(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151922
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241018BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241018BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20241018BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241018BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03G9/08 392
G03G9/09
G03G9/093
G03G9/087 325
G03G9/097 368
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065742
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸泉 潔
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA03
2H500AA06
2H500BA17
2H500BA31
2H500CA03
2H500CA17
2H500CA29
2H500CB12
2H500EA11C
2H500EA13B
2H500EA42B
2H500EA47C
2H500EA52B
2H500EA57A
2H500EA60A
2H500EA62C
(57)【要約】
【課題】昇華転写法による染色において、昇華性を有する染料のブリードアウトを抑制でき、シェル層の均一性、昇華転写効率及び摩擦に対する染色堅牢度に優れたトナーを提供する。
【解決手段】トナーは、昇華性を有する染料を含むカプセルトナー粒子を有する。カプセルトナー粒子は、コアトナー粒子と、当該コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層とを備える。コアトナー粒子を形成する樹脂の融点は105℃以上135℃以下であり、シェル層を形成する樹脂の融点は140℃以上160℃以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華性を有する染料を含むカプセルトナー粒子を有するトナーであって、
前記カプセルトナー粒子は、コアトナー粒子と、当該コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層とを備え、
前記コアトナー粒子を形成する樹脂の融点は105℃以上135℃以下であり、
前記シェル層を形成する樹脂の融点は140℃以上160℃以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーであって、
前記カプセルトナー粒子中の前記シェル層の割合は、前記コアトナー粒子100質量部に対して12質量部以上23質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記カプセルトナー粒子の円形度は0.950以上であることを特徴とするトナー。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記コアトナー粒子と前記シェル層との界面に、表面が疎水化処理されたシリカ粒子が存在することを特徴とするトナー。
【請求項5】
請求項4に記載のトナーであって、
前記シリカ粒子の中心粒径は20nm以上50nm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項6】
請求項4に記載のトナーであって、
前記シリカ粒子は、その表面がジメチルポリシロキサンで疎水化処理されたものであることを特徴とするトナー。
【請求項7】
請求項4に記載のトナーであって、
前記シリカ粒子による前記コアトナー粒子表面の被覆率は、45%以上75%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のトナーの製造方法であって、
コアトナー粒子を作製するコアトナー粒子作製工程と、
シェル層を形成する樹脂微粒子を調製する樹脂微粒子調製工程と、
前記コアトナー粒子の表面を前記樹脂微粒子で被覆して複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、
前記樹脂微粒子を前記コアトナー粒子表面で膜化してカプセルトナー粒子を形成するカプセルトナー粒子形成工程と、を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のトナーの製造方法であって、
前記樹脂微粒子調製工程にて調製する樹脂微粒子の中心粒径は、0.1μm以上0.2μm以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のトナーの製造方法であって、
前記複合粒子形成工程において、前記樹脂微粒子のエマルションと前記コアトナー粒子とを減圧下で混合乾燥させることで前記複合粒子を形成し、
前記カプセルトナー粒子形成工程において、環状の流路を循環する気流中に前記複合粒子を分散させることで前記カプセルトナー粒子を形成することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項11】
請求項4に記載のトナーの製造方法であって、
コアトナー粒子を作製するコアトナー粒子作製工程と、
シェル層を形成する樹脂微粒子を調製する樹脂微粒子調製工程と、
前記コアトナー粒子の表面を前記樹脂微粒子で被覆して複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、
前記樹脂微粒子を前記コアトナー粒子表面で膜化してカプセルトナー粒子を形成するカプセルトナー粒子形成工程と、を含み、
前記複合粒子形成工程は、表面が疎水化処理されたシリカ粒子と前記コアトナー粒子とを混合して混合物を得る工程と、前記樹脂微粒子のエマルションと当該混合物とを減圧下で混合乾燥させることで前記複合粒子を形成する工程とを含み、
前記カプセルトナー粒子形成工程において、環状の流路を循環する気流中に前記複合粒子を分散させることで前記カプセルトナー粒子を形成することを特徴とするトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式において昇華転写法による染色を行うのに好適なトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル布を代表とする疎水性繊維等の被染色物に対する電子写真方式を用いた染色方法は、主に、ダイレクト法と昇華転写法との2つに大別することができる。ダイレクト法は、被染色物にトナーを直接付着させた後、熱処理によってトナー中に含まれる染料を被染色物へと付着させ、染料以外の付着物(樹脂、離型剤等)をアルカリ洗浄により溶解させて除去する染色方法である。昇華転写法は、紙等の中間記録媒体にトナーを付着させた後、中間記録媒体のトナー付着面と被染色物とを重ね合わせてから、熱プレス処理(加熱及び加圧処理)を行い、トナー中に含まれる染料を被染色物に昇華転写させる染色方法である。
【0003】
この2つの染色方法のうち昇華転写法は、トナーを構成する複数の成分のうち染料のみを中間記録媒体から繊維へと移行させることが可能である。つまり、染色布には染料以外のトナー構成成分は付着せず、染色布の洗浄や乾燥の工程が不要となるメリットがある。そのため、衣料品(スポーツアパレル等)やインテリア(シート、ソファー等)といった、風合いを重要視する用途向けの染色に適しているとされている。
【0004】
また、洗浄・乾燥等の工程が不要となることによって、染色工程を大幅に削減でき、大規模なスペース及び稼働エネルギーを必要とする洗浄・乾燥ラインが不要となるメリット、洗浄水の処理設備が不要となるメリット等、多数のメリットが生じる。そのため、昇華転写法は、小規模なスペースでも染色できる点でも優れた染色方法であるとされている。
【0005】
昇華転写法に用いるトナー中の染料としては、疎水性繊維を染色するのに適している分散染料あるいは油溶性染料のなかでも、特に熱処理による疎水性繊維への昇華転写適性に優れた易昇華型の染料が用いられる。
【0006】
なお、昇華転写法における印刷手段としては、インクジェット方式と電子写真方式とが存在し、一般的にインクジェット方式が主流とされている。しかし、インクジェット方式における昇華転写での染色は、インクを構成する成分の一つである有機溶剤が、染料を転写するときの熱によって揮発し、作業環境を汚染する等の問題がある。これに対して、電子写真方式は、トナー中に揮発成分が存在せず作業環境を汚染しないため、近年注目が集まっている。
【0007】
