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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151909
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】取水設備及び異物除去方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20230101AFI20241018BHJP
   E02B 1/00 20060101ALI20241018BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20241018BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C02F1/50 510E
E02B1/00 301Z
C02F1/50 520F
C02F1/50 532Z
C02F1/50 540C
C02F1/50 550C
C02F1/50 550L
C02F1/00 P
G21D1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065725
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 成昭
(57)【要約】
【課題】水の流路に異物が付着することを抑制する。
【解決手段】取水設備は、一端に海水を取り込む取水口及び他端に海水を放水する放水口を有する第1水路と、一端と他端とが第1水路の異なる位置に接続される第2水路と、第1水路及び第2水路に海水を流す駆動部と、第1水路及び第2水路の少なくとも一方に接続し、第1水路に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に海水を取り込む取水口及び他端に前記海水を放水する放水口を有する第1水路と、
一端と他端とが前記第1水路の異なる位置に接続される第2水路と、
前記第1水路及び前記第2水路に前記海水を流す駆動部と、
前記第1水路及び前記第2水路の少なくとも一方に接続し、前記第1水路に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置と、を備える、
取水設備。
【請求項2】
前記取水口と前記放水口とが閉鎖され、且つ前記第1水路と前記第2水路とが接続された状態とする切換機構を有し、
前記分解酵素投入装置から前記第1水路に前記分解酵素を投入し、前記駆動部が駆動して前記第1水路に前記海水を循環させることにより、前記分解酵素が前記第1水路と前記第2水路とを循環する、
請求項1に記載の取水設備。
【請求項3】
前記第1水路に接続され、前記第1水路に海水と共に侵入する水生生物を除去する添加剤を投入するための添加剤投入装置を備える、
請求項1に記載の取水設備。
【請求項4】
前記添加剤投入装置は、前記第2水路を非接続とした状態で、前記添加剤投入装置から前記第1水路に前記添加剤を投入し、
前記第1水路は、前記駆動部が駆動して前記海水が流れることにより、前記海水と前記添加剤とが流れる、
請求項3に記載の取水設備。
【請求項5】
一端に海水を取り込む取水口及び他端に前記海水を放水する放水口を有する第1水路と、
一端と他端とが前記第1水路の異なる位置に接続される第2水路と、
前記第1水路及び前記第2水路に前記海水を流す駆動部と、
前記第1水路及び前記第2水路の少なくとも一方に接続し、前記第1水路に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置と、を備える取水設備の異物除去方法であって、
前記取水口と前記放水口とを閉鎖する工程と、
前記第1水路と前記第2水路を接続した状態で、前記分解酵素投入装置から前記第1水路に前記分解酵素を投入する工程と、
前記駆動部を駆動して前記第1水路に前記海水を流す工程と、
を含む、
異物除去方法。
【請求項6】
前記取水設備は、第1水路に接続され、前記第1水路に海水と共に侵入する水生生物を除去する添加剤を投入する添加剤投入装置をさらに備え、
前記第2水路を閉鎖する工程と、
前記第2水路を非接続とした状態で、前記添加剤投入装置から前記第1水路に前記添加剤を投入する工程と、
前記駆動部を駆動して、前記第1水路に前記海水を流す工程と、
を含む、
