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  • 特開-流速計及び温度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151901
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】流速計及び温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20241018BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01P5/12 B
G01K7/22 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065703
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】517031834
【氏名又は名称】株式会社クレスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 一浩
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056QF02
(57)【要約】
【課題】目的は、測定の安定性、測定精度、メンテナンス性、コストの各観点で優れる流速計及び温度センサを提供することにある。
【解決手段】流速計は、流体中に設置される編組ケーブル2と、編組ケーブルの編組線を構成する複数の素線5にそれぞれ接続される複数のサーミスタ11-14と、複数のサーミスタそれぞれに電流を供給する駆動回路31と、複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の両端電圧に基づいて複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の表面温度を計算する温度計算部34と、複数の表面温度に基づいて流体の流速を演算する流速演算部35とを具備する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に設置される編組ケーブルと、
前記編組ケーブルの編組線を構成する複数の素線にそれぞれ接続される複数のサーミスタと、
前記複数のサーミスタそれぞれに電流を供給する駆動回路と、
前記複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の両端電圧に基づいて前記複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の表面温度を計算する温度計算部と、
前記複数の表面温度に基づいて前記流体の流速を演算する流速演算部とを具備する流速計。
【請求項2】
前記複数のサーミスタは、前記編組ケーブルの編組線を構成する第1の素線に接続される第1のサーミスタと、前記編組ケーブルの編組線を構成する第2の素線であって、前記第1のサーミスタに対して、前記編組ケーブルの軸方向に関して同位置且つ周方向に関して180°ずれた位置に接続される第2のサーミスタとを有する、請求項1記載の流速計。
【請求項3】
前記温度計算部は、前記第1、第2のサーミスタにそれぞれ対応する第1、第2の両端電圧に基づいて前記第1、第2のサーミスタにそれぞれ対応する第1、第2の表面温度を計算し、
前記流速演算部は、前記第1、第2の表面温度に基づいて第1の流速を演算する、請求項2記載の流速計。
【請求項4】
前記複数のサーミスタは、前記編組ケーブルの編組線を構成する第3の素線であって、前記第1のサーミスタに対して、前記編組ケーブルの軸方向に関して同位置且つ周方向に関して90°ずれた位置に接続される第3のサーミスタと、前記編組ケーブルの編組線を構成する第4の素線であって、前記第1のサーミスタに対して、前記編組ケーブルの軸方向に関して同位置且つ周方向に関して270°ずれた位置に接続される第4のサーミスタとをさらに有する、請求項3記載の流速計。
【請求項5】
前記温度計算部は、前記第3、第4のサーミスタにそれぞれ対応する第3、第4の両端電圧に基づいて前記第3、第4のサーミスタにそれぞれ対応する第3、第4の表面温度を計算し、
前記流速演算部は、前記第3、第4の表面温度に基づいて第2の流速を演算する、請求項4記載の流速計。
【請求項6】
前記流速演算部は、前記第1、第2の流速に基づいて前記流速を演算する、請求項5記載の流速計。
