(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151923
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20241018BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241018BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20241018BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/44
A61K31/185
A61K31/198
A61P43/00 111
A61Q11/00
A61P1/02
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/12
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065745
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LE01
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD10
4B018MD18
4B018ME14
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA69
4C076BB22
4C076BB23
4C076CC16
4C076FF01
4C076FF11
4C076FF68
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC781
4C083AC782
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD15
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE33
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA37
4C206JA06
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA55
4C206MA67
4C206MA77
4C206NA14
4C206ZA67
4C206ZC20
(57)【要約】
【課題】優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮するコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤等を提供する。
【解決手段】本発明のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とするコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項2】
歯周組織の破壊抑制・再生促進剤である請求項1に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項3】
歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤である請求項1に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項4】
歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤である請求項1に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項5】
歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤である請求項1に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項6】
ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に生体は、硬い骨や歯等の硬組織と、それを包んだり、つないだりして運動を助ける柔らかい靭帯、腱、滑膜、歯根膜等の軟組織とにより、基本的な骨格が形成されている。その硬組織と軟組織とを付着構造がつないでおり、両組織を別々ではなくひとつの複合組織として機能することを助けている。また一方で、これら付着構造において、その組織の改変や再構築、又はリューマチ、関節炎、歯周病等の炎症性疾患において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が強く関与していることが知られている。
【0003】
MMPは、活性部位に亜鉛(II)イオンを保有することを特徴とする細胞外マトリックス分解酵素の総称である。MMPとしては、コラゲナーゼ型(MMP-1,8,13)、ストロメライシン型(MMP-3)、ゼラチナーゼ型(MMP-2,9)等の20種類以上の酵素分子種が知られ、これらは多くの種類の細胞によって産生される。
【0004】
コラゲナーゼ型MMPとしては、線維芽細胞及びマクロファージから産生される組織コラゲナーゼであるMMP-1、好中球コラゲナーゼであるMMP-8、及び軟骨細胞から産生されるMMP-13等が知られている。
【0005】
歯周炎等の歯周病において、コラゲナーゼ型MMPの発現異常にもとづく歯周組織の合成・分解の代謝バランスの崩れによって生ずる組織破壊が大きく関与している。例えば、歯周ポケットの細菌に反応して好中球が歯肉溝浸出液中に浸潤・集積し、MMP-8を産生する。これにより歯周ポケットの結合組織性付着が破壊され、ポケット深さの増大や、歯肉退縮につながり、さらに症状が進行することにより、歯牙の動揺、脱落へと進むことになる。これらのコラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することにより、歯周組織を構成するコラーゲンの分解を抑制することができる。
【0006】
従来より、例えば特許文献1に開示されるMMP阻害剤が知られている。かかるMMP阻害剤は、酵素活性部位の亜鉛イオンと配位結合可能な官能基を含む保護剤を表面に有する金ナノ粒子からなる成分について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することが、歯周病の予防、及び歯周病の進行につながると考えられる。優れたコラゲナーゼ型MMP活性阻害作用を発揮するコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)又はココイルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸(ココイルアルギニンエチルPCA:CAE)が、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮することを新たに見出した。
【0010】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【0011】
態様2は、態様1に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤において、歯周組織の破壊抑制・再生促進剤である。
態様3は、態様1又は2に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤において、歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤である。
【0012】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤において、歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤である。
【0013】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤において、歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤である。
【0014】
態様6の口腔用組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤(以下、「MMP活性阻害剤」という)、及び口腔用組成物を具体化した一実施形態を説明する。
【0017】
本実施形態のMMP活性阻害剤に含まれる成分は、ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種である。