電子写真方式において昇華転写法による染色を行う用途のトナーとして、例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と昇華性を有する染料とを含有するトナー粒子が流動化剤としてのシリカで表面改質されており、この表面改質されたトナー粒子の表面に外添剤としてのシリカが付着したトナーが開示されており、トナーの体積基準の中心粒径(D50)が4μm~10μmであり、トナーのガラス転移温度が53℃~70℃であり、トナーの体積基準の中心粒径における真球の比表面積をA0、特定条件で洗浄したトナーのBET比表面積をA1としたときに、1.2<A1/A0<2.6を満たすことで、耐熱保存性がよくなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、昇華転写法による染色を行う用途(昇華転写用)のトナーにおいて、結着樹脂にポリエステル樹脂を用いると、樹脂から昇華性を有する染料(以下、昇華性染料ともいう)が染み出しにくく、被染色物を高効率で染色可能な昇華転写染色方法とすることが困難であり、トナー内の分散染料を増やしても十分な染色濃度を得ることができないという問題があった。これを解決するために、結着樹脂にスチレンアクリル樹脂を用いると、昇華性染料と結着樹脂との相性が低下することにより染色濃度の高い被染色物を得ることが可能となる一方、未使用状態でトナーを保存している間に、昇華性染料がトナー粒子内部から表面に染み出してしまう現象(
図2に例示する現象)であるブリードアウトが発生してしまい、トナーの流動性が悪化したり、トナーの帯電量が低下したりして、昇華転写用のトナーとして使いこなすのが困難であるという問題があった。
【0010】
本開示のトナーは、結着樹脂がスチレンアクリル樹脂であるトナーの斯かる事情に鑑みて見出されたものであり、昇華転写法による染色において、昇華性を有する染料のブリードアウトを抑制でき、シェル層の均一性、昇華転写効率及び摩擦に対する染色堅牢度に優れたトナーの提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本開示のトナーは、昇華性を有する染料を含むカプセルトナー粒子を有するトナーであって、前記カプセルトナー粒子はコアトナー粒子と当該コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層とを備え、前記コアトナー粒子を形成する樹脂の融点は105℃以上135℃以下であり、前記シェル層を形成する樹脂の融点は140℃以上160℃以下であることを特徴とする。
【0012】
上記のトナーにあっては、前記カプセルトナー粒子中の前記シェル層の割合は、前記コアトナー粒子100質量部に対して12質量部以上23質量部以下であることが好ましい。
【0013】
上記のトナーにあっては、前記カプセルトナー粒子の円形度は0.950以上であることが好ましい。
【0014】
上記のトナーにあっては、前記コアトナー粒子と前記シェル層との界面に、表面が疎水化処理されたシリカ粒子が存在することが好ましい。
【0015】
上記のトナーにあっては、前記シリカ粒子の中心粒径は20nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0016】
上記のトナーにあっては、前記シリカ粒子は、その表面がジメチルポリシロキサンで疎水化処理されたものであることが好ましい。
【0017】
上記のトナーにあっては、前記シリカ粒子による前記コアトナー粒子表面の被覆率は、45%以上75%以下であることが好ましい。
【0018】
上記課題を解決するためになされた本開示のトナーの製造方法は、コアトナー粒子を作製するコアトナー粒子作製工程と、シェル層を形成する樹脂微粒子を調製する樹脂微粒子調製工程と、前記コアトナー粒子の表面を前記樹脂微粒子で被覆して複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、前記樹脂微粒子を前記コアトナー粒子表面で膜化してカプセルトナー粒子を形成するカプセルトナー粒子形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
上記のトナーの製造方法にあっては、前記樹脂微粒子調製工程にて調製する樹脂微粒子の中心粒径は、0.1μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
【0020】
上記のトナーの製造方法にあっては、前記複合粒子形成工程において、前記樹脂微粒子のエマルションと前記コアトナー粒子とを減圧下で混合乾燥させることで前記複合粒子を形成し、前記カプセルトナー粒子形成工程において、環状の流路を循環する気流中に前記複合粒子を分散させることで前記カプセルトナー粒子を形成することが好ましい。
【0021】
上記のトナーの製造方法にあっては、前記複合粒子形成工程は、前記コアトナー粒子と前記シリカ粒子とを混合して混合物を得る工程と、前記樹脂微粒子のエマルションと当該混合物とを減圧下で混合乾燥させることで前記複合粒子を形成する工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本開示のトナーによれば、昇華性を有する染料のブリードアウトを抑制できる、シェル層の均一性、昇華転写効率及び摩擦に対する染色堅牢度に優れる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】カプセルトナーを模式的に示した断面図である。
【
図2】カプセル化されていないトナーを模式的に示した断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るトナーの製造方法で用いる、カプセルトナー粒子の製造装置の概略構成を示す正面図である。
【
図4】
図3に示す製造装置を切断面線A200―A200から見た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示のトナーについて詳述する。
【0025】
1.カプセルトナー粒子
本実施形態に係るカプセルトナー粒子は、
図1に例示するように、結着樹脂としてのスチレンアクリル樹脂と内添剤とを含むコアトナー粒子と、コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層とで構成される。昇華性を有する染料、離型剤等の内添剤は結着樹脂中に分散している。カプセルトナー粒子の表面には外添剤が付着している。さらに必要に応じて、本開示に係る効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。カプセルトナー粒子の平均一次粒径は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4μm以上8μm以下が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るカプセルトナー粒子にあっては、コアトナー粒子を形成する樹脂である結着樹脂は、融点が105℃以上135℃以下であり、好ましくは110℃以上130℃以下である。シェル層を形成する樹脂の融点は140℃以上160℃以下であり、好ましくは145℃以上155℃以下である。コアトナー粒子を形成する結着樹脂の融点が上記範囲内であり、且つシェル層を形成する樹脂の融点が上記範囲内であることにより、昇華性染料がコアトナー粒子内部から表面へとブリードアウトすることを抑制でき、延いては、トナーの耐熱保存性を高めることができる。
【0027】
本実施形態に係るカプセルトナー粒子にあっては、シェル層を形成する樹脂の融点が高いことで硬質化されている。そのため、カプセルトナー粒子表面の劣化が起こりにくく、現像装置における現像ローラ(現像剤担持体)上でのトナーのブリードアウト発生を効果的に抑制することができる。これにより、トナーのライフを通じて、形成される画像を高画質に維持することができる。
【0028】
また、本実施形態に係るカプセルトナー粒子は、コアトナー粒子表面を樹脂微粒子で被覆した複合粒子を形成したうえで樹脂微粒子を膜化することで形成されるが、この樹脂微粒子が硬質であることで、複合粒子及びカプセルトナー粒子の流動性を高めることができる。そのため、本実施形態に係るカプセルトナー粒子の製造においては、機械的処理による膜化の際の処理温度を高くすることができるので、薄膜で剥離しにくいシェル層を形成することができる。加えて、コアトナー粒子の表面にシェル層として付着できていない樹脂微粒子(残存シェルともいう)が発生しにくくなる。そのため、画像形成装置内での定着工程の際に熱が伝わりやすくなることで、トナーの定着性が向上するという効果も得られる。
【0029】
本実施形態に係るカプセルトナー粒子とは反対に、シェル層を形成する樹脂の融点がコアトナー粒子を形成する樹脂の融点よりも低い設計とした場合には、シェル層によるカプセル機能が十分に発揮されず、耐熱保存性を高める効果を十分に得られないおそれがある。なお、シェル層を備えないトナー粒子(カプセル化されていないトナー粒子)においては、上述したように、スチレンアクリル樹脂を結着樹脂とした場合、トナーを保存している間にブリードアウトが発生してしまう問題があり、換言すると耐熱保存性に問題がある。