【請求項7】
前記流速演算部は、前記第1、第2の流速に基づいて前記流体が流れる方向を演算する請求項5記載の流速計。
【請求項8】
前記複数のサーミスタは、前記編組ケーブルの軸方向に関して同位置且つ周方向に関して90°ずつずれた位置に接続される4つのサーミスタとを有し、
前記温度計算部は、前記4つのサーミスタにそれぞれ対応する4つの両端電圧に基づいて前記4つのサーミスタにそれぞれ対応する4つの表面温度を計算し、
前記流速演算部は、前記4つの表面温度に基づいて前記流速を演算する、請求項1記載の流速計。
【請求項9】
前記流速演算部は、前記4つの表面温度に基づいて前記流体が流れる方向を演算する請求項8記載の流速計。
【請求項10】
前記編組ケーブルの芯材としてケプラー繊維を備える請求項1記載の流速計。
【請求項11】
絶縁性のコアと、
前記コアの外周にアミ状に編み込まれる絶縁被覆された複数の素線と、
前記複数の素線の外側を覆う外皮と、
前記複数の素線に、軸方向に関して同位置であって、且つ周方向に関して分散する位置に接続される複数のサーミスタとを具備する温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体の流速を測定する流速計及び温度を測定する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
開水路および管路など閉水路の流体流速を計測する手段として、羽根車式、超音波ドップラー式、電磁式等様々な方式が用いられている。羽根車式は、可動部分を有する機械的な構成であるため、摩耗損失等の故障が絶えず高頻度でメンテナンスを実施する必要があったばかりか、低流速では作動が不安定になり測定安定性が良好とは言えず、さらに設置工事に非常に手間がかかり導入コストの面で不利である。
【0003】
超音波ドップラー式では、水中の濁度が高まると、超音波の減衰が大きくなり、反射波を良好にとらえることができず、測定が困難になることがある。
【0004】
電磁式は、電気伝導性流体が流れる水路に垂直に磁場を生成し、磁場の方向と流体の流れの方向とに垂直な方向に対の電極を設け、電磁誘導で電極間に生じる電圧を測定して流速を求めるものであるが、流速感度の下限値が高く、つまり低流速に対する精度が得られ難い問題があった。
【0005】
このように従来の流速計には様々な方式が開発され実用されてきたが、各方式は測定の安定性、測定精度、メンテナンス性、コストの観点で一長一短があり、新しい計測方式の実現が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、測定の安定性、測定精度、メンテナンス性、コストの各観点で優れる流速計及び温度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る流速計は、流体中に設置される編組ケーブルと、前記編組ケーブルの編組線を構成する複数の素線にそれぞれ接続される複数のサーミスタと、前記複数のサーミスタそれぞれに電流を供給する駆動回路と、前記複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の両端電圧に基づいて前記複数のサーミスタにそれぞれ対応する複数の表面温度を計算する温度計算部と、前記複数の表面温度に基づいて前記流体の流速を演算する流速演算部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る流速計の構成を示す機能ブロック図である。
図2図1の編組ケーブルを示す図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2の編組ケーブルの素線に接続されるサーミスタの軸方向及び周方向の位置を示す図である。
図5図4のサーミスタの位置を3次元上で示す図である。
図6図4のサーミスタに固有の温度抵抗特性を示す図である。
図7図4のサーミスタ周囲の流体の流れとサーミスタ直外の流速成分とを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る流速計を説明する。