本実施形態の口腔用組成物は、上記MMP活性阻害剤と同様の成分を含有している。MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物は、上記成分のうち一種のみを含有していてもよいし、上記成分のうち二種を組み合わせて含有していてもよい。口腔用組成物は、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用である。
【0018】
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物が含有する上記成分について説明する。MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物は、同様の成分を含有しているため、以下では、口腔用組成物について説明し、MMP活性阻害剤については説明を省略する。なお、本発明において、口腔用組成物とは、主として口腔内で使用することを目的とするものを意味するものとする。使用後は口腔内から排出される口腔用製剤だけでなく、摂取可能な飲食品を含むものとする。MMP活性阻害剤は、口腔内で使用することを目的とするものに限定されない。
【0019】
<ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCA>
ラウリル硫酸ナトリウムは、アニオン性界面活性剤の一種である。ココイルアルギニンエチルPCAは、ヤシ脂肪酸とアルギニンのアミドのエチルエステルと、ピロリドンカルボン酸(PCA)の塩であり、カチオン性界面活性剤の一種である。
【0020】
口腔用組成物におけるラウリル硫酸ナトリウムの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001質量%以上3.0質量%以下である。以下では、口腔用組成物における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記する。ラウリル硫酸ナトリウムの含有量の上限値は、2.0%であることが好ましく、より好ましくは1.5%である。ラウリル硫酸ナトリウムの含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.02%である。当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、又は2.5%であってもよい。
【0021】
口腔用組成物におけるココイルアルギニンエチルPCAの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.005%以上1.0%以下である。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の上限値は、0.9%であることが好ましく、より好ましくは0.3%である。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.02%である。当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.075、0.01、0.0125、0.015、0.0175、0.02、0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9%であってもよい。
【0022】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば上記以外の界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤等が挙げられる。その他成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0023】
界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、上記以外のアニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0024】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0025】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。
【0026】
香味剤の具体例としては、例えばメントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、アニス油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0027】
甘味剤の具体例としては、例えばサッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0028】
湿潤剤の具体例としては、例えばソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0029】
粘結剤の具体例としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等のセルロース誘導体、キサンタンガム等の微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、グアーガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、増粘性シリカ、ビーガム等の無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性粘結剤等が挙げられる。
【0030】
防腐剤の具体例としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0031】
着色剤の具体例としては、例えば青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
キレート剤の具体例としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸等が挙げられる。
薬効成分の具体例としては、例えば酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、又はリン酸アスコルビルマグネシウム等のビタミンC類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、グリチルリチン酸塩とその誘導体、グリチルレチン酸、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の非イオン性殺菌剤、ソルビン酸等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、ヒノキチオール、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等が挙げられる。
【0033】
基剤の具体例としては、例えばアルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0034】
アルコール類の具体例としては、例えばエチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
研磨剤の具体例としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0035】
安定化剤の具体例としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
<適用形態、用途、及び剤形>
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品等として使用することができる。MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の用途としては、公知の用途を適宜採用することができる。具体的には、例えば咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
【0036】
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、例えば水、アルコール等の溶媒を含有することにより、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0037】
<作用>
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物は、上述した成分により優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮する。コラゲナーゼ型MMPとしては、具体的にはMMP-1,MMP-8,MMP-13が挙げられる。これらの中で、MMP-8に対してより優れた活性阻害作用を発揮する。
【0038】