【0030】
本実施形態に係るカプセルトナー粒子は、円形度が0.950以上であることが好ましく、0.952以上であることがより好ましい。カプセルトナー粒子の円形度は、コアシェル構造の完成度をはかる指針となり、当該円形度が上記範囲内であることで、昇華性染料のブリードアウトを抑制する効果、昇華転写効率を高める効果、及び摩擦に対する染色堅牢度を高める効果を発揮しやすくなる。
【0031】
<コアトナー粒子>
-結着樹脂-
本実施形態に係るコアトナー粒子は、結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂を含む。スチレンアクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレン系単量体と、単官能(メタ)アクリル系単量体とを重合して得られる樹脂が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する概念である。
【0032】
前記のスチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、4,α-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ペンチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-ヘプチルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デカニルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-フェニルスチレン、3,4-ジシクロシルスチレン等が挙げられる。本実施形態に係るコアトナー粒子にあっては、これらのなかでもスチレンが好適である。
【0033】
本実施形態に係るコアトナー粒子においては、上記のスチレン系単量体のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記の単官能(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクタデシル、α-クロロアクリル酸メチル、α-クロロアクリル酸エチル等のアクリル系単量体;
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-シクロヘキシル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸n-トリデシル、メタクリル酸n-オクタデシル等のメタクリル系単量体;
等が挙げられる。本実施形態に係るコアトナー粒子にあっては、これらのなかでも、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルが好適であり、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチルが特に好適である。
【0035】
本実施形態に係るコアトナー粒子においては、上記の単官能(メタ)アクリル系単量体のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本実施形態に係るコアトナー粒子の体積平均粒径は、4μm以上8μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が上記範囲内であることで、長期にわたり高精細な画像を安定して形成できる。また、体積平均粒径が上記範囲内という小粒径化されたコアトナー粒子にすることにより、付着量が少なくても高い画像濃度が得られ、トナー消費量を削減できる効果も生じる。一方、コアトナー粒子の体積平均粒径が上記下限未満の場合、カプセルトナー粒子の粒径が小さいため、トナーが高帯電化及び低流動化するおそれがある。トナーが高帯電化、低流動化すると、感光体にトナーを安定して供給できなくなり、地肌かぶり(本来白抜けとなる部分にトナーが付着する現象)及び画像濃度の低下が発生するおそれがある。コアトナー粒子の体積平均粒径が上記上限を超える場合、コアトナー粒子の粒径の大きさに起因して、形成画像は層厚が大きく粒状性の著しいものとなり、高精細な画像を得られないおそれがある。また、コアトナー粒子の体積平均粒径が大きくなることによりトナーの比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0037】
本実施形態に係るコアトナー粒子中の結着樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上110℃以下のスチレンアクリル樹脂を使用することができる。スチレンアクリル樹脂のガラス転移温度は52℃以上68℃以下であるのが好ましく、55℃以上65℃以下であるのがより好ましい。
【0038】
本実施形態に係るコアトナー粒子中の結着樹脂の含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常60質量%以上99%質量%以下であり、65質量%以上98質量%以下であることが好ましい。結着樹脂の含有量が上記下限未満の場合、トナー中の染料の分散不良が起こり、トナーの電気特性の低下を招くおそれがある。結着樹脂の含有量が上記上限を超える場合、染色濃度の低下が発生するおそれがある。
【0039】
-昇華性染料-
本実施形態に係るコアトナー粒子は、昇華性染料を含む。昇華性染料としては、特に限定されないが、昇華転写適性のある染料が好ましい。
【0040】
「昇華転写適性のある染料」とは、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法〔JIS L 0879:2005〕(平成17年1月20日改定、財団法人日本規格協会発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、通常3~4級以下、好ましくは3級以下の染料を意味する。そのような染料のうち、公知の染料としては、例えば、以下の染料が挙げられる。
【0041】
イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163等が挙げられる。
【0042】
オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76等が挙げられる。
【0043】
ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2等が挙げられる。
【0044】
レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41等が挙げられる。
【0045】
バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57等が挙げられる。
【0046】
ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111等が挙げられる。
【0047】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の染料のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の染料を組み合わせることで、元の染料とは全く異なる色相を得ることも可能である。例えば、ブルー染料を主体として、イエロー染料及びレッド染料を適宜配合することにより、ブラック染料とすることができる。また、2種以上の染料を組み合わせることで、ブルー、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット又はブラック等の色調をより好みの色調に微調整することや、中間色を得ることが可能である。
【0048】
本実施形態に係るコアトナー粒子中の昇華性染料の含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1質量%以上40質量%以下であり、2質量%以上35質量%以下であることが好ましく、3質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。トナー粒子中の昇華性染料の含有量が上記下限未満の場合、染色濃度の低下が発生するおそれがある。トナー粒子中の昇華性染料の含有量が上記上限を超える場合、トナー中での染料の分散不良が起こり、トナーの電気特性の低下を招くおそれがある。
【0049】
-離型剤-
本実施形態に係るコアトナー粒子は、離型剤としてワックスを含有することが好ましい。離型剤としては当該技術分野で常用されるものを使用できるが、45℃における針入度が3以上11以下である離型剤を使用するのがより好ましい。この針入度は、JIS K 2235の針入度の測定試験方法に準じて測定されるものであり、例えば、針入度計(株式会社離合社製)を用いて測定できる。
【0050】
