(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151925
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】脳内抗酸化酵素活性化組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20241018BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20241018BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241018BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20241018BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241018BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20241018BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L2/66
A23L2/00 F
A61K38/01
A61K38/08
A61P39/06
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065751
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 琢和
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰治
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD22
4B018MD58
4B018ME06
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4B018MF01
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4B018MF12
4B117LC04
4B117LG11
4B117LK15
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4C084AA02
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4C084ZC21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA33
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA70
(57)【要約】
【課題】日常的に摂取でき、脳内抗酸化酵素を活性化することができる脳内抗酸化酵素活性化組成物及び前記脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む脳内抗酸化酵素活性化用飲食品を提供すること。
【解決手段】大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの酵素分解物を有効成分とする、脳内抗酸化酵素活性化組成物及び前記脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む脳内抗酸化酵素活性化用飲食品。前記酵素分解物が、大豆デプレスタチンを含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの酵素分解物を有効成分とする、脳内抗酸化酵素活性化組成物。
【請求項2】
前記酵素分解物が、大豆デプレスタチンを含む、請求項1に記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物。
【請求項3】
経口適用により使用するためのものである、請求項1又は2に記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む、脳内抗酸化酵素活性化用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳内抗酸化酵素活性化組成物及び脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む脳内抗酸化酵素活性化飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な疾病の原因として、酸化ストレスの影響に注目が集まっている。酸化ストレスは、反応性の高い酸素分子(活性酸素)に由来する細胞毒性である。中でも、脳内での酸化ストレスの除去は、脳機能維持のために重要な役割を果たしている。
例えば、加齢に伴う認知機能の低下には、脳神経細胞での酸化障害が関与していると想定されている。
【0003】
そこで、認知症予備群となる健常者及び軽度認知障害者が認知症に進むのを防止する手法として、例えば、抗酸化作用を有し、ブレインフードとして血液脳関門を通過する科学的根拠を持つウコン粉末を含む流動食材が知られている(特許文献1)。
ただし、ウコン粉末は、漢方に由来する医薬成分であり、日常的に摂取するにはコストが高いという問題がある。
【0004】
また、抗酸化剤としては、大豆グリシニンを総蛋白質の60重量%以上含有する蛋白質組成物の加水分解物を含む抗酸化剤が知られている(特許文献2)。
大豆は、様々な食品に利用されており、日常的に摂取しても安全な食材であることが知られている。
ただし、前記抗酸化剤の抗酸化作用は、ヒト肝ガン細胞であるHepG2細胞を用いて生体外での酸化ストレスに対する防御率が測定されており、脳内の抗酸化酵素に対する作用は確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-108726号公報