歯周炎等の歯周病において、コラゲナーゼ型MMPの発現異常にもとづく歯周組織の合成・分解の代謝バランスの崩れによって生ずる組織破壊が大きく関与している。コラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することにより、歯周組織を構成するコラーゲンの分解を抑制することができる。
【0039】
MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により、例えば付着上皮、歯肉溝上皮、歯根膜等の歯周組織の破壊抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周組織の破壊抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。また、MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。また、MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。
【0040】
また、歯周病等の炎症疾患において、例えば歯周ポケットの細菌に反応して好中球が歯肉溝浸出液中に浸潤・集積し、MMP-8を産生する。これにより歯周ポケットの結合組織性付着が破壊され、ポケット深さの増大や、歯肉退縮につながり、さらに症状が進行することにより、歯牙の動揺、脱落へと進むことになる。MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により、既に産生された好中球コラゲナーゼの活性を阻害する。それにより歯周ポケットの深化抑制・修復促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤として好ましく適用することができる。
【0041】
以上の作用により、本実施形態のMMP活性阻害剤、及び口腔用組成物は、歯肉退縮抑制、歯肉破壊抑制、歯周組織破壊抑制、歯茎下がり抑制、歯肉コラーゲン分解抑制、アタッチメントロス抑制、歯周組織コラーゲン保護、慢性炎症に伴う歯周組織の破壊抑制、及び/又は象牙質コラーゲンの保護等のために用いることができる。
【0042】
なお、本明細書において、「アタッチメントロス抑制」とは、歯肉の付着上皮が歯の表面から剥離し、歯肉と歯の付着位置が歯根側に移行していくことを抑制することを意味する。また、「歯肉退縮抑制」とは、歯肉全体が歯根側に移動することを抑制することを意味する。また、「歯茎下がり抑制」とは、歯肉全体の歯根側への移動に伴う歯根部の露出を抑制することを意味する。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態のMMP活性阻害剤、及び口腔用組成物では、ラウリル硫酸ナトリウム及びココイルアルギニンエチルPCAからなる群より選択される少なくとも一種を含んで構成されている。したがって、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0044】
(2)コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害することで、歯肉退縮抑制、歯肉破壊抑制、歯周組織破壊抑制、歯茎下がり抑制、歯肉コラーゲン分解抑制、アタッチメントロス抑制、歯周組織コラーゲン保護、慢性炎症に伴う歯周組織の破壊抑制、及び/又は象牙質コラーゲンの保護等の効果が期待される。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・ヒト以外のペット、家畜等の飼養動物に適用してもよい。
【実施例0046】
本実施形態のMMP活性阻害剤について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、MMP活性阻害剤は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
<MMP-8活性阻害試験>
(調製)
MMP-8活性阻害剤として、実施例1~5及び比較例1~7のサンプル溶液をそれぞれ調製した。実施例1~5及び比較例1~7のサンプル溶液が含有する各素材の種類は、下記表1に示すとおりである。実施例1~5及び比較例2~7のサンプル溶液は、各素材の濃度が表1に示す濃度になるように後述するキット付属のバッファー+5%DMSO溶液で希釈した。
【0047】
(MMP-8活性阻害の測定)
MMP-8(好中球コラゲナーゼ)活性は、MMP-8 fluorimetricdrug discovery kit(Enzo Life Sciences,Inc.製)を使用し、測定は、基本的に説明書に記載の使用方法に従った。
【0048】
すなわち、上記のように調製された各例の溶液20μL、200倍に希釈したMMP-8を20μL、キット添付のバッファー50μLを混和し、37℃で60分間反応させた。このとき、陽性コントロールとして素材を添加せずバッファーを等量加えたサンプル、また基質のみのバックグラウンドの測定のためにMMP-8を添加せずバッファーを等量加えたサンプルを用意した。
【0049】
蛍光基質(メチルクマリンアミド蛍光基質:Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2)を溶かし、バッファーを用いて10倍希釈した(濃度40μM)。希釈した蛍光基質10μLを添加し、37℃で15分反応させた後に、励起光:328nm、放出光:420nmの蛍光強度を測定した。陽性コントロールサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値(NC)を100%として、各例のサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値の比率を酵素活性として算出した。比率の値が低いほど、MMP-8活性阻害が強いことを示す。N=3として測定し、算出した平均値と標準偏差(SD)を表1に示す。
【0050】
【表1】
表1に示されるように、実施例1,2のココイルアルギニンエチルPCAは、低濃度で優れたMMP-8活性阻害作用を発揮することが確認された。実施例3~5のラウリル硫酸ナトリウムは、低濃度で優れたMMP-8活性阻害作用を発揮することが確認された。実施例1及び実施例3の比較より、ラウリル硫酸ナトリウムの方がより低濃度でMMP-8活性阻害作用を発揮することが確認された。一方、各比較例で使用した各界面活性剤は、いずれもMMP-8活性阻害作用が低い結果であった。
【0051】
<MMP-1活性阻害試験>
(調製)
MMP-1活性阻害剤として、実施例6~8及び比較例8~11のサンプル溶液をそれぞれ調製した。実施例6~8及び比較例8~11のサンプル溶液が含有する各素材の種類は、下記表2に示すとおりである。実施例6~8及び比較例9~11のサンプル溶液は、各素材の濃度が表2に示す濃度になるように後述するキット付属のバッファー+5%DMSO溶液で希釈した。
【0052】
(MMP-1活性阻害の測定)
MMP-1(線維芽細胞コラゲナーゼ)活性は、MMP-1 fluorimetricdrug discovery kit(Enzo Life Sciences,Inc.製)を使用し、測定は、基本的に説明書に記載の使用方法に従った。
【0053】
すなわち、上記のように調製された各例の溶液20μL、100倍に希釈したMMP-1の20μL、キット添付のバッファー50μLを混和し、37℃で60分間反応させた。このとき、陽性コントロールとして素材を添加せずバッファーを等量加えたサンプル、また基質のみのバックグラウンドの測定のためにMMP-1を添加せずバッファーを等量加えたサンプルを用意した。
【0054】
蛍光基質(メチルクマリンアミド蛍光基質:Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2)を溶かし、バッファーを用いて10倍希釈した(濃度40μM)。希釈した蛍光基質10μLを添加し、37℃で60分反応させた後に、励起光:328nm、放出光:420nmの蛍光強度を測定した。陽性コントロールサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値(NC)を100%として、各例のサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値の比率を酵素活性として算出した。比率の値が低いほど、MMP-1活性阻害が強いことを示す。N=3として測定し、算出した平均値と標準偏差(SD)を表2に示す。
【0055】
【表2】
表2に示されるように、実施例6~8のラウリル硫酸ナトリウムは、MMP-1についても優れた抑制効果を発揮した。そのため、ラウリル硫酸ナトリウムは、コラゲナーゼ型MMP活性を阻害する効果に優れることが予測された。なお、ラウロイルサルコシンナトリウムは、MMP-1活性についても阻害効果が低い結果であった。