また、本実施形態に係るコアトナー粒子が含有する離型剤は、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱量のピーク温度位置が70℃以上150℃以下に存在することが好ましい。この示差熱分析測定は、ASTM D3418-82に準じて行うものであり、例えば、常温常湿下で示差熱分析測定装置DSC8230(株式会社リガク製)を用いて、測定用試料を10mgとし、20℃~150℃の間にて昇温速度を10℃/分として行うことができる。
【0051】
離型剤として用いる天然ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、ライスワックス等の植物由来のワックスが挙げられる。また合成ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、合成エステルワックス、α-オレフィン(分子末端に二重結合を持つ炭化水素)と無水マレイン酸とを組み合わせた重合物等が挙げられる。
【0052】
本実施形態に係るコアトナー粒子における離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。離型剤の含有量が上記下限未満の場合、定着ローラへのオフセットが発生するおそれがある。離型剤の含有量が上記上限を超える場合、中間記録媒体に対する定着不良が発生するおそれがある。
【0053】
-帯電制御剤-
本実施形態に係るコアトナー粒子は、帯電制御剤を含有していてもよい。帯電制御剤としては、当該技術分野で常用される正電荷制御用及び負電荷制御用の帯電制御剤を用いることができる。
【0054】
正電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等が挙げられる。
【0055】
負電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体や金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸等が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係るコアトナー粒子においては、上記の帯電制御剤のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本実施形態に係るコアトナー粒子における帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましい。帯電制御剤の含有量が上記範囲内であることで、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度及び良好な画質を有する画像を形成できる。帯電制御剤の含有量が上記下限未満の場合、帯電制御の効果を得られないおそれがある。帯電制御剤の含有量が上記上限を超える場合、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、現像ローラとの静電的吸引力が増大することで、トナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くおそれがある。
【0058】
-コアトナー粒子表面に付着したシリカ粒子-
本実施形態に係るコアトナー粒子の表面には、表面が疎水化処理されたシリカ粒子が付着していることが好ましい。換言すると、本実施形態に係るカプセルトナー粒子にあっては、コアトナー粒子とシェル層との界面に、表面が疎水化処理されたシリカ粒子が存在することが好ましい。これにより、昇華転写を行う際の染料の染み出し効率を高めることができ、効率よく布帛を染色することができる。
【0059】
表面が疎水化処理されたシリカ粒子の中心粒径は、20nm以上50nm以下であることが好ましく、30nm以上40nm以下であることがより好ましい。当該シリカ粒子の中心粒径が上記範囲内であることで、染料の染み出し効率をより一層高めることができる。当該シリカ粒子の中心粒径が上記下限未満の場合、当該シリカ粒子の粒径が小さいことに起因して、染料の染み出し効率向上の効果が得られないおそれがある。当該シリカ粒子の中心粒径が上記上限を超える場合、コアトナー粒子表面に対する十分な被覆率を得るための添加量が多くなり、コストアップにつながるおそれがある。
【0060】
コアトナー粒子表面に付着させるシリカ粒子は、その表面がジメチルポリシロキサン(PDMS)で疎水化処理されたものであることが好ましい。表面がジメチルポリシロキサンで疎水化処理されたシリカ粒子が、コアトナー粒子とシェル層との界面に存在することで、昇華転写を行う際の染料の染み出し効率をより一層高めることができ、効率よく布帛を染色することができる。
【0061】
コアトナー粒子表面に付着したシリカ粒子によるコアトナー粒子表面の被覆率は、45%以上75%以下であることが好ましく、48%以上72%以下であることがより好ましく、55%以上65%以下であることがさらに好ましい。当該被覆率が上記範囲内であることで、昇華転写を行う際の染料の染み出し効率向上の効果を十分に発揮することができる。当該被覆率が上記下限未満の場合、染料の染み出し効率向上の効果が発現しないおそれがある。当該被覆率が上記上限を超える場合、染料の染み出し効率向上の効果が阻害されて昇華転写効率が低下するおそれがあり、また摩擦に対する染色堅牢度も低下するおそれがある。
【0062】
<シェル層>
本実施形態に係るカプセルトナー粒子は、
図1に例示するように、コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層を備える。カプセルトナー粒子中のシェル層の割合は、コアトナー粒子100質量部に対して12質量部以上23質量部以下であることが好ましく、15質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。カプセルトナー粒子の製造工程において、コアトナー粒子に対する樹脂微粒子(シェル層を形成する微粒子)の添加量は、製造されるカプセルトナー粒子のシェル層の厚みと、シェル層によるコアトナー粒子表面の被覆率とに関係していると考察される。完全にシェル層によりコアトナー粒子表面が被覆される状態が望ましいが、その状態にすることは非常に困難である。本発明者は、当該被覆率が75%以上あればトナーの耐熱保存性を高めることができることを見出した。カプセルトナー粒子中のシェル層の割合が上記範囲内であることで、そのような被覆率を実現でき、本実施形態に係るトナーは優れた耐熱保存性を発揮することができる。
【0063】
シェル層は、アクリル系樹脂で形成されることが好ましい。ここでいうアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーとメタクリル系モノマーとの少なくとも一方を含む単独又は複数のモノマーを、重合又は共重合して得られる樹脂を使用できる。
【0064】
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フエニル等のアクリル酸誘導体を使用できる。
【0065】
メタクリル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸フエニル、メタクリル酸ジメチルアミノエステル等のメタクリル酸誘導体を使用できる。
【0066】
アクリル系モノマー及びメタクリル系モノマー以外に使用できるモノマーとしては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等のスチレン誘導体を使用できる。
【0067】
本実施形態に係るカプセルトナー粒子が備えるシェル層は、コアトナー粒子の表面を樹脂微粒子で被覆して複合粒子を形成したのちに、樹脂微粒子をコアトナー粒子表面で膜化させることで形成されるが、この樹脂微粒子及びその調製方法については、後掲の「トナーの製造方法」の項目にて説明する。
【0068】
2.外添剤
本実施形態に係るトナーは、上述したカプセルトナー粒子の表面に外添剤が付着していてもよい。外添剤が担う機能としては、トナーの粉体流動性、摩擦帯電性、耐熱保存性、クリーニング特性を高める機能、感光体表面の摩耗特性を制御する機能等が挙げられる。
【0069】
外添剤としては、例えば、中心粒径が5nm以上200nm以下のシリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子を使用することができる。それらの無機微粒子の表面に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤又はシリコーンオイルで表面処理を施すことで疎水性を付与した無機微粒子が、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下が少なくなるためより好適である。
【0070】
外添剤の含有量は、カプセルトナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上3質量部以下であることが好ましい。外添剤の含有量が上記下限未満の場合、流動性が向上する効果を付与することが難しくなる。外添剤の含有量が上記上限を超える場合、定着性が低下するおそれがある。