【特許文献2】特開2012-116817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、日常的に安全に摂取でき、脳内抗酸化酵素を活性化することができる脳内抗酸化酵素活性化組成物及び前記脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む脳内抗酸化酵素活性化用飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意努力した結果、大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの酵素分解物をマウスに経口で摂取させると、マウスの脳内にある複数の抗酸化酵素が活性化されることを当該分野で初めて見出して、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの酵素分解物を有効成分とする、脳内抗酸化酵素活性化組成物、
〔2〕前記酵素分解物が、大豆デプレスタチンを含む、前記〔1〕に記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物、
〔3〕経口適用により使用するためのものである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物、
〔4〕前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の脳内抗酸化酵素活性化組成物を含む、脳内抗酸化酵素活性化用飲食品
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の脳内抗酸化酵素活性化組成物は、経口で摂取した場合に、脳内の抗酸化酵素を活性化させることができる。したがって、本発明の脳内抗酸化酵素活性化組成物を日常的に摂取することにより、脳内の活性酸素の量を安全に低く維持できる。
本発明の脳内抗酸化酵素活性化組成物は、各種飲食品に含有させることで、脳内抗酸化酵素活性化作用を有する栄養強化食品組成物又は機能性食品組成物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、試験例1で実施した脳内のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、試験例1で実施した脳内のカタラーゼ(CAT)酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、試験例1で実施した脳内のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、試験例2で実施した生体外抗酸化能測定試験の内、親水性ORAC法で測定した結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、試験例2で実施した生体外抗酸化能測定試験の内、親油性ORAC法で測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、本発明を限定するものではない。
【0012】
本発明の脳内抗酸化酵素活性化組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの酵素分解物を有効成分とする。
【0013】
β-コングリシニン(β-CG)は、グリシニンとともに、大豆タンパク質を構成する主要なタンパク質として知られる。
【0014】
本発明において酵素分解物とは、β-コングリシニンをタンパク質分解酵素で加水分解処理したものをいう。
前記タンパク質分解酵素としては、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、バチルス(Bacillus)属等の微生物に由来のプロテアーゼ等が挙げられる。
【0015】
Bacillus属に由来するプロテアーゼとして、「プロテアーゼM(アマノ)G」(天野エンザイム株式会社製)(以上、Aspergillus oryzae由来)、「オリエンターゼ(登録商標)20A」(エイチビィアイ株式会社製),「デナプシン(TM)2P」(ナガセケムテックス株式会社製)(以上、Aspergillus niger由来)、Rhizopus属由来の「ニューラーゼ(R)F3G」(天野エンザイム株式会社製)、Bacillus属由来の「プロチン(TM)SD-NY10」(天野エンザイム株式会社製)、「オリエンターゼ(登録商標)10NL」(エイチビィアイ株式会社製)等を挙げることができる。
【0016】
中でも、本発明では、大豆タンパク質を効率よく分解できる観点から、サーモリシンが好ましい。
サーモリシンは、耐熱性菌Bacillus thermoproteolyticus由来のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)である(EC3.4.24.4、EC3.4.24.27)。サーモリシンは、日本において食品添加物として使用することができる。サーモリシンは、食品添加物グレード等の市販されているものを使用することができる。前記市販のサーモリシンとしては、例えば、「サモアーゼPC10F」「サモアーゼGL30」(いずれも天野エンザイム株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
前記酵素分解物は、大豆タンパク質であるβ-コングリシニンの構成アミノ酸である大豆デプレスタチンを検出できる程度にまで分解されたものである。
前記大豆デプレスタチンとは、10個のアミノ酸配列:
