(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151907
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 63/111 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A01B63/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065720
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 睦貴
(72)【発明者】
【氏名】萩山 丈士
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】河本 創
【テーマコード(参考)】
2B304
【Fターム(参考)】
2B304KA16
2B304LA02
2B304LA05
2B304LB05
2B304LB15
2B304LC05
2B304MA03
2B304MB02
2B304MD03
2B304PA07
2B304QA08
2B304QA12
2B304QA22
2B304QB02
2B304QB04
2B304QB12
2B304QB13
2B304QB17
2B304QC03
2B304QC08
2B304QC14
2B304QC17
2B304RA15
2B304RA17
2B304RA19
2B304RB07
(57)【要約】
【課題】昇降自在に装着された耕耘作業機から上方に延ばした長いブラケット上部に取り付けた測位装置にて得られる作業機の高さ情報に基づいて作業機を昇降させる作業車両がある。然しながら、昇降装置の回動により耕耘作業機を昇降させるときに、測位装置が走行車体に接触して破損してしまう恐れがあった。そこで、作業機を昇降させても測位装置が走行車体に接触しない作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体2に昇降装置12にて昇降自在に装着した作業機Wに設けた測位装置ブラケット37に作業機Wの位置を測定する作業機測位装置31を設けた作業車両において、測位装置ブラケット37に回動支点38を設けて、作業機測位装置31が走行車体2に近づく方向に昇降装置12が回動するとき、昇降装置12の回動角度Dに応じて測位装置ブラケット37が走行車体2から遠ざかる方向に傾斜する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)に昇降装置(12)にて昇降自在に作業機(W)を装着し、該作業機(W)に設けた測位装置ブラケット(37)に作業機(W)の位置を測定する作業機測位装置(31)を設けた作業車両において、測位装置ブラケット(37)に回動支点(38)を設けて、作業機測位装置(31)が走行車体(2)に近づく方向に昇降装置(12)が回動するとき、昇降装置(12)の回動角度(D)に応じて測位装置ブラケット(37)が走行車体(2)から遠ざかる方向に傾斜することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
昇降装置(12)の回動角度(D)を検出する昇降装置センサ(26)を設けると共に、測位装置ブラケット(37)を傾斜させる傾斜装置(39)を設け、該傾斜装置(39)が検出された昇降装置(12)の回動角度(D)に応じて測位装置ブラケット(37)を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
測位装置ブラケット(37)を走行車体(2)から所定の距離に維持するガイド(48)を設け、作業機(W)とともに測位装置ブラケット(37)が昇降すると、測位装置ブラケット(37)がガイド(48)に対してスライドするともに回動支点(45)を中心に回動することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降自在に取り付けられた耕耘作業機に測位装置を取り付け、測位装置から得られる作業機の高さ情報に基づいて作業機を昇降させる作業車両が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耕耘作業機は対地作業を行うため地面近くまで降下された状態で作業を行うが、測位装置は上空の測位衛星から送信される信号を良好に受信するために高い位置にあることが好ましい。そのため、耕耘作業機から長いブラケットを上方に延ばし、その上に測位装置を取り付けることが考えられるが、それにより後部昇降装置の回動により耕耘作業機を昇降させるときに、測位装置やブラケットが走行車体に接触して破損してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明では装着した作業機を昇降させても測位装置が走行車体に接触しない作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体2に昇降装置12にて昇降自在に作業機Wを装着し、該作業機Wに設けた測位装置ブラケット37に作業機Wの位置を測定する作業機測位装置31を設けた作業車両において、測位装置ブラケット37に回動支点38を設けて、作業機測位装置31が走行車体2に近づく方向に昇降装置12が回動するとき、昇降装置12の回動角度Dに応じて測位装置ブラケット37が走行車体2から遠ざかる方向に傾斜する作業車両である。
【0007】
請求項1記載の発明によると、測位装置ブラケット37に回動支点38を設けて、作業機測位装置31が走行車体2に近づく方向に昇降装置12が回動するとき、昇降装置12の回動角度Dに応じて測位装置ブラケット37が走行車体2から遠ざかる方向に傾斜するので、作業機測位装置31が昇降装置12の回動に伴って走行車体2と接触すること防止できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、昇降装置12の回動角度Dを検出する昇降装置センサ26を設けると共に、測位装置ブラケット37を傾斜させる傾斜装置39を設け、該傾斜装置39が検出された昇降装置12の回動角度Dに応じて測位装置ブラケット37を傾斜させる請求項1に記載の作業車両である。
【0009】
