(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151927
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】配管支持具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16L3/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065755
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】米田 守
(72)【発明者】
【氏名】浦 孔介
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB07
3H023AC04
3H023AC21
3H023AD08
3H023AD21
3H023AD26
3H023AD33
3H023AE02
(57)【要約】
【課題】締結部材を取り外さないで、配管支持具に円滑に配管を挿入すること。
【解決手段】配管支持具1は、締結手段130の締緩状態によって互いの間隔が調整される第1保持部121および第2保持部124と、第1保持部121と第2保持部124とにそれぞれ取り付けられる第1スペーサー部210と第2スペーサー部220とを備える。締結手段130の締結時に、第1保持部121および前記第2保持部124は、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220を介して配管300を挟持する。第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の一方の端部211a,221a同士と他方の端部211b,221b同士とが当接された状態で、各当接部分と配管300との間に、第1空間S1および第2空間S2が確保される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周面に倣った内周面を有する一対の割筒形状を呈して、各割筒形状の一方の端部同士を繋ぐ締結手段の締緩状態によって、互いの間隔が調整される第1保持部および第2保持部と、
前記第1保持部の前記内周面側に取り付けられる半筒形状の第1スペーサー部と、
前記第2保持部の前記内周面側に取り付けられる半筒形状の第2スペーサー部と
を備え、
前記締結手段の締結時において、
前記第1保持部および前記第2保持部は、前記第1スペーサー部および前記第2スペーサー部を介して前記配管を挟持し、
前記第1スペーサー部および前記第2スペーサー部は、
前記半筒形状の一方の端部同士と他方の端部同士とが互いに当接された状態であって、
前記一方の端部同士の当接部分と前記配管との間に第1空間が確保され、
前記他方の端部同士の当接部分と前記配管との間に第2空間が確保され、
前記一方の端部同士の当接部分と前記他方の端部同士の当接部分とを除く他の部位において前記配管の前記外周面に当接する当接面を備えること
を特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記第1スペーサー部および第2スペーサー部は、
前記当接面を有する肉厚部と、
前記第1空間に臨む内周面を有する第1肉薄部と、
前記第2空間に臨む内周面を有する第2肉薄部と
を備えて、
前記肉厚部の前記当接面は、前記配管の前記外周面と等しいか僅かに小径となる曲面で構成され、
前記第1肉薄部および前記第2肉薄部の前記内周面は、前記配管の前記外周面よりも大径となる曲面により構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記第1スペーサー部および第2スペーサー部は、
前記当接面を有する肉厚部と、
前記第1空間に臨む内周面を有する第1肉薄部と、
前記第2空間に臨む内周面を有する第2肉薄部と
を備えて、
前記肉厚部の前記当接面は、前記配管の前記外周面と等しいか僅かに小径となる曲面で構成され、
前記第1肉薄部は、前記一方の端部が当該端部の前記当接部分に近づくに従って肉薄となり、
前記第2肉薄部は、前記他方の端部が当該端部の前記当接部分に近づくに従って肉薄となること
を特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項4】
前記第1保持部の他方の端部と前記第2保持部の他方の端部とはヒンジを介して接続されており、前記締結手段の締緩状態によって前記一方の端部同士の間隔が調整されて、前記第1スペーサー部と前記第2スペーサー部との間の距離が拡縮されること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管支持具に関し、より詳細には、配管の外周面に倣った内周面を有する第1保持部および第2保持部により、第1スペーサー部および第2スペーサー部を介して配管を支持することが可能な配管支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物に配設される配管(例えば、空調装置の配管)が、建造物内で吊り下げ配設される場合、配管を天井から吊り下げて支持する配管支持具が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
