に、プロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーから成る。(b)成分におけるα-オレフィンの共重合割合は、5~40質量%であることが好適であり、特に10~35質量%の範囲であることが好適である。
【0020】
上記C成分における(a)成分と(b)成分の割合は、a:b=95:5~70:30の範囲にあることが好適である。上記範囲よりも(b)成分の割合が少ない場合には、レトルト殺菌処理後のヒートシール強度の低下が大きい上、耐衝撃性及び耐寒性に劣るので好ましくない。一方、上記範囲よりも(b)成分の量が多くなると、耐熱性が劣りレトルト処理などの加熱殺菌によりフィルム同士がブロッキングする問題がある。
上記C成分のMFRは特に制限はなく、一般に0.5~5g/10分、好適には0.8~4g/10分、特に1.0~3g/10分の範囲にあることが好適である。MFRが0.5g/10分未満では、成形時に目やにが発生しやすく生産性に劣り好ましくない。一方、5g/10分を超えると耐衝撃強度や後述する中間層との相溶性に劣りレトルト殺菌処理後のヒートシール強度低下の度合いが大きい傾向にあり好ましくない。
【0021】
中間層は、上述したC成分、すなわちポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、95:5~70:30の質量比で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体Cと、ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=60:40~30:70の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体D(以下、「D成分」ということがある)から成り、C:D=60:40~95:5の割合で含有するブレンド物から成ることが好適である。
上記中間層に占めるD成分の割合は5~40質量%であり、8~35質量%が好ましく、特に10~30質量%が好適である。D成分の割合が5質量%未満では加熱殺菌後のヒートシール強度改善効果に乏しく、40質量%を超えると耐熱性、剛性および耐薬品性が劣るので好ましくない。
【0022】
中間層を構成するC成分は、外層を構成するC成分と同様である。
また中間層を構成するD成分における(a)ポリプロピレンブロックとしては、プロピレンと炭素数12以下のα-オレフィンとの共重合体が挙げられ、α-オレフィンの共重合割合は8.0質量%以上であり、好ましくは9.0質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。共重合割合が8質量%未満では剛性、耐熱性が阻害されたり、加熱殺菌によるヒートシール強度の低下が大きく好ましくない。
D成分における(b)プロピレンブロック共重合体エラストマーとしては、プロピレンと炭素数2~12(ただし、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーが挙げられ、α-オレフィンの共重合割合は、30~80質量%であり、好ましくは35~75質量%、特に好ましくは38~72質量%である。共重合割合が30質量%未満では耐衝撃性、耐寒性に劣る。一方、80質量%を超えると耐熱性が阻害されるので好ましくない。
【0023】
またD成分における(a)成分と(b)成分の割合は、a:b=60:40~30:70の範囲にあることが好適である。上記範囲よりも(b)成分の割合が少ない場合には、耐衝撃性、耐寒性及び加熱殺菌後のヒートシール強度の低下を生じるおそれがあり、一方、上記範囲よりも(b)成分の量が多くなると、剛性及びフィルムのブロッキングなどのレトルト耐性に劣るおそれがある。
中間層を構成するC成分及びD成分のブレンド物のMFRは特に制限はなく、外層と同様に0.5~5g/10分、好適には0.8~4g/10分、特に1.0~3g/10分の範囲にあることが好適である。
【0024】
上述したシール層は、単層の場合には、ヒートシール強度及び透明性等の観点から、20~180μmの範囲にあることが好適であり、上述した3層構成のシール層の場合には、総厚みが上記範囲にあり、最内層/中間層/外層の厚み比が、0.5~2.0/6.0~9.0/0.5~2.0の範囲の比率が良く、好ましくは、0.6~1.7/6.6~8.8/0.6~1.7であり、特に、0.8~1.5/7.0~8.4/0.8~1.5の範囲にあることが好適である。内外層の厚み比率が0.5未満では上記範囲にある場合に比して、目やにの発生や耐熱性に劣るおそれがあり、一方、2.0を超えると上記範囲にある場合に比して耐白化性、耐衝撃強度およびレトルト殺菌処理後のヒートシール強度低下が大きくなるおそれがある。
【0025】