図1乃至図5に示すように、本実施形態に係る流速計は、例えば数十メートルの編組ケーブル2を有する。編組ケーブル2は、例えば河川等の流路を流れる流体として典型的には水中に垂下される。編組ケーブル2は、高い抗張力を確保するためにケプラー繊維7を芯材とする絶縁性のコア8の外周に、絶縁被覆された銅線等の素線(編組線又は編組細線ともいう)5がアミ状に編み込まれ、その外側がウレタン製の外皮6で覆われてなる。好ましくは、素線5は所定本数ずつ編組束として束ねられ平型に編み込まれる。編組ケーブル2の先端は先端防水封止キャップ3で封止され、後端には流速計の本体30側のコネクタ(図示せず)に挿し込まれる防水形のコネクタ4が設けられる。
【0010】
編組ケーブル2には、温度変化に対して抵抗値が線形に変化する複数のサーミスタ11乃至14、21乃至24が組み込まれている。サーミスタ11乃至14、21乃至24としては温度の上昇に対して抵抗値が減少するNTC形、温度の上昇に対して抵抗値が増加するPTC形のいずれが採用されてもよい。サーミスタ11乃至14と、サーミスタ21乃至24がそれぞれ組みを構成する。
【0011】
複数の素線5の中の特定の素線(第1の素線)5には、温度変化に対して抵抗値が線形に変化するサーミスタ(第1のサーミスタ)11が接続される。他の素線(第2の素線)には、サーミスタ(第2のサーミスタ)12が、第1のサーミスタ11に対して、編組ケーブル2の軸方向に関して同位置であって、且つ編組ケーブル2の周方向に関して180°ずれた位置に接続される。すなわち、サーミスタ11、12は編組ケーブル2の軸方向に関して同じ位置であって周方向に関して互いに180°ずれた正反対の位置に配されて、一対を構成する。なお、サーミスタ11、12それぞれが接続される素線5はその先端において他の素線5と結合される。
【0012】
複数の素線5の中のさらに他の素線(第3の素線)5にはサーミスタ(第3のサーミスタ)13が接続される。このサーミスタ13は、第1のサーミスタ11に対して、編組ケーブル2の軸方向に関して同位置であって、且つ編組ケーブル2の周方向に関して90°ずれた位置に配される。
【0013】
さらに他の素線(第4の素線)5にはサーミスタ(第4のサーミスタ)14が接続される。このサーミスタ13は、第1のサーミスタ11に対して、編組ケーブル2の軸方向に関して同位置であって、且つ編組ケーブル2の周方向に関して270°ずれた位置に配される。これらサーミスタ13、14は編組ケーブル2の軸方向に関して同じ位置であって周方向に関して互いに180°ずれた正反対の位置に配されて、一対を構成する。
【0014】
これら4つのサーミスタ11乃至14は、編組ケーブル2の軸方向に関する位置は同じであって、周方向に関して90°ずつずれている。
【0015】
さらに編組ケーブル2の他の4本の素線5には、4つのサーミスタ21乃至24が、上述の4つのサーミスタ11乃至14に対して、編組ケーブル2の軸方向に関して異なる位置に接続される。サーミスタ21乃至24は、編組ケーブル2の軸方向に関して同じ位置であって、周方向に90°ずつずれた位置に配される。サーミスタ21、22は対をなし、サーミスタ23、24は対をなす。対をなすサーミスタ21、22は互いに周方向に180°ずれた正反対の位置に配され、対をなすサーミスタ21、22は周方向に互いに正反対の位置に配される。
【0016】
なお、4つで一組をなすサーミスタ11乃至14とサーミスタ21乃至24を、編組ケーブル2の軸方向に関する位置を違えながら3組以上に増やしてもよい。河川等の深度方向の流速分布をさらに高精度に把握することができる多層流速計を構成することができる。
【0017】
編組ケーブル2はコネクタ4を介して本体30に接続される。本体30は、サーミスタ11乃至14、21乃至24各々に定電流を流すとともにサーミスタ11乃至14、21乃至24それぞれの両端電圧を測定する駆動・測定回路31と、制御部32と、インタフェース部37と、電源部38とを備える。
【0018】
制御部32は、温度計算部34、流向・流速演算部35、記憶部36を有する。温度計算部34は、サーミスタ11-14,21-24それぞれの両端電圧と、サーミスタ11-14,21-24それぞれに供給する定電流とに基づいてサーミスタ11-14,21-24それぞれの抵抗値を求め、それぞれ求めた抵抗値からサーミスタ11-14,21-24それぞれに固有の温度抵抗特性を用いてサーミスタ11-14,21-24それぞれの表面温度に変換する。
【0019】
流向・流速演算部35は、サーミスタ11-14それぞれの表面温度から、サーミスタ11-14が位置する深度における流体が流れる方向(流向)と、その実際の流速(実流速)Vtrueとを演算する。同様に、流向・流速演算部35は、サーミスタ21-24それぞれの表面温度から、サーミスタ21-24が位置する深度における流向と、その実流速Vtrueとを演算する。