請求項5に記載の異物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取水設備及び異物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水や河川、湖の水を導入する設備には、配管等の水の流路に水生生物が付着することがある。流路に水生生物が付着すると、流路内の水の流れに影響が生じ、設備の運用に影響が生じる。特許文献1の技術では、ナノバブルを海洋生物に接触させることによって、海洋生物の遊泳を阻害することで、熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-120445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ナノバブルが接触しなかった水生生物は、熱交換水流路へ付着する可能性があり、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、水の流路に異物が付着することを抑制する取水設備及び異物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る取水設備は、一端に海水を取り込む取水口及び他端に前記海水を放水する放水口を有する第1水路と、一端と他端とが前記第1水路の異なる位置に接続される第2水路と、前記第1水路及び前記第2水路に前記海水を流す駆動部と、前記第1水路及び前記第2水路の少なくとも一方に接続し、前記第1水路に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置と、を備える。
【0007】
本開示に係る異物除去方法は、一端に海水を取り込む取水口及び他端に前記海水を放水する放水口を有する第1水路と、一端と他端とが前記第1水路の異なる位置に接続される第2水路と、前記第1水路及び前記第2水路に前記海水を流す駆動部と、前記第1水路及び前記第2水路の少なくとも一方に接続し、前記第1水路に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置と、を備える取水設備の異物除去方法であって、前記取水口と前記放水口とを閉鎖する工程と、前記第1水路と前記第2水路を接続した状態で、前記分解酵素投入装置から前記第1水路に前記分解酵素を投入する工程と、前記駆動部を駆動して前記第1水路に前記海水を流す工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る取水設備の模式図である。
図2図2は、実施形態に係る取水設備の運転中の海水の流れを示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る取水設備の運転中の異物除去方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る取水設備の停止中の海水の流れを示す模式図である。
図5図5は、実施形態に係る取水設備の停止中の異物除去方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、取水設備の変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
図1は、実施形態に係る取水設備の模式図である。取水設備1は、例えば原子力設備100に設けられる。取水設備1は、原子力設備100に設けられることに限られず、火力発電所や海水を取水する臨海設備に設けられてもよい。また、取水設備1は、海に限られず、河川、湖等の水を取水する設備に設けられてよい。本開示では、原子力設備100を例に説明する。
【0012】
<原子力設備>
ここで、原子力設備100の概要を説明する。原子力設備100は、例えば、加圧型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する。原子力設備100は、加圧型原子炉で発生した熱を用いて、例えば、発電を行う。原子力設備100は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、原子炉の炉心全体に亘って沸騰しない高温高圧水にする。この高温高圧水(1次冷却材)を蒸気発生器に送って、熱交換により蒸気を発生させる。そして、この蒸気(2次冷却材)をタービン発電機へ送って発電する。ここで、2次冷却材は、蒸気発生器で原子炉からの高温高圧の1次冷却材の熱によって蒸気となり、蒸気タービンを駆動した後、復水器10で海水により冷却されて復水となり、復水ポンプにより再び蒸気発生器に戻される。なお、原子力設備100は、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)が用いられた原子力設備であってもよい。