配管支持具は、配管の外周面に倣った内周面を有して一対の割筒形状を呈する、金属製の第1保持部および第2保持部と、第1保持部および第2保持部の内周面側に取り付けられるスペーサー部とにより概略構成されている。スペーサー部は、配管の挟持(配管の締結力の確保)や、振動防止を目的として設けられている。
【0004】
一対の第1保持部および第2保持部の下端部はヒンジ(蝶番)によって互いに連結されており、ヒンジで下端部を回動させることが可能となっている。また、第1保持部および第2保持部の上端部には、互いの上端部の距離を調節する締結部材が設けられており、締結部材の締結状態により、第1保持部と第2保持部との間の距離を調整することが可能になっている。
【0005】
配管支持具で配管を支持する場合には、まず、締結部材を取り外して、第2保持部を第1保持部に対して自由に回動できる状態にする。次に、配管を第1保持部と第2保持部との間に挟み込むように誘導して、スペーサー部で配管を挟持させた後に、第1保持部の上端部と第2保持部の上端部とを締結部材で固定する。このようにして配管を誘導・配置することにより、第1保持部と第2保持部とで配管を支持することが可能になる。
【0006】
また、配管支持具を天井に取り付けた状態で、配管を配管支持具で支持することにより、天井から吊り下げられた状態で配管を設置することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した配管支持具では、第1保持部および第2保持部の上端部および下端部が、スペーサー部によって十分に覆われていない。このため、上端部および下端部から結露等による水滴等が侵入して配管に錆等を発生させてしまうおそれがあった。
【0009】
また、配管に対する水滴等の侵入を防ぐために、スペーサー部で第1保持部および第2保持部の上端部および下端部の全てを覆うことも考えられる。しかしながら、スペーサー部で、第1保持部および第2保持部の上端部および下端部の全てを覆う場合、スペーサー部と配管との間に隙間ができづらいため、スペーサー部の間に配管を円滑に挿入することが容易ではない。
【0010】
一方、上述したように、ヒンジを介して第1保持部から第2保持部を回動させることにより、第1保持部に設置されるスペーサー部と、第2保持部に設置されるスペーサー部との間の空間を広げることができる。このように広げられた空間に配管を誘導してから、第2保持部を第1保持部方向に回動させてヒンジを閉じることにより、スペーサー部を介して簡単に第1保持部と第2保持部とで配管を支持することが可能になる。
【0011】
しかしながら、上述したようにヒンジを開いて、第1保持部のスペーサー部と第2保持部のスペーサー部との間の空間を広げるためには、第1保持部等および第2保持部等の上端部に設けられる締結部材を取り外す必要がある。締結部材が取り外された状態で配管を設置する場合には、配管を手で持ち上げながらスペーサー部の間に配管を誘導しつつ、ヒンジを閉じて締結部材を締結させる必要が生ずる。このため、配管の取り付け・取り外し作業に関して、作業者の作業負担が重いという問題があった。
【0012】
配管の取り付け・取り外し作業の負担を軽減するために、締結部材を取り外すのではなく、第1保持部および第2保持部の上端部から外れないギリギリの状態まで締結部材の締結状態を緩めて、第1保持部に設置されるスペーサー部と第2保持部に設置されるスペーサー部との間の空間を広げた状態で、配管を挿入する方法が知られている。例えば、締結部材がボルトとナットにより構成される場合には、ナットをボルトの端部まで緩めることにより、第1保持部等の上端部と第2保持部等の上端部との間をできるだけ離して、スペーサー部の間の空間を確保する。
【0013】
しかしながら、上述したようにナットを緩めてスペーサー部の間の空間を確保しても、横方向の間隔(広がり)に比べて上下方向の間隔はあまり変化しないという問題があった。このため、スペーサー部の間の空間に配管を挿入する場合、上下方向の空間(距離)を十分に確保することが難しくなり、配管を円滑に挿入することが容易ではなかった。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、締結部材を取り外さなくても、スペーサー部の間の空間に簡易に配管を挿入することが可能な配管支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る配管支持具は、配管の外周面に倣った内周面を有する一対の割筒形状を呈して、各割筒形状の一方の端部同士を繋ぐ締結手段の締緩状態によって、互いの間隔が調整される第1保持部および第2保持部と、前記第1保持部の前記内周面側に取り付けられる半筒形状の第1スペーサー部と、前記第2保持部の前記内周面側に取り付けられる半筒形状の第2スペーサー部とを備え、前記締結手段の締結時において、前記第1保持部および前記第2保持部は、前記第1スペーサー部および前記第2スペーサー部を介して前記配管を挟持し、前記第1スペーサー部および前記第2スペーサー部は、前記半筒形状の一方の端部同士と他方の端部同士とが互いに当接された状態であって、前記一方の端部同士の当接部分と前記配管との間に第1空間が確保され、前記他方の端部同士の当接部分と前記配管との間に第2空間が確保され、前記一方の端部同士の当接部分と前記他方の端部同士の当接部分とを除く他の部位において前記配管の前記外周面に当接する当接面を備えることを特徴とする。