【0020】
これらサーミスタ11-14,21-24それぞれの表面温度、サーミスタ11-14が位置する深度における流向及び流速、サーミスタ21-24が位置する深度における流向及び実流速に関するデータは、記憶部36に記憶される。
【0021】
以下、表面温度、実流速、流向の演算方法について説明する。
周知のとおりサーミスタ11-14,21-24は温度変化に対して抵抗値が線形に変化する。従って両端電圧からサーミスタ11-14,21-24それぞれの表面温度を一義的に特定することができる。ここではまずサーミスタ11、12を例に説明する。サーミスタ11に定電流I11を流し、サーミスタ11の両端電圧V1を検出することにより、サーミスタ11の抵抗値R11(=V11/I11)を求めることができ、さらに図6に例示する当該サーミスタ11に特有の温度抵抗特性に抵抗値R11を照会することによりサーミスタ11の表面温度T11を特定することができる。
【0022】
同様に、サーミスタ12に定電流I12を流し、サーミスタ12の両端電圧V2を検出することにより、サーミスタ12の抵抗値R12(=V12/I12)を求めることができ、さらに温度抵抗特性に抵抗値R2を照会することによりサーミスタ12の表面温度T12を特定することができる。
【0023】
次に、サーミスタ11の表面温度T11、サーミスタ12の表面温度T12、外部水温計で測定される水温T0、サーミスタ11の直外の編組ケーブル2の周面上の地点(サーミスタの直外地点と略する)に流れる流体の流速をFV11(m/s)、サーミスタ12の直外地点に流れる流体の流速をFV12(m/s)とすると、Kingの法則により、サーミスタ11の放散熱量H11、サーミスタ12の放散熱量H12はそれぞれ次の式(1)、(2)で表される。なお、B,Cはそれぞれ熱線と流れの性質によって決まる定数である。
【0024】
H11=(B・FV111/2+C)・(T11-T0) …(1)
H12=(B・FV121/2+C)・(T12-T0) …(2)
サーミスタ11の抵抗値R11、サーミスタ11に流す定電流I11、サーミスタ11の両端電圧V11から、サーミスタ11の発熱量Q11は、ジュールの第一法則に従って、次式(3)で表され、同様にサーミスタ12の抵抗値R12、サーミスタ12に流す定電流I12、サーミスタ12の両端電圧V12から、サーミスタ12の発熱量Q12は次式(4)で表される。
【0025】
Q11=I11・R11
=I11・V11 …(3)
Q12=I12・R12
=I12・V12 …(4)
放散熱量H1と発熱量Q11は平衡状態であるので、式(1)と式(3)から次式(5)が得られる。
【0026】
(B・FV111/2+C)・(T11-T0)=I11・V11 …(5)
同様に放散熱量H12と発熱量Q12も平衡状態であるので、式(2)と式(4)から次式(6)が得られる。
【0027】
(B・FV121/2+C)・(T12-T0)=I12・V12 …(6)
サーミスタ11に流す定電流I11は制御下にあるので既知であり、サーミスタ11の両端電圧V11は検出され、またサーミスタ11の表面温度T11は上述の通り測定されるので、式(5)から、サーミスタ11の直外地点を流れる流体の流速FV11が演算される。
【0028】
同様に、サーミスタ12に流す定電流I12は制御下にあり既知であり、サーミスタ12の両端電圧FV12は検出され、またサーミスタ12の表面温度T12は上述の通り特定されるので、式(6)から、サーミスタ12の直外地点を流れる流体の流速FV12が演算される。
【0029】
ここで、編組ケーブル2は円柱形であり、編組ケーブル2の周囲を流体が流れる流線(図7参照)及び速度分布は流体力学上推定されることができる。上記流速FV11、FV12は編組ケーブル2の周面上の周方向に180°ずれた2地点それぞれの流速であるので、これら2地点の流速FV11、FV12から、サーミスタ11,12の直外2地点間を流れる流体の流速(流速成分)FVtrue1を推定することができる。
【0030】
ここで、流体の実流速FVtrueは、サーミスタ11,12の直外2地点を結ぶ方向の実流速成分Vtrue1と、当該方向に直交する、サーミスタ13,14の直外2地点を結ぶ方向の実流速成分Vtrue2とに分解できる。サーミスタ11,12の直外2地点の流速FV11、FV12から実流速成分Vtrue1を推定することができる。サーミスタ13,14の直外2地点の流速FV13、FV14から流速成分FVtrue2を推定することができる。流速成分FVtrue1と流速成分FVtrue2とから三角法により実流速FVtrueを計算することができる。
