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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151934
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】翼車装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20241018BHJP
   F03B 3/14 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
F03B3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065767
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】501199531
【氏名又は名称】株式会社アイティエス
(71)【出願人】
【識別番号】523139814
【氏名又は名称】一般社団法人駿富フローエナジー普及の会
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】下川 日出男
【テーマコード(参考)】
3H072
3H178
【Fターム(参考)】
3H072AA12
3H072BB05
3H072CC42
3H178AA12
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB46
3H178CC01
3H178DD26X
(57)【要約】
【課題】 風や水等の流体の流れが高速になり翼車の耐久限界を超えても、破損を防止することができる翼車装置を提供すること。
【解決手段】 回転軸2aを有して回転可能な翼車本体2と、翼車本体に流入する流体が一定の流速を超えた際に流体を誘導して流体の流路Y1を変更する流体誘導機構3とを備え、流体誘導機構が、回動可能であり流入する流体を誘導する誘導板4と、翼車本体の外周部に流体を誘導する位置に誘導板を付勢する付勢機構5と、誘導板に連結され、流体が一定の流速を超えると流体による揚力で移動し付勢機構の付勢力に抗して誘導板を回動させ、翼車本体の外側に流体を誘導して流路を変更する翼板6とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有して回転可能な翼車本体と、
前記翼車本体に流入する前記流体が一定の流速を超えた際に前記流体を誘導して前記流体の流路を変更する流体誘導機構とを備え、
前記流体誘導機構が、回動可能であり流入する前記流体を誘導する誘導板と、
前記翼車本体の外周部に前記流体を誘導する位置に前記誘導板を付勢する付勢機構と、
前記誘導板に連結され、前記流体が前記一定の流速を超えると前記流体による揚力で移動し前記付勢機構の付勢力に抗して前記誘導板を回動させ、前記翼車本体の外側に前記流体を誘導して前記流路を変更する翼板とを備えていることを特徴とする翼車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の翼車装置において、
前記翼車本体を回転可能に収納していると共に前記誘導板と前記翼板とが取り付けられ、外部から流入する前記流体の前記流路を有した収納フードを備え、
前記収納フードが、前記誘導板の先端部と前記翼板との間に構成された流体導入口と、前記流体導入口の反対側に設けられた流体排出口とを有し、
前記付勢機構が、前記流体が前記一定の速度以下の際に、前記流体が前記翼車本体の外周部のうち前記回転軸に対して左右の一方に向けて流れる位置に、前記流体導入口が配置されるように前記誘導板を付勢し保持することを特徴とする翼車装置。
【請求項3】
請求項2に記載の翼車装置において、
前記付勢機構が、前記収納フードと前記誘導板とを連結するコイルばねであることを特徴とする翼車装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の翼車装置において、
前記収納フードが、垂直に配された前記回転軸と同軸に回転可能に支持されていると共に、前記回転軸側から前記流体排出口側に向けて延在した垂直尾翼を備えていることを特徴とする翼車装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の翼車装置において、