LSSTQAQQSY(Leu-Ser-Ser-Thr-Gln-Ala-Gln-Gln-Ser-Tyr:配列番号1)
からなるペプチドである。
【0018】
前記酵素分解物中の大豆デプレスタチンの含有量としては、特に限定はないが、本発明の効果を奏する観点から、0.01重量%以上が好ましく、0.08重量%以上がより好ましい。
前記大豆デプレスタチンの含有量については、HPLC及びLC-MS/MSを用いて測定することができる。
【0019】
また、前記酵素分解物中に大豆デプレスタチンを混合することで、大豆デプレスタチンの含有量を調整することもできる。この場合、混合する大豆デプレスタチンとしては化学合成品を用いることができる。
【0020】
前記酵素分解物は、有効成分として大豆デプレスタチンを含有するが、本発明の効果を妨げない範囲で、大豆デプレスタチン以外の他の成分を含有してもよい。そのような成分としては、例えば、大豆デプレスタチン以外の大豆由来成分等が挙げられる。
【0021】
前記酵素分解物は、例えば、以下のようにして調製することができる。
【0022】
大豆タンパク質であるβ-コングリシニンを含有する原料液を調製する(原料液作製工程)。
次いで、前記原料液をタンパク質分解酵素により加水分解する(酵素処理工程)。
【0023】
前記原料液としては、大豆ベータコングリシニン(β-CG)タンパク質を含むものであればよく、特に限定されないが、例えば、大豆の粉砕物、搾汁又はこれらの精製物を含む水との混合液が挙げられる。
前記原料液では、タンパク質分解酵素による加水分解反応が生じるのに十分な水が含有されていればよく、前記原料液中の水の含有量については特に限定はない。
【0024】
前記粉砕物は、食品分野で公知の粉砕機を用いて得られたものであればよい。また、粉砕状態についても、タンパク質分解酵素との酵素反応ができる程度であればよく、特に限定はない。例えば、大豆から大豆油を抽出した搾りかす(ミール、脱脂大豆ともいう)等が挙げられる。
【0025】
前記搾汁は、食品分野で公知の搾汁機、圧搾機等を使用して得られたものであればよい。
前記粉砕物又は搾汁は、食品分野で公知の手法で精製されていてもよく、例えば、大豆タンパク質を主成分とする市販品、精製されたβ-CGタンパク質等が挙げられる。
前記のような大豆の粉砕物、搾汁又はこれらの精製物は、水と混合した混合液の状態とすることで、タンパク質分解酵素による酵素処理を効率よく行うことができる。なお、混合液中の水の含有量等は特に限定はない。
【0026】
前記加水分解時の温度は、使用するタンパク質分解酵素の至適温度付近で一定に調整してもよいし、昇温してもよい。
【0027】
中でも、前記温度を5~70℃の範囲内で昇温していくことで、大豆タンパク質の過剰な加水分解が抑えられ、大豆デプレスタチンを含むペプチドを効率よく得られることが考えられる。
前記昇温での開始温度は、使用するタンパク質分解酵素の至適温度よりも低温に調整していればよく、5~40℃の温度範囲から適宜選択することができる。前記開始温度を上げると、酵素反応が起こりやすくして酵素処理時間を短くすることができる。この場合、開始温度は、例えば、10℃以上、15℃以上でもよい。
前記開始温度の上限値は、40℃以下にしておくことで、過剰な酵素反応を抑えることができる。この場合、開始温度は、例えば、30℃以下でもよい。
【0028】
また、前記昇温において、2段階以上で段階的に温度を上げる場合、例えば、第2段階の温度は、45~70℃、45~65℃、45~55℃、47~53℃、49~51℃等から適宜選択することができる。
また、さらに第3段階以上の温度を設定してもよく、この場合、56~70℃、58~65℃、59~62℃等から適宜選択することができる。
【0029】
前記酵素処理工程における反応時間は、48時間以下であればよく、効率よく酵素処理を行う観点から、1~10時間程度、2~5時間程度等から適宜選択すればよい。
また、酵素反応を行う大豆タンパク質を含有する原料液のpHは、pH6.5~8.5程度、pH7~8程度から適宜選択することができる。
前記pHの調整は、pH調整剤等を用いて行えばよい。
【0030】
前記酵素処理工程の終了時には、公知の方法でタンパク質分解酵素を失活させる。前記失活の方法については、特に限定はないが、例えば、酵素反応させている原料液を、加熱(例えば、80℃を超える温度で5~60分程度での加熱)することが挙げられる。
なお、前記酵素処理工程において、酵素反応を過剰にさせない観点から、酵素処理の終了については、酵素処理液のpHを継時的に確認し、pHが低下しなくなったことを確認することで判断すればよい。
【0031】
前記酵素処理工程で得られた酵素処理液は、そのまま大豆デプレスタチン含有組成物として使用することができるが、必要に応じて、不溶成分を除去してもよい。
前記不溶成分は、原料であるタンパク質に由来する未反応のタンパク質や高分子ペプチドであるが、これらの不溶成分を除去することで、組成物中の大豆デプレスタチンの濃度を向上させることに加えて、溶解性を上げて、大豆デプレスタチン含有組成物を様々な食品に配合し易くする(加工特性が向上する)という利点がある。
【0032】
前記不溶成分除去工程では、例えば、前記酵素処理工程で得られる酵素処理液のpHを4~6に調整し、不溶成分を除去する方法が挙げられる。
pHを4~6に調整するには、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸やクエン酸、酢酸、リンゴ酸等の有機酸から使用用途に応じて使用可能な酸を使用すればよい。
また、不溶成分を除去する方法としては、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられる。
【0033】
また、前記不溶成分除去工程で得られた処理液を精製してもよい。