請求項3記載の発明は、測位装置ブラケット37を走行車体2から所定の距離に維持するガイド48を設け、作業機Wとともに測位装置ブラケット37が昇降すると、測位装置ブラケット37がガイド48に対してスライドするともに回動支点45を中心に回動する請求項1に記載の作業車両である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態にかかる作業車両の左側面図である。
【
図2】同作業車両の作業機を規定の高さまで上昇させた場合を示す側面図である。
【
図4】同作業車両の操縦席右側方の概略斜視図である。
【
図5】同作業車両の操縦席前方にある操作機器の説明図である。
【
図8】本発明の他の実施形態を示す作用説明用の概略側面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態を示す作用説明用の概略側面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態を示す要部の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態であるトラクタ1を詳細に説明する。
【0012】
なお、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である。
【0013】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。即ち、トラクタ1の操縦者が操縦席8に着座して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0014】
上下方向とは、鉛直方向に平行する方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
【0015】
また、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
<全体構成>
図1に示すように、トラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。また、トラクタ1は、操縦者(作業者)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する制御装置40(
図3参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。
【0017】
トラクタ1は、走行車体2の後部に昇降装置12にて昇降自在に作業機Wを装備している。
【0018】
<走行車体2>
走行車体2は、車体フレーム3と前輪4と後輪5とボンネット6とエンジンEと操縦部7とミッションケース10を備える。
【0019】
車体フレーム3とミッションケース10は、走行車体2のメインフレームである。
【0020】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。
【0021】
トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0022】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。
【0023】
エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0024】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。
【0025】
操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示するメータパネル11(表示部)を備える。
【0026】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバー14などの各種操作レバーや、クラッチペダル18、ブレーキペダル15、アクセルペダル19などの各種操作ペダルを備える。
【0027】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、PTO軸16へ伝達する。
【0028】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機Wが連結され、作業機Wを駆動する動力を伝達するPTO軸16がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸16は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。
【0029】
また、走行車体2の後部には、作業機Wを昇降させる昇降装置12が設けられる。昇降装置12は、作業機Wを上昇させることで、作業機Wを非作業位置に移動させる。非作業位置は、例えば、走行車体2が後退する場合や、走行車体2が旋回する場合に、作業機Wを上昇させる位置である。また、昇降装置12は、作業機Wを下降させることで、作業機Wを対地作業位置に移動させる。昇降装置12は、油圧式の昇降シリンダ121と、リフトアーム122と、リフトロッド123と、ロワリンク124と、トップリンク125とを備える。
【0030】
リフトアーム122は、昇降シリンダ121に作動油が供給されると、回動支点となる軸AXまわりに作業機Wを上昇させるように回動し、昇降シリンダ121から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機Wを下降させるように回動する。
【0031】
なお、リフトアーム122の基部(軸AX付近)には、リフトアーム122の回動角度を検知する昇降装置センサとしてのリフトアームセンサ26が設けられる。
【0032】
作業機Wの高さは、リフトアームセンサ26の検知結果や、作業機Wに取り付けられた作業機測位装置31により得られる作業機Wの高さと走行車体2に取り付けられた車体測位装置30により得られる走行車体2の高さの比較に基づいて算出される。
【0033】
車体測位装置30および作業機測位装置31は、たとえば、GNSSアンテナであり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。また、測位結果の履歴や電波のドップラー効果などから移動速度を算出することもできる。