上述したシール層を構成する各層には、酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、染料、顔料、オイル、ワックス、充填剤等の公知の樹脂用添加剤や、その他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で適宜量配合できる。
またシール層を構成する各成分は、従来公知の方法により調製することができ、3層構成のシール層とする場合には共押出によって3層構成のシール層フィルムを予め製膜してもよいし、後述する基材等に直接押出ラミネートにより積層体を成形することもできる。
【0026】
(多層フィルム)
本発明の加熱殺菌用包装袋は、上記シール層を有する積層フィルムを用いる以外は従来公知の加熱殺菌用包装袋と同様の構成をとることができる。
すなわち、積層フィルムとしては、少なくとも上記シール層及び基材層とから成り、内容品の種類や、付加する機能等に応じて他の層を更に形成することができる。
【0027】
基材層としては、耐熱性の観点からは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ナイロン等、従来より加熱殺菌用包装袋の基材層として使用されていたものを好適に使用することができる。特に、これに限定されるものではないが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、或いはポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの共押出フィルム、エチレンテレフタレートとエチレンナフタレートの共重合体の何れかから成ることが好適である。
またリサイクル性の観点からは、多層フィルムを構成するフィルムのほとんどをプロピレン系材料から構成することが好適であることから、ポリプロピレンフィルムを用いることが好適である。
基材層を構成する上記フィルムは、一軸又は二軸延伸されていることが好適であり、特に機械的強度、耐クラック性、耐熱性に優れた二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。
【0028】
また基材層は、上記フィルムを単独で用いてもよいし、多数種の異なるフィルムを後述する積層方法によって多層の基材層(最外層及び中間層)としてもよい。
基材層の厚みは、層構成にもよるが、9μm~30μm、特に12μm~15μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも基材層の厚みが薄いと、上記範囲にある場合に比して機械的強度、耐クラック性に劣り、一方上記範囲よりも厚いと、上記範囲にある場合に比して引き裂き性及び経済性に劣るようになる。
【0029】
シール層及び基材層以外の他の層としては、これに限定されないが、バリア層、易引き裂き性層、接着層、印刷層等を有することができる。
バリア層としては、基材層に用いられる樹脂フィルムに、ケミカルベーパーデポジション(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等で、シリコンオキサイド等の無機物、アルミナ等のセラミック、カーボン等を蒸着することにより形成される蒸着層、或いはポリカルボン酸系ポリマー、塩化ビニリデン、或いはエチレンビニルアルコール共重合体もしくはメタロキサン結合を有する化合物等から成るバリア性樹脂コーティング剤から成るコーティング層を形成して成るものを好適に使用することができ、特にシリカ又はアルミナの蒸着層が好適に使用される。
バリア層に用いられる樹脂フィルムは二軸延伸されていることが好ましい。
バリア層は、最外層とすることもできるし、或いは基材層とシール層の間に設置することもできる。
蒸着層又はコーティング層が形成される樹脂フィルムの厚みは、12μm~15μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも樹脂フィルムの厚みが薄いと、上記範囲にある場合に比して機械的強度、耐クラック性に劣り、一方上記範囲よりも厚いと、上記範囲にある場合に比して引き裂き性及び経済性に劣るようになる。
【0030】
易引き裂き性層は、引き裂き性に劣るシール層に隣接させることにより、易引き裂き性層にシール層を追従させて、包装袋の引き裂き性を改良するものである。
易引き裂き性層を構成するフィルムとしては、これに限定されないが、ポリテトラメチレングリコール単位を含有したポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのブレンド物から成るフィルムや、或いはポリエチレンテレフタレートとポリエステルエラストマーから成り、ポリエチレンテレフタレート中にポリエステルエラストマーが分散してなるブレンド物からなるフィルム等、を二軸延伸してなるフィルムを挙げることができる。また、ポリエステルフィルムをレーザー等にて加工を施し、引裂き性を付与したフィルムを用いることもできる。