前記精製には、例えば、限外ろ過又はカラムクロマトグラフィー等の公知のタンパク質の精製方法を用いればよい。前記限外ろ過又はカラムクロマトグラフィーの分離材である樹脂については、大豆デプレスタチンを分離できる樹脂を用いればよく、樹脂の種類については特に限定はない。
【0034】
さらに、前記のようにして得られた大豆デプレスタチン含有組成物を、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥等の既存の乾燥法により水分を除去することで、高度に濃縮、粉末化し、安定的に使用することができる。
【0035】
以上のようにして得られたβ-コングリシニンの酵素分解物は、ヒト又は非ヒト動物が経口で摂取した場合に、脳内の抗酸化酵素を活性化することができる。
【0036】
前記脳内の抗酸化酵素の種類としては、脳内の活性酸素を低減する作用機序に関わる酵素であり、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)及びグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)等が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物は、前記脳内の抗酸化酵素の全てに対して活性化作用を有するという特徴的な作用を有する。
また、本発明者らは、生体外で本発明の組成物の抗酸化能を測定しても、抗酸化能が見られないことを確認している。このことから、本発明の組成物が脳内に移動されて、脳内の抗酸化酵素の活性化で得られる抗酸化作用に直接関わっていないことを確認している。
したがって、本発明の組成物は、経口で摂取した場合に、その作用メカニズムの詳細は不明であるが、消化器等の脳とは別の器官から、脳内に存在する抗酸化酵素の活性化を刺激することができると考えられる。
【0038】
本発明の脳内抗酸化酵素活性化組成物は、例えば、日常的に摂取することにより、脳内の活性酸素の量を低く維持することができる。これにより、例えば、高齢化にともなって認知症に進むリスクを抑える等、脳内に活性酸素が存在することで誘因される様々な悪影響のリスクを低減することが期待される。
【0039】
本発明の組成物は、各種飲食品に配合して、脳内抗酸化酵素活性化用飲食品を作製してもよい。
本発明の組成物を飲食品に配合する場合、例えば、脳内抗酸化酵素活性化用飲食品中における大豆デプレスタチン含有量として、一回分の摂取量でヒトに対しては40μg以上、好ましくは800μg以上、より好ましくは1mg以上の大豆デプレスタチンが含有されているように調整すればよい。
また、本発明の組成物を前記飲食品に含有する場合、他の原料と共に混合すればよく、混合のタイミングについては特に限定はない。
【0040】
前記食品組成物の形態としては、特に制限はないが、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料等)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベット等)、水産加工品(かまぼこ、ちくわ、はんぺん等)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、マーガリン、発酵乳等)、スープ(粉末状スープ、液状スープ等)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺、パスタ)、パン、シリアル等)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆ等)等が挙げられる。
【0041】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例0042】
(実施例1:脳内抗酸化酵素活性化組成物の作製)
以下のようにして、大豆ペプチドを調製した。すなわち、0.5kgの大豆分離タンパク(SPI、スプロ661、デュポン株式会社)を4.5kgの水に懸濁・溶解させた。得られた混合液を攪拌しながら60℃に加温し、pH7.0(±0.1)になるように10M水酸化ナトリウム溶液を添加した後、サモアーゼ(登録商標)PC10F(天野エンザイム株式会社製)を5g添加し、60℃にて攪拌しながら5時間反応させた。反応中、30分毎に、pHを測定し、pH7.0(±0.1)になるように10M水酸化ナトリウム溶液を添加した。反応終了後、反応液の温度を90℃に上げ、そのまま1時間保温し、酵素を失活させた後スプレードライヤーにて乾燥し、大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)を得た。
【0043】
以下の測定条件により、大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)中に含まれるデカペプチドLSSTQAQQSY(配列番号1;大豆デプレスタチン)の含有量を測定した。
【0044】
<LC-MS/MS分析条件>
HPLC装置及び質量分析装置は、それぞれAlliance 2695 HPLCシステム(Waters)及び3200 Q Trap(株式会社エービー・サイエックス)を使用した。カラムはCapcell PAK C18 UG80(2.0×150mm,5μm)(株式会社大阪ソーダ製)を使用した。溶離液は、A液:0.1v/v%ギ酸水、B液:0.1v/v%ギ酸含有アセトニトリルを用い、グラジエント条件を0分~15分(0~70v/v%B)→15分~20分(70v/v%B~70v/v%B)→20分~25分(70v/v%B~100v/v%B)→25分~35分(100v/v%B)→35分~35.01分(100~0v/v%B)v/v%B)→10分~10.01分(100v/v%B~10v/v%B)→10.01分~11分(10v/v%B)とした。流速は0.2mL/分とした。検出方法にはMRM法(多重反応モニタリング)を用い、イオン化法はESI(ポジティブモード)で行い、プレカーサーイオン:1112.7(m/z)、プロダクトイオン:101.1(m/z)で検出した。