前記翼車本体が、前記回転軸を中心とし前記回転軸に直交して互いに対向状態に配された一対の円環状側板と、
前記一対の円環状側板の間に設けられた複数の羽根板とを備え、
前記複数の羽根板が、前記一対の円環状側板の外周部に周方向に並んで設置されていることを特徴とする翼車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力や水力等の流体のエネルギーを利用した発電用に好適な翼車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーを原動力とした風力発電や水力エネルギーを原動力とした水力発電などに用いられる垂直軸型又は水平軸型翼車装置として、例えば特許文献1や特許文献2などに示すように、垂直に設けられた動力伝達用の回転軸と、回転軸を中心に周方向に並んで配置され流体を受ける複数の羽根板とを備えた翼車装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-24179号公報
【特許文献2】特許第5024975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
従来の翼車装置では、風や水等の流体の流れが高速になり翼車の耐久限界を超えると、翼車が破損してしまう場合がある。すなわち、翼車が限界を超えて高速回転してしまい、流体を受ける羽根板や回転軸等が破損してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、風や水等の流体の流れが高速になり翼車の耐久限界を超えても、破損を防止することができる翼車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る翼車装置は、回転軸を有して回転可能な翼車本体と、前記翼車本体に流入する前記流体が一定の流速を超えた際に前記流体を誘導して前記流体の流路を変更する流体誘導機構とを備え、前記流体誘導機構が、回動可能であり流入する前記流体を誘導する誘導板と、前記翼車本体の外周部に前記流体を誘導する位置に前記誘導板を付勢する付勢機構と、前記誘導板に連結され、前記流体が前記一定の流速を超えると前記流体による揚力で移動し前記付勢機構の付勢力に抗して前記誘導板を回動させ、前記翼車本体の外側に前記流体を誘導して前記流路を変更する翼板とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この翼車装置では、流体誘導機構が、流体が一定の流速を超えると流体による揚力で移動し付勢機構の付勢力に抗して誘導板を回動させ、翼車本体の外側に流体を誘導して流路を変更する翼板を備えているので、流体が一定の流速を超えると、翼車本体から流路が外れることで、翼車本体の破損を防止することができる。
すなわち、流体が一定の流速(定常風など)を超えて翼車本体が破損するおそれが生じる状態になると、流体によって強い揚力が生じた翼板が移動して誘導板の先端部を付勢力に抗して引っ張り、誘導板を回動させることで、流路を翼車本体の外側にスライドさせて翼車本体の外周部から外しバイパスすることができる。このように、流体自体の力を利用した揚力で翼板と誘導板とを動かすため、流体誘導機構を駆動するために別の電源等の駆動源を用意する必要が無く、自動でかつ簡易な構成で、流体の激しい流れでも翼車本体の破損を防ぐことが可能になる。
【0008】
第2の発明に係る翼車装置は、第1の発明において、前記翼車本体を回転可能に収納していると共に前記誘導板と前記翼板とが取り付けられ、外部から流入する前記流体の前記流路を有した収納フードを備え、前記収納フードが、前記誘導板の先端部と前記翼板との間に構成された流体導入口と、前記流体導入口の反対側に設けられた流体排出口とを有し、前記付勢機構が、前記流体が前記一定の速度以下の際に、前記流体が前記翼車本体の外周部のうち前記回転軸に対して左右の一方に向けて流れる位置に、前記流体導入口が配置されるように前記誘導板を付勢し保持することを特徴とする。
【0009】
すなわち、この翼車装置では、付勢機構が、流体が一定の速度以下の際に、流体が翼車本体の外周部のうち回転軸に対して左右の一方に向けて流れる位置に、流体導入口が配置されるように誘導板を付勢し保持するので、収納フードに収納された翼車本体のうち、流体を受け回転力を生み出す側(前記左右の一方)に対して反対側(前記左右の他方)の外周部には流体が当たらず遮蔽する構造となり、効率的に回転力を得ることができる。
