(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151926
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】作業現場用ベスト
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20241018BHJP
A41D 13/01 20060101ALI20241018BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20241018BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20241018BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/01
A41D13/00 102
A41D13/00 112
A41D1/00 E
A41D1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065752
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】今野 駿太
【テーマコード(参考)】
3B030
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AA03
3B030AA06
3B030AB08
3B030AB10
3B030AB12
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC11
3B211AC12
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】作業者の健康管理をより適切に行える作業現場用ベストを提供する。
【解決手段】実施形態は、前身頃および後身頃に反射材をそれぞれ設けたベストと、前記ベストを着用したときに、前記ベスト内の温度を検出する体温センサと、前記ベストを着用したときに、前記ベスト内に外気を取り込む冷却ファンと、前記体温センサによって検出された温度にもとづいて、前記冷却ファンの風量を制御して駆動する制御部と、前記体温センサによって検出された温度のデータを通信端末との間で通信するように設けられた通信部と、前記制御部および通信部に電力を供給する電源と、を備える。前記制御部は、前記温度が高いほど前記冷却ファンの風量を増大するように駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃および後身頃に反射材をそれぞれ設けたベストと、
前記ベストを着用したときに、前記ベスト内の温度を検出する体温センサと、
前記ベストを着用したときに、前記ベスト内に外気を取り込む冷却ファンと、
前記体温センサによって検出された温度にもとづいて、前記冷却ファンの風量を制御して駆動する制御部と、
前記体温センサによって検出された温度のデータを通信端末との間で通信するように設けられた通信部と、
前記制御部および前記通信部に電力を供給する電源と、
を備え、
前記制御部は、前記温度が高いほど、前記冷却ファンの風量を増大するように駆動する作業現場用ベスト。
【請求項2】
前記電源は、二次電池であり、
前記制御部は、前記二次電池の残量を検出し、前記温度および前記二次電池の残量にもとづいて、前記冷却ファンの風量を制御して駆動する請求項1記載の作業現場用ベスト。
【請求項3】
前記通信端末は、前記ベストを着用する作業者のバイタルデータを取得し、
前記制御部は、前記通信端末から前記バイタルデータを受信し、前記温度のデータおよび前記バイタルデータにもとづいて、前記冷却ファンの風量を制御して駆動する請求項1記載の作業現場用ベスト。
【請求項4】
前記ベストを着用する作業者を識別する識別コードをさらに備えた請求項3記載の作業現場用ベスト。
【請求項5】
前記ベストは、前記体温センサおよび前記冷却ファンを後身頃の内側にそれぞれ配置し、
前身頃には、現場を撮影するカメラを収納するポケットをさらに備え、
前記ポケットの内側および前記ポケットの内側に対向するベストの部分には、面ファスナーがそれぞれ設けられた請求項4記載の作業現場用ベスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工場や工事等の現場で作業者が着用する作業現場用ベストに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や工事等においては、重機等を操作する作業者が、現場で作業する別の作業者を認識するために、反射材を付した作業用のベストを着用することがある(たとえば、特許文献1)。現場によっては、温度や湿度等の環境が必ずしも快適と言えず、また、室外での作業では、ベストの着衣によって、熱がこもり体温が上昇しやすい。
【0003】
ベスト着用時の体温上昇を抑制し、熱中症等から作業者を守るために、冷却ファン付きのベストが用いられることがある。冷却ファンは、ベスト内に設けられたバッテリ等の電源供給により動作し、ベストを着用する作業者の体調とはかかわりなく、動作が継続する。そのため、ベストを着用する作業者の感覚により、バッテリの残量に配慮しつつ、ファンの動作、停止を切り替える必要がある。
【0004】