【0031】
サーミスタ11,12の直外2地点の流速FV11、FV12から実実流速成分Vtrue1を推定することは流体の力学的影響を受ける。実際には、実流速FVtrueが異なる様々な状況下で、対象河川に編組ケーブル2を沈下し、2地点の流速FV11、FV12を、水流の方向(流方向)に対するサーミスタ11,12の直外2地点を結ぶ線分の角度θを変えながら繰り返し計測した。計測された実流速Vtrueと、流速FV11、FV12から、それらの関係式を、発明者は特定した。関係式は、次式(7)により与えられる。
【0032】
FVtrue1=R・FV(FV11,FV12) …(7)
なお、FV(FV11,FV12)はFV11とFV12から高値が選択される。
【0033】
流体力学的影響を表す係数Rは、流速FV11、FV12の組み合わせごとに求められ、流速FV11、FV12の複数の組み合わせに対して関連付けられ、記憶部36に記憶される。ここでは、サーミスタ11,12の直外2地点の流速FV11、FV12を例に説明したが、編組ケーブル2に同軸方向位置であって、周方向に180°ずれた一対のサーミスタを対象として汎用適用できる。
【0034】
サーミスタ11,12に加えて、サーミスタ13,14が装備される。サーミスタ13,14は編組ケーブル2の軸方向に関してサーミスタ11,12と同じ位置(同じ深度)であって、サーミスタ13,14は互いに編組ケーブル2の周方向に180°ずれ、且つサーミスタ13はサーミスタ11に対して周方向に90°ずれた位置に取り付けられる。つまり、サーミスタ11-14は編組ケーブル2の周方向に沿って90°ずつずれた位置に取り付けられる。
【0035】
上述と同様に、サーミスタ13,14の直外2地点における流速FV13、FV14が演算され、これら流速FV13、FV14の組み合わせに関連付けられている流体力学的影響係数Rを上記式(7)に従って流速FV13、FV14に適用することにより、実流速成分FVtrue2を推定することができる。
【0036】
周知のとおり、直交成分である実流速成分FVtrue1、FVtrue2から、流体の実流速FVtrueは、次式(8)により計算される。
【0037】
FVtrue=(FVtrue1+FVtrue21/2 …(8)
また周知のとおり、流体の流れる方向として、サーミスタ11,12の直外2地点を結ぶ線分を基準として水流の方向(流方向)の角度θを、次式(9)により計算することができる。
【0038】
θ=tan-1(FVtrue2/FVtrue1) …(9)
以上のように、サーミスタ11-14が位置する深度における流体が流れる方向(流向)と、その実際の流速(実流速)とを求めることができる。同様にサーミスタ21-24が位置する深度における流体の流向と、その実流速とを求めることができる。さらに、4つ一組のサーミスタを増やすことにより、河川の鉛直方向に関する多層流速をさらに高精度に観測することができる。従って濁度や粘度等が変動しても、流速及び流向を安定して測定することができる。
【0039】
また本実施形態では温度センサを編組ケーブルにより構成しており、軸や軸受け等の機械的な可動部がないので、高い耐久性を実現できる。
【0040】
また、本実施形態では、ケプラー繊維を芯材として採用することにより高い抗張力を確保しているので、編組ケーブルの軸方向に分散配置する複数組のサーミスタ同士の軸方向の位置が変動することがなく、従って多層流速を精度よく測定することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、温度センサとしての編組ケーブルを下線水中に垂下没入させればよく、その設置設備を必要としないことから、導入時及びメンテナンス時のコストを低廉化することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
2…編組ケーブル、3…先端防水封止キャップ、4…コネクタ、5…素線、6…外皮、7…ケプラー繊維、8…コア、11乃至14、21乃至24…サーミスタ、30…本体、31…駆動・測定回路、32…制御部、34…温度計算部、35…流向・流速演算部、36…記憶部、37…インタフェース部、38…電源部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7