【0013】
復水器10は、2次冷却材が蒸気タービンを駆動させて発電した後、2次冷却材を海Sからの海水で冷却し、復水を生成する。
【0014】
<取水設備>
取水設備1は、原子力設備が隣接している取水対象、本実施形態では海Sから取水し、取得した水を復水器10に供給し、復水器10から排出される水を海Sに排出する。取水設備1は、第1水路12と、第2水路18と、制御部30と、駆動部40と、を備える。
【0015】
第1水路12は、復水器10に接続される。第1水路12は、一端に海水を取り込む取水口14となり、他端に前記海水を放水する放水口16となる。また、第1水路12は、取水路12aと放水路12bとを有する。
【0016】
取水路12aは、一方の端部が海Sと接続し、他方の端部が復水器10と接続する水路である。取水路12aは、海Sと接続する端部が取水口14となる。海Sからの海水が流入し、復水器10に供給する。取水路12aは、復水器10と接続する側から一定の範囲が管路となる。取水路12aは、海Sと接続する部分は例えば上面が開放された水路としてもよい。取水路12aの径は、例えば、数百mmから数千mmである。また、取水路12aは、ライニング加工が施されていることが好ましい。取水路12aは、例えば、タールによってライニング加工が施されていることが好ましい。取水路12aは、ポリエチレン(PE:Polyethylene)や高耐久PE等のいずれかによってライニング加工が施されていてもよい。なお、取水路12aの径やライニング加工は特に限定されない。
【0017】
放水路12bは、一方の端部が復水器10と接続し、他方の端部が海Sと接続する水路である。放水路12bは、海Sと接続する部分が放水口16となる。放水路12bは、復水器10と接続する側の一部が例えば中空の円筒形状であり、2次冷却材を冷却した海水が海Sに向かって流れる。放水路12bは、海Sと接続する部分は例えば上面が開放された水路としてもよい。放水路12bの径は、取水路12aと同一の径である。また、放水路12bも、取水路12aと同様のライニング加工が施されていることが好ましい。
【0018】
取水口14は、取水口14を閉鎖するための取水口弁14aを有する。取水口弁14aは、取水口14を開閉する。取水口弁14aは、例えば、板部材やシャッター部材であってよい。放水口16は、放水口16を閉鎖するための放水口弁16aを有する。放水口弁16aは、放水口16を開閉する。放水口弁16aは、例えば、板部材やシャッター部材であってよい。
【0019】
第2水路18は、一端と他端とが第1水路12の異なる位置に接続される。本実施形態の第2水路18は、一端が取水路12aと接続され、他端が放水路12bに接続される。また、第2水路18の径は、第1水路12と同一の大きさの径であっても異なる径であってもよい。第2水路18の径は、第1水路12の径よりも小さな径であってもよい。第2水路18は、一端の近傍に開閉弁18aを有し、他端の近傍に開閉弁18bを有する。開閉弁18aは、第2水路18の一端で第2水路18の開閉を切り替える弁である。開閉弁18bは、第2水路18の他端で第2水路18の開閉を切り替える弁である。開閉弁18aと開閉弁18bとは、例えば、逆流防止弁等であってよい。また、開閉弁18aと開閉弁18bとは、第1水路12と第2水路18の接続部に設け、流路を切り替える三方弁としてもよい。この場合、開閉弁18aは、取水口弁14aの機能も備えることができ、開閉弁18bは、放水口弁16aの機能も備えることができる。本実施形態の取水装置の開閉弁18a、18b、取水口弁14a、放水口弁16aとの組み合わせが切換機構となる。
【0020】
添加剤投入口20は、第1水路12に海水と共に侵入する水生生物(異物)を除去する添加剤を投入するための投入口である。添加剤投入口20は、第1水路12に設けられる。添加剤投入口20は、例えば、取水路12aの取水口14側に設けられることが好ましい。添加剤投入口20は、添加剤投入装置21が接続されていてよい。また、添加剤投入口20は、添加剤投入装置21を接続せず、外部から開閉できるものであってよい。この場合、添加剤を投入する度に添加剤投入口20の開閉を行う。添加剤投入口20は、図1では、円形であるが、多角形であってもよい。添加剤投入口20は、複数個設けられてもよい。異物及び添加剤については、後述する。