【0045】
<試薬類>
デカペプチドである大豆デプレスタチンLSSTQAQQSY(配列番号1)の標準品はFmoc法により合成し、逆相HPLCにより精製した。ペプトン水(Bacto peptoneの0.1%水溶液)に溶解し検量線を作成した。
【0046】
<サンプル>
製造した大豆ペプチドをペプトン水に10mg/mlの濃度に溶解し、10μLを注入して分析した。
定量した結果、製造した大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)中のデカペプチドLSSTQAQQSYの濃度は0.84mg/gであった。
【0047】
(試験例1:脳内抗酸化酵素活性化試験)
5週齢の雄のSlc:ddYマウスを日本エスエルシー株式会社から購入し使用した。マウスに拘束ストレスを負荷することで、脳内の酸化ストレスを増加させると同時に、大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)を経口投与することによる効果を評価した。
マウスを13匹ずつ、拘束なし―精製水投与群、拘束ストレス―精製水投与群及び拘束ストレス―大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)投与群の3群に無作為に分け、異なる処置を施した。拘束ストレスは、マウスを換気の良い50mL遠心管に静かに入れ、150分/日、連続5日間、餌と水にアクセスできない状態にした。拘束なし群のマウスは、拘束ストレス群のマウスと同様に、同じ時間中餌と水を与えず、元のケージに収容したままとした。SOYLAXは精製水に溶解し、拘束ストレス負荷の60分前に100mg/kg体重をマウスに経口投与した。
最後の拘束ストレスの解放から120分後に脳組織を採取し、-80℃で凍結保存した。凍結保存した脳組織は解凍し、分散器(IKA社、T10ホモジナイザー)でホモジナイズした。 ホモジネートを遠心分離し、上清を採取して-80℃で保存し、脳内の抗酸化酵素活性の測定を行った。測定した酵素活性はタンパク質量当たりの酵素活性で算出した。
得られた結果を
図1~3に示す。なお、
図1はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、
図2はカタラーゼ(CAT)、
図3はグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)の結果を示す。
【0048】
図1~3の結果から、拘束ストレスによって脳内のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)の酵素活性は低下した。
これに対して、前記の拘束ストレスによる抗酸化酵素活性の低下は、SOYLAX投与により、拘束なし群と同程度まで回復した。
【0049】
(試験例2:生体外抗酸化能測定試験)
大豆タンパク質酵素分解物(SOYLAX)と大豆デプレスタチンの抗酸化能の測定を親水性抗酸化値(ORAC)と親油性ORACの測定法で行った。
大豆デプレスタチンとしては、前記のようにして合成後に精製したもの(純度95%)を使用した。
親水性ORAC値と親油性ORAC値の測定は、農産物・食品抽出液等の抗酸化能評価に利用できるようにオリジナルメソッドを、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構によって改良及び妥当性の確認された改良方法で行った。
ORAC値は、ラジカル発生剤であるAAPHより発生したペルオキシラジカルによって、Fluoresceinが分解される過程を、Fluoresceinの蛍光強度を経時的に測定することで評価した。蛍光の減衰は、蛍光フィルター(励起波長:485nm、発光波長:538nm)を装着したマイクロプレート蛍光光度計(Fluoroskan Ascent、Thermo Scientific社)を用いて測定した。
各サンプルのブランク補正した蛍光減衰曲線下面積を標準抗酸化物質である6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)濃度に対してプロットし、ORAC値はTrolox当量(mol Trolox相当/L)として表した。
得られた結果を
図4、5に示す。
なお、
図4は、陽性対照としてビタミンC及びレスベラトロールを用いた場合の大豆デプレスタチン及びSOYLAXの親水性ORACを、
図5は、陽性対照としてビタミンE及びレスベラトロールを用いた場合の、大豆デプレスタチン及びSOYLAXの親油性ORACをそれぞれ示す。
【0050】
図4、5の結果より、SOYLAXと大豆デプレスタチンは、親水性ORACと親油性ORACの値が最も低く、陽性対象として用いた、ビタミンCとビタミンEの10分の1、レスベラトロールに比べておよそ200分の1であった。
この結果から、SOYLAX及び大豆デプレスタチン自体が抗酸化活性を有している可能性は低く、従来の抗酸化効果を示す物質とは異なる作用で抗酸化効果を発揮していると考えられる。
さらにSOYLAX及び大豆デプレスタチン自体が抗酸化活性を有している可能性は低いことから、仮にSOYLAXや大豆デプレスタチン中の他の成分が血液脳関門を超え脳に到達したとしても、試験例1で見られた、脳内での抗酸化酵素活性化の効果が得られる可能性は低いと考えられる。
【0051】
したがって、SOYLAX及び大豆デプレスタチンは消化器等の脳とは別の器官から、脳内に存在する抗酸化酵素の活性化を刺激する作用を発揮しているものと推察され、本発明者らが初めて見出した効果であると考える。