【0034】
作業機測位装置31は、作業機Wのフレーム36上部に設けた測位装置ブラケット37の上端に設けられている。
【0035】
測位装置ブラケット37は、作業機Wのフレーム36上部に基部が固定された基部支持フレーム37aと該基部支持フレーム37a上端部に機体左右方向の回動支点としての枢支軸38にて前後回動自在に設けた回動支持フレーム37bにて構成され、回動支持フレーム37bの上端部に作業機測位装置31が設けられている。
【0036】
そして、作業機Wのフレーム36上部と回動支持フレーム37bの間に傾斜装置としての電動シリンダ39を設け、該電動シリンダ39の伸縮作動にて、回動支持フレーム37bが基部支持フレーム37aと一直線状に上方に延びる使用状態(イ)と回動支持フレーム37bが基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更される。
【0037】
なお、測位装置ブラケット37基部を作業機Wのフレーム36に取付ける部位に測位装置ブラケット37の振動を防止する免震層を設けても良い。
【0038】
免震層は、板バネを積層した機械的な構成、積層ゴム、エアダンパや油圧ダンパを用いた衝撃吸収層、またはそれらの組み合わせで構成する。
【0039】
また、リフトアーム122は、リフトロッド123を介してロワリンク124に連結される。このように、昇降装置12は、ロワリンク124とトップリンク125とで、走行車体2に対して作業機Wを昇降可能に連結する。ロワリンク124はミッションケース10の後部に取り付けられると共にドラフトセンサ27によりロワリンク124に係る荷重が検出される。この荷重の検出により作業機装着の有無を判定することができる。
【0040】
また、トラクタ1は、制御装置40(
図3参照)を備える。制御装置40は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御装置40は、作業機Wを昇降制御する。
【0041】
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末)100の操作によって、特定の圃場における各種作業の設定などを行うことができる。情報処理端末100は、たとえば、ハードディスク、ROM、RAMなどで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。
【0042】
また、トラクタ1は、障害物センサ20を備える。障害物センサ20は、前方センサ21と、後方センサ22とを備える。前方センサ21は、たとえば、ボンネット6の前方に設けられたセンサ取付ステー13に取り付けられるなど、走行車体2の前部に配置され、走行車体2の前方に存在する障害物(人や、物体)を検知する。
【0043】
後方センサ22は、たとえば、キャビン7aの上部に取り付けられるなど、走行車体2の後部上側に配置され、走行車体2の後方に存在する障害物を検知する。なお、後方センサ22は、図示しないモータによってキャビン7a、すなわち走行車体2に対する角度を変更することができる。
【0044】
また、前方センサ21および後方センサ22は共に、中距離センサであり、好ましくは赤外線センサである。前方センサ21および後方センサ22は、赤外線ビームを放射し、障害物からの反射光を検知する。前方センサ21は、前方に延びる検知領域を有する。また、後方センサ22は、後方へ延びる検知領域を有する。
【0045】
前方センサ21および後方センサ22は、たとえば、赤外線ビームを放射した後、障害物からの反射光を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。赤外線センサである前方センサ21および後方センサ22は、障害物を2次元的に検知し、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知領域である。なお、障害物センサ20として、赤外線センサ以外のソナーやミリ波レーダーなど他の中距離センサを用いることやその併用も可能である。
【0046】
図1に示すように、トラクタ1は、車体測位装置30により得られる走行車体2の位置H1と作業機測位装置31により得られる作業機Wの位置H2から、走行車体2に対する作業機Wの位置Hが算出される。
【0047】
図1に示す例では、作業機測位装置31が、車体測位装置30に対して所定の位置Hに配置されるように昇降されている。
【0048】
また、制御装置40は、作業機Wの位置H2から、走行車体2の位置H1が機体により固定値であるから、圃場の高さを計算する。
【0049】
そして、制御装置40は、作業機Wの位置H2により計算された圃場の高さと車体測位装置30による測位情報から、圃場の高さマップを作成する。
【0050】
そして、圃場の高さマップから、圃場の均平性の情報を形成し、ローダー等による土盛りが必要かの判断をし、表示部(液晶モニタ)356に高さマップ及び土盛り必要箇所を表示する。
【0051】
次に、
図3を参照してトラクタ1の動力伝達について説明する。
図3は、作業車両(トラクタ)1の動力伝達模式説明図である。
図3に示すように、トラクタ1は、ミッションケース10内に、変速装置(トランスミッション)70を備えている。変速装置70は、エンジンEから後輪5などへ回転動力を伝達する動力伝達装置71を備えている。動力伝達装置71は、エンジンEから出力される回転動力を、前輪4、後輪5および、走行車体2に連結された作業機W(
図1参照)へ伝達し、前輪4、後輪5および作業機Wを駆動する。
【0052】
動力伝達装置71は、前後進切換部72と、主変速部73と、副変速部74と、前輪変速部75とを備えている。動力伝達装置71は、エンジンEからの回転動力を、たとえば、入力軸76、前後進切換部72、主変速部73、副変速部74を順に介して後輪5,5へ伝達する。
【0053】
また、動力伝達装置71は、エンジンEからの回転動力を、たとえば、入力軸76、前後進切換部72、主変速部73、副変速部74、前輪変速部75を順に介して前輪4,4へ伝達する。また、動力伝達装置71は、エンジンEからの回転動力を、たとえば、入力軸76、PTO駆動部を順に介して作業機Wへ伝達する。
【0054】