【0021】
添加剤投入装置21は、添加剤を貯蔵し、添加剤を添加剤投入口20から第1水路12に供給する。添加剤投入装置21は、例えば、タンクを有し、添加剤をタンクに貯蔵する。添加剤投入装置21は、制御部30に接続される。添加剤投入装置21は、制御部30からの制御信号によって添加剤投入口20に接続する接続部材を介して第1水路12に添加剤を供給する。
【0022】
分解酵素投入口22は、第1水路12に付着するバイオフィルム(異物)を分解する分解酵素を投入するための投入口である。分解酵素投入口22は、第1水路12及び第2水路18の少なくとも一方に設けられる。なお、本開示では、分解酵素投入口22は、第1水路12に設けられる場合を示している。分解酵素投入口22は、分解酵素投入装置23が接続されていてよい。また、分解酵素投入口22は、分解酵素投入装置23を接続せず、外部から開閉できるものであってよい。この場合、分解酵素を投入する度に分解酵素投入口22の開閉が行われる。分解酵素投入口22は、図1では、円形であるが、多角形であってもよい。
【0023】
分解酵素投入装置23は、分解酵素を貯蔵し、分解酵素を分解酵素投入口22から第1水路12に供給する。分解酵素投入装置23は、例えば、タンクを有し、分解酵素をタンクに貯蔵する。分解酵素投入装置23は、制御部30に接続される。分解酵素投入装置23は、制御部30からの制御信号によって分解酵素投入口22に接続する接続部材を介して第1水路12に分解酵素を供給する。分解酵素投入装置23は、第2水路18にも分解酵素投入口22が設けられる場合には、その分解酵素投入口22(第2水路18)に接続されてもよい。
【0024】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)及び記憶装置などを備えた演算装置である。制御部30は、取水口弁14a、放水口弁16a、開閉弁18a、開閉弁18b及び駆動部40に接続する。制御部30は、接続された各弁の開閉を制御することにより、海水の流れを制御する。制御部30は、駆動部40を制御する。制御部30は、駆動部40を制御することで、海水の流れを制御する。また、制御部30は、添加剤投入装置21と分解酵素投入装置23とにも接続し、第1水路12や第2水路18への添加剤や分解酵素の投入を制御する。
【0025】
駆動部40は、第1水路12及び第2水路18に海水を流すものである。駆動部40は、駆動部40が駆動することで第1水路12及び第2水路18に海水を流す。駆動部40は、ポンプPが接続され、例えば図示しないモーターにより駆動する。具体的には、駆動部40は、制御部30からの駆動信号により、駆動部40(モーター)が駆動し、ポンプPが作動することにより、第1水路12及び第2水路18に海水が流れる。
【0026】
ポンプPは、取水口14から取り込んだ海水を第1水路12及び第2水路18に流すものである。ポンプPは、駆動部40に接続する。ポンプPは、駆動部40が駆動すると、作動する。ポンプPは、添加剤を海水と共に第1水路12に流す。ポンプPは、取水設備1の復水器10の運転時に添加剤を海水と共に第1水路12に流す。また、ポンプPは、分解酵素を海水と共に第1水路12及び第2水路18に流す。ポンプPは、取水設備1の復水器10の停止時に海水と分解酵素とを第1水路12と第2水路18とに流す。
【0027】
<異物、添加剤及び分解酵素>
ここで異物、添加剤及び分解酵素について説明する。なお、本開示において、異物は、水生生物やバイオフィルムとする。水中の構造物には、水生生物が付着することがある。例えば、第1水路12は、海Sからの海水に異物が混入することがある。そのため、第1水路12の固体表面(例えば、内壁)には、水生生物が付着することがある。水生生物が第1水路12の内壁に付着するためには、まず、第1水路12の固体表面に、有機物が付着する。そして、海中にすむ微生物は、その有機物を基に、水生生物が付着可能なスライム状の物質(バイオフィルム)を第1水路12の内壁に形成する。水生生物は、体内から分泌する物質によりバイオフィルムに付着する。このように、水生生物は、微生物がバイオフィルムを水中の構造物の固体表面に形成したのちに、バイオフィルムに付着する。従って、バイオフィルムと水生生物とを適切に除去することが求められており、添加剤や分解酵素を海水と共に流すことにより、水生生物の付着を抑制できる。