【0071】
カプセルトナー粒子に対する外添剤の添加方法としては、カプセルトナー粒子と外添剤とをヘンシェルミキサ等の気流混合機で混合する方法が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係るトナーは、そのまま一成分現像剤として使用してもよく、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0073】
3.トナーの製造方法
本実施形態に係るトナーの製造方法は、コアトナー粒子を作製するコアトナー粒子作製工程P1と、シェル層を形成する樹脂微粒子を調製する樹脂微粒子調製工程P2と、コアトナー粒子の表面を樹脂微粒子で被覆して複合粒子を形成する複合粒子形成工程P3と、複合粒子に機械的衝撃力を付与することにより、樹脂微粒子をコアトナー粒子表面で膜化してカプセルトナー粒子を形成するカプセルトナー粒子形成工程P4と、カプセルトナー粒子の表面に外添剤を付着させる外添工程P5と、を含む。
【0074】
(1)コアトナー粒子作製工程P1
コアトナー粒子作製工程P1ではコアトナー粒子を作製する。コアトナー粒子の作製方法としては、例えば、混練粉砕法等の乾式法と、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法等の湿式法とが挙げられる。以下、混練粉砕法によってコアトナー粒子を作製する方法を記載する。
【0075】
粉砕法によるコアトナー粒子の作製では、結着樹脂と昇華性染料等の内添剤とを含むコアトナー粒子原料を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練することによって溶融混練物を得る。この溶融混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機で粉砕することによって微粉砕物を得る。その後、必要に応じて分級等の粒度調整を行うことによって、コアトナー粒子が得られる。
【0076】
混合は乾式であることが好ましく、混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用できる。例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等といった混合機が挙げられる。
【0077】
混練機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミル等の一般的な混練機が挙げられる。具体的には、例えば、TEM-100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)等の一軸又は二軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、日本コークス工業株式会社製)等のオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらのなかでも、オープンロール方式の混練機は、混練時のシェアが強くトナー原料を高分散できる点で好ましい。
【0078】
粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するカウンタージェットミルAFG(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)等が挙げられる。分級機としては、例えば、ロータリー式分級機TSPセパレータ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)等が挙げられる。
【0079】
(2)樹脂微粒子調製工程P2
樹脂微粒子の調製方法として、例えば、樹脂微粒子原料である樹脂をホモジナイザー等で乳化分散する方法や、乳化重合やソープフリー乳化重合等の方法でモノマーを重合させる方法が挙げられる。樹脂微粒子は、固形分が30質量%(水分が70質量%)のエマルションとして調製する。樹脂微粒子原料として用いた樹脂が、上述したシェル層を形成する。
【0080】
樹脂微粒子(1次粒子)の中心粒径は、コアトナー粒子の中心粒径よりも十分に小さい必要があり、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.2μm以下であることであることがより好ましい。樹脂微粒子の中心粒径はシェル層の厚みに関係していると考察され、樹脂微粒子の中心粒径が上記下限未満の場合、シェル層の形成による保護効果が十分に得られないおそれがある。また、この効果を得ようとするとより多くの樹脂微粒子を添加する必要があり、コストアップとなるおそれがある。樹脂微粒子の中心粒径が上記上限を超える場合、シェル層を形成する樹脂の融点を上述の範囲内としていることに起因してシェル層の結着が弱くなり、完全な形でシェル層が形成されないおそれや、中間記録媒体に対する染料の染み出しが発生するおそれがある。
【0081】
また、樹脂微粒子の中心粒径が上記範囲内であることによって、コアトナー粒子表面に好適な厚さのシェル層を形成することができるため、本実施形態に係る製造方法で製造されるトナーはクリーニングブレードに引っ掛かりやすくなり、クリーニング特性に優れる。
【0082】
樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度は、コアトナー粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移温度よりも高いことが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。これにより、本実施形態に係る製造方法で製造されるトナー同士が保存中に融着することを防止し、ブリードアウトの発生を抑制することができる。そのため、本実施形態に係る製造方法で製造されるトナーは耐熱保存性に優れる。
【0083】
(3)複合粒子形成工程P3
複合粒子形成工程P3は、コアトナー粒子表面に樹脂微粒子を被覆させて複合粒子を形成させる工程である。複合粒子を形成する方法として、例えば、ヘンシェルミキサ(型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)の中に、コアトナー粒子と樹脂微粒子エマルションとを投入し、撹拌羽根の先端部の周速を10m/秒~30m/秒として撹拌しながら、ミキサ槽内を減圧する方法が使用できる。減圧下において混合乾燥することで、水分含有率を1質量%未満まで乾燥させた複合粒子を得ることができる。コアトナー粒子と樹脂微粒子との混合比としては、コアトナー粒子表面を樹脂微粒子で完全に且つ薄く被覆する程度の混合比が好ましく、配合比としては、コアトナー粒子100質量部に対して樹脂微粒子5質量部~15質量部の比率で混合される。樹脂微粒子の配合比が5質量部未満の場合は、コアトナー粒子を十分に被膜することが困難であり、保存安定性が不十分となる。15質量部を超える場合は、被膜量が過剰であり、シェル層を薄膜化することが困難であり、低温定着性が悪化する。
【0084】
複合粒子形成工程P3では、コアトナー粒子表面に樹脂微粒子を被覆させる前に、コアトナー粒子と、表面が疎水化処理されたシリカ粒子とを混合して混合物を得て、この混合物と樹脂微粒子エマルションとを減圧下で混合乾燥させることが好ましい。これにより、コアトナー粒子とシェル層との界面に当該シリカ粒子が存在するカプセルトナー粒子を製造することができる。
【0085】
(4)カプセルトナー粒子形成工程P4
カプセルトナー粒子形成工程P4は、複合粒子に機械的衝撃力を付与することにより、樹脂微粒子をコアトナー粒子表面で膜化してカプセルトナー粒子を形成する工程である。
図3は、本実施形態に係るトナーの製造方法で用いるカプセルトナー粒子の製造装置201の概略構成を示す正面図である。
図4は、
図3に示す製造装置201を切断面線A200―A200から見た概略断面図である。カプセルトナー粒子形成工程P4では、例えば
図3に示すカプセルトナー粒子の製造装置201を用い、複合粒子形成工程P3で作製した複合粒子に対して、カプセルトナー粒子の製造装置201内での循環と撹拌との相乗効果による衝撃力でコアトナー粒子の表面にシェル層を形成する。カプセルトナー粒子の製造装置201は回転撹拌装置であり、粉体流路202と、回転撹拌手段203(回転撹拌部)と、図示しない温度調整用ジャケットと、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成される。回転撹拌手段203と、粉体流路202とは循環手段を構成する。
【0086】