図3に示すように、入力軸76は、エンジンEの出力軸に設けられ、エンジンEからの回転動力が伝達(入力)される。なお、以下では、動力伝達の方向について、エンジンE側を動力伝達上流側と規定し、最終的な出力先である前輪4,4、後輪5,5および作業機W側をそれぞれ動力伝達下流側と規定する。
【0055】
前後進切換部(以下、前後進クラッチ部という)72は、エンジンEから伝達される回転動力を、メイン軸77の正逆転によって、前進方向の回転または後進方向の回転に切り換える。前後進クラッチ72部は、たとえば、操縦席8において前後進レバーが操作されることで、油圧制御によって、前進と後進とを切り換える。
【0056】
主変速部73は、主変速装置と高低変速装置とを備えている。主変速装置は、エンジンEからの回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速する。主変速装置は、第1主変速クラッチと、第2主変速クラッチとを備え、複数の変速段として、たとえば1速ギヤ~4速ギヤを備えている。
【0057】
第1主変速クラッチは、油圧多板式の1速クラッチと、油圧多板式の3速クラッチとを備え、1速クラッチ側に1速ギヤが設けられ、3速クラッチ側に3速ギヤが設けられている。第2主変速クラッチは、油圧多板式の2速クラッチと、油圧多板式の4速クラッチとを備え、2速クラッチ側に2速ギヤが設けられ、4速クラッチ側に4速ギヤが設けられている。なお、第1主変速クラッチと第2主変速クラッチとは、「主変速クラッチ」を形成する。
【0058】
主変速クラッチは、第1主変速クラッチおよび第2主変速クラッチの接続状態に応じて、エンジンEからの回転動力を1速ギヤ~4速ギヤのいずれかの変速比で変速して後段、すなわち動力伝達下流側へ伝達する。主変速クラッチは、たとえば、操縦席8において主変速操作部17が操作されることで、1速ギヤ~4速ギヤのうちの1つを選択する。
【0059】
高低変速装置は、エンジンEからの回転動力を、高速段または低速段で変速する。高低変速装置は、高速側油圧多板クラッチ(Hiクラッチ)と低速側油圧多板クラッチ(Loクラッチ)と高速ギヤと低速ギヤとを備えている。なお、HiクラッチとLoクラッチとは、「Hi-Loクラッチ」を形成する。
【0060】
Hi-Loクラッチは、主変速クラッチによって変速された回転動力を、高速ギヤの変速比または低速ギヤの変速比で変速して後段、すなわち動力伝達下流側へ伝達する。Hi-Loクラッチは、たとえば、操縦席8において主変速操作部17が4速~5速の間で操作されることで、油圧制御によって、自動的に高速側または低速側に切り換える。Hi-Loクラッチは、たとえば、高速側4段、低速側4段の8段変速となる。
【0061】
副変速部74は、副変速装置を備え、エンジンEから、たとえば、前後進クラッチ部72、主変速部73(主変速装置、高低変速装置)を順に介して伝達される回転動力を複数の変速段のいずれかに変速可能である。副変速装置は、第1副変速機(第1変速シフタ)と、第2副変速機(第2変速シフタ)とを備えている。なお、第1変速シフタと第2変速シフタとは、「副変速機」を形成する。
【0062】
副変速機は、変速軸78に伝達された回転動力を、第1変速シフタ、第2変速シフタ、複数のギヤを介して変速して出力軸79へ伝達する。副変速機は、エンジンEから伝達されさらに主変速装置などで変速された回転動力を、たとえば4段変速して後輪5,5側へ伝達する。
【0063】
すなわち、メイン軸77の回転は、たとえば4段変速する主変速クラッチと、高低2段に変速するHi-Loクラッチと、機械式にたとえば4段変速する副変速機とによって変速され、最終的に出力軸79へ伝達される。
【0064】
動力伝達装置71は、出力軸79に伝達される回転動力を、後輪差動ギヤ(後輪デフ)80、車軸(ドライブシャフト)81、遊星ギヤ機構などを介して後輪5,5へ伝達される。この結果、トラクタ1は、エンジンEからの回転動力によって、後輪5,5が駆動輪として回転駆動する。
【0065】
前輪変速部(4WDクラッチ部)75は、前輪変速装置を備え、入力軸76に伝達される回転動力を前輪4,4側へ伝達する。前輪変速装置は、前輪増速クラッチと、前輪等速クラッチとを備えている。なお、前輪増速クラッチと前輪等速クラッチとは、「前輪変速クラッチ(4WDクラッチ)」を形成する。
【0066】
4WDクラッチは、第1前輪駆動軸82に設けられ、前輪等速クラッチが接続されている場合に、第1前輪駆動軸82の回転を等速で第2前輪駆動軸83へ伝達する。また、4WDクラッチは、前輪増速クラッチが接続されている場合に、複数のギヤを介して、第1前輪駆動軸82の回転を増速して第2前輪駆動軸83へ伝達する。
【0067】
4WDクラッチは、第2前輪駆動軸83に伝達された回転動力を、前輪差動ギヤ(前輪デフ)84、車軸(ドライブシャフト)85、遊星ギヤ機構などを介して前輪4,4へ伝達する。この結果、トラクタ1は、左右の前輪4,4および左右の後輪5,5の四輪駆動(4WD)で走行可能となる。
【0068】
トラクタ1は、前輪4,4側に、パワーステアリング装置を構成するステアリングシリンダ55を備えている。また、トラクタ1は、後輪5,5側に、制動装置を構成する左右のブレーキ56L,56Rを備えている。また、トラクタ1は、走行車体2の走行に関する制御を行う制御装置40を備えている。
【0069】
また、図示しないが、動力伝達装置71は、PTO駆動装置をさらに備えている。PTO駆動装置は、エンジンEからの回転動力を変速して走行車体2後部のPTO軸16から作業機Wに出力することで、エンジンEからの動力によって作業機Wを駆動する。
【0070】
PTO駆動装置は、PTOクラッチ装置と、PTO変速装置と、PTO軸16とを備えている。PTO駆動装置は、走行車体2後部の作業機Wを駆動する駆動状態と、作業機Wの駆動を停止した非駆動状態とを切り換える。
【0071】
図4を参照して、操縦席8の周りに設けられた各種操作機器について説明する。
図4は、操縦席8右側方の概略斜視図である。なお、図に示す各種操作機器は一例であり、操作機器の種類や配置など、これに限定されるものではない。
【0072】