【0028】
添加剤は、第1水路12に海水と共に侵入する水生生物を除去するものである。添加剤は、例えば、塩素ガスである。添加剤は、塩素ガスに限られず、オゾンガス等、水生生物を除去できるものであってよい。添加剤は、取水設備1の運転時に、添加剤投入装置21から投入することが好ましい。具体的には、復水器10の運転時に、添加剤は、第2水路18を非接続とした状態で、添加剤投入装置21から第1水路12に投入する。添加剤は、駆動部40が駆動して第1水路12に海水を流すことにより、海水と共に流れる。添加剤は、取水設備1が取り込んだ海水と共に、第1水路12を流れつつ、バイオフィルムに付着している、もしくは、第1水路12を流れる水生生物を除去する。
【0029】
分解酵素は、第1水路12に付着するバイオフィルムを分解するものである。分解酵素は、例えば、たんぱく質分解酵素が挙げられる。より具体的には、分解酵素は、デキストラナーゼが挙げられる。なお、分解酵素は、デキストラナーゼに限られず、バイオフィルムを分解する分解酵素であってよい。分解酵素は、取水設備1の停止時に、分解酵素投入装置23から投入することが好ましい。具体的には、復水器10の停止時に、分解酵素は、取水口14と放水口16とを閉鎖し、且つ第1水路12と第2水路18を接続した状態で、分解酵素投入装置23から投入する。分解酵素は、駆動部40が駆動して第1水路12に海水を流すことにより、第1水路12と第2水路18とを循環する。分解酵素は、取水設備1が取り込んだ海水と共に、第1水路12と第2水路18と循環しつつ、バイオフィルムを分解する。分解酵素は、取水設備1の運転が停止するときから、再度、運転を開始するまで第1水路12と第2水路18とを循環することが好ましい。このようにすることで、分解酵素の使用量を抑えることができる。また、取水設備1の運転が停止しているときは、取水設備1の運転中よりも低電力でポンプPが作動する。従って、環境への配慮にもつながる。
【0030】
<異物除去方法>
次に、以上説明した取水設備1に係る異物除去方法について図2から図5を用いて説明する。図2は、実施形態に係る取水設備の運転中の海水の流れを示す模式図である。図3は、実施形態に係る取水設備の運転中の異物除去方法の一例を示すフローチャートである。図4は、実施形態に係る取水設備の停止中の海水の流れを示す模式図である。図5は、実施形態に係る取水設備の停止中の異物除去方法の一例を示すフローチャートである。
【0031】
(取水設備の運転時の異物除去方法)
まず、取水設備1の運転時の異物除去方法を図2及び図3を用いて説明する。図2に示すように、取水設備1は、復水器10の運転時には、海Sから取水口14を介して矢印の方向に流れるように海水を取り込む。
【0032】
取水設備1は、第2水路18を閉鎖する(ステップS10)。具体的には、制御部30は、第2水路18の開閉弁18a及び開閉弁18bを閉鎖して、第2水路18を非接続状態とする。
【0033】
取水設備1に、添加剤を投入する(ステップS12)。具体的には、第2水路18を非接続とした状態で、添加剤投入装置21から第1水路12に添加剤を投入する。より詳しくは、制御部30は、添加剤投入装置21を制御し、添加剤投入装置21は、添加剤投入口20から第1水路12に添加剤を投入する。
【0034】
取水設備1は、駆動部40を駆動して、海水を流す(ステップS14)。具体的には、駆動部40は、駆動部40が駆動することでポンプPが作動する。ポンプPが作動することにより、添加剤と共に海水が第1水路12を流れる。第1水路12を流れる海水は、復水器10に送られ、タービンを回した蒸気を復水にした後に、放水路12bに流れて海Sに放水される。これにより、取水設備1の復水器10の運転中に第1水路12に海水と共に添加剤が混合して流れ、水生生物を除去することができる。
【0035】
(取水設備の停止時の異物除去方法)
次に、取水設備1の停止時の異物除去方法を図4及び図5を用いて説明する。図4に示すように、取水設備1は、復水器10の停止時には、取水口14と放水口16とを閉鎖し、第1水路12と第2水路18とが接続した状態で、矢印の方向に海水が循環する。海水の流れる方向は、任意であってよいが、運転時と同じ方向であることが好ましい。
【0036】