【0016】
上述した上記配管支持具において、前記第1スペーサー部および第2スペーサー部は、
前記当接面を有する肉厚部と、前記第1空間に臨む内周面を有する第1肉薄部と、前記第2空間に臨む内周面を有する第2肉薄部とを備えて、前記肉厚部の前記当接面は、前記配管の前記外周面と等しいか僅かに小径となる曲面で構成され、前記第1肉薄部および前記第2肉薄部の前記内周面は、前記配管の前記外周面よりも大径となる曲面により構成されるものであってもよい。
【0017】
また、上述した上記配管支持具において、前記第1スペーサー部および第2スペーサー部は、前記当接面を有する肉厚部と、前記第1空間に臨む内周面を有する第1肉薄部と、前記第2空間に臨む内周面を有する第2肉薄部とを備えて、前記肉厚部の前記当接面は、前記配管の前記外周面と等しいか僅かに小径となる曲面で構成され、前記第1肉薄部は、前記一方の端部が当該端部の前記当接部分に近づくに従って肉薄となり、前記第2肉薄部は、前記他方の端部が当該端部の前記当接部分に近づくに従って肉薄となるものであってもよい。
【0018】
さらに、上述した上記配管支持具は、前記第1保持部の他方の端部と前記第2保持部の他方の端部とはヒンジを介して接続されており、前記締結手段の締緩状態によって前記一方の端部同士の間隔が調整されて、前記第1スペーサー部と前記第2スペーサー部との間の距離が拡縮されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る配管支持具によれば、締結部材を取り外さなくても、第1保持部等のスペーサー部と第2保持部等のスペーサー部との間に簡易に配管を挿入することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態に係る配管支持具であって、締結部材を締結させた状態を示した正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る配管支持具であって、締結部材を締結させた状態を示した右側面図である。
【
図3】本実施の形態に係る配管支持具であって、締結部材を締結させた状態を示した底面図である。
【
図4】本実施の形態に係る配管支持具であって、締結部材を締結させた状態を示した斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係る配管支持具において、締結部材を緩めた状態を示した正面図である。
【
図6】本実施の形態に係る配管支持具の別の実施例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る配管支持具について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、締結部材が締結された状態の配管支持具を示した正面図、
図2は右側面図、
図3は底面図、
図4は斜視図をそれぞれ示している。また、
図5は、締結部材が緩められた状態の配管支持具を示した正面図である。
【0022】
配管支持具1は、配管300を支持して建物内に吊り下げ配置するための支持具である。配管支持具1は、吊下保持部100と、スペーサー部200とにより概略構成されている。
【0023】
吊下保持部100は、配管300を天井から吊り下げる金属製の吊下部110と、スペーサー部200が取り付けられる保持部120と、保持部120を吊下部110に取り付けるための締結部材130(ボルト131、ナット132)とを主に備えている。
【0024】
吊下部110は、一片の板状部材を折り曲げ加工することにより形成されており、正面視で略逆三角形状に形成される頭部111と、板状部材の両端を互いに平行にして真下に延設させた脚部112、112とによって、一体に形成されている。吊下部110は、正面視で略Y字形状(左右対称)となっており、頭部111には、建造物内の高所に設けられた吊り下げ用の棒材400が取り付けられている。また、脚部112、112の下部には、締結部材130のボルト131を貫入させるための貫入孔113、113がそれぞれ設けられている。
【0025】
保持部120は、配管300の外周面301に倣った内周面121a,124aを有して一対の割筒形状を呈する第1保持部121と第2保持部124とを備えている。第1保持部121と第2保持部124とはそれぞれ、一片の帯状部材を曲げ加工することにより形成されており、それぞれの下端部(第1保持部および第2保持部の他方の端部)121b,124bは、ヒンジ(蝶番)128を介して回動自在に連結(接続)されている。さらに、第1保持部121と第2保持部124との上端部(第1保持部および第2保持部の一方の端部)121c,124cには、吊下部110の脚部112、112に当接する係止片122、125がそれぞれ一体に形成されている。係止片122,125には、締結部材130のボルト131を水平方向に貫入させるための貫入孔121d、124dが形成されている。