粉体流路202は、撹拌部208と、粉体流過部209とから構成される。撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材である。回転撹拌室である撹拌部208には、開口部210,211が形成される。開口部210は、撹拌部208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、撹拌部208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、撹拌部208の前記軸方向片側の面208aに垂直な側面208bにおいて、撹拌部208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するよう形成される。循環管である粉体流過部209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって撹拌部208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。この粉体流路202を、複合粒子及び気体が流過する。粉体流路202は、複合粒子が流動する方向である粉体流動方向が一定となるよう設けられる。
【0087】
回転撹拌手段203は、回転軸部材212と、円盤状の回転盤213と、複数の撹拌羽根214とを含む。回転軸部材212は、撹拌部208の軸線に一致する軸線を有し且つ撹拌部208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔205に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤213は、その軸線が回転軸部材212の軸線に一致するように回転軸部材212に支持され、回転軸部材212の回転に伴い回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根214は、回転盤213の周縁部分によって支持され、回転盤213の回転に伴って回転する。
【0088】
カプセルトナー粒子形成工程P4において、回転撹拌手段203の最外周の周速度を、30m/秒以上に設定するのが好ましく、50m/秒以上に設定するのがより好ましい。回転撹拌手段203の最外周とは、回転撹拌手段203の回転軸部材212が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材212の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段203の部分203aである。回転時の回転撹拌手段203の最外周における周速を30m/秒以上に設定することによって、複合粒子に対して、環状の流路(粉体流路202)を循環する流速30m/秒以上の気流中に分散させることができる。これにより、複合粒子を孤立流動させることができる。最外周における周速度が30m/秒未満であると、複合粒子を孤立流動させることが困難であるため、コアトナー粒子を樹脂膜で均一に被覆することが困難になる。
【0089】
温度調整手段である図示しない温度調整用ジャケットは、粉体流路202の外側の少なくとも一部に設けられ、ジャケット内部の空間に冷却媒又は加温媒を通して粉体流路202内と回転撹拌手段203を所定の温度に調整する。これによって、粉体流路内及び回転撹拌手段の外側の温度をコアトナー粒子及び樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御することができる。
【0090】
本実施形態に係るトナーは、複合粒子形成工程P3において、樹脂微粒子のエマルションとコアトナー粒子とを減圧下で混合乾燥させることで複合粒子を形成し、カプセルトナー粒子形成工程P4において、環状の流路を循環する気流中に複合粒子を分散させることでカプセルトナー粒子を形成することにより、樹脂微粒子の凝集物の発生を低減でき、また樹脂微粒子を効率よくシェル層の形成に用いることができる。
【0091】
(5)外添工程P5
外添工程P5では、カプセルトナー粒子と外添剤とを混合機で混合することにより、カプセルトナー粒子表面に外添剤を付着させる工程である。混合機としては公知のものを使用でき、例えばヘンシェルミキサ(商品名、日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)等が挙げられる。
【0092】
4.二成分現像剤
二成分現像を行う場合、本実施形態に係るトナーとキャリアとを混合することにより、二成分現像剤を調製する。トナーとキャリアとを混合する混合装置としては、例えば、V型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)等の粉体混合装置が挙げられる。
【0093】
トナーとキャリアとの配合比としては、例えば、質量比で10:90~5:95の範囲内であることが好ましい。キャリアとしては、当該技術分野において通常使用されるキャリアを使用することができる。また、コートキャリアを使用することも可能である。
【実施例0094】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本開示のトナー及びその製造方法を具体的に説明する。まず、各種測定方法及び評価方法について説明する。
【0095】
<測定・評価方法>
【0096】
-コアトナー粒子及びシェル層を形成する樹脂の融点の測定-
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT-100C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを昇温速度毎分6℃で加熱し、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えてダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料を流出させた。試料の流出が開始された温度を流出開始温度(Tfb)とし、試料の半分量が流出したときの温度(軟化点)を融点(Tm)とした。
【0097】
-コアトナー粒子及びカプセルトナー粒子の平均粒径の測定-
電解液(商品名:ISOTON-II、ベックマン・コールター株式会社製)50mLに、試料20mg及びアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mLを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS-D100、アズワン株式会社製)を用い周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター株式会社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
【0098】
-樹脂微粒子及びシリカ粒子の中心粒径の測定-
樹脂微粒子及びシリカ粒子の中心粒径は、動的光散乱法粒度分布測定装置(商品名:Nanotrac Waveシリーズ、日機装株式会社製)を用いて2回測定し、その平均値を採用した。測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とした。測定用試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒径側からの累積体積が50%になる粒径を測定した粒子の中心粒径[μm]として算出した。
【0099】
-シリカ粒子によるコアトナー粒子表面の被覆率の算出-
コアトナー粒子の全表面が最密状態のシリカ粒子で被覆されたときを100%として、全てのシリカ粒子の粒径が上記測定した中心粒径であると仮定して、その中心粒径とコアトナー粒子の表面積とから、シリカ粒子によるコアトナー粒子表面の被覆率[%]を算出した。具体的には、以下のようにして求めたシリカ粒子の総投影面積をコアトナー粒子の総表面積で除した値をシリカ粒子による被覆率とした。
【0100】
まず、円の面積の公式により、シリカ粒子の粒径から1粒子当たりの投影面積を算出する。次いで、球の体積の公式により、シリカ粒子の体積を求め、これに比重を乗じてシリカ粒子の質量を求める。さらにコアトナー粒子1つ当たりに付着しているシリカ粒子の個数を算出する。これは、コアトナー粒子に対するシリカ粒子の添加質量部数と、シリカ粒子1つ当たりの質量とを使用して求める。このシリカ粒子の個数からコアトナー粒子1つ当たりの投影面積の総和を算出する。コアトナー粒子の総表面積は、球の表面積の公式により求められるコアトナー粒子1つ当たりの表面積に基づいて算出する。
【0101】
-カプセルトナー粒子の円形度の測定-
カプセルトナー粒子の円形度を、自動粒子形状・サイズ分析装置(商品名:FPIA-3000、シスメックス株式会社製)を用いて測定した。具体的な測定手順は、以下のとおりである。
【0102】
この測定において、測定対象の試料は、粒子懸濁液としてシース・フローセルに供給される。粒子懸濁液の流れは、シース・フローセルを通過することで、幅の狭い扁平な流れに変換される。これにより、粒子の最大面積がカメラに向かって配向されること、及び全ての粒子に焦点が合うことが保証される。この測定において、CCDカメラは毎秒60画像をキャプチャし、これらの画像はリアルタイムで分析される。撮像画像の画像処理により各粒子の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。これから円相当径と円形度が計算される。