従来の周流型水車などでは、流体中に全体を露出して全面に流れを受けた場合に、回転推力が十分に得られず回転速度が遅い短所がある。しかしながら、本発明では、誘導板と翼板が、流体導入口を絞って翼車本体の外周部へ流体を集めて誘導することでテコや動滑車の原理を利用して小さい力で大きな力を得ると共に、収納フード内に閉流体路が形成されることで流速も高速化し、トルク向上と速度向上の両立が図れ、その結果、流体速度が遅くても翼車の回転が可能となり翼車本体の受け取る流体エネルギー量及び翼車回転速度を増大させることができる。
【0010】
第3の発明に係る翼車装置は、第2の発明において、前記付勢機構が、前記収納フードと前記誘導板とを連結するコイルばねであることを特徴とする。
すなわち、この翼車装置では、付勢機構が、収納フードと誘導板とを連結するコイルばねであるので、簡易かつ低コストな構成で誘導板を付勢することができると共に、弾性体であるコイルばねの強さを調整することで、付勢力の調整も可能である。
【0011】
第4の発明に係る翼車装置は、第2又は第3の発明において、前記収納フードが、垂直に配された前記回転軸と同軸に回転可能に支持されていると共に、前記回転軸側から前記流体排出口側に向けて延在した垂直尾翼を備えていることを特徴とする。
すなわち、この翼車装置では、収納フードが、垂直に配された回転軸と同軸に回転可能に支持されていると共に、回転軸側から流体排出口側に向けて延在した垂直尾翼を備えているので、収納フードが異形であっても、垂直尾翼に流体が当たることで収納フード全体を風上に正対するように回動させることができる。したがって、垂直尾翼により流体の流れに対して流体導入口が常に自動で正面を向くようになる全方位集風(又は集水)機能付きの垂直軸周流型風車(又は水車)とすることができる。
【0012】
第5の発明に係る翼車装置は、第1又は第2の発明において、前記翼車本体が、前記回転軸を中心とし前記回転軸に直交して互いに対向状態に配された一対の円環状側板と、前記一対の円環状側板の間に設けられた複数の羽根板とを備え、前記複数の羽根板が、前記一対の円環状側板の外周部に周方向に並んで設置されていることを特徴とする。
すなわち、この翼車装置では、複数の羽根板が、一対の円環状側板の外周部に周方向に並んで設置されているので、翼車本体の外周部の重量比が大きくなり、慣性モーメントの増大によるフライホイール効果で回転運動エネルギーの蓄積が可能になり、頻繁に変化する風速の強弱ムラなどを吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の翼車装置によれば、流体誘導機構が、流体が一定の流速を超えると流体による揚力で移動し付勢機構の付勢力に抗して誘導板を回動させ、翼車本体の外側に流体を誘導して流路を変更する翼板を備えているので、流体が一定の流速を超えると、翼車本体から流路が外れることで、翼車本体の破損を防止することができる。
したがって、本発明の翼車装置は、翼車が受ける流体エネルギーに比して高効率に伝達される翼車の回転運動エネルギーにも関わらず、激しい風や水等の流体の流れによる翼車本体の破損を防ぐことができるため、海上風等の強い風速状況下に設置する風車や、河川流の他、潮汐流や海上風が海面に吹き付けて発生する波浪による潮流が打ち寄せる沿岸の浅瀬などに設置する水車などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る翼車装置の第1実施形態において、流体が一定の流速以下の場合の上板を外した状態の翼車装置を示す平面図である。
図2】第1実施形態において、流体が一定の流速を超えた場合の上板を外した状態の翼車装置を示す平面図である。
図3】第1実施形態において、翼車装置を示す正面図である。
図4】第1実施形態において、翼車装置を示す左側面図である。
図5】第1実施形態において、右側板及び翼車本体を除いた状態の翼車装置を示す右側面図である。
図6】第1実施形態において、翼車装置を示す背面図である。
図7】本発明に係る翼車装置の第2実施形態において、海底に設置したコンクリートパイルに接続された翼車装置を示す正面図である。
図8】本発明に係る翼車装置の第3実施形態において、河川に設置された翼車装置を示す平面図である。
図9】第3実施形態において、翼車本体を示す側面図である。