【0026】
スペーサー部200は、第1保持部121の内周面121aに取り付けられる半筒形状の第1スペーサー部210と、第2保持部124の内周面124aに取り付けられる半筒形状の第2スペーサー部220とを有している。第1スペーサー部210と第2スペーサー部220とは、各形状が左右対称となっている。第1スペーサー部210は、第1保持部121の幅寸法(上述した帯状部材における配管300の延伸方向の幅寸法)よりも僅かに長尺の幅寸法を有して、第1保持部121の内周面121aに当接する帯形状の第1スペーサー本体部211と、第1スペーサー本体部211の両端縁より外側に起立して第1保持部121の正面および背面を覆う第1壁部213,213と、第1壁部213、213から第1保持部121の外周面121e側へそれぞれ折曲して互いに対向する突出部215,215とを有している。
【0027】
第2スペーサー部220も第1スペーサー部210と同様に構成されており、第2保持部124の幅寸法よりも僅かに長尺の幅寸法を有して、第2保持部124の内周面124aに当接する帯形状の第2スペーサー本体部221と、スペーサー本体部221の両端縁より外側に起立して第2保持部124の正面および背面を覆う第2壁部223,223と、第2壁部223,223から第2保持部124の外周面124e側へそれぞれ折曲して互いに対向する第2突出部225,225とを有している。
【0028】
第1スペーサー部210と第2スペーサー部220とは左右対称であって、それぞれ半筒形状を呈しているため、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上端部(半筒形状の一方の端部)211a,221a同士を当接させ、さらに下端部(半筒形状の他方の端部)211b,221b同士を当接させた場合には、第1スペーサー本体部211と第2スペーサー本体部221とが一体となって筒形状を呈することになる。ここで、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221をそれぞれ構成する、半筒形状にカーブした帯状部材は、帯状部材の上部(第1肉薄部)および下部(第2肉薄部)の厚みに比べて中部(肉厚部)の厚みが肉厚になるように成形されている。具体的には、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上端部211a,221a同士を当接させ、また、下端部211b,221b同士を当接させた状態において、帯状部材の中部の内周面211c,221cの曲面は、配管300の外周面301と等しいか僅かに径半径が小径となる曲面(配管300の外周面301に内周面211c,221cが当接する径寸法の曲面)によって構成されており、また、帯状部材の上部の内周面211d,221dの曲面および下部の内周面211e,221eの曲面は、配管300の外周面301よりも径半径が大径となる曲面(配管300の外周面301に、内周面211d,221d,211e,221eが当接しない径寸法の曲面)によって構成されている。
【0029】
このため、配管300の外周面301を第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の内周面に当接させた場合、帯状部材の中部の内周面211c,221cが配管300の外周面301に当接することになって、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220で配管300を挟持ことが可能になる。一方で、帯状部材の上部の内周面211d,221dおよび下部の内周面211e,221eは配管300の外周面301に当接せず、間に隙間S1および隙間S2がそれぞれ生じることになる。第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上部の内周面211d,221dと配管300の外周面301との間に生じる隙間(空間)を第1空間S1と称し、下部の内周面211e,221eと配管300の外周面301との間に生じる隙間(空間)を第2空間S2と称する。上部の内周面211d,221dは、第1空間S1を望むように構成され、下部の内周面211e,221eは、第2空間S2を望むように構成されることになる。
【0030】
また、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220は、耐熱性や絶縁性に優れた樹脂材料によって成形されている。また、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220は、防水性・防湿性を確保できる素材によって成形されている。このため、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の上端部211a,221a同士を当接させ、下端部211b,221b同士を当接させることにより、配管300への浸水を防止することができる。