【0103】
円相当径は、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことで、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、円相当径から求めた円の面積をS、粒子投影像の周囲長をLとすると、次式で算出される。
円形度=2×(π×S)1/2/L
【0104】
シース液には、パーティクルシース「PSE-900A」(マルバーン社製)を、分散剤としては、市販の家庭用洗剤5質量%水分散液を、分散器としては、該装置のオートサンプラー装置を用いて、試料を分散させ、これを上記自動粒子形状・サイズ分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントで10000個のカプセルトナーを計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、全粒径範囲として、カプセルトナー粒子の平均円形度を求める。
【0105】
-評価項目1:シェル層の均一性の評価-
カプセルトナー粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂に包埋した硬化物を、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、複数個所切断して超薄片化(約200nm)し、ルテニウム染色した。この切片を、透過型電子顕微鏡(商品名:H-8100、株式会社日立製作所製)によって50000倍に拡大し、カプセルトナー粒子の断面を撮影した。シェル層は染色されて膜状態がはっきりわかり、コアトナー粒子と区別できるため、画像解析ソフトを用いて、コアトナー粒子を被覆しているシェル層の膜厚を計測した。シェル層の均一性の評価基準は、以下のとおりである。
【0106】
◎(優秀):シェル層の膜厚が25nm未満である。コアトナー粒子を薄膜で均一に被覆している。
○(良好):シェル層の膜厚が25nm以上30nm未満である。コアトナー粒子を均一に被覆している。
△(可) :シェル層の膜厚が30nm以上である。シェル層の膜厚は不均一である。
×(不可):シェル層の膜厚が不均一であり、コアトナー粒子が露出している。
【0107】
-評価項目2:ブリードアウトの評価-
50mLのガラス管瓶(商品名:SV-50A、日電理化硝子株式会社製)に測定用試料としてのトナーを5.0g秤量し、キャップ蓋をして密閉し、下記条件1,2の順で保管した後、室温に戻るまで静置した。
条件1:室温(25℃)下で24時間保管。
条件2:60℃±1℃の恒温器に入れて24時間保管。
【0108】
次に、各測定用試料の粉体の電子顕微鏡(S-4800形電界放出形走査電子顕微鏡、日立ハイテクノロジーズ株式会社製)写真からブリードアウトの有無を観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0109】
◎(優秀):ブリードアウトした固体がほとんど観測されない。
○(良好):ブリードアウトした固体が観測されるが、粒径1μm未満の小さな固体がほとんどである。
△(可) :ブリードアウトした固体が観測され、粒径1μm以上3μm未満の中型の固体が多数観測される。
×(不可):ブリードアウトした固体が非常に多く、粒径3μm以上の大きな固体が多数観測される。
【0110】
-評価項目3:昇華転写効率の評価-
実施例及び比較例のトナーとコートキャリア(シャープ株式会社製のMX-5111FN用純正キャリア)を、トナー濃度が7質量%となるように、V型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)にて20分間混合して二成分現像剤を作製した。
【0111】
上記二成分現像剤を、市販複写機(商品名:MX-5111FN、シャープ株式会社製)に充填し、縦20mm、横50mmの長方形のベタ画像を有するA4テスト原稿を中間記録媒体(商品名:PPC用紙SF-4AM3、シャープ株式会社製)に印刷した。この際、ベタ画像部のトナーの付着量を0.5mg/cm2、定着ローラの温度を135℃となるように設定した。
【0112】
上記二成分現像で得た中間記録媒体について、熱プレス処理による昇華転写前後の中間記録媒体の印刷出力100%にあたる部分に対して、分光光度計(商品名:スペクトロアイ、グレタグマクベス社製)を用いてマゼンタ色の染色濃度を測色した。転写前後の中間記録媒体に付着した染料濃度から、以下の式により昇華転写効率を算出した。
昇華転写効率=(転写後の染料濃度-転写前の染料濃度)/(転写前の染料濃度)×100%
【0113】
算出した昇華転写効率に基づいて、以下の基準で評価を行った。
◎(優秀):昇華転写効率が60%以上である。
○(良好):昇華転写効率が45%以上60%未満である。
△(可) :昇華転写効率が40%以上45%未満である。
×(不可):昇華転写効率が40%未満である。
【0114】
-評価項目4:摩擦に対する染色堅牢度の評価-
実施例及び比較例のトナーを、市販複写機(商品名:MX-5111FN、シャープ株式会社製)に充填して中間記録媒体に画像形成を行った。この中間記録媒体と布帛とを重ね合わせてから熱プレス処理を行うことで、布帛を昇華転写染色した。具体的には、下記3種類の布帛に対して、180℃で35秒間という条件で熱プレス処理して昇華転写染色を行い、3種類の試験布を調製した。
布帛1:PETトロマット(ポリエステルの厚手の生地で、ハトメ穴加工及び袋縫い加工が施されている布)
布帛2:T/C混(ポリエステルと綿とを混紡した布)
布帛3:綿ブロート(綿生地の密度が高く、光沢がある平織り布)
【0115】
上記のようにして得られた各試験布に対して、JIS L0849に規定の方法に従い、II型(学振型)試験機を用いて摩擦に対する染色堅牢度試験を実施した。乾摩擦はJIS L0849に規定される乾燥試験、湿摩擦はJIS L0849に規定される湿潤試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて以下の基準で評価した。
【0116】
◎(非常に良好):染色堅牢度が4.5級以上である。
○(良好) :染色堅牢度が4級である。
△(使用可) :染色堅牢度が3級である。
×(使用不可) :染色堅牢度が2級以下である。
【0117】
-総合評価-
上記評価項目1~4の評価結果を、「◎」を+2、「○」を+1、「△」を±0、「×」を-1として評点した。この評点の合計点に基づいて下記の基準で総合評価を行った。
【0118】
◎(優秀):合計点が6~8である(使用可能)。
○(良好):合計点が4~5である(使用可能)。
△(可) :合計点が0~3である(使用可能)。
×(不可):「×」評価である評価項目が1つ以上ある(使用不可)。
【0119】
<トナーの製造>
[実施例1]
-コアトナー粒子作製工程P1-
コアトナー粒子の作製には、以下のトナー原料を使用した。
・結着樹脂:スチレンアクリル樹脂(商品名:CPR-190、三井化学株式会社製) 85.0質量%
・昇華性染料:Disperse Yellow 54(商品名:Plast Yellow 8040、有本化学工業株式会社) 6.0質量%
・帯電制御剤:サリチル酸系化合物(商品名:ボントロンE-84、オリヱント化学工業株式会社) 1.0質量%
・離型剤:精製カルナバワックス(商品名:TOWAX-131、東亜化成株式会社製) 8.0質量%
【0120】
上記のトナー原料を、気流混合機(ヘンシェルミキサ、型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間前混合した[混合工程]。次いで、二軸押出機(型式:PCM30型、株式会社池貝製)を用い、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数200rpm、原料供給速度15kg/hの条件で溶融混練して溶融混練物を得た[混練工程]。
【0121】
得られた溶融混練物を、ドラムフレーカーで冷却させた後、カッティングミル(型式:VM-16、オリエント粉砕機株式会社製)を用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た[粗粉砕工程]。
【0122】
次いで、得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(型式:IDS-2、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕し、微粉砕品を得た[微粉砕工程]。
【0123】
得られた微粉砕品を、エルボージェット分級機(型式:EJ-LABO、日鉄鉱業株式会社製)を用いて分級して、平均一次粒径6.0μmのコアトナー粒子を得た[分級工程]。
【0124】
-樹脂微粒子調製工程P2-