図4に示すように、操縦席8の右側方には、主変速操作部17(主変速増速ボタン17a、主変速減速ボタン17b)、副変速レバー14、アクセルレバー151、ポジションレバー152、昇降位置設定手段(上げ高さダイヤル)90、公道走行ボタン91、操作パネル収納部62などが設けられている。このうち、ポジションレバー152は、リフトアーム122を昇降する場合に操作される。
【0073】
また、操縦席8の右側方には、PTO自動/手動切換スイッチ、PTO入切スイッチ、エンジン回転指示部、回転数増加調節スイッチ、回転数減少調節スイッチなどの各種操作スイッチ類が設けられている。なお、操作パネル収納部62には、上記以外の他の操作スイッチ類が設けられた操作パネルが収納される。
【0074】
昇降位置設定手段(上げ高さダイヤル)90は、油圧シリンダである昇降シリンダ121を調節して公道走行ボタン91が押された時や制御装置40が路上走行中と判定した時の走行車体2に対する作業機Wの所定の位置H、またはリフトアームセンサ26が検出するリフトアーム122の所定の回動角度Dの値を調整するダイヤルである。走行車体2に対する作業機Wの所定の位置Hと、リフトアームセンサ26が検出するリフトアーム122の回動角度Dのいずれを利用するかはメータパネル11や情報処理端末100を用いて予め設定される。
【0075】
次に、
図5を参照してステアリングホイール9の周りに設けられた各種操作機器について説明する。
図5は、操縦席8の前方にある操作機器の説明図である。なお、各図に示す操作機器の種類や配置などは一例であり、これに限定されるものではない。
【0076】
図5に示すように、操縦席8の前方には、上述したように、ステアリングホイール9が設けられている。また、ステアリングホイール9が取り付けられたハンドルポスト350の下部左方にはクラッチペダル18が設けられ、ハンドルポスト350の下部右方にアクセルペダル19およびブレーキペダル15が設けられている。なお、ブレーキペダル15は、左右それぞれのブレーキペダル15L,15Rを備えている。
【0077】
ハンドルポスト350の上部左方には前後進レバー201が設けられている。また、ハンドルポスト350の上部右方にはアクセルレバー351、ウィンカレバー352およびワンタッチ昇降レバー353が設けられている。なお、ワンタッチ昇降レバー353は、機体に作業機を連結するリフトアームをポジションレバー152の操作位置または最上位置へワンタッチで操作するものである。また、ハンドルポスト350の中央にはPTO変速レバー354が設けられている。
【0078】
図5及び
図6に示すように、ステアリングホイール9の前方にはダッシュボードカバー355が設けられている。また、ダッシュボードカバー355には、操縦席8のオペレータから見えるようにメータパネル11が設けられている。また、メータパネル11には表示部(液晶モニタ)356やエンジン回転計(タコメータ)357などが設けられている。なお、液晶モニタ356では、たとえば、現在の変速段を表示する変速段表示、燃料消費率表示および走行速度表示などの各種表示がなされ、燃料消費率表示と走行速度表示とは一定時間ごとに切り替わるように表示されてもよい。
【0079】
ダッシュボードカバー355の右部には走行モード選択スイッチ223およびエンジンモード選択スイッチ192が設けられている。なお、エンジンモード選択スイッチ192が押されると、エンジンEが低燃費のエンジン出力カーブで制御される。
【0080】
また、本実施形態では、トラクタ1は、圃場を走行する圃場モードと、路上を走行する路上モードとをモード選択スイッチ223によって手動で切り替え可能に構成されている。圃場モードとは、圃場で作業を行う際に選択される制御モードであり、例えば、車速が低速(1~10km/h)でのみ走行するように制御される。また、路上モードとは、例えば、圃場までの路上を走行する際に選択される制御モードであり、例えば、車速が高速(15km/h以上)で走行できるように制御される。
【0081】
そして、実施形態に係る制御装置40は、路上モードが選択され、副変速レバー14が高速に操作された場合において、作業機Wの昇降位置が規定の高さ(路上走行可能な高さ)に位置しない場合に、作業者へ所定の通知(音声あるいは画面表示)を行い、作業機Wの昇降位置が規定の高さに位置しない旨を作業者へ知らせる。
【0082】
そして、制御装置40は、かかる通知が行われている期間中に、自動で作業機Wを規定の高さまで昇降させる。これにより、作業機Wが規定の高さに位置しないまま路上走行してしまうことを低減できる。
【0083】
また、実施形態に係る制御装置40は、作業機Wを規定の高さまで自動昇降させる際には、リフトアームセンサ26または車体測位装置30と作業機測位装置31の検知状況を用いる。具体的には、制御装置40は、リフトアームセンサ26または車体測位装置30と作業機測位装置31の検知状況が特定の状況である場合に、作業機Wの昇降位置が規定の高さであると判定する。かかる点について、
図1を用いて説明する。
【0084】
図1では、走行車体2の高さがH1、作業機Wであるロータリ耕耘機の昇降位置が高さH2である場合を示している。制御装置40は、作業機Wがロータリ耕耘機の場合、
図1に示す状況を耕耘作業状態と検出し、作業機Wが規定の高さであると判定する。例えば、車体測位装置30から得られる走行車体2の高さH1と作業機測位装置31から得られる作業機Wの高さH2の差から走行車体2に対する作業機Wの位置Hが所定の範囲内である場合、またはリフトアーム122の角度が所定の範囲内である場合を耕耘作業状態とし、作業機Wが規定の高さであると判定する。
【0085】
すなわち、制御装置40は、走行車体2に対する作業機Wの位置H、またはリフトアーム122の回動角度Dから、作業機Wの昇降位置が規定の高さであると判定することで、作業機Wを適切な位置に昇降させることができる。
【0086】
また、
図1では、作業機Wがロータリ耕耘機である場合を例に挙げたが、例えば、作業機Wは、ハロー(砕土機)や、ブロードキャスタ(施肥機)、牽引作業機等であってもよい。
【0087】
また、制御装置40は、作業機Wの昇降位置が規定の高さであると判定するための特定の状況が、作業機Wの種別に応じて異なってもよい。
【0088】