【0031】
第1スペーサー部210および第2スペーサー部220を成形する材料として、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂を、一例として用いることができる。例えば、融点が220度以上で耐熱性に優れ、絶縁性にも優れた結晶性のオレフィン系ポリマーに少量の添加剤を加えた混合物からなるオリフィン系樹脂を、インジェクション成形することにより、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220を成形することができる。
【0032】
第1スペーサー部210を第1保持部121に装着する場合には、第1保持部121の内周面121aに第1スペーサー本体部211の外周面211fが当接するようにして、第1保持部121の内周面121a側から第1スペーサー部210を押し込む。第1スペーサー部210を第1保持部121へ押し込むことにより、第1保持部121によって第1突出部215,215が互いに広がる方向に撓んで第1保持部121の正面および裏面を摺動し、第1保持部121の外周面121eに係止した状態となる。このように第1突出部215,215が第1保持部121の外周面121eに係止することにより、第1スペーサー本体部211の外周面211fが、第1保持部121の内周面121aに当接すると共に、第1スペーサー部210の第1壁部213、213が、第1保持部121の正面および裏面を覆った状態となる。
【0033】
同様に第2スペーサー部220を第2保持部124に装着する場合には、第2保持部124の内周面124aに第2スペーサー本体部221の外周面221fが当接するようにして、第2保持部124の内周面124a側から第2スペーサー部220を押し込む。第2スペーサー部220を第2保持部124へ押し込むことにより、第2保持部124によって第2突出部225,225が互いに広がる方向に撓んで第2保持部124の正面および裏面を摺動し、第2保持部122の外周面124eに係止した状態となる。このように第2突出部225,225が第2保持部124の外周面124eに係止することにより、第2スペーサー本体部221の外周面221fが、第2保持部124の内周面124aに当接すると共に、第2スペーサー部220の第2壁部223,223が、第2保持部124の正面および裏面を覆った状態となる。
【0034】
次に、配管300を配管支持具1で支持するために、保持部120およびスペーサー部200に対して配管300を挟持(把持)させる手順について説明する。まず、締結部材130を緩めて、ナット132をボルト131の先端まで移動させた状態にする。
【0035】
ここで、ナット132をボルト131から取り外して、第2保持部124の貫入孔124dからボルト131を外すことにより、ヒンジ128において第2保持部124を第1保持部121から離れる方向に回動させて、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の内周面211c,211d,211e,221c,221d,221eを解放させた状態にすることができる。このようにして解放された第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の内周面211c,211d,211e,221c,221d,221eに配管300を配置した上で、第2保持部124をヒンジ128で回動させて第2保持部124の貫入孔124dにボルト131の先端を貫入させ、ナット132を締結させることにより、配管300を配管支持具1で支持することも可能である。しかしながら、この作業手順では、配管300を手で支えると共に、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の内周面211c,211d,211e,221c,221d,221eに配管300を配置した状態を保ちつつ、第2保持部124を回動させ、ボルト131を貫入孔124dに貫入させ、さらに、ナット132でボルト131を締結する作業を行う必要があるので、作業負担が重くなってしまう。
【0036】
このため、現場の作業員は、あえてナット132をボルト131から取り外さずに、ナット132をボルト131の先端まで移動させて、締結部材130から第1保持部121および第2保持部124が外れない状態を維持しておく。このようにナット132がボルト131の先端に取り付けられた状態では、
図5に示すように、ボルト131の軸部(首下部)の長さだけ、第1保持部121の上端部121cと第2保持部124の上端部124cとの間が開き、ヒンジ128を介して、第1保持部121および第1スペーサー部210と、第2保持部124および第2スペーサー部220との間隔が、左右方向に広がることになる。
【0037】