易引き裂き性層の厚みは、12~15μmの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも樹脂フィルムの厚みが薄いと、上記範囲ある場合に比して機械的強度、耐クラック性に劣り、一方上記範囲よりも厚いと、上記範囲にある場合に比して引き裂き性及び経済性に劣るようになる。
【0031】
本発明に用いる多層フィルムは、最内層が前述したシール層から成る限り、従来公知の層構成を採用することができる。
図1は、本発明の包装袋に用いられる多層フィルムの一例を示すものであり、全体を1で示す多層フィルムは、外側から順に、最外層(基材層)2、中間層(バリア層)3、内層(シール層)4からなっており、各層間には接着層5が設けられている。
図1に示す態様において、シール層4は、最内層4a、中間層4b、外層4cから成っており、中間層(バリア層)3は、蒸着層又はコーティング層3aを有する樹脂層3bから成るバリア層3であり、この蒸着層又はコーティング層3aが最外層の基材層2側に位置する多層構造を有するものを好適に使用することができる。
また図1に示した具体例以外にも、本発明に用いる多層フィルムとしては、外側から順に、最外層(基材層)/シール層の二層構成とする多層フィルム、最外層(基材層・バリア層)/中間層(基材層)/シール層の層構成を有する多層フィルム、最外層(基材層)/バリア層/易引き裂き性層/シール層の層構成を有する多層フィルム、最外層(基材層)/中間層(基材層)/バリア層/易引き裂き性層/シール層の層構成を有する多層フィルム、等とすることもできる。
【0032】
本発明に用いる多層フィルムは、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法等従来公知の積層方法によって積層することができる。
例えば、これに限定されないが、最外層、基材層、シール層及びバリア層等の各フィルムをそれぞれ作製し、これをドライラミネート法によって積層することができる。
また蒸着層又はコーティング層を有するバリア層を構成するフィルムの蒸着層又はコーティング層側に、最外層(基材層)を構成する樹脂を押出ラミネートして、バリア層及び基材層の二層から成る積層体を作製し、蒸着層又はコーティング層の面にシール層を構成する上述したブレンド物を、接着樹脂を介して押出ラミネートすることにより、多層フィルムを作製することができる。
本発明に用いる多層フィルムに用いることができる接着剤としては、従来公知のポリエーテルポリウレタン系又はポリエステルポリウレタン系のウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤、或いは無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性熱可塑性樹脂接着剤等を挙げることができるが、耐レトルト性の観点からは、ウレタン系接着剤を使用することが好適である。
【0033】
(包装袋)
本発明の加熱用包装袋は、前述した多層フィルムのシール層同士が向き合うように重ね合わせて、周縁をシールすることにより成形される。
本発明の加熱用包装袋を電子レンジ加熱対応とする場合には、電子レンジ加熱中に自動開口し、蒸気を開放可能な蒸気抜き機構を備えていることが好適である。蒸気抜き機構の形態は従来公知の全てのものを採用することができるが、本発明の包装袋においては、前述したように、80℃で13.7N以上、100℃で24.2N未満のシール強度を有するシール層を備えていることから、蒸気抜きシール部においても周縁シール部と同じシール強度でシールすることができるため、生産性及び経済性に優れている。
【0034】
図2は、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の一例の平面図である。
全体を10で表す包装袋は、2枚の多層フィルム1a,1bをシール層が内側になるように重ね合わせ、4辺をヒートシールすることにより形成されており、これにより、包装袋10の4辺が、ボトムシール部11、サイドシール部12a,12b、及びトップシール部13により密封されて、収納部14が形成されている。
この実施態様においては、包装体1の上部右側に蒸気抜き機構15が形成されている。蒸気抜き機構15は、内圧が上昇した時に重なり合う多層フィルム1a,1bが後退剥離可能となる蒸気抜きシール部20、この蒸気抜きシール部20の内側に位置し、重なり合う多層フィルム1a,1bが非接着の状態である非接着部21、この非接着部21の表面側の多層フィルム1aに形成された蒸気抜き孔22から成っている。