熱中症は、当事者の意識とは異なる状況で進行することも知られており、より客観的な情報にもとづいて作業者の健康管理を行いつつ、安全を確保したいとの要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、作業者の健康管理をより適切に行える作業現場用ベストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、前身頃および後身頃に反射材をそれぞれ設けたベストと、前記ベストを着用したときに、前記ベスト内の温度を検出する体温センサと、前記ベストを着用したときに、前記ベスト内に外気を取り込む冷却ファンと、前記体温センサによって検出された温度にもとづいて、前記冷却ファンの風量を制御して駆動する制御部と、前記体温センサによって検出された温度のデータを通信端末との間で通信するように設けられた通信部と、前記制御部および通信部に電力を供給する電源と、を備える。前記制御部は、前記温度が高いほど、前記冷却ファンの風量を増大するように駆動する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、作業者の健康管理をより適切に行える作業現場用ベストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る作業現場用ベストを例示する模式的な背面図である。
【
図2】実施形態に係る作業現場用ベストに適用された制御システムを例示する模式的なブロック図である。
【
図3】実施形態に係る作業現場用ベストを例示する模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る作業現場用ベストを例示する模式的な背面図である。
図1に示すように、実施形態に係る作業現場用ベスト10は、反射材12を設けたベスト11と、冷却ファン15と、体温センサ16と、を備える。作業現場用ベスト10は、
図2に関連して後述する制御システム100を備える。
【0012】
ベスト11は、作業現場用ベスト10の本体であり、好ましくは、難燃性の繊維材料で形成されている。反射材12は、
図3に関連して後述するように、ベスト11の
図1の後身頃から
図3の前身頃にかけて設けられている。この例では、反射材12は、ベスト11の両肩部から後身頃の下方にかけて直線状に設けられている。反射材12の配置形態は、下方直線状に限らず、後身頃の中心付近で交差するようにしてもよい。反射材12は、光を当てると光の照射方向に反射光を反射する。反射材12は、たとえば、再帰反射シートで形成されている。
【0013】
冷却ファン15は、ベスト11の後身頃の下方の左右に2台配置されている。冷却ファン15は、冷却ファン15の外部から空気を吸い込んで、ベスト11の内部に取り込むように設けられている。
【0014】
体温センサ16は、ベスト11の後身頃の内側のほぼ中央付近に配置されている。好ましくは、ベスト11を着用した作業者の背中の温度を測定するように、
図1の破線内の面状に分散して複数個配置される。体温センサは、たとえば、サーミスタを利用した温度センサである。体温センサ16が検出した温度データは、
図2に関連して後述する制御システム100で処理されて、冷却ファン15の風量調整や体調管理用データとして利用される。
図1には、腕時計型携帯端末1が描かれており、体温センサ16によって取得された温度データは、所定の処理の後に、腕時計型携帯端末1等の携帯型端末に送信される。
【0015】
図2は、実施形態に係る作業現場用ベストに適用された制御システムを例示する模式的なブロック図である。
図2に示すように、作業現場用ベスト10の制御システム100は、電源102、制御部104、通信部106および駆動部108を含んでいる。電源102は、制御部104、通信部106および駆動部108に電力を供給し、制御部104、通信部106および駆動部108は、電力の供給を受けて動作することができる。電源102は、たとえば、充電して再利用が可能な二次電池である。電源102としての二次電池は、作業終了後に充電開始され、たとえば翌日の作業開始時に満充電状態で作業現場用ベスト10に装着される。
【0016】
制御部104には、体温センサ16、駆動部108および通信部106が接続されている。制御部104は、体温センサ16が取得した温度データを所定の形式に変換して通信部106に出力する。通信部106は、あらかじめ設定された無線通信プロトコルにしたがって、温度データを腕時計型携帯端末1に送信する。無線通信プロトコルは、たとえばBLUETOOTH(登録商標)である。
【0017】
制御部104は、体温センサ16から温度データを取得し、温度データにもとづいて、冷却ファン15の風量を演算し、風量に対応する速度データを駆動部108に出力する。駆動部108は、速度データにしたがって、冷却ファン15を駆動する。
【0018】
制御部104は、通信部106を介して、腕時計型携帯端末1と双方向の通信を行うようにしてもよい。たとえば、腕時計型携帯端末1は、脈拍センサや血圧センサを備えており、作業現場用ベスト10を着用する作業者のバイタルデータを取得し、通信部106に送信する。制御部104は、腕時計型携帯端末1から取得した作業者のバイタルデータおよび体温センサ16による温度データにもとづいて、冷却ファン15の風量を設定し、駆動部108によって冷却ファン15駆動する。
【0019】
制御部104は、通信部106を介して、継続的に温度データを腕時計型携帯端末1に送信し、腕時計型携帯端末1は、作業者のバイタルデータを継続的に取得する。腕時計型携帯端末1は、これらのデータにもとづいて、作業者の健康状態を判断し、その状態を逐一、腕時計型携帯端末1に表示するようにしてもよい。
【0020】
制御部104は、二次電池である電源102の残量を検出し、冷却ファン15の風量および速度の演算に、電池残量のデータを利用するようにしてもよい。たとえば、電池残量が所定値以上の場合には、温度データの上昇とともに、風量を増大させ、電池残量が所定値よりも少ない場合には、風量の最大値を制限して、電池残量による動作時間を延長するようにしてもよい。
【0021】
図3は、実施形態に係る作業現場用ベストを例示する模式的な正面図である。
図3に示すように、作業現場用ベスト10には、前身頃にも反射材12が両肩から下方にかけて直線状に設けられている。ベスト11の前後に反射材12を設けた作業現場用ベスト10を着用することによって、いずれの方向からも作業者の存在を見落とすことが少なくなる。