このように第1スペーサー部210等と第2スペーサー部220等とが、左右方向に広げられた状態で、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間に配管300を挿入することにより、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の内周面211c,211d,211e,221c,221d,221eに配管300を配置することができる。
【0038】
このとき、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との左右方向の間隔は広がるが、上下方向の間隔はほとんど広がらない。具体的には、第1保持部121の下端部121bと第2保持部124の下端部124bとがヒンジ128を介して接続されており、さらに、第1保持部121の係止片122と第2保持部124の係止片125とに対して、ボルト131が略水平になるようにして締結部材130が取り付けられている。このため、ナット132をボルト131の先端位置まで移動させると、ナット132の移動距離に対応する長さだけ、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との左右方向の間隔は広がるが、ナット132は略水平方向にしか移動しないため、上下方向の間隔はほとんど広がらない。
【0039】
ここで、実施の形態に係る第1スペーサー部210および第2スペーサー部220は、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上部および下部の厚みに比べて中部の厚みが肉厚になるように成形されており、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上部の内周面211d,221dと配管300の外周面301との間に第1空間S1が確保されており、下部の内周面211e,221eと配管300の外周面301との間に第2空間S2が確保されている。このため、第1スペーサー部210および第2スペーサー部220の上下方向の間隔がさほど広がらなくても、第1空間S1および第2空間S2を利用することにより、配管300の直径よりも広い上下幅を確保することが可能になる。従って、ナット132をボルト131の先端まで移動させることにより、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間の空間を、左右方向だけでなく上下方向において、配管300の直径よりも広く確保することができる。
【0040】
このため、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間に配管300を挿入させる場合、ナット132をボルト131から取り外さなくても、ナット132をボルト131の先端まで移動させた状態において、簡易かつ円滑に配管300を導き入れることができる。ナット132をボルト131から取り外さないで、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間に配管300を挿入させることにより、作業者は配管300を手で支える必要がなくなるため、簡単にボルト131をナット132で締めることが可能になる。ナット132を締めて締結部材130を締結させることにより、第1保持部121と第2保持部124との左右間隔(第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との左右間隔)を狭めて、第1スペーサー本体部211の中部(肉厚部分)の内周面(当接面)211cと、第2スペーサー本体部221の中部(肉厚部分)の内周面(当接面)221cとで配管300を挟持(把持)することが可能となり、結果的に、配管支持具1で配管300を支持することが可能になる。
【0041】
以上、本実施の形態に係る配管支持具1について図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係る配管支持具は、実施の形態に示した配管支持具1の構成に限定されない。実施の形態に係る第1スペーサー部210および第2スペーサー部220では、
図1に示すように、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の中部の肉厚を上部および下部よりも厚くすると共に、上部および下部の内周面211d,221d,211e,221eの曲面を、配管300の外周面301よりも径半径が大径となる曲面で構成し、中部の内周面211c,221cの曲面を、配管300の外周面301と等しいか僅かに径半径が小径となる曲面で構成した。
【0042】
しかしながら、