撹拌加熱装置、温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、脱イオン水168質量部を仕込み、80℃に昇温した。これに脱イオン水252質量部、スチレン65質量部、n-ブチルアクリレート27質量部及びアクリル酸8質量部からなるモノマー混合液(プレエマルション)と、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1質量部、n-ドデシルメルカプタン0.2質量部及び脱イオン水62質量部からなる開始剤水溶液56質量部とを同時に110分かけて滴下し、さらに60分間撹拌した後、反応を終了させることで、ガラス転移点が80℃、軟化点が145℃、重量平均分子量(Mw)が310000、粒径が0.150μmのほぼ単分散の樹脂微粒子のエマルション(固形分30質量%)を得た。
【0125】
-複合粒子形成工程P3-
気流混合機(ヘンシェルミキサ、型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)の中に、コアトナー粒子100質量部と、樹脂微粒子15質量部とを投入し(エマルションの状態で、コア粒子100質量部に対して50質量部投入)、撹拌羽根の先端部の周速を15m/sとして撹拌混合を開始すると同時に、ミキサ槽内を真空度0.01MPaまで減圧した。減圧下において10分間撹拌混合することによって、コアトナー粒子表面に樹脂微粒子を均一に付着させた複合粒子を得た。複合粒子の水分含有率は0.1質量%であった。
【0126】
-カプセルトナー粒子形成工程P4-
図3に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS-3型、株式会社奈良機械製作所製)の中に、複合粒子を投入し、回転撹拌手段の最外周における周速度を50m/sに設定して10分間撹拌混合することによって、コアトナー粒子の表面に樹脂微粒子を膜化させ、カプセルトナー粒子を得た。
【0127】
-外添工程P5-
カプセルトナー粒子形成工程で得たカプセルトナー粒子100質量部と、外添剤として1次粒子の中心粒径が12nmの疎水性シリカ粒子2質量部とを、気流混合機(ヘンシェルミキサ、型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)に投入し、回転軸部材の周速度を30m/sとして3分間撹拌混合し、実施例1のトナーを得た。
【0128】
[実施例2~18,比較例1~6]
コアトナー粒子及びシェル層に配合する樹脂の分子量分布をコントロールして融点を表1に示すように調整したことと、シェル層を形成する樹脂微粒子の中心粒径及び添加量を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0129】
[実施例19~50]
複合粒子形成工程を以下のように変更して、コアトナー粒子とシェル層との界面にシリカ粒子が存在するカプセルトナー粒子を作製したことと、シェル層を形成する樹脂微粒子の中心粒径及び添加量、並びにシリカ粒子の添加量を表2に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0130】
-複合粒子形成工程P3-
気流混合機(ヘンシェルミキサ、型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)の中に、コアトナー粒子100質量部と、表2に示す疎水化処理されたシリカ粒子とを投入して、撹拌羽根の先端部の周速を15m/sとして撹拌混合を行い十分に分散させた。次に、樹脂微粒子を20質量部投入(エマルションの状態で、コアトナー粒子100質量部に対して67質量部投入)し、撹拌羽根の先端部の周速を15m/sとして撹拌混合を開始すると同時に、ミキサ槽内を真空度0.01MPaまで減圧した。減圧下において10分間撹拌混合することによって、コアトナー粒子表面に樹脂微粒子を均一に付着させた複合粒子を得た。複合粒子の水分含有率は0.1質量%であった。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
表1,2は、実施例及び比較例におけるトナー原料の物性、種類及び添加量を示したものであり、表3,4は、実施例及び比較例の評価結果を示したものである。表1,2における「樹脂微粒子の添加量」及び「シリカ粒子の添加量」は、コアトナー粒子100質量部に対する添加量である。表2の「シリカ粒子の種類」における、「R972」「RY300S」「NX130」「NAX50」「NY50」「RX50」「RY50」「RY40S」は日本アエロジル株式会社製の商品名である。
【0136】
表3,4の評価結果から明らかなように、昇華性染料を含むカプセルトナー粒子を有するトナーであって、前記カプセルトナー粒子はコアトナー粒子と当該コアトナー粒子の表面を被覆するシェル層とを備え、前記コアトナー粒子を形成する樹脂の融点は105℃以上135℃以下であり、前記シェル層を形成する樹脂の融点は140℃以上160℃以下である実施例1~50のトナーはシェル層の均一性に優れ、昇華転写法による染色において、昇華性染料のブリードアウトを抑制でき、シェル層の均一性、昇華転写効率及び摩擦に対する染色堅牢度に優れるものであった。
【0137】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~6は、シェル層の均一性、ブリードアウト、昇華転写効率、及び摩擦に対する染色堅牢度の評価項目のうち少なくとも1つが実施例に対して劣っていた。
【0138】
比較例1,2は、コアトナー粒子を形成する樹脂に融点が90℃と低いものを使用した例であり、その結果、カプセルトナー粒子形成工程(カプセル化処理時)においてシェル層を形成する樹脂微粒子がコアトナー粒子に局所的に埋まりこむ現象が発生した。シェル層を形成する樹脂の融点を110℃から140℃に上げた場合(比較例2)には、その現象がより顕著となり、円形度の低下が確認された。
【0139】
コアトナー粒子を形成する樹脂と、シェル層を形成する樹脂とで融点差がない比較例3では、両樹脂の粘度がほぼ同時に低下するためにシェル層の均一性を保つことができなかった。
【0140】
比較例4~6は、コアトナー粒子を形成する樹脂に融点が140℃と高いものを使用した例であり、その結果、カプセルトナー粒子形成工程後(カプセル化処理後)のシェル層の形状は良化したことが確認できたが、昇華転写法による染色を実施すると昇華転写効率の低下が確認された。これは、コアトナー粒子を形成する樹脂の融点を上げたことで染料の染み出し効率が低下したためである。これを解消するために定着ローラの温度を上げるとオフセットが発生するという問題があり、且つ消費電力の上昇が見込まれるという問題がある。
【0141】
実施例7~実施例18は、樹脂微粒子の中心粒径及び添加量を変化させた例である。樹脂微粒子の添加量がコアトナー粒子100質量部に対して20質量部である実施例9,11,14,17を用いて、樹脂微粒子の中心粒径について検討すると、中心粒径が0.1μm以上0.2μm以下である実施例9,11,14は、中心粒径が上記上限を超える実施例17よりもシェル層の均一性の評価に優れることがわかる。
【0142】
コアトナー粒子100質量部に対する樹脂微粒子の添加量(換言すると、シェル層の割合)について、樹脂微粒子の中心粒径が0.15μmである実施例10~12を用いて検討すると、樹脂微粒子の添加量が12質量部以上23質量部以下である実施例11は、添加量が上記範囲外である実施例10,12よりも、摩擦に対する染色堅牢度の評価に優れることがわかる。
【0143】
実施例19~50は、コアトナー粒子表面に、表面が疎水化処理されたシリカ粒子を付着させた例である。換言すると、これらのカプセルトナー粒子では、コアトナー粒子とシェル層との界面にシリカ粒子が存在する。
【0144】
シリカ粒子の表面処理剤について、実施例19~24を用いて検討すると、PMDS(ジメチルポリシロキサン)で疎水化処理された実施例21,22は、DDS(ジメチルジクロロシラン)やHMDS(ヘキサメチルジシラザン)で疎水化処理された実施例18,19,23,24よりも、昇華転写効率の評価に優れることがわかる。
【0145】
コアトナー粒子表面に付着させたシリカ粒子の中心粒径について、実施例18,24,28,30を用いて検討すると、シリカ粒子の中心粒径が20nm以上50nm以下である実施例24,28は昇華転写効率が70%を超えており、シリカ粒子の中心粒径が上記範囲外である実施例18,30よりも、昇華転写効率に優れることがわかる。
【0146】
実施例35~50は、コアトナー粒子表面に付着させるシリカ粒子の添加量を変化させた例である。シリカ粒子によるコアトナー粒子表面の被覆率について、例えば実施例35,37,39,41を用いて検討すると、当該被覆率が45%以上75%以下である実施例37,39は、当該被覆率が上記下限未満である実施例35よりも各種評価に優れることがわかる。また、当該被覆率が上記上限を超える実施例41よりも昇華転写効率及び摩擦に対する染色堅牢度の評価に優れることがわかる。
【0147】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。