図10】第3実施形態において、流速が一定の速度以下の場合(a)と、流速が一定の速度を超えた状態(b)との流体誘導機構の状態を説明するための平面図である。
図11】第3実施形態において、流体誘導機構を示す正面図である。
図12】第3実施形態において、流体誘導機構を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における翼車装置の第1実施形態を、図1から図6に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態における翼車装置1は、全方位からの風を流体として片側に集める全方位集風機能付き垂直軸周流型の風車として用いられるものであり、図1から図6に示すように、回転軸2aを有して回転可能な翼車本体2と、翼車本体2に流入する流体(風)が一定の流速を超えた際に流体を誘導して流体の流路Y1を流速の度合いに応じて変更する流体誘導機構3とを備えている。
【0017】
上記流体誘導機構3は、回動可能であり流入する流体を誘導する誘導板4と、翼車本体2の外周部に流体を誘導する位置に誘導板4を付勢する付勢機構5と、誘導板4に連結され、流体が一定の流速を超えると流体による揚力で移動し付勢機構5の付勢力に抗して誘導板4を回動させ、翼車本体2の外周部よりも半径方向外側に流体を誘導して流路Y1を変更する翼板6とを備えている。
【0018】
また、本実施形態の翼車装置1は、翼車本体2を回転可能に収納していると共に誘導板4と翼板6とが取り付けられ、外部から流入する流体の流路Y1を内部に有した収納フード7を備えている。
上記収納フード7は、誘導板4の先端部と翼板6との間に構成された流体導入口7aと、流体導入口7aの反対側に設けられた流体排出口7bとを有している。
【0019】
上記付勢機構5は、流体が一定の速度以下の際に、流体が翼車本体2の外周部のうち回転軸2aに対して左右の一方に向けて流れる位置に、流体導入口7aが配置されるように誘導板4を付勢し保持する機能を有している。
なお、本実施形態では、流体が一定の速度以下の際に、流体が翼車本体2の外周部のうち回転軸2aに対して左側に向けて流れる位置に、流体導入口7aが配置されるように誘導板4を付勢し保持されている。
また、本実施形態の付勢機構5は、収納フード7と誘導板4とを連結するコイルばねである。
【0020】
上記収納フード7は、垂直に配された回転軸2aと同軸に回転可能に中心軸管15に支持されていると共に、回転軸2a側から流体排出口7b側に向けて延在した垂直尾翼9を備えている。
上記翼車本体2は、回転軸2aを中心とし回転軸2aに直交して互いに対向状態に配された一対の円環状側板2bと、一対の円環状側板2bの間に設けられた複数の羽根板2cとを備えている。
複数の羽根板2cは、一対の円環状側板2bの外周部に周方向に並んで設置されている。
【0021】
翼車本体2は、図3及び図6に示すように、一対の円環状側板2bの間に一対の円環状中間板2dを備えている。
上記円環状側板2bと円環状中間板2dとは、図5及び図6に示すように、板用軸受部16を介して中心軸管15に回転可能に支持されている
上記複数の羽根板2cは、一対の円環状中間板2dの間、及び円環状中間板2dと円環状側板2bとの間に架け渡されて設置されている。
なお、本実施形態では、2枚の円環状中間板2dを採用しているが、1枚以上であれば構わず、例えば3枚の円環状中間板2dを設けても構わない。
【0022】
上記羽根板2cは、流体の流路Y1内に最も深く位置された際に、図1に示すように、流体導入口7aからの流体の進入方向(図1中のY1方向)に対して例えば135°の鈍角の仰角θとなるように、8枚が互いに周方向に等間隔で設置されている。
このように羽根板2cを上記鈍角の仰角θとすることで、流体を翼車本体2内に呼び込むと同時に抗力と揚力との合成ベクトルにより、揚力型風車と同様に高速回転が得られる。
【0023】
上記収納フード7は、翼車本体2を覆うように、互いに上下で対向して配された上板7c及び下板7dと、上板7cと下板7dとの間で右側面に設けられた右側板7eとを備えている。
収納フード7の左側面は、翼板6で覆われている。
なお、収納フード7の左側面には、強度や強風回避機能の度合いなどに応じて、翼板6以外にも左側板を取り付けて構わない。
上記右側板7eの先端部には、誘導板4の基端部が回動可能に取り付けられている。