図6に示すように、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の内周面の曲面を、配管300の外周面301と等しいか僅かに径半径が小径となる曲面で構成した上で、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上部および下部の肉厚が、それぞれの端部211a,211b,221a,221bに近づくに従って(上端部211a,221aおよび下端部211b,221bの当接部分に近づくに従って)肉薄となるように構成してもよい。端部211a,211b,221a,221bに近づくに従って、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上部および下部の肉厚を薄くすることにより、配管300の外周面301と、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の内周面211d,211e,221d,221eとの間に、第1空間S1および第2空間S2を確保することが可能になる。
【0043】
このように、第1スペーサー本体部211および第2スペーサー本体部221の上下端部の肉厚を薄くする場合には、第1空間S1および第2空間S2によって、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間の空間を、左右方向だけでなく上下方向において、配管300の直径よりも広く確保することができる。このため、ナット132をボルト131から取り外さなくても、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間に、配管300を簡易かつ円滑に導き入れることができ、作業者の作業負担の軽減を図ることが可能になる。
【0044】
さらに、本実施の形態では、第1保持部121の下端部121bと第2保持部124の下端部124bとがヒンジ128を介して接続される場合について説明したが、第1保持部121と第2保持部124との接続は、ヒンジ128を用いる構成には限定されない。例えば、ヒンジ128の代わりに、第1保持部121の下端部121bの先端を凸形状とし、第2保持部124の下端部124bの先端を凹形状として、互いの先端を咬み合わせることにより、左右方向に一定幅だけスライド可能な連結構造を採用してもよい。
【0045】
このようなスライド可能な連結構造が配管支持具1に設けられた場合、ナット132をボルト131の先端まで移動させると、第2保持部124の下端部124bがスライドして第1保持部121の下端部121bから水平に離れることになる。このような構造であっても、第1スペーサー本体部211および第2第1スペーサー本体部211の上部および下部の内周面211d,221d,211e,221eと、配管300の外周面301との間に、第1空間S1および第2空間S2が確保されているため、ナット132をボルト131から取り外さなくても、第1スペーサー部210と第2スペーサー部220との間に配管300を簡易かつ円滑に導き入れることができ、作業者の作業負担の軽減を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
1 …配管支持具
100 …吊下保持部
110 …吊下部
111 …(吊下部の)頭部
112 …(吊下部の)脚部
113 …(吊下部の脚部の)貫入孔
120 …保持部
121 …(保持部の)第1保持部
121a …(第1保持部の)内周面
121b …(第1保持部の)下端部
121c …(第1保持部の)上端部
121d …(第1保持部の係止片の)貫入孔
121e …(第1保持部の)外周面
122 …(第1保持部の)係止片
124 …(保持部の)第2保持部
124a …(第2保持部の)内周面
124b …(第2保持部の)下端部
124c …(第2保持部の)上端部
124d …(第2保持部の係止片の)貫入孔
124e …(第2保持部の)外周面
125 …(第2保持部の)係止片
128 …ヒンジ(蝶番)
130 …締結部材
131 …(締結部材の)ボルト
132 …(締結部材の)ナット
200 …スペーサー部
210 …第1スペーサー部
211 …(第1スペーサー部の)第1スペーサー本体部
211a …(第1スペーサー部の)上端部(半筒形状の一方の端部)
211b …(第1スペーサー部の)下端部(半筒形状の他方の端部)
211c …(第1スペーサー本体部の中部の)内周面(当接面)
211d …(第1スペーサー本体部の上部の)内周面
211e …(第1スペーサー本体部の下部の)内周面
211f …(第1スペーサー本体部の)外周面
213 …(第1スペーサー部の)第1壁部
215 …(第1スペーサー部の)突出部
220 …第2スペーサー部
221 …(第2スペーサー部の)第2スペーサー本体部
221a …(第2スペーサー部の)上端部(半筒形状の一方の端部)
221b …(第2スペーサー部の)下端部(半筒形状の他方の端部)
221c …(第2スペーサー本体部の中部の)内周面(当接面)
221d …(第2スペーサー本体部の上部の)内周面
221e …(第2スペーサー本体部の下部の)内周面
221f …(第2スペーサー部の)外周面
223 …(第2スペーサー部の)第2壁部
225 …(第2スペーサー部の)第2突出部
300 …配管
301 …(配管の)外周面
400 …棒材
S1 …第1空間
S2 …第2空間