【0022】
ベスト11の前身頃には、カメラ用ポケット13が設けられている。カメラ用ポケット13にカメラを挿入した状態で撮影するために開口13aが設けられている。カメラ用ポケット13の内側の面およびベスト11の面には、面ファスナーが設けられている。カメラ用ポケット13の内側の面ファスナーをベスト11の面ファスナーとを合わせることによって、カメラ用ポケット13に挿入したカメラを開口13aの位置に合わせて固定することができる。
【0023】
カメラ用ポケット13に挿入するカメラは、たとえば、ウェアラブルカメラであり、作業者が携帯または装着しながら、作業対象を撮影したり、他の作業者の作業内容を撮影したりするのに用いられる。たとえば、作業者が携帯、装着するウェアラブルカメラは、無線通信機能を有しており、カメラで撮影した映像をリアルタイムで無線通信ネットワークを介して、送信することができる。このようなウェアラブルカメラを作業現場用ベスト10の前身頃に固定することによって、ヘルメットに装着する場合よりも、頭部の重量感を軽減し、違和感を軽減することができる。
【0024】
ベスト11の一方の肩付近にその作業現場用ベスト10を着用する作業者を識別する識別コード14が貼付されている。識別コード14は、たとえば二次元バーコードである。二次元バーコードに代えて、一次元バーコード等でもよい。作業現場の事務所の入口等に入退場監視カメラ2が設けられており、入退場監視カメラ2によって撮影された識別コード14のデータは、図示しない作業者勤務管理プログラムが導入されたコンピュータ端端末に送信される。コンピュータ端末は、識別コード14の撮像データにもとづいて、その作業者の入退場管理を実行する。識別コード14は、二次元バーコード等の画像認識用データに代えて、無線タグとして、タグデータの検出有無によって、作業者の入退場管理を行うようにしてもよい。
【0025】
実施形態に係る作業現場用ベスト10の効果について説明する。
実施形態に係る作業現場用ベスト10は、反射材12を設けたベスト11と、冷却ファン15と、体温センサ16と、を備える。また、作業現場用ベスト10は、体温センサ16が取得する作業者着用時のベスト内部の温度データを取得し、温度データにもとづいて、冷却ファン15の動作を制御する制御システム100を備える。そのため、温度データに応じて、作業者が快適となるように、冷却ファン15の動作を制御することが可能である。たとえば、温度データが高い場合には、冷却ファン15の速度を上げて、風量を増大させて、冷却効果を高めることによって、作業者が熱中症に罹患するリスクを低減する。
【0026】
また、作業現場用ベスト10では、制御システム100は、取得した温度データを腕時計型携帯端末1に送信することができる。腕時計型携帯端末1では、取得した温度データにもとづいて、作業現場用ベスト10を着用する作業者が熱中症に罹患するリスクを算出し、作業者に通知することができる。そのため、作業者は、自己の健康状態を客観的に判断することができ、熱中症に罹患するリスクをよる低減することができる。携帯型端末の中でも、腕時計型携帯端末は、作業者が直接身に着けて、脈拍や血圧等のバイタルデータを取得することができ、これらバイタルデータを用いることによって、作業者の健康状態をより正確かつ客観的に把握することができる。
【0027】
制御システム100では、電源102である二次電池の残量を監視し、残量に応じて、冷却ファン15の風量を制御することが可能である。二次電池の残量が低下した場合には、冷却ファン15の風量を抑制することによって、電源の消費を抑制することが可能になり、より小型の二次電池を利用することが可能になる。そのため、作業現場用ベスト10の重量を削減して、着用する作業者の負担を軽減することができる。
【0028】
また、実施形態に係る作業現場用ベスト10は、ベスト11の前身頃にカメラ用ポケット13を備える。カメラ用ポケット13の内側およびベスト11には、面ファスナーがそれぞれ設けられている。面ファスナー同士を貼り合わせることによって、ポケットに挿入するカメラのサイズにかかわりなく、カメラ用ポケット13内にカメラを固定することができる。そのため、ヘルメット等の頭部にカメラを装着する必要がないので、作業者の負担や違和感を少なく、現場をリアルタイムで撮影できるカメラを装着することができる。
【0029】
さらに、実施形態に係る作業現場用ベスト10は、作業者を識別する識別コード14を備える。識別コード14は、作業者が入退場するゲートや事務所等に設けられたカメラ等の識別センサを含む入退場管理システムによって識別され、作業者の入退場を管理することができる。現場に入場後、その作業者が万一退場することがない場合には、入退場管理システムによって異常と判定して、作業者救護等の措置を講ずることができる。
【0030】
作業現場で着用するベストには、作業者の健康管理や作業のための道具の保持、他者から認識させるための反射材等、さまざまな機能を設ける必要があり、従来、これらを別々に着用することとしている場合があった。このような場合には、一部のベストの着用忘れや、複数のベストを着用することによって、重量がかさみ、着用する作業者の負担となることもあった。実施形態に係る作業現場用ベスト10では、作業者の健康管理、道具としてのカメラの保持、反射材、入退場管理機能を、1着に集約しているので、着用忘れや単一のベスト11のため、軽量化が図られ、作業者の負担を軽減することができる。
【0031】
このようにして、作業者の健康管理をより適切に行える作業現場用ベストを実現することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1…腕時計型携帯端末、2…入退場監視カメラ、10…作業現場用ベスト、11…ベスト、12…反射材、13…カメラ用ポケット、14…識別コード、15…冷却ファン、16…体温センサ、100…制御システム、102…電源、104…制御部、106…通信部、108…駆動部