誘導板4は、右側板7eの先端部から翼車本体2の外周部に向けて傾斜して配されており、正面右側の流体を正面左側の流体導入口7aへ誘導するようになっている。
【0024】
収納フード7は、図3及び図4に示すように、中心軸管15に対してフード用軸受部14を介して回転可能に支持されている。すなわち、上板7cと下板7dとが、フード用軸受部14を介して中心軸管15に回転可能に支持されている。
なお、各図では、中心軸管15を透視して図示している部分がある。
収納フード7の正面には、誘導板4と翼板6との間に可変の流体導入口7aが形成されていると共に、背面全体が流体排出口7bとして大きく開口されている。
【0025】
上記流体導入口7aの上下には、一対のガイド板10が取り付けられている。
すなわち、収納フード7は、誘導板4の先端部と翼板6の翼車本体2側の面とを連結し内側が流体導入口7aとして開口している枠部材10aと、枠部材10aの上下に取り付けられた一対のガイド板10とを備えている。
上記枠部材10a及び一対のガイド板10は、可動する誘導板4及び翼板6と共に連動するように取り付けられている。
また、一対のガイド板10は、前方(流体の上流側)に向けて互いの間隔が漸次拡がるように前方に突出している。
したがって、一対のガイド板10は、流体を流体導入口7aに集めて収納フード7内にガイドする機能を有している。
【0026】
上記翼板6は、流体の流れによって揚力が翼車本体2の半径方向外側であって右側板7eとは反対側(図1及び図2の下方)に向けて生じる翼型の断面形状を有している。
翼板6の基端部は、上板7c及び下板7dに設けられた一対の長孔部7fにスライド可能に取り付けられている。
上記長孔部7fは、右側板7eに直交する方向に延在しており、この方向に翼板6の基端部がスライド可能になっている。
【0027】
上記付勢機構5は、図5に示すように、上板7cに一端が固定されているコイルばねと、下板7dに一端が固定されているコイルばねとの2本で構成されている。これら2本のコイルばねは、他端が誘導板4の内側に固定されている。
上記2本のコイルばねの付勢力(弾性力)は、流体が一定の速度に達した際の翼板6に生じる揚力と均衡するように設定されている。
【0028】
すなわち、流体が一定の速度以下であると、コイルばねの付勢力が翼板6に生じる揚力と同等又は勝っており、図1に示すように、翼板6を右側板7e側に向けて引き寄せた状態が保持される。また、流体が一定の速度を超えると、翼板6に生じる揚力がコイルばねの付勢力に勝り、図2に示すように、翼板6が右側板7eから離間する方向に移動する。
上記一定の流速は、例えば定常風の流速などに設定される。
【0029】
上記垂直尾翼9は、上板7cに一対が立設されていると共に、下板7dにも一対が垂下状態で設けられている。
各対の垂直尾翼9は、基端が回転軸2a近傍に配されていると共に、他端が流体排出口7b近傍に配されて延在している。
また、対となる垂直尾翼9は、互いに基端から他端に向けて漸次互いの間隔を拡げて延在している。
【0030】
本実施形態の翼車装置1は、小型風力発電装置に用いられるもので、図3から図6に示すように、収納フード7内には、中心軸管15に固定された発電機13が内蔵されており、発電機13の回転部が翼車本体2の下側の円環状側板2bに固定されている。
発電機13の発電出力は、中心軸管15内に挿通された送電線13aを介して外部の発電制御部等に送られて電力が供給可能になっている。
上記中心軸管15は、床面に設けられた図示しない支持躯体に下部が固定されて立設されている。
【0031】
このように本実施形態の翼車装置1では、流体誘導機構3が、流体が一定の流速を超えると流体による揚力で移動し付勢機構5の付勢力に抗して誘導板4を回動させ、翼車本体2の外側に流体を誘導して流路Y1を変更する翼板6を備えているので、流体が一定の流速を超えると、翼車本体2から流路Y1が外れることで、翼車本体2の破損を防止することができる。
【0032】
すなわち、流体が一定の流速(定常風など)を超えて翼車本体2が破損するおそれが生じる状態になると、図2に示すように、流体によって強い揚力が生じた翼板6が移動して誘導板4の先端部を付勢力に抗して引っ張り、誘導板4を回動させることで、流路Y1を翼車本体2の外側にスライドさせて翼車本体2の外周部から外しバイパスすることができる。