【0035】
本発明の加熱用包装袋において、包装体の形態は上述した四方シールの態様に限定されず、1枚の多層フィルムを折り曲げ三辺をシールして成る三方シールの包装袋、ガセット付包装袋、スタンディングタイプの包装袋、ピロータイプの包装袋等の種々の形態に成形することができる。
本発明の加熱用包装袋において、電子レンジ加熱に対応されるために形成する蒸気抜き機構は、電子レンジ加熱中に自動開口し得る限り、図2に示した態様に限定されない。
また蒸気抜き機構の位置は、電子レンジ加熱による包装袋内の蒸気を逃がし、且つ内容物を漏洩させないという観点から、包装袋の周縁シール部近傍付近に形成されていることが好適である。
【実施例0036】
(使用樹脂)
A成分:ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=80:20の割合で含有し、
MFR(230℃,2.16kg荷重)が2.0g/10分のプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体。
B成分:ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=70:30の割合で含有し、
MFR(230℃,2.16kg荷重)が3.5g/10分のプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体。
C成分:ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=80:20の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体。
D成分:ポリプロピレンブロック(a)及びプロピレンと炭素数2~12(但し、3を除く)のα-オレフィンとの共重合体エラストマーブロック(b)を、a:b=35:65の割合で含有するプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体。
【0037】
(実施例1~3及び比較例1及び2)
上記A成分及びB成分を表1に示す配合比でブレンドして成るブレンド物から成る最内層、上記C成分から成る外層、上記C成分及びD成分を80:20の質量比でブレンドして成るブレンド物から成る中間層を、最内層/中間層/外層の厚みが、20μm/20μm/20μmとなるように共押出して3層構成のシール層フィルムを作成した。
基材層として12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、上記シール層フィルムと積層して多層フィルムを作成した。得られた多層フィルムから、図2に示した蒸気抜き機構を有する包装袋を作成した。ヒートシール条件は、175℃、圧力0.2kg/cm、1秒の条件で行った。
【0038】
(シール強度)
得られた包装袋を恒温機内に静置し、80℃及び100℃に昇温し、2分保持した後、引張試験機にて300mm/分の引張速度で、80℃及び100℃それぞれについて、サイドシール部、ボトムシール部のシール強度を測定した。評価基準は以下の通りである。
[シール強度80℃]
比較例1の80℃におけるシール強度は13.7N未満であり、レトルト殺菌等に十分な密封性を発現できず、80℃におけるシール強度が13.7Nより大きい実施例1~3、比較例2は、十分な密封性を発現した。B成分の比率が多いほどシール強度は高くなる傾向にあり、比較例2では24.4Nであった。以上の結果から、表1中、80℃におけるシール強度が13.7N以上の場合を「○」、13.7N未満の場合を「×」と表した。
[シール強度100℃]
比較例2の100℃におけるシール強度は24.2N以上であり、糸引きが生じ、100℃におけるシール強度が24.2N未満の比較例1、実施例1~実施例3では糸引きが生じなかった。B成分の比率が多いほどシール強度は高くなる傾向にあり、比較例1では10.9Nであった。以上の結果から、表1中、100℃におけるシール強度が24.2N未満の場合を「○」、24.2N以上の場合を「×」と表した。
【0039】
(糸引き評価)
得られた包装袋に内容物として水を充填し、121℃、30分の条件でレトルト殺菌処理を行った。レトルト殺菌処理済の包装袋を、600Wの電子レンジで約2分加熱し、加熱後の蒸気抜き孔について観察した。シール層の糸引きが生じなかったものを「○」、糸引きを生じたものを「×」として表1に示す。
【0040】
【表1】
【符号の説明】
【0041】
1 多層フィルム、2 最外層(基材層)、3 中間層(バリア層)、4 内層(シール層)、5 接着層、10 包装袋、11 ボトムシール部、12 サイドシール部、13 トップシール部、14 収納部、20 蒸気抜きシール部、21 非接着部、22 蒸気抜き孔。
図1
図2