取水設備1は、取水口14と放水口16とを閉鎖する(ステップS20)。具体的には、制御部30は、取水口弁14aと放水口弁16aとを閉鎖することで、取水口14と放水口16とを閉鎖する。そして、第1水路12を第2水路18に接続する(ステップS22)。すなわち、制御部30が第2水路18の開閉弁18a及び開閉弁18bを開けることで、第1水路12と第2水路18とが接続し、第1水路12と第2水路18とに海水が流れる(循環する)。
【0037】
取水設備1に、分解酵素を投入する(ステップS24)。具体的には、第1水路12と第2水路18とが接続した状態で、分解酵素投入装置23から第1水路12に分解酵素を投入する。より詳しくは、制御部30は、分解酵素投入装置23を制御し、分解酵素投入装置23は、分解酵素投入口22から第1水路12に添加剤を投入する。
【0038】
取水設備1は、駆動部40が駆動して、海水を流す(ステップS26)。具体的には、駆動部40は、駆動部40が駆動することで、ポンプPが作動する。ポンプPが作動することにより、分解酵素と共に海水が、第1水路12と第2水路18とを循環する。駆動部40は、復水器10の運転開始時まで低電力で海水を循環させることが好ましい。このように、復水器10の停止中に海水と共に分解酵素を循環させることで、海水と分解酵素が混合して循環し、バイオフィルムを効率よく分解することができる。なお、復水器10が停止しているときから再度復水器10が運転する際には、取水設備1は、復水器10の停止時に循環していた海水と分解酵素とを放出することが好ましい。
【0039】
[変形例]
<取水設備>
図6は、取水設備の変形例の模式図である。上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
取水設備1Aは、復水器10と、第1水路12と、第2水路18と、第3水路19と、制御部30Aと、駆動部40Aと、を備える。なお、取水設備1Aは、第2水路18を必ずしも備えなくてよい。
【0041】
第3水路19は、第1水路12の異なる位置に接続される。第3水路19は、第3水路19の一端と他端とが第1水路12に接続される。第3水路19は、バイオフィルムや水生生物が付着しやすい箇所に部分的に接続される。より具体的には、第3水路19は、例えばエルボー(水路の屈曲部分)、ストレーナ及び復水器10等を挟むように接続される。図6に示すように、第3水路19は、エルボーの上流(海S側)に一端が接続され、下流(復水器10側)に第3水路19の他端が接続される。第3水路19は、放水路12bの途中に接続されてよい。また、第3水路19は、取水路12aの途中と放水路12bの途中の両方に接続されてもよい。また、第3水路19の径は、任意であってよいが、第1水路12の径よりも小さな径であることが好ましい。また、第3水路19は、一端に開閉弁19aを有し、他端に開閉弁19bを有する。開閉弁19aは、第3水路19の一端を開閉する。開閉弁19bは、第3水路19の他端を開閉する。開閉弁19aと開閉弁19bとは、例えば、三方弁や逆流防止弁等であってよい。
【0042】
分解酵素投入口22Aは、第1水路12に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入するための投入口である。分解酵素投入口22Aは、分解酵素投入装置23Aが接続されていてよい。また、分解酵素投入口22Aは、分解酵素投入装置23Aを接続せず、外部から開閉できるものであってよい。この場合、分解酵素を投入する度に分解酵素投入口22Aの開閉が行われる。分解酵素投入口22Aは、図6では、円形であるが、多角形であってもよい。
【0043】
分解酵素投入装置23Aは、分解酵素を貯蔵して第1水路12又は第3水路19の少なくとも一方に供給するための装置である。分解酵素投入装置23Aは、例えば、タンクを有し、分解酵素をタンクに貯蔵する。分解酵素投入装置23Aは、制御部30Aに接続される。制御部30Aからの制御信号によって分解酵素投入口22と分解酵素投入口22Aとのそれぞれに接続する接続部材を介して第1水路12又は第3水路19の少なくとも一方に分解酵素を供給する。分解酵素投入装置23Aは、第2水路18にも分解酵素投入口22が設けられる場合には、その分解酵素投入口22(第2水路18)に接続されてもよい。
【0044】
制御部30Aは、CPU及び記憶装置などを備えた演算装置である。制御部30Aは、取水口弁14a、放水口弁16a、開閉弁18a、開閉弁18b、開閉弁19a、開閉弁19b及び駆動部40Aに接続する。制御部30Aは、接続された各弁の開閉を制御することにより、海水の流れを制御する。制御部30Aは、駆動部40Aの作動を制御する。制御部30Aは、駆動部40Aを制御することで、海水の流れを制御する。また、制御部30Aは、添加剤投入装置21と分解酵素投入装置23Aとにも接続し、第1水路12、第2水路18及び第3水路19への添加剤や分解酵素の投入を制御する。