このように、流体自体の力を利用した揚力で翼板6と誘導板4とを動かすため、流体誘導機構3を駆動するために別の電源等の駆動源を用意する必要が無く、自動でかつ簡易な構成で、流体の激しい流れでも翼車本体2の破損を防ぐことが可能になる。
【0033】
また、付勢機構5が、流体が一定の速度以下の際に、流体が翼車本体2の外周部のうち回転軸2aに対して左右の一方に向けて流れる位置に、流体導入口7aが配置されるように誘導板4を付勢し保持するので、収納フード7に収納された翼車本体2のうち、流体を受け回転力を生み出す側(前記左右の一方)に対して反対側(前記左右の他方)の外周部には流体が当たらず遮蔽する構造となり、効率的に回転力を得ることができる。
【0034】
特に、付勢機構5が、収納フード7と誘導板4とを連結するコイルばねであるので、簡易かつ低コストな構成で誘導板4を付勢することができると共に、弾性体であるコイルばねの強さを調整することで、付勢力の調整も可能である。
【0035】
また、誘導板4と翼板6とが、流体導入口7aを絞って翼車本体2の外周部へ流体を集めて誘導することでテコや動滑車の原理を利用して小さい力で大きな力を得ると共に、収納フード7内に閉流体路が形成されることで流速も高速化し、トルク向上と速度向上の両立が図れ、その結果、流体速度が遅くても翼車の回転が可能となり翼車本体2の受け取る流体エネルギー量及び翼車回転速度を増大させることができる。
【0036】
また、収納フード7が、垂直に配された回転軸2aと同軸に回転可能に支持されていると共に、回転軸2a側から流体排出口7b側に向けて延在した垂直尾翼9を備えているので、収納フード7が異形であっても、垂直尾翼9に流体が当たることで収納フード7全体を風上に正対するように回動させることができる。したがって、垂直尾翼9により流体の流れに対して流体導入口7aが常に自動で正面を向くようになる全方位集風機能付きの垂直軸周流型風車とすることができる。
【0037】
さらに、複数の羽根板2cが、一対の円環状側板2bの外周部に周方向に並んで設置されているので、翼車本体2の外周部の重量比が大きくなり、慣性モーメントの増大によるフライホイール効果で回転運動エネルギーの蓄積が可能になり、頻繁に変化する風速の強弱ムラなどを吸収することができる。
【0038】
次に、本発明に係る翼車装置の第2及び第3実施形態について、図7から図12を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の翼車装置1が、全方位集風機能付きの垂直軸周流型風車であるに対し、第2実施形態の翼車装置21が、図7に示すように、全方位集水機能付きの垂直軸周流型水車とされている点である。
すなわち、第2実施形態の翼車装置21は、河川流・潮流発電装置用の翼車装置であり、図7に示すように、例えば沿岸浅瀬の水中に設置される。
【0040】
また、第1実施形態では、発電機13が収納フード7に収納されていたが、第2実施形態では、海底に立設された中空のコンクリートパイル29内に発電機23が収納されている点でも異なっている。
すなわち、第2実施形態の翼車装置21は、翼車本体2に中心軸管が無く、翼車本体2の中心(回転軸2a)に固定され翼車本体2と共に回転可能な回転軸管25を備え、回転軸管25の下部が、継手25bを介してコンクリートパイル29内の発電機23に接続されている。
また、上記回転軸管25は、上板7c及び下板7dに軸受部25aを介して回転可能になっている。
【0041】
また、コンクリートパイル29には、発電機23の出力配線23aが挿通された連結管23bの一端が接続され、連結管23bの他端が他の翼車装置又は発電制御盤(図示略)に接続されている。
なお、第2実施形態では、海水中でも使用できるように補強と防錆対策を施し、貝藻付着防止の塗装なども行うと共に、コンクリートパイル29に防水処置を施している。
このように第2実施形態の翼車装置21でも、第1実施形態と同様に、河川流や潮流でも、流体が一定の流速を超えると、流体誘導機構3により翼車本体2から流路が外れることで、翼車本体2の破損を防止することができる。
【0042】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態の翼車装置21が、河川流・潮流発電装置に用いられる全方位集水機能付きの垂直軸周流型水車であるに対し、第3実施形態の翼車装置31が、図8から図12に示すように、一定方向に流れる水路や河川に設置される小水力発電装置に用いられる特定方向集水機能付きの水平軸周流型水車とされている点である。