また、実施形態に係る制御装置40は、作業機Wを自動昇降させる場合の昇降速度を制御する。具体的には、制御装置40は、トラクタ1が路上走行時(路上モード時)における自動昇降の昇降速度を、圃場走行時(圃場モード時)における昇降速度に比べて遅くする。これにより、障害物や歩行者が圃場に比べて多い路上の走行時における安全性を向上させることができる。
【0089】
次に、
図7を参照して制御装置40を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。
図7は、作業車両1の制御系の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、制御装置40は、エンジンECU41と走行系ECU42と作業機昇降系ECU43を備える。
【0090】
エンジンECU41は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU42は、駆動輪の回転を制御することで、走行車体2の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU43は、昇降装置12を制御して作業機Wを昇降制御する。
【0091】
制御装置40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPUなどを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の予定走行経路などの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
【0092】
図7に示すように、制御装置40には、車体測位装置30、作業機測位装置31、エンジン回転センサ23、車速センサ24、切れ角センサ25、障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)、リフトアームセンサ26、レバーセンサ35などの各種センサ類やロック操作検出スイッチ138、モード選択スイッチ223、公道走行ボタン91、上げ高さダイヤル90などの各種スイッチ類が接続される。なお、エンジン回転センサ23は、エンジンEの回転数を検知する。車速センサ24は、走行車体2の走行速度(車速)を検知する。切れ角センサ25は、操舵輪である前輪4の切れ角を検知する。切れ角センサ25は、機体の旋回を検知する。レバーセンサ35は副変速レバー14が少なくとも高速位置に操作されていることを検出する。
【0093】
制御装置40には、車体測位装置30から走行車体2の位置情報、作業機測位装置31から作業機Wの位置情報、エンジン回転センサ23からエンジンEの回転数、車速センサ24から走行車体2の走行速度、切れ角センサ25から前輪4の切れ角、障害物センサ20から障害物の検知結果、リフトアームセンサ26から作業機Wの高さ、レバーセンサ35から副変速レバー14の高速位置操作の有無がそれぞれ入力される。制御装置40は、トラクタ1を自律走行させる場合、切れ角センサ25の検知結果を用いて、前輪4の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を自動操舵する。
【0094】
また、制御装置40には、エンジンECU41がエンジンEに接続され、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53などに接続され、作業機昇降系ECU43が昇降装置12に接続される。
【0095】
このうち、作業機昇降系ECU43は、昇降装置12に向けて作業機昇降信号を出力する。昇降装置12は、作業機昇降系ECU43から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機Wを昇降駆動する。また、作業機Wの走行車体2に対するローリング角度を調整する水平シリンダ33を制御する。水平シリンダ33は右側のリフトロッド123に設けられ、伸縮して長さを変更することにより、ローリング角度が調整される。
【0096】
そして、作業機昇降系ECU43は、ポジションレバー152またはワンタッチ昇降レバー353を操作して作業機Wを最上位置へ上昇させた際に、リフトアームセンサ26が検出するリフトアーム122の回動角度Dが作業機Wの作業領域を越えた上昇の角度検出にて、電動シリンダ39を縮小させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更する。
【0097】
なお、リフトアームセンサ26が検出するリフトアーム122の回動角度Dに換えて、作業機測位装置31により得られる作業機Wの位置H2または走行車体2に対する作業機Wの位置Hにより作業機Wの作業領域を越えた上昇を判断して、電動シリンダ39を縮小させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更しても良い。
【0098】
また、ポジションレバー152またはワンタッチ昇降レバー353の作業機Wを最上位置へ上昇させる操作の検出により、電動シリンダ39を縮小させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更しても良い。
【0099】
そして、ポジションレバー152またはワンタッチ昇降レバー353を操作して作業機Wを最上位置へ上昇させた状態から圃場に接地する作業位置に下降させると(リフトアームセンサ26が検出するリフトアーム122の回動角度Dが作業機Wの作業領域になった角度検出、作業機測位装置31により得られる作業機Wの位置H2や走行車体2に対する作業機Wの位置Hにより作業機Wの作業領域になった判断、またはポジションレバー152やワンタッチ昇降レバー353の作業機Wを作業領域へ下降させる操作の検出にて)、電動シリンダ39を伸長させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aと一直線状に上方に延びる使用状態(イ)に変更する。
【0100】
また、圃場で耕耘作業をしていて機体を畦際で旋回する際に、作業機昇降系ECU43は、操縦者がステアリングホイール9を旋回操作(機体を旋回させる為に、所定角度以上にステアリングホイール9を操作)すると自動的に作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置まで上昇する(オートリフト)が、該ステアリングホイール9の旋回操作にて電動シリンダ39を縮小させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更しても良い。