【0045】
駆動部40Aは、ポンプPと補助ポンプP2とが接続する。駆動部40Aは、駆動部40Aが駆動することで第1水路12、第2水路18及び第3水路19に海水を流す。駆動部40Aは、例えば図示しないモーターにより駆動する。具体的には、駆動部40Aは、制御部30Aからの駆動信号により、駆動部40A(モーター)が駆動し、ポンプP及び補助ポンプP2が作動することにより、海水が流れる。
【0046】
補助ポンプP2は、海水を第3水路19に流すものである。補助ポンプP2は、駆動部40Aに接続する。補助ポンプP2は、駆動部40Aが駆動すると、作動する。補助ポンプP2は、分解酵素を海水と共に第3水路19に流す。補助ポンプP2は、取水設備1Aが停止中の時に分解酵素を海水と共に第3水路19に流す。
【0047】
<異物除去方法>
次に、取水設備1Aに係る異物除去方法について説明する。
【0048】
(取水設備の運転時の異物除去方法)
取水設備1A(復水器10)の運転時の異物除去方法は、上述した取水設備1の運転時の異物除去方法と同様である。つまり、取水設備1Aの第1水路12に海水及び添加剤を流して異物を除去する。すなわち、制御部30Aは、第2水路18及び第3水路19の各弁を閉鎖して、第2水路18及び第3水路19を非接続状態とする。そして、添加剤投入装置21から第1水路12に添加剤を投入して、駆動部40Aが駆動することで第1水路12に海水を流して異物を除去する。このようにすることで、第1水路12に付着した水生生物を除去することができる。
【0049】
(取水設備の停止時の異物除去方法)
取水設備1A(復水器10)の停止時の異物除去方法は、取水口14と放水口16とを閉鎖し、第1水路12に第2水路18及び第3水路19が接続した状態で、矢印の方向に海水が循環する。海水の流れる方向は、任意であってよいが、図6に示すように、運転時と同じ方向であることが好ましい。
【0050】
具体的には、制御部30Aは、取水口弁14aと放水口弁16aとを閉鎖して、取水口14と放水口16とを閉鎖する。この時に、第1水路12と第2水路18及び第2水路18と第3水路19を接続する。すなわち、制御部30Aが第2水路18の開閉弁18a及び開閉弁18b、第3水路19の開閉弁19a及び開閉弁19bを開けることで、第1水路12と第2水路18及び第2水路18と第3水路19を接続する。そして、制御部30Aは、分解酵素投入装置23Aを制御し、分解酵素投入装置23Aは、第1水路12または第3水路19の少なくとも一方に分解酵素を投入する。そして、駆動部40Aが駆動することでポンプP及び補助ポンプP2が作動し、海水が第1水路12から流れる。このようにすることで、バイオフィルムが付着しやすい箇所に分解酵素を流すことができ、バイオフィルムを除去することができる。なお、第2水路18にも分解酵素投入口22が設けられる場合には、分解酵素投入装置23Aは、その分解酵素投入口22(第2水路18)から分解酵素を投入してもよい。
【0051】
なお、変形例において、異物が付着しやすいところだけを海水が循環するようにしてもよい。例えば、図6に示すように、第1水路12の第3水路19の一端と他端とが接続している箇所にそれぞれの開閉弁12cを更に設け、これらの開閉弁12cを閉鎖することで、第3水路19と第1水路12の一部とを接続状態とする。そして、補助ポンプP2が作動することにより、第3水路19を海水が循環するようにしてもよい。このようにすることで、バイオフィルムが付着しやすい箇所に局所的に分解酵素を流すことができ、バイオフィルムを除去することができる。
【0052】
[効果]
本開示の第1態様に係る取水設備1は、一端に海水を取り込む取水口14及び他端に海水を放水する放水口16を有する第1水路12と、一端と他端とが第1水路12の異なる位置に接続される第2水路18と、第1水路12及び第2水路18に海水を流す駆動部40と、第1水路12及び第2水路18の少なくとも一方に接続し、第1水路12に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置23と、を備える。
【0053】