【0043】
すなわち、第3実施形態の翼車装置31では、全方位の流れを集水する必要がないため、収納フードが削除され、翼車本体32が露出している。
また、翼車本体32の回転軸管35は、水平に保持されており、図9に示すように、8枚の羽根板2cを水平水車軸の周りに水流に対して135°の仰角θとなるようにして、水流に接する部分を完全に両側から一対の円環状側板32bで覆っている。
【0044】
第3実施形態では、水路Wの片側に設置した水車小屋(図示略)から水平方向水路W側に突出して上下動可能なステンレス管39に、軸受部35bを介して翼車本体32の回転軸管35が水平状態で回転可能に支持されている。
上記ステンレス管39には、回転軸管35に継手35aを介してシャフトが接続された発電機23が収納されている。
【0045】
なお、第3実施形態では、一対の円環状側板32bの間に円環状中間板を設けていない。
上記回転軸管35には、一対の中央支持板32gが互いに対向して固定され、中央支持板32gから放射状に延在した複数の側板支持部材32hの先端部が円環状側板32bに固定されている。
一対の中央支持板32gの間には、回転軸管35の周囲を囲むように遮蔽壁部38aが設けられている。
【0046】
また、一対の円環状側板32bの内側空洞部には、それぞれ透明遮蔽板38bが嵌め込まれている。
なお、円環状側板32b,中央支持板32g及び側板支持部材32hは、木材や合成木材などを使用することで、水車小屋にある牧歌的風景を演出して、観光等の振興を図ることができる。
【0047】
第3実施形態の流体誘導機構33は、水路Wの片側に一端部が固定されていると共に先端に長孔部7fを有し水平方向水路W側に延出した翼板支持部材33aと、長孔部7fに水平方向に基端が移動可能な翼板36と、翼板36の途中に一側部が回動可能に支持され流体導入口37aを有した開口枠部材33cと、開口枠部材33cの他側部に回動可能に一端が支持された誘導板34と、一端が誘導板34の他端に回動可能に支持され他端が水路Wの片側に固定された誘導板支持部材33dと、上端が誘導板34の他端を支持し水路Wの底に立設された柱部材33eとを備えている。
【0048】
上記開口枠部材33cは、複数の孔で構成された流体導入口37aを有した導入口板37cを、水流に対向して内側に有している。また、開口枠部材33cは、上下に一対のガイド板30を有している。
第3実施形態の付勢機構35は、水路Wの片側に一端が固定され他端が誘導板34に固定されたコイルばねである。
すなわち、コイルばねの付勢機構35により水路Wの片側に付勢された誘導板34と誘導板34に対向した翼板36との間には、流体導入口37aを有した開口枠部材33cが配されている。
【0049】
なお、導入口板37cは、開口枠部材33cに片側を回動可能に支持されており、通常は板ばねやコイルばねなどで付勢されているが、流体導入口37aがゴミ付着などで応力がかかると、付勢機構35に抗する流体誘導機構33による水車回避動作と相まって、導入口板37cの対岸側が開放され滞留物を水車(翼車本体32)を避けて下流に押し流す機構も備えている。
【0050】
このように第3実施形態の翼車装置31では、流体(水)が一定の流速以下であると、図10の(a)に示すように、翼板36及び誘導板34が付勢機構35によって水路Wの片側に引っ張られた状態となり、流体導入口37aからの流路が翼車本体32に向けて誘導されている。これに対して、流体(水)が一定の流速を超えると、図10の(b)に示すように、翼板36に生じた揚力によって誘導板34とは反対方向に翼板36の先端側が移動すると共に、誘導板34の先端側も付勢機構35の付勢力に抗して開口枠部材33cと共に翼板36側に移動する。このため、流体導入口37aも移動し、流路Y1が翼車本体32から外側に外れた方向に誘導される。
【0051】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,21,31…翼車装置、2,32…翼車本体、2a…回転軸、2b,32b…円環状側板、2c…羽根板、3,33…流体誘導機構、4,34…誘導板、5,35…付勢機構、6,36…翼板、7…収納フード、7a,37a…流体導入口、7b…流体排出口、9…垂直尾翼、Y1…流路、W…水路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12