【0101】
そして、旋回終了時に操縦者がステアリングホイール9を直進状態に戻すと自動的に作業機Wを作業領域まで下降させるが、該ステアリングホイール9の戻し操作にて電動シリンダ39を伸長させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aと一直線状に上方に延びる使用状態(イ)に変更する。
【0102】
従って、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇すると、電動シリンダ39を縮小させて回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更して、作業機測位装置31が走行車体2と接触することを防止できる。
【0103】
また、回動支持フレーム37bを基部支持フレーム37aに対して後方に折れた退避状態(ロ)に変更した際には、作業機測位装置31は、航法衛星Sからの電波の受信等の信号の受け付けを停止する。
【0104】
図8は、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇すると、測位装置ブラケット37を後方に折れた退避状態(ロ)に変更して作業機測位装置31が走行車体2と接触することを防止する他の実施形態を示す。
【0105】
即ち、上端部に作業機測位装置31を設けた測位装置ブラケット37の基部が作業機Wのフレーム36上部に機体左右方向の回動支点としての枢支軸45にて回動自在に枢支され、該枢支軸45にコイルスプリングを設けて、測位装置ブラケット37が作業機Wのフレーム36から上方に向けて垂直状に起立する状態に付勢している。
【0106】
そして、走行車体2のロプスフレームのアッパ側上部に基部を固定したストッパ46を測位装置ブラケット37の方向に向けて延設している。
【0107】
ストッパ46の先端は、作業機Wが作業領域にある時は測位装置ブラケット37に接当せず、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇すると測位装置ブラケット37に接当してコイルスプリングの付勢力に抗して測位装置ブラケット37を後方に折れた退避状態(ロ)に変更して作業機測位装置31が走行車体2と接触することを防止する。
【0108】
また、ストッパ46の先端面には、ストッパ46の先端が測位装置ブラケット37に接当したことを検出する接触センサを設けて、該接触センサがストッパ46の先端が測位装置ブラケット37に接当したことの検出にて、作業機測位装置31が航法衛星Sからの電波の受信等の信号の受け付けを停止する。
【0109】
また、圃場内で作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇するのは、畦際での機体旋回時であるから、接触センサがストッパ46の先端が測位装置ブラケット37に接当したことの検出にて、車体測位装置30による機体の位置情報を畦際近接の補足情報として記憶する。
【0110】
なお、上記の測位装置ブラケット37の基部を作業機Wのフレーム36上部に枢支軸45とコイルスプリングにて回動自在に支持する構成に換えて、
図9に示すスプリング支持座47にて支持しても良い。
【0111】
即ち、スプリング支持座47は、下面板47aを作業機Wのフレーム36上面に固定し、下面板47aと上面板47bを多数の板バネ47cにて連結している。そして、上面板47bに測位装置ブラケット37の基部を固定している。
【0112】
従って、測位装置ブラケット37は、多数の板バネ47cにて作業機Wのフレーム36から上方に向けて垂直状に起立する状態に付勢され、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇するとストッパ46の先端に接当して多数の板バネ47cの付勢力に抗して後方に折れた退避状態(ロ)に変更する。
【0113】
図10及び
図11は、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇すると、測位装置ブラケット37を後方に折れた退避状態(ロ)に変更して作業機測位装置31が走行車体2と接触することを防止する他の実施形態を示す。
【0114】
即ち、上端部に作業機測位装置31を設けた測位装置ブラケット37の基部が作業機Wのフレーム36上部に機体左右方向の枢支軸45にて回動自在に枢支され、該枢支軸45にコイルスプリングを設けて、測位装置ブラケット37が作業機Wのフレーム36から上方に向けて垂直状に起立する状態に付勢している。
【0115】
そして、走行車体2のロプスフレームのアッパ側上部に基部を固定したガイド48を後方に向けて設け、ガイド48先端に設けた円筒状のガイド環48a内を測位装置ブラケット37が挿通している。
【0116】
なお、ガイド環48a内周面には、樹脂製の防振材が設けられており、測位装置ブラケット37の前後及び左右方向の振動を抑制する。
【0117】
従って、作業機Wが作業領域にある時はガイド48先端のガイド環48a内を測位装置ブラケット37が自由に上下移動し、作業機Wが作業領域を越えた所定の上昇位置に上昇するとガイド48先端のガイド環48aにて測位装置ブラケット37が後方に押されてコイルスプリングの付勢力に抗して測位装置ブラケット37を後方に折れた退避状態(ロ)に変更して作業機測位装置31が走行車体2と接触することを防止する。
【0118】
また、測位装置ブラケット37には、磁性体よりなる基準ライン49が設けられ、円筒状のガイド環48a内には、磁性体よりなる基準ライン49を検出するセンサが設けられている。
【0119】
作業機Wが作業領域にある時は、測位装置ブラケット37の基準ライン49がガイド環48aの上下幅内にあり、作業機Wが作業領域を越えて上昇すると基準ライン49がガイド環48aの上下幅の上方になる。
【0120】
従って、作業機Wが作業領域を越えて上昇して基準ライン49がガイド環48aの上下幅の上方になったことをセンサが検出すると、作業機測位装置31が航法衛星Sからの電波の受信等の信号の受け付けを停止する。