これにより、分解酵素を投入することができるため、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0054】
本開示の第2態様に係る取水設備1は、第1態様に係る取水設備1であって、取水口14と放水口16とが閉鎖され、且つ第1水路12と第2水路18とが接続された状態とする切換機構を有し、分解酵素投入装置23から第1水路12に分解酵素を投入し、駆動部40が駆動して第1水路12に海水を循環させることにより、分解酵素が第1水路12と第2水路とを循環する。
【0055】
これにより、第1水路と第2水路とを分解酵素が海水と共に循環し、異物(バイオフィルム)を除去することができる。すなわち、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0056】
本開示の第3態様に係る取水設備1は、第1態様または第2態様に係る取水設備1であって、第1水路12に接続され、第1水路12に海水と共に侵入する水生生物を除去する添加剤を投入するための添加剤投入装置21を備える。
【0057】
これにより、添加剤で第1水路に海水と共に侵入する水生生物を除去することができる。すなわち、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0058】
本開示の第4態様に係る取水設備1は、第1態様から第3態様のいずれか1つに係る取水設備1であって、添加剤投入装置21は、第2水路18を非接続とした状態で、添加剤投入装置21から第1水路12に添加剤を投入し、第1水路12は、駆動部40が駆動して海水が流れることにより、海水と添加剤とが流れる。
【0059】
これにより、取水設備の運転中に添加剤を投入することができ、第1水路に海水と共に侵入する水生生物を除去することができる。すなわち、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0060】
本開示の第5態様に係る異物除去方法は、一端に海水を取り込む取水口14及び他端に前記海水を放水する放水口16を有する第1水路12と、一端と他端とが第1水路12の異なる位置に接続される第2水路18と、第1水路12及び第2水路18に海水を流す駆動部40と、第1水路12及び第2水路18の少なくとも一方に接続し、第1水路12に付着するバイオフィルムを分解する分解酵素を投入する分解酵素投入装置23と、を備える取水設備の異物除去方法であって、取水口14と放水口16とを閉鎖する工程と、第1水路12と第2水路18を接続した状態で、分解酵素投入装置23から第1水路12に分解酵素を投入する工程と、駆動部40を駆動して第1水路12に海水を流す工程と、を含む。
【0061】
これにより、分解酵素を投入することができるため、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0062】
本開示の第6態様に係る異物除去方法は、第5態様に係る異物除去方法であって、取水設備1は、第1水路12に接続され、第1水路12に海水と共に侵入する水生生物を除去する添加剤を投入する添加剤投入装置21をさらに備え、第2水路18を閉鎖する工程と、第2水路18を非接続とした状態で、添加剤投入装置21から第1水路12に添加剤を投入する工程と、駆動部40を駆動して、第1水路12に海水を流す工程と、を含む。
【0063】
これにより、取水設備の運転中に添加剤を投入することができ、第1水路に海水と共に侵入する水生生物を除去することができる。すなわち、水の流路に異物が付着することを抑制することができる。
【0064】
上記実施形態にて、取水設備1,1Aの運転時に、添加剤を流すことで異物を除去するものとしたが、例えば異物を捕獲できる器具や装置等を用いて、異物を捕獲することで除去してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、1A 取水設備
10 復水器
12 第1水路
12a 取水路
12b 放水路
12c 開閉弁
14 取水口
14a 取水口弁
16 放水口
16a 放水口弁
18 第2水路
18a、18b 開閉弁
19 第3水路
19a、19b 開閉弁
20 添加剤投入口
21 添加剤投入装置
22、22A 分解酵素投入口
23、23A 分解酵素投入装置
30、30A 制御部
40、40A 駆動部
100 原子力設備
S 海
P ポンプ
P2 補助ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6