【0121】
また、操縦部7に設けたオンオフスイッチにて作業機測位装置31の作動を入り切りしても良い。
【0122】
また、走行車体2に設けた車体測位装置30による自動直進制御が作動している時のみ作業機測位装置31が作動するようにしても良い。
【0123】
また、制御装置40は、たとえば、作業者が携行可能な情報処理端末100と無線接続される。制御装置40は、作業者の操作による情報処理端末100からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。また、制御装置40は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを情報処理端末100などからも行うことができるように構成してもよい。
【0124】
また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、走行車体2を停止させる。また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、エンジンEを停止させたり、PTO軸16への回転動力の伝達を中止させたりする。また、制御装置40は、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、警報器(不図示)を作動させて、障害物が検知されたことを報知してもよい。
【0125】
また、制御装置40は、トラクタ1が自律走行しつつ作業を行うモードである「自動運転モード」を有する。制御装置40は、自動運転モードにおいては、作業機Wによる作業内容に応じた予定走行経路が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶され、測位装置30の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路に沿って走行するように、エンジンE、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置12などの各部を制御する。なお、予定走行経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには作物の種類などに応じて設定される。
【0126】
また、制御装置40は、上述した通り、ロック操作検出スイッチ138がロック状態を検出している場合、副変速レバー14が高速に操作されていて、モード選択スイッチ223が路上モードに設定されている場合、または制御装置40に予め登録されている圃場の位置情報および形状情報と作業機測位装置31により、走行車体2に取り付けられた作業機Wが圃場外にいることを検知した場合に、作業機Wを予め定められた位置になるように昇降する。この時、作業機Wのローリング角度が走行車体2に対して略水平になるよう水平シリンダ33により自動的に調整されることで、より路上走行に適した姿勢にすることができる。
【0127】
予め定められた作業機Wの位置は、例えば、ポジションレバー152を手動操作して高さ調節後、ヒューズを抜いた状態で特定のボタン(例えば、公道走行ボタン91)を押すなどの操作により設定される。また予め定められた作業機Wの位置を情報処理端末100の操作により設定してもよいし、昇降位置設定手段(上げ高さダイヤル)90で設定してもよい。これにより、路上走行時の作業機Wの昇降位置を任意の位置に設定できるため、どのような作業機Wを装着しても、路上走行時において適切な昇降位置に作業機Wを昇降できる。
【0128】
また、予め定められた作業機Wの位置が設定された後、例えば、抜いたヒューズを戻すなどした通常の状態で公道走行ボタン91が押下された場合、作業機Wをポジションレバー152の操作位置にかかわらず、予め定められた位置に制御してその後公道走行ボタン91を再度押すまでポジションレバー152による操作を受け付けず、上げ高さダイヤル90によってのみ作業機Wの昇降位置を微調整できる構成としてもよい。これにより、路上走行中に不意に作業機Wを昇降操作してしまい、不適切な位置で走行することを防止できる。
【0129】
また、予め登録されている圃場の位置と範囲の情報と作業機測位装置31により、走行車体2に取り付けられた作業機Wが圃場外から圃場内に入ったことを検知した場合、作業機Wを予め定められた位置から最上げ位置に上昇させるとよい。これにより圃場内では小回りが利くようになり、畔などとの接触も抑制できる。また作業機測位装置31により判定することにより、走行車両が作業機をつけずに圃場内に入った場合に、不要な上昇制御を実行しないような構成とすることができる。
【0130】
さらに、作業機測位装置31から作業機Wの移動速度を算出して、これが所定の速度(例えば、15km/h)以上となる場合、運転者に警告を報知する。これにより作業機Wを取り付けた状態で高速走行することを抑制し、転倒しやすい状態での走行を抑制できる。作業機測位装置31から作業機Wの移動速度を算出して判定することで、作業機Wをつけない状態など、問題なく走行できる状態での不要な報知を防止できる。
【0131】
また、
図12は、キャビン7aの後上部を示す図である。
【0132】
キャビン7a後上部には、左右側に作業灯65が設けられ、中央部に設けたエアコンユニットのカバー66が設けられている。
【0133】
そして、左右側の作業灯65取付け部付近に基部を固定したガード67がカバー66の下方を囲うように設けられている。
【0134】
従って、ガード67により、特殊な作業機Wを装着する時にキャビン7aが破損することを防止できる。
【0135】
<作業機W>
作業機Wは、圃場内で作業を行う機械である。
図1に示す例では、作業機Wは、圃場において耕耘作業を行うロータリ耕耘機である。ロータリ耕耘機は、PTO軸16から伝達された動力によって耕耘爪61が回転することで、圃場面(土壌)を耕耘する。
【0136】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
2 走行車体
12 昇降装置
26 昇降装置センサ(リフトアームセンサ)
31 作業機測位装置
37 測位装置ブラケット
38 回動支点(枢支軸)
39 傾斜装置(電動シリンダ)
45 回動支点(枢支軸)
48 ガイド
D 回動角度
W 作業機